説明

内視鏡撮像ユニット

【課題】簡易な工程により防塵性能を向上させた内視鏡撮像ユニットを提供する。
【解決手段】内視鏡撮像ユニット10の積層体24には、撥水撥油性膜40、微細凹凸膜48、および帯電防止層50が含まれる。撥水撥油性膜40により、水や油がYAGレーザカットフィルタ18の光入射面18Sに付着することが抑制され、さらに、微細凹凸膜48によって表面40Sに微細な凹凸が形成されているため、塵埃粒子の表面40Sへの付着を防止できる。さらに帯電防止層50により、表面40Sにおける表面抵抗が低減されているため、塵埃粒子の付着はより確実に防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡撮像ユニットに関し、特に、撮像素子とフィルタを含む内視鏡撮像ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
電子内視鏡装置においては、生体内の観察のみならず、レーザ光による患部の治療が可能であるものが知られている。このような内視鏡装置においては、レーザ光が被検体で反射して撮像素子に入射することによる画像の劣化を防止すべく、撮像素子の前面にレーザカットフィルタが設けられている(例えば特許文献1)。
【0003】
一方、内視鏡装置のスコープの先端には対物レンズが設けられている。そして、スコープの先端部に誤って加えられた衝撃等により対物レンズが破損すると、対物レンズを交換する必要がある。対物レンズを交換する場合等において、混入する塵埃による悪影響を防止するために、撮像素子を含むユニット、もしくは対物レンズ等を含むユニットをそれぞれ密閉構造にすることが考えられている(例えば特許文献2および3)。
【特許文献1】特開2001−314367号公報
【特許文献2】特開平10−295637号公報
【特許文献3】特開2000−75218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーザカットフィルタは、通常、誘電体膜を含んでおり、静電作用により塵埃が付着し易い。そして、微細な塵埃がレーザカットフィルタの表面に付着すると、フィルタ機能の低下、生成画像の画質低下を招いてしまうおそれがある。
【0005】
そこで、スコープの先端部において、撮像素子とレーザカットフィルタ等を、密閉されたユニット内に設けておくことが考えられる。しかしながら、この場合、スコープの内部構造が複雑化し、簡易な工程で製造することはできず、さらに既存のフィルタ等をユニット化して防塵性能を高めることは困難である。また、密閉されたユニット内に含まれる一部の部品のみの検査や交換はできないため、内視鏡装置の操作性が低下してしまう。
【0006】
そこで本発明は、簡易な工程により防塵性能を向上させた内視鏡撮像ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の内視鏡撮像ユニットは、撮像素子と、レーザ光の撮像素子への入射を遮断するレーザカットフィルタと、レーザ光が入射するレーザカットフィルタの光入射面を覆う撥水撥油性膜とを備えることを特徴とする。
【0008】
撥水撥油性膜は、撥水撥油性膜を含む積層体の最も外側に設けられていることが好ましい。撥水撥油性膜は、例えばフッ素含有有機ポリマーを含む。撥水撥油性膜の物理膜厚は、0.4〜100nmであることが好ましい。
【0009】
内視鏡撮像ユニットは、光入射面を覆う帯電防止層をさらに有することが好ましい。この場合、帯電防止層が、レーザカットフィルタ内に配置されていることがより好ましい。また、帯電防止層は、無機膜で形成されていることが好ましい。内視鏡撮像ユニットは、帯電防止層に蓄積される電荷を放電するためのアース部材をさらに有することが好ましい。
【0010】
内視鏡撮像ユニットは、撥水撥油性膜の表面に凹凸を形成するための凹凸膜をさらに有することが好ましい。この場合、凹凸膜は、レーザカットフィルタと撥水撥油性膜との間に設けられていることが好ましい。凹凸膜は、例えば、酸化ケイ素、アルミナ、アルミニウム水酸化物、亜鉛酸化物、および亜鉛水酸化物の少なくともいずれかを含む。そして凹凸膜は、酸化ケイ素により形成されていることが好ましい。
【0011】
内視鏡撮像ユニットは、撮像素子に入射する光を透過もしくは反射する光学フィルタをさらに有することが好ましい。光学フィルタは、例えば、視感度補正フィルタ、光学ローパスフィルタ、および赤外カットフィルタの少なくともいずれかを含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡易な工程により防塵性能を向上させた内視鏡撮像ユニットを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態における内視鏡撮像ユニットが設けられたスコープの先端部を示す断面図である。
