説明

内視鏡

【課題】発光素子に電力を供給する電極パターンが短絡するのを抑えた内視鏡を提供する。
【解決手段】長尺の挿入部を備える内視鏡において、挿入部の先端側に設けられた基体と、基体に取付けられ、基体の前方からの光を集光する観察光学系と、自身の一方の面62aが先端側を向くように基体に取付けられた板状の基材62と、基材の一方の面に互いに離間するように配置され、金属で形成された放熱パターン63および一対の電極パターン65と、放熱パターンに設けられた発光素子68と、発光素子と一対の電極パターンとを電気的にそれぞれ接続する配線73と、基材の他方の面62b上に配置され、基材より熱伝導率の大きな材料で形成された放熱部材56とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子が発した光で周囲を観察する内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、省電力や、扱いの手軽さなどのために、内視鏡の光源として発光ダイオード(LED)などの発光素子が用いられている。
このような発光素子は、内視鏡以外にも、例えば、特許文献1に記載された発光装置に用いられている。この発光装置は、絶縁性の基材と、基材の表面に形成された一対の表面多層配線パターン(電極パターン)と、基材の裏面に形成された裏面多層配線パターンと、基材を貫通して設けられた電気伝導用ビアおよび熱伝導用ビアと、基材の表面に実装された発光ダイオードとを備えている。
【0003】
特許文献1では、セラミックスからなる基材が用いられている。電気伝導用ビアは、両多層配線パターンを電気的に接続している。熱伝導用ビアは、両多層配線パターンを熱的に接続している。発光ダイオードは、一対の表面多層配線パターンに跨るように実装されている。
このように構成された発光装置は、電源から裏面多層配線パターンに電力が供給される。供給された電力は、裏面多層配線パターンから電気伝導用ビア、および表面多層配線パターンを介して発光ダイオードに供給され、発光ダイオードは発光および発熱する。発光ダイオードで発生した熱の一部は、電気伝導用ビアを介して裏面多層配線パターンに伝導される。発光ダイオードで発生した熱の他の一部は、表面多層配線パターン、および熱伝導用ビアを介して裏面多層配線パターンに伝導される。
裏面多層配線パターンに伝導された熱は、裏面多層配線パターンの雰囲気中に放出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−283253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、特許文献1の発光装置では、表面多層配線パターンおよび裏面多層配線パターンは、発光ダイオードで発生した熱を伝導するだけでなく、発光ダイオードに電力を供給するためにも用いられている。このため、発光ダイオードの近傍に配置された導電部材により表面多層配線パターン同士が短絡し、回路に不具合が起こる可能性が高い。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、発光素子に電力を供給する電極パターンが短絡するのを抑えた内視鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の内視鏡は、長尺の挿入部を備える内視鏡において、前記挿入部の先端側に設けられた基体と、前記基体に取付けられ、前記基体の前方からの光を集光する観察光学系と、自身の一方の面が先端側を向くように前記基体に取付けられた板状の基材と、前記基材の前記一方の面に互いに離間するように配置され、金属で形成された放熱パターンおよび一対の電極パターンと、前記放熱パターンに設けられた発光素子と、前記発光素子と一対の前記電極パターンとを電気的にそれぞれ接続する配線と、前記基材の他方の面上に配置され、前記基材より熱伝導率の大きな材料で形成された放熱部材と、を有することを特徴としている。
【0008】
また、上記の内視鏡において、前記基材の前記他方の面に配置され、金属で形成された第二の放熱パターンを備え、前記第二の放熱パターンは前記放熱部材に接触していることがより好ましい。
また、上記の内視鏡において、前記基材に設けられ、前記放熱パターンおよび前記第二の放熱パターンにそれぞれ接続され金属で形成されたスルーホールを有することがより好ましい。
また、上記の内視鏡において、前記発光素子および前記配線を封止する透明の封止樹脂を有することがより好ましい。
【0009】
また、上記の内視鏡において、前記放熱部材における前記基材とは反対側に配置された電子基板と、一対の前記電極パターンと前記電子基板とを電気的に接続する接続部と、を有することがより好ましい。
また、上記の内視鏡において、前記基材、前記電子基板、および、前記接続部は、柔軟性のあるフレキシブルプリンテッドサーキット基板で一体に形成されていることがより好ましい。
