説明

内視鏡の処置具挿通チャンネル洗浄用栓体

【課題】リーク孔から噴出する洗浄液が周囲に飛び散らず、しかもリーク孔周辺に付着した汚れの洗浄も容易な内視鏡の処置具挿通チャンネル洗浄用栓体を提供すること。
【解決手段】処置具挿入口部7に着脱自在な筒状部21から延出する連結帯部26と、天井壁部24に貫通形成されたリーク孔25の開口部を外側から覆うために連結帯部26の他端側に形成された蓋状部27とを、弾力性のある部材により筒状部21と一体に形成すると共に、連結帯部26を弾性変形させて蓋状部27がリーク孔25の開口部を外側から覆う状態を固定及び固定解除することができる蓋状部固定手段30,23Bを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は内視鏡の処置具挿通チャンネル洗浄用栓体に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡は一回使用する度に洗浄消毒され、その際に、内視鏡内に配置された処置具挿通チャンネル内も通水洗浄される。そのような処置具挿通チャンネルに連通して開口する処置具挿入口部には通常は鉗子栓が取り付けられているが、内視鏡が洗浄消毒される際には、鉗子栓は単体で洗浄消毒するために取り外され、それに代えて弾力性のある部材からなる洗浄用栓体が処置具挿入口部に嵌め込み係合される(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平8−308797
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載された洗浄用栓体には、処置具挿入口内の圧力が増大した時に洗浄用栓体が処置具挿入口部から外れるのを防止するようリーク孔が形成されていて、洗浄液をリーク孔から外方に噴出させて圧力を逃がすようにしている。
【0004】
しかし、リーク孔から洗浄液が噴出すると、洗浄液が周囲の広い範囲に飛び散ってしまう恐れがある。そこで、リーク孔から噴出した洗浄液がぶつかる鍔等を設けることが考えられるが、単純にそのように構成すると、今度はリーク孔の出口と鍔等との間の隙間部分に付着した汚れを洗浄するのが困難になってしまう恐れがある。
【0005】
そこで本発明は、リーク孔から噴出する洗浄液が周囲に飛び散らず、しかもリーク孔周辺に付着した汚れの洗浄も容易な内視鏡の処置具挿通チャンネル洗浄用栓体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の内視鏡の処置具挿通チャンネル洗浄用栓体は、内視鏡内に配置された吸引チャンネル兼用の処置具挿通チャンネル内を通水洗浄する際に、処置具挿通チャンネルに連通して開口する処置具挿入口部に着脱自在に取り付けられる内視鏡の処置具挿通チャンネル洗浄用栓体であって、弾性変形させて処置具挿入口部に嵌め込み係合される筒状部と、筒状部が処置具挿入口部に係合した状態のときに処置具挿入口に面するように筒状部の外端部を塞ぐ状態に形成された天井壁部とが、弾力性のある部材により一体に形成されて、天井壁部にリーク孔が貫通形成されたものにおいて、筒状部から延出する連結帯部と、リーク孔の開口部を外側から覆うために連結帯部の他端側に形成された蓋状部とを、弾力性のある部材により筒状部と一体に形成すると共に、連結帯部を弾性変形させて蓋状部がリーク孔の開口部を外側から覆う状態を固定及び固定解除することができる蓋状部固定手段を設けたものである。
【0007】
なお、蓋状部固定手段が、筒状部付近と蓋状部付近とに各々形成されたリング通し孔にまたがって取り外し可能に通される連結リングであってもよく、或いは、蓋状部固定手段が、蓋状部から連結帯部と反対側に延出する延長帯部の先端に蓋状部等と一体に形成されて処置具挿入口部の基部に係脱可能に係合する環状部であってもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、処置具挿入口部に着脱自在な筒状部から延出する連結帯部と、天井壁部に貫通形成されたリーク孔の開口部を外側から覆うために連結帯部の他端側に形成された蓋状部とを、弾力性のある部材により筒状部と一体に形成すると共に、連結帯部を弾性変形させて蓋状部がリーク孔の開口部を外側から覆う状態を固定及び固定解除することができる蓋状部固定手段を設けたことにより、蓋状部がリーク孔の開口部を外側から覆う状態を固定してリーク孔から噴出する洗浄液が周囲に飛び散らないようにすることができると共に、蓋状部がリーク孔の開口部を外側から覆う状態を解除してリーク孔周辺に付着した汚れを容易に洗浄することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
内視鏡内に配置された吸引チャンネル兼用の処置具挿通チャンネル内を通水洗浄する際に、処置具挿通チャンネルに連通して開口する処置具挿入口部に着脱自在に取り付けられる内視鏡の処置具挿通チャンネル洗浄用栓体であって、弾性変形させて処置具挿入口部に嵌め込み係合される筒状部と、筒状部が処置具挿入口部に係合した状態のときに処置具挿入口に面するように筒状部の外端部を塞ぐ状態に形成された天井壁部とが、弾力性のある部材により一体に形成されて、天井壁部にリーク孔が貫通形成されたものにおいて、筒状部から延出する連結帯部と、リーク孔の開口部を外側から覆うために連結帯部の他端側に形成された蓋状部とを、弾力性のある部材により筒状部と一体に形成すると共に、連結帯部を弾性変形させて蓋状部がリーク孔の開口部を外側から覆う状態を固定及び固定解除することができる蓋状部固定手段を設ける。
