説明

内燃機関用点火装置

【課題】ストップスイッチが操作されたときに機関を失火させて停止する機能を有する内燃機関用点火装置において、ストップスイッチのチャタリングによる誤動作を防止する。
【解決手段】スイッチ状態判定手段14によりストップスイッチ5がオフ状態にあると判定されているときに内燃機関の点火を許可し、ストップスイッチがオン状態にあると判定されたときに内燃機関の点火を禁止し、ストップスイッチがオン状態にあると判定された後にオフ状態にあると判定されたときに、ストップスイッチがオフ状態にあると判定されていても内燃機関の点火を少なくとも1回禁止して、点火を禁止した後になおストップスイッチがオフ状態にあると判定されたときに機関の点火を許可する点火許否手段を設け、点火許否手段により点火が許可されている時にのみ点火動作を行わせるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関を点火する内燃機関用点火装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関用点火装置は、特許文献1に示されているように、内燃機関を点火するために用いる点火用高電圧を発生する点火回路と、内燃機関の点火タイミングを演算する点火タイミング演算手段と、点火タイミング演算手段により演算された点火タイミングを検出する(内燃機関のクランク角位置が演算された点火タイミングに相当するクランク角位置に一致したことを検出する)点火タイミング検出手段とを備えていて、点火タイミング検出手段により点火タイミングが検出されたときに点火回路に点火用高電圧を発生させるための動作を行わせるように構成される。
【0003】
一般に点火回路は、点火コイルと、点火信号が与えられたときに点火コイルの一次電流に急激な変化を生じさせる一次電流制御回路とを備えていて、一次電流の急激な変化により点火コイルの二次コイルに点火用高電圧を誘起させる。点火コイルの二次コイルに誘起した点火用高電圧は、機関の気筒に取り付けられた点火プラグに印加されるため、点火プラグで火花放電が生じ、機関が点火される。
【0004】
操作の簡便さ及び構成の簡素さを重視する内燃機関においては、特許文献1に示されているように、点火回路に点火用電源を直結して、機関のクランキングを行うだけで機関を始動させることができるようにしている。この種の内燃機関においては、機関を停止させるために、押ボタンスイッチのようなモーメンタリスイッチからなるストップスイッチを設けて、このストップスイッチが操作されたことが検出されたときに点火回路の点火動作を停止させることにより機関を失火させて、機関を停止させるようにしている。
【0005】
特許文献1に示された点火装置では、ストップスイッチとして常閉形の押ボタンスイッチを用い、押ボタンが押されてストップスイッチがオフ状態になったときに直ちに停止指令が与えられたと判定して、点火装置の点火動作を停止させ、ストップスイッチがオン状態になったときに直ちに点火指令が消滅したと判定して点火動作を再開させるようにしている。
【0006】
押ボタンスイッチなどのモメンタリスイッチは、スイッチ操作部(例えば押ボタン)への力の加え加減などにより容易にチャタリングを生じ、ユーザがスイッチを正しく操作しているつもりでも、スイッチの状態が瞬時的に操作時の状態から非操作時の状態に切り換わることがある。そのため、特許文献1に示されているように、ストップスイッチがオフ状態になったときに直ちに停止指令が与えられたと判定し、ストップスイッチがオン状態になったときに直ちに停止指令が消滅したと判定するようにした場合には、ユーザが機関を停止させるつもりでストップスイッチをオフ状態にした後ストップスイッチがチャタリングによりオン状態になったときに点火回路の点火動作が再開され、ユーザの意に反して機関の回転速度が上昇してしまうといった問題が生じる。
【0007】
このような誤動作が生じるのを防止するために、点火を制御するマイクロプロセッサにより、チャタリングの影響を受けずにストップスイッチの状態を判定するスイッチ状態判定手段を構成して、このスイッチ状態判定手段によりストップスイッチが操作されていると判定されたときに、点火動作を停止させるようにすることが考えられる。
【0008】
図8は、チャタリングの影響を受けずにストップスイッチの状態を判定する処理のアルゴリズムの一案を示したものである。この例では、ストップスイッチが押ボタンスイッチからなっていて、押ボタンを押したときにスイッチがオン状態になるようになっており、ストップスイッチがオン状態になっているときに、機関を停止させることを指令する停止指令を発生させるものとしている。
【0009】
図8の処理は、ストップスイッチの状態を微少時間ΔT間隔で(例えば8msec間隔で)検出しているスイッチ状態検出手段がストップスイッチの状態を検出する毎に実行される。この処理においては、ステップS1において、今回検出されたストップスイッチの状態が前回の検出時と同じであるか否かを判定する。ステップS1において、ストップスイッチが前回と同じ状態にあると判定されたときにステップS2で検出回数カウンタの計数値をインクリメントし、続いてステップS3においてストップスイッチの状態の検出回数(検出回数カウンタの計数値)が設定回数以上であるか否かを判定する。
【0010】
この判定により、検出回数が設定回数以上であると判定されていない場合には、以後何もしないでこの処理を終了する。ステップS3において検出回数が設定回数以上であると判定された時にはステップS4に進んでストップスイッチの状態がオン状態にあるか否かを判定する。ステップS4においてストップスイッチがオン状態にあると判定されたときには、ステップS5に進んでストップスイッチ状態フラグ#STOPSWを1にセットしてこの処理を終了する。ステップS4においてストップスイッチがオフ状態にあると判定されたときには、ステップS6に進んでストップスイッチ状態フラグ#STOPSWを0にリセットしてこの処理を終了する。図8の処理のステップS1においてストップスイッチの状態が前回の状態と異なると判定されたときにはステップS7に進んで検出回数カウンタの計数値を0とし、ステップS8で現在のストップスイッチの状態を記憶した後この処理を終了する。
