説明

光送信モジュール

【課題】小型かつ外部素子の削減が可能な光送信モジュールを提供する。
【解決手段】光送信モジュール100は、平板状のステム部101と、ステム部101の表面から起立する形状のサブマウント部107と、を有し、サブマウント部107の側面に、非冷却型半導体レーザ109と、一端が前記非冷却型半導体レーザ109と接続される抵抗素子112と、一端が接地される容量素子113と、が直列接続されて構成される終端抵抗回路と、が設けられた基板を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、10Gbit/s以上の伝送レートで光通信を行う光トランシーバ内で使用される、送信側光モジュール(TOSA:Transmitter Optical SubAssembly)等の光送信モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体光変調器付半導体レーザを内蔵した光送信モジュールは、中〜長距離の光ファイバ伝送等に用いられる光トランシーバに搭載されるキーデバイスの一つである。光トランシーバは近年のブロードバンドネットワークの普及と共に高速化、伝送の長距離化が図られ、10Gbit/s以上の高速伝送レートに対応したものが広く用いられている。上記光トランシーバに搭載される光送信モジュールには、良好な光送信波形品質と共に、小型かつ低消費電力であることが強く要求されている。
【0003】
高速かつ長距離の伝送に適する半導体光変調器付半導体レーザとしては電波吸収型光変調器素子が多く用いられている。電波吸収型光変調器素子はドライバICを用いてその出力電圧波形により駆動するものであるが、電波吸収型光変調器素子のインピーダンスは光信号のON/OFFに応じて大きく変化するため、電波吸収型光変調器素子単独を駆動した場合インピーダンスの不整合により良好な送信波形を得ることはできない。
【0004】
良好な送信波形を得るためには約50オームの抵抗素子を電波吸収型光変調器素子に近接して配置し、その一端を該電波吸収型光変調器素子に、他端を接地電位に接続してこの抵抗素子をドライバICの終端抵抗として用いることが多かった。しかし電波吸収型光変調器素子にはバイアス電圧を印加する必要があり、上記のような構成では抵抗素子に本来不必要な直流電流を生じてしまい、消費電力の点で無駄が多かった。
【0005】
消費電力を低減する技術として、抵抗素子と(単独または並列接続した複数の)直流遮断用容量素子とを直列接続した終端抵抗回路を光変調器素子に近接配置する構造が提案されている。特許文献1に記載される技術はその一例であり、電波吸収型光変調器素子に近接してチップ抵抗器、積層セラミックキャパシタ、平行平板キャパシタからなる終端抵抗回路を配置している。終端抵抗回路は容量値0.01uFの積層セラミックキャパシタと容量値100pFの平行平板キャパシタとは並列接続し、これらを抵抗値50オームのチップ抵抗器と直列接続したものとしている。特許文献1においては高周波特性に優れた平行平板キャパシタにより終端抵抗回路のインピーダンスを高周波領域において50オームに保ち、大容量化に優れた積層セラミックキャパシタにより終端抵抗回路のインピーダンスを低周波領域(ただし低域遮断周波数300kHzより高い領域)において50オームに保つことで広帯域な終端抵抗回路を構成し、消費電力の低減と良好な光送信波形の両立を実現している。
【0006】
また、小型化に関しては従来バタフライ型のものが主流であったが、今日では同軸型のTOSAが増えてきている。同軸型のTOSAはバタフライ型のTOSAと比較し、安価で形状も小型化しやすく量産性、小型化ともにバタフライ型より有利なパッケージであるといえる。前述の電波吸収型光変調器付半導体レーザを搭載した、例えば特許文献2に記載されているような同軸型TOSAも増えてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−230328号公報
【特許文献2】特開昭59−193080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
最近ではより小型化と低消費電力化の要求がより高まってきており、最新の10Gbit/s光送受信モジュールのMSAであるSFP+で要求されるTOSAサイズは同軸型の場合、φ5.6mm、全長15mm程度、消費電力は1.5W程度である。これらの要求のいずれについても、上記従来技術では満たすことが出来ない。
【0009】