【実施例】
【0010】
図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図5において、1は内視鏡の操作部であり、その下端部に挿入部2の基端が連結されている。操作部1から後方に延出する連結可撓管3の先端には、図示されていない光源装置に接続されるコネクタ部4が取り付けられている。
【0011】
挿入部2内には、可撓性チューブからなる処置具挿通チャンネル5が全長にわたって挿通配置されている。処置具挿通チャンネル5は吸引チャンネルを兼用しており、挿入部2の先端に開口形成された吸引口6に連通接続されている。
【0012】
挿入部2との境界部に近い操作部1の下端部付近には、図示されていない処置具類を処置具挿通チャンネル5内に挿入する際の入口である処置具挿入口金7(処置具挿入口部)が、処置具挿入口8を斜め上方に向けて開口させた状態に突設されている。
【0013】
また、操作部1の下端付近において、吸引接続管9が処置具挿通チャンネル5から分岐接続されていて、その吸引接続管9の他端側は、操作部1の上半部に配置された吸引操作弁10に接続されている。
【0014】
そして、連結可撓管3内に挿通配置された吸引チューブ11の一端が操作部1内で吸引操作弁10に接続され、他端側は、図示されていない外部吸引装置と接続するためにコネクタ部4に配置された吸引口金12に接続されている。
【0015】
処置具挿入口金7には、通常はいわゆる鉗子栓(図示せず)が取り付けられているが、内視鏡使用後の洗浄消毒時には、処置具挿入口金7から鉗子栓が取り外され、それに代えて、処置具挿入口8を塞ぐための洗浄用栓体20が処置具挿入口金7に取り付けられる。
【0016】
そして、例えば図示されていない洗浄液注入器等を吸引口金12に接続して吸引口金12から吸引チューブ11に洗浄液を注入することにより、吸引チューブ11、吸引接続管9及び処置具挿通チャンネル5内の全経路を通水洗浄することができる。
【0017】
図1は、処置具挿入口金7に本発明の第1の実施例の洗浄用栓体20が取り付けられた状態の側面断面図、図2と図3は連結リング30が外された状態の洗浄用栓体20単体の側面断面図と平面図であり、洗浄用栓体20は、連結リング30(蓋状部固定手段)を除く全ての部分が、ゴム材等のような弾力性のある部材によって一体に形成されている。
【0018】
処置具挿入口金7を囲む状態になる略円筒状の筒状部21の内面部には、弾性変形させることで、処置具挿入口金7に形成された円周溝7aに着脱自在に嵌め込み係合される係合突起部23が内方に向けて突出形成されている。
【0019】
係合突起部23は、図1に示されるように処置具挿入口金7の円周溝7aに係合した状態では、処置具挿入口金7の円周溝7aの外周面を弾力的に締め付けてシールした状態になり、それによって洗浄用栓体20が処置具挿入口金7に固定された状態になる。なお、図1には係合突起部23が弾性変形していない状態の形状が図示されている。
【0020】
筒状部21の上端部は、洗浄用栓体20が処置具挿入口金7に取り付けられた状態の時に処置具挿入口8に面する天井壁部24になっていて、その中央位置にリーク孔25が天井壁部24の内外を連通させる状態に処置具挿入口8の軸線方向に真っ直ぐに貫通形成されている。リーク孔25は、処置具挿入口8内の圧力が増大した時に洗浄液等を外方に噴出させて圧力を逃がす作用をする。
【0021】
また、筒状部21の外面から側方に延出する連結帯部26の先端に形成された蓋状部27が、連結帯部26を中間部分で折り返された状態に弾性変形させることにより、天井壁部24との間に若干の隙間をあけてリーク孔25の外面を覆う状態になる。
【0022】
そして、筒状部21の外面から連結帯部26と逆方向に小さく突出する舌状部21Aと蓋状部27側とに形成された二つのリング通し孔28,29にまたがって金属製の連結リング30を通すことにより、蓋状部27がリーク孔25の開口部を覆う状態を図1に示されるように固定することができる。
【0023】
連結リング30はバネ性のある金属材等により略C字状に形成されていて、弾性変形させることにより通し孔28,29に係脱させることができ、図4に示されるように、洗浄消毒時に吸引操作弁10とその隣の送気送水操作弁部分に取り付けられる着脱蓋40を鎖41等で連結するのに連結リング30を利用してもよい。
【0024】
内視鏡の洗浄消毒時に吸引口金12から洗浄液が注入されると、洗浄液の一部は処置具挿入口8内の圧力を上昇させてリーク孔25から噴出する。しかし、リーク孔25の開口が外側から蓋状部27で覆われているので、リーク孔25から噴出した洗浄液は蓋状部27にぶつかって勢いが弱まり、側方に流れ落ちて周辺に飛び散らない。なお、蓋状部27がリーク孔25とある程度隙間をあけて配置されているので、蓋状部27が洗浄液の噴出速度を速めるような作用は生じない。