また、上記の内視鏡において、前記基材および前記電子基板は、それぞれの厚さ方向に見て互いに略同一形状に形成され、前記基材および前記電子基板は、前記放熱部材にそれぞれ貼り合わされて構成されていることがより好ましい。
【0010】
また、上記の内視鏡において、前記基材、前記電子基板、および前記放熱部材はリング状に形成され、前記基体の先端側は筒状に形成されて、内部に前記観察光学系が取付けられ、前記基材、前記電子基板、および前記放熱部材の貫通孔に前記基体の先端側がそれぞれ挿通されていることがより好ましい。
また、上記の内視鏡において、前記放熱部材の外周面には、前記接続部を収容する切欠部が形成されていることがより好ましい。
また、上記の内視鏡において、前記発光素子は、前記放熱パターンが接続された側と反対側に接点を有し、前記接点に前記配線が接続されていることがより好ましい。
【0011】
また、上記の内視鏡において、前記放熱パターンの表面には、銀メッキ層が形成されていることがより好ましい。
また、上記の内視鏡において、前記電極パターンの表面には、金メッキ層が形成されていることがより好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の内視鏡によれば、発光素子に電力を供給する電極パターンが短絡するのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態の内視鏡の全体図である。
【図2】同内視鏡の直視用アダプタにおける側面の要部の断面図である。
【図3】同内視鏡において接続部を伸ばしたときの電子基板ユニットの平面図である。
【図4】図3中の切断線A−Aの断面図である。
【図5】同内視鏡の電子基板ユニットの回路図である。
【図6】本発明の第1実施形態の変形例の内視鏡における要部の断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態の内視鏡における要部の断面図である。
【図8】図7中の切断線B−Bの断面図である。
【図9】同内視鏡の基端側電子基板の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る内視鏡の第1実施形態を、図1から図6を参照しながら説明する。
図1に示すように、本内視鏡1は、長尺の挿入部10と、挿入部10の基端に取付けられ挿入部10を操作する内視鏡操作部20と、内視鏡操作部20に接続された内視鏡本体30と、挿入部10で取得された画像を表示する表示部40とを備えている。
挿入部10は、挿入部10の先端に配置され不図示の撮像素子が設けられた先端硬質部11と、先端硬質部11の基端側に接続され湾曲可能な湾曲部12と、湾曲部12の基端側に接続された可撓性を有する可撓管部13とを有している。
先端硬質部11の先端には、挿入部10の前方を照明するとともに前方からの光を集光する、いわゆる直視用アダプタ50と、挿入部10の側方を照明するとともに側方からの光を集光する、いわゆる側視用アダプタ100とが着脱可能となっている。
挿入部10には、不図示の操作ワイヤが複数備えられている。操作ワイヤの先端は湾曲部12に接続されている。
【0015】
内視鏡操作部20には、湾曲部12を湾曲操作するための湾曲操作ボタン21と、内視鏡本体30および表示部40などを操作するための主操作ボタン22とが設けられ、不図示のモータが内蔵されている。前述の操作ワイヤの基端は、モータの回転軸に接続されている。
湾曲操作ボタン21で、駆動するモータおよび回転軸の回転方向を指定することで、湾曲部12を所望の方向に湾曲させることができる。
内視鏡操作部20と内視鏡本体30とは、ユニバーサルケーブル26で接続されている。
【0016】
内視鏡本体30は、ケーシング31、ケーシング31に内蔵され、撮像素子が取得した画像を処理する画像処理部32、挿入部10や表示部40などに直流により電力を供給する電源部33、および、撮像素子や画像処理部32などを制御する制御部34を有している。
画像処理部32は、撮像素子で取得された画像が信号として送信されたものを、内視鏡操作部20から入力された指示に応じて明るさや表示範囲などを補正する処理をした後、表示部40に送信する。
ケーシング31の外面には、画像処理部32および電源部33に電気的に接続されたコネクタ36が取付けられている。
【0017】
表示部40は、ケーシング31に着脱自在に配設されている。表示部40は、画像などを表示するLCD41と、コネクタ36に着脱可能な配線42とを有している。
配線42をコネクタ36に接続することで、表示部40は電源部33から所定の電力を供給されるとともに、画像処理部32から送信された画像などをLCD41に表示することができる。
【0018】
次に、アダプタ50、100の構成について説明する。ただし、側視用アダプタ100は、直視用アダプタ50に対して光を発したり受けたりする向きのみが異なるので説明を省略する。