一般的に電波吸収型光変調器付半導体レーザを使用する場合、温調機能をもつ部品たとえばペルチェクーラ等の部品上に電波吸収型光変調器付半導体レーザを搭載するのが一般的である。しかしながらペルチェクーラは消費電力が大きく、ペルチェクーラを搭載した場合、SFP+で要求される消費電力を達成することができない。
【0010】
また、ペルチェクーラを搭載する場合、搭載部分の金属ステムに通電用のピンが配置してあるがそれらに干渉しないよう搭載せねばならないためTOSA内部の部品搭載空間が圧迫される。そのため終端抵抗回路の容量素子等は、光送信モジュールに搭載できない。
【0011】
また、ペルチェクーラを使用する場合、ペルチェクーラを搭載している部分の(ここでは金属ステムのベース部分)放熱特性を、ペルチェクーラを搭載しない場合に比べ十分に得ねばならない。十分な放熱特性を得られなければ、ペルチェクーラが過剰に冷却または過剰に過熱を実行するためその分消費電力が大きくなってしまう。十分な放熱特性を得るためには放熱部分の面積を大きくすることが効果的であるが、放熱部分の面積を大きくするとペルチェクーラを搭載している金属ステムのベース部分の厚みが増大する。よって同軸型TOSAの全長が長くなってしまい小型化を阻害する要因となっている。
【0012】
本発明の目的の1つは、小型かつ外部素子の削減が可能な光送信モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、平板状のステム部と、前記ステム部の表面から起立する形状のサブマウント部と、を有し、前記サブマウント部の側面に、非冷却型半導体レーザと、一端が前記非冷却型半導体レーザと接続される抵抗素子と、一端が接地される容量素子と、が直列接続されて構成される終端抵抗回路と、が設けられた基板を有することを特徴とする光送信モジュールである。
【0014】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光送信モジュールにおいて、前記ステム部の表面は直径が5.6mm以下の円形状であることを特徴とする光送信モジュールである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、半導体光変調器付半導体レーザとして非冷却型半導体レーザを設けたことによりペルチェクーラが不要になり、ペルチェクーラを搭載する部品の放熱性を考慮しなくてよく、小型化が実現される。また、ペルチェクーラを設けないことで低消費電力も実現される。
【0016】
さらに、金属ステム上に光変調器を集積した発光素子と、その終端抵抗回路である抵抗素子を、ペルチェクーラ等を搭載しない非冷却構造にて実装することにより、金属ステムの部品搭載部分の拡充が出来る。非冷却構造にて実装することにより、金属ステムの部品搭載部分の拡充部を利用することで発光素子、および終端抵抗回路の抵抗素子、容量素子を一直線に備えることが出来、より小型で低消費電力化を達成した光送信器を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係る光送信モジュールの構成を示す図である。
【図2】本実施形態に係る光送信モジュールの内部の構成を示す図である。
【図3】本実施形態に係る光送信モジュールの内部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本実施形態に係る光送信モジュール100の構成を示す図である。光送信モジュール100は、平板状のステム部である金属ステム101、ステムガイド102、ホルダ103、レセプタクル104、およびフレキシブル基板105を備えて構成されている。
【0019】
図2および3は、本実施形態に係る光送信モジュール100の内部の構成を示す図である。光送信モジュール100は、さらにレンズキャップ106、サブマウント部107、中継基板108、非冷却型半導体レーザである半導体レーザ109、半導体レーザ搭載用基板110、モニタフォトダイオード(MPD)111、薄膜抵抗112、および容量素子113を有する。図2は、図1に示される光送信モジュール100において、ステムガイド102、ホルダ103、およびレセプタクル104を外した状態を示す図である。また図3は、図2に示される状態において、さらにレンズキャップ106を外した状態を示す図である。
【0020】
サブマウント部107は、金属ステム101の表面から起立した形状を有し、その側面に半導体レーザ搭載用基板110等が設けられる部材であり、金属ステム101と一体、もしくは別体で形成される。金属ステム101には通電用のピンが配置されている。通電用のピンは各部品と図示しないワイヤボンディングで必要に応じて接続されている。また、高周波の伝送線路が形成された中継基板108、半導体レーザ109、半導体レーザ搭載用基板110、および半導体レーザ109の後方光出力をモニタするモニタフォトダイオード111が、サブマウント部107の側面に配置されている。
