説明

内視鏡用光源装置

【課題】光源ランプと内視鏡の照明用ライトガイドとの間に配置された赤外線吸収フィルタが部分的な熱膨張差により破損する恐れのない内視鏡用光源装置を提供すること。
【解決手段】内視鏡の照明用ライトガイド5に入射させる照明光を放射する光源ランプ11と照明用ライトガイド5の入射端5aとの間に、光源ランプ11から放射される照明光に含まれる赤外線を吸収するための赤外線吸収フィルタ13が配置された内視鏡用光源装置において、赤外線吸収フィルタ13を、光源ランプ11から放射される照明光が全面に照射される状態に配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内視鏡の照明用ライトガイドに照明光を供給するための内視鏡用光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡の照明用ライトガイドに入射される照明光線束に熱線が多く含まれていると、照明用ライトガイドの入射端が熱により破壊されたり、内視鏡挿入部の先端で照明用ライトガイドから射出される照明光が熱すぎて被写体である人体組織が火傷をする等の危険性がある。
【0003】
そこで、例えば図3に示されるように、内視鏡の照明用ライトガイド100に入射させる照明光を放射する光源ランプ91と照明用ライトガイド100の入射端100aとの間に、光源ランプ91から放射される照明光に含まれる赤外線を吸収するための赤外線吸収フィルタ92が配置されている(例えば、特許文献1、2、3、4)。93は赤外線反射フィルタ、94は集光レンズである。
【特許文献1】特開平8−106059
【特許文献2】実公平7−46901
【特許文献3】特開平8−101353
【特許文献4】特開平11−119118
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の内視鏡用光源装置においては、図3に示されるように、光源ランプ91から放射された照明光が全て赤外線吸収フィルタ92を通過するように、赤外線吸収フィルタ92が照明光線束Aより大きく形成されている。
【0005】
しかし、赤外線吸収フィルタ92は、照明光が照射される領域では赤外線を吸収することにより温度が上昇して膨張するのに対して、照明光が照射されない周辺寄りの領域では熱膨張しないので、その膨張差により赤外線吸収フィルタ92が破損する可能性があった。
【0006】
そこで本発明は、光源ランプと内視鏡の照明用ライトガイドとの間に配置された赤外線吸収フィルタが部分的な熱膨張差により破損する恐れのない内視鏡用光源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の内視鏡用光源装置は、内視鏡の照明用ライトガイドに入射させる照明光を放射する光源ランプと照明用ライトガイドの入射端との間に、光源ランプから放射される照明光に含まれる赤外線を吸収するための赤外線吸収フィルタが配置された内視鏡用光源装置において、赤外線吸収フィルタを、光源ランプから放射される照明光が全面に照射される状態に配置したものである。
【0008】
なお、赤外線吸収フィルタが円板状の形状に形成されていてもよい。そして赤外線吸収フィルタの外縁寄りの領域を通過した照明光線を遮るための遮光マスクが、赤外線吸収フィルタと照明用ライトガイドの入射端との間に配置されていてもよく、その場合、遮光マスクが、赤外線吸収フィルタの周囲を通過する照明光線も遮光するようにしてもよい。
【0009】
また、光源ランプと赤外線吸収フィルタとの間に、光源ランプから放射される照明光に含まれる赤外線を反射するための赤外線反射フィルタが配置されていてもよく、その場合、赤外線反射フィルタは、赤外線吸収フィルタに照射される照明光がその前に全て赤外線反射フィルタを通過する状態に配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
赤外線吸収フィルタの温度は、光源ランプから放射される照明光に含まれる赤外線を吸収することにより上昇するが、本発明においては、赤外線吸収フィルタが光源ランプから放射される照明光が全面に照射される状態に配置されていることにより全体的に均一に近い温度上昇状態になるので、部分的な熱膨張差による破損が発生しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
内視鏡の照明用ライトガイドに入射させる照明光を放射する光源ランプと照明用ライトガイドの入射端との間に、光源ランプから放射される照明光に含まれる赤外線を吸収するための赤外線吸収フィルタが配置された内視鏡用光源装置において、赤外線吸収フィルタを、光源ランプから放射される照明光が全面に照射される状態に配置する。
【実施例】
【0012】
図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図2は、光源装置10に内視鏡が接続された状態を示しており、内視鏡の挿入部1の基端には操作部2が連結され、操作部2から後方に延出する連結可撓管3の先端に、光源装置10に対して接続/分離自在なコネクタ部4が取り付けられている。
【0013】
5は、内視鏡の被写体を照明する照明光を伝達するためのライトガイドファイババンドルであり、その入射端5aはコネクタ部4の突端に配置され、射出端5bは挿入部1の先端に配置されている。
【0014】
光源装置10内には、その部分を拡大して図示する図1にも示されるように、ライトガイドファイババンドル5に入射させる照明光を放射する光源ランプ11が配置されている。光源ランプ11としては、例えばキセノンランプやハロゲンランプ等を用いることができる。
【0015】
光源ランプ11で発生した照明光線束Aは、例えば放物面鏡状に形成された反射鏡11aにより平行光線束になってライトガイドファイババンドル5の入射端5aの方向に向けて放射され、集光レンズ12によりライトガイドファイババンドル5の入射端5aに収束する。
【0016】
そのような光源ランプ11と集光レンズ12との間には、光源ランプ11から放射される照明光に含まれる赤外線を吸収するための赤外線吸収フィルタ13が配置されていて、赤外線吸収フィルタ13と集光レンズ12との間には遮光マスク14が配置され、赤外線吸収フィルタ13と光源ランプ11との間には赤外線反射フィルタ15が配置されている。
【0017】
赤外線吸収フィルタ13は、光軸に垂直な断面が円形形状である照明光線束Aの径より小さな径の円板状の形状に形成されて、照明光線束Aの軸線位置に中心軸線が位置するように配置されている。
【0018】
したがって、光源ランプ11から放射された照明光線束Aが赤外線吸収フィルタ13の全面に照射されてそこで赤外線の何割かが吸収除去され、照明光線束Aの周辺部分の光線束は赤外線吸収フィルタ13に触れることなく赤外線吸収フィルタ13の周囲を通過する。
【0019】
遮光マスク14は、そのようにして赤外線吸収フィルタ13を通過した照明光線束A中の不要周辺光を遮るためのものであり、照明光線束Aの中の、赤外線吸収フィルタ13の外縁寄りの領域を通過した光線束と、赤外線吸収フィルタ13の周囲を通過した光線束とを遮るように、照明光線束Aの光軸に中心軸を合わせて円形の光通過孔が形成されている。
【0020】
また、赤外線反射フィルタ15は、光源ランプ11から放射された照明光線束Aが赤外線吸収フィルタ13に直接入射することのないよう、赤外線吸収フィルタ13より大きな径の円板状に形成されている。したがって、赤外線吸収フィルタ13に照射される照明光線束Aは、その前に全ての領域において赤外線反射フィルタ15を通過して赤外線の何割かが反射除去されたものになっている。
【0021】
このような構成により、遮光マスク14を通過してライトガイドファイババンドル5の入射端5aに向かう照明光線束Aは、全ての範囲において赤外線が赤外線反射フィルタ15で何割か反射除去された後、さらに赤外線吸収フィルタ13で何割かが吸収除去されたものになっているので、ライトガイドファイババンドル5の入射端5aを熱破壊したり射出端5bから射出される照明光で人体組織を火傷させる等の危険性がない。
【0022】
そして、赤外線吸収フィルタ13は赤外線を吸収することにより温度が上昇するが、光源ランプ11から放射されて赤外線反射フィルタ15を通過した照明光線束Aが赤外線吸収フィルタ13の全面にくまなく照射されることにより、全体的に均一に近い温度上昇状態になるので、部分的な熱膨張差による破損等が発生しない。
【0023】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、例えば遮光マスク14や赤外線反射フィルタ15の配置を変更したり省略した構成のものであっても差し支えない。また、赤外線吸収フィルタ13は固定的に設けられていてもよく、或いは照明光線束A中に挿脱自在に配置されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例の内視鏡用光源装置の部分拡大構成図である。
【図2】本発明の実施例の内視鏡用光源装置に内視鏡が接続された状態の構成図である。
【図3】従来の内視鏡用光源装置の構成図である。
【符号の説明】
【0025】
5 ライトガイドファイババンドル(照明用ライトガイド)
5a 入射端
10 光源装置
11 光源ランプ
13 赤外線吸収フィルタ
14 遮光マスク
15 赤外線反射フィルタ
A 照明光線束

