説明

円筒形二次電池

【課題】円筒形二次電池において、正極電極とセパレータとの隙間から異物が入り込み内部短絡が発生するのを防止する。
【解決手段】軸芯15の周囲に、正極電極11、負極電極12および第1、第2のセパレータ13、14が捲回された電極群10を電池缶2内に収容する。軸芯15の中空部15dの上部側から非水電解液5を注入する。非水電解液5は、L1〜L4方向に順次流動するが、この際、非水電解液5中に混在している導電性の異物は、絶縁テープ51A、51Bにより流動を遮断され、電池缶2の底部側に封鎖される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、円筒形二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池等に代表される円筒形二次電池においては、正極合剤が形成された正極電極と負極合剤が形成された負極電極とをセパレータを介して軸芯の周囲に捲回して電極群を構成する。正極合剤は正極金属箔の両面に塗工され、正極金属箔の長手方向の一側縁部は正極合剤が形成されない正極合剤未処理部とされる。また、負極合剤は負極金属箔の両面に塗工され、負極金属箔の長手方向の他側縁部は負極合剤が形成されない負極合剤未処理部とされる。
【0003】
正極電極を正極集電部材に溶接するため、ロールカッタ等により正極金属箔の正極合剤未処理部を切断して、正極金属箔の長手方向に沿う片側の一側縁部に、通常、タブと言われる所定のピッチで配列される多数の正極リードを形成する。負極電極側においても同様で、ロールカッタ等により負極金属箔の負極合剤未処理部を切断して、正極金属箔の長手方向に沿う片側の他側縁部に、所定のピッチで配列される多数の負極リードを形成する。正極リードと負極リードとは、互いに反対側の側縁部に、相対向して形成される。
【0004】
正極リードおよび負極リードを形成する工程等において、導電性の金属異物が生成される。電池容器内に電極群を収容し、電解液を注入すると、金属異物は電解液内に混入する。電解液に混入した金属異物は、正極電極と負極電極との間に入り込み、正極電極に接触してプラスにイオン化し、セパレータを透過して負極電極で析出する。負極電極に析出した析出物が堆積し、正極側の部材に接触すると内部短絡を生じる。このように正極電極と負極電極とがスポット的に短絡すると、必要な電圧が得られない等、電池性能が低下する。
【0005】
この対応として、例えば、角形の二次電池において、電極群が収容された有底無頭型の密閉容器(電池缶)の内面全体に、電極群とは離間して絶縁性の多孔質体を配置し、多孔質体が有する細孔に電解液に混在する金属異物を捕集するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−87812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1に記載された角形の二次電池では、電極群と多孔質体とが大きく離間しているため、金属異物が、一旦、多孔質体の細孔に捕集されたとしても、二次電池に振動や衝撃が与えられた場合、捕集状態を維持することの信頼性に乏しい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の円筒形二次電池は、底部を有し、上部が開口された電池缶と、電池缶内に収容され、中空部を有する軸芯の周囲に、正極電極および負極電極がセパレータを介在して捲回された電極群とを具備し、電解液が電池缶の開口側における軸芯の中空部から電池缶の底部側に注入される円筒形二次電池であって、少なくとも電極群における電池缶の底部側の側端面に対応する外周に絶縁テープが巻き付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明の円筒形二次電池によれば、電池缶の缶底側に溜まった導電性の異物は、絶縁テープにより電池缶の上部側に流動するのを遮断されるため、円筒形二次電池に振動や衝撃が与えられた場合においても高い信頼性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る円筒形二次電池の一実施形態の断面図。
【図2】図1に示された円筒形二次電池の分解斜視図。
【図3】図1の電極群の詳細を示し、一部を切断した状態の斜視図。
【図4】図1における円筒形二次電池の底部側の拡大断面図。
【図5】図1における円筒形二次電池の上部側の拡大断面図。
【図6】本発明に係る二次電池の実施形態2の要部拡大断面図。
【図7】本発明に係る二次電池の実施形態3の要部拡大断面図。
【図8】本発明に係る二次電池の実施形態4の要部拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態1)
−二次電池の構造−
以下、この発明の円筒形二次電池を図面と共に説明する。
図1は、この発明の円筒形二次電池の一実施の形態を示す拡大断面図であり、図2は、図1に示された円筒形二次電池の分解斜視図である。
円筒形二次電池1は、例えば、リチウムイオン二次電池であり、外形40mmφ、高さ100mmの寸法を有する。この円筒形二次電池1は、底部を有し、上部が開口された有底無頭の円筒形の電池缶2および電池缶2の上部を封口するハット型の電池蓋3で構成される電池容器4の内部に、以下に説明する発電用の各構成部材が収容され、非水電解液5が注入されている。
【0012】
有底無頭の円筒形の電池缶2には、上端側の設けられた開口部2b側に電池缶2の内側に突き出した溝2aが形成されている。
電池缶2の中央部には、電極群10が配置されている。電極群10は、軸方向に沿う中空部15dを有する細長い円筒形の軸芯15と、軸芯15の周囲に捲回された正極電極および負極電極とを備える。図3は、電極群10の構造の詳細を示し、一部を切断した状態の斜視図である。図3に図示されるように、電極群10は、軸芯15の周囲に、正極電極11、負極電極12、および第1、第2のセパレータ13、14が捲回された構成を有する。
