刈取収穫機
【課題】走行機体に刈取部が上昇非作業高さと下降作業高さとに昇降操作自在に連結され、走行機体の走行装置を変速駆動する走行変速装置を備えた刈取収穫機において、刈取部の接地トラブルを回避しながら高速移動されるようにする。
【解決手段】刈取部の走行機体に対する連結高さを検出する連結高さセンサ61、走行変速装置7が設定低速位置から増速操作されることを牽制する牽制作用状態と、走行変速装置が設定低速位置から増速操作されることを許容する牽制解除状態とに切り換え自在な変速牽制手段77を備えてある。刈取部が設定連結高さより高い連結高さに位置する状態において変速牽制手段77が牽制解除状態に切り換わり、刈取部が設定連結高さ以下に位置する状態において変速牽制手段77が牽制作用状態に切り換わる。
【解決手段】刈取部の走行機体に対する連結高さを検出する連結高さセンサ61、走行変速装置7が設定低速位置から増速操作されることを牽制する牽制作用状態と、走行変速装置が設定低速位置から増速操作されることを許容する牽制解除状態とに切り換え自在な変速牽制手段77を備えてある。刈取部が設定連結高さより高い連結高さに位置する状態において変速牽制手段77が牽制解除状態に切り換わり、刈取部が設定連結高さ以下に位置する状態において変速牽制手段77が牽制作用状態に切り換わる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体に刈取部が上昇非作業高さと下降作業高さとに昇降操作自在に連結され、前記走行機体の走行装置を変速駆動する走行変速装置を備えた刈取収穫機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記した刈取収穫機では、刈取部による刈り取りを行いながらの走行、いわゆる作業走行を行なう場合、走行速度の速すぎに起因した茎稈の押し倒しなどの刈取り不良が発生することを防止できるように、走行装置を走行変速装置によって低速側に変速して駆動することが可能となり、刈取部を上昇非作業高さに上昇させて行う走行、いわゆる移動走行を行なう場合、作業走行時よりも高速で迅速に移動できるように、走行装置を走行変速装置によって高速側に変速して駆動することが可能となったものである。
この種の刈取収穫機として、従来、たとえば特許文献1に記載されたコンバインがあった。特許文献1に記載されたコンバインでは、エンジン8の出力軸8aの回動力を、伝動ベルト17を介して走行用変速装置18の入力軸18aに伝達し、この走行用変速装置18の出力軸18bの回動力を、走行用ミッションMを介して左右の走行装置1に伝達する。走行用変速装置18の出力軸18bの回動力を、刈取クラッチ19を介して刈取部3の入力軸3dに伝達する。(各符号は、公報に記載されたものである。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−262643号公報(段落〔0021〕、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図16は、コンバインによる収穫作業において採用されることがある作業形態を示す説明図である。
この図に示すように、畦80に沿った作業走行を行なって未刈り地81の一辺側および他辺側と畦80との間に移動走行地82ができると、未刈り地81の移動走行地82に沿った方向での一端部に位置する作業対象列に対する作業走行を行なう。この作業走行を終えて一方の移動走行地82に至ると、この移動走行地82を未刈り地81の他端部に向けて移動走行する。未刈り地81の他端部に到達すると、この端部に位置する作業対象列に対する作業走行を行う。この作業走行を終えて他方の移動走行地82に至ると、この移動走行地82を未刈り地81の一端部に向けて移動走行してこの端部に位置する作業対象列に対する作業走行を行う。このように、未刈り地81の両端部での作業走行と、各移動走行地82での移動走行とを繰り返して行なうという作業形態を採用されることがある。
つまり、作業走行を終えて枕地に至ると、枕地で旋回を行なって先の作業走行箇所に隣り合って位置する次の作業対象列に対する作業走行を行なうという作業形態を採用した場合、枕地での旋回に前後進の繰り返しが必要になるなどによって時間が掛かりがちになる。これに対し、上記した如く未刈り地の一端部と他端部の間を移動走行する作業形態を採用した場合、枕地での煩わしい旋回が不要になる。
【0005】
上記した如き移動走行を行なう作業形態を採用した場合、走行装置を作業走行時よりも高速側に変速して駆動して移動走行すれば、移動走行を迅速に行なって作業をより能率よく行なうことができる。
【0006】
移動走行を作業走行よりも高速で行なう場合、刈取部を低い連結高さにして行なわれると、作業地は不整地でありがちであって、高速走行及び走行地の凹凸に起因した走行機体の振動が大きくなりやすいことにより、刈取部が走行地の隆起部に突っ込んだり走行地面に衝突したりする事態が発生しやすくなる。
【0007】
本発明の目的は、刈取部の接地トラブルを回避しながら高速移動されるようにできる刈取収穫機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本第1発明は、走行機体に刈取部が上昇非作業高さと下降作業高さとに昇降操作自在に連結され、前記走行機体の走行装置を変速駆動する走行変速装置を備えた刈取収穫機において、
前記刈取部の走行機体に対する連結高さを検出する連結高さセンサを備え、