直視用アダプタ50は、図2に示すように、円筒状のカバー51と、カバー51内に配置されたアダプタ本体(基体)52とを備えている。
アダプタ本体52の先端側は筒状に形成されて、内部にはレンズ群などの観察光学系53が取付けられている。先端硬質部11の先端に直視用アダプタ50が装着されたときに、観察光学系53は前方からの光を集光して、撮像素子の検出面上に結像させる。
アダプタ本体52には、観察光学系53の先端側となる位置にカバーガラス54が取付けられている。アダプタ本体52の外周面には、鍔部52aが形成されていて、鍔部52aの先端側の面には、先端側に突出する2つのコンタクトピン55(図2中には1つのみ示している。)が設けられている。
アダプタ本体52の基端は、先端硬質部11の先端にネジ嵌合などにより着脱可能となっている。先端硬質部11にアダプタ本体52を装着したときに、電源部33からの電力が一対のコンタクトピン55を通して後述する電子基板ユニット60に供給されるとともに、制御部34は一対のコンタクトピン55間に接続された電子基板ユニット60の抵抗値を測定する。
アダプタ本体52は、本実施形態ではステンレス鋼などで一体に形成されている。
【0019】
アダプタ本体52における鍔部52aより先端側には、銅などの金属で略リング状に形成されたヒートシンク(放熱部材)56が配置されている。ヒートシンク56の貫通孔56aには、アダプタ本体52の先端側が挿通されている。
ヒートシンク56の外周面には、外周面から凹むとともに、カバー51の軸線C方向に貫通する切欠部56bが形成されている。
ヒートシンク56は、アダプタ本体52の外周面に接着剤などで固定されている。
【0020】
ヒートシンク56の先端側の面上および基端側の面上には、電子基板ユニット60が配置されている。
電子基板ユニット60は、ヒートシンク56の先端側の面上に配置された先端側電子基板61と、ヒートシンク56の基端側の面上に配置された基端側電子基板(電子基板)81と、電子基板61、81を電気的に接続する接続部91とを有している。電子基板61、81、および接続部91は、柔軟性のあるフレキシブルプリンテッドサーキット基板(以下、「FPC基板」と称する。)で一体に形成されている。
基端側電子基板81は、ヒートシンク56における先端側電子基板61とは反対側に配置されている。電子基板ユニット60は、接続部91が折り曲げられた状態でヒートシンク56に取付けられていて、接続部91は切欠部56bに収容されている。
図3は、接続部91を真っすぐに伸ばしたときの電子基板ユニット60の平面図である。なお、図3においては、後述する銀メッキ層71、金メッキ層72、および封止樹脂75は示していない。
電子基板61、81は、それぞれの厚さ方向に見て、互いに略同一のリング状に形成されている。
接続部91は、先端側電子基板61の縁部と基端側電子基板81の縁部とを接続する帯状に形成されていて、電子基板ユニット60は全体として、亜鈴状に形成されている。
先端側電子基板61の貫通孔61a、および、基端側電子基板81の貫通孔81aには、図2に示すように、アダプタ本体52の先端側が挿通されている。
【0021】
先端側電子基板61は、図3および図4に示すように、板状の基材62と、基材62の一方の面62aに互いに離間するように配置された放熱パターン63および一対の電極パターン65、66と、基材62の他方の面62bに配置された第二の放熱パターン67と、放熱パターン63上に設けられた複数のLED(発光素子)68とを有している。
【0022】
基材62は、本実施形態では、絶縁性を有するポリイミドで形成されている。基材62の熱伝導率は、ヒートシンク56の熱伝導率より小さくなっている。基材62は、一方の面62aが先端側を向くようにヒートシンク56に取付けられている。

放熱パターン63と電極パターン65、放熱パターン63と電極パターン66、そして、電極パターン65と電極パターン66は、それぞれ互いに離間している。
放熱パターン63は、先端側電子基板61の厚さ方向に見て、LED68の面積と略等しく形成されている。
第二の放熱パターン67は、先端側電子基板61の厚さ方向に見て、基材62よりわずかに小さくなるように形成されている。
放熱パターン63、電極パターン65、66、および第二の放熱パターン67は、銅メッキやエッチングなどにより形成されている。
【0023】
図4に示すように、放熱パターン63の表面には、銀メッキ層71が形成されている。LED68は、不図示の耐熱性接着剤により銀メッキ層71上に固定されている。電極パターン65、66の表面には、金メッキ層72が形成されている。
LED68は、放熱パターン63が接続された側と反対側、すなわち自身の先端側に一対の接点68aを有している。それぞれのLED68において、一方の接点68aは、ワイヤ(配線)73により電極パターン65上の金メッキ層72に電気的に接続されている。同様に、他方の接点68aは、ワイヤ73により電極パターン66上の金メッキ層72に電気的に接続されている。なお、図3にはワイヤ73は示されていない。