【0013】
軸芯15は、軸に沿って形成された中空部15dを有する中空円筒状を有し、電池缶2の底部側に中空部15dから注入された非水電解液5を軸芯15の外部に流出するための複数の貫通孔15cが形成されている。軸芯15には、負極電極12、第1のセパレータ13、正極電極11および第2のセパレータ14が、この順に積層され、捲回されている。最内周の負極電極12の内側には第1のセパレータ13および第2のセパレータ14が数周(図3では、1周)捲回されている。第1のセパレータ13および第2のセパレータ14は、絶縁性の多孔質体で形成されている。また、最外周側は負極電極12およびその外周に捲回された第2のセパレータ14となっている。最外周の第2のセパレータ14が接着テープ19で止められる(図2参照)。
【0014】
正極電極11は、アルミニウム箔により形成され長尺な形状を有し、正極金属箔11aと、この正極金属箔11aの両面に正極合剤11bが塗布された正極処理部を有する。正極金属箔11aの長手方向に延在する上方側の側縁は、正極合剤11bが塗布されずアルミニウム箔が露出した正極合剤未処理部11cとなっている。この正極合剤未処理部11cには、軸芯15の軸に沿って上方に突き出す多数の正極リード16が等間隔に一体的に形成されている。
【0015】
正極合剤11bは正極活物質と、正極導電材と、正極バインダとからなる。正極活物質はリチウム酸化物が好ましい。例として、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、リチウム複合酸化物(コバルト、ニッケル、マンガンから選ばれる2種類以上を含むリチウム酸化物)等が挙げられる。正極導電材は、正極合剤中におけるリチウムの吸蔵放出反応で生じた電子の正極電極への伝達を補助できるものであれば制限は無い。しかし中でも上述の材料である、コバルト酸リチウムとマンガン酸リチウムとニッケル酸リチウムとからなるリチウム複合酸化物を使用することにより良好な特性が得られる。
【0016】
正極バインダは、正極活物質と正極導電材を結着させ、また正極合剤と正極集電体を結着させることが可能であり、非水電解液5との接触により、大幅に劣化しなければ特に制限はない。正極バインダの例としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)やフッ素ゴムなどが挙げられる。正極合剤層の形成方法は、正極電極上に正極合剤が形成される方法であれば制限はない。正極合剤11bの形成方法の例として、正極合剤11bの構成物質の分散溶液を正極金属箔11a上に塗布する方法が挙げられる。このような方法で製造することにより特性の優れた正極合剤が得られる。
【0017】
正極合剤11bを正極金属箔11aに塗布する方法の例として、ロール塗工法、スリットダイ塗工法、等が挙げられる。正極合剤11bに分散溶液の溶媒例として、N−メチルピロリドン(NMP)や水等を添加し、混練したスラリを、厚さ20μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布し、乾燥させた後、プレスし、裁断する。正極合剤11bの塗布厚さの一例としては片側約40μmである。正極金属箔11aをプレスにより裁断する際、正極リード16を一体的に形成する。すべての正極リード16の長さは、ほぼ同じである。
【0018】
負極電極12は、銅箔により形成され長尺な形状を有し、負極金属箔12aと、この負極金属箔12aの両面に負極合剤12bが塗布された負極処理部を有する。負極金属箔12aの長手方向に延在する下方側の側縁は、負極合剤12bが塗布されず銅箔が露出した負極合剤未処理部12cとなっている。この負極合剤未処理部12cには、軸芯15の軸に沿って正極リード16とは反対方向に延出された、多数の負極リード17が等間隔に一体的に形成されている。
【0019】
負極合剤12bは、負極活物質と、負極バインダと、増粘剤とからなる。負極合剤12bは、アセチレンブラックなどの負極導電材を有しても良い。負極活物質としては、黒鉛炭素を用いること、特に人造黒鉛を使用することが好ましい。黒鉛炭素を用いることにより、大容量が要求されるプラグインハイブリッド自動車や電気自動車向けのリチウムイオン二次電池が作製できる。負極合剤12bの形成方法は、負極金属箔12a上に負極合剤12bが形成される方法であれば制限はない。しかしその中でも次に記載する方法により優れた特性の負極合剤が得られる。負極合剤12bを負極金属箔12aに塗布する方法の例として、負極合剤12bの構成物質の分散溶液を負極金属箔12a上に塗布する方法が挙げられる。塗布方法の例として、ロール塗工法、スリットダイ塗工法等が挙げられる。
【0020】
負極合剤12bを負極金属箔12aに塗布する方法の例として、負極合剤12bに分散溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンや水を添加し、混練したスラリを、厚さ10μmの圧延銅箔の両面に均一に塗布し、乾燥させた後、プレスし、裁断する。負極合剤12bの塗布厚さの一例としては片側約40μmである。負極金属箔12aをプレスにより裁断する際、負極リード17を一体的に形成する。すべての負極リード17の長さは、ほぼ同じである。
【0021】
第1のセパレータ13および第2のセパレータ14の幅をWS、負極金属箔12aに形成される負極合剤12bの幅をWC、正極金属箔11aに形成される正極合剤11bの幅をWAとした場合、下記の式を満足するように形成される。
S>WC>WA(図3参照)
すなわち、正極合剤11bの幅WAよりも、常に、負極合剤12bの幅WCが大きい。これは、リチウムイオン二次電池の場合、正極活物質であるリチウムがイオン化してセパレータを浸透するが、負極側に負極活物質が形成されておらず負極金属箔12aが表出していると負極金属箔12aにリチウムが析出し、内部短絡を発生する原因となるからである。
