説明

凍結・解凍可能な、起泡させた水中油型乳化物混合物及びその製造方法

【課題】本発明の目的は、解凍した際の離水が抑制された、凍結可能な水中油型乳化物を提供することにある。
【解決手段】本発明は、起泡させた第1の水中油型乳化物、および第1の水中油型乳化物よりも脂肪含量が高い、起泡させた第2の水中油型乳化物を混合し、凍結してなる、水中油型乳化物混合物、およびその製造方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結・解凍可能な、起泡させた水中油型乳化物混合物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
起泡性の水中油型乳化物は、牛乳から分離して調製するか、または植物性油脂や乳脂肪を主原料とし、乳化剤などを使用して、水相と油相を分散(乳化)させて調製されている。標準的な起泡性の水中油型乳化物(クリーム)では、消費者や使用者(ユーザー)が、液状の水中油型乳化物を製造者(メーカー)から購入し、用途や嗜好に合わせて、糖質の種類や配合量などを選択し、各自でホイップ(起泡)して使用される。
各自でホイップする手間を省くために、凍結・解凍可能な起泡性の水中油型乳化物が開発されてきた。これにより、製造者が予めホイップして凍結したクリームを提供することで、消費者や使用者は各自でホイップする必要がなくなり、そのまま解凍するだけで直ぐに、ホイップクリームとして使用できる。
【0003】
凍結可能な起泡性の水中油型乳化物には、凍結耐性が必要となるため、例えば、低温で固体油脂の含量が高くなるように特定の種類の油脂を用いることや(特許文献1)、糖質を多量に配合すること(特許文献2)などの工夫がなされてきた。しかし、このような凍結可能な起泡性の水中油型乳化物では、凍結耐性は十分であるが、口溶けが悪く、風味が甘すぎるなど、標準的な起泡性の水中油型乳化物よりも風味の観点では劣っている。
消費者や使用者が風味よりも作業性を重視する場合には、上述のような凍結可能な起泡性の水中油型乳化物を使用する頻度は高まるが、近年では、食への意識の高まりなどから、より風味の優れた起泡性の水中油型乳化物への要求が高まっている。
【0004】
そこで、特許文献3では、ホイップクリームの乳風味を高めつつ、その物性や品質を制御するため、予めホイップした植物性油脂に対して、液状の乳脂肪(生クリーム)を後添加する方法が提案されている。しかしながら、このような凍結可能な起泡性の水中油型乳化物では、実際に解凍した際に、離水量が多くなることもあった。
【0005】
なお、凍結可能な起泡性の水中油型乳化物ではないが、一般的な起泡性の水中油型乳化物に関して、特許文献4では、充分にホイップされたクリームと、充分にホイップされていないクリームとを混在させたホイップクリームが提案されている。しかしながら、かかるホイップクリームは、凍結させることを意図したものではなく、凍結可能な起泡性の水中油型乳化物として、そのまま応用できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61−100167号公報
【特許文献2】特開平10−201442号公報
【特許文献3】特開2001−321074号公報
【特許文献4】特開昭48−103773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、解凍した際の離水が抑制された、凍結可能な起泡性の水中油型乳化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究を重ねる中で、起泡性の水中油型乳化物の風味を向上させるため、乳脂肪の配合比を高める方法では、連続的な製造工程における物性や品質の制御が困難になること、起泡性の水中油型乳化物の固形分を高くしたり、増粘多糖類を添加して、粘度を上げることにより、離水量を減らす方法では、風味に影響を及ぼすことなどの問題に直面し、さらに研究を進めた結果、脂肪含有量の異なる起泡させた水中油型乳化物を混合することにより、解凍した際の離水を抑制できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の起泡させた水中油型乳化物混合物及びその製造方法に関する。
【0010】
[1]
起泡させた第1の水中油型乳化物、および第1の水中油型乳化物よりも脂肪含量が高い、起泡させた第2の水中油型乳化物を混合し、凍結してなる、水中油型乳化物混合物。
[2]
第1の水中油型乳化物の脂肪分が10〜35重量%であり、第2の水中油型乳化物の脂肪分が35〜50重量%である、[1]に記載の水中油型乳化物混合物。
