説明

切換弁及びこの種の切換弁を備える内燃機関

【課題】複雑な解決手段が設けられた従来技術の欠点を解消する改良された切換弁を提供する。
【解決手段】切換弁1、特に作動液流を制御するための切換弁1において、ボールペン機構2を備え、ボールペン機構2は、ボールペン機構2の操作手段3に操作パルスIを印加することにより交互に第1の係止位置又は第2の係止位置に係止可能であり、かつ第1の係止位置又は第2の係止位置が、切換弁1の制御ピストン6のそれぞれの第1の切換位置又は第2の切換位置に対応するように、切換弁1に連結されているよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切換弁、特に作動液流を制御するための切換弁に関する。さらに本発明は、この種の切換弁を備える内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
任意の車両に使用可能であるが、本発明、及び本発明の根底にある課題について、乗用車両を参照しながら詳説する。
【0003】
内燃機関において、高い圧縮比は、内燃機関の効率に肯定的な影響を有する。圧縮比とは、一般に、圧縮前の全シリンダ容積の、圧縮後に残されるシリンダ容積に対する比と解される。しかし、固定の圧縮比を有する外部点火式の内燃機関、特にオットー機関では、圧縮比は、全負荷運転時の内燃機関のいわゆるノックが回避される程度の高さに選択されなければならない。しかし、内燃機関の遙かに頻繁に発生する部分負荷領域のため、つまり、シリンダの充填量が低いときには、ノックの発生なしに、より高い値を有する圧縮比を選択することができる。内燃機関の重要な部分負荷領域は、圧縮比が可変に調節可能であると、改善され得る。圧縮比を調節するために、種々異なるシステムが記載されている。
【0004】
下記特許文献1には、コンロッド長さを可変に調節可能なシステムが記載されている。コンロッド長さの変更は、偏心的なコンロッドアイ(Pleuelauge)の回動によりなされる。コンロッドアイの回動は、内燃機関の慣性力及びガス力の入力により導入される。この回転運動は、コンロッド内の、エンジンオイルで負荷されたピストンにより助成される。偏心的なコンロッドアイの回転運動を制御するために、それぞれ一方のピストンにはエンジンオイルが供給されて圧力が高められ、他方のピストンは無圧に切り換えられている。ピストンの制御は、3ポート2位置弁を介してなされる。3ポート2位置弁を切り換えるために、3ポート2位置弁は、機械的に操作されなければならない。このために、例えば外部から電磁式に制御される、スライドガイド軌道、シフトロッド及びスライドロッドからなる複雑な解決手段が設けられている。しかし、このことは、内燃機関の大規模な変更を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許出願公開第102005055199号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、上述の欠点を解消する改良された切換弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明に係る切換弁、特に作動液流を制御するための切換弁では、ボールペン機構(Kugelschreibermechanik)を備え、該ボールペン機構は、該ボールペン機構の操作手段に操作パルスを印加することにより交互に第1の係止位置又は第2の係止位置に係止可能であり、かつ該第1の係止位置又は該第2の係止位置が、前記切換弁の制御ピストンのそれぞれの第1の切換位置又は第2の切換位置に対応するように、前記切換弁に連結されているようにした。
【0008】
好ましくは、前記ボールペン機構の前記操作手段に前記操作パルスを印加することにより前記切換弁を前記第1の切換位置から前記第2の切換位置に切り換えるために、前記切換弁の前記制御ピストンが、ほぼ前記操作パルスの方向とは逆向きに所定の距離を移動可能である。
【0009】
好ましくは、前記ボールペン機構の前記操作手段に前記操作パルスを印加することにより前記切換弁を前記第2の切換位置から前記第1の切換位置に切り換えるために、前記切換弁の前記制御ピストンが、ほぼ前記操作パルスの方向で所定の距離を移動可能である。
【0010】
好ましくは、前記ボールペン機構がSecuritTM機構(SecuritTM‐Mechanik)の形態で形成されており、特に:前記操作手段及び回動スリーブを軸方向で案内するための制御スリーブと、前記制御ピストン、前記回動スリーブ及び前記操作手段を前記操作パルスに抗して軸方向で予め付勢するばね装置とを備え、前記回動スリーブが前記制御スリーブ及び前記操作手段と作用結合しており、前記操作手段に前記操作パルスを印加すると、該操作手段は、前記制御スリーブに対して、前記回動スリーブを伴って、該回動スリーブが交互に前記第1の係止位置と前記第2の係止位置とを占めることができるように軸方向で移動可能である。
【0011】
好ましくは、制御スリーブであって、内壁に配置され該制御スリーブの長手方向に関して軸方向で延びる制御スリーブリブと、該制御スリーブの端面に配設される斜面の制御スリーブリブ端面と、それぞれ2つの隣接する前記制御スリーブリブ間に配置され該制御スリーブの長手方向に関して交互に異なる制御スリーブ溝深さを有する制御スリーブ溝とを備える制御スリーブと;回動スリーブであって、少なくとも部分的に前記制御スリーブ内に配置されており、前記制御スリーブ溝に対して相補的な回動スリーブリブと、前記斜面の制御スリーブリブ端面に面した斜面の回動スリーブリブ端面とを備える回動スリーブと;制御ピストンであって、前記回動スリーブの端面と作用接触する制御ピストンと;操作手段であって、操作手段リブにより前記制御スリーブ溝内を案内可能であり、前記回動スリーブリブ端面と作用接触する歯列を備える環状面を備える操作手段と;ばね装置であって、前記制御ピストン、前記回動スリーブ及び前記操作手段を前記操作パルスに抗して予め付勢するばね装置とを備える。
