説明

光走査装置、非接触光走査制御機構および画像形成装置

【課題】光走査を制御する構造の小型化、ひいては光走査装置及び/又は画像形成装置の小型化を図る。
【解決手段】
光源40からの光ビームLを光ビームLの光軸に対して可変の角度で反射可能であり、光ビームLの光軸と平行な回転軸Θを軸心として回転可能なミラー24と、光ビームLの入射を妨げないようにミラー24に設けられた磁石23と、光ビームLの光軸が内部を通るように配置された、磁石2に電磁界を供給するコイル311と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査を用いる技術に関し、例えば、光走査装置、非接触光走査制御機構および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザープリンター等において光走査を用いて描画を行なう光学デバイスの一例として、光スキャナーが知られている。光スキャナーは、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いてシリコン基板を加工することで作成することができる。このような光スキャナーは、2軸(例えばX軸及びY軸)方向の光走査(以下、「X−Y走査」という)を行なうことにより、平面(スクリーン)に対して画像や映像を投影、表示することができる。
【0003】
しかし、画像や映像を投影する面(スクリーン)が例えば球体や半球体、円柱体等の3次元形状における球面や曲面である場合、X−Y走査では非効率な場合がある。例えば、図7に示すように半球状のスクリーンに対してX−Y走査を行なうと、図8に斜線部で示すように、スクリーン内だけでなくスクリーン外の領域にも光が走査される。この場合、斜線部で表されたスクリーン外を走査する光は、無駄になり非効率である。
【0004】
そこで、3次元状のスクリーンに対しても効率的な光走査を行なう手法の一つとして、X−Y走査に代えて、極座標(r−θ)方向の光走査(以下、「r−θ走査」という)を行なうことも考えられている。r−θ走査は、例えば、光スキャナーを、或る回転軸の周り(θ方向)に回転運動させることと、前記回転軸に沿う方向(r方向)へ1次元走査することとの組み合わせによって可能となる。
【0005】
ここで、光スキャナーに駆動電力を供給する場合、光スキャナーは前記回転軸の周りに回転運動するため、配線の設け方に制約がある。例えば、配線を回転運動する部分とその他の固定部分とにわたって設けてしまうと、回転運動により配線が絡まってしまい、光スキャナーの回転運動を阻害したり配線が損傷したりするおそれがある。
【0006】
そこで、光スキャナーに対する駆動電力の供給を非接触で行なうことが考えられる。電力の伝送を非接触で行なう技術の一例として、下記の特許文献1により提案される技術がある。特許文献1には、ビデオカメラを用いて周囲の様子を撮影するために、ビデオカメラを回転体上に設置し、当該回転体側への駆動電力の供給(伝送)を、磁界発生コイルによる電磁誘導を利用して非接触で行なうことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−91584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来技術では、磁界発生コイル及び電流発生コイルの少なくとも2つのコイルを要する。そのため、コイル配置に要するスペースが大きくなってしまうおそれがある。
【0009】
本発明の目的の一つは、光走査を制御する構造の小型化、ひいては光走査装置及び/又は画像形成装置の小型化を図ることにある。また、光走査の制御を非接触で行なう際の効率を向上することも本発明の目的の一つである。
【0010】
なお、前記目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本発明の他の目的の一つとして位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の光走査装置の一態様は、光ビームを出力する光源と、前記光ビームを前記光ビームの光軸に対して可変の角度で反射可能であり、前記光ビームの光軸と平行な回転軸を軸心として回転可能なミラーと、前記光ビームの入射を妨げないように前記ミラーに設けられた磁石と、前記光ビームの光軸が内部を通るように配置された、前記磁石に電磁界を供給するコイルと、を備える。
【0012】
また、本発明の非接触光走査制御機構の一態様は、光源からの光ビームを前記光ビームの光軸に対して可変の角度で反射可能であり、前記光ビームの光軸と平行な回転軸を軸心として回転可能なミラー、を備えた光走査装置の非接触光走査制御機構であって、前記光ビームの入射を妨げないように前記ミラーに設けられた磁石と、前記光ビームの光軸が内部を通るように配置された、前記磁石に電磁界を供給するコイルと、を備える。