【0011】
[3]
起泡させた第1の水中油型乳化物のオーバーランが、起泡させた第2の水中油型乳化物のオーバーランよりも高い、[1]または[2]に記載の水中油型乳化物混合物。
[4]
起泡させた第1の水中油型乳化物のオーバーランが120〜260%であり、起泡させた第2の水中油型乳化物のオーバーランが10〜70%である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の水中油型乳化物混合物。
【0012】
[5]
第1の水中油型乳化物の油脂成分が、植物性油脂のみである、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の水中油型乳化物混合物。
[6]
第1の水中油型乳化物の全固形分が、40〜65重量%である、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の水中油型乳化物混合物。
[7]
第2の水中油型乳化物が、乳由来のクリームである、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の水中油型乳化物混合物。
【0013】
[8]
第1の水中油型乳化物を起泡させる工程、
第1の水中油型乳化物よりも脂肪含量が高い第2の水中油型乳化物を起泡させる工程、
起泡させた第1の水中油型乳化物と、起泡させた第2の水中油型乳化物とを混合する工程、
混合した水中油型乳化物混合物を凍結する工程、
を含む、起泡および凍結させた水中油型乳化物混合物の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、風味に影響を及ぼすことなく、解凍時の離水が抑制された、起泡および凍結させた水中油型乳化物の提供が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明において、「水中油型乳化物」とは、水相を連続相とし、油相が分散している状態の乳化物を意味し、例えば、植物性油脂や乳脂肪を利用したクリームを挙げられる。
本発明において「起泡性の水中油型乳化物」とは、泡を形成する手段は問わないが、典型的にはホイップする(攪拌、温度、圧力などの調整により泡立てる)ことにより泡を形成する性質を有する水中油型乳化物を意味し、「起泡させた水中油型乳化物」とは、「起泡性の水中油型乳化物」を前記手段により泡立てた水中油型乳化物を意味する。
【0016】
本発明において用いられる「第1の水中油型乳化物」としては、脂肪分が比較的低い、水中油型乳化物であればよく、例えば、乳脂肪分が低めの生クリームや、脂肪分が低くなるように調製した合成クリームを使用することができる。本発明の一態様においては、第1の水中油型乳化物の脂肪分は、第1の水中油型乳化物の全重量に対して、好ましくは10〜35重量%、より好ましくは15〜30重量%である。
【0017】
本発明の一態様において、合成クリームでは、その成分の調整が容易であり、起泡性を高くすることができるため、第1の水中油形乳化剤として、合成クリームを用いることが好ましい。
本発明のさらなる態様において、第1の水中油型乳化物の全固形分は、風味や保形性の観点から、第1の水中油型乳化物の全重量に対して、好ましくは40〜65重量%、より好ましくは45〜60重量%である。
【0018】
本発明において用いられる「第2の水中油型乳化物」としては、脂肪分が比較的高い、水中油型乳化物であればよく、例えば、乳脂肪分が高めの生クリームや、脂肪分の特に乳脂肪分が高くなるように調製した合成クリームを使用することができる。本発明の一態様においては、第2の水中油型乳化物の脂肪分は、第2の水中油型乳化物の全重量に対して、好ましくは35〜50重量%、より好ましくは40〜45重量%である。
【0019】
本発明のさらなる態様において、第2の水中油型乳化物の乳脂肪分は、風味の観点から、第2の水中油型乳化物の全重量に対して、好ましくは15〜50重量%、より好ましくは25〜45重量%である。
本発明の好ましい態様において、風味がよく、一般的に脂肪分の高い、生クリームを第2の水中油型乳化物として用いることができる。
【0020】
本発明において「生クリーム」とは、生乳、牛乳又は特別牛乳から乳脂肪分以外の殆どの成分を除去したものをいう。これは、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(最終改正:平成一九年一〇月三〇日厚生労働省令第一三二号)では「クリーム」と定義されるが、本発明においては、合成クリームとの対比のために、「生クリーム」と称する。