【0011】
図8の処理によりストップスイッチの状態を判定する場合には、ストップスイッチがオン状態にあることが連続して設定回数nだけ検出されたとき(ストップスイッチがオン状態であると検出される状態がΔT×n時間継続したとき)にストップスイッチがオン状態にあると判定し、ストップスイッチがオフ状態にあることが連続して設定回数nだけ検出されたときにストップスイッチがオフ状態にあると判定する。チャタリングが生じたためにストップスイッチが前回の状態と同じ状態にないと判定されたときには検出回数カウンタの計数値をクリアするため、チャタリングの影響を受けることなく、ストップスイッチの状態を判定することができる。
【0012】
図9は、点火タイミング検出手段が点火タイミングを検出したときにマイクロプロセッサが実行する点火制御処理のアルゴリズムを示したもので、この処理においてはステップS11においてストップスイッチ状態フラグ#STOPSWが0であるか否かを判定し、ストップスイッチ状態フラグ#STOPSWが0であると判定されたとき(ストップスイッチがオフ状態にあると判定されたとき)にステップS12に進んで点火回路に点火動作を行わせるための処理を行って、機関の運転を継続させる。ステップS11においてストップスイッチ状態フラグ#STOPSWが1であると判定されたとき(ストップスイッチがオン状態にあると判定されたとき)には、点火回路に点火動作を行わせるための処理を行うことなくこの処理を終了し、機関を失火させる。ストップスイッチが操作されてオン状態になっている間機関を失火させ続けて機関を停止させる。
【特許文献1】特開昭63−117168号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
図8に示したアルゴリズムによりストップスイッチの状態を判定して、ストップスイッチがオン状態にあると判定されたときに機関を失火させるようにした場合、図6に示したように、時刻t1でストップスイッチが操作されてオン状態になったときに、ストップスイッチ状態フラグ#STOPSWが1となるため、機関の各点火タイミングで点火回路に点火信号が与えられないようにして、機関を失火させることができる。
【0014】
ところが、図9に示したアルゴリズムによる場合には、図6に示したように、時刻t2でストップスイッチに比較的遅いチャタリングが生じたときに、機関の点火タイミングでストップスイッチ状態フラグ#STOPSWが0となる状態(ストップスイッチがオフ状態にあると判定される状態)が生じ、機関が点火されてしまう。その後ストップスイッチの状態がオン状態に復帰しても、その後時刻t3で再びチャタリングによりストップスイッチがオフ状態になると、再び機関が点火される。このような状態が生じると、機関を停止させるためにストップスイッチを操作しているにも拘わらず、一瞬機関の回転速度が上昇するなど、ユーザの意に反した動作が行われることになる。
【0015】
上記の問題を解決するため、ストップスイッチがオン状態にされたことが一度検出されると、その後はストップスイッチの状態の如何に関わりなく機関を失火させ続けるようにすることも考えられる。しかしながら、このようにした場合には、ユーザが一旦ストップスイッチを操作した後、思い直してストップスイッチから手を離したときに、点火装置の動作を回復させることができないという問題が生じる。
【0016】
本発明の目的は、ストップスイッチに遅いチャタリングが生じた場合に誤動作が生じることがなく、またユーザが一旦ストップスイッチを操作した後、機関が停止する前に思い直してストップスイッチの操作を中止した場合には、機関を点火する状態に復帰させて、機関の運転を維持することができるようにした内燃機関用点火装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、内燃機関を点火する動作(点火動作)を行う点火回路と、内燃機関の点火タイミングを演算する点火タイミング演算手段と、点火タイミング演算手段により演算された点火タイミングを検出する点火タイミング検出手段と、操作前は第1の状態にあり、操作されたときに第2の状態になるモーメンタリスイッチからなっていて内燃機関を停止させる際に操作されるストップスイッチと、ストップスイッチの状態を判定するスイッチ状態判定手段と、スイッチ状態判定手段による判定結果に応じて点火タイミングで点火回路に点火動作を行わせるための処理を行う点火制御手段とを備えた内燃機関用点火装置を対象とする。
【0018】
本発明においては、スイッチ状態判定手段によりストップスイッチが第1の状態にあると判定されている状態が継続しているときに内燃機関の点火を許可し、ストップスイッチが第2の状態にあると判定されたときには内燃機関の点火を禁止し、スイッチ状態判定手段によりストップスイッチが第2の状態にあると判定された後に第1の状態にあると判定されたときには、ストップスイッチが第1の状態にあると判定されていても内燃機関の点火を少なくとも1回禁止して、少なくとも1回点火を禁止した後になお前記ストップスイッチが第1の状態にあると判定されたときに前記内燃機関の点火を許可する点火許否手段が設けられる。点火制御手段は、点火許否手段により点火が許可されているときにのみ点火回路に点火動作を行わせるための処理を行うように構成される。
【0019】