前記走行変速装置が設定低速位置から増速操作されることを牽制する牽制作用状態と、前記走行変速装置が設定低速位置から増速操作されることを許容する牽制解除状態とに切り換え自在な変速牽制手段を備え、
前記刈取部が設定連結高さより高い連結高さに位置する状態において前記変速牽制手段が牽制解除状態に切り換わり、前記刈取部が前記設定連結高さ以下に位置する状態において前記変速牽制手段が牽制作用状態に切り換わるように、前記変速牽制手段と前記連結高さセンサとを連係させてある。
【0009】
本第1発明の構成によると、刈取部を設定連結高さ以下の連結高さにすれば、変速牽制手段が牽制作用状態となって走行変速装置の設定低速位置からの増速操作が牽制され、刈取部を設定連結高さよりも高い連結高さにすれば、変速牽制手段が牽制解除状態となって走行変速装置の設定低速位置からの増速操作に対する牽制が解除されるから、刈取部の設定連結高さ及び走行変速装置の設定低速位置を適切な連結高さや速度位置に設定することにより、刈取部を高速移動に不適切な低い連結高さにしたままであると、走行変速装置を高速側に変速できなくて作業用などの低速でしか走行できず、刈取部を高速移動に適切な高い連結高さにすれば、走行変速装置を高速側に変速できて高速で走行できるようになる。
【0010】
したがって、上記した作業形態での作業を行うに当たり、刈取部を高速移動に適切な高い連結高さにしないと高速移動できず、刈取部の接地による変形や破損を回避しながら高速で移動走行して能率よく作業を行うことが可能な刈取収穫機を得ることができる。
【0011】
本第2発明では、前記刈取部に対する伝動を入り切りする刈取クラッチを備え、前記刈取部が前記設定連結高さより高い連結高さに上昇させる操作によって前記刈取クラッチが切り状態に切換え操作されるように、前記刈取部と前記刈取クラッチとを連係させたオートクラッチ手段を備えている。
【0012】
本第2発明の構成によると、刈取部を設定連結高さに上昇させる操作が行われると、オートクラッチ手段による刈取部と刈取クラッチとの連係により、刈取クラッチが自ずと切り状態に切り換え操作されるから。作業走行を終えて移動走行に入る際、高速で移動走行するように、刈取部を高速移動に適切な連結高さに上昇操作されると、刈取クラッチが自ずと切り状態に切り換わって刈取部が停止する。
【0013】
したがって、上記した作業形態での作業を行うに当たり、作業走行を終えて移動走行に入るべく刈取部を切り状態に切り換えるのに刈取部を上昇させる操作を行うだけで済ませ、この面からも能率よく作業を行なえる刈取収穫機を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】刈取収穫機の全体を示す側面図である。
【図2】伝動装置を示す説明図である。
【図3】操作装置を示すブロック図である。
【図4】走行変速装置の油圧回路図である。
【図5】移動走行状態、標準刈取状態、低速刈取状態を示す説明図である。
【図6】オートスイッチ及び刈取クラッチレバーの操作状態とオートクラッチ手段の状態との関係を示す説明図である。
【図7】刈取部制御を示すフロー図である。
【図8】オートクラッチ制御を示すフロー図である。
【図9】刈取部昇降制御を示すフロー図である。
【図10】刈取クラッチ制御を示すフロー図である。
【図11】走行制御を示すフロー図である。
【図12】標準制御を示すフロー図である。
【図13】低速制御を示すフロー図である。
【図14】移動制御を示すフロー図である。
【図15】連係制御を示すフロー図である。
【図16】収穫作業の作業形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る刈取収穫機の全体を示す側面図である。この図に示すように、本発明の実施形態に係る刈取収穫機は、左右一対のクローラ式の走行装置1,1によって自走するように構成され、かつ運転座席3aが装備された運転部3を有した走行機体を備え、この走行機体の機体フレームの前部に連結された刈取部2を備え、走行機体の機体フレームの後部側に走行機体横方向に並べて設けられ脱穀装置4と穀粒タンク5を備えて構成されている。
【0016】
この刈取収穫機は、稲、麦などの収穫作業を行う。
つまり、刈取部2は、機体フレームに軸芯P1まわりに上下揺動自在に支持された刈取部フレーム20、この刈取部フレーム20に支持された分草具21、引起し装置22、バリカン形の刈取装置23、供給装置24を備えている。この刈取部2は、刈取部フレーム20が油圧式でかつ単動形の昇降シリンダ27によって上下に揺動操作されることにより、分草具21が地面の近くに下降した下降作業高さと、分草具21が地面から高く上昇した上昇非作業高さとに昇降する。
【0017】
刈取部2を下降作業高さに下降させて走行機体を走行させると、刈取部2は、分草具21によって植立穀稈を刈取り対象と非刈取り対象とに分草し、刈取り対象の植立穀稈を引起し装置22によって引起し処理するとともに刈取装置23によって刈取処理し、刈取り穀稈を供給装置24によって脱穀装置4の前部に搬送して脱穀フィードチェーン28の始端部に供給する。
【0018】
脱穀装置4は、脱穀フィードチェーン28によって刈取穀稈の株元側を挟持して走行機体後方向きに搬送しながら、刈取穀稈の穂先側を扱室(図示せず)に供給して脱穀処理する。穀粒タンク5は、脱穀装置4から搬送された脱穀粒を回収して貯留していく。
【0019】
走行機体は、運転座席3aの下方に設けたエンジン6を備え、このエンジン6が出力する駆動力を機体フレームの前端部に設けたミッションケース8を介して左右一対の走行装置1,1及び刈取部2に伝達する伝動装置を備えている。
