円弧状レールの製造方法
【課題】円弧状の内周壁及び外周壁と、両周壁をその側縁で連結する一対の側壁と、内周壁又は外周壁の中央部に長手方向に沿って形成されたスリットとを有する断面C字状の円弧状レールを、金属製薄板を用いて適切に製造する。
【解決手段】金属製薄板状のリングRをスピニング製法で折り曲げることにより側壁313及びスリットにより分割された内周壁又は外周壁の幅方向両側の分割周壁部分312の一方を形成する第1工程と、スリット314の幅以下に幅方向に分割された複数の中子41〜43を用いて、中子41〜43を包み込むようにして、スピニング製法により側壁313及び分割周壁部分312の他方を形成する第2工程と、スリット314から複数の中子41〜43を個別に抜き去る第3工程とを備える。
【解決手段】金属製薄板状のリングRをスピニング製法で折り曲げることにより側壁313及びスリットにより分割された内周壁又は外周壁の幅方向両側の分割周壁部分312の一方を形成する第1工程と、スリット314の幅以下に幅方向に分割された複数の中子41〜43を用いて、中子41〜43を包み込むようにして、スピニング製法により側壁313及び分割周壁部分312の他方を形成する第2工程と、スリット314から複数の中子41〜43を個別に抜き去る第3工程とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円弧状レールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、歩行補助装置に用いられる円弧状レールが知られている(例えば、特許文献1参照)。この歩行補助装置は、利用者が跨ぐようにして着座する着座部材と、着座部材を下方から支える左右一対の脚リンクとを備える。各脚リンクは、曲線案内機構を介して着座部材に対し前後方向に揺動自在に連結されている。
【0003】
曲線案内機構は、着座部材の支持フレームの後端部に前後方向の支軸を介して横方向に揺動自在に連結した断面略C字状の円弧状レールと、この円弧状レールの内周面に当接するローラを備えると共に脚リンクの上端部に固定されるスライダとで構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−247605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の円弧状レールは、軽量化の観点からアルミニウムを用いて押出成形で成形していた。しかしながら、円弧状レールをアルミニウムで成形すると、軽量化を図れる反面、強度性に乏しいという問題がある。
【0006】
そこで、ハイテンション材(高張力鋼板)等の金属製薄板を用いてスピニング製法で製造することが考えられる。
【0007】
しかしながら、断面略C字状の円弧状レールを金属製薄板を用いて製造するには、中子を用いてこの中子を包み込むように製造する必要があるが、円弧状のレールであるため、レールの長手方向の端部開口から中子を引き抜く際に、円弧状レールが変形してしまう問題がある。
【0008】
円弧状レールを長手方向に切断して中子を取り出すことも考えられるが、この場合には、切断された円弧状レールを溶接等で復元する必要があり面倒である。
【0009】
本発明は、断面C字状の円弧状レールを、金属製薄板を用いて適切に製造することができる円弧状レールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1]本発明の第1態様は、円弧状の内周壁及び外周壁と、該両周壁をその側縁で連結する一対の側壁と、該内周壁又は該外周壁の中央部に長手方向に沿って形成されたスリットとを有する断面C字状の円弧状レールの製造方法であって、前記円弧状レールは金属製薄板状のリングをスピニング製法で折り曲げて形成されるものであり、前記スリットにより分割された前記内周壁又は前記外周壁の幅方向両側の分割周壁部分の各幅は、前記スリットの幅以下の幅を備えるものであり、前記金属製薄板状のリングをスピニング製法で折り曲げることにより、前記側壁及び前記分割周壁部分の一方を形成する第1工程と、前記スリットの幅以下に幅方向に分割された複数の中子を用いて、該中子を包み込むようにして、スピニング製法により前記側壁及び前記分割周壁部分の他方を形成する第2工程と、前記スリットから複数の前記中子を個別に抜き去る第3工程と、前記金属製薄板状のリングを周方向に所望の長さで切断する第4工程とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の第1態様の円弧状レールの製造方法によれば、中子はスリットの幅以下に幅方向に複数分割されているため、スリットから中子を抜き去ることができる。このため、中子を取出す際に円弧状レールが変形することなく、断面C字状の円弧状レールを、金属製薄板を用いて適切に製造することができる。
【0012】
[2]本発明の第2態様は、円弧状の内周壁及び外周壁と、両周壁をその側縁で連結する一対の側壁と、内周壁又は外周壁の中央部に長手方向に沿って形成されたスリットとを有する断面C字状の円弧状レールの製造方法であって、円弧状レールは、内側の寸法が所望の寸法となるように、金属製薄板状のリングを周方向に分割された中子を用いてスピニング製法で折り曲げて形成されるものであり、金属製薄板状のリングをスピニング製法で折り曲げることにより、側壁及びスリットにより分割された内周壁又は外周壁の幅方向両側の分割周壁部分の一方を形成する第1工程と、スリットの幅以下に幅方向に分割された複数の中子を用いて、中子を包み込むようにして、スピニング製法により側壁及び分割周壁部分の他方を形成する第2工程とを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の第2態様の円弧状レールの製造方法によっても、中子はスリットの幅以下に幅項方向に複数分割されているため、スリットから中子を抜き去ることができる。このため、中子を取り出す際に円弧状レールが変形することなく、断面C字状の円弧状レールを、金属製薄板を用いて適切に製造することができる。
【0014】
又、中子を用いて製造することにより、円弧状レールの内側の寸法が所望の寸法となるように精度よく製造することができ、円弧状レール内をスライダがスムーズにスライドすることができる。
【0015】
[3]本発明においては、前記複数の中子を、第1工程で形成された前記一方の側壁及び分割周壁部分で画成される空間内に配置される第1分割中子と、第2工程で前記他方の側壁及び分割周壁部分を形成するための第2分割中子と、第1分割中子及び第2分割中子の間に配置される中央中子とで構成し、第2工程では、第2分割中子の外面に沿うように、リングを折り曲げることにより、前記他方の側壁及び分割周壁部分を形成することができる。
【0016】
[4]上記本発明の製造方法で製造された円弧状レールは、その内部で、ローラを有するスライダが摺動するものである。
【0017】
[5]又、本発明の製造方法を用いる製造装置は、円弧状の内周壁及び外周壁と、両周壁をその側縁で連結する一対の側壁と、内周壁又は外周壁の中央部に長手方向に沿って形成されたスリットとを有する断面C字状の円弧状レールを、金属製薄板状のリングをスピニング製法で折り曲げて製造する円弧状レールの製造装置であって、リングが配置される外金型と、外金型との間でリングを挟むようにして配置される中子と、アーム機構により移動自在に設けられたスピニングローラとを備え、中子は幅方向に複数分割されており、スリットにより分割された内周壁又は外周壁の幅方向両側の部分を分割周壁部分として、リングを中子を包み込むようにスピニングローラで折り曲げて、側壁及び分割周壁部分が形成され、中子は、スリットから分割して取り去ることができることを特徴とする。
【0018】
[6]本発明の中子は、円弧状の内周壁及び外周壁と、両周壁をその側縁で連結する一対の側壁と、内周壁又は外周壁の中央部に長手方向に沿って形成されたスリットとを有する断面C字状の円弧状レールを製造する際に用いられる中子であって、側壁とスリットにより分割された内周壁又は外周壁の幅方向両側の分割周壁部分のうち一方の側壁及び分割周壁部分が形成された後、他方の側壁及び分割周壁部分を形成する際に、前記一方の側壁及び分割周壁部で画成される空間内に配置される第1分割中子と、前記他方の側壁及び分割周壁部分を形成するための第2分割中子と、第1分割中子及び第2分割中子の間に配置される中央中子とで構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態の円弧状レールが用いられた歩行補助装置を示す説明図。