【0022】
第1のセパレータ13および第2のセパレータ14は、それぞれ、例えば、厚さ40μmのポリエチレン製多孔膜で形成されている。
図1および図3において、中空な円筒形状の軸芯15は軸方向(図面の上下方向)の上端部の内面に中空部15dよりも径大の溝15aが形成され、この溝15aに正極集電部材27が圧入されている。正極集電部材27は、例えば、アルミニウムにより形成され、円盤状の基部27a、この基部27aの内周部において軸芯15側に向かって突出し、軸芯15の内面に圧入される下部筒部27b、および外周縁において電池蓋3側に突き出す上部筒部27cを有する。正極集電部材27の基部27aには、電池内部で発生するガスを放出するための開口部27d(図2参照)が形成されている。
【0023】
正極金属箔11aの正極リード16は、すべて、正極集電部材27の上部筒部27cに溶接される。この場合、図2に図示されるように、正極リード16は、正極集電部材27の上部筒部27c上に重なり合って接合される。各正極リード16は大変薄いため、1つでは大電流を取りだすことができない。このため、軸芯15への巻き始めから巻き終わりまでの全長に亘り、多数の正極リード16が所定間隔に形成されている。
【0024】
正極集電部材27は、電解液によって酸化されるので、アルミニウムで形成することにより信頼性を向上することができる。アルミニウムは、なんらかの加工により表面が露出すると、直ちに、表面に酸化アルミウム皮膜が形成され、この酸化アルミニウム皮膜により、電解液による酸化を防止することができる。
また、正極集電部材27をアルミニウムで形成することにより、正極金属箔11aの正極リード16を超音波溶接またはスポット溶接等により溶接することが可能となる。
【0025】
正極集電部材27の上部筒部27cの外周には、正極金属箔11aの正極リード16および押え部材28が溶接されている。多数の正極リード16は、正極集電部材27の上部筒部27cの外周に密着させておき、正極リード16の外周に押え部材28をリング状に巻き付けて仮固定し、この状態で溶接される。
【0026】
軸芯15の下端部の外周には、外径が径小とされた段部15bが形成され、この段部15bに負極集電部材21が圧入されて固定されている。負極集電部材21は、例えば、銅により形成され、円盤状の基部21aに軸芯15の段部15bに圧入される開口部21bが形成され、外周縁に、電池缶2の底部側に向かって突き出す外周筒部21cが形成されている。
負極金属箔12aの負極リード17は、すべて、負極集電部材21の外周筒部21cに超音波溶接等により溶接される。各負極リード17は大変薄いため、大電流を取りだすために、軸芯15への巻き始めから巻き終わりまで全長にわたり、所定間隔で多数形成されている。
【0027】
負極集電部材21の外周筒部21cの外周には、負極金属箔12aの負極リード17および押え部材22が溶接されている。多数の負極リード17を、負極集電部材21の外周筒部21cの外周に密着させておき、負極リード17の外周に押え部材22をリング状に巻き付けて仮固定し、この状態で溶接される。
負極集電部材21の下面には、ニッケルからなる負極通電リード23が溶接されている。
負極通電リード23は、鉄製の電池缶2の底部において、電池缶2に溶接されている。
【0028】
ここで、正極集電部材27に形成された開口部27eは、負極通電リード23を電池缶2に溶接するための電極棒(図示せず)を挿通するためのものである。電極棒を正極集電部材27に形成された開口部27eから軸芯15の中空部に差し込み、その先端部で負極通電リード23を電池缶2の底部内面に押し付けて抵抗溶接を行う。負極集電部材21に接続されている電池缶2は一方の出力端として作用し、電極群10に蓄電された電力を電池缶2から取り出すことができる。
【0029】
電極群10の最外周、すなわち、捲回された第2のセパレータ14の最外周の側面には、上部側に、幅方向における先端側が電池缶2の底部側に突き出すように絶縁テープ51Aが巻き付けられ、また下部側に、幅方向における前端側が電池缶2の溝2a側に突き出すように絶縁テープ51Bが巻き付けられている。
絶縁テープ51Aおよび51Bは、非水電解液5中に混在する金属等の導電性の異物の流動を遮断するためのものである。絶縁テープ51Aおよび51Bの詳細については、後述する。
【0030】
多数の正極リード16が正極集電部材27に溶接され、多数の負極リード17が負極集電部材21に溶接されることにより、正極集電部材27、負極集電部材21および電極群10が一体的にユニット化された発電ユニット20が構成される(図2参照)。発電ユニット20は、上述した、電極群10の外周に巻き付けられた絶縁テープ51Aおよび51Bを含んでいる。但し、図2においては、図示の都合上、負極集電部材21、押え部材22および負極通電リード23は発電ユニット20から分離して図示されている。
【0031】
正極集電部材27の基部27aの上面には、複数のアルミニウム箔が積層されて構成されたフレキシブルな接続部材33が、その一端部を溶接されて接合されている。接続部材33は、複数枚のアルミニウム箔を積層して一体化することにより、大電流を流すことが可能とされ、且つ、フレキシブル性を付与されている。つまり、大電流を流すには接続部材33の厚さを大きくする必要があるが、1枚の金属板で形成すると剛性が大きくなり、フレキシブル性が損なわれる。そこで、板厚の小さな多数のアルミニウム箔を積層してフレキシブル性を持たせている。接続部材33の厚さは、例えば、0.5mm程度であり、厚さ0.1mmのアルミニウム箔を5枚積層して形成される。
【0032】
正極集電部材27の上部筒部27c上には、電池蓋ユニット30が配置されている。電池蓋ユニット30は、リング形状をした絶縁板34、絶縁板34に設けられた開口部34aに嵌入された接続板35、接続板35に溶接されたダイアフラム37およびダイアフラム37に、かしめにより固定された電池蓋3により構成される。