【0020】
図2は、伝動装置の説明図である。この図に示すように、伝動装置は、前記ミッションケース8を備える他、このミッションケース8の上端部に連設された走行変速装置7を備えている。伝動装置は、エンジン6の出力軸6aの駆動力を、ベルトテンションクラッチで成る主クラッチ9を介して走行変速装置7の入力軸7aに伝達し、この走行変速装置7の出力軸7bの駆動力を、ミッションケース8の内部に位置するミッション(図示せず)を介して左右の走行装置1,1のクローラ駆動軸1aに伝達する。ミッションケース8の内部に位置するミッションは、走行変速装置7の出力軸7bに一体回転自在に連動した第1伝動ギヤ10に噛み合った入力ギヤ19を備え、この入力ギヤ19の駆動力を左右のクローラ駆動軸1a,1aに伝達する操向機構(図示せず)を備えている。操向機構は、入力ギヤ19の駆動力を左右のクローラ駆動軸1a,1aに伝達し、あるいは左右のクローラ駆動軸1a,1aに対する伝動を各別に絶ったり変速したりして左右の走行装置1,1を各別に駆動、停止、変速し、これによって走行機体の操向操作を行う。
【0021】
伝動装置は、走行変速装置7の出力軸7bの駆動力を、ミッションケース8の上端部に内装された刈取変速装置18に入力し、この刈取変速装置18の出力軸13の駆動力を、ベルトテンションクラッチで成る刈取クラッチ17を介して刈取部2の入力軸2aに伝達する。これにより、伝動装置は、走行変速装置7の出力軸7bの駆動力を刈取部2に伝達し、走行変速装置7による走行装置1の変速が行なわれると、走行装置1の変速に同調させて刈取部2を変速する。
【0022】
図2に示すように、刈取変速装置18は、前記第1伝動ギヤ10に噛み合った低速伝動ギヤ14、走行変速装置7の出力軸7bに第1伝動ギヤ10及び伝動軸12を介して一体回転自在に連動した第2伝動ギヤ11、この第2伝動ギヤ11に噛み合った高速伝動ギヤ15、出力軸13に一体回転自在に支持されたシフトギヤ16を備えて構成してある。
刈取変速装置18は、シフトギヤ16が摺動操作されて低速伝動ギヤ14に噛み合うことによって低速位置に切り換わり、シフトギヤ16が摺動操作されて高速伝動ギヤ15に噛み合うことによって高速位置に切り換わる。
【0023】
図2,3に示すように、走行変速装置7は、入力軸7aをポンプ軸として備えた可変容量形の油圧ポンプ7Pを備え、出力軸7bをモータ軸として備えた油圧モータ7Mを備えて構成してある。油圧モータ7Mは、油圧ポンプ7Pによって供給される圧油によって駆動される。この油圧モータ7Mは、可変容量形の油圧モータに構成してある。
【0024】
走行変速装置7は、静油圧式無段変速装置に構成されており、油圧ポンプ7Pの斜板角の変更操作が行われることにより、エンジン6からの駆動力を前進側と後進側の駆動力に変換して、かつ前進側においても後進側においても無段階に変速して左右の走行装置1,1に伝達する。
【0025】
走行変速装置7は、油圧モータ7Mの斜板角の変更操作が行われることにより、高速位置と標準速位置と低速位置とに切り換わって左右の走行装置1,1の副変速を行なう。
すなわち、走行変速装置7は、標準位置に切り換えられると、左右の走行装置1,1を植立穀稈の倒伏が無いとか少ない場合の作業走行に適切な標準速度で駆動する。走行変速装置7は、低速位置に切り換えられると、左右の走行装置1,1を標準速度よりも低速であって、植立穀稈の倒伏が激しい場合の作業走行に適切な速度で駆動する。走行変速装置7は、高速位置に切り換えられると、左右の走行装置1,1を標準速度よりも高速であって、移動走行に適切な速度で駆動する。
【0026】
図3に示すように、走行変速装置7の油圧モータ7Mの斜板角を変更する操作軸は、揺動リンクなどを利用した機械式の連係機構33を介して変速レバー43に連動されている。変速レバー43は、運転部3に走行機体の前後方向に揺動自在に設けられている。
【0027】
つまり、走行変速装置7は、変速レバー43が中立位置Nに操作されることにより、中立状態に切り換わり、油圧モータ7Mを停止させて左右の走行装置1,1に対する伝動を絶つ。走行変速装置7は、変速レバー43が中立位置Nから走行機体前方側に揺動した前進域Fに操作されることにより、前進駆動状態に切り換わり、エンジン6からの駆動力を前進駆動力に変換して左右の走行装置1,1に伝達する。走行変速装置7は、変速レバー43が中立位置Nから走行機体後方側に揺動した後進域Rに操作されることにより、後進駆動状態に切り換わり、エンジン6からの駆動力を後進駆動力に変換して左右の走行装置1,1に伝達する。
【0028】
図3に示すように、走行変速装置7は、油圧モータ7Mの斜板角を変更する操作軸に連動された油圧式の操作シリンダ56を備えており、この操作シリンダ56が制御弁58によって操作されることにより、高速位置と標準速位置と低速位置とに切り換わる。
【0029】
図4は、走行変速装置7の油圧回路図である。この図に示すように、油圧ポンプ7Pと油圧モータ7Mとは、一対の油路7cで接続されている。走行変速装置7の入力軸7aにチャージポンプ44及び油圧ポンプ60が接続されて、入力軸7aによりチャージポンプ44及び油圧ポンプ60が駆動される。チャージポンプ44から延出されたチャージ油路45が油路7cに接続され、チャージ油路45にフィルタ49が備えられている。オイルタンク46とチャージポンプ44とに亘って油路47が接続されており、油路47にフィルタ48が備えられている。油圧ポンプ60の作動油が昇降シリンダ27の制御弁に供給される。オイルタンク46はミッションケース8とは別に設けられている。