一対の接点68a間に直流電流を供給することで、LED68は前方を中心とする所定の角度内に光を発することができる。
図3に示すように、基材62の一方の面62aには、電極パターン65を囲うようにレジスト層74が設けられている。レジスト層74は、電極パターン65などが短絡するのを防止するためのものである。
図4に示すように、基材62の一方の面62a側には、透明の封止樹脂75が配置されている。放熱パターン63、電極パターン65、66、LED68、およびワイヤ73は、封止樹脂75により封止されている。
【0024】
基材62における放熱パターン63に隣接する部分には、基材62を貫通する複数のスルーホール(ビア)76が設けられている。スルーホール76は、基材62に形成された貫通孔の内周面に、銅などの金属をメッキして形成したものである。スルーホール76の一端は放熱パターン63に、他端は第二の放熱パターン67にそれぞれ接続されている。
第二の放熱パターン67は、シート状の接着剤であるボンディングシート77によりヒートシンク56の先端側の面に貼り合わされている。ボンディングシート77としては、耐熱性に優れるとともに、熱伝導率の大きなものを用いることが好ましい。
【0025】
基端側電子基板81は、図3に示すように、基材82と、基材82の基端側の面に設けられた電気抵抗83、および一対のピン用接点84、85とを有している。基端側電子基板81は、ボンディングシートなどによりヒートシンク56の基端側の面に貼り合わされている。なお、基端側電子基板81は、ボンディングシートより熱伝導率の小さな接着剤でヒートシンク56に貼り合わされてもよい。
基材82は、基材62と同一の材料で形成されている。
ピン用接点84は一方のコンタクトピン55に接続されていて、ピン用接点85は他方のコンタクトピン55に接続されている。
接続部91は、電極パターン65、66と基端側電子基板81とを電気的に接続している。
図2において、LED68の前方にはカバーガラス96が配され、このカバーガラス96がカバー51に取付けられていてもよい。
【0026】
電子基板ユニット60では、図5に示すように、一対のLED68を並列に接続したものが直列に接続され、その両端がピン用接点84、85に接続され、電気回路を形成している。さらに、ピン用接点84、85間に、複数のLED68と並列に電気抵抗83が接続されている。
このように構成された電子基板ユニット60は、複数のLED68のうちの一つのLED68が壊れても、残りのLED68から光を発し続けることができる。
また、アダプタ毎に電気抵抗の値を変えておき、先端硬質部11の先端にアダプタが装着されたときにピン用接点84、85間の抵抗値を測定することで、制御部34が装着されたアダプタの種類を認識することができる。
【0027】
次に、以上のように構成された内視鏡1の動作について説明する。ここでは、予め、先端硬質部11の先端に直視用アダプタ50が装着されているとする。
まず、使用者が内視鏡本体30に設けられた不図示の起動ボタンを操作して制御部34を起動すると、制御部34は電源部33から画像処理部32や直視用アダプタ50などに電力を供給させる。

まず、使用者が内視鏡操作部20の主操作ボタン22を操作して制御部34を起動すると、制御部34は電源部33から画像処理部32や直視用アダプタ50などに電力を供給させる。
そして、ピン用接点84、85間の抵抗値を測定し、アダプタの種類を認識する。
電力を供給された直視用アダプタ50では、電極パターン65、66、およびワイヤ73を介してLED68に直流が供給される。LED68は前方に照明光を発し、前方からの反射光は観察光学系53で集光され、撮像素子で画像の信号に変換される。この信号は、画像処理部32で処理され、LCD41に表示される。
LED68は、照明光を発する一方で、熱も発生する。LED68が発生した熱は、銀メッキ層71を介して放熱パターン63、スルーホール76、そして第二の放熱パターン67に伝導される。さらに、この熱は、ボンディングシート77、ヒートシンク56を通してアダプタ本体52に伝導され放熱される。基端側電子基板81で発生した熱も同様に、ボンディングシート、ヒートシンク56を通してアダプタ本体52から放熱される。
【0028】
使用者は、LCD41に表示された画像を見ながら、被検体に挿入部10を挿入していく。その際に、挿入部10が挿入しにくくなった場合には、湾曲操作ボタン21を適宜操作して、湾曲部12を湾曲させる。
【0029】
以上説明したように、本実施形態の内視鏡1によれば、LED68には、電極パターン65、66からワイヤ73を介して電力が供給される。電極パターン65、66間を離間させることで、電極パターン65、66に他の導電性部材が接触して電極パターン65、66が短絡するのを抑えることができる。