上記のように、スイッチ状態判定手段によりストップスイッチが第2の状態(機関の停止を指令する状態)にあると判定された後に第1の状態(機関の停止指令を解除する状態)にあると判定されたときに、直ちに内燃機関の点火を回復させるのではなく、ストップスイッチが第1の状態にあると判定されている状態でも、内燃機関の点火を少なくとも1回禁止して、点火を禁止した点火タイミングでなおストップスイッチが第1の状態にあると判定されたときに次の点火タイミングでの内燃機関の点火を許可するようにすると、ユーザが機関を停止させるためにストップスイッチを操作している状態で、第2の状態にあるストップスイッチがゆっくりとしたチャタリングにより一時的に第1の状態になったとしても、機関は失火状態に保持される。またストップスイッチが操作されている状態では、少なくとも1回の点火を禁止している間にストップスイッチを第2の状態に復帰させて機関の点火を禁止することができるため、ゆっくりとしたチャタリングによりストップスイッチが一時期に第1の状態になったと判定されたとしても、点火動作が再開されることはない。そのため、ユーザがストップスイッチを操作している状態でゆっくりとしたチャタリングが生じたときに、点火動作が再開されるのを防ぐことができ、機関を停止しようとしているユーザの意に反して点火動作が再開されて機関の回転速度が一時的に上昇するといった異常な現象が生じるのを防ぐことができる。
【0020】
またユーザが一旦ストップスイッチを操作した後、思い直してストップスイッチの操作を中止した場合には、少なくとも1回の点火が禁止された後、ストップスイッチが第1の状態にあることが検出されるため、機関の点火を再開させて、機関の運転を維持することができる。
【0021】
本発明の好ましい態様では、スイッチ状態判定手段により前記ストップスイッチが第2の状態にあると判定されたときに失火要求指令を発生させる失火要求指令発生手段と、点火タイミング検出手段により点火タイミングが検出された時に失火要求指令が発生しているか否かを判定して、失火要求指令が発生していないと判定しときに内燃機関の点火を許可し、失火要求指令が発生していると判定しときに内燃機関の点火を禁止する点火許否手段と、点火許否手段が内燃機関の点火を禁止した後にスイッチ状態判定手段による判定結果を確認するスイッチ状態判定結果確認手段と、スイッチ状態判定結果確認手段によりストップスイッチが第1の状態にあることが確認されたときに失火要求指令を消滅させ、ストップスイッチが第2の状態にあることが確認されたときには失火要求指令の発生を維持する失火要求指令消滅制御手段とが設けられる。この場合も点火制御手段は、点火許否手段により内燃機関の点火が許可されているときにのみ各点火タイミングで点火回路に点火動作を行わせるための処理を行わせるように構成される。
【0022】
上記スイッチ状態判定手段は、一定の時間間隔でストップスイッチの状態を検出して、ストップスイッチが第1の状態にあること、または第2の状態にあることが設定回数検出されたときにそれぞれストップスイッチが第1の状態または第2の状態にあると判定するように構成することができる。
【0023】
点火回路は、点火信号が与えられたときに点火コイルの一次電流に急激な変化を生じさせて、点火コイルの二次コイルに点火用の高電圧を誘起させる回路であればいかなるものでもよい。例えば、点火コイルと、該点火コイルの一次側に設けられて点火電源の出力により充電される点火用コンデンサと、点火信号が与えられたときに導通状態になって点火用コンデンサの電荷を点火コイルの一次コイルを通して放電させる放電用スイッチとを備えたコンデンサ放電式の点火回路を用いることができる。また点火コイルの一次コイルに対して直列に接続されたトランジスタスイッチを備えて、点火タイミングよりも前のタイミングでトランジスタスイッチをオン状態にすることにより点火電源からトランジスタスイッチを通して点火コイルに一次電流を流し、点火タイミングでトランジスタスイッチをオフ状態にして一次電流を遮断することにより、点火コイルの二次コイルに点火用高電圧を誘起させる電流遮断形の点火回路を用いることもできる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明によれば、スイッチ状態判定手段によりストップスイッチが第2の状態(機関の停止を指令する状態)にあると判定された後に第1の状態(機関の停止指令を解除する状態)にあると判定されたときに、直ちに内燃機関の点火動作を回復させるのではなく、内燃機関の点火を少なくとも1回禁止して、点火を禁止した点火タイミングでなおストップスイッチが第1の状態にあると判定されたときに次の点火タイミングでの内燃機関の点火を許可するようにしたので、ユーザが機関を停止させるためにストップスイッチを操作している状態で、第2の状態にあるストップスイッチがゆっくりとしたチャタリングにより一時的に第1の状態になったと判定されたときに点火動作が再開されるのを防ぐことができ、機関を停止しようとしているユーザの意に反して点火動作が再開されて機関の回転速度が一時的に上昇するといった異常な現象が生じるのを防ぐことができる。
【0025】
またユーザが一旦ストップスイッチを操作した後、思い直してストップスイッチの操作を中止した際には、少なくとも1回の点火が禁止された後、ストップスイッチが第1の状態にあることが検出されれば、機関の点火が再開されるため、ユーザの意志通りに機関の運転を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下図面を参照して本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