絶縁板34は、円形の開口部34aを有する絶縁性樹脂材料からなるリング形状を有し、正極集電部材27の上部筒部27c上に載置されている。
【0033】
絶縁板34は、開口部34a(図2参照)および下方に突出する側部34bを有している。絶縁板34の開口部34a内には接続板35が嵌合されている。接続板35の下面には、接続部材33の他端部が溶接されて接合されている。この場合、接続部材33は他端部側において湾曲状に折り返されて、正極集電部材27に溶接された面と同じ面が接続板35に溶接されている。
【0034】
接続板35は、アルミニウム合金で形成され、中央部を除くほぼ全体が均一でかつ、中央側が少々低い位置に撓んだ、ほぼ皿形状を有している。接続板35の厚さは、例えば、1mm程度である。接続板35の中心には、薄肉でドーム形状に形成された突起部35aが形成されており、突起部35aの周囲には、複数の開口部35b(図2参照)が形成されている。開口部35bは、電池内部に発生するガスを放出する機能を有している。
【0035】
接続板35の突起部35aはダイアフラム37の中央部の底面に抵抗溶接または摩擦拡散接合により接合されている。ダイアフラム37はアルミニウム合金で形成され、ダイアフラム37の中心部を中心とする円形の切込み37aを有する。切込み37aはプレスにより上面側をV字形状に押し潰して、残部を薄肉にしたものである。ダイアフラム37は、電池の安全性確保のために設けられており、電池の内圧が上昇すると、第1段階として、上方に反り、接続板35の突起部35aとの接合を剥離して接続板35から離間し、接続板35との導通を絶つ。第2段階として、それでも内圧が上昇する場合は切込み37aにおいて開裂し、内部のガスを放出する機能を有する。
【0036】
ダイアフラム37は周縁部において電池蓋3の周縁部を固定している。ダイアフラム37は図2に図示されるように、当初、周縁部に電池蓋3側に向かって垂直に起立する側壁37bを有している。この側壁37b内に電池蓋3を収容し、かしめ加工により、側壁37bを電池蓋3の上面側に屈曲して固定する。
【0037】
電池蓋3は、炭素鋼等の鉄で形成してニッケルめっきが施されており、ダイアフラム37に接触する円盤状の周縁部3aと、この周縁部3aから上方に突出す有頭無底の筒部3bを有するハット型を有する。筒部3bには開口部3cが形成されている。この開口部3cは、電池内部に発生するガス圧によりダイアフラム37が開裂した際、ガスを電池外部に放出するためのものである。電池蓋3は一方の電力出力端として作用し、電池蓋3から蓄電された電力を取り出すことができる。
なお、電池蓋3が鉄で形成されている場合には、別の円筒形二次電池と直列に接合する際、鉄で形成された別の円筒形二次電池とスポット溶接により接合することが可能である。
【0038】
ダイアフラム37の側壁37bと周縁部を覆ってガスケット43が設けられている。ガスケット43は、ゴムで形成されており、限定する意図ではないが、1つの好ましい材料の例として、フッ素系樹脂をあげることができる。
ガスケット43は、当初、図2に図示されるように、リング状の基部43aの周側縁に、上部方向に向けてほぼ垂直に起立して形成された外周壁部43bを有する形状を有している。
【0039】
そして、プレス等により、電池缶2と共にガスケット43の外周壁部43bを屈曲して基部43aと外周壁部43bにより、ダイアフラム37と電池蓋3を軸方向に圧接するようにかしめ加工される。これにより、電池蓋3、ダイアフラム37、絶縁板34および接続板35が一体に形成された電池蓋ユニット30がガスケット43を介して電池缶2に固定される。
【0040】
電池缶2の内部には、非水電解液5が所定量注入されている。非水電解液5の一例としては、リチウム塩がカーボネート系溶媒に溶解した溶液を用いることが好ましい。リチウム塩の例として、フッ化リン酸リチウム(LiPF)、フッ化ホウ酸リチウム(LiBF)、等が挙げられる。また、カーボネート系溶媒の例として、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、プロピレンカーボネート(PC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、或いは上記溶媒の1種類以上から選ばれる溶媒を混合したもの、が挙げられる。
【0041】
しかして、上述した如く、正極電極11に形成された多数の正極リード16は、すべて、正極集電部材27の上部筒部27cの外周に超音波溶接等により溶接される。この場合、正極集電部材27の上部筒部27cの外周の全周囲に亘り、正極リード16をほぼ均等に配分して密着し、正極リード16の外周に押え部材28を巻き付ける。そして、超音波溶接等により、正極集電部材27に正極リード16および押え部材28を溶接する、という方法を用いている。
【0042】
この方法による場合、正極集電部材27に溶接される各正極リード16が、正極集電部材27側に引っ張られる。このため、各正極リード16の基部に対応する正極金属箔11aの正極合剤未処理部11cの部位が各正極リード16と共に正極集電部材27側に寄せられる。これにより、正極合剤未処理部11cの各正極リード16に対応する部分と、その外側に隣接する第2のセパレータ14との間に隙間が生じる。
【0043】
ところで、電池缶2の内部に注入された非水電解液5中には、多数の微小な導電性の異物が混在している。このような異物は、正極電極11および負極電極12の作製工程、電池缶2の加工工程、正極リード16の正極集電部材27への溶接工程等において発生し、非水電解液5中に混入する。そして、上記の如く、正極リード16と、その外側に隣接する第2のセパレータ14との間に隙間が生じると、この隙間から、上記各工程で発生し、非水電解液5中に混入した異物が正極電極11と第2のセパレータ14との間に入り込みやすい。また、正極電極11と第1のセパレータ13、または正極電極11と第2のセパレータ14との間に生じる他の隙間から、上記各工程等で発生し、非水電解液5中に混入した異物が入り込む場合もある。