LED68で発生した熱は、放熱パターン63を介してヒートシンク56に伝導される。放熱パターン63とヒートシンク56との距離は基材62の厚さとほぼ等しくなるため、基材62の他方の面62b側にヒートシンク56を備えることで、LED68で発生した熱が伝導される距離を短くすると同時に、熱が伝導される部材の熱伝導率を高め、効率良く放熱することができる。
【0030】
LED68から効率良く放熱することで、LED68の温度を低下させLED68の発光効率が低下するのを防ぐことができる。
放熱パターン63および電極パターン65、66は、エッチングなどにより同時に形成できるため、電極パターン65、66だけでなく放熱パターン63を同時に形成することで、LED68の放熱効率を効率良く高めることができる。
【0031】
電子基板ユニット60は、第二の放熱パターン67を有し、第二の放熱パターン67はボンディングシート77を介してヒートシンク56に接続されている。LED68で発生した熱を、第二の放熱パターン67を介してヒートシンク56に伝導することで、ヒートシンク56の温度がより均一になり、ヒートシンク56からより効率良く放熱することができる。
電子基板ユニット60はスルーホール76を有するため、放熱パターン63から第二の放熱パターン67に効果的に熱を伝導することができる。
電子基板ユニット60は封止樹脂75を有し、LED68やワイヤ73などを、水や埃、外力などから保護している。このように構成されている場合であっても、LED68で発生した熱をヒートシンク56側に伝導させることで封止樹脂75に伝導される熱を抑え、熱劣化により封止樹脂75の透明度が低下して封止樹脂75を透過する光量が低下するのを抑えることができる。
【0032】
電子基板ユニット60は、基端側電子基板81および接続部91を備えている。したがって、ヒートシンク56の両側にコンパクトに先端側電子基板61および基端側電子基板81を配置することができる。
電子基板ユニット60は、FPC基板で形成されているため、電子基板ユニット60を複雑な形状に容易に変形させることができる。
先端側電子基板61および基端側電子基板81が平面視で互いに略同一に形成されているため、電子基板61、81をヒートシンク56に貼り合わせる動作が似た作業となり、作業効率を向上させることができる。
【0033】
リング状に形成されたヒートシンク56、電子基板61、81にアダプタ本体52の先端側が挿通され、アダプタ本体52の先端側の内部には観察光学系53が取付けられている。これにより、アダプタ本体52の周囲に、ヒートシンク56、電子基板61、81、および、観察光学系53をコンパクトに配置することができる。
ヒートシンク56には切欠部56bが形成されているため、切欠部56b内に電子基板ユニット60の接続部91を収容することで、他の部材から接続部91を保護することができる。
LED68における放熱パターン63とは反対側に接点68aが設けられているため、LED68とワイヤ73とを容易に電気的に接続することができる。
【0034】
放熱パターン63の表面には、銀メッキ層71が形成されている。銀の反射率は、金や銅などの他の金属に比べても大きいため、LED68が発する光を前方に効果的に反射することができる。
電極パターン65の表面には、金メッキ層72が形成されているため、電極パターン65とワイヤ73とをより確実に電気的に接続することができる。
【0035】
基材62の熱伝導率は、通常はヒートシンク56の熱伝導率に比べて非常に小さく、さらに、平面視において、放熱パターン63の面積はLED68の面積にほぼ等しい。これらのため、LED68で発生した熱は、一度第二の放熱パターン67に伝導されると、アダプタにおいて一般的に熱に最も弱い封止樹脂75に伝導されにくい構造となっている。これにより、封止樹脂75が熱劣化するのを抑制することができる。
ヒートシンク56の両側に電子基板61、81を備えることで、金属で形成されていて放熱性の高い放熱パターンおよび電極パターンを配置する自由度を高めることができる。
【0036】
なお、本実施形態では、基材62の熱伝導率が比較的大きい場合など、LED68で発生した熱が放熱パターン63から基材62を介してヒートシンク56に充分伝導できる場合には、第二の放熱パターン67およびスルーホール76は備えられなくてもよい。
【0037】
また、本実施形態では、ポリイミドで形成された基材62に代えて、図6に示すように、ガラスエポキシで形成された基材101を備えてもよい。
このように構成することで、内視鏡の製造に要するコストを低減させることができる。
【0038】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図7から図9を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図7および図8に示すように、本実施形態の内視鏡は、前記第1実施形態の内視鏡1の電子基板ユニット60に代えて、先端側電子基板111、基端側電子基板121、および導電ピン131を備えている。