本実施形態の点火装置は、2気筒2サイクル機関を点火するように構成されている。図1は本発明の実施形態に係わる点火装置のハードウェアの構成を示したもので、同図において、1は一次コイル1a及び二次コイル1bを有する点火コイル、2は内燃機関により駆動される磁石発電機、3は内燃機関のクランク軸の回転角度位置(クランク角位置)が所定の位置に達したときにパルス信号を発生する信号発生器、4は電子式制御ユニット(ECU)、5はエンジンを停止させる際に操作されるモメンタリスイッチからなるストップスイッチである。
【0027】
磁石発電機2は、機関のクランク軸に取り付けられたフライホイール磁石回転子2Aと、エキサイタコイルExを含む発電コイルを電機子鉄心に巻回してなる固定子2Bとからなっている。エキサイタコイルExは機関の回転に同期して、図示の実線矢印方向の極性の正の半サイクルの電圧と、図示の波線矢印方向の極性の負の半波の電圧とからなる交流電圧を誘起する。
【0028】
信号発生器3は、フラホイール磁石回転子2Aのヨークを構成するフライホイールの外周に180°間隔で設けられたリラクタr1及びr2と、リラクタr1及びr2のそれぞれの回転方向の前端側エッジ及び後端側エッジを検出して極性が異なる第1のパルス信号及び第2のパルス信号を出力するパルサPSとからなっている。リラクタr1及びr2はそれぞれ機関の第1の気筒及び第2の気筒に対して設けられている。
【0029】
ECU4は、マイクロプロセッサ(MPU)4Aと、点火信号が与えられたときに点火コイルの一次電流に急激な変化を生じさせる一次電流制御回路4Bと、エキサイタコイルExの負の半波の電圧を制御用電源電圧として用いる一定の直流電圧に変換する制御用電源生成回路4Cと、信号発生器3の出力パルスを波形整形する波形整形回路4Dと、ストップスイッチ5の状態を検出するスイッチ状態検出回路4Eと、エキサイタコイルExの一端と制御用電源生成回路4Cとの間を接続するダイオードD3と、エキサイタコイルExの他端と接地間を接続するダイオードD4とを備えている。
【0030】
一次電流制御回路4Bは、点火コイル1の一次コイル1aに一端が接続され、他端がダイオードD1を通してエキサイタコイルExの一端に接続された点火用コンデンサC1と、アノードを接地側に向けてコンデンサC1の他端と接地間に接続された放電用スイッチとしてのサイリスタTh1と、コンデンサC1の一端と接地間にカソードを接地側に向けて接続されたダイオードD2とを備え、この一次電流制御回路と点火コイル1とにより、点火信号が与えられたときに点火用高電圧を発生する周知のコンデンサ放電式の点火回路CDIが構成されている。
【0031】
制御用電源生成回路4Cは、例えば、エキサイタコイルExの負の半波の出力電圧で充電される電源コンデンサと、該電源コンデンサの両端の電圧を一定に保つようにその充電を制御する回路からなっていて、電源コンデンサの両端に一定の直流電圧Vccを発生する。制御用電源生成回路4Cが出力する一定の直流電圧Vccは、マイクロプロセッサ4A、波形整形回路4D及びスイッチ状態検出回路4Eの電源端子に与えられている。
【0032】
波形整形回路4Dは、機関のクランク角位置が、機関のピストンの上死点に相応する位置(上死点位置という。)よりも十分に進角した位置に設定された基準クランク角位置及び上死点位置付近に設定された低速時点火位置でそれぞれパルサPSが出力する極性が異なる第1のパルスVp1及び第2のパルスVp2を波形整形してマイクロプロセッサ4Aが認識し得る信号に変換する回路からなっている。波形整形回路4Dにより波形整形された信号はマイクロプロセッサ4Aのポートに入力されている。
【0033】
本実施形態では、ストップスイッチ5が常開接点を有する押ボタンスイッチからなっていて、押ボタンを押している間だけオン状態になる。ストップスイッチ5は、機関を停止させる際に、機関が停止するまでの間オン状態を保つように(押ボタンを押し続けるように)操作される。スイッチ状態検出回路4Eは、例えば、ストップスイッチ5がオフ状態にあるときにMPUのポートにハイレベルの信号を与え、ストップスイッチ5がオン状態になったときにMPUのポートにローレベルの信号を与えるように構成される。本実施形態では、ストップスイッチ5のオフ状態及びオン状態をそれぞれ該ストップスイッチの第1の状態及び第2の状態とする。マイクロプロセッサ4Aは、微少時間ΔT(例えば8msec)の間隔でスイッチ状態検出回路4Eの検出結果を読み込んでストップスイッチ5の状態を検出する。
【0034】
2気筒2サイクル機関においては、クランク軸が1回転する間に各気筒が1回点火される。本実施形態では点火コイル1が同時発火コイルとなっていて、機関の第1及び第2の気筒にそれぞれ取り付けられた点火プラグPL1及びPL2の非接地側端子が点火コイル1の二次コイル1bの一端及び他端にそれぞれ接続されている。
【0035】
図1に示した点火装置において、機関のクランキングが行われると、磁石発電機2のエキサイタコイルExが交流電圧を出力する。この交流電圧の正の半波において、エキサイタコイルEx−ダイオードD1−点火用コンデンサC1−ダイオードD2及び点火コイルの一次コイル1a−ダイオードD4−エキサイタコイルExの回路に電流が流れ、点火用コンデンサC1が図示の極性に充電される。マイクロプロセッサ4Aは、信号発生器3から与えられるパルス信号の発生周期(機関のクランク軸が一定の角度回転するのに要した時間)から機関の回転速度を演算する。
【0036】
