説明

分布ラマン増幅を用いた波長多重光通信システム

【課題】分布ラマン増幅を用いたWDM光通信システムについて、伝送路の種類の違い等に起因した伝送特性劣化を簡略な構成かつ容易な制御により低減できるようにする。
【解決手段】本WDM光通信システムは、主信号光Lsの運用開始前に、該主信号光Lsとは波長の異なる複数の光(例えば、ラマン増幅用励起光Lpなど)を伝送路1の両端に接続された第1および第2の光伝送装置2A,2B間で送受信して各光の伝送路入出力パワーをモニタし、該モニタ結果を用いて各々の波長での伝送路損失を計算し、該計算結果より推定可能な損失波長特性を基に伝送路の種類を特定する。そして、当該伝送路の種類に応じて、伝送路1に与える励起光パワーを最適化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長多重(Wavelength Division Multiplexing:WDM)信号光を伝送路を介して送受信する光通信システムに関し、特に、伝送路に励起光を与えてWDM信号光を分布ラマン増幅する機能を備えたWDM光通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の通信トラフィック増加を背景として、光通信伝送装置への需要が高まっている。基幹網で導入されてきた光中継ノードのみならず、最近では地域網についても光通信伝送装置の導入が活発に行われており、さらには加入者系へも光ネットワークが形成されている。このように光通信システムは世界の情報網に対して重要な役割を担っている。
【0003】
上記のような光通信システムでは、例えば、エルビウム添加光ファイバ増幅器(Erbium Doped Fiber Amplifier:EDFA)等のWDM用光増幅器を伝送路上の中継区間(スパン)ごとに備えることにより、低コストで高い信頼性を確保しながら大容量かつ長距離の伝送を実現可能な光増幅中継方式のWDM光通信システムが主流である。
【0004】
上記のようなWDM光通信システムにおいて、伝送路長が長いなどの要因により中継損失が大きくなるような条件下では、光増幅器への信号光の入力レベルが小さくなるため、信号光パワーと雑音光パワーの比を示す光SN比(Optical Signal-to-Noise Ratio:OSNR)が劣化し、WDM信号光の伝送特性が劣化する可能性がある。これを回避する1つの手段として、伝送路に励起光を注入し、誘導ラマン散乱の効果による増幅作用を利用することにより、中継損失の補償を可能にする、分布ラマン増幅(Distributed Raman Amplification:DRA)技術の適用が有効である。分布ラマン増幅が用いられたシステムでは、伝送路を伝搬してEDFA等の光増幅器へ入力される信号光のレベルが増加するので、光SN比が増加して伝送特性が改善され、WDM信号光を伝送できる中継スパン数が増えることになる。このため、分布ラマン増幅器は、長距離伝送を実現する有効な手段として既に実用化に至っている。
【0005】
図9は、一般的な分布ラマン増幅を用いたWDM光通信システムの一例であり、ここでは、送信部(Tx)101および受信部(Rx)102が伝送路103を介して接続され、該伝送路103上に所要の間隔でEDFA等の光増幅器104が配置されており、さらに、各中継区間の伝送路103に励起光を注入するためのラマン励起光源(PumpLD)105が設けられている。このようなシステム構成によれば、各ラマン励起光源105からの励起光によって、各中継区間の伝送路103上でWDM信号光が分布ラマン増幅されて損失が補償されることにより、受信部102に到達するWDM信号光の伝送特性が改善される。
【0006】
ところで、分布ラマン増幅については、ラマン利得の波長依存性により増幅後の出力光レベルに波長特性が生じることが知られている。この分布ラマン増幅における出力波長特性は、上記図9に示したようなWDM光通信システムでは、各中継区間の光増幅器104(インラインアンプ)で波長間のレベル偏差が拡大されながら累積することになる。このため、図9下段の(A)〜(C)に模式的に示したように、受信部102における波長間のレベル偏差がかなり大きくなる可能性があり、伝送特性の劣化(例えば、非線形現象の発生、OSNR劣化、受信機への入力範囲超過など)が問題となる。
【0007】
上記のような分布ラマン増幅の利得波長特性に起因した伝送特性劣化を抑えるために、例えば下記の特許文献1においては、図10に示すように分布ラマン増幅の利得波長特性に対応した固定の損失波長特性を有する光フィルタ(GEQ)106を中継区間ごとに挿入して、分布ラマン増幅後のWDM信号光の波長特性を補償する技術が提案されている。
【0008】
しかし、分布ラマン増幅後のWDM信号光の出力波長特性は、伝送路の種類、WDM信号光の波長数およびラマン利得の設定などのシステム条件に応じて変化するため、各光フィルタ106の固定の損失波長特性と各々で補償すべき出力波長特性とのずれ分が残留波長特性となり、それがインラインアンプなどによる光増幅中継を経て累積し、伝送特性劣化を招くという課題がある。
【0009】
ここで、上記のようなシステム条件に応じて出力波長特性が変化する理由について簡単に説明すると、伝送路は、その種類によって組成(材料)が異なるため損失波長特性が異なり、当該伝送路を増幅媒体として分布ラマン増幅された光の出力波長特性も伝送路の種類によって変化する。また、WDM信号光が伝送路に入力すると、短波長側から長波長側へパワーが移る物理現象であるラマン効果によって、長波長側の信号光パワーが大きくなり、伝送路を伝搬したWDM信号光の出力波長特性にチルトが生じる。上記のラマン効果は、WDM信号光の波長数が多いほど短波長側から長波長側へシフトするパワーも大きくなるため、伝送光の出力波長特性にも大きなチルトが生じる。また、ラマン効果の効率は、伝送路の種類によって有効コア面積が異なることでも変わるため、伝送路の種類によってラマン効果によるチルトの大きさも異なるようになる。
【0010】
上記のようなシステム条件の変化による伝送特性劣化を低減し得る従来技術としては、例えば下記の特許文献2,3において、分布ラマン増幅されたWDM信号光の波長特性を光スペクトルアナライザなどを用いてモニタし、その出力波長特性が小さくなるように、複数の波長のラマン増幅用励起光の各パワーを調整する技術が提案されている。
【0011】
また、例えば下記の特許文献4においては、システム条件に応じて発生する残留波長特性をキャンセルすることが可能な励起光パワー比率に関する設計値情報を事前にデータベース化しておき、実際のシステム条件に整合する励起光パワー比率の設計値をデータベースの中から抽出し、制御演算に取り入れる技術が提案されている。
【特許文献1】特開2002−76482号公報
【特許文献2】特開2001−7768号公報
【特許文献3】特開2002−76482号公報
【特許文献4】特開2006−189465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、上記のような出力波長特性をモニタして励起光パワーの調整を行う従来技術については、光スペクトルアナライザなどの高価なモニタ手段を設けることが必要であり構成が複雑化するため、装置コストの上昇や実装スペースなどの課題がある。また、モニタした出力波長特性に応じた各波長の励起光パワーの調整も非常に複雑な制御が必要になるため、その実現性にも課題がある。
【0013】
