説明

内径グルーブインサートおよびそのためのツールホルダー

本発明は内径グルーブインサートに関するものである。内径グルーブインサートは、上面と、下面と、第1〜第4の側面とを備える四角形の本体部と、隣接する第1の側面と第2の側面とからそれぞれ突出する第1および第2の突出部とを備える。第1の突出部は本体部の上面側に第1の切削刃先を有し、第2の突出部は下面側に第2の切削刃先を有する。第1および第4の側面は上面に対して鈍角に傾斜し、第2および第3の側面は上面に対して鋭角に傾斜する。クランプ孔の中心軸は第1の側面と第4の側面とが出会う稜と平行に傾斜する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被削材の孔の内部にグルーブを加工するための内径グルーブインサート(internal groove insert)およびそのような内径グルーブインサートが装着されるツールホルダーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図8は、ツールホルダーに装着され被削材の孔の内部にグルーブを加工するのに用いられる従来の内径グルーブインサートを示す。図8に示すように、従来の内径グルーブインサート100は本体部110と本体部110の隣接する2つの側面から突出する2つの突出部121、122とで構成され、略L字状を有する。2つの突出部121、122の端部には切削加工を行う切削刃先124、126が形成される。このような形状のインサート100はツールホルダー130の端部に形成されたポケット部に装着され、ポケット部はインサート100を収容するようにインサート100に対応する形状を有する。即ち、ポケット部はインサート100の突出部のうちの1つに対応しこれを収容する凹部132を備える。インサート100が装着されたツールホルダー130が回転軸134を中心に回転すると、ツールホルダー130の外周面よりも外部に突出する切削刃先124によって被削材136の孔の内面が切削されグルーブが形成される。
【0003】
図9は、旋削加工とドリル加工がいずれも可能な従来のインデクサブル切削インサート(indexable cutting insert)200を示す。図9に示すように、切削インサート200は上面201と、下面202と、上面201と下面202との間に延びる4つの側面203とで構成され、略四角形の形状を有する。旋削加工やドリル加工時にポジティブな逃げ角を有して被削材との干渉を避けるために、切削インサート200の側面203は下面202に対して鈍角に傾斜している。図10は図9の切削インサートを有するツールホルダーの端部の側面図である。図10に示すように、インサート200が装着されるツールホルダー210のポケット部の側壁212はポケット部の底面214に対して鈍角に傾斜しており、側壁212と底面214との間のこの鈍角は切削インサート200の側面203と下面202との間の角αと同一である。
【0004】
このように、内径グルーブインサートと旋削およびドリル加工用インデクサブル切削インサートはそれぞれの加工条件の違いによって互いに異なる形状を有する。ところが、ツールホルダーのポケット部はその対応するインサートを収容できる形状を有するように形成される。このため、従来、旋削およびドリル加工用インデクサブル切削インサート用のツールホルダーを内径グルーブインサート用として用いることができない問題があった。また、従来の旋削およびドリル加工用インデクサブルインサートのツールホルダーとは異なる別個のツールホルダーが内径グルーブインサート用に必要であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような従来技術の問題を解決するためのものであって、1つのツールホルダーで旋削およびドリル加工用切削インサートと互換して用いることができる内径グルーブインサートを提供することを目的とする。また、本発明は、本発明の内径グルーブインサートと従来の旋削およびドリル加工用切削インサートのいずれにも用いられるツールホルダーを提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明は、インサートを固定するクランプスクリュにかかる応力を最小化するとともに、高難度の製造技術を用いずに容易に製造できる内径グルーブインサートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明の一実施形態による内径グルーブインサートは、上面と、下面と、上から見たとき反時計方向に順次形成された第1〜第4の側面と、上面の中心から下面の中心まで貫通するクランプ孔とを備える四角形形状の本体部と、隣接する第1の側面と第2の側面とからそれぞれ突出した第1の突出部および第2の突出部とを備える。