【0012】
好ましくは、前記操作手段に前記操作パルスを印加すると、該操作手段は、前記回動スリーブを伴って前記制御スリーブ内に前記ばね装置のばね力に抗して、前記回動スリーブリブが、第1の制御スリーブ溝深さを有する対応する制御スリーブ溝から離脱するように移動可能であり、前記歯列を備える環状面と前記回動スリーブリブ端面とは、前記回動スリーブが第1の回転運動を実施するように作用接触し、前記制御スリーブリブ端面と前記回動スリーブリブ端面とは、前記回動スリーブが第2の回転運動を実施するように互いに滑動し、前記回動スリーブリブは、第2の制御スリーブ溝深さを有する制御スリーブ溝に係合して、前記回動スリーブは前記係止位置の一方に係止し、前記制御ピストンは、前記回動スリーブとの作用結合に基づいて、前記切換位置の一方に移動可能である。
【0013】
好ましくは、前記回動スリーブリブの数が、前記制御スリーブ溝の数の半分に等しい。
【0014】
好ましくは、前記ボールペン機構がボール機構(Kugelmechanik)の形態で形成されており、特に:前記操作手段を軸方向で案内するための制御スリーブと、摺動可能に前記制御スリーブの半径方向溝内に配置されているボールと、前記制御ピストン及び前記操作手段を前記操作パルスに抗して軸方向で予め付勢するばね装置とを備え、前記ボールは、前記操作手段内に設けられる溝と作用結合しており、該操作手段に前記操作パルスを印加すると、該操作手段は前記制御スリーブに対して、前記ボールとの作用結合に基づいて交互に前記第1の切換位置と前記第2の切換位置とを占めることができるように軸方向で移動可能である。
【0015】
好ましくは、前記溝がハート形の溝として形成されている。
【0016】
好ましくは、前記制御スリーブが、弁孔として、特に、前記制御ピストンのそれぞれの流体溝に対応する、前記弁孔を貫く流体管路を備える弁ブロック内に設けられた弁孔として形成されている。
【0017】
好ましくは、前記操作パルスが流体圧により印加可能である。
【0018】
好ましくは、前記ばね装置は、操作パルスが所定の閾値を上回ったときに初めて、前記切換弁の操作がなされるように形成されている。
【0019】
さらに上記課題を解決するために本発明に係る内燃機関では、該内燃機関が調節可能な圧縮比を有しており、上述の切換弁と、コンロッド支承アイ及び/又はストローク支承アイ内に配置される液圧式に調節可能な、実効コンロッド長さを調節するための偏心装置を備えるコンロッド装置とを備え、該偏心装置の調節ストロークが前記切換弁により制御可能であるようにした。
【0020】
好ましくは、前記切換弁が前記コンロッド装置内に、特に前記ストローク支承アイの領域に組み込まれている。
【0021】
好ましくは、前記操作パルスがエンジンオイル圧により印可可能であって、前記内燃機関が、前記エンジンオイル圧を短期的に上昇させるための手段、例えば制御可能なオイルポンプ又は圧力アキュムレータを備える。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る切換弁、特に作動液流を制御するための切換弁では、ボールペン機構を備え、ボールペン機構は、ボールペン機構の操作手段に操作パルスを印加することにより交互に第1の係止位置又は第2の係止位置に係止可能であり、かつ第1の係止位置又は第2の係止位置が、切換弁の制御ピストンのそれぞれの第1の切換位置又は第2の切換位置に対応するように、切換弁に連結されている。
【0023】
また、本発明に係る内燃機関では、内燃機関が調節可能な圧縮比を有しており、上述の切換弁と、コンロッド支承アイ及び/又はストローク支承アイ内に配置される液圧式に調節可能な、実効コンロッド長さを調節するための偏心装置を備えるコンロッド装置とを備え、偏心装置の調節ストロークが切換弁により制御可能である。
【0024】
本発明の基本思想は、操作パルスの印可により切換弁を選択的に第1の切換位置から第2の切換位置にか、又は第2の切換位置から第1の切換位置に切り換えるボールペン機構を備える切換弁を設けることにある。
【0025】
従属請求項には、請求項1に係る切換弁あるいは請求項13に係る内燃機関の有利な態様及び改良が看取される。
【0026】
有利な態様では、ボールペン機構の操作手段に操作パルスを印加することにより切換弁を第1の切換位置から第2の切換位置に切り換えるために、切換弁の制御ピストンが、ほぼ操作パルスの方向とは逆向きに所定の距離を移動可能である。この態様は、有利には、第1の切換位置から第2の切換位置への切換弁の簡単な切換を可能にする。
【0027】
別の有利な態様では、ボールペン機構の操作手段に操作パルスを印加することにより切換弁を第2の切換位置から第1の切換位置に切り換えるために、切換弁の制御ピストンが、ほぼ操作パルスの方向で所定の距離を移動可能である。この態様は、有利には、第2の切換位置から第1の切換位置への切換弁の簡単な切換を可能にする。
【0028】
別の有利な態様では、ボールペン機構がSecuritTM機構の形態で形成されており、特に:操作手段及び回動スリーブを軸方向で案内するための制御スリーブと、制御ピストン、回動スリーブ及び操作手段を操作パルスに抗して軸方向で予め付勢するばね装置とを備え、回動スリーブが制御スリーブ及び操作手段と作用結合しており、操作手段に操作パルスを印加すると、操作手段は、制御スリーブに対して、回動スリーブを伴って、回動スリーブが交互に第1の係止位置と第2の係止位置とを占めることができるように軸方向で移動可能である。この態様により、一操作方向から切換弁を操作するだけで、切換弁は、高信頼性に両切換位置に移動可能であり、これにより、切換弁の使用が簡単になる。
【0029】