【0014】
本実施形態の内視鏡撮像ユニット10は、電子内視鏡装置(図示せず)のスコープ20の先端に設けられている。内視鏡撮像ユニット10は、CCD12(撮像素子)を有する。電子内視鏡装置のプロセッサに設けられた光源(いずれも図示せず)から出射された照明光が、スコープ20の先端面20Sから、被写体である体腔内に向けて出射される。
【0015】
被写体にて反射された照明光は、カバーガラス14、対物レンズ群16等を介してCCD12の撮像面12Sに到達する。この結果、CCD12では、受光した照明光により被写体を示す画像信号が生成される。画像信号は、画像信号ケーブル22を介してプロセッサに送られる。そしてプロセッサにおける画像信号の処理により、被写体像が生成される。
【0016】
プロセッサには、YAGレーザを有するレーザ光源(図示せず)が設けられている。レーザ光源から出射されたレーザ光は、スコープ20の先端面20Sから被検者の患部に照射され、患部の治療に用いられる。このレーザ光が反射してCCD12の撮像面12Sに入射することを防止するため、内視鏡撮像ユニット10においてYAGレーザカットフィルタ18(レーザカットフィルタ)が設けられている。YAGレーザカットフィルタ18によってレーザ光が遮断されるため、レーザ光が照射された患部の被写体像の画質は、良好に保たれる。
【0017】
また、内視鏡撮像ユニット10においては、YAGレーザカットフィルタ18の光入射面18Sを覆う積層体24が設けられている。積層体24は、後述するように、YAGレーザカットフィルタ18の表面、特にレーザ光等が入射する光入射面18Sに塵埃が付着することを防止し、かつ付着した場合には塵埃を除去し易くするために設けられている。
【0018】
内視鏡撮像ユニット10は、画像信号ケーブル22と積層体24とを連結するアース線(アース部材)32を含む。アース線32は、積層体24に含まれる帯電防止層(図示せず)において蓄積される電荷、すなわち静電気を、画像信号ケーブル22を介してプロセッサ側に放電するために設けられている。
【0019】
また、内視鏡撮像ユニット10には、CCD12の撮像面12Sの前面側に、視感度補正フィルタ26、および赤外カットガラス28(いずれも光学フィルタ)が設けられている。CCD12に入射する光を選択的に透過、もしくは反射するこれらの光学フィルタは、必要に応じて設けられる。
【0020】
なお、内視鏡撮像ユニット10は、保持筒34により保持されており、保持筒34の内部に充填された封止剤36によって位置ずれが防止されている。また、図1および以下の図面では、積層体24などの内視鏡撮像ユニット10を構成する部材は、説明の便宜上、厚さ方向、すなわちCCD12の撮像面12Sに垂直な方向に拡大して示されている。
【0021】
図2は、本実施形態における内視鏡撮像ユニット10を拡大して示す断面図である。
【0022】
内視鏡撮像ユニット10の最も外側の表面、すなわちCCD12とは反対側の表面には、撥水撥油性膜40が設けられている。撥水撥油性膜40は、水や油がその表面40Sに付着することを抑制する。この結果、以下のように、塵埃粒子の表面40Sへの付着を防止することができる。
【0023】
YAGレーザカットフィルタ18の光入射面18Sと球形の塵埃粒子との間で、以下の式(1)で表される液架橋力F1が働く場合、塵埃粒子は光入射面18Sに付着し易い。
1=−2πγD・・・(1)(γは液体の表面張力であり、Dは塵埃粒子の粒径である)
このように液架橋力Fは、光入射面18Sと塵埃粒子との接触部に液体が凝集した場合の液架橋により生じる力である。よって、撥水撥油性膜40で光入射面18Sを覆い、撥水撥油性膜40の表面40Sへの水や油の付着を抑制すると、液架橋力F1による塵埃粒子の付着を低減できる。
【0024】
撥水撥油性膜40は、例えば、フッ素を含有する有機ケイ素ポリマー、フッ素を含有する有機、又は無機化合物、有機−無機ハイブリッドポリマー、フッ化ピッチ(例えばCFn(n:1.1〜1.6))、フッ化グラファイト等で形成される。これらのフッ素化合物の少なくともいずれかを含む撥水撥油性膜40は、撥水、および撥油性能に優れるからである。
【0025】
有機ケイ素ポリマーの例としては、フルオロカーボン基を有するフッ素含有シラン化合物を加水分解して得られるポリマーが挙げられる。フッ素含有シラン化合物としては、CF(CF) a(CH)SiRbXc・・・(2)(ただしRはアルキル基であり、Xはアルコキシ基又はハロゲン原子であり、aは0〜7の整数であり、bは0〜2の整数であり、cは1〜3の整数であり、かつb + c = 3である)により表される化合物が挙げられる。
【0026】