【0030】
チャージ油路45から油路57が分岐しており、制御弁58は、操作シリンダ56に対して油路57の作動油を給排操作して操作シリンダ56を操作する。チャージ油路45にリリーフ弁50が接続されている。このリリーフ弁50は、走行変速装置7を収容するケース51に接続されている。ケース51とオイルタンク46とに亘って油路52が接続され、油路52にオイルクーラー53が備えられている。
【0031】
以上の構造により、オイルタンク46の作動油が、フィルタ48、油路47、チャージポンプ44、フィルタ49及びチャージ油路45を介して走行変速装置7の油路7cに供給される。チャージ油路45の作動油が油路57及び制御弁58を介して操作シリンダ56に給排操作される。余剰の作動油がリリーフ弁50を介してケース51に排出される。走行変速装置7の各部からの作動油及び制御弁58の作動油がケース51に排出され、ケース51の作動油が油路52及びオイルクーラー53を通過してオイルタンク46に戻される。
【0032】
図3は、走行変速装置7及び刈取変速装置18の変速操作、刈取クラッチ17の入り切り操作、刈取部2の昇降操作を行う操作装置を示すブロック図である。この図に示すように、操作装置は、刈取クラッチ17を入り切り操作する電動式の操作モータ36、刈取変速装置18を変速操作する電動式の操作モータ37を備え、油圧シリンダ56の制御弁58の電磁操作部と刈取クラッチ17の操作モータ36と刈取変速装置18の操作モータ37と昇降シリンダ27とに連係された制御装置31を備え、この制御装置31に連係された刈取変速スイッチ35、走行変速スイッチ34、オートスイッチ30、刈取クラッチレバー26、昇降レバー29を備えている。制御装置31は、走行変速センサ38、刈取変速センサ40、連結高さセンサ61、刈取クラッチセンサ62、株元センサ78、刈取回転センサ79にも連係されている。
【0033】
刈取クラッチ17の操作モータ36は、テンションアームを揺動操作することによって刈取クラッチ17を入り状態と切り状態とに切り換え操作する。刈取変速装置18の操作モータ37は、シフトフォークに連動されており、このシフトフォークを移動操作することによってシフトギヤ16を低速伝動ギヤ14に噛み合わせたり、高速伝動ギヤ15に噛み合わせたりする。
【0034】
刈取変速スイッチ35は、変速レバー43の背部に設けられている。走行変速スイッチ34は、変速レバー43の横側部に設けられている。刈取変速スイッチ35及び走行変速スイッチ34は、押し操作されると、オンに切り換わって変速指令を制御装置31に出力する。
【0035】
刈取クラッチレバー26は、運転部3に設けられており、入りスイッチ65及び切りスイッチ66を介して制御装置31に連係されている。刈取クラッチレバー26は、走行機体の前後方向に揺動操作されることにより、入り位置[ON]と切り位置[OFF]とに切り換わる。この刈取クラッチレバー26は、入り位置[ON]に操作されると、入りスイッチ65をオン操作してこの入りスイッチ65によって入り指令を制御装置31に出力する。刈取クラッチレバー26は、切り位置[OFF]に操作されると、切りスイッチ66をオン操作してこの切りスイッチ66によって切り指令を制御装置31に出力する。
【0036】
昇降レバー29は、運転部3に設けられており、上げスイッチ67及び下げスイッチ68を介して制御装置31に連係されている。昇降レバー29は、走行機体の前後方向に揺動操作されることにより、上げ位置[U]と下げ位置[D]とに切り換わる。この昇降レバー29は、上げ位置[U]に操作されると、上げスイッチ67をオン操作してこの上げスイッチ67によって上げ指令を制御装置31に出力する。昇降レバー29は、下げ位置[D]に操作されると、下げスイッチ68をオン操作してこの下げスイッチ68によって下げ指令を制御装置31に出力する。
【0037】
昇降レバー29は、走行機体の横方向にも揺動自在に支持されており、走行機体の操向操作を行うレバーにもなっている。すなわち、昇降レバー29は、中立位置に操作されると、ミッションケース8に内装の操向機構を中立状態に操作して走行機体を直進走行するように操向操作する。昇降レバー29は、中立位置から走行機体左横側に揺動操作されると、操向機構を左旋回状態に操作して走行機体を左向きに旋回走行するように操向操作する。昇降レバー29は、中立位置から走行機体右横向きに揺動操作されると、操向機構を右旋回状態に操作して走行機体を右向きに旋回走行するように操向操作する。
【0038】
走行変速センサ38は、走行変速装置7の油圧モータ7Mの斜板の操作位置を走行変速装置7の高速位置、標準速位置、低速位置として検出し、この検出結果を制御装置31に出力する。
【0039】
刈取変速センサ40は、刈取変速装置7の操作モータ37の回転位置を刈取変速装置18の低速位置、高速位置として検出し、この検出結果を制御装置31に出力する。
【0040】
オートスイッチ30は、オン状態[ON]とオフ状態[OFF]とに切り換え操作でき、オン状態[ON]に操作されると、オートクラッチ手段70をオンに切り換え操作させる指令を制御装置31に出力し、オフ状態[OFF]に切り換え操作されると、オートクラッチ手段70をオフに切り換え操作させる指令を制御装置31に出力する。
【0041】
連結高さセンサ61は、刈取部フレーム20の機体フレームに対する揺動位置を刈取部2の走行機体に対する連結高さとして検出し、この検出連結高さを制御装置31に出力する。