【図2】第1実施形態の円弧状レールを示す説明図。
【図3】第1実施形態の円弧状レールの製造装置を示す断面図。
【図4】第1実施形態の外金型を示す斜視図。
【図5】第1実施形態の第1工程で一方の側壁を形成する工程を示す説明図。
【図6】第1実施形態の第1工程で一方の分割周壁部分を形成する工程を示す説明図。
【図7】第1実施形態の第2工程で他方の側壁を形成する工程を示す説明図。
【図8】第1実施形態の第2工程で他方の分割周壁部分を形成する工程を示す説明図。
【図9】第1実施形態の第3工程を示す説明図。
【図10】本発明の第2実施形態の円弧状レールの製造装置を示す断面図。
【図11】本発明の第3実施形態の円弧状レールの製造方法に用いられる中子を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1から図9を参照して、本発明の第1実施形態の円弧状レールの製造方法、この方法を用いる製造装置及び中子、更には、この製造装置で製造された円弧状レールを説明する。
【0021】
第1実施形態の円弧状レールは、図1に示す歩行補助装置に用いられるものである。歩行補助装置は、図1に示す如く、利用者Pが跨ぐようにして着座する着座部材1と、着座部材1を下方から支える左右一対の脚リンク2,2とを備えている。
【0022】
各脚リンク2は、着座部材1に後述する曲線案内機構3を介して前後方向に揺動自在に連結されている。脚リンク2の下端には、利用者Pの左右の各足に装着される靴部8が連結されている。
【0023】
各脚リンク2には、駆動源9が搭載されている。そして、駆動源9の回転駆動で各脚リンク2に伸び方向の力を加え、利用者Pの体重の少なくとも一部を支持する支持力(以下、体重免荷アシスト力という)を発生させようにしている。各脚リンク2で発生された体重免荷アシスト力は着座部材1を介して利用者Pの胴体に伝達され、利用者Pの脚に作用する荷重が軽減される。
【0024】
曲線案内機構3は、着座部材1の支持フレーム1bの後端の立上り部に前後方向の支軸3bを介して横方向に揺動自在に連結した円弧状レール31と、脚リンク2の上端部に固定したスライダ32とで構成されている。円弧状レール31の円弧形状の曲率中心3aは着座部材1のシート部1aの上面より上方に位置する。
【0025】
以下、図2を参照して、曲線案内機構3について詳述する。円弧状レール31は、曲率中心3aに近い内周側の内周壁311と、曲率中心3aから遠い外周側の外周壁312と、内周壁311と外周壁312とを円弧状レール31の長手方向(前後方向)及び円弧形状の曲率半径方向(上下方向)に直交する溝幅方向(横方向)両側で連結する一対の側壁313,313と、外周壁312の幅方向中央部に形成したスリット314とからなり、断面C字状に形成されている。このスリット314により、外周壁312は2つに分割され、この分割された両外周壁312が本発明の分割周壁部分に相当する。
【0026】
スライダ32は、スリット314を通して円弧状レール31の内部に挿入される挿入部321を有している。挿入部321には、円弧状レール31の内周壁311に内部から転動自在に当接する2つの内側回転体341と、外周壁312に内部から転動自在に当接する2つの外側回転体342とが設けられており、この4つの回転体341,342で、スライダ32が円弧状レール31に沿って摺動自在となっている。尚、各回転体341,342は深溝玉軸受で構成されている。
【0027】
円弧状レール31を断面C字状に形成することにより、ズボン等の異物が円弧状レール31に侵入することを確実に防止できる。そのため、回転体341、342の当接部への異物の噛み込みを生じず、脚リンク2の揺動の円滑性が確実に確保される。
【0028】
次に、図3〜図5を参照して、第1実施形態の円弧状レール31の製造装置及び製造方法を説明する。
【0029】
図3及び図4に示すように、第1実施形態の円弧状レール31の製造装置は、金属製薄板状のリングR(図4参照)をスピニング製法により折り曲げて円弧状レール31を製造するものであり、図示省略した駆動源により回転される外金型61と、第1と第2の2つの側中子41,42とこの側中子41,42に挟まれるように位置すると共に両側中子41,42をリングR側に向って押え付ける中央中子43との3つに分割された中子と、各種スピニングローラ5を先端に取り付けて自在に移動させるアーム機構5aとを備える。
【0030】
外金型61は、駆動源に接続される回転軸71とは反対の側面に環状溝61aが形成されている。又、環状溝61aが形成された側の外金型61の側面には、環状溝61aの内側の部分が回転軸方向に向って突出する円柱状の突出部61bが設けられている。
【0031】
環状溝61aには、円弧状レール31を押し出すノックアウトピン72が設けられている。
【0032】
各中子41〜43は、一対の半円環状に分割されており、2つを組み合わせて環状となるように構成されている。中央中子43は、断面L字状に形成されており、ボルト76で外金型61に固定される。第2側中子42の中央中子43と接触する側面側には、径方向内方端に位置させて、中央中子43側に張り出す張出部42aが設けられている。中央中子43の径方向内端には、第2側中子42の張出部42aを受け入れる受入部43aが設けられている。又、第1側中子41にも張出部42aを受入可能な切欠部41aが設けられている。
【0033】
又、中央中子43の第1側中子41と接触する面は、径方向内方に向うに従って次第に第2側中子42側に傾く傾斜面で形成されており、第1側中子41の中央中子43と接触する面も、これに対応するように、径方向内方に向かうに従って次第に中央中子43側に傾く傾斜面で形成されている。これにより、中央中子43を両側中子41,42の間から抜き易くなる。
【0034】
外金型61は回転軸71から取り外し可能に構成されており、外金型61に換えて、後述する有底筒状の第1工程金型62を取付自在に構成されている。
【0035】
次に、図5〜図9を参照して、円弧状レール31の製造工程について説明する。先ず、円弧状レール31の一方の側壁313及びこれに連接する外側壁312を、リングRの一方の側縁部を折り曲げて形成する第1工程を行う。これを詳説すると、先ず、回転軸71から外金型61を取り外し、有底筒状の第1工程金型62(図4参照)の底壁外面に回転軸71を取り付ける。
【0036】
そして、金属製薄板状のリングRを第1工程金型62内に配置し、リングRを第1工程金型62の内周面に心押し部材63で押え付けて、リングRを第1工程金型62に固定する。このとき、図5(a)に示すように、リングRの一方の側縁が第1工程金型62の外に露出した状態となる。尚、図5では、リングRの露出量を調節すべく、第1工程金型62の底面にスペーサ62aが配置されている。
【0037】
そして、図5(b)に示すように、一方の側壁313を形成すべく、先端部が円錐台形状のスピニングローラ5で、リングRの一方の側縁部を、第1工程金型62の開口側の端面に向けて(径方向外方に向けて)所定角度まで折り曲げる。そして、図5(c)、(d)に示すように、円柱状のスピニングローラ5で、リングRの一方の側縁部を段階的に折り曲げて、第1工程金型62の開口側の端面に沿う一方の側壁313を形成する。
【0038】
そして、図5(e)に示すように、略三角錐状のスピニングローラ5をアーム機構5aで径方向内方から外方に動かして一方の側壁313にシゴキ処理を施し、内部応力を緩和させた後、図5(f)に示すように、円柱状のスピニングローラ5を用いて、一方の側壁313を押圧する面押え処理を施し、一方の側壁313の反りを矯正する。
【0039】
次に、図6を参照して、一方の外周壁312を折り曲げる工程を説明する。先ず、図6(a)に示すように、第1工程金型62の外周面よりも径方向外方に張り出す一方の外周壁312の径方向外方部分を、略三角錐状のスピニングローラ5で第1工程金型62の外周面に向けて所定角度まで折り曲げる。