【0044】
正極電極11と負極電極12間には、所定の電位、例えば4.1Vがかかっているため、正極電極11と第1のセパレータ13との間に入り込んだ異物、または正極電極11と第2のセパレータ14との間に入り込んだ異物はイオン化され、セパレータを浸透して負極電極12側に流れる。そして、負極電極12で成長して析出し、堆積されていく。この堆積物により、正極と負極が短絡する現象が生じる。
【0045】
そこで、本発明の円筒形二次電池では、非水電解液5中に混在する導電性の異物が、正極電極11および負極電極12間に入り込むのを防止することができるような構造とした。
以下、このことについて説明する。
図4は、図1における円筒形二次電池の底部側の拡大断面図であり、図5は、図1における円筒形二次電池の上部側の拡大断面図である。
絶縁テープ51Aおよび51Bは、それぞれ、ベースフィルム52と、ベースフィルム52上に形成された粘着層53により構成されている。ベースフィルム52は、耐溶剤性に優れた、例えば、ポリプロプレン等により形成されたフィルムである。また、粘着層53は、常温接着型で、例えば、アクリル系粘着剤で形成されており、非水電解液5中においても、粘着力を保持している。ベースフィルム52と粘着層53の厚さは、一例を挙げれば、ベースフィルム52が20μm程度、粘着層53が5μm程度である。
【0046】
絶縁テープ51A、51Bは、電極群10を電池缶2内に収容する前に、電極群10の最外周、換言すれば、第2のセパレータ14の最外周の外周面に接着する。絶縁テープ51Aは、粘着層53を電極群10側に向け、絶縁テープ51Aの幅方向における一部を電極群10の底面(側端面)10aから突き出した状態で、電極群10の第2のセパレータ14の最外周の外周面にほぼ1周巻き付けて接着する。絶縁テープ51Aの先端部は、電池缶2の底部の内面に接触している。
【0047】
絶縁テープ51Bは、粘着層53を電極群10側に向け、絶縁テープ51Bの幅方向における一部を電極群10の上面から突き出した状態で、電極群10の第2のセパレータ14の最外周の外周面にほぼ1周巻き付けて接着する。絶縁テープ51Bの先端部は、電池缶2の溝2aの内面に接触している。
【0048】
軸芯15の中空部15dの上部側から非水電解液5を注入すると、非水電解液5は、軸芯15の中空部15dを上部側から下部側に向けて、図4に図示するようにL1方向に流動する。そして、軸芯15の貫通孔15cからL2方向に流動して軸芯15の外部における電池缶2の底部側に流出する。電池缶2の底部側に流出した非水電解液5は、電極群10の外周と電池缶2の円筒部における内面との間隙に設けられた絶縁テープ51Aを通過し、電極群10の外周と電池缶2の円筒部における内面との間隙を、下部側から上部側に向かうL3方向に上昇する。電極群10の外周と電池缶2の円筒部における内面との間隙上昇した非水電解液5は、電極群10の上部側に配置された絶縁テープ51Bを通過して(図5参照)、電極群10の上部側においてL4方向に流動し、電極群10の上部側における電池缶2内に流出する。そして、電極群10の第1、第2のセパレータ13、14を浸透して、図1に図示されるように、電池缶2内において所定の深さに貯留される。
【0049】
非水電解液5は、上記のようにL1→L2→L3→L4方向に流動するが、その際、非水電解液5中に混在する導電性の異物は、電池缶2の底部側に配置された絶縁テープ51Aにより、流動するのを遮断され、電池缶2の底部内面と電極群10の底面10aとの間に封鎖される。導電性の異物は、5〜10μm程度のサイズのものが多いが、特に、図4に点線で示すように、電極群10の底部内面における外周部の領域Aには、導電性の異物の90%以上が停留されている状態が目視により確認される。
【0050】
また、電極群10の上部側に設けられた絶縁テープ51Bは、絶縁テープ51Aを通過した非水電解液5中に混在されている導電性の異物を遮断する。
このため、非水電解液5中に混在する導電性の異物が、電極群10の正極電極11と負極電極12との間の第1、第2のセパレータ13、14に入り込みことが防止され、内部短絡を防止することができる。
導電性の異物は、一旦、絶縁テープ51Aあるいは51Bにより流動を遮断されると、その後は、電極群10の正極電極11と負極電極12との間に入り込むようなことはなく、導電性の異物の封鎖は電解液の注入完了と共に終了する。このため、実質的にタクト時間が増大するようなことはなく、生産性は良好である。また、流動が遮断された導電性の異物は、絶縁テープ51Aおよび51Bにより封鎖され、電極群10の上部側に流動するのを遮断されるため、円筒形二次電池に振動や衝撃が与えられた場合においても高い信頼性を有する。
【0051】
ベースフィルム52は、多孔質体とすることができる。ベースフィルム52が通常の絶縁材である場合には、導電性の異物が領域Aに停留されている以外に、領域Aの周囲に小さな導電性の異物が散在している様子が目視により確認された。しかし、ベースフィルム52が多孔質体の場合には、領域Aの周囲散在する小さな導電性の異物は目視のより確認されなかった。
円筒形二次電池1の電気的性能は、ベースフィルム52が多孔質体の場合と、通常の絶縁材の場合とで差異はなかったが、小さな導電性の異物が内部短絡の原因となる可能性はあることから、ベースフィルム52は多孔質体であることが望ましい。
次に、上記構成の円筒形二次電池の製造方法の一例を説明する。
【0052】
--二次電池の製造方法--
〔電極群作製〕
先ず、電極群10を作製する。
正極金属箔11aの両面に、正極合剤11bおよび正極合剤未処理部11cが形成され、また、多数の正極リード16が正極金属箔11aに一体に形成された正極電極11を作製する。また、負極金属箔12aの両面に負極合剤12bおよび負極合剤未処理部12cが形成され、多数の負極リード17が負極金属箔12aに一体に形成された負極電極12を作製する。