第1の突出部は本体部の上面側に第1の切削刃先を有し、第2の突出部は本体部の下面側に第2の切削刃先を有する。第1および第4の側面は本体部の上面に対して鈍角に傾斜し、第2および第3の側面は本体部の上面に対して鋭角に傾斜する。クランプ孔の中心軸は第1の側面と第4の側面とが出会う稜と平行に傾斜している。第1の突出部は本体部の上面側の表面にチップブレーカを有し、第2の突出部は本体部の下面側の表面にチップブレーカを有する。このようなインサートは斜め圧縮成形により形成される。
【0008】
本発明の一実施形態によるツールホルダーは、本発明による内径グルーブインサートを収容するポケット部を含む。ポケット部は、底面と、底面に対して鈍角に傾斜し互いに隣接する第1の側壁および第2の側壁とを含む。ポケット部の第1の側壁と第2の側壁とが底面となす鈍角は、インサートの第1の側面と第4の側面とがインサートの上面となす鈍角と同一である。第1の側壁には内径グルーブインサートの突出部のうちの1つを収容する凹部が形成される。ポケット部の底面にはインサートを固定するクランプスクリュが締結されるネジ孔が形成される。ネジ孔の中心軸はポケット部の第1の側壁と第2の側壁とが出会う稜と平行に形成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、内径グルーブインサートは1つのツールホルダーにおいて旋削およびドリル加工用切削インサートと互換して用いることができる。本発明による内径グルーブインサートを収容するポケット部を有するツールホルダーは、旋削およびドリル加工用切削インサートも収容することができる。従って、内径グルーブインサートと旋削およびドリル加工用切削インサートのための2つの類型のツールホルダーを別個に用いる必要がない。
【0010】
また、本発明による内径グルーブインサートはインサートを固定するクランプスクリュにかかる応力を最小化するとともに高難度の製造技術を用いずに容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による内径グルーブインサートの斜視図である。
【図2】図1のインサートの平面図および側面図である。
【図3】図1のインサートがツールホルダーに装着されているところを示す。
【図4】図2の線A−Aによるインサートの断面図である。
【図5】旋削およびドリル加工用切削インサートと図1の内径グルーブインサートが同一のツールホルダーに装着されているところを示す。
【図6】図1のインサートを製造する装置の断面図である。
【図7】図6の装置の平面図である。
【図8】従来の内径グルーブインサートを示す。
【図9】旋削およびドリル加工がいずれも可能な切削インサートを示す。
【図10】図9の切削インサートがツールホルダーに装着されているところを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、本発明による内径グルーブインサートおよびそのようなインサートが装着されるツールホルダーを、添付の図面に示す実施形態を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明による内径グルーブインサートの斜視図である。図2は、図1の内径グルーブインサートの平面図(左側)および側面図(右側)である。図1および図2に示すように、インサートは四角形形状の本体部10を含み、本体部10は、上面11と、下面12と、上面11と下面12との間に延びる第1〜第4の側面13〜16と、上面11の中心から下面12の中心まで貫通するクランプ孔17とを含む。第1〜第4の側面13〜16は本体部10の上面11から見たとき反時計方向に順次形成される。第1の突出部21および第2の突出部22は隣接する第1の側面13と第2の側面14とからそれぞれ突出する。
【0014】