【0013】
ここで、前記コイルは、中空構造の部材に設けられ、前記光ビームは、前記部材の中空部分を通過して前記ミラーに入射する、こととしてもよい。
【0014】
また、前記部材の一部又は全部は、磁性材料としてもよい。さらに、前記磁石及び前記コイルは、前記光軸を軸心として互いに対向する位置に設けられていてもよい。
【0015】
また、本発明の画像形成装置の一態様は、上述の光走査装置を備えた装置であって、前記ミラーの反射角を前記コイルが発生する電磁場により制御して、前記光ビームを射出する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】一実施形態の光走査装置の構成例を模式的に示す図。
【図2】図1に例示する光スキャナーの構造を模式的に示す斜視図。
【図3】図2に例示する光スキャナーの回転軸と直交する方向の模式的な断面図。
【図4】図2及び図3に例示する可動板の裏面の構成例を模式的に示す図。
【図5】図1に例示した光走査装置に本実施形態の非接触光走査制御機構の一例を適用した構成を模式的に示す斜視図。
【図6】図5に例示する光走査装置を回転台の回転軸に沿う平面で切断したときの模式的断面図。
【図7】半球状のスクリーンに画像を投影する場合の構成を示す模式図。
【図8】図7に示す投影での走査範囲を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示であり、以下に明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。即ち、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付して表している。さらに、図面は以下の説明のための模式的なものであり、具体的な寸法等は以下の説明との関係で判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることがある。
【0018】
(一実施形態)
図1は、一実施形態に係る光走査装置10の構成例を模式的に示す斜視図である。図1に示す光走査装置10は、例示的に、光スキャナー20、光スキャナー20の設けられた回転体(回転台)30、および、光走査に用いられるレーザー光(光ビーム)Lを出力するレーザー光源40を備える。
【0019】
回転台30は、例示的に、回転軸Θを中心とする所定半径の中空部分301を有するドーナツ形状を有している。回転台30は、モーター等の駆動回路によって回転軸Θを中心に360度以上の回転が可能である。ただし、回転台30は、中空モーターそのものでもよい。
【0020】
中空部分301は、レーザー光源40が出力した光ビームLの通過を許容する。そのため、中空部分301の半径(断面積)は、光ビームLの径(断面積)以上あればよい。例えば、回転台30としての中空モーターの回転軸(モーターシャフト)に光ビームLが通過可能な貫通孔を設けてもよい。回転台30を駆動するモーターあるいは中空モーターには、例えば、ダイレクトドライブモーターや、ステッピングモーター、サーボモーター、DCモーター等を用いることができる。なお、回転台30を回転させる方法(駆動機構)としては、上述のごとく回転台30の回転軸に対して駆動力を与える方法の他、回転台30の外周(円周)に対して駆動力を与える方法も適用可能である。例えば、回転台30の円周をギア形状にして、モーターと回転台30の円周のギアとをかみ合わせて回転させる方法とすることもできる。
【0021】
光スキャナー20は、後述するように1次元の光走査を可能にするミラー(1次元走査ミラー)24(図2参照)を有する。ミラー24は、回転台30の中空部分301を通過した光ビームLがミラー面に入射可能なように回転台30に設けられている。
【0022】
例示的に、光スキャナー20(ミラー24)は、回転台30の中空部分30を除く表面に設けられた支持部材201によって支持され、ミラー24が光ビームLの光路(光軸)上に位置するように位置決め、固定されている。
【0023】
換言すれば、ミラー24は、回転台30の中空部分301を通過した光ビームLを受けつつ当該光ビームLの光軸に平行な回転軸Θを軸心に回転することが可能になっている。また、光スキャナー20は、回転軸Θと交差する方向、例えば回転軸Θと垂直な方向に回転軸R(図2参照)を有し、回転軸Rを中心に図1中に矢印rで示す方向に所定角度範囲の回動(1軸走査)が可能である。
【0024】
図2及び図3に、光スキャナー20の構成例を示す。図2は光スキャナーの模式的な斜視図であり、図3は光スキャナー20の回転軸Rと直交する方向の模式的な断面図である。
【0025】