【0053】
そして、図3に図示するように、軸芯15に、第1のセパレータ13、正極電極11、第2のセパレータ14、負極電極12を、この順に捲回して電極群10を作製する。この場合、第1のセパレータ13、正極電極11、第2のセパレータ14、負極電極12は最も内側の側縁部を軸芯15に溶接しておくと、捲回時に加える荷重に抗して捲回することが容易となる。電極群10の最外周のセパレータは接着テープ19により接着する(図2参照)。
【0054】
〔発電ユニット作製〕
次に、絶縁テープ51Aおよび51Bが取り付けられた電極群10を用いて、発電ユニット20を作製する。
電極群10の軸芯15の下部に負極集電部材21を取り付ける。負極集電部材21の取り付けは、負極集電部材21の開口部21bを軸芯15の下端部に設けられた段部15bに嵌入して行う。次に、負極集電部材21の外周筒部21cの外周の全周囲に亘り、負極リード17をほぼ均等に配分して密着し、負極リード17の外周に押え部材22を巻き付ける。そして、超音波溶接等により、負極集電部材21に負極リード17および押え部材22を溶接する。次に、軸芯15の下端面と負極集電部材21とに跨る負極通電リード23を負極集電部材21に溶接する。
【0055】
次に、軸芯15の正極集電部材27の下部筒部27bを軸芯15の上端側に設けられた溝15aに嵌合する。そして、正極電極11の正極リード16を正極集電部材27の上部筒部27cの外面に密着させる。そして、正極リード16の外周に押え部材28を巻き付け、超音波溶接等により、正極集電部材27の上部筒部27cに正極リード16および押え部材28を溶接する。このようにして、発電ユニット20が構成される。
【0056】
[絶縁テープの取付]
次に、電極群10の下部側に絶縁テープ51Aを、上部側に絶縁テープ51Bを、それぞれ、先端側を電極群10の底面10aまたは上面より突き出した状態で、電極群10の外周にほぼ1周巻き付けて接着する。この場合、絶縁テープ51Aおよび51Bは、電極群10の第2のセパレータ14の終端端部の巻き止めとしても兼用されている。
【0057】
〔電池缶への収容〕
次に、発電ユニット20を電池缶2に収容する。
発電ユニット20を収容可能なサイズを有する金属製の有底円筒部材に、上述の工程を経て作製された発電ユニット20を収容する。有底円筒部材は、電池缶2となるものである。以下において、説明を簡素にして明瞭にするために、この有底円筒部材を電池缶2として説明する。
【0058】
〔負極溶接〕
次に、発電ユニット20の負極側を電池缶2に溶接する。
電池缶2内に収納した発電ユニット20の負極通電リード23を、電池缶2の底部内面に抵抗溶接等により溶接する。この場合、図示はしないが、電池缶2の外部から、軸芯15の中空部15dに電極棒を挿通し、電極棒により負極通電リード23を電池缶2の底部の内面に押し付けて溶接する。
【0059】
次に、電池缶2の上端部側の一部を絞り加工して内方に突出し、外面にほぼU字状の溝2aを形成する。
電池缶2の溝2aは、発電ユニット20の上端部、換言すれば、正極集電部材27の上端部近傍に位置するように形成する。なお、この工程において形成する溝2aは、後述する如く、最終的な形状またはサイズではなく、仮の形状またはサイズのものである。
【0060】
〔電解液注入〕
次に、電池缶2の内部に、非水電解液5を所定量注入する。
非水電解液5の一例としては、前述した如く、リチウム塩がカーボネート系溶媒に溶解した溶液を用いることが好ましい。リチウム塩の例として、フッ化リン酸リチウム(LiPF)、フッ化ホウ酸リチウム(LiBF)、等が挙げられる。また、カーボネート系溶媒の例として、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、プロピレンカーボネート(PC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、或いは上記溶媒の1種類以上から選ばれる溶媒を混合したもの、が挙げられる。
非水電解液5は、軸芯15の中空部15dの上部から注入される。軸芯15の中空部15dの上部から注入された非水電解液5は、上述したように、軸芯15の中空部15dを上部側から下部側に向けてL1方向に流動し、軸芯15の貫通孔15cからL2方向に流動して電池缶2の底部側に流出する。そして、絶縁テープ51Aを通過し、電極群10の外周と電池缶2の円筒部における内面との間隙を、下部側から上部側に向かうL3方向に上昇し、絶縁テープ51Bを通過して、電極群10の上部側においてL4方向に流動し、電極群10の上部側における電池缶2内に流出する。その後、電極群10の第1、第2のセパレータ13、14を浸透して、図1に図示されるように、電池缶2内において所定の深さに貯留される。
【0061】
非水電解液5中に混在する導電性の異物は、電池缶2の底部側に配置された絶縁テープ51Aにより、流動するのを遮断され、電池缶2の底部内面と電極群10の底面10aとの間に封鎖される。また、電極群10の上部側に設けられた絶縁テープ51Bにより、絶縁テープ51Aを通過した非水電解液5中に混在されている導電性の異物の流動が遮断される。
このため、非水電解液5中に混在する導電性の異物が、電極群10の正極電極11と負極電極12との間の第1、第2のセパレータ13、14に入り込みことが防止され、内部短絡を防止することができる。
【0062】
〔蓋ユニット作製〕
一方、上記工程とは別に、電池蓋ユニット30を作製しておく。
電池蓋ユニット30は、前述した如く、絶縁板34、絶縁板34に設けられた開口部34aに嵌入された接続板35、接続板35に溶接されたダイアフラム37およびダイアフラム37にかしめにより固定された電池蓋3により構成されている。
【0063】