機関の回転速度が設定値以下のときには、信号発生器が第2のパルス信号Vp2を発生するクランク角位置(低速時点火位置)を点火位置とする。マイクロプロセッサ4Aは、信号発生器が第2のパルス信号Vp2を発生したときにサイリスタTh1のゲートに点火信号Viを与える。これによりサイリスタTh1がオン状態になるため、点火用コンデンサC1に蓄積された電荷がサイリスタTh1と点火コイルの一次コイルとを通して放電し、点火コイルの一次コイル1aに高い電圧が誘起する。この電圧は点火コイルの一次二次間の昇圧比により昇圧されるため、二次コイル1bに点火用高電圧が誘起する。この点火用高電圧は、点火プラグPL1及びPL2に印加されるため、これらの点火プラグに同時に火花放電が生じ、機関の2つの気筒のうち、点火タイミングにある方の気筒で点火が行われる。これにより機関の初爆が行われ、機関が始動する。
【0037】
機関の回転速度が設定値を超える領域では、マイクロプロセッサが演算した点火タイミングで機関が点火される。マイクロプロセッサは、演算した回転速度に対して、機関の各気筒の点火タイミングを演算する。点火タイミングは、各気筒で点火動作を行わせるクランク角位置(点火位置)の形で演算される。マイクロプロセッサは、演算した点火タイミングを検出するために、演算されている回転速度で、機関が基準クランク角位置から演算した点火位置まで回転するのに要する時間を点火タイミング検出用計時データとして演算し、信号発生器3が基準クランク角位置で第1のパルス信号Vp1を発生したときに演算した計時データを点火タイマにセットしてその計時データの計測を開始させる。マイクロプロセッサは、点火タイマが計時データの計測を完了したタイミングを点火タイミングとして、サイリスタTh1に点火信号Viを与えて点火動作を行わせる。
【0038】
本実施形態の点火装置においては、エキサイタコイルExが点火回路に直結されているため、機関を停止するためには、点火動作を停止させて機関を失火させる制御を行わせる必要がある。そのため、本発明においては、ストップスイッチ5を設けて、このストップスイッチがオン状態にされている間、サイリスタTh1に点火信号が与えられるのを禁止することにより機関を失火させて停止させるようにしている。
【0039】
マイクロプロセッサ4Aは、ROMに記憶された所定のプラグラムを実行することにより、前述した回転速度の演算や点火タイミングの演算を行う手段等を構成する他、機関を停止させるために必要な各種の手段を構成する。図2は、マイクロプロセッサにより構成される各種の手段を示したブロック図である。同図において、11は信号発生器3が出力するパルス信号の発生間隔から内燃機関ENGの回転速度を演算する回転速度演算手段、12は回転速度演算手段11が演算した回転速度に対して機関の点火タイミングを演算する点火タイミング演算手段、13は点火タイミング演算手段12が演算した点火タイミングを検出する点火タイミング検出手段である。前述のように、点火タイミングは点火動作を行わせるクランク角位置(点火位置)の形で演算される。点火位置の演算は、回転速度に対して点火位置演算用マップを検索することにより行われる。
【0040】
点火タイミング検出手段13は、機関が基準クランク角位置から演算された点火位置まで回転する間に点火タイマに計測させる計時データ(点火タイミング検出用計時データ)を演算する計時データ演算手段と、マイクロプロセッサ内に設けられたタイマからなる点火タイマと、基準クランク角位置でこの計時データを点火タイマにセットしてその計測を開始させる手段とにより構成され、点火タイマがセットされた計時データの計測を完了したタイミングを点火タイミングとして検出する。
【0041】
本実施形態では、機関を停止させるための制御を行わせるために、ストップスイッチ5の状態を判定するスイッチ状態判定手段14と、失火要求指令発生手段15と、点火許否手段16と、スイッチ状態判定結果確認手段17と、失火要求指令消滅制御手段18と、点火制御手段19とが設けられている。
【0042】
スイッチ状態判定手段14は、一定の時間間隔でストップスイッチ5の状態を検出して、ストップスイッチが第1の状態(オフ状態)にあることが連続して設定回数検出されたときにストップスイッチ5が第1の状態にあると判定し、ストップスイッチ5が第2の状態(オン状態)にあることが連続して設定回数検出されたときにストップスイッチ5が第2の状態にあると判定するように構成されている。
【0043】
失火要求指令発生手段15は、スイッチ状態判定手段14によりストップスイッチ5が第2の状態(オン状態)にあると判定されたときに失火要求指令を発生させるように構成され、点火許否手段16は、点火タイミング検出手段13により点火タイミングが検出された時に失火要求指令が発生しているか否かを判定して、失火要求指令が発生していないと判定しときに内燃機関の点火を許可し、失火要求指令が発生していると判定しときに内燃機関の点火を禁止するように構成される。
【0044】
スイッチ状態判定結果確認手段17は、点火許否手段16が内燃機関の点火を禁止した後にスイッチ状態判定手段14による判定結果を確認するように構成され、失火要求指令消滅制御手段18は、スイッチ状態判定結果確認手段17によりストップスイッチが第1の状態(オフ状態)にあることが確認されたときに失火要求指令を消滅させ、ストップスイッチ5が第2の状態(オン状態)にあることが確認されたときに失火要求指令の発生を維持するように構成される。また点火制御手段19は、点火許否手段16により内燃機関の点火が許可されているときにのみ各点火タイミングで点火回路CDIに点火動作を行わせるための処理を行う(点火回路に点火信号を与える)ように構成される。
【0045】
図2に示した手段のうち、スイッチ状態判定手段14及び失火要求指令発生手段15を構成するためにマイクロプロセッサに実行させる処理のアルゴリズムを示すフローチャートを図3に示し、点火許否手段16、スイッチ状態判定結果確認手段17及び失火要求指令消滅制御手段18を構成するためにマイクロプロセッサに実行させる処理のアルゴリズムを示すフローチャートを図4に示した。
【0046】