別の有利な態様では、制御スリーブであって、内壁に配置され制御スリーブの長手方向に関して軸方向で延びる制御スリーブリブと、制御スリーブの端面に配設される斜面の制御スリーブリブ端面と、それぞれ2つの隣接する制御スリーブリブ間に配置され制御スリーブの長手方向に関して交互に異なる制御スリーブ溝深さを有する制御スリーブ溝とを備える制御スリーブと;回動スリーブであって、少なくとも部分的に制御スリーブ内に配置されており、制御スリーブ溝に対して相補的な回動スリーブリブと、斜面の制御スリーブリブ端面に面した斜面の回動スリーブリブ端面とを備える回動スリーブと;制御ピストンであって、回動スリーブの端面と作用接触する制御ピストンと;操作手段であって、操作手段リブにより制御スリーブ溝内を案内可能であり、回動スリーブリブ端面と作用接触する歯列を備える環状面を備える操作手段と;ばね装置であって、制御ピストン、回動スリーブ及び操作手段を操作パルスに抗して予め付勢するばね装置とを備える。この態様により、切換弁の簡単な製造可能性が保証されている。
【0030】
別の有利な態様では、操作手段に操作パルスを印加すると、操作手段は、回動スリーブを伴って制御スリーブ内にばね装置のばね力に抗して、回動スリーブリブが、第1の制御スリーブ溝深さを有する対応する制御スリーブ溝から離脱するように移動可能であり、歯列を備える環状面と回動スリーブリブ端面とは、回動スリーブが第1の回転運動を実施するように作用接触し、制御スリーブリブ端面と回動スリーブリブ端面とは、回動スリーブが第2の回転運動を実施するように互いに滑動し、回動スリーブリブは、第2の制御スリーブ溝深さを有する制御スリーブ溝に係合して、回動スリーブは係止位置の一方に係止し、制御ピストンは、回動スリーブとの作用結合に基づいて、切換位置の一方に移動可能である。この態様は、第1の切換位置から第2の切換位置へ及び第2の切換位置から第1の切換位置への信頼性の高い確実な切換を可能にし、これにより、切換弁の信頼性は向上する。
【0031】
別の有利な態様では、回動スリーブリブの数が、制御スリーブ溝の数の半分に等しい。この態様により、回動スリーブが制御スリーブ内で案内されていることが高信頼性に保証される。
【0032】
別の有利な態様では、ボールペン機構がボール機構の形態で形成されており、特に:操作手段を軸方向で案内するための制御スリーブと、摺動可能に制御スリーブの半径方向溝内に配置されているボールと、制御ピストン及び操作手段を操作パルスに抗して軸方向で予め付勢するばね装置とを備え、ボールは、操作手段内に設けられる溝と作用結合しており、操作手段に操作パルスを印加すると、操作手段は制御スリーブに対して、ボールとの作用結合に基づいて交互に第1の切換位置と第2の切換位置とを占めることができるように軸方向で移動可能である。この態様は、切換弁の特に簡単な製造可能性を可能にする。
【0033】
別の有利な態様では、溝がハート形の溝として形成されている。この態様は、ボールペン機構の両係止位置へのボールの高信頼性の案内を可能にする。
【0034】
別の有利な態様では、制御スリーブが、弁孔として、特に、制御ピストンのそれぞれの流体溝に対応する、弁孔を貫く流体管路を備える弁ブロック内に設けられた弁孔として形成されている。この態様により、切換弁の使用範囲は有利には拡大される。
【0035】
別の有利な態様では、操作パルスが流体圧により印加可能である。この態様により、切換弁は簡単に操作され、切換弁の使用範囲は拡大される。
【0036】
別の有利な態様では、ばね装置は、操作パルスが所定の閾値を上回ったときに初めて、切換弁の操作がなされるように形成されている。この態様は、切換弁の望まない切換を高信頼性に回避する。これにより、切換弁の信頼性は向上する。
【0037】
別の有利な態様では、切換弁がコンロッド装置内に、特にストローク支承アイの領域に組み込まれている。これにより、切換弁は、小さな構成スペースを占有するにすぎない。この態様により、切換弁の使用範囲は有利には拡大される。
【0038】
別の有利な態様では、操作パルスがエンジンオイル圧により印可可能であって、内燃機関が、エンジンオイル圧を短期的に上昇させるための手段、例えば制御可能なオイルポンプ又は圧力アキュムレータを備える。この態様は、有利には、既存のエンジンオイル系への切換弁の統合を可能にする。これにより、切換弁の使用範囲が拡大される。
【0039】
以下に、本発明について実施の形態を基に添付の概略図を参照しながら詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】第1の切換位置における本発明の有利な実施の形態に係る切換弁の部分断面図である。
【図2】図1に示す本発明の有利な実施の形態に係る切換弁の部分図である。
【図3】図1に示す線III−IIIに沿った本発明の有利な実施の形態に係る切換弁の断面図である。
【図4】中間切換位置における図1に示す本発明の有利な実施の形態に係る切換弁の別の部分図である。
【図5】第2の切換位置における図1に示す本発明の有利な実施の形態に係る切換弁の部分断面図である。
【図6】第1の切換位置における本発明の別の有利な実施の形態に係る切換弁の部分断面図である。
【図7】第2の切換位置における図6に示す本発明の別の有利な実施の形態に係る切換弁の部分断面図である。
【図8】第1の切換位置における本発明のさらに別の有利な実施の形態に係る切換弁の部分断面図である。
【図9】第2の切換位置における図8に示す本発明のさらに別の有利な実施の形態に係る切換弁の部分断面図である。
【図10】第1の運転状態にある切換弁の応用例の側面図である。
【図11】第2の運転状態にある図10に示す切換弁の応用例の別の側面図である。
【図12】切換弁を制御するためのオイル圧曲線の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図中、同一の符号は、何か反する記載がない限り、同一又は機能同一のコンポーネントを指す。
【0042】