式(2)により表される化合物の具体例として、CF(CH)Si(OCH)、CF(CH)SiCl、CF(CF)(CH)Si(OCH)、CF(CF)(CH)SiCl、CF(CF)(CH)Si(OCH)、CF(CF)(CH)SiCl、CF(CF)(CH)SiCH(OCH) 、CF(CF)(CH)SiCHCl等が挙げられる。有機ケイ素ポリマーとして市販品を用いてもよく、例えばXC98-B2472(GE東芝シリコーン株式会社製)等が使用可能である。
【0027】
フッ素含有有機化合物としては、例えばフッ素樹脂が挙げられる。フッ素樹脂としては、フッ素含有オレフィン系化合物の重合体、並びにフッ素含有オレフィン系化合物およびこれと共重合可能な単量体からなる共重合体が挙げられる。そのような(共)重合体として、ポリテトラフルオロエチレン、テトラエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエ−テル共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリフッ化ビニル等が挙げられる。フッ素樹脂として市販のフッ素含有組成物を重合させたものを使用してもよい。市販のフッ素含有組成物としては、例えば、オプスター(ジェイエスアール株式会社製)、サイトップ(登録商標・旭硝子株式会社製)等が挙げられる。
【0028】
フッ素含有無機化合物としては、例えば、LiF、MgF、CaF、AlF、BaF、YF、LaFおよびCaFなどが挙げられる。これらのフッ素含有無機化合物は、例えばキャノンオプトロン株式会社から入手できる。
【0029】
フッ素を含有する有機−無機ハイブリッドポリマーの例としては、フルオロ脂肪族基含有不飽和エステル単量体および不飽和シラン単量体の共重合体、フルオロカーボン基を有する有機ケイ素ポリマーが挙げられる。
【0030】
撥水撥油性膜40の物理膜厚は0.4〜100nmであることが好ましく、10〜80nmであることがより好ましい。撥水撥油性膜40の物理膜厚が0.4〜100nmの範囲内であれば、防塵性を保ちつつ、必要な光を十分に透過させることができる。これに対し、撥水撥油性膜40の物理膜厚が、0.4nm未満であると撥水撥油性が不十分となり、100nmを超えると、光透過性が不足するおそれがあるとともに、撥水撥油性膜40表面40Sにおける、後述の表面抵抗が大きくなって防塵性能が低下する可能性がある。
【0031】
撥水撥油性膜40は、フッ素含有無機化合物を材料とする場合、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法、熱CVD、プラズマCVD等の化学蒸着法等により形成される。また、フッ素含有有機化合物およびフッ素を含有する有機−無機ハイブリッドポリマーを材料とする場合は、ディップコート法、スピンコート法、スプレー法、ロールコート法、スクリーン印刷法等の塗布法により形成することができる。塗布法により形成する場合は、得られる膜の強度を増す目的で、塗布後、乾燥により溶媒等を除去することが好ましい。乾燥方法としては、風乾、熱風乾燥、加熱乾燥など、慣用されている方法を用いることができる。塗布法における乾燥条件は、基材の耐熱性等に応じて適宜選択すれば良い。
【0032】
撥水撥油性膜40の下側には、バインダ膜42、および微細凹凸膜48(凹凸膜)が積層されている。バインダ膜42は、撥水撥油性膜40と微細凹凸膜48との密着性を向上させるために用いられ、例えば酸化ケイ素により形成される。バインダ膜42の物理膜厚は、5〜500nmであることが好ましく、10〜400nmであることがより好ましい。バインダ膜42の物理膜厚が5nmより薄いと密着性が十分に向上せず、500nmより厚いと光学特性に影響を与える可能性があるとともに、撥水撥油性膜40の表面40Sにおける、後述の表面抵抗が大きくなって防塵性能が低下し得るからである。バインダ膜42は、撥水撥油性膜40をフッ素含有無機化合物から形成する場合(段落[0031]参照)と同様の方法により形成することができる。
【0033】
微細凹凸膜48は、積層体24の表面、すなわち撥水撥油性膜40の表面40Sに微細な凹凸を形成するために設けられている。表面40Sに凹凸が形成されると、塵埃粒子と表面40Sとの距離が保たれ、両者間の分子間力が小さくなる。この結果、塵埃粒子の表面40Sへの付着を防止することができる。微細凹凸膜48は、表面40Sにおいて効果的に凹凸を形成するために、撥水撥油性膜40とYAGレーザカットフィルタ18との間で、バインダ膜42を除くと撥水撥油性膜40のすぐ下側に配置されることが好ましい。
【0034】
なお、微細凹凸膜48においては、微細な凹部および凸部が、ランダムに配置されている。このため、積層体24を透過する照明光によりCCD12で生成される画像のモアレ発生が防止される。
【0035】