図2に例示する光スキャナー20は、電磁駆動型の光スキャナーの一例であり、例示的に、凹部空間が形成された基体21と、可動板22、可動板22の表面に設けられた既述のミラー24、および、可動板22の裏面に設けられた磁石23(図3及び図4参照)を有する可動ミラー基板25と、を備える。
【0026】
基体21には、例えば、ガラス基板やシリコン基板等を用いることができ、可動板22の振動(回動)を許容する凹部(空間)が設けられている。凹部は、例示的に、基体21をエッチングする、あるいは、基体21の両端部にスぺーサー部を形成することで設けることができる。
【0027】
可動ミラー基板25は、例示的に、さらに、可動板22の両端部に設けられた一対のトーションバー(弾性部材の一例である捻りばね)27a及び27bと、トーションバー27a及び27bを介して可動板22を支持する支持枠固定部29a及び29bとを備える。このような可動ミラー基板25は、例えば、シリコンの単結晶基板(薄板)をMEMSの微細加工技術を用いて形成することができる。
【0028】
ミラー24は、レーザー光源40から回転台30の中空部分301を通過して入射する光ビームLを反射する。反射した光ビームLは、光走査に用いることができる。なお、光スキャナー20には、1次元に限らず2次元(2軸)以上の走査が可能なミラーを適用することも可能である。
【0029】
図3及び図4に示す磁石23は、例えば、N極及びS極を有する棒磁石であり、トーションバー27a及び27b(回転軸R)に対して直交又は略直交する方向にN極及びS極が位置するように配置されている。磁石23によって、可動板22を含む空間にN極からS極に向かう磁力線(静磁場)が形成される。当該静磁場に対して外部から別の磁界を与えると、磁石23の両端部に互いに反対方向の力が生じさせて、可動板22に回動力を与えることができる。結果、可動板22の回動角(振れ角)、つまりはミラー24の反射角を制御することができる。なお、前記磁界の与え方については、図5及び図6にて後述する。
【0030】
図1において、レーザー光源40の出力した光ビームLをミラー24に入射することで、ミラー24の反射光を光走査に用いることができる。そのため、レーザー光源40は、例示的に、レーザー光源40から光スキャナー20へ至る光ビームLの光路が回転軸Θに沿うように、光スキャナー20に対して回転台30を挟んで反対側に配置されている。これにより、レーザー光源40から出力される光ビームLは、回転台30の回転軸Θに沿って回転台30の中空部分301を通過して、光スキャナー20のミラー24に入射する。
【0031】
なお、光ビームLが回転台30の中空部分301を通過してミラー24に入射可能であれば、レーザー光源40の配置位置は回転軸Θ又はその近傍でなくてもよい。例えば、光ビームLの光路上に一又は複数のミラーを設けて、回転台30の回転軸Θに沿う方向とは異なる方向にレーザー光源40を配置してもよい。
【0032】
次に、上述の光スキャナー20を用いた光走査装置10の動作について説明する。
レーザー光源40から出力された光ビームLは、回転台30の中空部分301を通過して光スキャナー20のミラー24に入射する。光スキャナー20の可動板22を既述のように回転軸R(図2参照)の周りに回転させて、図1中に矢印rで示す方向に回動させることにより、ミラー24で反射された光ビームLが図1中に示す矢印Sの方向に走査される。
【0033】
さらに、回転台30を回転軸Θの周りに回転させることにより、ミラー24で反射された光ビームLは、図1中に示す矢印θの方向に走査される。つまり、ミラー24は、光ビームLを光ビームLの光軸に対して可変の角度で反射可能であり、光ビームLの光軸と平行な回転軸Θを軸心として回転可能である。
【0034】
以上のような、光スキャナー20の回転軸Rの周りの回転と、回転台30の回転軸Θの周りの回転との組み合わせにより、回転軸Θを中心軸とする円柱状のスクリーンの全体に光ビームLを走査することができる。したがって、円柱型のスクリーンの全体に画像や映像を効率良く投影することができる。
【0035】
また、図1に例示したように、レーザー光源40を、光スキャナー20に対して、回転台30を挟んで反対側に配置し、光ビームLが回転台30の中空部分301を通過して光スキャナー20のミラー24に入射するようにすることで、投影スクリーンと光スキャナー20との間にレーザー光源40や回転台30の配線を設けなくても済む。
【0036】
さらには、レーザー光源40は、回転運動する回転台30や光スキャナー20から離れた位置に設けることができるので、レーザー光源40は、回転駆動不要な個別のユニットとすることができる。したがって、回転台30に余分な負荷をかけずに済む。また、レーザー光源40の駆動信号が、回転運動する回転台30や光スキャナー20に起因して生じ得るノイズの影響を受けることを抑制でき、レーザー光源40の安定した駆動を実現することができる。