【0042】
刈取クラッチセンサ62は、刈取クラッチ17の操作モータ36の回転位置を刈取クラッチ17の入り状態及び切り状態として検出し、この検出結果を制御装置31に出力する。
【0043】
株元センサ78は、刈取部2に設けられており、供給装置24によって搬送される刈取穀稈の株元側に接触して刈取部2に穀稈が存在することを検出し、この検出結果を制御装置31に出力する。
【0044】
刈取回転センサ79は、刈取部2に設けられており、引起し装置22に動力伝達されていることを検出し、この検出結果を制御装置31に出力する。
【0045】
制御装置31は、マイクロコンピュータを利用して構成してあり、連係手段71、オートクラッチ手段70、刈取部昇降手段72、刈取クラッチ制御手段73、走行制御手段74、状態設定手段75、変速牽制手段77を備えている。
【0046】
図6は、オートスイッチ30及び刈取クラッチレバー26の操作状態とオートクラッチ手段70の状態との関係を示す説明図である。図7は、刈取部制御を示すフロー図である。
【0047】
これらの図に示すように、制御装置31は、入りスイッチ65及び切りスイッチ66からの指令を基に、刈取クラッチレバー26が入り位置[ON]に操作されているか、切り位置[OFF]に操作されているかを判断する。制御装置31は、オートスイッチ30がオン状態[ON]に切り換え操作され、かつ刈取クラッチレバー26が入り位置[ON]に操作された場合、オートクラッチ手段74をオンに切り換え、オートクラッチ手段74によるオートクラッチ制御を行なわせる。制御装置31は、オートスイッチ30がオフ状態[OFF]に切り換え操作された場合、及びオートスイッチ30がオン状態[ON]に切り換え操作されていても刈取クラッチレバー26が切り位置[OFF]に操作されている場合、オートクラッチ手段70をオフに切り換え、刈取部昇降手段72による刈取部昇降制御、刈取クラッチ制御手段73による刈取クラッチ制御を行なわせる。
【0048】
図8は、オートクラッチ手段70によるオートクラッチ制御を示すフロー図である。この図に示すように、オートクラッチ手段70は、昇降センサ61及び操作モータ36に連係されていることによって刈取部2と刈取クラッチ17とを連係させており、オンに切り換えられると、刈取部2の昇降制御を行なうに加え、刈取部2の昇降に連係させた刈取クラッチ17の制御を行う。
【0049】
すなわち、オートクラッチ手段70は、上げスイッチ67及び下げスイッチ68からの情報を基に昇降レバー29が上げ位置[U]に操作されたか、下げ位置[D]に操作されたかを判断する。
オートクラッチ手段70は、昇降レバー29が上げ位置[U]に操作されたと判断した場合、昇降シリンダ27を上げ側に切り換え操作し、昇降レバー29の上げ位置[U]への操作が解除されるまで、あるいは刈取部2が上限高さに上昇するまで刈取部2を上げ操作する。このとき、オートクラッチ手段70は、連結高さセンサ61による検出情報と、制御装置31が備える連結高さ設定手段76による設定連結高さとを基に、刈取部2の連結高さが設定連結高さよりも高くなったか否かを判断し、刈取部2の連結高さが設定連結高さよりも高くなったと判断した場合、刈取クラッチ17の操作シリンダ27を切り側に操作して刈取クラッチ17を切り状態に切り換え操作する。
設定連結高さとして、作業走行に使用される連結高さのうちの最も高い連結高さよりもやや高い連結高さであって、下限の連結高さと上限の連結高さとの間に位置する連結高さを設定してある。刈取部2を設定連結高さよりも高い連結高さにした場合、走行機体を圃場で高速走行させて刈取部2に上下振動が発生しても、刈取部2の接地が発生しにくい。
【0050】
オートクラッチ手段70は、昇降レバー29が下げ位置[D]に操作されたと判断した場合、後述する連係手段71による連係制御(図15参照)に移行し、昇降レバー29の下げ位置[D]への操作が解除されるまで、あるいは刈取部2が下限高さに下降するまで刈取部2を下げ操作する。
【0051】
図9は、刈取部昇降手段72による刈取部昇降制御を示すフロー図である。この図に示すように、刈取部昇降手段72は、上げスイッチ67及び下げスイッチ68からの情報を基に昇降レバー29が上げ位置[U]に操作されたか、下げ位置[D]に操作されたかを判断する。
刈取部昇降手段72は、昇降レバー29が上げ位置[U]に操作されたと判断した場合、昇降シリンダ27を上げ側に切り換え操作し、昇降レバー29の上げ位置[U]への操作が解除されるまで、あるいは刈取部2が上限高さに上昇するまで刈取部2を上げ操作する。
刈取部昇降手段72は、昇降レバー29が下げ位置[D]に操作されたと判断した場合、後述する連係手段71による連係制御(図15参照)に移行し、昇降レバー29の下げ位置[D]への操作が解除されるまで、あるいは刈取部2が下限高さに下降するまで刈取部2を下げ操作する。
【0052】
図10は、刈取クラッチ制御手段73による刈取クラッチ制御を示すフロー図である。この図に示すように、刈取クラッチ制御手段73は、入りスイッチ65及び切りスイッチ66からの情報を基に刈取クラッチレバー26が入り位置[ON]に操作されたか、切り位置[OFF]に操作されたかを判断する。
刈取クラッチ制御手段73は、刈取クラッチレバー26が入り位置[ON]に操作されたと判断した場合、操作モータ36を入り側に切り換え操作して刈取クラッチ17を入り状態に切り換え操作する。