また、システム条件に対応した励起光パワー比率の設計値情報をデータベース化しておく従来技術については、高精度の制御を実現するために多様なシステム条件に対応した膨大なデータを保有しておかねばならない。例えば、要求される精度に応じて伝送路の損失(スパンロス)を細分化し、各々のスパンロスごとに信号波長数、ラマン利得等の条件に対応した励起光パワー比率を設定して、それをデータベース化することが必要になる。しかしながら、そのような膨大なデータベースを構築するのは容易なことではなく、仮に実現できたとしても、当該データベースの中から実際のシステム条件に適した設計値を選ぶというプロセスが必要になり、制御の高速性が問題となる。すなわち、必要最小限度のデータベースを用いて如何にして好ましい励起光パワー比率を特定できるかが課題である。
【0014】
本発明は上記の点に着目してなされたもので、分布ラマン増幅を用いたWDM光通信システムについて、伝送路の種類の違い等に起因した伝送特性劣化を簡略な構成かつ容易な制御により低減できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するため、本WDM光通信システムの一態様は、伝送路の一端に接続され、該伝送路にWDM信号光を送信する第1の光伝送装置と、前記伝送路の他端に接続され、該伝送路を伝搬して分布ラマン増幅されたWDM信号光を受信する第2の光伝送装置と、を備えたシステム構成において、WDM信号光の運用開始前に、前記WDM信号光とは波長の異なる複数の光を、前記第1および第2の光伝送装置の間で前記伝送路を介して送受信し、該複数の光についての伝送路入力パワーおよび伝送路出力パワーをそれぞれモニタするモニタ手段と、前記モニタ手段でモニタされた前記複数の光についての伝送路入力パワーおよび伝送路出力パワーの各値を用いて、前記複数の光に対応した各波長における伝送路損失を計算し、該計算結果より推定可能な損失波長特性に基づいて前記伝送路の種類を特定する演算手段と、前記伝送路を伝搬するWDM信号光を分布ラマン増幅するための励起光を前記伝送路に供給する励起光供給手段と、前記演算手段で特定された前記伝送路の種類に応じて、前記伝送路の他端から出力される分布ラマン増幅されたWDM信号光の出力波長特性が目標とする出力波長特性となるように、前記励起光供給手段を制御する制御手段と、を備えるようにしたものである。
【0016】
このようなWDM光通信システムでは、WDM信号光の運用開始前に、WDM信号光とは波長の異なる複数の光が第1、2の光伝送装置の間で送受信され、各光の伝送路入出力パワーがモニタ手段によってモニタされた後、そのモニタ値を用いて各々の波長における伝送路損失が演算手段によって計算され、さらに、その計算結果より伝送路の損失波長特性を推定することで伝送路の種類が特性される。そして、特定された伝送路の種類に応じて、励起光供給手段から伝送路に与えられる励起光の最適化が励起光制御手段により行われる。
【発明の効果】
【0017】
上記のような本WDM光通信システムによれば、第1、2の光伝送装置間に実際に接続されている伝送路の種類を簡単なモニタ構成と演算処理により特定することができ、その伝送路の種類に自動的に対応して、分布ラマン増幅後のWDM信号光の出力波長特性を目標の出力波長特性とすることができるため、伝送路の種類の違いに起因した伝送特性劣化を容易に低減することが可能である。
【0018】
なお、本発明の他の目的、特徴および利点は、添付図面に関連する実施態様についての次の説明で明白になるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態について添付図面を参照しながら説明する。なお、全図を通して同一の符号は同一または相当部分を示すものとする。
図1は、本発明による分布ラマン増幅を用いたWDM光通信システムの一実施形態における一中継区間の構成を示すブロック図である。
【0020】
図1において、伝送路1の両端に接続されている光伝送装置2A,2Bは、例えば上述の図10に示したようなWDM光通信システムの端局または中継局の一構成要素として具備されるものである。ここでは、ある1つの中継区間について伝送路1の送信端に接続される第1の光伝送装置2Aの要部構成、および、伝送路1の受信端に接続される第2の光伝送装置2Bの要部構成が図1に示されている。なお、上記WDM光通信システムの他の中継区間についても図1と同様の装置構成が適用されているものとする。
【0021】
具体的に、送信側の光伝送装置2Aは、例えば、光増幅器11および主信号光入力モニタ13と、励起光出力モニタ23と、利得参照光送信器31および利得参照光入力モニタ33と、監視信号光(Optical Supervisory Channel:OSC)送信器41およびOSC入力モニタ43と、を備えている。また、受信側の光伝送装置2Bは、例えば、光増幅器12および主信号光出力モニタ14と、ラマン励起光源21および励起光入力モニタ22と、利得参照光受信器32および利得参照光出力モニタ34と、OSC受信器42およびOSC出力モニタ44と、演算回路51および励起光制御回路52と、を備えている。
【0022】
各光伝送装置2A,2B間を接続する伝送路1としては、光通信に利用される各種光ファイバ(例えば、1.3μm零分散シングルモードファイバ(Single-Mode Fiber:SMF)や、分散シフトファイバ(Dispersion Shifted Fiber:DSF)など)が適用され得る。後述するように、伝送路1に適用される光ファイバの種類が異なると、その種類に応じて異なる損失波長特性を伝送路1が持つことになる。
【0023】
各光伝送装置2A,2B内の光増幅器11,12は、波長の異なる複数の光信号が波長多重されたWDM信号光(以下、主信号光と呼ぶ)Lsを所望のレベルまで増幅するインラインアンプである。ここでは、主信号光Lsの波長帯域として、例えばC−バンド(1530〜1565nm)が設定されている場合を想定する。該C−バンドの主信号光Lsに対応した光増幅器11,12としては、EDFA等の公知の光アンプが使用可能である。なお、本発明における主信号光の波長帯域は、上記のC−バンドに限定されるものではなく、C−バンド以外の公知の信号波長帯域についても本発明は有効であり、当該信号波長帯域に対応した光アンプを適宜使用して光増幅器11,12を実現することが可能である。
【0024】
上記の光増幅器11から出力される主信号光Lsは、伝送路1の送信端に入力されると共に、その一部がモニタ光Lsmとして分岐されて主信号光入力モニタ13に与えられる。主信号光入力モニタ13は、モニタ光Lsmのパワーを測定することにより、伝送路1に入力される主信号光Lsのパワーをモニタし、該モニタ結果をOSC送信器41に出力する。受信側の光伝送装置2B内に設けられた主信号光出力モニタ14は、伝送路1の受信端から出力され光増幅器12に送られる主信号光Lsの一部をモニタ光Lsmとして分岐してそのパワーを測定することにより、伝送路1から出力される主信号光Lsのパワーをモニタする。上記の主信号光入力モニタ13若しくは主信号光出力モニタ14に与えられる光について、主信号のモニタ光Lsm以外の光(後述するOSC光や利得参照光)が含まれる場合には、主信号光Lsの波長帯域に対応した透過帯を有する光フィルタをモニタの前段に挿入して、不要な光がモニタに入力されないようにするのがよい。
【0025】