第1の突出部21は本体部10の上面11側の端部に第1の切削刃先24を有し、第2の突出部22は本体部10の下面12側の端部に第2の切削刃先25を有する。図3に示すように、インサートの下面12がツールホルダー3のポケット部の底面33と接するように装着される場合には、第1の切削刃先24が内径グルーブ加工のために用いられ、これと反対にインサートの上面11がツールホルダー3のポケット部の底面33と接するように装着される場合には、第2の切削刃先25が内径グルーブ加工のために用いられる。このように2つの切削刃先24、25が互いに反対方向に形成されるため、切削に関与しない切削刃先が切削時に発生する切削チップにより損傷することを防止することができる。具体的には、第1の切削刃先24が切削中の時には切削中に発生する切削チップによる第2の切削刃先25の損傷が防止され、第2の切削刃先25が切削中の時には切削チップによる第1の切削刃先24の損傷が防止される。
【0015】
図2に示すように、切削時に切削刃先24から発生するチップを円滑に排出するために第1の突出部21は本体部10の上面11側にチップブレーカ26を有する。図面には示していないが、同様に第2の突出部22は本体部10の下面12側にチップブレーカを有する。インサート1の第1〜第4の側面13〜16は上下面11、12に対して傾斜している。図2に示すように、第1の側面13は本体部1の上面11に対して鈍角に傾斜し、第3の側面15は本体部の上面11に対して鋭角に傾斜する。第4の側面16は本体部10の上面11に対して鈍角に傾斜し、第2の側面14は本体部の上面11に対して鋭角に傾斜する。
【0016】
図3は、図1の内径グルーブインサートがツールホルダーに装着されているところを示す。インサート1はツールホルダー3のポケット部に装着され、ポケット部の内側はインサート1の外側の形状に対応する形状を有する。ツールホルダー3のポケット部は、底面33と、底面33に対して鈍角に傾斜し互いに隣接する第1の側壁31および第2の側壁32とで構成される。第1の側壁31および第2の側壁32が底面33となす鈍角はインサート1の第1の側面13および第4の側面16が上面11となす鈍角と同一である。第1の側壁31にはインサート1の突出部を収容する凹部34が形成される。図3において、インサート1の下面12はポケット部の底面33と接し、第2の側面14と第3の側面15はそれぞれ第1の側壁31と第2の側壁32と当接する。インサート1の第2の突出部22はポケット部の凹部34に収容される。このように、インサート1は、第1の側面13および第4の側面16が本体部10の上面11と鈍角をなすように傾斜し第2の側面14および第3の側面15が本体部10の上面11と鋭角をなすように傾斜するため、ツールホルダー3のポケット部はインサート1の形状に対応して第1の側壁31と第2の側壁32が底面33と鈍角をなすように傾斜する。従って、図5に示すように、インサート1を収容するツールホルダー3のポケット部には、側面202が下面201に対して鈍角に傾斜する旋削およびドリル加工用インデクサブルインサート200も装着することができる。
【0017】
図4は図2の線A−Aによる断面図である。図4に示すように、クランプ孔17の中心軸18は本体部1の下面12に対して傾斜している。中心軸18が傾斜する角度は、第1の側面13と第4の側面16とが出会う稜が下面12に対して傾斜する角度と同一である。即ち、中心軸18は第1の側面13と第4の側面16とが出会う稜と平行である。これに対応して、ツールホルダー3の底面33にはクランプスクリュが締結されるネジ孔(図示せず)が形成される。ネジ孔の中心軸は底面33に対してクランプ孔17の中心軸18と同じ角度に傾斜する。即ち、ネジ孔の中心軸はポケット部の第1の側壁31と第2の側壁32とが出会う稜と平行である。
【0018】
このように、クランプスクリュが挿入されるクランプ孔17がインサート1の下面12および上面11に対して傾斜しているため、クランプスクリュはツールホルダー3のポケット部の底面33に対して傾斜した状態に締結される。従って、クランプスクリュが底面に垂直に締結される場合に比べ、結合面においてクランプスクリュの断面積(図4のS)が増加する。これによって、クランプスクリュに加えられる応力を減少させ、インサートをより堅固に固定できる。
【0019】
また、クランプ孔17が第1の側面13と第4の側面16とが出会う稜に対して傾いているため、インサート1は高難度の製造技術を用いずに斜め圧縮成形法によって容易に製造することができる。以下で、本発明によるインサートを斜め圧縮成形法により製造する方法を説明する。
【0020】