刈取クラッチ制御手段73は、刈取クラッチレバー26が切り位置[OFF]に操作されたと判断した場合、操作モータ36を切り側に切り換え操作して刈取クラッチ17を切り状態に切り換え操作する。
【0053】
状態設定手段75は、走行機体に設定する状態としての移動走行状態、標準刈取状態、低速刈取状態を設定している。図5は、移動走行状態、標準刈取状態、低速刈取状態を示す説明図である。この図に示すように、移動走行状態は、走行変速装置7の油圧モータ7Mを高速位置に切り換え操作し、刈取クラッチ17を切り状態に切り換え操作し、刈取変速装置18を低速位置に切り換え操作した状態を設定している。標準刈取状態は、走行変速装置7の油圧モータ7Mを標準速位置に切り換え操作し、刈取クラッチ17を入り状態に切り換え操作し、刈取変速装置18を低速位置に切り換え操作した状態を設定している。低速刈取状態は、走行変速装置7の油圧モータ7Mを低速位置に切り換え操作し、刈取クラッチ17を入り状態に切り換え操作し、刈取変速装置18を高速位置に切り換え操作した状態を設定している。
【0054】
制御装置31は、刈取変速スイッチ35及び走行変速スイッチ34が操作されると、刈取変速スイッチ35及び走行変速スイッチ34からの指令を基に走行制御手段74による走行制御を行なわせる。
【0055】
図11は、走行制御手段74による走行制御を示すフロー図である。この図に示すように、走行制御手段74は、走行変速スイッチ34及び刈取変速スイッチ35が操作されると、走行変速センサ38、刈取変速センサ40、刈取クラッチセンサ62による検出情報を基に、移動走行状態と標準刈取状態と低速刈取状態のいずれが設定されているかを判断する。
【0056】
走行制御手段74は、走行変速スイッチ34が操作されたと判断し、かつ走行機体に移動走行状態が設定されていると判断した場合、標準制御を行なう。走行制御手段74は、走行変速スイッチ34の操作が行われたと判断し、かつ走行機体に標準刈取状態が設定されていると判断した場合、後述する走行制御手段74と変速牽制手段77とによる移動制御(図14参照)に移行する。走行制御手段74は、走行変速スイッチ34の操作が行われたと判断し、かつ走行機体に低速刈取状態が設定されていると判断した場合、後述する走行制御手段74と移動制御とによる移動制御(図14参照)に移行する。
【0057】
走行制御手段74は、刈取変速スイッチ35が操作されたと判断し、かつ走行機体に標準刈取状態が設定されていると判断した場合、低速制御を行なう。走行制御手段74は、刈取変速スイッチ35が操作されたと判断し、かつ走行機体に低速刈取状態が設定されていると判断した場合、標準制御を行なう。走行制御手段74は、刈取変速スイッチ35が操作されたと判断し、かつ走行機体に移動走行状態が設定されていると判断した場合、低速制御を行なう。
【0058】
図12は、走行制御手段74による標準制御を示すフロー図である。この図に示すように、走行制御手段74による標準制御では、走行制御手段74は、走行変速スイッチ34及び刈取変速スイッチ35による状態の切り換え指令があったか否かを判断する。走行制御手段74は、状態の切り換え指令が合ったと判断した場合、走行変速装置7の油圧モータ7Mを標準速位置に切り換え操作し、刈取クラッチ17を入り状態に切り換え操作し、刈取変速装置18を低速位置に切り換え操作する。
【0059】
図13は、走行制御手段74による低速制御を示すフロー図である。この図に示すように、走行制御手段74による低速制御では、走行制御手段74は、走行変速スイッチ34及び刈取変速スイッチ35による状態の切り換え指令があったか否かを判断する。走行制御手段74は、状態の切り換え指令が合ったと判断した場合、走行変速装置7の油圧モータ7Mを低速位置に切り換え操作し、刈取クラッチ17を入り状態に切り換え操作し、刈取変速装置18を高速位置に切り換え操作する。
【0060】
走行制御手段74と変速牽制手段77とによる移動制御について説明する。
変速牽制手段77は、牽制作用状態と牽制解除状態とに切り換え自在に構成されている。変速牽制手段77は、牽制作用状態に切り換わると、走行制御手段74に牽制作用し、走行制御手段74によって走行変速装置7の油圧モータ7Mが標準速位置及び低速位置から高速位置に切り換え操作されることを牽制する。変速牽制手段77は、牽制解除状態に切り換わると、走行制御手段77に対する牽制作用を解除し、走行制御手段77によって走行変速装置7の油圧モータ7Mが標準速位置及び低速位置から高速位置に切り換え操作されることを許容する。
【0061】
変速牽制手段77は、入りスイッチ65に連係されており、この入りスイッチ65からの情報を基に、刈取クラッチレバー26が入り位置[ON]に操作されているか否かを判断する。
【0062】
変速牽制手段77は、株元センサ78及び刈取回転センサ79に連係されており、株元センサ78及び刈取回転センサ79による検出情報を基に、刈取部2が作業中であるか否かを判断する。すなわち、変速牽制手段77は、株元センサ78と刈取回転センサ79とのいずれもが検出状態である場合、刈取部2が作業中であると判断し、株元センサ78と刈取回転センサ79のいずれもが非検出状態である場合、及び株元センサ78と刈取回転センサ79との少なくとも一方が非検出状態である場合、刈取部2が作業中ではないと判断する。
【0063】
変速牽制手段77は、連結高さセンサ61に連係されており、連結高さセンサ61による検出情報と連結高さ設定手段76による設定連結高さとを基に、刈取部2が設定連結高さ以下の連結高さに位置しているか否かを判断する。
【0064】