なお、主信号光入力モニタ13および主信号光出力モニタ14は、後述する伝送路損失の測定に関して直接使用されるものではないが、ラマン増幅器の利得制御若しくは出力制御に必要なモニタであるため記している。
【0026】
受信側の光伝送装置2B内に設けられたラマン励起光源21は、波長の異なる複数の励起光を発生することが可能であり、該各励起光を合波した光(以下、励起光Lpと総称する)を伝送路1に受信端側から供給する。各励起光の波長は、主信号光Lsの波長帯域に応じて予め決められており、各励起光のパワー比およびトータルパワーが、後述するシステム条件に応じて励起光制御回路52により制御されるものとする。なお、以下では、励起光Lpが1430nmの波長を有するものとして説明を行う。励起光入力モニタ22は、ラマン励起光源21から出力される励起光Lpの一部を分岐してそのパワーを測定することにより、伝送路1に入力される励起光Lpのパワーをモニタし、該モニタ結果を演算回路51に出力する。送信側の光伝送装置2A内に設けられた励起光出力モニタ23は、伝送路1に受信端側から入力され主信号光Lsとは逆方向に伝搬して送信端側から出力される励起光Lpを取り出してそのパワーをモニタし、該モニタ結果をOSC送信器41に出力する。
【0027】
図2は、上記の励起光入力モニタ22および励起光出力モニタ23の具体的な構成の一例を示す図である。図2の構成例では、ラマン励起光源21の出力端に分岐カプラ22Bが挿入され、該分岐カプラ22Aの分岐ポートに励起光モニタ用PD22Bを接続することで励起光入力モニタ22が構成されている。一方、励起光出力モニタ23については、送信側の光伝送装置2A内に設けられている主信号光入力モニタ13の構成要素である分岐カプラ13Aを利用し、該分岐カプラ13Aの未使用ポートに励起光モニタ用PD23Aを接続することで、主信号光Lsとは逆方向に伝搬する励起光Lpの出力パワーをモニタするようにしている。すなわち、分岐カプラ13Aは、ファイバ型の構成で2対2のポートを有しており、図2で左上に位置するポートより主信号光Lsが入力され、該主信号光Lsが所要の分岐比で2つに分岐されて、その一方が右上のポートから伝送路1に出力されると共に、他方が右下のポートから主信号光モニタ用PD13Bに出力される。また、伝送路1を主信号光Lsとは逆方向に伝搬した励起光Lpは、分岐カプラ13Aの右上のポートより入力され、その一部が左下のポートから励起光モニタ用PD23Aに出力される。ことのき、励起光モニタ用PD23Aが接続された分岐カプラ13Aの左下のポートから出力される光には、左上のポートに入力される主信号光Lsの漏れ光も含まれることになるが、分岐カプラの一般的な特性として上記漏れ光のパワーは無視できる程小さい(例えば、ダイレクティビティが40dB等)ので、主信号光Lsと切り分けられた逆方向の光パワーを励起光モニタ用PD23Aでモニタすることができる。
【0028】
ただし、伝送路1におけるラマン増幅の際に発生する雑音光のうちで主信号光とは逆方向に伝搬する成分(ラマン逆方向雑音光)のパワーが大きい場合には、そのラマン逆方向雑音光も分岐カプラ13Aを介して励起光モニタ用PD23Aに入力されてモニタ誤差になり得る。このような場合には、例えば図3に示すように、分岐カプラ13Aと励起光モニタ用PD23Aの間に光フィルタ23Bを挿入し、該光フィルタ23Bでラマン逆方向雑音光を除去するようにするのが好ましい。図4の上段は、上記光フィルタ23Bの透過波長特性の一例を示しており、下段は、励起光波長に対するラマン逆方向雑音光の発生帯域を模式的に示している。
【0029】
送信側の光伝送装置2A(図1)内に設けられた利得参照光送信器31は、伝送路1における分布ラマン増幅の利得を検出して利得一定制御を行うための利得参照光Lrefとして、主信号光Lsの波長帯域外に波長が設定された所要パワーの光を発生し、該利得参照光Lrefを伝送路1に送信端側から与えるものである。また、受信側の光伝送装置2B内に設けられた利得参照光受信器32は、伝送路1を伝搬した利得参照光Lrefを受信し、利得参照光Lrefのレベルを基に伝送路1でのラマン利得を検出し、該検出結果を励起光制御回路52に出力する。なお、上記のような利得参照光を用いてラマン利得の一定制御を行う技術に関しては、例えば、特開2004−193640号公報や本出願人の先願である特願2007−321775号に記載されており、当該技術を本発明でも利用する。ここでは、利得参照光Lrefの波長として、例えばC−バンドの長波長側帯域外に位置する1610nmを想定する。ただし、本発明における利得参照光Lrefの波長は上記の一例に限定されるものではない。
【0030】
上記利得参照光送信器31の後段に配置された利得参照光入力モニタ33は、利得参照光送信器31から出力される利得参照光Lrefの一部を分岐してそのパワーを測定することにより、伝送路1に入力される利得参照光Lrefのパワーをモニタし、該モニタ結果をOSC送信器41に出力する。また、上記利得参照光受信器32の前段に配置された利得参照光出力モニタ34は、利得参照光受信器32で受信される利得参照光Lrefの一部を分岐してそのパワーを測定することにより、伝送路1から出力される利得参照光Lrefのパワーをモニタし、該モニタ結果を演算回路51に出力する。
【0031】
なお、ここでは利得参照光受信器32とは別に利得参照光出力モニタ34を設けて利得参照光Lrefの出力パワーをモニタするようにしたが、利得参照光受信器32が、ラマン利得を検出する際にモニタした利得参照光Lrefの出力パワーを外部出力することが可能であれば、当該出力を演算回路51に与えるようにすることにより、利得参照光出力モニタ34を省略することも可能である。
【0032】
送信側の光伝送装置2A内に設けられたOSC送信器41は、システムの運用情報を下流の中継局若しくは端局に伝達するためのOSC光Loscを発生し、該OSC光Loscを伝送路1に送信端側から与えるものである。このOSC光Loscは、主信号光Lsの波長数や伝送路1への主信号光Lsの送信パワーなどの一般的なシステム運用情報に加えて、励起光出力モニタ23、利得参照光入力モニタ33およびOSC入力モニタ43の各モニタ結果を含んでいる。また、受信側の光伝送装置2B内に設けられたOSC受信器42は、伝送路1を伝搬したOSC光Loscを受信し、OSC光Loscに含まれるシステム運用情報を励起光制御回路52に出力すると共に、送信側の励起光出力モニタ23、利得参照光入力モニタ33およびOSC入力モニタ43の各モニタ結果を演算回路51に出力する。ここでは、OSC光Loscの波長として、例えばC−バンドの短波長側帯域外で励起光Lpの波長帯域よりも長波長側に位置する1510nmを想定する。ただし、本発明におけるOSC光Loscの波長は上記の一例に限定されるものではない。
【0033】
上記OSC送信器41の後段に配置されたOSC入力モニタ43は、OSC送信器41から出力されるOSC光Loscの一部を分岐してそのパワーを測定することにより、伝送路1に入力されるOSC光Loscのパワーをモニタし、該モニタ結果をOSC送信器41に出力する。また、上記OSC受信器42の前段に配置されたOSC出力モニタ44は、OSC受信器42で受信されるOSC光Loscの一部を分岐してそのパワーを測定することにより、伝送路1から出力されるOSC光Loscのパワーをモニタし、該モニタ結果を演算回路51に出力する。
【0034】