図3に示した処理は、マイクロプロセッサ4Aが微少時間ΔT(例えば8msec)の間隔でストップスイッチ5の状態を検出する毎に実行される。この処理においては、ステップS101において、今回検出されたストップスイッチ5の状態が前回の検出時と同じであるか否かを判定する。ステップS101において、ストップスイッチが前回と同じ状態にあると判定されたときにステップS102で検出回数カウンタの計数値をインクリメントし、続いてステップS103においてストップスイッチの状態の検出回数(検出回数カウンタの計数値)が設定回数n(例えば10回)以上であるか否かを判定する。
【0047】
この判定により、検出回数が設定回数以上であると判定されていない場合には、以後何もしないでこの処理を終了する。ステップS103において検出回数が設定回数以上であると判定された時にはステップS104に進んでストップスイッチ5の状態がオン状態にあるか否かを判定する。ステップS104においてストップスイッチがオン状態にあると判定されたときにはステップS105に進んでストップスイッチ状態フラグ#STOPSWを1にセットし、続いてステップS106で失火要求フラグ#IGSTOPを1にセットして(失火要求指令を発生させて)この処理を終了する。ステップS104においてストップスイッチ5がオフ状態にあると判定されたときには、ステップS107に進んでストップスイッチ状態フラグ#STOPSWを0にリセットしてこの処理を終了する。図3の処理のステップS101においてストップスイッチ5の状態が前回の状態と異なると判定されたときにはステップS108に進んで検出回数カウンタの計数値を0とし、ステップS109で現在のストップスイッチの状態を記憶した後この処理を終了する。
【0048】
図3の処理によりストップスイッチの状態を判定する場合には、ストップスイッチがオン状態にあることが連続して設定回数nだけ検出されたとき(ストップスイッチがオン状態であると検出される状態がΔT×n時間継続したとき)にストップスイッチがオン状態にあると判定され、ストップスイッチがオフ状態にあることが連続して設定回数nだけ検出されたとき(ストップスイッチがオフ状態であると検出される状態がΔT×n時間継続したとき)にストップスイッチがオフ状態にあると判定される。スイッチ状態の検出間隔ΔTを8msec、設定回数nを10回とした場合、上記ΔT×nは80msecとなる。チャタリングが生じたためにストップスイッチが前回の状態と同じ状態にないと判定されたときにはステップS108で検出回数カウンタの計数値をクリアするため、チャタリングの影響を受けることなく、ストップスイッチの状態を判定することができる。
【0049】
図4の処理は、点火タイミング検出手段13が点火タイミングを検出したときにマイクロプロセッサが実行する点火制御処理で、この処理においては先ずステップS201で、失火要求フラグ#IGSTOPが0であるか否かを判定する。この判定により、失火要求フラグ#IGSTOPが0である(失火要求指令が発生していない)と判定されたときには、ステップS202で点火回路に点火動作を行わせるための処理(点火回路に点火信号を与える処理)を行わせる。ステップS201で失火要求フラグ#IGSTOPが1であると判定されたとき(失火要求指令が発生していると判定されたとき)には、点火回路に点火信号を与えないことにより点火動作を停止させて機関を失火させ、ステップS203に進んでストップスイッチ状態フラグ#STOPSWが0であるか否かを判定する。その結果、ストップスイッチ状態フラグ#STOPSWが0でない(1である)と判定されたとき(ストップスイッチがオン状態にあると判定されたとき)には、失火要求フラグ#IGSTOPを1のままにして(失火要求指令を発生させたままで)この処理を終了する。ステップS203においてストップスイッチ状態フラグ#STOPSWが0であると判定されたとき(ストップスイッチ5がオフ状態にあると判定されたとき)には、次の点火タイミングで点火を行わせるためにステップS204で失火要求フラグ#IGSTOPを0として失火要求指令を消滅させ、この処理を終了する。
【0050】
図3及び図4に示したアルゴリズムによる場合には、図3の処理のステップS101ないしS105及びステップS107により、ストップスイッチ5の状態を判定するスイッチ状態判定手段14が構成され、図3の処理のステップS106により失火要求指令発生手段15が構成される。また図4のステップS201により点火許否手段16が構成され、ステップS203によりスイッチ状態判定結果確認手段17が構成される。更に図4の処理のステップS204により失火要求指令消滅制御手段18が構成され、ステップS202により点火制御手段19が構成される。
【0051】
本実施形態において、ストップスイッチ5が時刻t1でオン状態にされると、図7の左端に示したように、ストップスイッチ状態フラグ#STOPSWが1になり、失火要求フラグ#IGSTOPが1になる。失火要求フラグ#IGSTOPが1になることにより、図4のステップS202が実行されなくなり、点火回路に点火信号Viが与えられなくなるため、機関は失火する。ストップスイッチ5が操作された状態に保持され、該ストップスイッチがオン状態にあると判定されている間(#STOPSWが1である間)機関は失火され続ける。なお図7に示された一連の点火タイミングのうち、隣り合う点火タイミングは機関の異なる気筒の点火タイミングである。すなわち、機関の第1気筒の点火タイミングと第2気筒の点火タイミングとが交互に並んでいる。
【0052】