以下において同時に参照する図1〜図5は、特に作動液流を制御するための、ボールペン機構(Kugelschreibermechanik)2を備える切換弁1の第1の例示的な実施の形態を、第1の切換位置で示している。切換弁1は、流体溝28を備える制御ピストン6を備える。制御ピストン6は、柱状の基本形状を有する。制御ピストン6の周面には、環状溝28の形態の流体溝28が設けられている。制御ピストン6は、例えば切換弁1の弁孔26内に、有利には軸方向で移動可能に支承されている。弁孔26は、有利には弁ブロック27内に設けられている。弁ブロック27内には、弁孔26により貫かれる流体管路30,31が設けられている。流体管路30,31は、弁孔26の中心軸線39に関して軸方向で有利には互いに間隔を置いて配置されている。弁孔26は、有利には盲孔として形成されている。これに対して択一的には、弁孔は、貫通孔として形成されていてもよい。弁孔26の端面40と、制御ピストン6の端面41との間には、ばね装置10、特に圧縮ばね10の形態のばね装置10が配置されている。ばね装置10は、端面40の代わりに、弁孔26の対応する環状溝内に装着されたリテーナリングに対して緊設されていてもよい。この場合、弁孔26は、例えば貫通孔として形成可能である。流体管路30,31は、弁孔26内での制御ピストン6の軸方向の移動により、常に流体管路30,31の一方が制御ピストン6により閉鎖されているように、弁孔26の軸方向で配置されている。図1では、例えば流体管路31が制御ピストン6により閉鎖されている。流体管路30を流体が通流可能であり、このことは、矢印4,5により概略的に示されている。
【0043】
制御ピストン6の第2の端面42に当接するように、ボールペン機構2が配置されている。ボールペン機構2は、例えば、いわゆる「SecuritTM機構(SecuritTM‐Mechanik)」の形態で構成されていてよい。ボールペン機構2は、制御ピストン6の端面42に当接する回動スリーブ9と、回動スリーブ9と作用結合する操作手段3とを備える。有利には、制御ピストン6が回動スリーブ9と一体的に形成されている。操作手段3は、有利には押圧プランジャ3として形成されている。回動スリーブ9及び操作手段3は、少なくとも部分的にボールペン機構2の制御スリーブ8により包囲されている。制御スリーブ8は、例えば弁孔26の一体的な構成部分であってよい。制御スリーブ8は、弁孔26内に相対回動不能に、しかし軸方向では自由に移動可能に、例えば半径方向遊びを備えて収容されていてよい。
【0044】
図2は、図1に係る切換弁1を示している。理解の便宜を図るために、制御スリーブ8と、流体管路30,31を備える弁ブロック27とは、図示していない。回動スリーブ9は、第1の柱状区分43を備える。第1の柱状区分43の端面44は、制御ピストン6の端面42に当接する。第1の柱状区分43は、その周面に回動スリーブリブ16を備える。回動スリーブリブ16は、第1の柱状区分43の周方向に関して規則的に互いに間隔を置いて配置されている。回動スリーブ9は、少なくとも1つの回動スリーブリブ16を備える。しかし、本実施の形態では、回動スリーブ9は、4つの回動スリーブリブ16を備える。回動スリーブリブ16は、第1の柱状区分43の端面44とは反対側の端面46に、斜面の回動スリーブリブ端面17を備える。回動スリーブ9は、第1の柱状区分43の端面46から延在する第2の柱状区分45を備える。第2の柱状区分45は、有利には第1の柱状区分43より小さな外径を有する。
【0045】
第2の柱状区分45は、少なくとも部分的に操作手段3により収容される。操作手段3は、例えばスリーブとして、有利には閉鎖された端面47を備えて形成されている。この端面47から平行に間隔を置いて、操作手段3の、歯列を備える環状面20が設けられている。この歯列を備える環状面20は、回動スリーブ9の斜面の回動スリーブリブ端面17と作用結合する。操作手段3の外面には操作手段リブ19が設けられている。操作手段リブ19は、操作手段3の周囲に有利には均等に互いに間隔を置いて配置されている。操作手段リブ19は、有利には回動スリーブリブ16より僅かに小さな外径を有する。さらに操作手段3は、段部48を有する。段部48は、端面47から出発して、歯列を備える環状面20に向かって延在し、有利には、操作手段3の長さの約三分の一を占めている。操作手段3の段部48の外径は、ほぼ弁孔26の孔直径に相当するか、又は弁孔26の孔直径より大きな値に相当する。段部48の外径は、操作手段3が弁孔26内で有利には密に摺動可能であるように構成されている。操作手段3は、ばね装置10により、軸方向ストッパ、例えば弁孔26の環状溝内に配置されるリテーナリングの形態の軸方向ストッパに対して予め付勢可能である。
【0046】
制御スリーブ8は、既に説明したように、操作手段3及び回動スリーブ9を少なくとも部分的に包囲する。図3は、切換弁1を、図1に示した線III−IIIに沿った断面図で示している。理解の便宜を図るために、制御スリーブ8が単独で図示されている。制御スリーブ8の内壁11には、制御スリーブ8の長手方向に関して軸方向で延びる制御スリーブリブ12が配置されている。制御スリーブリブ12は、斜面の制御スリーブリブ端面14を備える。制御スリーブリブ端面14は、制御スリーブ8の一方の端面13側に配設されている。それぞれ2つの隣接する制御スリーブリブ12間には、制御スリーブ溝15が形成されている。制御スリーブ溝15は、制御スリーブ8の長手方向に関して交互にそれぞれ異なる制御スリーブ溝深さt1,t2を有する。制御スリーブ溝15は、それぞれ、例えば制御スリーブ8の軸方向長さに等しい深さt1を有する、制御スリーブ8全体にわたって延びる制御スリーブ溝15と、制御スリーブ8の軸方向で深さt2までしか延びていない制御スリーブ溝15とが交互に配置されているように形成されている。回動スリーブリブ16及び操作手段リブ19は、有利には制御スリーブ溝15と作用係合して、制御スリーブ溝15により軸方向で案内される。制御スリーブ溝15の数は、例えば少なくとも回動スリーブリブ16の2倍の数に相当する。
【0047】
以下に、SecuritTM機構の形態のボールペン機構2を備える切換弁1の機能形態について説明する。図1〜図3は、第1の係止位置にあるボールペン機構2あるいは第1の切換位置にある切換弁1を示す。第1の切換位置において、弁孔26を貫く流体管路30は、制御ピストン6の流体溝28を介して開放され、第2の流体管路31は、制御ピストン6により遮断されている。ボールペン機構の第1の係止位置において、回動スリーブリブ端面17は、少なくとも点状に、制御スリーブ8において制御スリーブ溝深さt2までしか延びていない制御スリーブ溝15の端面49に当接している。回動スリーブ9は、軸方向で制御スリーブ8から突出している。