本発明の一態様において、生クリームを単独で、または合成クリームと組み合わせて、第1または第2の水中油型乳化物とすることもできる。
【0021】
生クリームを単独で、第1の水中油型乳化物として用いる場合には、生クリームの乳脂肪分は、好ましくは10〜35重量%、より好ましくは15〜30重量%である。
生クリームを単独で、第2の水中油型乳化物として用いる場合には、生クリームの乳脂肪分は、好ましくは35〜50重量%、より好ましくは40〜45重量%である。
【0022】
本発明の好ましい態様において、製造効率および風味の観点から、第1の水中油型乳化物と第2の水中油型乳化物のいずれか一方を合成クリームとし、もう一方を生クリームとすることが好ましい。一般的な生クリームの脂肪含量が高いことから、第1の水中油型乳化物を合成クリームとし、第2の水中油型乳化物を生クリームとすることが好適である。
【0023】
本発明において「合成クリーム」とは、生クリームに準じて使用される、油脂、タンパク質、乳化剤、水等を主原料として調製されるクリームをいう。
本発明の一態様において、それぞれ脂肪含量の異なる合成クリームを選択し、第1および第2の水中油型乳化物の両方を合成クリームとすることもできる。
【0024】
本発明において、第1の水中油型乳化物と第2の水中油型乳化物との混合比率は、特に限定されないが、それぞれの脂肪含量、および水中油型乳化物混合物に望まれる脂肪含量に依存して、適宜選択することができる。典型的には、第1の水中油型乳化物:第2の水中油型乳化物の比率を重量比で、1:0.1〜1、好ましくは1:0.5〜0.8とすることができる。
【0025】
本発明において用いられる「油脂」としては、一般的に合成クリームに用いられる食用油脂であれば、いずれの油脂でも使用することができる。例えば、乳脂肪(バター、バターオイルなど)、ラード、牛脂、魚油などの動物性油脂、およびパーム油、パーム核油、サフラワー油、コーン油、ナタネ油、ヤシ油などの植物性油脂、ならびに、これらの油脂を化学的に処理した硬化油、分別油、エステル交換油などを挙げることができ、これらは単独で、または2種以上の油脂を任意の割合で組み合わせて用いることができる。口溶けや、風味の観点から、パーム油、パーム核油、ヤシ油およびこれらの硬化油を用いることが好ましく、特に、これらの2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。
【0026】
本発明の一態様において、製造コスト、および消費者の健康志向への対応の観点から、植物油脂のみを用いることが好ましい。また、本発明の他の態様において、風味の観点から、植物油脂に乳脂肪を組み合わせることができる。
本発明の他の態様において、植物油脂を主成分とした合成クリーム、より好ましくは、植物油脂のみを油脂として用いた合成クリームを、第1の水中油形乳化物として用いることができる。
本発明のさらなる態様において、乳脂肪を主成分とした合成クリームを、第2の水中油型乳化物として用いることができる。
【0027】
油脂の添加量は、水中油形乳化物に望まれる脂肪含量に依存して、適宜選択することができる。例えば、第1の水中油形乳化物として、合成クリームを用いる場合には、合成クリームの全重量に対して、好ましくは10〜35重量%、より好ましくは15〜30重量%とすることができる。
【0028】
本発明において用いられる「タンパク質」としては、一般的に合成クリームに用いられるタンパク質であれば、いずれのタンパク質でも使用することができる。例えば、大豆タンパク質粉末などの植物タンパク質、脱脂乳、クリームパウダー、バターミルク粉、脱脂粉乳、全脂粉乳、れん乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、濃縮ホエイ、乳タンパク濃縮物、ホエイタンパク濃縮物、ホエイタンパク質生成物などの乳タンパク質を挙げられる。これらは単独で、または2種以上のタンパク質を任意の割合で組み合わせて用いることもできる。風味の観点から、乳タンパク質の特に脱脂粉乳を用いることが好ましい。
タンパク質の含有量は、特に限定されないが、例えば、合成クリームの全重量に対して、0.1〜5.0重量%、好ましくは、1.0〜2.5重量%で用いることができる。
【0029】