【0040】
そして、図6(b)に示すように、第1工程金型62の外周面に向けて所定角度まで折り曲げられた部分を、円盤状のスピニングローラ5で、第1工程金型62の外周面に沿うように変形させつつシゴキ処理を施して一方の外周壁312(一方の分割周壁部分)を形成する。そして、図6(c)に示すように、一方の外周壁312の幅が所定の寸法となるようにその側縁をカッター73で切断する。
【0041】
そして、図6(d)に示すように、一方の外周壁312を第1工程金型62に固定するための略L字状の固定部材74を第1工程金型62に取り付けると共に、心押し部材63を取り外して、略三角錐状のスピニングローラ5でリングRの折り曲げていない部分に対しシゴキ処理を施す。
【0042】
そして、図6(e),(f)に示すように、図6(d)の工程で、一方の側壁313及び一方の外周壁312の傾きに変化が生じた場合に対応すべく、固定部材74を取り外して、スピニングローラ5で一方の側壁313及び一方の外周壁312の角度矯正を行う。尚、図6(f)に示すように、一方の外周壁312の角度矯正を行う際には、一方の側壁313を押え部材77で押えている。
【0043】
次に、図7及び図8を参照して、他方の側壁313及び他方の外周壁312の形成工程を説明する。先ず、図5及び図6に示された第1工程で一方の側壁313及び一方の外周壁312が形成されたリングRを、外金型61に配置する。その為に、第1工程金型62を回転軸71から取り外し、外金型61を回転軸71に取り付ける。
【0044】
そして、外金型61の環状溝61aに一方の側壁313及び一方の外周壁312を挿入する。そして、リングRに形成した一方の側壁313及び外周壁312で画成される空間内に第1側中子41を挿入し、そして、中央中子43を第1側中子41に重合せるように配置する。
【0045】
そして、中央中子43に側壁用中子44を重合せる。側壁用中子44は、その外周面が中央中子43に向うに従って次第に拡径する傾斜面で形成されている点で、第2側中子と異なるが、他の構成は第2側中子と同一に構成される。
【0046】
側壁用中子44は、その外周面に係合する係止部材44aにより、中央中子43に固定される。これにより、他方の側壁313を形成する際に、側壁用中子44が中央中子43に対してガタつくことを防止できる。
【0047】
次に、図7(a)に示すように、外金型61の突出部61bの周面から回転軸方向に突出するリングRの他方の側縁部分を、側壁用中子44の側面に向けて、先端部が円錐台形状のスピニングローラ5で、所定角度まで折り曲げる。そして、図7(b)及び(c)に示すように、所定角度まで折り曲げられたリングRの他方の側縁部分を、円柱状のスピニングローラ5で、側壁用中子44の側面に沿うように折り曲げる。
【0048】
そして、図7(d)に示すように、形成された他方の側壁313を略三角形状のスピニングローラでしごくシゴキ処理を施して内部応力を適切にすると共に、図7(e)に示すように、円柱状のスピニングローラ5で反りを矯正する面抑え処理を施す。
【0049】
次に、図8を参照して、他方の外周壁312を形成する工程を説明する。先ず、図8(a)に示すように、カッター73で、リングRの他方の側縁を所定の幅となるように切断する。そして、係止部材44a、中央中子43、側壁用中子44の順に、外金型61から取り外し、他方の側壁313の内面に当接するように第2側中子42を配置し、両側中子41,42の間に中央中子43を配置させる。中央中子43は、外金型61にボルト76で固定されており、第2側中子42は、その張出部42aが中央中子43の受入部43aに係止されることにより、第2側中子42の脱落が防止される。
【0050】
又、第2側中子42は、他方の側壁313に当接するため、側壁用中子44の場合のように、係止部材で係止しなくても、軸方向へのガタツキは防止される。
【0051】
そして、図8(b)及び(c)に示すように、第2側中子42の外周面から径方向外方に飛び出したリングRの部分を、第2側中子42の外周面に向けて、スピニングローラ5で折り曲げて、他方の外周壁312(他方の分割周壁部分)を形成する。そして、図8(d)に示すように、中子を取り外した後、円柱状のスピニングローラ5で、他方の側壁313の角度を矯正する。そして、図8(e)に示すように、ノックアウトピン72で、環状溝61aからリングRを押し出し、第4工程として、このリングRを周方向に所望の長さ寸法で切断して、断面C字状の円弧状レール31が完成する。
【0052】
ところで、上述したような中子を用いたスピニング製法により、断面C字状の円弧状レール31を形成した場合、円弧状レール31を、その内側の寸法が所望の寸法となるように精度よく製造することができるため、内部を摺動するスライダを良好にスライドさせることができる半面、中子が包まれてしまうため、幅方向に分割されていない1つの中子を取り出すことは困難である。
【0053】
この中子を取り出す方法としては、例えば、リング状の円弧状レール31を幅方向に所望の長さで切断し、この切断端面から中子を抜き出すことも考えられる。しかしながら、中子も円弧状に湾曲しているため、円弧状レール31の中から抜き出すことは非常に困難であり、円弧状レール31が変形してしまう虞がある。
【0054】
又、円弧状レール31を周方向に切断して、中子を取り出すことも考えられるが、この場合には、溶接で円弧状レール31を復元させる必要があり、面倒である。
【0055】
そこで、第1実施形態の中子は、第1と第2の2つの側中子41,42と、両側中子41,42に幅方向から挟まれるように配置される中央中子43との3つの中子に分割している。
【0056】
これにより、図9(a)に示すように、中央中子43をスリット314から引き抜いた後、図9(b)に示すように、円弧状レール31を第2側中子42が下になるように傾けて、第1側中子41を第2側中子42に重ね合わせ、第1側中子41を円弧状レール31のスリット314から取出すことができる。
【0057】
又、図9(c)に示すように、円弧状レール31の内部は、第1側中子41及び中央中子43を取り去った分だけ空間が広くなり、第2側中子42をスリット314から円弧状レール31を変形させることなく容易に抜き去ることができる。この際、図9(c)に示す、薄板状の補助具75をスリット314から挿入し、この補助具75上に第2側中子42を載せてスリット314から抜き去るようにしてもよい。
【0058】
次に、図10を参照して、本発明の円弧状レールの製造方法の第2実施形態について説明する。第2実施形態の円弧状レールの製造方法は、第1実施形態のものと比較して、第2側中子42’及び中央中子43’の形状、第2工程が異なる以外は、第1実施形態と同一に構成される。
【0059】
第2実施形態の円弧状レールの製造方法の第2側中子42’は、断面略L字状に構成され、円弧状レール31の他方の側壁313を形成するための外側面42’aが、径方向外方に向かうに従って、次第に幅方向外側に張り出すように傾斜した傾斜面に形成されている。
【0060】
又、第2側中子42’の外側面42’aの径方向外縁に連設する段差面42’bは、外側面42’aとのなす角が、円弧状レール31の他方の側壁313と他方の分割周壁部分312とがなす角となるように傾斜されて形成されている。
【0061】
中央中子43’の第2側中子42’と接触する面は、径方向内方に向かうに従って次第に第1側中子41側に傾く傾斜面を備えており、第2側中子42’の中央中子43’と接触する面も、この傾斜面に対応するように、径方向内方に向かうに従って次第に中央中子43’側に傾く傾斜面を備えている。これにより、中央中子43’を両側中子41,42’の間から抜き易くなる。
【0062】
又、中央中子43’は、ボルト76で外金型61に固定されると共に、第2側中子42’の径方向外方端部と係合する係合部43’aを備える。この係合部43’aにより、第2側中子42’が脱落することを防止している。
【0063】
次いで、第2実施形態の円弧状レール31の製造方法について説明する。第2実施形態の製造方法においては、第2工程以外は、第1実施形態と同一である。第2実施形態の第2工程は、第2側中子42’の外側面42’a及び段差面42’bに沿うように、他方の側壁313及び分割周壁部分312をスピニングローラ5で折り曲げた後、中央中子43’、第1側中子41、第2側中子42’の順に、中子をスリット314から取り除く。