微細凹凸膜48の表面粗さは、撥水撥油性膜40の表面40Sにおける三次元平均表面粗さSRaが、1〜100nm、好ましくは8〜80nm、より好ましくは10〜50nmとなるように調整されている。これは、表面40SにおけるSRaが1nm以上であると、分子間力による塵埃粒子の表面40Sへの付着を十分に防止できるのに対し、100nmを超えると、積層体24に入射する光の散乱が発生してしまうおそれがあるためである。
【0036】
微細凹凸膜48は、酸化ケイ素、アルミナ、アルミニウム水酸化物、亜鉛酸化物、および亜鉛水酸化物等により形成されることが好ましく、特に好ましくは酸化ケイ素(シリカ)により形成される。これは、酸化ケイ素の微細凹凸膜48は、撥水撥油性膜40との密着性が良好であるためにバインダ膜42が不要となり、内視鏡撮像ユニット10の構造の簡素化と耐久性の向上が可能だからである。
【0037】
YAGレーザカットフィルタ18の材質は、主として金属酸化物であり、例えば酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素等である。特に、YAGレーザカットフィルタ18は、酸化チタンと酸化ケイ素との積層膜であることが好ましい。このようにYAGレーザカットフィルタ18は、通常、金属酸化物等の誘電膜を有する誘電体である。
【0038】
誘電膜を有するYAGレーザカットフィルタ18の光入射面18Sを露出させた場合、微細な塵埃が吸着され易くなる。そこで積層体24は、帯電防止層50を含む。帯電防止層50を用いて表面抵抗を十分に小さくすることにより、内視鏡撮像ユニット10の防塵性を向上させるためである。この帯電防止層50により、表面40Sにおける表面抵抗は、1×1014Ω/□以下に抑えられることが好ましく、1×1012Ω/□以下であることがより好ましい。
【0039】
帯電防止層50は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、ATO(Antimon Tin Oxide)などによる無機膜、もしくは金属酸化物粒子を含有する有機膜で形成される。これらのうち、帯電防止層50は無機膜で形成されていることが好ましい。無機膜であれば、帯電防止層50の耐熱性を向上させることができ、かつ積層体24の製造時において、上述の材質の微細凹凸膜48等とともに同時に積層させることができ、製造工程の効率化が図られるからである。
【0040】
本実施形態において、帯電防止層50は、YAGレーザカットフィルタ18内に配置されている。すなわち、層構造を有するYAGレーザカットフィルタ18の層間に、帯電防止層50が積層されている。このように、帯電防止層50をYAGレーザカットフィルタ18の一部とした場合、内視鏡撮像ユニット10の光学特性を向上させることが容易であるが、撥水撥油性膜40のすぐ下側、もしくは微細凹凸膜48とYAGレーザカットフィルタ18との間に帯電防止層50を配置しても良い。
【0041】
帯電防止層50に蓄積された静電気は、図2においては省略されているアース線32(図1参照)によりプロセッサ側に放電される。このため、長期間の使用で帯電防止層50に蓄積された電荷により、表面40Sにおける表面抵抗が増加してしまうことが防止され、表面40Sの防塵性能は良好なまま維持される。
【0042】
また、内視鏡撮像ユニット10には、CCD12の撮像面12Sの前面側に、視感度補正フィルタ26、および赤外カットガラス28が設けられているが、これらは必要に応じて除かれても良い。また、これらの代わりに、もしくはこれらに加えて、光学ローパスフィルタ(図示せず)等が内視鏡撮像ユニット10に含まれても良い。赤外カットガラス28の代わりに赤外カットフィルタを用いても良い。
【0043】
以上のように本実施形態によれば、YAGレーザカットフィルタ18の光入射面18Sを覆う、撥水撥油性膜40、微細凹凸膜48、および帯電防止層50を設けることにより、内視鏡撮像ユニット10の表面、主として表面40Sに塵埃が付着することが防止されるとともに、表面40Sに付着した場合には塵埃をブロア等により容易に除去することができる。
【0044】
さらに本実施形態では、YAGレーザカットフィルタ18の光入射面18Sに積層体24を形成するという、簡易な工程で防塵性能を向上させることができる。このため、塵埃が付着し易い既存のYAGレーザカットフィルタ18に対して積層体24を形成し、塵埃の付着を防止することも容易である。
【0045】
次に、第2の実施形態につき説明する。図3は、本実施形態における内視鏡撮像ユニット10を拡大して示す断面図である。
【0046】
本実施形態の内視鏡撮像ユニット10においては、YAGレーザカットフィルタ18の光入射面18Sは、撥水撥油性膜40のみによって覆われている。このように撥水撥油性膜40のみを設けた場合でも、上述のように、表面40Sに塵埃が付着することを防止できる。
【0047】