【0025】
そして、処置具挿通チャンネル5内の通水洗浄が終わって、洗浄用栓体20を処置具挿入口金7から取り外したら、連結リング30を弾性変形させて通し孔28,29から抜き出し、図2及び図3等に示されるように洗浄用栓体20を展開した状態にすることにより、洗浄用栓体20自体もよく洗浄して、蓋状部27の周辺や蓋状部27等に付着した汚れも容易かつ確実に洗い流すことができる。
【0026】
図6は、処置具挿入口金7に本発明の第2の実施例の洗浄用栓体20が取り付けられた状態の側面断面図、図7と図8は連結リング30が外された状態の洗浄用栓体20単体の側面断面図と平面図である。
【0027】
この実施例では、蓋状部27がリーク孔25の開口部を外側から覆う状態を固定及び固定解除することができる蓋状部固定手段として、第1の実施例の連結リング30に代えて、蓋状部27から連結帯部26と反対側に延出する延長帯部26Bの先端に、処置具挿入口金7の基部の円周溝7bに係脱可能に係合する円環状の環状部23Bが、弾力性のある部材により蓋状部27等と一体成形して設けられている。
【0028】
その他の構成は前述の第1の実施例と同様であり、この実施例の場合には、環状部23Bが処置具挿入口金7の基部の円周溝7bに係止されることにより蓋状部27がリーク孔25の開口部を外側から覆う状態に固定される。
【0029】
そして、図9に示されるように、筒状部21を処置具挿入口金7から外しても、洗浄用栓体20が環状部23Bによって処置具挿入口金7に連結された状態になり、洗浄用栓体20を紛失する恐れがない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1の実施例の内視鏡の処置具挿通チャンネル洗浄用栓体が処置具挿入口金に取り付けられた状態の側面断面図である。
【図2】本発明の第1の実施例の内視鏡の処置具挿通チャンネル洗浄用栓体の単体の側面断面図である。
【図3】本発明の第1の実施例の内視鏡の処置具挿通チャンネル洗浄用栓体の単体の平面図である。
【図4】本発明の第1の実施例の内視鏡の処置具挿通チャンネル洗浄用栓体が着脱蓋と鎖で連結された状態の斜視図である。
【図5】本発明の実施例の内視鏡の配管図である。
【図6】本発明の第2の実施例の内視鏡の処置具挿通チャンネル洗浄用栓体が処置具挿入口金に取り付けられた状態の側面断面図である。
【図7】本発明の第2の実施例の内視鏡の処置具挿通チャンネル洗浄用栓体の単体の側面断面図である。
【図8】本発明の第2の実施例の内視鏡の処置具挿通チャンネル洗浄用栓体の単体の平面図である。
【図9】本発明の第2の実施例の内視鏡の処置具挿通チャンネル洗浄用栓体が処置具挿入口金から部分的に取り外された状態の側面断面図である。
【符号の説明】
【0031】
5 処置具挿通チャンネル
7 処置具挿入口金(処置具挿入口部)
8 処置具挿入口
20 洗浄用栓体
21 筒状部
23B 環状部(蓋状部固定手段)
24 天井壁部
25 リーク孔
26 連結帯部
26B 延長帯部
27 蓋状部
30 連結リング(蓋状部固定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡内に配置された吸引チャンネル兼用の処置具挿通チャンネル内を通水洗浄する際に、上記処置具挿通チャンネルに連通して開口する処置具挿入口部に着脱自在に取り付けられる内視鏡の処置具挿通チャンネル洗浄用栓体であって、
弾性変形させて上記処置具挿入口部に嵌め込み係合される筒状部と、上記筒状部が上記処置具挿入口部に係合した状態のときに上記処置具挿入口に面するように上記筒状部の外端部を塞ぐ状態に形成された天井壁部とが、弾力性のある部材により一体に形成されて、上記天井壁部にリーク孔が貫通形成されたものにおいて、
上記筒状部から延出する連結帯部と、上記リーク孔の開口部を外側から覆うために上記連結帯部の他端側に形成された蓋状部とを、上記弾力性のある部材により上記筒状部と一体に形成すると共に、上記連結帯部を弾性変形させて上記蓋状部が上記リーク孔の開口部を外側から覆う状態を固定及び固定解除することができる蓋状部固定手段を設けたことを特徴とする内視鏡の処置具挿通チャンネル洗浄用栓体。
【請求項2】
上記蓋状部固定手段が、上記筒状部付近と上記蓋状部付近とに各々形成されたリング通し孔にまたがって取り外し可能に通される連結リングである請求項1記載の内視鏡の処置具挿通チャンネル洗浄用栓体。
【請求項3】
上記蓋状部固定手段が、上記蓋状部から上記連結帯部と反対側に延出する延長帯部の先端に上記蓋状部等と一体に形成されて上記処置具挿入口部の基部に係脱可能に係合する環状部である請求項1記載の内視鏡の処置具挿通チャンネル洗浄用栓体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−29456(P2008−29456A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−204247(P2006−204247)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】