【0064】
そして、図10(b)に示すように、他方の側壁313と内周壁311とのなす角が所望の角度となるように、他方の側壁313をスピニングローラ5で押し曲げる。この後の第4工程は、第1実施形態と同一である。
【0065】
第2実施形態の円弧状レール31の製造方法によれば、第1実施形態のように、側壁用中子44を用いることなく、第2側中子42’のみで、他方の側壁313及び分割周壁部分312を形成することができるため、第1実施形態のように中子を交換する必要がなく、円弧状レール31の製造の容易化及び製造に要する時間の短縮化を図ることができる。
【0066】
又、第2側中子42’を取り除く際に、段差面42’bが傾斜面となっているため、リングRの他方の分割周壁部分312が段差面42’bに喰い付くことなく、容易に取り外すことができる。
【0067】
又、中子41,42’、43’をスリット314から引き抜く際には、他方の側壁313と内周壁311とがなす角は、所望の角度よりも大きい角度となっているため、このときのスリット314の幅は若干広くなっている。従って、第2実施形態の各中子41,42’、43’をスリット314から取り出し易くなる。尚、本発明において、「スリットの幅」とは、円弧状レール31の完成時のスリットの幅のみに限定されるものではなく、第2実施形態の図10(a)の状態のように、中子をスリットから引き抜く工程のときのスリットの幅をも含む概念として定義する。
【0068】
尚、上記両実施形態においては、第2工程において、第1と第2の2つの側中子41,42(42’)を用いたが、第2工程における側中子は必ずしも2つなくてもよく、第2側中子42(42’)だけでも本発明の効果を得ることができる。しかしながら、第1側中子41も用いたほうが図7及び図8で示される本発明の第2工程における一方の側壁313及び一方の外周壁312の変形等を抑制し易くなり、精度よく円弧状レール31を製造することができる。
【0069】
又、上記両実施形態では、外周壁312にスリット314が形成された円弧状レール31を説明したが、これに限らず、内周壁311にスリット314が形成された円弧状レール31であっても、同様に本発明を用いることができる。この場合、外金型61は、第1実施形態の突出部61bに代えて、環状溝61aが形成された側面において、環状溝61aよりも径方向外方の部分を軸方向に突出させた環状の突出部61bを設ければよい。
【0070】
又、中子を、内周壁311に形成されたスリット314から、円弧状レール31の径方向内方に取り出す必要があるため、例えば、図11に第3実施形態として示すように、中子を周方向に4分割すると共に、対向する一対の中子4aの周方向両端面を平行な面として、残る一対の中子4bの周方向両端面を中子4aの周方向の端面に沿った面とすればよい。
【0071】
これにより、一対の中子4aをリングRの径方向内方へ周方向端面に沿うようにしてスリット314から引き抜き、一対の中子4aを引き抜いた後、残りの2つの中子4bをスリット314から引き抜くことにより、中子4a,4b同士が周方向で引っかかり難く、中子4a,4bをリングR内から容易に抜き去ることができる。
【符号の説明】
【0072】
1…着座部材、2…脚リンク、3…曲線案内機構、3a…曲率中心、31…円弧状レール、311…内周壁、312…外周壁(分割周壁部分)、313…側壁、314…スリット、32…スライダ、321…挿入部、341…内側回転体、342…外側回転体、41…第1側中子、41a…切欠部、42…第2側中子、42a…張出部、43…中央中子、43a…受入部、44…側壁用中子、44a…係止部材、5…スピニングローラ、5a…アーム機構、61…外金型、61a…環状溝、61b…突出部、62…第1工程金型、62a…スペーサ、63…心押し部材、71…回転軸、72…ノックアウトピン、73…カッター、74…固定部材、75…補助具、76…ボルト、77…押え部材、8…靴部、9…駆動源、R…金属製薄板状のリング、P…利用者。
【技術分野】
【0001】
本発明は、円弧状レールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、歩行補助装置に用いられる円弧状レールが知られている(例えば、特許文献1参照)。この歩行補助装置は、利用者が跨ぐようにして着座する着座部材と、着座部材を下方から支える左右一対の脚リンクとを備える。各脚リンクは、曲線案内機構を介して着座部材に対し前後方向に揺動自在に連結されている。
【0003】
曲線案内機構は、着座部材の支持フレームの後端部に前後方向の支軸を介して横方向に揺動自在に連結した断面略C字状の円弧状レールと、この円弧状レールの内周面に当接するローラを備えると共に脚リンクの上端部に固定されるスライダとで構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−247605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の円弧状レールは、軽量化の観点からアルミニウムを用いて押出成形で成形していた。しかしながら、円弧状レールをアルミニウムで成形すると、軽量化を図れる反面、強度性に乏しいという問題がある。
【0006】
そこで、ハイテンション材(高張力鋼板)等の金属製薄板を用いてスピニング製法で製造することが考えられる。
【0007】
しかしながら、断面略C字状の円弧状レールを金属製薄板を用いて製造するには、中子を用いてこの中子を包み込むように製造する必要があるが、円弧状のレールであるため、レールの長手方向の端部開口から中子を引き抜く際に、円弧状レールが変形してしまう問題がある。
【0008】
円弧状レールを長手方向に切断して中子を取り出すことも考えられるが、この場合には、切断された円弧状レールを溶接等で復元する必要があり面倒である。
【0009】
本発明は、断面C字状の円弧状レールを、金属製薄板を用いて適切に製造することができる円弧状レールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1]本発明の第1態様は、円弧状の内周壁及び外周壁と、該両周壁をその側縁で連結する一対の側壁と、該内周壁又は該外周壁の中央部に長手方向に沿って形成されたスリットとを有する断面C字状の円弧状レールの製造方法であって、前記円弧状レールは金属製薄板状のリングをスピニング製法で折り曲げて形成されるものであり、前記スリットにより分割された前記内周壁又は前記外周壁の幅方向両側の分割周壁部分の各幅は、前記スリットの幅以下の幅を備えるものであり、前記金属製薄板状のリングをスピニング製法で折り曲げることにより、前記側壁及び前記分割周壁部分の一方を形成する第1工程と、前記スリットの幅以下に幅方向に分割された複数の中子を用いて、該中子を包み込むようにして、スピニング製法により前記側壁及び前記分割周壁部分の他方を形成する第2工程と、前記スリットから複数の前記中子を個別に抜き去る第3工程と、前記金属製薄板状のリングを周方向に所望の長さで切断する第4工程とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の第1態様の円弧状レールの製造方法によれば、中子はスリットの幅以下に幅方向に複数分割されているため、スリットから中子を抜き去ることができる。このため、中子を取出す際に円弧状レールが変形することなく、断面C字状の円弧状レールを、金属製薄板を用いて適切に製造することができる。
【0012】