演算回路51は、励起光入力モニタ22および出力モニタ23の各モニタ結果と、利得参照光入力モニタ33および出力モニタ34の各モニタ結果と、OSC入力モニタ43および出力モニタ44の各モニタ結果とを用いて、励起光Lp、利得参照光LrefおよびOSC光Loscの各波長における伝送路1の損失を計算によりそれぞれ取得する。そして、取得した各々の波長での伝送路損失に従って伝送路1の損失波長特性を演算し、該損失波長特性を基に伝送路1の種類を特定し、その結果を励起光制御回路52に出力する。
【0035】
励起光制御回路52は、演算回路51で特定された伝送路1の種類、OSC受信器42で取得されたシステム運用情報、および、利得参照光受信部32で検出されたラマン利得に基づいて、伝送路1から出力されるラマン増幅後の主信号光Lsの出力波長特性が、予め設定した目標の出力波長特性と実質的に一致するように、ラマン増幅用励起光Lpの供給状態を制御する。
【0036】
次に、本実施形態の動作について説明する。
上記のような構成を有するWDM光通信システムでは、システムの立ち上げ時などの主信号光Lsの運用開始前、すなわち、各中継区間の伝送路1に主信号光Lsが入力されていない状態において、励起光Lp、利得参照光LrefおよびOSC光Loscが伝送路1にそれぞれ入力され、各々の光について、伝送路入力時のパワーと伝送路1を通過した後の伝送路出力時のパワーとがモニタされ、それぞれのモニタ結果が直接若しくはOSC光を介して受信側の光伝送装置2B内の演算回路50に伝達される。演算回路50では、伝達されたモニタ結果を用いて、次の(1)式の関係に従い、励起光Lp、利得参照光LrefおよびOSC光Loscについての伝送路損失がそれぞれ計算される。
【0037】
伝送路損失[dB]=伝送路入力パワー[dBm]
−伝送路出力パワー[dBm]…(1)
ここで、励起光Lp、利得参照光LrefおよびOSC光Loscを用いて伝送路損失の計算を行うようにした理由について説明する。
【0038】
本実施形態では、伝送路1の両端に接続される光伝送装置2A,2Bが連携して、ラマン増幅媒体となる伝送路1の種類を自動的に認識し、システム条件が変化しても、分布ラマン増幅された主信号光Lsの出力波長特性が目標とする出力波長特性となるように、ラマン増幅用励起光Lpの最適化が行われる。光通信に利用される伝送路の種類は、例えば1.3μm零分散シングルモードファイバ(SMF)と分散シフトファイバ(DSF)のように、通常、分散の値に応じて分類されている。伝送路は、屈折率とコア径を変化させることで所望の分散特性が得られるように作られており、伝送路の屈折率はコアやクラッドに添加する材料によって特徴付けられ、当該添加材料によって伝送路の損失波長特性は特有の形状を示すことが知られている(例えば、森下克己著,「光ファイバ―ファイバ形光デバイス」,朝倉書店,1993年9月,p.51〜55等)。そこで、本発明では、伝送路の種類を自動認識する機能を実現するにあたり、伝送路の損失波長特性に着目する。
【0039】
伝送路の損失波長特性を正確に求めるためには、主信号光Lsの波長帯域を含んだ広い波長範囲について、複数の波長を特定して伝送路損失を測定することが必要である。分布ラマン増幅を用いた光伝送装置は、図5に示すように、主信号帯域(C−バンド)から短波長側に100nm程度離れた位置に波長設定された(ここでは、1430nm)励起光Lpと、該励起光Lpから長波長側に80nm離れた1510nmの波長を有するOSC光Loscと、該OSC光Loscから主信号帯域を挟んで長波長側に100nm離れた1610nmの波長を有する利得参照光Lrefと、を伝送路1に出力できる構成を従来から具備しているため、これらの光を利用することで、新たな光源等を追加することなく、伝送路1の損失波長特性を特定することが可能である。すなわち、伝送路1の損失波長特性の特定のために装置構成を複雑化させることがないという利点がある。
【0040】
なお、伝送路損失の測定にOSC光Loscを用いる場合において、一中継区間の伝送路長が長い等の理由により伝送路損失が大きくなり、OSC受信器42に到達するOSC光Loscのレベルが低下し、OSC出力モニタ44における受光素子の暗電流等の影響に起因してOSC光Loscの出力パワーを正確にモニタできなくなる可能性が考えられる。この場合、OSC光Loscの波長に対応した励起光を追加して、OSC光Loscもラマン利得を受けるようにすることで、OSC光Loscの出力パワーをモニタすることが可能になり、このときOSC光Loscが受けたラマン利得を把握しておけば、伝送路損失の計算も可能になる。ただし、OSC光Loscをラマン増幅する際に発生する雑音光が、OSC光とともにOSC出力モニタ44で受光されるようになるため、伝送路損失を正確に計算できなくなり問題となる場合もある。この問題を回避するためには、例えば、次に示すような手順に従って入出力パワーの測定および伝送路損失の計算を行うのがよい。
【0041】
まず、主信号光Lsの運用を開始する前の状況において、OSC送信器41を起動する前に、ラマン励起光源21を起動して励起光Lpを伝送路1に与えるようにし、ラマン増幅による雑音光のみを受信側のOSC出力モニタ44で受光して、そのパワーを測定する。ここでは、雑音光パワーの測定値をA[mW]とする。
【0042】
次に、伝送路1に励起光Lpが供給されている状態でOSC送信器41を起動し、OSC光Loscを伝送路1に与え、OSC入力モニタ43およびOSC出力モニタ44によりOSC光Loscの入出力パワーを測定する。ここでは、OSC光Loscの伝送路入力パワーをB[mW]、伝送路出力パワーをC[mW]とし、また、OSC光Loscが受けたラマン利得をG[dB]とする。
【0043】
そして、演算回路51により、上記の測定値を用いて、次の(2)式の関係に従い、OSC光の波長における伝送路損失を計算する。
伝送路損失[dB]=10*log(B)[dB]
−{10*log(C−A)−G}[dB] …(2)
なお、上記の説明では、OSC光をラマン増幅する一例を示したが、OSC光の伝送路入力パワーを増加させる手段(例えば、本出願人の先願である特願2007−334945号に記載しているOSC用光増幅器など)を利用することも可能である。
【0044】
上記のようにして励起光Lp、利得参照光LrefおよびOSC光Loscの各波長に対応した伝送路損失が演算回路51で計算されると、それらの値を用いて伝送路1の損失波長特性が求められる。伝送路の損失波長特性は、通常、低次数の曲線(2次もしくは3次)で近似できる単純な形状であるので、複数ではあるが必要最小限度の数の特定波長における伝送路損失が取得できていれば、それらを基にして広い波長範囲で伝送路の損失波長特性を導出することが可能である。このため、本実施形態では、励起光Lp、利得参照光LrefおよびOSC光Loscの3つの特定波長における伝送路損失の値を用い、近似曲線に従って、伝送路1の損失波長特性を演算により求めるようにしている。なお、近似曲線の次数は、演算の精度を考慮して3次とするのが好ましい。
【0045】
演算回路51において伝送路1の損失波長特性が演算されると、次に、伝送路1の種類の特定が行われる。ここでは例えば、伝送路の種類を特定するのに用いる判定値等を事前にデータベース化して図示しないメモリ等に格納しておき、演算された損失波長特性をデータベースの判定値等と照合して、伝送路の種類を特定している。上記のデータベースは、WDM光通信システムに利用される伝送路の種類は限られている(上述した1.3μm零分散SMFやDSFなどの数種類しかない)ため、小規模のものとなる。