【0039】
図8に示すように、先端側電子基板111は、前記第1実施形態の先端側電子基板61において、基材62に代えて挿通孔101aが形成された基材101を有している。電極パターン65には、挿通孔101aに連通する挿通孔65aが形成されている。
基端側電子基板121は、基端側電子基板81の各構成に加えて、図8および図9に示すように、基材82の基端側の面に配置された裏側用電極パターン122、および、裏側用電極パターン122を被覆する裏側封止樹脂123を備えている。基材82、裏側用電極パターン122には、図8に示すように、互いに連通する挿通孔82a、挿通孔122aがそれぞれ形成されている。裏側用電極パターン122は、銅メッキなどにより形成されている。
基材82は、ボンディングシート126によりヒートシンク56の基端側の面に貼り合わされている。
【0040】
ヒートシンク56には、基材101の挿通孔101a、および基材82の挿通孔82aに連通する挿通孔56cが形成されている。このヒートシンク56には、前記実施形態の切欠部56bは形成されていない。
導電ピン131は、導電性の金属などで形成されている。導電ピン131は、電極パターン65の挿通孔65a、基材101の挿通孔101a、ヒートシンク56の挿通孔56c、基材82の挿通孔82a、そして、裏側用電極パターン122の挿通孔122aに挿通されている。導電ピン131の先端側と金メッキ層72とは、ハンダ136により電気的に接続されている。導電ピン131の基端側と裏側用電極パターン122とは、ハンダ137により電気的に接続されている。
導電ピン131の基端側は、アダプタ本体52と接触しないように絶縁樹脂138により覆われている。
【0041】
前述の第1実施形態では、電子基板ユニット60がFPC基板であるため、接続部91を折り曲げることができた。この例では、基材101がガラスエポキシで形成されているため、先端側電子基板111と基端側電子基板121とを導電ピン131で接続することで、電気的に接続している。
【0042】
このように構成された本実施形態の内視鏡では、LED68に電力を供給する電極パターン65、66が短絡するのを抑えることができる。
さらに、ヒートシンク56に先端側電子基板111および基端側電子基板121をボンディングシートで貼り付けるときに、第1実施形態の接続部91のように折り曲げる必要がないため、貼り付けの作業性を向上させることができる。
基材101として、LED68が発する光を効率良く反射できる白色のものを用いることができる。FPC基板で白色のものは厚くなったり、脆くなったりするため、前述の第1実施形態のように、接続部91を折り曲げることができない。
【0043】
なお、本実施形態では、ヒートシンク56の挿通孔56cに絶縁性の樹脂を充填したり、ヒートシンク56の表面にアルマイト層を形成したりすることで、ヒートシンク56と導電ピン131との絶縁性を高めてもよい。
【0044】
以上、本発明の第1実施形態および第2実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更なども含まれる。さらに、各実施形態で示した構成のそれぞれを適宜組み合わせて利用できることは、言うまでもない。
たとえば、前記第1実施形態および第2実施形態では、放熱パターン63、電極パターン65、66、および第二の放熱パターン67は、銅メッキにより形成されているとした。しかし、これらは、銀や金など、他の金属で形成されてもよい。
【0045】
封止樹脂75の一部を、例えば凸レンズの形状に形成してLED68の前方に配置することで、LED68が発する光を集光させてもよい。LED68が青色の光を発するときには、青色の光を吸収して白色光を放出する蛍光体を封止樹脂75に含ませてもよい。
前記第1実施形態および第2実施形態では、封止樹脂75は必須の構成ではない。内視鏡の使用環境によっては、水や埃が少ない場合もあるからである。
【0046】
複数のLED68から前方に充分な光量の光が発せられている場合には、放熱パターン63の表面に銀メッキ層71が形成されていなくてもよい。
電極パターン65、66の表面に、金メッキ層72に代えて銀メッキ層を形成してもよい。このように構成することで、LED68が発する光をさらに効果的に反射することができる。
電極パターン65、66と図7には示されていないワイヤ73とが確実に接続できる場合には、電極パターン65、66の表面に金メッキ層72が形成されていなくてもよい。
【0047】
前記第1実施形態および第2実施形態では、放熱パターン63と第二の放熱パターン67とを、スルーホール76でなく、ワイヤや金属板などで接続してもよい。