[2]本発明の第2態様は、円弧状の内周壁及び外周壁と、両周壁をその側縁で連結する一対の側壁と、内周壁又は外周壁の中央部に長手方向に沿って形成されたスリットとを有する断面C字状の円弧状レールの製造方法であって、円弧状レールは、内側の寸法が所望の寸法となるように、金属製薄板状のリングを周方向に分割された中子を用いてスピニング製法で折り曲げて形成されるものであり、金属製薄板状のリングをスピニング製法で折り曲げることにより、側壁及びスリットにより分割された内周壁又は外周壁の幅方向両側の分割周壁部分の一方を形成する第1工程と、スリットの幅以下に幅方向に分割された複数の中子を用いて、中子を包み込むようにして、スピニング製法により側壁及び分割周壁部分の他方を形成する第2工程とを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の第2態様の円弧状レールの製造方法によっても、中子はスリットの幅以下に幅項方向に複数分割されているため、スリットから中子を抜き去ることができる。このため、中子を取り出す際に円弧状レールが変形することなく、断面C字状の円弧状レールを、金属製薄板を用いて適切に製造することができる。
【0014】
又、中子を用いて製造することにより、円弧状レールの内側の寸法が所望の寸法となるように精度よく製造することができ、円弧状レール内をスライダがスムーズにスライドすることができる。
【0015】
[3]本発明においては、前記複数の中子を、第1工程で形成された前記一方の側壁及び分割周壁部分で画成される空間内に配置される第1分割中子と、第2工程で前記他方の側壁及び分割周壁部分を形成するための第2分割中子と、第1分割中子及び第2分割中子の間に配置される中央中子とで構成し、第2工程では、第2分割中子の外面に沿うように、リングを折り曲げることにより、前記他方の側壁及び分割周壁部分を形成することができる。
【0016】
[4]上記本発明の製造方法で製造された円弧状レールは、その内部で、ローラを有するスライダが摺動するものである。
【0017】
[5]又、本発明の製造方法を用いる製造装置は、円弧状の内周壁及び外周壁と、両周壁をその側縁で連結する一対の側壁と、内周壁又は外周壁の中央部に長手方向に沿って形成されたスリットとを有する断面C字状の円弧状レールを、金属製薄板状のリングをスピニング製法で折り曲げて製造する円弧状レールの製造装置であって、リングが配置される外金型と、外金型との間でリングを挟むようにして配置される中子と、アーム機構により移動自在に設けられたスピニングローラとを備え、中子は幅方向に複数分割されており、スリットにより分割された内周壁又は外周壁の幅方向両側の部分を分割周壁部分として、リングを中子を包み込むようにスピニングローラで折り曲げて、側壁及び分割周壁部分が形成され、中子は、スリットから分割して取り去ることができることを特徴とする。
【0018】
[6]本発明の中子は、円弧状の内周壁及び外周壁と、両周壁をその側縁で連結する一対の側壁と、内周壁又は外周壁の中央部に長手方向に沿って形成されたスリットとを有する断面C字状の円弧状レールを製造する際に用いられる中子であって、側壁とスリットにより分割された内周壁又は外周壁の幅方向両側の分割周壁部分のうち一方の側壁及び分割周壁部分が形成された後、他方の側壁及び分割周壁部分を形成する際に、前記一方の側壁及び分割周壁部で画成される空間内に配置される第1分割中子と、前記他方の側壁及び分割周壁部分を形成するための第2分割中子と、第1分割中子及び第2分割中子の間に配置される中央中子とで構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態の円弧状レールが用いられた歩行補助装置を示す説明図。
【図2】第1実施形態の円弧状レールを示す説明図。
【図3】第1実施形態の円弧状レールの製造装置を示す断面図。
【図4】第1実施形態の外金型を示す斜視図。
【図5】第1実施形態の第1工程で一方の側壁を形成する工程を示す説明図。
【図6】第1実施形態の第1工程で一方の分割周壁部分を形成する工程を示す説明図。
【図7】第1実施形態の第2工程で他方の側壁を形成する工程を示す説明図。
【図8】第1実施形態の第2工程で他方の分割周壁部分を形成する工程を示す説明図。
【図9】第1実施形態の第3工程を示す説明図。
【図10】本発明の第2実施形態の円弧状レールの製造装置を示す断面図。
【図11】本発明の第3実施形態の円弧状レールの製造方法に用いられる中子を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1から図9を参照して、本発明の第1実施形態の円弧状レールの製造方法、この方法を用いる製造装置及び中子、更には、この製造装置で製造された円弧状レールを説明する。
【0021】
第1実施形態の円弧状レールは、図1に示す歩行補助装置に用いられるものである。歩行補助装置は、図1に示す如く、利用者Pが跨ぐようにして着座する着座部材1と、着座部材1を下方から支える左右一対の脚リンク2,2とを備えている。
【0022】
各脚リンク2は、着座部材1に後述する曲線案内機構3を介して前後方向に揺動自在に連結されている。脚リンク2の下端には、利用者Pの左右の各足に装着される靴部8が連結されている。
【0023】
各脚リンク2には、駆動源9が搭載されている。そして、駆動源9の回転駆動で各脚リンク2に伸び方向の力を加え、利用者Pの体重の少なくとも一部を支持する支持力(以下、体重免荷アシスト力という)を発生させようにしている。各脚リンク2で発生された体重免荷アシスト力は着座部材1を介して利用者Pの胴体に伝達され、利用者Pの脚に作用する荷重が軽減される。
【0024】
曲線案内機構3は、着座部材1の支持フレーム1bの後端の立上り部に前後方向の支軸3bを介して横方向に揺動自在に連結した円弧状レール31と、脚リンク2の上端部に固定したスライダ32とで構成されている。円弧状レール31の円弧形状の曲率中心3aは着座部材1のシート部1aの上面より上方に位置する。
【0025】
以下、図2を参照して、曲線案内機構3について詳述する。円弧状レール31は、曲率中心3aに近い内周側の内周壁311と、曲率中心3aから遠い外周側の外周壁312と、内周壁311と外周壁312とを円弧状レール31の長手方向(前後方向)及び円弧形状の曲率半径方向(上下方向)に直交する溝幅方向(横方向)両側で連結する一対の側壁313,313と、外周壁312の幅方向中央部に形成したスリット314とからなり、断面C字状に形成されている。このスリット314により、外周壁312は2つに分割され、この分割された両外周壁312が本発明の分割周壁部分に相当する。
【0026】
スライダ32は、スリット314を通して円弧状レール31の内部に挿入される挿入部321を有している。挿入部321には、円弧状レール31の内周壁311に内部から転動自在に当接する2つの内側回転体341と、外周壁312に内部から転動自在に当接する2つの外側回転体342とが設けられており、この4つの回転体341,342で、スライダ32が円弧状レール31に沿って摺動自在となっている。尚、各回転体341,342は深溝玉軸受で構成されている。
【0027】
円弧状レール31を断面C字状に形成することにより、ズボン等の異物が円弧状レール31に侵入することを確実に防止できる。そのため、回転体341、342の当接部への異物の噛み込みを生じず、脚リンク2の揺動の円滑性が確実に確保される。
【0028】
次に、図3〜図5を参照して、第1実施形態の円弧状レール31の製造装置及び製造方法を説明する。
【0029】
図3及び図4に示すように、第1実施形態の円弧状レール31の製造装置は、金属製薄板状のリングR(図4参照)をスピニング製法により折り曲げて円弧状レール31を製造するものであり、図示省略した駆動源により回転される外金型61と、第1と第2の2つの側中子41,42とこの側中子41,42に挟まれるように位置すると共に両側中子41,42をリングR側に向って押え付ける中央中子43との3つに分割された中子と、各種スピニングローラ5を先端に取り付けて自在に移動させるアーム機構5aとを備える。
【0030】
外金型61は、駆動源に接続される回転軸71とは反対の側面に環状溝61aが形成されている。又、環状溝61aが形成された側の外金型61の側面には、環状溝61aの内側の部分が回転軸方向に向って突出する円柱状の突出部61bが設けられている。
【0031】
環状溝61aには、円弧状レール31を押し出すノックアウトピン72が設けられている。
【0032】