【0046】
具体的に、1.3μm零分散SMFとDSFを判別する場合を考えると、図6に示すように、主信号帯域若しくはその長波長側の領域における伝送路損失を基準にしたとき、主信号帯域よりも短波長側の領域における伝送路損失は、1.3μm零分散SMFよりもDSFの方が大きくなる特性を有するので、この特性を利用して判定値を定めることにより、伝送路が1.3μm零分散SMFおよびDSFのいずれなのかを特定することが可能になる。
【0047】
上記の1.3μm零分散SMFとDSFの場合のような考え方により伝送路の種類を特定する場合には、少なくとも2つの光(例えば、励起光Lpおよび利得参照光Lref)について入力光パワーをモニタして伝送路損失を計算するだけでも、伝送路の種類を特定することが可能である。具体的には、2つの光について取得した伝送路損失の比、または、基準とする光(例えば、利得参照光)の伝送路損失に対する他の光の伝送路損失の差分[dB]を求め、伝送路の種類ごとに事前にデータベース化しておいた伝送路損失の比または差分の値と比較することで、伝送路の種類を特定するようにしてもよい。
【0048】
上記のようにして演算回路51において伝送路1の種類が特定されると、その情報が励起光制御回路52に伝えられると共に、伝送路情報として光伝送装置2Bの外部にも出力される。励起光制御回路52には、演算回路51からの伝送路の種類の他に、OSC受信器42からのシステム運用情報と、利得参照光受信器32からのラマン利得の検出値とが伝えられており、これらの情報を用いて、システム条件に応じた励起光の供給状態の制御が行われる。なお、上記の演算回路51から外部出力される伝送路情報の詳細については後述する。
【0049】
上記の励起光制御回路52では、例えば、伝送路の種類および主信号光の波長数に応じて予め定められる、複数波長のラマン増幅用励起光についてのパワー比(設計値)をデータベース化して図示しないメモリ等に格納しておき、演算回路51で特定された伝送路1の種類と、OSC受信器42からのシステム運用情報に含まれる主信号光の波長数とに対応する励起光パワー比をデータベースの中から選択する。そして、該選択した励起光パワー比を維持しながら、利得参照光受信器32からのラマン利得の検出値が所望の値で一定となる励起光トータルパワーが実現されるように、各波長の励起光パワーを最適化する。
【0050】
具体的に、一例として2波長励起の場合を考えると、波長λp1[nm]の励起光Lp1の伝送路入力パワーをP1[mW]、波長λp2[nm](λp1<λp2)の励起光Lp2の伝送路入力パワーをP2[mW]で表すようにしたとき、励起光パワー比X(=
P1/P2)は、伝送路の種類および主信号光の波長数に従って固定値とされ、励起光Lp1,Lp2のトータルパワー(=P1+P2=X×P2+P2)は所望のラマン利得に対応した値となるように、各励起光の伝送路入力パワーP1,P2の調整が行われることになる。次の表1は、励起光パワー比のデータベースの一例である。
【0051】
【表1】

【0052】
上記の表1におけるX1〜X6の大小関係は、伝送路の種類について見ると、DSFはSMFよりも短波長側の伝送路損失が大きいので、短波長側の励起光パワーを増加させる必要があり、X1<X4,X2<X5,X3<X6の関係となる。また、主信号光の波長数について見ると、波長数が多くなるほどラマン効果の影響により長波長側の信号光パワーが大きくなるので、短波長側の励起光パワーを増加させる必要があり、X1>X2>X3,X4>X5>X6の関係となる。このようなデータベースは、上述した従来技術におけるデータベースと比べると、励起光パワー比の各データが伝送路の種類(損失波長特性)ごとにまとめられており、伝送路の損失(スパンロス)を細分化してデータを設定する必要がないので、格段に小規模化されている。したがって、データベースを容易に構築することができ、かつ、当該データベースの中から実際のシステム条件に適した励起光パワー比を迅速に選ぶことが可能である。
【0053】
なお、上記の表1には、主信号光の波長数に応じて励起光パワー比を3段階に分類する一例を示したが、励起光パワー比の分類方法は上記の一例に限定されるものではない。
上述したような励起光パワーの最適化により、実際に接続されている伝送路の種類(損失波長特性)に自動的に対応し、かつ、主信号光の波長数に応じたラマン効果の変化にも自動的に対応して、分布ラマン増幅後の主信号光の出力波長特性を目標の出力波長特性とすることが可能になる。
【0054】
ここで、上述した伝送路の種類を特定する一連の処理に関連した演算回路51の好ましい付加的機能について説明する。
演算回路51においては、演算した伝送路の損失波長特性を利用して、主信号帯域内の波長(例えば、1.55μm等)における伝送路損失を算出することが可能である。若しくは、伝送路の種類ごとに換算値を用意しておき、励起光等の波長について計算した伝送路損失を、特定した伝送路の種類に対応した換算値を用いて、上記主信号帯域内の波長における伝送路損失に変換することが可能である。また、伝送路の種類が特定されることで、当該伝送路についての特定波長における標準的な単位長さ当たりの損失データが分かるので、励起光等について伝送路入出力パワーのモニタ値を用いて計算した伝送路損失を、当該波長に対応した単位長さ当たりの損失で割り算することにより、伝送路の長さを計算することも可能である。よって、特定した伝送路の種類、主信号帯域内の波長における伝送路損失、伝送路の長さを伝送路情報として、演算回路51から光伝送装置2Bの外部に出力するようにすれば、システム上の各種装置で上記の伝送路情報を利用できるようになる。例えば、主信号光のビットレートを高くするなどして大容量化を図った光通信システムにおいては、分散設計がシビアになるため可変分散補償器が適用される。このようなシステムにおいて、光伝送装置2Bの演算回路51から可変分散補償器へ上記の伝送路情報が通知されれば、可変分散補償器の好ましい分散量を高速に決定することが可能になる。
【0055】
また、演算回路51において、伝送路の種類を特定する際に、演算された損失波長特性に該当するような損失波長特性を持つ伝送路の種類がデータベースにない場合は、伝送路の極端な曲げや破断などの異常が発生している可能性が高いので、そのような場合には伝送路の異常を検知して外部にアラームを発出することもできる。このようなアラーム発出機能を演算回路51に持たせることで、伝送路の異常を簡略な構成により早期に検出できる高い信頼性を備えたシステムを実現することが可能になる。
【0056】
さらに、演算回路51において、前述した伝送路情報を用いて、例えば図7に実線で示すような励起光パワーに対するラマン利得の関係(設計値)を求め、この設計値と、実際に伝送路に入力されている励起光パワー(励起光入力モニタ22のモニタ値)に対するラマン利得(利得参照光受信器32の検出値)とを比較し、設計値に対して実際のラマン利得が小さくなるような場合(図7の斜線部分に相当)には、異常の発生を検知して外部にアラームを発出することができる。また、アラームに代えて、若しくはアラームと共に、設計値に対する実際のラマン利得の差分に関する情報を外部に出力するようにして、当該情報をシステム管理部やシステム上の光アンプ等の他の装置に通知することもできる。これにより、伝送路に何らかの損失媒体が存在する異常ケースを早期に検出できる高い信頼性を備えたシステムを実現することが可能になる。
【0057】