本発明において用いられる「乳化剤」としては、一般に合成クリームに用いられる乳化剤であれば、いずれの乳化剤でも使用することができる。例えば、高級脂肪酸モノグリセリド、グリセリン脂肪酸エステル(例えば、ペンタグリセリンモノラウレート、ヘキサグリセリンモノラウレート、デカグリセリンモノラウレート、テトラグリセリンモノステアレート、デカグリセリンモノステアレート、デカグリセリンジステアレート、ジグリセリンモノオレート、デカグリセリンモノオレート、デカグリセリンエルカ酸エステルなど)、有機酸(酢酸、乳酸、クエン酸、コハク酸、ジアセチル酒石酸など)モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル(例えば、ショ糖エルカ酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステルなど)、(植物、卵黄、分別、乳など)レシチン、酵素分解レシチン(例えば、酵素分解大豆レシチン、リゾレシチンなど)、カゼインナトリウムなどを挙げることができる。
【0030】
これらは単独で、または複数の乳化剤を任意の割合で組み合わせて用いることもできる。乳化剤の種類は、他原料の種類および含量などによって、適宜調整することができるが、乳化安定性の観点から、HLB値の異なる、複数の乳化剤を組み合わせることが好ましく、例えば、HLB値が1以上4未満の乳化剤を1種または2種以上と、HLB値が4以上6未満の乳化剤を1種または2種以上で組み合わせて用いることがより好ましい。
【0031】
乳化剤の含有量は、他の成分の種類および含有量に依存して、適宜選択することができる。典型的には、合成クリームの全重量に対して、0.1〜5.0重量%、好ましくは1.0〜4.5重量%で用いることができる。
【0032】
本発明において「オーバーラン」とは、起泡(ホイップ)前後の水中油型乳化物を一定容量で採り、それぞれの重量を測定し、数1の式により算出される、空気の取り込み量を示す指標である。
【0033】
【数1】

【0034】
起泡させた水中油型乳化物は、実質的に起泡されていれば、そのオーバーランは、特に限定されないが、典型的には、オーバーランが5%以上になるように起泡させる。
本発明の一の態様において、起泡の安定性の観点から、起泡させた第1の水中油型乳化物のオーバーランは、好ましくは120〜260%、より好ましくは150〜230%、さらに好ましくは、170〜210%である。
本発明の一態様において、製造効率の観点から、起泡させた第2の水中油型乳化物のオーバーランは、好ましくは10〜70%、より好ましくは15〜65%、さらに好ましくは20〜60%である。
【0035】
本発明の一態様において、起泡させた第1の水中油型乳化物のオーバーランを、起泡させた第2の水中油型乳化物のオーバーランよりも高くすることにより、解凍後の離水をより抑制することができる。本発明の好ましい態様においては、起泡させた第1の水中油型乳化物のオーバーラン、および起泡させた第2の水中油型乳化物のオーバーランを、それぞれ、好ましくは120〜260%、および10〜70%、より好ましくは150〜230%、および15〜65%、さらに好ましくは、170〜210%、および20〜60%とすることができる。
【0036】
本発明の他の態様においては、第1と第2の水中油型乳化物との混合を容易にする観点から、起泡させた第1の水中油型乳化物のオーバーランと、起泡させた第2の水中油型乳化物のオーバーランとに、ある程度で差違があることが好ましく、典型的には、そのオーバーランの差違が50〜250%、好ましくは、100〜200%、さらに好ましくは、130%〜160%である。
【0037】
本発明において「水中油型乳化物混合物」とは、起泡させた第1の水中油型乳化物と、起泡させた第2の水中油型乳化物とを、好ましくは均質に、混合させた後に、凍結させた混合物をいう。
水中油型乳化物混合物の脂肪分は、特に限定されないが、解凍後の水中油型乳化物混合物の利用目的により、適宜選択することができる。第1および第2の水中油型乳化物の脂肪分およびこれらの混合比率を調整することにより、望ましい脂肪分を有する水中油型乳化物混合物を得ることができる。
本発明の好ましい態様においては、水中油型乳化物混合物の脂肪分は、20〜50重量%、好ましくは30〜45重量%である。また、水中油型乳化物混合物の乳脂肪分は、特に限定されないが、10〜50重量%、好ましくは15〜35重量%である。
【0038】
水中油型乳化物混合物の全固形分は、特に限定されないが、典型的には、30〜70重量%、好ましくは、40〜60重量%である。
本発明において「全固形分」とは、脂肪分の分量に、水分以外の固形分(タンパク質、乳糖など)の分量を加えた分量をいう。
本発明の一態様において、水中油型乳化物混合物は、解凍後の水中油型乳化物混合物の利用目的にしたがって、糖類や香料を含むことができる。