図14は、走行制御手段74と変速牽制手段77とによる移動制御を示すフロー図である。この図に示すように、走行制御手段74と変速牽制手段77とによる移動制御では、ステップ1に示すように、走行制御手段74は、走行変速スイッチ34による状態の切り換え指令があったか否かを判断する。ステップ1,2,3に示すように、走行制御手段74は、状態の切り換え指令があったと判断した場合、刈取クラッチ17を切り状態に切り換え操作し、刈取変速装置18を低速位置に切り換え操作する。
【0065】
ステップ4,5,6に示すように、変速牽制手段77は、刈取クラッチレバー26が入り位置[ON]に操作されていると判断し、かつ刈取部2が作業中であると判断した場合、刈取部2の連結高さ如何にかかわらず、牽制作用状態に切り換わって走行制御手段74に対して牽制作用する。
【0066】
ステップ4,5において、変速牽制手段77は、刈取クラッチレバー26が入り位置[ON]に操作されていると判断した場合でも、刈取部2が作業中でないと判断した場合、ステップ11に示すように、刈取部2の連結高さが設定連結高さ以下であるか否かを判断する。ステップ11,6に示すように、変速牽制手段77は、刈取部2の連結高さが設定転結高さ以下であると判断した場合、牽制作用状態に切り換わって走行制御手段74に牽制作用する。
【0067】
変速牽制手段77が牽制作用状態に切り換わった場合について次に説明する。
ステップ7,8に示すように、走行制御手段74は、走行変速センサ38による検出情報を基に走行変速装置7の油圧モータ7Mが標準速位置と低速位置とのいずれになっていかを判断する。ステップ7,9に示すように、走行制御手段74は、走行変速装置7の油圧モータ7Mが標準速位置になっていると判断した場合、油圧モータ7Mを標準速位置に維持操作し、変速牽制手段77は、走行変速装置7を標準速位置から高速位置に増速操作させない。ステップ8,10に示すように、走行制御手段74は、走行変速装置7の油圧モータ7Mが低速位置になっていると判断した場合、油圧モータ7Mを低速位置に維持操作し、変速牽制手段77は、走行変速装置7を低速位置から高速位置に増速操作させない。
【0068】
変速牽制手段77は、ステップ4において刈取クラッチレバー26が入り位置[ON]に操作されていないと判断した場合、及びステップ11において刈取部2の連結高さが設定連結高さ以下でないと判断した場合、ステップ12に示すように、牽制解除状態に切り換わって走行制御手段74に対する牽制作用を解除する。
【0069】
変速形成手段77が牽制解除状態に切り換わった場合、ステップ13に示すように、走行制御手段74は、走行変速装置7の油圧モータ7Mを高速位置に切り換え操作し、走行変速装置7を標準速位置あるいは低速位置から高速位置に増速操作する。
【0070】
連係手段71は、オートクラッチ手段70に連係され、かつ制御装置31を介して制御弁58に連係されていることよって刈取部2と走行変速装置7とを連係させており、刈取部2の下降操作に連係させて走行変速装置7の変速操作を行う。連係手段71は、オートクラッチ手段70に連係され、かつ制御装置31を介して刈取クラッチ17の操作モータ36に連係されていることよって刈取部2と刈取クラッチ17とを連係させており、刈取部2の下降操作に連係させて刈取クラッチ17の切り換え操作を行う。
【0071】
図15は、連係手段71による連係制御を示すフロー図である。この図に示すように、連係手段71は、ステップ1に示す如く下げスイッチ68による指令の有無を基に、刈取部2を下降作業高さに下げる操作があったか否かを判断する。ステップ2に示すように、連係手段71は、オートクラッチ手段70からの情報を基に、オートクラッチ手段70がオンとオフのいずれであるかを判断する。
【0072】
オートクラッチ手段70がオンである場合について説明する。
ステップ2,3,4に示すように、連係手段71は、オートクラッチ手段70がオンであると判断した場合、昇降シリンダ27を下げ側に操作して刈取部2を下降操作し、連結高さセンサ61による検出情報と連結高さ設定手段76による設定連結高さとを基に、刈取部2の連結高さが設定連結高さ以下であるか否かを判断する。
ステップ4,5,6に示すように、連係手段71は、刈取部2の連結高さが設定連結高さ以下であると判断し、かつ走行変速センサ38による検出情報を基に走行変速装置7の油圧モータ7Mが高速位置であると判断した場合、走行変速装置7の油圧モータ7Mを標準速位置する切り換え操作する。
ステップ7,8に示すように、連係手段71は、走行変速センサ38による検出情報を基に走行変速装置7の油圧モータ7Mが標準速位置に切り換わったか否かを判断し、油圧モータ7Mが標準速位置に切り換わったと判断した場合、刈取クラッチ17を入り状態に切り換え操作する。すなわち、連係手段71は、刈取クラッチ17が入り状態に切り換わるに先立って走行変速装置7が高速位置から標準速位置に減速するようにして走行変速装置7の減速、及び刈取クラッチ17の切り換えを行なう。
【0073】
次に、ステップ2においてオートクラッチ手段70がオンでないと判断した場合(オートクラッチ手段70がオフである場合)について説明する。
ステップ2,9,10に示すように、連係手段71は、オートクラッチ手段70がオンでないと判断した場合、昇降シリンダ27を下げ側に操作して刈取部2を下降操作し、刈取部2の連結高さが設定連結高さ以下であるか否かを判断する。