電池蓋ユニット30を作製するには、先ず、ダイアフラム37に電池蓋3を固定する。ダイアフラム37と電池蓋3との固定は、かしめ等により行う。図2に図示される如く、当初、ダイアフラム37の側壁37bは基部37aに垂直に形成されているので、電池蓋3の周縁部3aをダイアフラム37の側壁37b内に配置する。そして、ダイアフラム37の側壁37bをプレス等により変形させて、電池蓋3の周縁部の上面および下面、および外周側面を覆って圧接する。
【0064】
また、接続板35を絶縁板34の開口部34aに嵌合して取り付けておく。そして、接続板35の突起部35aを、電池蓋3が固定されたダイアフラム37の底面に溶接する。この場合の溶接方法は、抵抗溶接または摩擦拡散接合を用いることができる。接続板35とダイアフラム37を溶接することにより、接続板35が嵌合された絶縁板34およびダイアフラム37に固定された電池蓋3が一体化され、電池蓋ユニット30が作製される。
【0065】
〔正極溶接〕
次に、発電ユニット20の正極側と電池蓋ユニット30とを電気的に接続する。
正極集電部材27の基部27aに接続部材33の一端部を、例えば、超音波溶接等により溶接する。そして、電池蓋3、ダイアフラム37、接続板35および絶縁板34が一体化された電池蓋ユニット30を、接続部材33の他端部に近接して配置する。次に、接続部材33の他端部を接続板35の下面に、レーザ溶接により溶接する。この溶接は、接続部材33の他端部における接続板35との接合面が、正極集電部材27に溶接された接続部材33の一端部の接合面と同じ面となるようにして行う。
【0066】
〔封口〕
次に、電池缶2に収容された発電ユニット20の正極集電部材27に電気的に接続された電池蓋ユニット30を電池缶2に固定することにより電池缶2を封口する。
電池缶2の溝2aの上にガスケット43を収容する。この状態におけるガスケット43は、図2に図示するように、リング状の基部43aの上方に、基部43aに対して垂直な外周壁部43bを有する構造となっている。この構造で、ガスケット43は、電池缶2の溝2a上部の内側に留まっている。ガスケット43は、ゴムで形成されており、限定する意図ではないが、一例として、エチレンプロピレン共重合体(EPDM)またはフッ素系樹脂をあげることができる。
【0067】
次に、ガスケット43の筒部43c上に、発電ユニット20の正極集電部材27に電気的に接続された電池蓋ユニット30を配置する。詳細には、電池蓋ユニット30のダイアフラム37を、その周縁部をガスケット43の筒部43c上に対応させて載置する。この場合、絶縁板34の側部34bの外周に正極集電部材27の上部筒部27cが嵌合されるようにする。
【0068】
この状態で、電池缶2の溝2aと上端面の間の部分をプレスにより圧縮する、いわゆる、かしめ加工により、ガスケット43と共にダイアフラム37を電池缶2に固定する。
これにより、ダイアフラム37、電池蓋3、接続板35および絶縁板34が一体化された電池蓋ユニット30が、ガスケット43を介して電池缶2に固定され、また、正極集電部材27と電池蓋3が接続部材33、接続板35およびダイアフラム37を介して導電接続され、図1に図示された円筒形二次電池1が作製される。
【0069】
上述した一実施の形態によれば、絶縁テープ51A、51Bは、電極群10の外周に部分的に巻き付ければよいので作業が容易であるうえ、絶縁テープ51Aおよび51Bの面積が小さくて済むので安価になる。さらに、非水電解液5に混在する導電性の異物は、非水電解液5が電極群10の外周と電池缶2の内面との間隙を上昇する際、絶縁テープ51Aにより流動するのを遮断されて電池缶の缶底側に封鎖されるので、導電性の異物の封鎖は非水電解液5の注入完了と共に終了する。このため、実質的にタクト時間を増大することがなく、生産性が向上する。また、電池缶2の缶底側に停留した導電性の異物は、絶縁テープ51A、51Bにより電池缶2の上部側に流動するのを遮断されるため、円筒形二次電池1に振動や衝撃が与えられても正極電極11と負極電極12を内部短絡させる要因となることがなく高い信頼性を有する。
【0070】
(実施形態2)
図6は、本発明の実施形態2を示し、円筒形二次電池1の底部側の拡大断面図である。
図6に図示された実施形態2が、図4に図示された実施形態1と相違する点は、絶縁テープ51Aの先端部の位置である。
すなわち、図4においては、絶縁テープ51Aは、先端部が電池缶2の底部の内面に接触した構造であった。
これに対し、図6に図示された絶縁テープ51Aは、先端部が電池缶2の底部の内面に接触するほどには延出されておらず、絶縁テープ51Aは電池缶2の円筒部において終端している。
実施形態2における他の構造は実施形態1と同様であり、同一部材に同一の参照番号を付して説明を省略する。
【0071】
実施形態2においても、実施形態1と同様な効果を奏する。
また、実施形態2においては、絶縁テープ51Aの先端部を正確に位置決めする必要がないので、一層、生産性が向上する。
【0072】
(実施形態3)
図7は、本発明の実施形態3を示し、円筒形二次電池1の底部側の拡大断面図である。
図7に図示された実施形態2が、図4に図示された実施形態1と相違する点は、絶縁テープ51Aの形状である。
すなわち、図4においては、絶縁テープ51Aは、電極群10の外周に巻き付けられた、幅方向にストレートな形状を有するものであった。
これに対し、図7に図示された絶縁テープ51Aは、幅方向における中間部から内側に屈曲された形状を有する。絶縁テープ51Aの幅方向の先端部は、電池缶2の底部の内面には接触している。
実施形態3における他の構造は実施形態1と同様であり、同一部材に同一の参照番号を付して説明を省略する。
【0073】
実施形態3においても、実施形態1と同様な効果を奏する。
また、実施形態3においては、絶縁テープ51Aを幅方向の中間部で内側に屈曲し、その先端部を電池缶2の底部内面に接触させた構造としているので、導電性の異物の遮断がより一層確実となり、信頼性を向上することができる。