【0039】
水中油型乳化物混合物は、第1および第2の水中油型乳化物に加えて、脂肪含量や、オーバーランなどの異なる、さらなる水中油型乳化物を混合することもできる。
【0040】
本発明において起泡方法は、特に限定されないが、典型的には、ホイッパー、ミキサー、ディスパーザーなどを用いて、水中油型乳化物を攪拌し、空気を含ませるように行うことがある。
本発明において混合方法は、特に限定されないが、起泡を崩さずに、第1と第2の水中油型乳化物が均質となるように行うことが好ましい。
本発明において凍結方法は、特に限定されないが、典型的には、水中油型乳化物混合物を容器に充填した後に、好ましくは−15℃以下、より好ましくは、−20℃以下の冷凍庫で凍結することにより行うことがある。
【0041】
水中油型乳化物混合物は、解凍することにより、通常の起泡させた水中油型乳化物として用いることができる。この解凍方法は、特に限定されないが、典型的には、0〜20℃、好ましくは、3〜15℃、より好ましくは、4〜10℃、の幅広い温度での解凍が可能である。
【0042】
以下に、本発明を実施例に基づいて、さらに説明するが、かかる実施例は、本発明の例示であり、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0043】
実施例1
<第1の水中油型乳化物の調製>
HLBが4の高級脂肪酸モノグリセリド:0.2重量部、HLBが2.9の高級脂肪酸モノグリセリド:0.5重量部、HLBが1のショ糖脂肪酸エステル:0.45重量部、レシチン:0.1重量部を、植物油脂:27重量部(パーム核硬化油:19.9重量部、ヤシ油:6.6重量部、パーム極度硬化油:0.5重量部)に溶解して、油相を調製した。
【0044】
砂糖:14重量部、水飴(固形分:75.6重量%):8重量部、粉飴:3重量部、脱脂粉乳:1.5重量部、カゼインナトリウム:2.6重量部、HLBが6のショ糖脂肪酸エステル:0.225重量部、セルロース:0.25重量部、増粘多糖類:0.045重量部、香料:0.13重量部を、水:42重量部に溶解して、水相を調製した。
【0045】
上記の油相と水相を65〜70℃で混合し、この混合物をプロペラ型翼で攪拌しながら、70℃にて10分間で予備乳化した。そして、この予備乳化物を、直接加熱殺菌機により、130℃にて4秒間で加熱した後に、24MPaで均質化してから直ちに10℃以下に冷却して、本発明の水中油型乳化物を調製した。この水中油型乳化物の成分を分析したところ、全固形分は55.4重量%、油脂分は27重量%であった。
【0046】
<第1の水中油型乳化物の起泡>
上記の「水中油型乳化物」を、無菌フィルターで処理した空気と共に、モンドミキサー(製造元:モンドミックス社)により、1577rpmの回転数で連続的に起泡させて、「起泡させた水中油型乳化物」を調製した。オーバーランは200%であった。
【0047】
<第2の水中油型乳化物の調製および起泡>
生クリーム(乳脂肪:47重量%)を、無菌フィルターで処理した空気と共に、モンドミキサー(製造元:モンドミックス社)により、150rpmの回転数で連続的に起泡させて、「起泡させた生クリーム」を調製した。このオーバーランは60%であった。
【0048】
<起泡させた水中油型乳化物混合物の調製および凍結>
上記の「起泡させた水中油型乳化物」と「起泡させた生クリーム」を混合して、乳脂肪:18重量%に調整し、ソフトバック(ホイップ袋)に充填した後に、冷凍庫(約−20℃)で保管した。この水中油型乳化物混合物の成分を分析したところ、全固形分は54.5重量%、油脂分は35.5重量%であった。
【0049】
比較例1
実施例1における「起泡させた水中油型乳化物」に、実施例1における生クリームと同一の生クリームを「液状(起泡させない)」状態で混合して、乳脂肪:18重量%に調整し、ホイップ袋に充填した後に、冷凍庫(約−20℃)で保管した。この水中油型乳化物混合物の成分を分析したところ、全固形分は54.5重量%、油脂分は35.5重量%であった。
【0050】
試験例1
実施例1および比較例1で調製した、ホイップ袋に充填した「起泡させた水中油型乳化物混合物」を、中心部の温度が−18℃以下になるまで冷凍庫で保管した。そして、これを10℃、15℃、20℃の冷蔵庫にて約24時間で保管して解凍した。
各温度で解凍したホイップ袋に充填した起泡させた水中油型乳化物の袋の先端をはさみでカットし、水を除去した。その離水量(g/1000ml)を測定した結果を表1に示す(離水量が1gを超えると、品質として不十分である)。
【0051】
【表1】

【0052】