なお、上記の演算回路51から外部に出力される伝送路情報やアラームについては、自局から送信されるOSC光に乗せてシステム上の他の装置に伝達するようにしてもよい。
次に、上述した実施形態のより具体的な構成例について説明する。
【0058】
図8は、上述の図1に示したWDM光通信システムの一中継区間の構成を、上り回線および下り回線に対応した一対の伝送路1,1’を有するWDM光通信システムに応用した場合の構成例を示している。具体的に、光伝送装置2Cは、図の上側に示した上り回線に対応する送信側の構成として、光増幅器11および主信号光入力モニタ(PD)13と、励起光出力モニタ(PD)23と、利得参照光送信器(LrefTx)31および利得参照光入力モニタ(PD)33と、OSC送信器(OSCTx)41およびOSC入力モニタ(PD)43と、を備えており、加えて、図の下側に示した下り回線に対応する受信側の構成として、光増幅器12’および主信号光出力モニタ(PD)14’と、ラマン励起光源(PumpLD)21’および励起光入力モニタ(PD)22’と、利得参照光受信器(LrefRx)32’および利得参照光出力モニタ(PD)34’と、OSC受信器(OSCRx)42’およびOSC出力モニタ(PD)44’と、演算回路(COMP)51’および励起光制御回路(CONT)52’と、を備えている。また、光伝送装置2Dは、上記の光伝送装置2Cにおける上下回線の送信側と受信側を入れ替えた構成となっている。なお、図中の一点鎖線で囲んだ部分は、各光伝送装置2C,2D内の分布ラマン増幅ユニットを示している。
【0059】
このような一対の伝送路1,1’を介してWDM信号光を分布ラマン増幅しながら双方向に伝送するシステムについても、上述した実施形態の場合と同様に、上下の各回線に対応した励起光Lp,Lp’、利得参照光Lref,Lref’およびOSC光Losc,Losc’の伝送路1,1’に対する入出力パワーをモニタして、各々の波長における伝送路損失を計算して損失波長特性を求め、各伝送路1,1’の種類を特定して励起光パワー制御等を行うことにより、上下回線におけるシステム条件の変化に自動的に対応して、ラマン増幅後の各主信号光Ls,Ls’の出力波長特性を目標の出力波長特性とすることが可能になる。
【0060】
以上の各実施形態に関して、さらに以下の付記を開示する。
【0061】
(付記1) 伝送路の一端に接続され、該伝送路に波長多重信号光を送信する第1の光伝送装置と、前記伝送路の他端に接続され、該伝送路を伝搬して分布ラマン増幅された波長多重信号光を受信する第2の光伝送装置と、を備えた波長多重光通信システムにおいて、
波長多重信号光の運用開始前に、前記波長多重信号光とは波長の異なる複数の光を、前記第1および第2の光伝送装置の間で前記伝送路を介して送受信し、該複数の光についての伝送路入力パワーおよび伝送路出力パワーをそれぞれモニタするモニタ手段と、
前記モニタ手段でモニタされた前記複数の光についての伝送路入力パワーおよび伝送路出力パワーの各値を用いて、前記複数の光に対応した各波長における伝送路損失を計算し、該計算結果より推定可能な損失波長特性に基づいて前記伝送路の種類を特定する演算手段と、
前記伝送路を伝搬する波長多重信号光を分布ラマン増幅するための励起光を前記伝送路に供給する励起光供給手段と、
前記演算手段で特定された前記伝送路の種類に応じて、前記伝送路の他端から出力される分布ラマン増幅された波長多重信号光の出力波長特性が目標とする出力波長特性となるように、前記励起光供給手段を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする波長多重光通信システム。
【0062】
(付記2) 付記1に記載の波長多重光通信システムであって、
前記モニタ手段でモニタされる複数の光は、前記励起光供給手段から出力される励起光を含むことを特徴とする波長多重光通信システム。
【0063】
(付記3) 付記2に記載の波長多重光通信システムであって、
前記波長多重信号光の波長帯域外で前記励起光の波長とは異なる波長を有する利得参照光を、前記第1および第2の光伝送装置の間で前記伝送路を介して送受信して、前記伝送路におけるラマン利得を検出する利得参照光送受信手段を備え、
前記制御手段は、前記利得参照光送受信手段で検出されるラマン利得が一定となるように、前記励起光供給手段を制御することを特徴とする波長多重光通信システム。
【0064】
(付記4) 付記3に記載の波長多重光通信システムであって、
前記モニタ手段でモニタされる複数の光は、前記利得参照光を含むことを特徴とする波長多重光通信システム。
【0065】
(付記5) 付記4に記載の波長多重光通信システムであって、
前記第1の光伝送装置は、
前記伝送路の一端から出力される前記励起光の伝送路出力パワーをモニタする励起光出力モニタと、
前記利得参照光を発生し、該利得参照光を前記伝送路の一端に送信する利得参照光送信器と、
前記利得参照光送信器から送信される利得参照光の伝送路入力パワーをモニタする利得参照光入力モニタと、を有し、
前記第2の光伝送装置は、
波長の異なる複数の前記励起光を発生して前記伝送路に供給する励起光源と、
前記励起光源から出力される励起光の伝送路入力パワーをモニタする励起光入力モニタと、
前記伝送路の他端から出力される前記利得参照光を受信して前記伝送路におけるラマン利得を検出する利得参照光受信器と、
前記利得参照光受信器で受信される利得参照光の伝送路出力パワーをモニタする利得参照光出力モニタと、
波長多重信号光の運用開始前に、前記励起光入力モニタおよび前記励起光出力モニタでモニタした各値を用いて、前記励起光の波長における伝送路損失を計算すると共に、前記利得参照光入力モニタおよび前記利得参照光出力モニタでモニタした各値を用いて、前記利得参照光の波長における伝送路損失を計算し、それらの計算結果より推定可能な損失波長特性に基づいて前記伝送路の種類を特定する演算回路と、
伝送路の種類ごとに励起光パワー比の設計値が予め定められたデータベースより、前記演算回路で特定された前記伝送路の種類に対応する励起光パワー比を選択し、該選択した励起光パワー比を維持しながら、前記利得参照光受信器で検出されるラマン利得が一定となるように励起光トータルパワーを制御する励起光制御回路と、を有することを特徴とする波長多重光通信システム。
【0066】
(付記6) 付記5に記載の波長多重光通信システムであって、
前記第1の光伝送装置が、ファイバ型の構成で2対2のポートを持ち、波長多重信号光が伝搬する光路上に挿入され、前記伝送路の一端に送信される波長多重信号光の一部を分岐して、対向する分岐ポートうちの一方から出力する分岐カプラを有するとき、
前記励起光出力モニタは、前記分岐カプラの対向する分岐ポートうちの他方に接続された光検出器を含むことを特徴とする波長多重光通信システム。
【0067】
(付記7) 付記6に記載の波長多重光通信システムであって、
前記励起光出力モニタは、前記分岐カプラおよび前記光検出器の間に、波長多重信号光とは逆方向に伝搬するラマン雑音光を除去する光フィルタを含むことを特徴とする波長多重光通信システム。
【0068】
(付記8) 付記2に記載の波長多重光通信システムであって、
前記波長多重信号光の波長帯域外で前記励起光の波長とは異なる波長を有する監視信号光を、前記第1および第2の光伝送装置の間で前記伝送路を介して送受信してシステム運用情報を伝達する監視信号光送受信手段を備え、