そして本実施形態では、YAGレーザカットフィルタ18の防塵のために必要な工程は、撥水撥油性膜40を形成することだけであり、より簡便な方法で防塵効果が得られるという利点がある。
【0048】
内視鏡撮像ユニット10に含まれる各部材の材質、配置、および製法は、いずれの実施形態にも限定されない。例えば、第1の実施形態における帯電防止層50を第2の実施形態の内視鏡撮像ユニット10に加えても良い。また、内視鏡撮像ユニット10を、YAGレーザカットフィルタ18以外のフィルタ、例えば、誘電膜を含むために塵埃が付着し易く、付着防止が望まれる赤外カットフィルタなどに適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】第1の実施形態における、内視鏡撮像ユニットが設けられたスコープの先端部を示す断面図である。
【図2】第1の実施形態における、内視鏡撮像ユニットを拡大して示す断面図である。
【図3】第2の実施形態における、内視鏡撮像ユニットを拡大して示す断面図である。
【符号の説明】
【0050】
10 内視鏡撮像ユニット
12 CCD(撮像素子)
18 YAGレーザカットフィルタ(レーザカットフィルタ)
18S 光入射面
24 積層体
26 視感度補正フィルタ(光学フィルタ)
28 赤外カットガラス(光学フィルタ)
32 アース線(アース部材)
40 撥水撥油性膜
48 微細凹凸膜(凹凸膜)
50 帯電防止層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子と、
レーザ光の前記撮像素子への入射を遮断するレーザカットフィルタと、
前記レーザ光が入射する前記レーザカットフィルタの光入射面を覆う撥水撥油性膜とを備えることを特徴とする内視鏡撮像ユニット。
【請求項2】
前記撥水撥油性膜が、前記撥水撥油性膜を含む積層体の最も外側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡撮像ユニット。
【請求項3】
前記撥水撥油性膜が、フッ素含有有機ポリマーを含むことを特徴とする請求項1もしくは請求項2に記載の内視鏡撮像ユニット。
【請求項4】
前記撥水撥油性膜の物理膜厚が0.4〜100nmであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の内視鏡撮像ユニット。
【請求項5】
前記光入射面を覆う帯電防止層をさらに有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の内視鏡撮像ユニット。
【請求項6】
前記帯電防止層が、前記レーザカットフィルタ内に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の内視鏡撮像ユニット。
【請求項7】
前記帯電防止層が、無機膜で形成されていることを特徴とする請求項5に記載の内視鏡撮像ユニット。
【請求項8】
前記帯電防止層に蓄積される電荷を放電するためのアース部材をさらに有することを特徴とする請求項5に記載の内視鏡撮像ユニット。
【請求項9】
前記撥水撥油性膜の表面に凹凸を形成するための凹凸膜をさらに有することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の内視鏡撮像ユニット。
【請求項10】
前記凹凸膜が、前記レーザカットフィルタと前記撥水撥油性膜との間に設けられていることを特徴とする請求項9に記載の内視鏡撮像ユニット。
【請求項11】
前記凹凸膜が、酸化ケイ素、アルミナ、アルミニウム水酸化物、亜鉛酸化物、および亜鉛水酸化物の少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項9に記載の内視鏡撮像ユニット。
【請求項12】
前記凹凸膜が酸化ケイ素により形成されていることを特徴とする請求項11に記載の内視鏡撮像ユニット。
【請求項13】
前記撮像素子に入射する光を透過もしくは反射する光学フィルタをさらに有することを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれかに記載の内視鏡撮像ユニット。
【請求項14】
前記光学フィルタが、視感度補正フィルタ、光学ローパスフィルタ、および赤外カットフィルタの少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項13に記載の内視鏡撮像ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−207621(P2009−207621A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52390(P2008−52390)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】