また、電極パターン65、66とLED68との電気的な接続にワイヤ73を用いたが、電極パターンなどの他の方法で電極パターン65、66とLED68とを電気的に接続してもよい。
前記第1実施形態および第2実施形態では、アダプタ毎に電気抵抗の値を変えることで、制御部34がアダプタの種類を認識することができるようにした。しかし、アダプタ毎に制御部34が電気的に識別可能な素子を備えるように構成してもよい。このような素子として、具体的には、インダクタを挙げることができる。
【0048】
発光素子としては、LED68に限ることなく、レーザーダイオードなども好適に用いることができる。
また、前記第1実施形態および第2実施形態では、挿入部10の先端にアダプタ50、100が着脱可能に構成された内視鏡としたが、たとえば、挿入部10の先端に直視用のLEDや観察光学系が固定された内視鏡でもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 内視鏡
10 挿入部
52 アダプタ本体(基体)
53 観察光学系
56 ヒートシンク(放熱部材)
56b 切欠部
62、101 基材
62a 一方の面
62b 他方の面
63 放熱パターン
65、66 電極パターン
67 第二の放熱パターン
68 LED(発光素子)
68a 接点
71 銀メッキ層
72 金メッキ層
73 ワイヤ(配線)
75 封止樹脂
76 スルーホール
81 基端側電子基板(電子基板)
91 接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の挿入部を備える内視鏡において、
前記挿入部の先端側に設けられた基体と、
前記基体に取付けられ、前記基体の前方からの光を集光する観察光学系と、
自身の一方の面が先端側を向くように前記基体に取付けられた板状の基材と、
前記基材の前記一方の面に互いに離間するように配置され、金属で形成された放熱パターンおよび一対の電極パターンと、
前記放熱パターンに設けられた発光素子と、
前記発光素子と一対の前記電極パターンとを電気的にそれぞれ接続する配線と、
前記基材の他方の面上に配置され、前記基材より熱伝導率の大きな材料で形成された放熱部材と、
を有することを特徴とする内視鏡。
【請求項2】
前記基材の前記他方の面に配置され、金属で形成された第二の放熱パターンを備え、
前記第二の放熱パターンは前記放熱部材に接触していることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項3】
前記基材に設けられ、前記放熱パターンおよび前記第二の放熱パターンにそれぞれ接続され金属で形成されたスルーホールを有することを特徴とする請求項2に記載の内視鏡。
【請求項4】
前記発光素子および前記配線を封止する透明の封止樹脂を有することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項5】
前記放熱部材における前記基材とは反対側に配置された電子基板と、
一対の前記電極パターンと前記電子基板とを電気的に接続する接続部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項6】
前記基材、前記電子基板、および、前記接続部は、柔軟性のあるフレキシブルプリンテッドサーキット基板で一体に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の内視鏡。
【請求項7】
前記基材および前記電子基板は、それぞれの厚さ方向に見て互いに略同一形状に形成され、
前記基材および前記電子基板は、前記放熱部材にそれぞれ貼り合わされて構成されていることを特徴とする請求項5に記載の内視鏡。
【請求項8】
前記基材、前記電子基板、および前記放熱部材はリング状に形成され、
前記基体の先端側は筒状に形成されて、内部に前記観察光学系が取付けられ、
前記基材、前記電子基板、および前記放熱部材の貫通孔に前記基体の先端側がそれぞれ挿通されていることを特徴とする請求項7に記載の内視鏡。
【請求項9】
前記放熱部材の外周面には、前記接続部を収容する切欠部が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の内視鏡。
【請求項10】
前記発光素子は、前記放熱パターンが接続された側と反対側に接点を有し、
前記接点に前記配線が接続されていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項11】
前記放熱パターンの表面には、銀メッキ層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項12】
前記電極パターンの表面には、金メッキ層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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