前記制御手段は、前記演算手段で特定された前記伝送路の種類および前記システム運用情報に含まれる波長多重信号光の波長数に応じて、前記伝送路の他端から出力される分布ラマン増幅された波長多重信号光の出力波長特性が目標とする出力波長特性となるように、前記励起光供給手段を制御することを特徴とする波長多重光通信システム。
【0069】
(付記9) 付記8に記載の波長多重光通信システムであって、
前記モニタ手段でモニタされる複数の光は、前記監視信号光を含むことを特徴とする波長多重光通信システム。
【0070】
(付記10) 付記9に記載の波長多重光通信システムであって、
前記第1の光伝送装置は、
前記伝送路の一端から出力される前記励起光の伝送路出力パワーをモニタする励起光出力モニタと、
前記監視信号光を発生し、該監視信号光を前記伝送路の一端に送信する監視信号光送信器と、
前記監視信号光送信器から送信される監視信号光の伝送路入力パワーをモニタする監視信号光入力モニタと、を有し、
前記第2の光伝送装置は、
波長の異なる複数の前記励起光を発生して前記伝送路に供給する励起光源と、
前記励起光源から出力される励起光の伝送路入力パワーをモニタする励起光入力モニタと、
前記伝送路の他端から出力される前記監視信号光を受信して前記システム運用情報を取得する監視信号光受信器と、
前記監視信号光受信器で受信される監視信号光の伝送路出力パワーをモニタする監視信号光出力モニタと、
波長多重信号光の運用開始前に、前記励起光入力モニタおよび前記励起光出力モニタの各モニタ値を用いて、前記励起光の波長における伝送路損失を計算すると共に、前記監視信号光入力モニタおよび前記監視信号光出力モニタでモニタした各値を用いて、前記監視信号光の波長における伝送路損失を計算し、それらの計算結果より推定可能な損失波長特性に基づいて前記伝送路の種類を特定する演算回路と、
伝送路の種類および波長多重信号光の波長数の組み合わせごとに励起光パワー比の設計値が予め定められたデータベースより、前記演算回路で特定された前記伝送路の種類および前記監視信号光受信器で取得されたシステム運用情報に含まれる波長多重信号光の波長数の組み合わせに対応する励起光パワー比を選択し、該選択した励起光パワー比を維持しながら励起光トータルパワーを制御する励起光制御回路と、を有することを特徴とする波長多重光通信システム。
【0071】
(付記11) 付記10に記載の波長多重光通信システムであって、
前記第1の光伝送装置が、ファイバ型の構成で2対2のポートを持ち、波長多重信号光が伝搬する光路上に挿入され、前記伝送路の一端に送信される波長多重信号光の一部を分岐して、対向する分岐ポートうちの一方から出力する分岐カプラを有するとき、
前記励起光出力モニタは、前記分岐カプラの対向する分岐ポートうちの他方に接続された光検出器を含むことを特徴とする波長多重光通信システム。
【0072】
(付記12) 付記11に記載の波長多重光通信システムであって、
前記励起光出力モニタは、前記分岐カプラおよび前記光検出器の間に、波長多重信号光とは逆方向に伝搬するラマン雑音光を除去する光フィルタを含むことを特徴とする波長多重光通信システム。
【0073】
(付記13) 付記1に記載の波長多重光通信システムであって、
前記演算手段は、前記複数の光の各波長における伝送路損失の計算値、および、特定した伝送路の種類に対応した換算値を用いて、波長多重信号光の波長帯域における伝送路損失を算出することを特徴とする波長多重光通信システム。
【0074】
(付記14) 付記13に記載の波長多重光通信システムであって、
前記演算手段は、前記複数の光の各波長における伝送路損失の計算値、および、特定した伝送路の種類に対応した単位長さ当たりの損失データを用いて、前記伝送路の長さを算出することを特徴とする波長多重光通信システム。
【0075】
(付記15) 付記14に記載の波長多重光通信システムであって、
前記演算手段は、伝送路の種類、波長多重信号光の波長帯域における伝送路損失および伝送路の長さを含む伝送路情報を、システム上の可変分散補償補償器に通知することを特徴とする波長多重光通信システム。
【0076】
(付記16) 付記1に記載の波長多重光通信システムであって、
前記演算手段は、前記複数の光の各波長における伝送路損失の計算値より損失波長特性が推定不可能なときに、異常を検知してアラームを発出することを特徴とする波長多重光通信システム。
【0077】
(付記17) 付記3に記載の波長多重光通信システムであって、
前記演算手段は、特定した伝送路の種類を基に励起光の伝送路入力パワーに対するラマン利得の関係を求め、波長多重信号光の運用開始後に前記モニタ手段でモニタされる励起光の伝送路入力パワーに対する前記利得参照光送受信手段で検出されるラマン利得が、前記求めた関係において対応するラマン利得よりも小さいときに、異常を検知してアラームを発出することを特徴とする波長多重光通信システム。
【0078】
(付記18) 付記3に記載の波長多重光通信システムであって、
前記演算手段は、特定した伝送路の種類を基に励起光の伝送路入力パワーに対するラマン利得の関係を求め、波長多重信号光の運用開始後に前記モニタ手段でモニタされる励起光の伝送路入力パワーに対する前記利得参照光送受信手段で検出されるラマン利得が、前記求めた関係において対応するラマン利得よりも小さいときに、異常を検知して当該ラマン利得の差分に関する情報を外部に出力することを特徴とする波長多重光通信システム。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明によるWDM光通信システムの一実施形態における一中継区間の構成を示すブロック図である。
【図2】図1における励起光入力モニタおよび励起光出力モニタの具体的な構成例を示す図である。
【図3】図1における励起光入力モニタおよび励起光出力モニタの具体的な他の構成例を示す図である。
【図4】図3の光フィルタの透過波長特性、および、励起光波長に対するラマン逆方向雑音光の発生帯域を示す図である。
【図5】励起光、利得参照光およびOSC光の波長配置を説明するための図である。
【図6】1.3μm零分散SMFおよびDSFの損失波長特性の違いを示した図である。
【図7】ラマン利得の減少により異常を検知する機能を説明するための図である。
【図8】図1の実施形態に関するより具体的な構成例を示すブロック図である。
【図9】一般的な分布ラマン増幅を用いたWDM光通信システムの一例を示す図である。
【図10】図9のシステムについて分布ラマン増幅の利得波長特性に対応した光フィルタを設けた一例を示す図である。
【符号の説明】
【0080】
1…伝送路
2A…第1(送信側)の光伝送装置
2B…第2(受信側)の光伝送装置
11,12…光増幅器
13…主信号光入力モニタ
14…主信号光出力モニタ
21…ラマン励起光源
22…励起光入力モニタ
23…励起光出力モニタ
31…利得参照光送信器
32…利得参照光受信器
33…利得参照光入力モニタ
34…利得参照光出力モニタ
41…OSC送信器
42…OSC受信器
43…OSC入力モニタ
44…OSC出力モニタ
51…演算回路
52…励起光制御回路
Ls…波長多重信号光(主信号光)
Lp…励起光
Lref…利得参照光
Losc…OSC光


【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送路の一端に接続され、該伝送路に波長多重信号光を送信する第1の光伝送装置と、前記伝送路の他端に接続され、該伝送路を伝搬して分布ラマン増幅された波長多重信号光を受信する第2の光伝送装置と、を備えた波長多重光通信システムにおいて、