全体的な傾向として、「起泡させた生クリーム」を混合した場合(実施例1)に、離水量が少なく、解凍温度が高い場合に、離水量が多くなった。
【0053】
製造例
本願発明において、脂肪含量の高い第2の水中油型乳化物として好適に用いられる生クリームの大量生産時の起泡方法を検討した。
<ターボミキサーの使用>
連続式の発泡機であるターボミキサー(製造元:愛工舎、TM−150)を用いて、生クリームの流量を120kg/h程度で1時間15分連続運転した結果、生クリームのORが60%となり、流量や圧力などは一定であるため、安定して連続的にホイップできることを確認した。
【0054】
<ディスパーサーの使用>
連続式のホイッパー(製造元:明治テクノ社)のハウジング内に、ディスパーサー(凹凸のある軸)を設置し、生クリームの流量を120kg/h程度で運転して、ORを40%程度に高めることが可能であった。ターボミキサーと比較して設置場所が狭い利点がある。
【0055】
試験例2
実施例1における「起泡させた水中油型乳化物A」に、実施例1と同一の生クリームを用いて、それぞれオーバーランを、比較例2:0%(起泡させない)、実施例2:17%、実施例3:35%とした生クリームを混合し、乳脂肪:18重量%に調整し、ホイップ袋に580ml充填した後に、冷凍庫(約−20℃)で保管した。これらの、全固形分は54.5重量%、油脂分は35.5重量%であった。中心部の温度が−18℃以下になるまで冷凍庫で保管した後、10℃の冷蔵庫にて約24時間で保管して解凍した。
解凍したホイップ袋に充填した起泡させた水中油型乳化物の袋の先端をはさみでカットし、水を除去した。その離水量(g/個)を測定した結果を表2に示す(離水量が0.5gを超えると、品質として不十分である)。
【0056】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によれば、風味に影響を及ぼすことなく、解凍時の離水が抑制された、凍結可能な起泡させた水中油型乳化物の提供することができるため、解凍・保管時の温度を従来よりも高くして用いることができ、使用者が利用しやすい凍結した起泡済水中油型乳化物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
起泡させた第1の水中油型乳化物、および第1の水中油型乳化物よりも脂肪含量が高い、起泡させた第2の水中油型乳化物を混合し、凍結してなる、水中油型乳化物混合物。
【請求項2】
第1の水中油型乳化物の脂肪分が10〜35重量%であり、第2の水中油型乳化物の脂肪分が35〜50重量%である、請求項1に記載の水中油型乳化物混合物。
【請求項3】
起泡させた第1の水中油型乳化物のオーバーランが、起泡させた第2の水中油型乳化物のオーバーランよりも高い、請求項1または2に記載の水中油型乳化物混合物。
【請求項4】
起泡させた第1の水中油型乳化物のオーバーランが120〜260%であり、起泡させた第2の水中油型乳化物のオーバーランが10〜70%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の水中油型乳化物混合物。
【請求項5】
第1の水中油型乳化物の油脂成分が、植物性油脂のみである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の水中油型乳化物混合物。
【請求項6】
第1の水中油型乳化物の全固形分が、40〜65重量%である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の水中油型乳化物混合物。
【請求項7】
第2の水中油型乳化物が、乳由来のクリームである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の水中油型乳化物混合物。
【請求項8】
第1の水中油型乳化物を起泡させる工程、
第1の水中油型乳化物よりも脂肪含量が高い第2の水中油型乳化物を起泡させる工程、
起泡させた第1の水中油型乳化物と、起泡させた第2の水中油型乳化物とを混合する工程、
混合した水中油型乳化物混合物を凍結する工程、
を含む、起泡および凍結させた水中油型乳化物混合物の製造方法。

【公開番号】特開2013−85496(P2013−85496A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226973(P2011−226973)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000006138)株式会社明治 (265)
【Fターム(参考)】