各中子41〜43は、一対の半円環状に分割されており、2つを組み合わせて環状となるように構成されている。中央中子43は、断面L字状に形成されており、ボルト76で外金型61に固定される。第2側中子42の中央中子43と接触する側面側には、径方向内方端に位置させて、中央中子43側に張り出す張出部42aが設けられている。中央中子43の径方向内端には、第2側中子42の張出部42aを受け入れる受入部43aが設けられている。又、第1側中子41にも張出部42aを受入可能な切欠部41aが設けられている。
【0033】
又、中央中子43の第1側中子41と接触する面は、径方向内方に向うに従って次第に第2側中子42側に傾く傾斜面で形成されており、第1側中子41の中央中子43と接触する面も、これに対応するように、径方向内方に向かうに従って次第に中央中子43側に傾く傾斜面で形成されている。これにより、中央中子43を両側中子41,42の間から抜き易くなる。
【0034】
外金型61は回転軸71から取り外し可能に構成されており、外金型61に換えて、後述する有底筒状の第1工程金型62を取付自在に構成されている。
【0035】
次に、図5〜図9を参照して、円弧状レール31の製造工程について説明する。先ず、円弧状レール31の一方の側壁313及びこれに連接する外側壁312を、リングRの一方の側縁部を折り曲げて形成する第1工程を行う。これを詳説すると、先ず、回転軸71から外金型61を取り外し、有底筒状の第1工程金型62(図4参照)の底壁外面に回転軸71を取り付ける。
【0036】
そして、金属製薄板状のリングRを第1工程金型62内に配置し、リングRを第1工程金型62の内周面に心押し部材63で押え付けて、リングRを第1工程金型62に固定する。このとき、図5(a)に示すように、リングRの一方の側縁が第1工程金型62の外に露出した状態となる。尚、図5では、リングRの露出量を調節すべく、第1工程金型62の底面にスペーサ62aが配置されている。
【0037】
そして、図5(b)に示すように、一方の側壁313を形成すべく、先端部が円錐台形状のスピニングローラ5で、リングRの一方の側縁部を、第1工程金型62の開口側の端面に向けて(径方向外方に向けて)所定角度まで折り曲げる。そして、図5(c)、(d)に示すように、円柱状のスピニングローラ5で、リングRの一方の側縁部を段階的に折り曲げて、第1工程金型62の開口側の端面に沿う一方の側壁313を形成する。
【0038】
そして、図5(e)に示すように、略三角錐状のスピニングローラ5をアーム機構5aで径方向内方から外方に動かして一方の側壁313にシゴキ処理を施し、内部応力を緩和させた後、図5(f)に示すように、円柱状のスピニングローラ5を用いて、一方の側壁313を押圧する面押え処理を施し、一方の側壁313の反りを矯正する。
【0039】
次に、図6を参照して、一方の外周壁312を折り曲げる工程を説明する。先ず、図6(a)に示すように、第1工程金型62の外周面よりも径方向外方に張り出す一方の外周壁312の径方向外方部分を、略三角錐状のスピニングローラ5で第1工程金型62の外周面に向けて所定角度まで折り曲げる。
【0040】
そして、図6(b)に示すように、第1工程金型62の外周面に向けて所定角度まで折り曲げられた部分を、円盤状のスピニングローラ5で、第1工程金型62の外周面に沿うように変形させつつシゴキ処理を施して一方の外周壁312(一方の分割周壁部分)を形成する。そして、図6(c)に示すように、一方の外周壁312の幅が所定の寸法となるようにその側縁をカッター73で切断する。
【0041】
そして、図6(d)に示すように、一方の外周壁312を第1工程金型62に固定するための略L字状の固定部材74を第1工程金型62に取り付けると共に、心押し部材63を取り外して、略三角錐状のスピニングローラ5でリングRの折り曲げていない部分に対しシゴキ処理を施す。
【0042】
そして、図6(e),(f)に示すように、図6(d)の工程で、一方の側壁313及び一方の外周壁312の傾きに変化が生じた場合に対応すべく、固定部材74を取り外して、スピニングローラ5で一方の側壁313及び一方の外周壁312の角度矯正を行う。尚、図6(f)に示すように、一方の外周壁312の角度矯正を行う際には、一方の側壁313を押え部材77で押えている。
【0043】
次に、図7及び図8を参照して、他方の側壁313及び他方の外周壁312の形成工程を説明する。先ず、図5及び図6に示された第1工程で一方の側壁313及び一方の外周壁312が形成されたリングRを、外金型61に配置する。その為に、第1工程金型62を回転軸71から取り外し、外金型61を回転軸71に取り付ける。
【0044】
そして、外金型61の環状溝61aに一方の側壁313及び一方の外周壁312を挿入する。そして、リングRに形成した一方の側壁313及び外周壁312で画成される空間内に第1側中子41を挿入し、そして、中央中子43を第1側中子41に重合せるように配置する。
【0045】
そして、中央中子43に側壁用中子44を重合せる。側壁用中子44は、その外周面が中央中子43に向うに従って次第に拡径する傾斜面で形成されている点で、第2側中子と異なるが、他の構成は第2側中子と同一に構成される。
【0046】
側壁用中子44は、その外周面に係合する係止部材44aにより、中央中子43に固定される。これにより、他方の側壁313を形成する際に、側壁用中子44が中央中子43に対してガタつくことを防止できる。
【0047】
次に、図7(a)に示すように、外金型61の突出部61bの周面から回転軸方向に突出するリングRの他方の側縁部分を、側壁用中子44の側面に向けて、先端部が円錐台形状のスピニングローラ5で、所定角度まで折り曲げる。そして、図7(b)及び(c)に示すように、所定角度まで折り曲げられたリングRの他方の側縁部分を、円柱状のスピニングローラ5で、側壁用中子44の側面に沿うように折り曲げる。
【0048】
そして、図7(d)に示すように、形成された他方の側壁313を略三角形状のスピニングローラでしごくシゴキ処理を施して内部応力を適切にすると共に、図7(e)に示すように、円柱状のスピニングローラ5で反りを矯正する面抑え処理を施す。
【0049】
次に、図8を参照して、他方の外周壁312を形成する工程を説明する。先ず、図8(a)に示すように、カッター73で、リングRの他方の側縁を所定の幅となるように切断する。そして、係止部材44a、中央中子43、側壁用中子44の順に、外金型61から取り外し、他方の側壁313の内面に当接するように第2側中子42を配置し、両側中子41,42の間に中央中子43を配置させる。中央中子43は、外金型61にボルト76で固定されており、第2側中子42は、その張出部42aが中央中子43の受入部43aに係止されることにより、第2側中子42の脱落が防止される。
【0050】
又、第2側中子42は、他方の側壁313に当接するため、側壁用中子44の場合のように、係止部材で係止しなくても、軸方向へのガタツキは防止される。
【0051】
そして、図8(b)及び(c)に示すように、第2側中子42の外周面から径方向外方に飛び出したリングRの部分を、第2側中子42の外周面に向けて、スピニングローラ5で折り曲げて、他方の外周壁312(他方の分割周壁部分)を形成する。そして、図8(d)に示すように、中子を取り外した後、円柱状のスピニングローラ5で、他方の側壁313の角度を矯正する。そして、図8(e)に示すように、ノックアウトピン72で、環状溝61aからリングRを押し出し、第4工程として、このリングRを周方向に所望の長さ寸法で切断して、断面C字状の円弧状レール31が完成する。
【0052】
ところで、上述したような中子を用いたスピニング製法により、断面C字状の円弧状レール31を形成した場合、円弧状レール31を、その内側の寸法が所望の寸法となるように精度よく製造することができるため、内部を摺動するスライダを良好にスライドさせることができる半面、中子が包まれてしまうため、幅方向に分割されていない1つの中子を取り出すことは困難である。
【0053】
この中子を取り出す方法としては、例えば、リング状の円弧状レール31を幅方向に所望の長さで切断し、この切断端面から中子を抜き出すことも考えられる。しかしながら、中子も円弧状に湾曲しているため、円弧状レール31の中から抜き出すことは非常に困難であり、円弧状レール31が変形してしまう虞がある。
【0054】
又、円弧状レール31を周方向に切断して、中子を取り出すことも考えられるが、この場合には、溶接で円弧状レール31を復元させる必要があり、面倒である。