ここで、時刻t2においてストップスイッチにゆっくりとしたチャタリングが生じたとする。このとき、ストップスイッチがオフ状態になったと判定されるが、その直後の点火タイミングでは、最初失火要求フラグ#IGSTOPが1であるため、図4のステップS202は実行されず、機関は失火させられる。その後、ステップS203においてストップスイッチ状態フラグが未だ0であると判定されると、失火要求フラグ#IGSTOPが0になる。その後ストップスイッチの遅いチャタリングにより、時刻t3でストップスイッチがオン状態にあると判定される(#STOPSWが1になる)と、失火要求フラグ#IGSTOPが1になる。ストップスイッチが遅いチャタリングにより時刻t4で再びオフ状態にあると判定されても、失火要求フラグ#IGSTOPは0にならないため、次の点火タイミングでも機関は失火させられる。この点火タイミングでストップスイッチがオフ状態にあると判定されていると、失火要求フラグ#IGSTOPが0になるが、チャタリングの周期が機関の点火間隔よりも短ければ、次の点火タイミングよりも前の時刻t5でストップスイッチ状態フラグ#STOPSW及び失火要求フラグ#IGSTOPが1になり、次の点火タイミングでも機関が失火する。
【0053】
図4に示したアルゴリズムによった場合には、ユーザがストップスイッチを操作し続けている過程で、ストップスイッチに機関の点火間隔よりも長い周期のチャタリングが生じると、機関を失火させ続けることができない事態が生じるおそれがある。ストップスイッチに機関の点火間隔よりも長い周期のチャタリングが生じた場合にも機関を確実に失火させ続けるようにするためには、ストップスイッチが一旦オン状態になったと判定された後オフ状態になったと判定されたときに、2回以上機関を失火させて、それでもストップスイッチがオフ状態にあると判定されたときに機関の点火を回復させるようにすればよい。
【0054】
ストップスイッチが一旦オン状態になったと判定された後にオフ状態になったと判定されたときに、2回以上機関を失火させるようにする場合の点火制御処理のアルゴリズムの一例を示すフローチャートを図5に示した。このアルゴリズムによる場合には、ステップS301において、失火要求フラグ#IGSTOPが0であるか否かを判定する。その結果失火要求フラグが0である場合には、ステップS302に進んで点火回路に点火信号を与えて点火動作を行わせる。ステップS301で失火要求フラグ#IGSTOPが0でない(1である)と判定されたときには、点火回路に点火信号を与えることなく、ステップS303に進んで失火回数カウンタの計数値をインクリメントし、ステップS304でストップスイッチ状態フラグ#STOPSWが0であるか否かを判定する。その結果、ストップスイッチ状態フラグ#STOPSWが0でない(1である)と判定されたときには、ステップS305に進んで失火回数カウンタの計数値を0としてこの処理を終了する。ステップS304でストップスイッチ状態フラグ#STOPSWが0であると判定されたときには、ステップS306に進んで失火回数カウンタの計数値が設定値以上であるか否かを判定する。その結果、失火回数カウンタの計数値が設定値以上でない場合には、以後何もしないでこの処理を終了する。ステップS306で失火回数カウンタの計数値が設定値以上であると判定されたときには、ステップS307に進んで、次の点火タイミングでの点火を可能にするために失火要求フラグ#IGSTOPを0とし、ステップS308で失火回数カウンタの計数値を0とした後、この処理を終了する。
【0055】
図5のアルゴリズムによる場合には、ステップS301により点火許否手段16が構成され、ステップS304によりスイッチ状態判定結果確認手段17が構成される。更に図5の処理のステップS303,S305,S306,S307及びS308により失火要求指令消滅制御手段18が構成され、ステップS302により点火制御手段19が構成される。
【0056】
上記の実施形態では、点火回路としてコンデンサ放電式の回路を用いたが、電流遮断形の点火回路を用いる場合にも本発明を適用することができる。点火回路としてコンデンサ放電式の回路を用いた上記の実施例においては、点火タイミングにおいて図4または図5の点火制御処理を行って、点火回路に点火信号を与えるか与えないかの制御を行うことにより、機関を点火したり失火させたりするようにしたが、電流遮断形の点火回路を用いる場合には、点火コイルへの一次電流の通電を開始するタイミングで、上記点火制御処理と同様の処理を行うようにすればよい。
【0057】
例えば一次電流の通電開始タイミングで、図4に示し点火制御処理を行わせて、ステップS201で失火要求指令フラグ#IGSTOPが0であると判定されたときに、ステップS202で一次電流の通電を開始させ、その後の点火タイミングで一次電流を遮断して点火動作を行わせる。またステップS201で失火要求フラグ#IGSTOPが0でないと判定されたときには、一次電流の通電を開始することなく(点火動作を行わせることなく)、ステップS203に移行してストップスイッチ状態フラグ#STOPSWが0であるか否かを判定し、ストップスイッチ状態フラグ#STOPSWが0である場合には、ステップS204で失火要求フラグ#IGSTOPを0とする。
【0058】
上記の実施形態では、機関の運転を許容する際のストップスイッチの状態(第1の状態)をオフ状態とし、機関を停止することを指令する際のストップスイッチの状態(第2の状態)をオン状態としたが、ストップスイッチの第1の状態をオン状態とし、第2の状態をオフ状態としてもよいのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施形態に係わる点火装置のハードウェアの構成を示した回路図である。
【図2】本実施形態においてマイクロプロセッサにより構成される各種の手段を含む点火装置の構成を示したブロック図である。
【図3】本実施形態において、ストップスイッチの状態を判定する処理のアルゴリズムの一例を示したフローチャートである。
【図4】本実施形態において、マイクロプロセッサに実行させる点火制御処理のアルゴリズムの一例を示したフローチャートである。