【0048】
第1の係止位置から第2の係止位置にボールペン機構2を移行させるために、あるはい第1の切換位置から第2の切換位置に切換弁1を移行させるために、操作手段3の端面47に操作パルスIが印加される。このために、短期的に、ばね装置10により形成されるばね力に抗して働く力が印加される。この操作パルスは、例えば油圧パルスを介して操作手段3に印加可能である。操作パルスIにより、操作手段3は、回動スリーブ9及び制御ピストン6とともに、ばね装置10のばね力に抗して弁孔26の内方に移動される。その際、操作手段リブ19及び回動スリーブリブ16は、制御スリーブ溝15内で軸方向で案内される。回動スリーブ9が、図4に示すように軸方向で、回動スリーブリブ16が対応する制御スリーブ溝15から離脱するまで移動されると、回動スリーブ9は、操作手段3により制御スリーブ溝15から押し退けられ、例えば軸方向で完全に制御スリーブ8から押し出される。回動スリーブリブ16及び操作手段リブ19は、リブ16,19がガイドスリーブ溝15内で案内されている限り、斜面の回動スリーブリブ端面17が、歯列を備える環状面20の歯面上で、図2に示した中間位置から、図4に示した安定した終端位置に滑動することが、制御スリーブ8による軸方向の案内に基づいて抑止されるような状態に、互いに周方向でずらされて回動スリーブ9あるいは操作手段3に配置されている。図2に示した位置では、回動スリーブリブ端面17が、いわば不安定な中間位置で、歯列を備える環状面20の歯面上に位置している。回動スリーブリブ16が、制御スリーブ溝15から離脱すると、回動スリーブリブ端面17は、歯列を備える環状面20の歯面上を滑動する。これにより、回動スリーブリブ端面17は、図4に示した安定した終端位置を占める。その際、回動スリーブ9は、制御スリーブ8に対して、小さな第1の回転運動を実施する。操作パルスIが終了すると、回動スリーブ9は、ばね装置10のばね力に基づいて、操作手段3の操作方向とは逆向きに移動する。回動スリーブ9が、操作手段3の歯列を備える環状面20の歯面上での回動スリーブリブ端面17の滑動に基づいて、回転運動を実施したため、回動スリーブリブ16は、前述の深さt2を有する対応する制御スリーブ溝15に係合せずに、回動スリーブリブ端面17は、制御スリーブリブ端面14と接触する。これにより、回動スリーブリブ端面17は、制御スリーブリブ端面14上を滑動して、回動スリーブ9は、さらなる第2の小さな回転運動を実施する。このとき、回動スリーブリブ16は、制御スリーブ8においてその軸方向の全長にわたって延びる、深さt1を有する制御スリーブ溝15内に導入される。これにより、回動スリーブ9の第1の柱状区分43は、有利には完全に制御スリーブ8内に収容される。ばね装置10のばね力に基づいて、制御ピストン6の端面42は、制御スリーブ8の端面13に圧着される。ボールペン機構2は、今や、切換弁1の第2の切換位置に相当する、図5に示す第2の係止位置にある。切換弁1の第2の切換位置で、流体通路30は遮断され、流体は流体通路31を通流する。操作パルスIを再度印加することにより、回動スリーブ9は、さらに回転し、切換弁1は、再びその第1の切換位置に移行する。
【0049】
以下において同時に参照する図6及び図7は、択一的な、しかし、やはり有利な、ボールペン機構2を備える切換弁1の実施の形態を示す。機能的には、図6及び図7に係る切換弁1の実施の形態は、切換弁1の前述の実施の形態に相当する。図6及び図7に係る切換弁1の実施の形態は、図1〜図5に係る切換弁1の実施の形態とは、まず、弁孔26の構成の点で相違する。この弁孔26は、段付きの貫通孔26として形成されている。ばね装置10は、環状溝61内に装着されたリテーナリング62に対して緊縮されている。ばね装置10は、流体溝28及びこの流体溝28から軸方向で間隔を置いた別の流体溝29を備える制御ピストン6と、ボールペン機構2とを、弁孔26の段部64に向かって付勢している。流体管路30は、流体溝28に対応し、流体管路31は、流体溝29に対応する。弁ブロック27内には制御管路63が設けられている。制御管路63は、操作手段3に操作パルスIを印加するために、操作手段3に向かって流体を供給するために役立つ。図6は、切換弁1の第1の切換位置を示す。第1の切換位置において、流体管路31は、制御ピストン6により遮断されており、流体管路30は、矢印4,5で示すように、流体により貫流される。図7は、切換弁1の第2の切換位置を示す。第2の切換位置において、流体管路30は、制御ピストン6により遮断されており、流体管路31は、矢印4,5で示すように、流体により貫流される。
【0050】
図8及び図9は、別の択一的な、しかしやはり有利な、ボールペン機構2を備える切換弁1の実施の形態を示す。この例示的な実施の形態では、ボールペン機構2は、「ボール機構(Kugelmechanik)」として形成されている。弁孔26内に、ばね装置10、制御ピストン6及びボールペン機構2が配置されている。制御ピストン6の端面42には操作手段3が接触している。操作手段3は、少なくとも部分的に制御スリーブ8により包囲されており、制御スリーブ8内で可動に支承されている。制御スリーブ8は、例えば弁孔26の一体的な構成部分である。図8に示すように、制御スリーブ8は弁孔26内に、2つのリテーナリング65,66によって弁孔26の軸方向で、脱落しないように固定されていてもよい。制御スリーブ8内には、有利には環状に、半径方向溝24が設けられている。半径方向溝24は、ボール23、特に鋼球23を少なくとも部分的に収容するために役立つ。操作手段3の周面には、溝25、特にハート形の溝25が設けられている。溝25は、やはりボール23を少なくとも部分的に収容するために役立つ。操作手段3は、ボール23を介して制御スリーブ8の半径方向溝24と作用係合している。切換弁1の第1の切換位置に相当する、ボールペン機構2の図8に示す第1の係止位置において、ボール23は、ハート形の溝25の上側の係止点に保持される。上側の係止点でボール23の位置は、ばね装置10のばね力により保持される。流体管路31は遮断されており、流体管路30は、矢印4,5で概略的に示すように、流体により貫流可能である。