【0055】
そこで、第1実施形態の中子は、第1と第2の2つの側中子41,42と、両側中子41,42に幅方向から挟まれるように配置される中央中子43との3つの中子に分割している。
【0056】
これにより、図9(a)に示すように、中央中子43をスリット314から引き抜いた後、図9(b)に示すように、円弧状レール31を第2側中子42が下になるように傾けて、第1側中子41を第2側中子42に重ね合わせ、第1側中子41を円弧状レール31のスリット314から取出すことができる。
【0057】
又、図9(c)に示すように、円弧状レール31の内部は、第1側中子41及び中央中子43を取り去った分だけ空間が広くなり、第2側中子42をスリット314から円弧状レール31を変形させることなく容易に抜き去ることができる。この際、図9(c)に示す、薄板状の補助具75をスリット314から挿入し、この補助具75上に第2側中子42を載せてスリット314から抜き去るようにしてもよい。
【0058】
次に、図10を参照して、本発明の円弧状レールの製造方法の第2実施形態について説明する。第2実施形態の円弧状レールの製造方法は、第1実施形態のものと比較して、第2側中子42’及び中央中子43’の形状、第2工程が異なる以外は、第1実施形態と同一に構成される。
【0059】
第2実施形態の円弧状レールの製造方法の第2側中子42’は、断面略L字状に構成され、円弧状レール31の他方の側壁313を形成するための外側面42’aが、径方向外方に向かうに従って、次第に幅方向外側に張り出すように傾斜した傾斜面に形成されている。
【0060】
又、第2側中子42’の外側面42’aの径方向外縁に連設する段差面42’bは、外側面42’aとのなす角が、円弧状レール31の他方の側壁313と他方の分割周壁部分312とがなす角となるように傾斜されて形成されている。
【0061】
中央中子43’の第2側中子42’と接触する面は、径方向内方に向かうに従って次第に第1側中子41側に傾く傾斜面を備えており、第2側中子42’の中央中子43’と接触する面も、この傾斜面に対応するように、径方向内方に向かうに従って次第に中央中子43’側に傾く傾斜面を備えている。これにより、中央中子43’を両側中子41,42’の間から抜き易くなる。
【0062】
又、中央中子43’は、ボルト76で外金型61に固定されると共に、第2側中子42’の径方向外方端部と係合する係合部43’aを備える。この係合部43’aにより、第2側中子42’が脱落することを防止している。
【0063】
次いで、第2実施形態の円弧状レール31の製造方法について説明する。第2実施形態の製造方法においては、第2工程以外は、第1実施形態と同一である。第2実施形態の第2工程は、第2側中子42’の外側面42’a及び段差面42’bに沿うように、他方の側壁313及び分割周壁部分312をスピニングローラ5で折り曲げた後、中央中子43’、第1側中子41、第2側中子42’の順に、中子をスリット314から取り除く。
【0064】
そして、図10(b)に示すように、他方の側壁313と内周壁311とのなす角が所望の角度となるように、他方の側壁313をスピニングローラ5で押し曲げる。この後の第4工程は、第1実施形態と同一である。
【0065】
第2実施形態の円弧状レール31の製造方法によれば、第1実施形態のように、側壁用中子44を用いることなく、第2側中子42’のみで、他方の側壁313及び分割周壁部分312を形成することができるため、第1実施形態のように中子を交換する必要がなく、円弧状レール31の製造の容易化及び製造に要する時間の短縮化を図ることができる。
【0066】
又、第2側中子42’を取り除く際に、段差面42’bが傾斜面となっているため、リングRの他方の分割周壁部分312が段差面42’bに喰い付くことなく、容易に取り外すことができる。
【0067】
又、中子41,42’、43’をスリット314から引き抜く際には、他方の側壁313と内周壁311とがなす角は、所望の角度よりも大きい角度となっているため、このときのスリット314の幅は若干広くなっている。従って、第2実施形態の各中子41,42’、43’をスリット314から取り出し易くなる。尚、本発明において、「スリットの幅」とは、円弧状レール31の完成時のスリットの幅のみに限定されるものではなく、第2実施形態の図10(a)の状態のように、中子をスリットから引き抜く工程のときのスリットの幅をも含む概念として定義する。
【0068】
尚、上記両実施形態においては、第2工程において、第1と第2の2つの側中子41,42(42’)を用いたが、第2工程における側中子は必ずしも2つなくてもよく、第2側中子42(42’)だけでも本発明の効果を得ることができる。しかしながら、第1側中子41も用いたほうが図7及び図8で示される本発明の第2工程における一方の側壁313及び一方の外周壁312の変形等を抑制し易くなり、精度よく円弧状レール31を製造することができる。
【0069】
又、上記両実施形態では、外周壁312にスリット314が形成された円弧状レール31を説明したが、これに限らず、内周壁311にスリット314が形成された円弧状レール31であっても、同様に本発明を用いることができる。この場合、外金型61は、第1実施形態の突出部61bに代えて、環状溝61aが形成された側面において、環状溝61aよりも径方向外方の部分を軸方向に突出させた環状の突出部61bを設ければよい。
【0070】
又、中子を、内周壁311に形成されたスリット314から、円弧状レール31の径方向内方に取り出す必要があるため、例えば、図11に第3実施形態として示すように、中子を周方向に4分割すると共に、対向する一対の中子4aの周方向両端面を平行な面として、残る一対の中子4bの周方向両端面を中子4aの周方向の端面に沿った面とすればよい。
【0071】
これにより、一対の中子4aをリングRの径方向内方へ周方向端面に沿うようにしてスリット314から引き抜き、一対の中子4aを引き抜いた後、残りの2つの中子4bをスリット314から引き抜くことにより、中子4a,4b同士が周方向で引っかかり難く、中子4a,4bをリングR内から容易に抜き去ることができる。
【符号の説明】
【0072】
1…着座部材、2…脚リンク、3…曲線案内機構、3a…曲率中心、31…円弧状レール、311…内周壁、312…外周壁(分割周壁部分)、313…側壁、314…スリット、32…スライダ、321…挿入部、341…内側回転体、342…外側回転体、41…第1側中子、41a…切欠部、42…第2側中子、42a…張出部、43…中央中子、43a…受入部、44…側壁用中子、44a…係止部材、5…スピニングローラ、5a…アーム機構、61…外金型、61a…環状溝、61b…突出部、62…第1工程金型、62a…スペーサ、63…心押し部材、71…回転軸、72…ノックアウトピン、73…カッター、74…固定部材、75…補助具、76…ボルト、77…押え部材、8…靴部、9…駆動源、R…金属製薄板状のリング、P…利用者。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円弧状の内周壁及び外周壁と、該両周壁をその側縁で連結する一対の側壁と、該内周壁又は該外周壁の中央部に長手方向に沿って形成されたスリットとを有する断面C字状の円弧状レールの製造方法であって、
前記円弧状レールは金属製薄板状のリングを周方向に分割された中子を用いてスピニング製法で折り曲げて形成されるものであり、
前記金属製薄板状のリングを、スピニング製法で折り曲げることにより、前記側壁及び前記スリットにより分割された前記内周壁又は前記外周壁の幅方向両側の分割周壁部分の一方を形成する第1工程と、
前記スリットの幅以下に幅方向に分割された複数の前記中子を用いて、該中子を包み込むようにして、スピニング製法により前記側壁及び前記分割周壁部分の他方を形成する第2工程と、
前記スリットから複数の前記中子を個別に抜き去る第3工程と、
前記金属製薄板状のリングを周方向に所望の長さで切断する第4工程とを備えることを特徴とする円弧状レールの製造方法。
【請求項2】
円弧状の内周壁及び外周壁と、該両周壁をその側縁で連結する一対の側壁と、該内周壁又は該外周壁の中央部に長手方向に沿って形成されたスリットとを有する断面C字状の円弧状レールの製造方法であって、