【0037】
さらに、レーザー光源40を、回転台30を挟んで光スキャナー20及び投影スクリーンと反対側に配置できるから、レーザー光源40のサイズに自由度をもたせることができ、ひいては、光学系の設計自由度を向上することができる。
【0038】
(非接触光走査制御機構)
さて、次に、回転台30に設けられた光スキャナー20の可動板22(ミラー24)の回動(光走査)制御を行なう手法(機構)について、図5及び図6を用いて説明する。図5は、図1に例示した光走査装置10に本実施形態の光スキャナー20の非接触光走査制御機構の一例を適用した構成を模式的に示す斜視図である。図6は、図5に例示する光走査装置10を回転台30の回転軸Θに沿う平面で切断したときの模式的断面図である。
【0039】
図5及び図6に示すように、本例の非接触光走査制御機構は、例示的に、コイル固定用部材31と、コイル固定用部材31に設けられたコイル311と、を備える。なお、符号50は、コイル311に電力を供給する電源回路を表す。
【0040】
コイル311は、電源回路50から電力(電流)の供給を受けると、受けた電流値に応じた電磁界を発生する。コイル311は、例示的に、コイル固定用部材31の外周面に沿って設けることができる。例えば、所定長さの導線(線材)をコイル固定用部材31の外周面に沿って巻き付けてもよいし、コイルパターンをコイル固定用部材31の外周面に沿ってパターニングしてもよい。
【0041】
コイル固定用部材31は、例示的に、その軸心が回転台30の回転軸Θと一致するように、回転台30の、光スキャナー20が設けられた面とは反対側に設けることができる。回転台30を回転自在に支持する構造は、ボールベアリング等の既知の各種軸受との組み合わせによって実現することが可能である。ただし、コイル固定用部材31は、回転台30に固定されておらず、回転台30が回転しても回転しない。
【0042】
回転台30を支持する構造の一例としては、図6中に示すように、ベアリング(例えば、スラスト軸受け)32を用い、回転台30をベアリング32の一方の面に固定するとともに、ベアリング32の他方の面を回転台支持部材33に固定することが挙げられる。回転台支持部材33には、板状の個別の部材を用いることができる。また、コイル固定用部材31は、ベアリング32にはめ込むことで固定することができる。このような構造により、コイル固定用部材31は回転せず固定のまま、回転台30を回転させることが可能となる。
【0043】
また、コイル固定用部材31は、例示的に、光ビームLが通過可能な透孔312を有する中空構造の筒状体である。透孔312は、光ビームLが通過可能な径(断面積)を有していれば足りる。換言すれば、透孔312は、光ビームLの光路(光軸)の一部を内包している。透孔312の径は、回転台30の中空部分301の径と異なっていてもよいし同じでもよい。透孔312の断面形状は、光ビームLを通過できれば円形状でなくてもよく、多角形状であってもよい。
【0044】
回転台30の中空部分301、および、コイル固定用部材31の透孔312の径は、それぞれ異なっていてもよい。レーザー光源40から出力された光ビームLは、コイル固定用部材31の透孔312、および、回転台30の中空部分301をそれぞれ通過して、光スキャナー20(ミラー24)に入射することができる。
【0045】
上述の構成において、コイル311で発生した電磁界が、光スキャナー20の可動板22の裏面に設けられた磁石23が形成する磁界に対して作用すると、可動板22に回動力が生じて、可動板22の回動角、つまりはミラー24の振れ角(反射角)を制御することができる。
【0046】
例えば、電源回路50(交流電源)からコイル311に電流が供給(オン)される期間において、コイル311に電磁場(交流磁界)が発生し、この交流磁界が磁石23の形成する静磁場に作用することで、磁石23の一端部がコイル311に対して引き付けられたり離れたりする。結果、可動板22が、トーションバー27a及び27bを回動軸Rとして振動する。一方、電流が供給されない(オフ)期間においては、前記交流磁界が消失し、弾性部材であるトーションバー27a及び27bの復元力によって可動板22が元の位置に戻る。
【0047】
このようなオンオフ動作が交流電源の周期に応じて高速に行なわれると、特定の周波数(スイッチング周波数あるいは駆動周波数)で可動板22が共振状態となり、可動板22、つまりはミラー24の振れ角が特定の角度に安定する。このように振れ角が安定した共振状態で光スキャナー20を使用する。
【0048】