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の照明用ライトガイドに入射させる照明光を放射する光源ランプと上記照明用ライトガイドの入射端との間に、上記光源ランプから放射される照明光に含まれる赤外線を吸収するための赤外線吸収フィルタが配置された内視鏡用光源装置において、
上記赤外線吸収フィルタを、上記光源ランプから放射される照明光が全面に照射される状態に配置したことを特徴とする内視鏡用光源装置。
【請求項2】
上記赤外線吸収フィルタが円板状の形状に形成されている請求項1記載の内視鏡用光源装置。
【請求項3】
上記赤外線吸収フィルタの外縁寄りの領域を通過した照明光線を遮るための遮光マスクが、上記赤外線吸収フィルタと上記照明用ライトガイドの入射端との間に配置されている請求項1又は2記載の内視鏡用光源装置。
【請求項4】
上記遮光マスクが、上記赤外線吸収フィルタの周囲を通過する照明光線も遮光する請求項3記載の内視鏡用光源装置。
【請求項5】
上記光源ランプと上記赤外線吸収フィルタとの間に、上記光源ランプから放射される照明光に含まれる赤外線を反射するための赤外線反射フィルタが配置されている請求項1、2、3又は4記載の内視鏡用光源装置。
【請求項6】
上記赤外線反射フィルタは、上記赤外線吸収フィルタに照射される照明光がその前に全て上記赤外線反射フィルタを通過する状態に配置されている請求項5記載の内視鏡用光源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−288508(P2006−288508A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−110418(P2005−110418)
【出願日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】