【0051】
操作パルスIが操作手段3の端面47に入力すると、操作手段3は、軸方向で弁孔26内に移動し、ボール23は、ハート形の溝25に沿って有利には時計回りでボールペン機構2の図8に示す第1の係止位置から、切換弁1の第2の切換位置に相当する、図9に示す第2の係止位置へと滑動する。同時に、ボールは、制御スリーブ8の半径方向溝24内を運動する。第2の係止位置で、ボール23の位置は、再びばね装置10により保持される。流体管路30は、切換弁1の第2の切換位置において、遮断されており、流体管路31は、通流可能である。操作パルスIを改めて印加すると、ボール23は、さらに時計回りで滑動して、ボールペン機構2の第1の係止位置に復帰する。
【0052】
図10及び図11は、図1〜図9に係る例示的な一実施の形態に係る切換弁1のための例示的な応用例を示す。図10及び図11は、調節可能な圧縮比を有する内燃機関のためのコンロッドアッセンブリ33を示す。コンロッドアッセンブリ33は、コンロッド56と、コンロッド56のコンロッド支承アイ(Pleuellagerauge)34内に配置される有利には液圧式に調節可能な偏心装置36とを備える。択一的に又は付加的に、偏心装置36が、ストローク支承アイ(Hublagerauge)35内に配置されていてもよい。偏心装置36は、コンロッドアイ34の中心点37に対して偏心的に配置される、中心点38を備えるピストンピン孔を備える。ピストンピン孔は、ピストンピンを受容する。偏心装置36は、実効コンロッド長さleffを調節するために役立つ。コンロッド長さleffとして、ストローク支承アイ35の中心点32とピストンピン孔の中心点38との間の間隔が規定されている。
【0053】
調節可能な偏心装置36の回動は、内燃機関の作業サイクル時に偏心装置36に作用する、内燃機関の慣性力及び負荷の作用により提供される。作業サイクル中、偏心装置35に作用する力の作用方向は、連続的に変化する。回転運動は、エンジンオイルにより負荷される、コンロッドアッセンブリ33内に組み込まれたピストン50,51により助成されるか、あるいはピストンは、偏心装置に作用する力の、変化する力作用方向に基づく、偏心装置36の戻りを防止する。ピストン50,51は、偏心ロッド67,68により両側で偏心装置36の偏心体69に作用結合されている。ピストン50,51は、オイル管路52,53を介してストローク支承アイ35からエンジンオイルにより力を印加可能である。逆止弁54,55は、その際、エンジンオイルがピストン50,51のピストン容積から液圧管路52,53あるいは内燃機関のエンジン内室に逆流することを防止する。
【0054】
有利にはストローク支承アイ35の領域に、ボールペン機構2を備える切換弁1が設けられている。切換弁1は、有利には前組み立てされた構成群として形成されており、任意に種々異なる位置に、かつ種々異なるエンジンのために使用可能である。コンロッド56は、つまり切換弁1の弁ブロック27を形成している。弁孔26は、例えば、ストローク支承アイ35を起点として、段状の盲孔として、コンロッド56内部を延在している。操作手段3には、オイル管路52,53にも供給される同じ油圧が供給される。弁孔26からの操作手段3の脱落を防止するために、例えばリテーナリング57が、弁孔26の対応する溝内に設けられている。流体管路30は、ピストン50の圧力室をエンジン内室に接続し、流体管路31は、ピストン51の圧力室をエンジン内室に接続する。エンジン内室内への流体管路30,31の開口は、図10及び図11には示されておらず、例えばそれぞれ1つの排孔により、図平面に対して垂直に制御ピストン6に向かって形成される。エンジン内室に至るそれぞれ1つの流体管路30,31の接続は、切換弁1により遮断又は開放可能である。製造技術的に流体管路30,31は、例えば、コンロッド56の外面からピストン50,51のピストン室及び弁孔26を貫く孔により構成されるが、これらの孔の、エンジン内室側の端部は、例えば閉鎖球70,71により油密にシールされる。
【0055】
図10は、ボールペン機構2を第2の係止位置で、あるいは切換弁1を第2の切換位置で示す。ピストン51は、流体管路31を介して内燃機関のエンジン内室に流動可能に接続されている。つまり、ピストン51は、切換弁1により無圧に切り換えられている。液圧管路53を通して供給されるオイルは、流体管路31を介してエンジン内室に供給される。ピストン50の流体管路30の放圧は、切換弁1の制御ピストン6により遮断されている。すなわち、ピストン50には、液圧管路52を介してエンジンオイル圧が供給される一方、ピストン51は無圧である。
【0056】
例えば内燃機関の制御可能なオイル供給ポンプを介して、又は液圧アキュムレータを介して、エンジンオイル圧を短期的に上昇させると、切換弁1の操作手段3には、対応する操作パルスIが印加される。これにより、切換弁1は、第2の切換位置から、図11に示す第1の切換位置へと移行する。切換弁1の第1の切換位置で、流体管路31は、ピストン51とエンジン内室との間で制御ピストン6により遮断されている。これにより、ピストン51には、オイル管路53を介してエンジンオイル圧が供給される。ピストン50は、切換弁1により開放されている流体管路30を介してエンジン内室に接続されている。すなわち、ピストン50は、切換弁1の第1の切換位置で無圧である。つまり、ピストン51が連続的にエンジンオイルで満たされるのに対して、ピストン50からは、エンジンオイルが流体管路30及び切換弁1を介してエンジン内室に流入する。これにより、調節可能な偏心装置36は、内燃機関の、偏心装置36に作用する慣性力及び負荷に基づいて、圧力を印加されたピストン51に助成されて、矢印72により概略的に示すように時計回りで右回りに回動する。偏心装置36の回動により、実効コンロッド長さleffが増加する。これにより、内燃機関の圧縮比が変化する。