【図5】本実施形態において、マイクロプロセッサに実行させる点火制御処理のアルゴリズムの他の例を示したフローチャートである。
【図6】従来の点火装置の機関停止時の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図7】本発明の実施形態における機関停止時の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図8】チャタリングの影響を受けることなくストップスイッチの状態を判定する処理のアルゴリズムの一案を示したフローチャートである。
【図9】従来技術において点火タイミングで行われていた点火制御処理のアルゴリズムを示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0060】
1 点火コイル
2 フライホイール磁石発電機
3 信号発生器
4 ECU
4A マイクロプロセッサ
4B 一次電流制御回路
CDI コンデンサ放電式点火回路
11 回転速度演算手段
12 点火タイミング演算手段
13 点火タイミング検出手段
14 スイッチ状態判定手段
15 失火要求指令発生手段
16 点火許否手段
17 スイッチ状態判定結果確認手段
18 失火要求指令消滅制御手段
19 点火制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関を点火する動作(点火動作)を行う点火回路と、前記内燃機関の点火タイミングを演算する点火タイミング演算手段と、前記点火タイミング演算手段により演算された点火タイミングを検出する点火タイミング検出手段と、操作前は第1の状態にあり、操作されたときに第2の状態になるモーメンタリスイッチからなっていて前記内燃機関を停止させる際に操作されるストップスイッチと、前記ストップスイッチの状態を判定するスイッチ状態判定手段と、前記スイッチ状態判定手段による判定結果に応じて前記点火タイミングで前記点火回路に点火動作を行わせるための処理を行う点火制御手段とを備えた内燃機関用点火装置において、
前記スイッチ状態判定手段により前記ストップスイッチが前記第1の状態にあると判定されている状態が継続しているときに前記内燃機関の点火を許可し、前記ストップスイッチが第2の状態にあると判定されたときには前記内燃機関の点火を禁止し、前記スイッチ状態判定手段により前記ストップスイッチが第2の状態にあると判定された後に第1の状態にあると判定されたときには、該ストップスイッチが第1の状態にあると判定されていても前記内燃機関の点火を少なくとも1回禁止して、少なくとも1回点火を禁止した後になお前記ストップスイッチが第1の状態にあると判定されたときに前記内燃機関の点火を許可する点火許否手段を備え、
前記点火制御手段は、前記点火許否手段により点火が許可されているときにのみ前記点火回路に点火動作を行わせるための処理を行うように構成されていること、
を特徴とする内燃機関用点火装置。
【請求項2】
内燃機関を点火する動作(点火動作)を行う点火回路と、前記内燃機関の点火タイミングを演算する点火タイミング演算手段と、前記点火タイミング演算手段により演算された点火タイミングを検出する点火タイミング検出手段と、操作前は第1の状態にあり、操作されたときに第2の状態になるモーメンタリスイッチからなっていて前記内燃機関を停止させる際に操作されるストップスイッチと、前記ストップスイッチの状態を判定するスイッチ状態判定手段と、前記スイッチ状態判定手段による判定結果に応じて前記点火タイミングで前記点火回路に点火動作を行わせるための処理を行う点火制御手段とを備えた内燃機関用点火装置において、
前記スイッチ状態判定手段により前記ストップスイッチが第2の状態にあると判定されたときに失火要求指令を発生させる失火要求指令発生手段と、
前記点火タイミング検出手段により前記点火タイミングが検出された時に前記失火要求指令が発生しているか否かを判定して、失火要求指令が発生していないと判定しときに前記内燃機関の点火を許可し、前記失火要求指令が発生していると判定しときに前記内燃機関の点火を禁止する点火許否手段と、
前記点火許否手段が前記内燃機関の点火を禁止した後に前記スイッチ状態判定手段による判定結果を確認するスイッチ状態判定結果確認手段と、
前記スイッチ状態判定結果確認手段により前記ストップスイッチが第1の状態にあることが確認されたときに前記失火要求指令を消滅させ、前記ストップスイッチが第2の状態にあることが確認されたときには前記失火要求指令の発生を維持する失火要求指令消滅制御手段とを備え、
前記点火制御手段は、前記点火許否手段により点火が許可されているときにのみ前記点火回路に点火動作を行わせるための処理を行うように構成されていること、
を特徴とする内燃機関用点火装置。
【請求項3】
前記スイッチ状態判定手段は、一定の時間間隔で前記ストップスイッチの状態を検出して、前記ストップスイッチが第1の状態にあること、または第2の状態にあることが設定回数検出されたときにそれぞれ前記ストップスイッチが第1の状態または第2の状態にあると判定するように構成されていること、
を特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関用点火装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−75540(P2008−75540A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−255566(P2006−255566)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(000001340)国産電機株式会社 (191)
【Fターム(参考)】