波長多重信号光の運用開始前に、前記波長多重信号光とは波長の異なる複数の光を、前記第1および第2の光伝送装置の間で前記伝送路を介して送受信し、該複数の光についての伝送路入力パワーおよび伝送路出力パワーをそれぞれモニタするモニタ手段と、
前記モニタ手段でモニタされた前記複数の光についての伝送路入力パワーおよび伝送路出力パワーの各値を用いて、前記複数の光に対応した各波長における伝送路損失を計算し、該計算結果より推定可能な損失波長特性に基づいて前記伝送路の種類を特定する演算手段と、
前記伝送路を伝搬する波長多重信号光を分布ラマン増幅するための励起光を前記伝送路に供給する励起光供給手段と、
前記演算手段で特定された前記伝送路の種類に応じて、前記伝送路の他端から出力される分布ラマン増幅された波長多重信号光の出力波長特性が目標とする出力波長特性となるように、前記励起光供給手段を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする波長多重光通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の波長多重光通信システムであって、
前記モニタ手段でモニタされる複数の光は、前記励起光供給手段から出力される励起光を含むことを特徴とする波長多重光通信システム。
【請求項3】
請求項2に記載の波長多重光通信システムであって、
前記波長多重信号光の波長帯域外で前記励起光の波長とは異なる波長を有する利得参照光を、前記第1および第2の光伝送装置の間で前記伝送路を介して送受信して、前記伝送路におけるラマン利得を検出する利得参照光送受信手段を備え、
前記制御手段は、前記利得参照光送受信手段で検出されるラマン利得が一定となるように、前記励起光供給手段を制御することを特徴とする波長多重光通信システム。
【請求項4】
請求項3に記載の波長多重光通信システムであって、
前記モニタ手段でモニタされる複数の光は、前記利得参照光を含むことを特徴とする波長多重光通信システム。
【請求項5】
請求項4に記載の波長多重光通信システムであって、
前記第1の光伝送装置は、
前記伝送路の一端から出力される前記励起光の伝送路出力パワーをモニタする励起光出力モニタと、
前記利得参照光を発生し、該利得参照光を前記伝送路の一端に送信する利得参照光送信器と、
前記利得参照光送信器から送信される利得参照光の伝送路入力パワーをモニタする利得参照光入力モニタと、を有し、
前記第2の光伝送装置は、
波長の異なる複数の前記励起光を発生して前記伝送路に供給する励起光源と、
前記励起光源から出力される励起光の伝送路入力パワーをモニタする励起光入力モニタと、
前記伝送路の他端から出力される前記利得参照光を受信して前記伝送路におけるラマン利得を検出する利得参照光受信器と、
前記利得参照光受信器で受信される利得参照光の伝送路出力パワーをモニタする利得参照光出力モニタと、
波長多重信号光の運用開始前に、前記励起光入力モニタおよび前記励起光出力モニタでモニタした各値を用いて、前記励起光の波長における伝送路損失を計算すると共に、前記利得参照光入力モニタおよび前記利得参照光出力モニタでモニタした各値を用いて、前記利得参照光の波長における伝送路損失を計算し、それらの計算結果より推定可能な損失波長特性に基づいて前記伝送路の種類を特定する演算回路と、
伝送路の種類ごとに励起光パワー比の設計値が予め定められたデータベースより、前記演算回路で特定された前記伝送路の種類に対応する励起光パワー比を選択し、該選択した励起光パワー比を維持しながら、前記利得参照光受信器で検出されるラマン利得が一定となるように励起光トータルパワーを制御する励起光制御回路と、を有することを特徴とする波長多重光通信システム。
【請求項6】
請求項2に記載の波長多重光通信システムであって、
前記波長多重信号光の波長帯域外で前記励起光の波長とは異なる波長を有する監視信号光を、前記第1および第2の光伝送装置の間で前記伝送路を介して送受信してシステム運用情報を伝達する監視信号光送受信手段を備え、
前記制御手段は、前記演算手段で特定された前記伝送路の種類および前記システム運用情報に含まれる波長多重信号光の波長数に応じて、前記伝送路の他端から出力される分布ラマン増幅された波長多重信号光の出力波長特性が目標とする出力波長特性となるように、前記励起光供給手段を制御することを特徴とする波長多重光通信システム。
【請求項7】
請求項6に記載の波長多重光通信システムであって、
前記モニタ手段でモニタされる複数の光は、前記監視信号光を含むことを特徴とする波長多重光通信システム。
【請求項8】
請求項7に記載の波長多重光通信システムであって、
前記第1の光伝送装置は、
前記伝送路の一端から出力される前記励起光の伝送路出力パワーをモニタする励起光出力モニタと、
前記監視信号光を発生し、該監視信号光を前記伝送路の一端に送信する監視信号光送信器と、
前記監視信号光送信器から送信される監視信号光の伝送路入力パワーをモニタする監視信号光入力モニタと、を有し、
前記第2の光伝送装置は、
波長の異なる複数の前記励起光を発生して前記伝送路に供給する励起光源と、
前記励起光源から出力される励起光の伝送路入力パワーをモニタする励起光入力モニタと、
前記伝送路の他端から出力される前記監視信号光を受信して前記システム運用情報を取得する監視信号光受信器と、
前記監視信号光受信器で受信される監視信号光の伝送路出力パワーをモニタする監視信号光出力モニタと、
波長多重信号光の運用開始前に、前記励起光入力モニタおよび前記励起光出力モニタの各モニタ値を用いて、前記励起光の波長における伝送路損失を計算すると共に、前記監視信号光入力モニタおよび前記監視信号光出力モニタでモニタした各値を用いて、前記監視信号光の波長における伝送路損失を計算し、それらの計算結果より推定可能な損失波長特性に基づいて前記伝送路の種類を特定する演算回路と、
伝送路の種類および波長多重信号光の波長数の組み合わせごとに励起光パワー比の設計値が予め定められたデータベースより、前記演算回路で特定された前記伝送路の種類および前記監視信号光受信器で取得されたシステム運用情報に含まれる波長多重信号光の波長数の組み合わせに対応する励起光パワー比を選択し、該選択した励起光パワー比を維持しながら励起光トータルパワーを制御する励起光制御回路と、を有することを特徴とする波長多重光通信システム。
【請求項9】
請求項1に記載の波長多重光通信システムであって、
前記演算手段は、前記複数の光の各波長における伝送路損失の計算値、および、特定した伝送路の種類に対応した換算値を用いて、波長多重信号光の波長帯域における伝送路損失を算出することを特徴とする波長多重光通信システム。
【請求項10】
請求項1に記載の波長多重光通信システムであって、
前記演算手段は、前記複数の光の各波長における伝送路損失の計算値より損失波長特性が推定不可能なときに、異常を検知してアラームを発出することを特徴とする波長多重光通信システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−177587(P2009−177587A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−14935(P2008−14935)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】