例えば、レーザー光源40の出力した光ビームLがミラー24に入射することで、ミラー24の反射光を光走査の光ビームに用いることができる。なお、本例では、光スキャナー20には、1次元(1軸)走査が可能なものに限らず、2次元(2軸)以上の走査が可能なものを適用してもよい。
【0049】
上述したコイル311の電磁場による可動板22(ミラー24)の回動制御を効率的に行なえるようにするため、コイル311の軸心と磁石23の中央部分とは同じ軸(例えば回転軸Θ)上に配置するとよい。また、回転台30の回転を妨げない範囲で互いの距離はできるだけ近い方がよい。代替的又は付加的に、コイル固定用部材31の一部(例えばコイル311が設けられた部分)又は全部の材料に、鉄やフェライト等の磁性体を用いて、コイル固定用部材31をコイル311の磁心(磁性コア)とすることで、コイル311が発生する電磁界の強度を強めるようにしてもよい。
【0050】
以上のように、光スキャナー20の可動板22(ミラー24)に磁石23を設けて、磁石23が形成する静磁場に対して、コイル固定用部材31に設けたコイル311の電磁場を作用させることで、非接触でミラー24の反射角(光走査)を制御することができる。したがって、回転台30側に追加的なコイルを用いなくても、非接触でのミラー24の反射角制御が可能である。よって、コイル配置に要するスペースを最小限に抑制して、光走査装置10の小型化を図ることができる。
【0051】
また、コイル311が設けられたコイル固定用部材31の一部又は全部を磁性体とすることで、コイル固定用部材31がコイル311の磁心として機能とするので、コイル311で発生する電磁界強度を強めて、ミラー24の反射角制御をより効率的に、また、確実に行なうことが可能となる。
【0052】
(画像形成装置)
上述した非接触光走査制御機構を有する光走査装置10は、例えば、投影スクリーンが円柱状や半球状等の3次元形状であるプロジェクタ、イメージング用ディスプレイなどの画像形成装置に適用することができる。すなわち、ミラー24の反射角を制御して、光ビームLを射出、走査することができる。射出先は、3次元形状のスクリーンとすることができる。その結果、優れた描画特性を有する画像形成装置を省スペースで実現することができる。
【符号の説明】
【0053】
10…光走査装置、20…光スキャナー、21…基体、22…可動板、23…磁石、24…ミラー(1次元走査ミラー)、30…回転台、31…コイル固定用部材、32…ベアリング(スラスト軸受け)、33…回転台支持部材、40…レーザー光源、50…電源回路、301…中空部分、311…コイル、312…透孔、Θ,R…回転軸、L…レーザー光(光ビーム)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ビームを出力する光源と、
前記光ビームを前記光ビームの光軸に対して可変の角度で反射可能であり、前記光ビームの光軸と平行な回転軸を軸心として回転可能なミラーと、
前記光ビームの入射を妨げないように前記ミラーに設けられた磁石と、
前記光ビームの光軸が内部を通るように配置された、前記磁石に電磁界を供給するコイルと、
を備えた、光走査装置。
【請求項2】
前記コイルは、中空構造の部材に設けられ、
前記光ビームは、前記部材の中空部分を通過して前記ミラーに入射する、請求項1記載の光走査装置。
【請求項3】
光源からの光ビームを前記光ビームの光軸に対して可変の角度で反射可能であり、前記光ビームの光軸と平行な回転軸を軸心として回転可能なミラー、を備えた光走査装置の非接触光走査制御機構であって、
前記光ビームの入射を妨げないように前記ミラーに設けられた磁石と、
前記光ビームの光軸が内部を通るように配置された、前記磁石に電磁界を供給するコイルと、
を備えた、非接触光走査制御機構。
【請求項4】
前記コイルは、中空構造の部材に設けられ、
前記光ビームは、前記部材の中空部分を通過して前記ミラーに入射する、請求項3記載の非接触光走査制御機構。
【請求項5】
前記部材の一部又は全部が、磁性材料である、請求項4記載の非接触光走査制御機構。
【請求項6】
前記磁石及び前記コイルは、前記光軸を軸心として互いに対向する位置に設けられている、請求項3〜5のいずれか1項に記載の非接触光走査制御機構。
【請求項7】
請求項1記載の光走査装置を備えた画像形成装置であって、
前記ミラーの反射角を前記コイルが発生する電磁場により制御して、前記光ビームを射出する、画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−169812(P2010−169812A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10904(P2009−10904)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】