前記円弧状レールは、内側の寸法が所望の寸法となるように、金属製薄板状のリングを周方向に分割された中子を用いてスピニング製法で折り曲げて形成されるものであり、
前記金属製薄板状のリングをスピニング製法で折り曲げることにより、前記側壁及び前記スリットにより分割された前記内周壁又は前記外周壁の幅方向両側の分割周壁部分の一方を形成する第1工程と、
前記スリットの幅以下に幅方向に分割された複数の前記中子を用いて、該中子を包み込むようにして、スピニング製法により前記側壁及び前記分割周壁部分の他方を形成する第2工程とを備えることを特徴とする円弧状レールの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の円弧状レールの製造方法において、
前記複数の中子は、前記第1工程で形成された前記一方の側壁及び分割周壁部分で画成される空間内に配置される第1分割中子と、前記第2工程で前記他方の側壁及び分割周壁部分を形成するための第2分割中子と、該第1分割中子及び該第2分割中子の間に配置される中央中子とからなり、
前記第2工程では、前記第2分割中子の外面に沿うように、前記リングを折り曲げて前記他方の側壁及び分割周壁部分を形成することを特徴とする円弧状レールの製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の製造方法で製造された円弧状レールであって、その内部を、ローラを有するスライダが摺動するものであることを特徴とする円弧状レール。
【請求項5】
円弧状の内周壁及び外周壁と、該両周壁をその側縁で連結する一対の側壁と、該内周壁又は該外周壁の中央部に長手方向に沿って形成されたスリットとを有する断面C字状の円弧状レールを、金属製薄板状のリングを周方向に分割された中子を用いてスピニング製法で折り曲げて製造する円弧状レールの製造装置であって、
前記リングが配置される外金型と、該外金型との間で前記リングを挟むようにして配置される中子と、アーム機構により移動自在に設けられたスピニングローラとを備え、
前記中子は幅方向に複数分割されており、
前記スリットにより分割された前記内周壁又は前記外周壁の幅方向両側の部分を分割周壁部分として、
前記リングを前記中子を包み込むように前記スピニングローラで折り曲げて、前記側壁及び前記分割周壁部分が形成され、
前記中子は、前記スリットから分割して取り去ることができることを特徴とする円弧状レールの製造装置。
【請求項6】
円弧状の内周壁及び外周壁と、該両周壁をその側縁で連結する一対の側壁と、該内周壁又は該外周壁の中央部に長手方向に沿って形成されたスリットとを有する断面C字状の円弧状レールを製造する際に用いられる中子であって、
前記側壁と前記スリットにより分割された前記内周壁又は前記外周壁の幅方向両側の分割周壁部分のうち一方の側壁及び分割周壁部分が形成された後、
他方の側壁及び分割周壁部分を形成する際に、前記一方の側壁及び分割周壁部で画成される空間内に配置される第1分割中子と、
前記他方の側壁及び分割周壁部分を形成するための第2分割中子と、
該第1分割中子及び該第2分割中子の間に配置される中央中子とで構成されることを特徴とする円弧状レール製造用中子。
【請求項1】
円弧状の内周壁及び外周壁と、該両周壁をその側縁で連結する一対の側壁と、該内周壁又は該外周壁の中央部に長手方向に沿って形成されたスリットとを有する断面C字状の円弧状レールの製造方法であって、
前記円弧状レールは金属製薄板状のリングを周方向に分割された中子を用いてスピニング製法で折り曲げて形成されるものであり、
前記金属製薄板状のリングを、スピニング製法で折り曲げることにより、前記側壁及び前記スリットにより分割された前記内周壁又は前記外周壁の幅方向両側の分割周壁部分の一方を形成する第1工程と、
前記スリットの幅以下に幅方向に分割された複数の前記中子を用いて、該中子を包み込むようにして、スピニング製法により前記側壁及び前記分割周壁部分の他方を形成する第2工程と、
前記スリットから複数の前記中子を個別に抜き去る第3工程と、
前記金属製薄板状のリングを周方向に所望の長さで切断する第4工程とを備えることを特徴とする円弧状レールの製造方法。
【請求項2】
円弧状の内周壁及び外周壁と、該両周壁をその側縁で連結する一対の側壁と、該内周壁又は該外周壁の中央部に長手方向に沿って形成されたスリットとを有する断面C字状の円弧状レールの製造方法であって、
前記円弧状レールは、内側の寸法が所望の寸法となるように、金属製薄板状のリングを周方向に分割された中子を用いてスピニング製法で折り曲げて形成されるものであり、
前記金属製薄板状のリングをスピニング製法で折り曲げることにより、前記側壁及び前記スリットにより分割された前記内周壁又は前記外周壁の幅方向両側の分割周壁部分の一方を形成する第1工程と、
前記スリットの幅以下に幅方向に分割された複数の前記中子を用いて、該中子を包み込むようにして、スピニング製法により前記側壁及び前記分割周壁部分の他方を形成する第2工程とを備えることを特徴とする円弧状レールの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の円弧状レールの製造方法において、
前記複数の中子は、前記第1工程で形成された前記一方の側壁及び分割周壁部分で画成される空間内に配置される第1分割中子と、前記第2工程で前記他方の側壁及び分割周壁部分を形成するための第2分割中子と、該第1分割中子及び該第2分割中子の間に配置される中央中子とからなり、
前記第2工程では、前記第2分割中子の外面に沿うように、前記リングを折り曲げて前記他方の側壁及び分割周壁部分を形成することを特徴とする円弧状レールの製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の製造方法で製造された円弧状レールであって、その内部を、ローラを有するスライダが摺動するものであることを特徴とする円弧状レール。
【請求項5】
円弧状の内周壁及び外周壁と、該両周壁をその側縁で連結する一対の側壁と、該内周壁又は該外周壁の中央部に長手方向に沿って形成されたスリットとを有する断面C字状の円弧状レールを、金属製薄板状のリングを周方向に分割された中子を用いてスピニング製法で折り曲げて製造する円弧状レールの製造装置であって、
前記リングが配置される外金型と、該外金型との間で前記リングを挟むようにして配置される中子と、アーム機構により移動自在に設けられたスピニングローラとを備え、
前記中子は幅方向に複数分割されており、
前記スリットにより分割された前記内周壁又は前記外周壁の幅方向両側の部分を分割周壁部分として、
前記リングを前記中子を包み込むように前記スピニングローラで折り曲げて、前記側壁及び前記分割周壁部分が形成され、
前記中子は、前記スリットから分割して取り去ることができることを特徴とする円弧状レールの製造装置。
【請求項6】
円弧状の内周壁及び外周壁と、該両周壁をその側縁で連結する一対の側壁と、該内周壁又は該外周壁の中央部に長手方向に沿って形成されたスリットとを有する断面C字状の円弧状レールを製造する際に用いられる中子であって、
前記側壁と前記スリットにより分割された前記内周壁又は前記外周壁の幅方向両側の分割周壁部分のうち一方の側壁及び分割周壁部分が形成された後、
他方の側壁及び分割周壁部分を形成する際に、前記一方の側壁及び分割周壁部で画成される空間内に配置される第1分割中子と、
前記他方の側壁及び分割周壁部分を形成するための第2分割中子と、
該第1分割中子及び該第2分割中子の間に配置される中央中子とで構成されることを特徴とする円弧状レール製造用中子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−224195(P2011−224195A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97753(P2010−97753)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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