【0021】
また薄膜抵抗112は、終端抵抗回路を構成する抵抗であり、半導体レーザ搭載用基板110上に配置されている。これらは、小型化要求から来る制限により搭載位置が限定される。
【0022】
なお、SFP+用TOSAに要求されるTOSAサイズは同軸型TOSAの場合、概ねφ5.6mm長さ15mm程度以内に収めなければならない。φ5.6mmは部品搭載の基準となる金属ステム101の直径にて決定されている。長さ15mmは構成として以下の3部分に分けられる。
A:金属ステム101のベース、
B:レセプタクル104、
C:A,Bを差し引いた部分
【0023】
Aの金属ステム101のベース部分は放熱性を考慮し、冷却用にペルチェクーラを使用する場合より薄い1.2mmとしている。Bのレセプタクル104の部分については、レセプタクルの規格に基づき、その寸法は7.85mmである。Cは全長15mmよりA,Bを差し引いた寸法であるため、概ね6mm程度となる。よって、C部を構成する部品は6mm程度にて最大の特性を引き出せる部品搭載位置に配置される。
【0024】
本実施形態ではC部を6mm程度にするため金属ステム101−レンズキャップ106のレンズ入射面間を1.7mm、半導体レーザ109―レンズキャップ106のレンズ入射面間を0.4mmとした。上記を決定すると金属ステム101−半導体レーザ109間の寸法が決まる。本実施例では1.3mmである。またサブマウント部107の幅は、ペルチェクーラが設けられた従来の構成では、サブマウント部107はペルチェクーラ上に設けられていたために(金属ステム101よりも幅が狭い)ペルチェクーラの幅以下であることが求められていたのに対し、本実施形態では半導体レーザ109が非冷却型半導体レーザであることによりペルチェクーラが設けられないため、金属ステム101の幅以下であればよく、その結果、2.8mmとすることが出来た。半導体レーザ109の搭載位置はTOSA全体をφ5.6mmにするため金属ステム101の部品等細部中央に配置される。また、半導体レーザ搭載用基板110上にある終端抵抗回路を形成する薄膜抵抗112は十分な高周波特性を得るため半導体レーザ109と近接に配置し、抵抗値は50オームとする。また、バイアス電圧の印加による不必要な直流電流を除去する容量素子113を金属ステム上に搭載し、容量値は0.01uFとした。ペルチェクーラ等を用いない非冷却構造としているため容量素子113の搭載スペースを問題なく確保することが出来る。
【0025】
光送信モジュール100を上記の構成とすることで、TOSAの小型化と、薄膜抵抗112および容量素子113を有する終端抵抗回路の搭載スペースの確保が実現される。
【符号の説明】
【0026】
100 光送信モジュール、101 金属ステム、102 ステムガイド、103 ホルダ、104 レセプタクル、105 フレキシブル基板、106 レンズキャップ、107 サブマウント部、108 中継基板、109 半導体レーザ、110 半導体レーザ搭載用基板、111 モニタフォトダイオード、112 薄膜抵抗、113 容量素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状のステム部と、
前記ステム部の表面から起立する形状のサブマウント部と、を有し、
前記サブマウント部の側面に、
非冷却型半導体レーザと、
一端が前記非冷却型半導体レーザと接続される抵抗素子と、一端が接地される容量素子と、が直列接続されて構成される終端抵抗回路と、
が設けられた基板を有することを特徴とする光送信モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の光送信モジュールにおいて、
前記ステム部の表面は直径が5.6mm以下の円形状であることを特徴とする光送信モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−243819(P2012−243819A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109819(P2011−109819)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(301005371)日本オクラロ株式会社 (311)
【Fターム(参考)】