【0074】
上記実施形態1〜3において、電極群10の上部側に設けた絶縁テープ51Bは、省略する事も可能である。
【0075】
(実施形態4)
図8は、本発明の実施形態4を示し、円筒形二次電池1の上部側の拡大断面図である。
図8に図示された実施形態4が、図5に図示された実施形態1と相違する点は、絶縁テープ51Bの先端部の位置である。
すなわち、図5においては、絶縁テープ51Bは、先端部が電池缶2の溝2aの内面に接触した構造であった。
これに対し、図8に図示された絶縁テープ51Bは、先端部が電池缶2の溝2aの内面に接触するほどには延出されておらず、絶縁テープ51Bは電池缶2の円筒部において終端している。
実施形態4における他の構造は実施形態1と同様であり、同一部材に同一の参照番号を付して説明を省略する。
【0076】
実施形態4においても、実施形態1と同様な効果を奏する。
また、実施形態4においては、絶縁テープ51Bの先端部を正確に位置決めする必要がないので、一層、生産性が向上する。
【0077】
以上のように、本発明に係る円筒形二次電池は、電極群10の外周に巻き付けた絶縁テープ51A、51Bにより、非水電解液5中に混在する導電性の異物を電池缶2の底部側に停留させ、電極群10の上部側に回り込まないようにした。これにより、電極群10の正極電極11と負極電極12間に導電性の異物が入り込むことに起因する内部短絡発生の確率を大幅に低減することができる。
この場合、各実施形態においては、絶縁テープ51Aおよび51Bは電極群10の外周に部分的に巻き付ければよいので作業が容易であるうえ、絶縁テープ51Aおよび51Bの面積が小さくて済むので安価になる。さらに、非水電解液5中に混在する導電性の異物は、非水電解液5が電極群10の外周と電池缶2の内面との間隙を上昇する際、絶縁テープ51Aにより流動するのを遮断されて電池缶の缶底側に封鎖される。このため、導電性の異物の封鎖は非水電解液5の注入完了と共に終了することとなり、実質的にタクト時間を増大することがないので、生産性が向上する。また、電池缶2の缶底側に停留した導電性の異物は、絶縁テープ51A、51Bにより電池缶2の上部側に流動するのを遮断されるため、円筒形二次電池1に振動や衝撃が与えられても正極電極11と負極電極12を内部短絡させる要因となることがなく高い信頼性を有する、という種々の効果を奏する。
【0078】
なお、上記実施形態では、リチウムイオン円筒形二次電池の場合で説明した。しかし、本発明は、ニッケル水素電池またはニッケル・カドミウム電池、鉛蓄電池のように水溶性電解液を用いる円筒形二次電池にも適用が可能である。
【0079】
また、実施形態1〜3に示す円筒形二次電池1における絶縁テープ51Aの構造と、実施形態1および4に示す円筒形二次電池1における絶縁テープ51Bの構造とを、任意に組み合わせて適用してもよい。その他、本発明の円筒形二次電池は、発明の趣旨の範囲内において、種々、変形して適用することが可能であり、要は、底部を有し、上部が開口された電池缶と、電池缶内に収容され、中空部を有する軸芯の周囲に、正極電極および負極電極がセパレータを介在して捲回された電極群とを具備し、電解液が電池缶の開口側における軸芯の中空部から電池缶の底部側に注入される円筒形二次電池であって、少なくとも電極群における電池缶の底部側の側端面に対応する外周に絶縁テープが巻き付けられているものであればよい。
【符号の説明】
【0080】
1 円筒形二次電池
2 電池缶
3 電池蓋
4 電池容器
5 非水電解液
10 電極群
11 正極電極
12 負極電極
20 発電ユニット
21 負極集電部材
27 正極集電部材
30 電池蓋ユニット
51A、51B 絶縁テープ
52 ベースフィルム
53 粘着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部を有し、上部が開口された電池缶と、
前記電池缶内に収容され、中空部を有する軸芯の周囲に、正極電極および負極電極がセパレータを介在して捲回された電極群とを具備し、
前記電解液が前記電池缶の開口側における前記軸芯の中空部から前記電池缶の底部側に注入される円筒形二次電池であって、少なくとも前記電極群における前記電池缶の底部側の側端面に対応する外周に絶縁テープが巻き付けられていることを特徴とする円筒形二次電池。
【請求項2】
請求項1に記載の円筒形二次電池において、絶縁テープの一端は、前記電池缶の底部に接触していることを特徴とする円筒形二次電池。
【請求項3】
請求項1に記載の円筒形二次電池において、前記絶縁テープは前記電極群に接着されていることを特徴とする円筒形二次電池。
【請求項4】
請求項1に記載の円筒形二次電池において、前記絶縁テープは、電極群の前記電池缶の上部側における前記電極群の外周にも巻き付けられていることを特徴とする円筒形二次電池。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の円筒形二次電池において、前記絶縁テープは、多孔質体であることを特徴とする円筒形二次電池。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の円筒形二次電池において、前記絶縁テープは、前記電極群の最外周のセパレータの終端端部の巻き止めを兼用していることを特徴とする円筒形二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−169063(P2012−169063A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27190(P2011−27190)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(505083999)日立ビークルエナジー株式会社 (438)
【Fターム(参考)】