本発明によるインサート1は、第1〜第4の側面13〜16が上下面11、12に対して傾斜をなしている。インサートの上下面と側面とが垂直ではない場合、金型の底面と側面とが垂直でない金型(いわゆるポジティブ金型)を用いる。しかし、このようなポジティブ金型は金型の底面と側面とが互いに傾斜した関係であるため高難度の圧縮技術を必要とする。
【0021】
図6は斜め圧縮成形に用いられる傾斜金型の断面図である。図6に示すように、傾斜金型40は、下面41と、下面41に垂直な側面42と、側面42に対して傾斜した上面43と、傾斜金型40の上面43から傾斜金型40の下面41まで貫通し下面41に垂直な貫通孔44とを含む。貫通孔44は上から見ると、図7に示すようにインサート1のL字状の断面形状を有する。斜め圧縮成形によりインサートが形成される過程を詳察すると、傾斜金型40の貫通孔44の下から下部パンチ54と芯棒58が上ってきて、インサートを形成するための金属粉末が注入され、傾斜金型40の貫通孔44の上から上部パンチ50が挿入される。傾斜金型40の貫通孔44の内面、上部パンチ50の圧縮面52および下部パンチ54の圧縮面56とで形成された空間によりインサート1の外形が形成され、芯棒58によりクランプ孔17が形成される。金属粉末が圧縮焼結された後、研磨過程を経てインサートが完成する。本発明によれば、クランプ孔17が第1の側面13と第4の側面16とが出会う稜と平行に傾いているため傾斜金型40の下面41に垂直な芯棒58によって形成することができる。従って、高難度の圧縮技術を必要とするポジティブ金型を用いる必要がない。このように斜め圧縮成形によってインサートを製造することによって生産性を大きく向上させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面と、下面と、上から見たとき反時計方向に形成される第1〜第4の側面と、前記上面から前記下面まで貫通するクランプ孔とを備える四角形形状の本体部と、
隣接する第1の側面と第2の側面とからそれぞれ突出する第1の突出部および第2の突出部と、
を備える内径グルーブインサートであって、
前記第1の突出部はその端部において前記本体部の上面側に第1の切削刃先を有し、前記第2の突出部はその端部において前記本体部の下面側に第2の切削刃先を有し、
前記第1および第4の側面は前記本体部の上面に対して鈍角に傾斜し、前記第2および第3の側面は前記本体部の上面に対して鋭角に傾斜し、
前記クランプ孔の中心軸は第1および第4の側面が出会う稜と平行に形成される、
内径グルーブインサート。
【請求項2】
前記第1の突出部は前記本体部の上面側の表面にチップブレーカを有し、前記第2の突出部は前記本体部の下面側の表面にチップブレーカを有する、請求項1に記載の内径グルーブインサート。
【請求項3】
前記インサートは斜め圧縮成形により形成される、請求項1または2に記載の内径グルーブインサート。
【請求項4】
請求項1または2に記載の内径グルーブインサートが装着されるポケット部を含むツールホルダーであって、
前記ポケット部は底面と、前記底面に対して鈍角に傾斜し互いに隣接する第1の側壁および第2の側壁とを含み、
前記第1および第2の側壁が前記底面となす鈍角は前記インサートの第1および第4の側面が前記本体部の上面となす鈍角と同一であり、
前記第1の側壁に前記インサートの突出部を収容する凹部が形成される、
ツールホルダー。
【請求項5】
前記底面には前記インサートを固定するクランプスクリュが締結されるネジ孔が形成され、前記ネジ孔の中心軸は前記ポケット部の第1の側壁と第2の側壁とが出会う稜と平行に形成される、請求項4に記載のツールホルダー。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−514899(P2013−514899A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545827(P2012−545827)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【国際出願番号】PCT/KR2010/000787
【国際公開番号】WO2011/083887
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(508151781)デグテック エルティーディー (30)
【Fターム(参考)】