【0057】
操作手段3に対して操作パルスIを再度印加することにより、切換弁は、第1の切換状態から第2の切換状態へと移行する。これにより、偏心装置36は、矢印72とは逆方向に左回りに運動する。実効コンロッド長さleffは、再び減少する。
【0058】
図12は、一例として、操作パルスIを切換弁1の操作手段3に加えるエンジンオイル圧の推移を示す。グラフのy軸には圧力pが示され、x軸には時間tが示されている。切換弁1は、当初、例えば第1の切換位置にある。切換弁1の切換位置は、曲線74で示されており、曲線74の、実線で示した部分は、第1の切換位置を示し、破線で示した部分は、第2の切換位置を示している。エンジンオイル圧の推移は、曲線73により示されている。エンジンオイル圧は、当初、通常レベルを推移した後、短時間、第1の圧力プラトー58に昇圧される。このとき、第1の切換位置から第2の切換位置への切換弁1の切換がなされる。圧力プラトー58の圧力へのエンジンオイル圧の上昇は、ボールペン機構2が第1の係止位置から第2の係止位置に、あるいは第2の係止位置から第1の係止位置に係止されるようになるまで必要であるにすぎない。ボールペン機構2の係止後、エンジンオイル圧は、再び、初期レベルに低下可能である。第2の圧力プラトー75へのエンジンオイル圧の再度の上昇により、切換弁1の再操作が可能である。切換弁1は、再び第2の切換状態から第1の切換状態に切り換わる。
【0059】
つまり、切換弁1は、複雑な外的な作動なしに制御可能である。第1の切換位置から第2の切換位置へ、又は第2の切換位置から第1の切換位置への切換の制御は、操作パルスIの印加、例えば内燃機関のエンジンオイル圧の短期の上昇によりなされる。それゆえ、切換弁1は、簡単に、既存のエンジンオイル系に統合可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 切換弁、 2 ボールペン機構、 3 操作手段/押圧プランジャ、 4 矢印、 5 矢印、 6 制御ピストン、 8 制御スリーブ、 9 回動スリーブ、 10 ばね装置、 11 内壁、 12 制御スリーブリブ、 13 端面、 14 制御スリーブリブ端面、 15 制御スリーブ溝、 16 回動スリーブリブ、 17 回動スリーブリブ端面、 19 操作手段リブ、 20 歯列を備える環状面、 23 ボール、 24 半径方向溝、 25 溝/ハート形の溝、 26 弁孔、 27 弁ブロック、 28 流体溝、 29 流体溝、 30 流体管路、 31 流体管路、 32 ストローク支承アイの中心点、 33 コンロッドアッセンブリ、 34 コンロッド支承アイ、 35 ストローク支承アイ、 36 偏心装置、 37 コンロッドアイの中心点、 38 ピストンピン孔の中心点、 39 中心軸線、 40 端面、 41 端面、 42 端面、 43 第1の柱状区分、 44 端面、 45 第2の柱状区分、 46 端面、 47 端面、 48 段部、 49 端面、 50 ピストン、 51 ピストン、 52 液圧管路/オイル管路、 53 液圧管路/オイル管路、 54 逆止弁、 55 逆止弁、 56 コンロッド、 57 リテーナリング、 58 圧力プラトー、 61 半径方向溝、 62 リテーナリング、 63 制御管路、 64 段部、 65 リテーナリング、 66 リテーナリング、 67 偏心ロッド、 68 偏心ロッド、 69 偏心体、 70 閉鎖球、 71 閉鎖球、 72 矢印、 73 エンジンオイル圧の推移、 74 切換位置曲線、 75 圧力プラトー、 I 操作パルス、 leff 実効コンロッド長さ、 t 時間、 p 圧力、 t1 制御スリーブ溝の深さ、 t2 制御スリーブ溝の深さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切換弁(1)、特に作動液流を制御するための切換弁(1)において、ボールペン機構(2)を備え、該ボールペン機構(2)は、該ボールペン機構(2)の操作手段(3)に操作パルス(I)を印加することにより交互に第1の係止位置又は第2の係止位置に係止可能であり、かつ該第1の係止位置又は該第2の係止位置が、前記切換弁(1)の制御ピストン(6)のそれぞれの第1の切換位置又は第2の切換位置に対応するように、前記切換弁(1)に連結されていることを特徴とする切換弁。
【請求項2】
前記ボールペン機構(2)の前記操作手段(3)に前記操作パルス(I)を印加することにより前記切換弁(1)を前記第1の切換位置から前記第2の切換位置に切り換えるために、前記切換弁(1)の前記制御ピストン(6)が、ほぼ前記操作パルス(I)の方向とは逆向きに所定の距離を移動可能である、請求項1記載の切換弁。
【請求項3】
前記ボールペン機構(2)の前記操作手段(3)に前記操作パルス(I)を印加することにより前記切換弁(1)を前記第2の切換位置から前記第1の切換位置に切り換えるために、前記切換弁(1)の前記制御ピストン(6)が、ほぼ前記操作パルス(I)の方向で所定の距離を移動可能である、請求項2記載の切換弁。
【請求項4】
前記ボールペン機構(2)がSecuritTM機構の形態で形成されており、特に:
前記操作手段(3)及び回動スリーブ(9)を軸方向で案内するための制御スリーブ(8)と、
前記制御ピストン(6)、前記回動スリーブ(9)及び前記操作手段(3)を前記操作パルス(I)に抗して軸方向で予め付勢するばね装置(10)とを備え、
前記回動スリーブ(9)が前記制御スリーブ(8)及び前記操作手段(3)と作用結合しており、前記操作手段(3)に前記操作パルス(I)を印加すると、該操作手段(3)は、前記制御スリーブ(8)に対して、前記回動スリーブ(9)を伴って、該回動スリーブ(9)が交互に前記第1の係止位置と前記第2の係止位置とを占めることができるように軸方向で移動可能である、請求項1から3までのいずれか1項記載の切換弁。
【請求項5】
制御スリーブ(8)であって、内壁(11)に配置され該制御スリーブ(8)の長手方向に関して軸方向で延びる制御スリーブリブ(12)と、該制御スリーブ(8)の端面(13)に配設される斜面の制御スリーブリブ端面(14)と、それぞれ2つの隣接する前記制御スリーブリブ(12)間に配置され該制御スリーブ(8)の長手方向に関して交互に異なる制御スリーブ溝深さを有する制御スリーブ溝(15)とを備える制御スリーブ(8)と;
回動スリーブ(9)であって、少なくとも部分的に前記制御スリーブ(8)内に配置されており、前記制御スリーブ溝(15)に対して相補的な回動スリーブリブ(16)と、前記斜面の制御スリーブリブ端面(14)に面した斜面の回動スリーブリブ端面(17)とを備える回動スリーブ(9)と;
制御ピストン(6)であって、前記回動スリーブ(9)の端面(44)と作用接触する制御ピストン(6)と;
操作手段(3)であって、操作手段リブ(19)により前記制御スリーブ溝(15)内を案内可能であり、前記回動スリーブリブ端面(17)と作用接触する歯列を備える環状面(20)を備える操作手段(3)と;
ばね装置(10)であって、前記制御ピストン(6)、前記回動スリーブ(9)及び前記操作手段(3)を前記操作パルス(I)に抗して予め付勢するばね装置(10)と
を備える、請求項4記載の切換弁。
【請求項6】
前記操作手段(3)に前記操作パルス(I)を印加すると、該操作手段(3)は、前記回動スリーブ(9)を伴って前記制御スリーブ(8)内に前記ばね装置(10)のばね力に抗して、前記回動スリーブリブ(16)が、第1の制御スリーブ溝深さを有する対応する制御スリーブ溝(15)から離脱するように移動可能であり、前記歯列を備える環状面(20)と前記回動スリーブリブ端面(17)とは、前記回動スリーブ(9)が第1の回転運動を実施するように作用接触し、前記制御スリーブリブ端面(14)と前記回動スリーブリブ端面(17)とは、前記回動スリーブ(9)が第2の回転運動を実施するように互いに滑動し、前記回動スリーブリブ(16)は、第2の制御スリーブ溝深さを有する制御スリーブ溝(15)に係合して、前記回動スリーブ(9)は前記係止位置の一方に係止し、前記制御ピストン(6)は、前記回動スリーブ(9)との作用結合に基づいて、前記切換位置の一方に移動可能である、請求項5記載の切換弁。
【請求項7】
前記回動スリーブリブ(16)の数が、前記制御スリーブ溝(15)の数の半分に等しい、請求項5又は6記載の切換弁。
【請求項8】
前記ボールペン機構(2)がボール機構の形態で形成されており、特に:
前記操作手段(3)を軸方向で案内するための制御スリーブ(8)と、
摺動可能に前記制御スリーブ(8)の半径方向溝(24)内に配置されているボール(23)と、
前記制御ピストン(6)及び前記操作手段(3)を前記操作パルス(I)に抗して軸方向で予め付勢するばね装置(10)とを備え、
前記ボール(23)は、前記操作手段(3)内に設けられる溝(25)と作用結合しており、該操作手段(3)に前記操作パルス(I)を印加すると、該操作手段(3)は前記制御スリーブ(8)に対して、前記ボール(23)との作用結合に基づいて交互に前記第1の切換位置と前記第2の切換位置とを占めることができるように軸方向で移動可能である、請求項1から3までのいずれか1項記載の切換弁。
【請求項9】
前記溝(25)がハート形の溝(25)として形成されている、請求項8記載の切換弁。
【請求項10】
前記制御スリーブ(8)が、弁孔(26)として、特に、前記制御ピストン(6)のそれぞれの流体溝(28,29)に対応する、前記弁孔(26)を貫く流体管路(30,31)を備える弁ブロック(27)内に設けられた弁孔(26)として形成されている、請求項5から9までのいずれか1項記載の切換弁。
【請求項11】
前記操作パルス(I)が流体圧により印加可能である、請求項1から10までのいずれか1項記載の切換弁。
【請求項12】
前記ばね装置(10)は、操作パルス(I)が所定の閾値を上回ったときに初めて、前記切換弁(1)の操作がなされるように形成されている、請求項5から11までのいずれか1項記載の切換弁。
【請求項13】
内燃機関において、該内燃機関が調節可能な圧縮比を有しており、
請求項1から12までのいずれか1項記載の切換弁(1)と、
コンロッド支承アイ(34)及び/又はストローク支承アイ(35)内に配置される液圧式に調節可能な、実効コンロッド長さ(leff)を調節するための偏心装置(36)を備えるコンロッド装置(33)とを備え、
該偏心装置(36)の調節ストロークが前記切換弁(1)により制御可能であることを特徴とする、内燃機関。
【請求項14】
前記切換弁(1)が前記コンロッド装置(33)内に、特に前記ストローク支承アイ(35)の領域に組み込まれている、請求項13記載の内燃機関。
【請求項15】
前記操作パルス(I)がエンジンオイル圧により印可可能であって、前記内燃機関が、前記エンジンオイル圧を短期的に上昇させるための手段、例えば制御可能なオイルポンプ又は圧力アキュムレータを備える、請求項13又は14記載の内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−196549(P2011−196549A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62072(P2011−62072)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(510238096)ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト (63)
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D−70435 Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】