ステップ10,11に示すように、連係手段71は、刈取部2の連結高さが設定連結高さ以下であると判断した場合、刈取クラッチセンサ62による検出情報を基に刈取クラッチ2が入り状態であるか否かを判断する。
ステップ11,12,13に示すように、連係手段71は、刈取クラッチ17が入り状態であると判断し、かつ走行変速センサ38による検出情報を基に走行変速装置7の油圧モータ7Mが高速位置にあると判断した場合、走行変速装置7の油圧モータ7Mを標準速位置に切り換え操作して走行変速装置7を高速位置から標準速位置に減速操作する。
ステップ10,11において刈取部2の連結高さが設定連結高さ以下であると判断した場合でも、刈取クラッチ17が入り状態ではないと判断した場合(刈取クラッチ17が切り状態である場合)、ステップ14,15に示すように、連係手段71は、走行変速装置7の油圧モータ7Mが高速位置にあっても、油圧モータ7Mを高速位置に維持操作して走行変速装置7を減速させないで高速位置に維持する。
【0074】
つまり、図16に示す作業形態を採用して収穫作業を行うに当たり、走行変速スイッチ34あるいは刈取変速スイッチ35を操作する。すると、走行制御手段74によって刈取クラッチ17が入り状態に切り換え操作され、走行制御手段74によって刈取変速装置18が低速位置あるいは高速位置に切り換え操作されて刈取部2を駆動することができる。さらに、走行制御手段74によって走行変速装置7の油圧モータ7Mが標準速位置あるいは低速位置に切り換えられて走行装置1が標準速度あるいは低速度で駆動され、倒伏が無いとか少ない植立穀稈の刈取りに適切な標準速度、あるいは倒伏が激しい植立穀稈の刈取りに適切な低速度で作業走行を行うことができる。
【0075】
未刈り地81の一端側及び他端側での作業対象列に対する作業走行を終えて移動走行地82に至ると、オートスイッチ30をオン状態[ON]に操作し、刈取クラッチレバー26を入り位置[ON]に操作している(オートクラッチ手段70がオンになっている)場合、昇降レバー29を上げ位置[U]に操作する。すると、オートクラッチ手段70によって刈取部2が上昇操作されるとともに刈取クラッチ17が切り状態に切り換えられ、刈取部2を上昇非作業高さにするとともに停止させながら移動走行を行なうことができる。
【0076】
このとき、走行変速スイッチ34を操作する。刈取部2が作業中でなく、かつ刈取部2が設定連結高さよりも高い連結高さになっておれば、変速牽制手段77が牽制解除状態に切り換わっていて走行制御手段74によって走行変速装置7の油圧モータ7Mが高速位置に切り換え操作され、高速位置になった走行変速装置7によって走行装置1が駆動されて移動走行を作業走行よりも高速で行なうことができる。
【0077】
しかし、刈取部2が作業中である場合、及び刈取部2が作業中でなくても刈取部2が設定連結高さ以下の低い連結高さになっている場合、走行変速スイッチ34を操作しても、変速牽制手段77が牽制作用状態になっていて走行制御手段74によって走行変速装置7の油圧モータ7Mが低速位置あるいは標準位置に維持操作され、作業走行よりも高速で走行できない。
【0078】
作業走行を終えて移動走行地82に至ると、オートスイッチ30をオフ状態[OFF]に操作している(オートクラッチ手段70がオフになっている)場合、昇降レバー29を上げ位置[U]に操作し、走行変速スイッチ34を操作する。すると、刈取部昇降手段72によって刈取部2が上昇操作され、走行制御手段74によって刈取クラッチ17が切り状態に切り換え操作され、刈取部2を上昇非作業高さにするとともに停止させながら移動走行を行なうことができる。
【0079】
このとき、刈取クラッチレバー26を切り位置[OFF]に操作している場合、及び刈取クラッチレバー26を入り位置[ON]に操作していても、刈取部2が作業中でなく、かつ刈取部2が設定連結高さよりも高い連結高さになっている場合、変速牽制手段77が牽制解除状態に切り換わっており、走行制御手段74によって走行変速装置7の油圧モータ7Mが高速位置に切り換え操作されて高速位置になった走行変速装置7によって走行装置1が駆動され、移動走行を作業走行よりも高速で行なうことができる。
【0080】
しかし、刈取クラッチレバー26が入り位置[ON]にあり、かつ刈取部2が作業中である場合、刈取クラッチレバー26が入り位置[ON]にあり、刈取部2が作業中でなくても刈取部2が設定連結高さよりも低い連結高さになっている場合、走行変速スイッチ34を操作しても、変速牽制手段77が牽制作用状態になっていて走行制御手段74によって走行変速装置7の油圧モータ7Mが低速位置あるいは標準位置に維持操作され、作業走行よりも高速で走行できない。
【0081】
移動走行地82での移動走行を終えて未刈り地81の一端側及び他端側の作業対象列に対する作業走行に入る際、オートスイッチ30をオン状態[ON]に操作し、刈取クラッチレバー26を入り位置[ON]に操作している(オートクラッチ手段70がオンになっている)場合、昇降レバー29を下げ位置[D]に操作する。すると、オートクラッチ手段70によって刈取部2が下降操作されるとともに刈取クラッチ17が入り状態に切り換えられ、刈取部2が下降作業高さになるとともに駆動されて作業走行を行なうことができる。
【0082】
このとき、刈取部2が下降作業高さになると、連係手段71によって走行変速装置7の油圧モータ7Mが高速位置から標準速位置に切り換え操作されて走行変速装置7が高速位置から標準速位置に減速される。さらに、連係手段71が刈取クラッチ17の入り状態への切り換わりに先立って油圧モータ7Mを標準速位置に切り換え操作することにより、油圧モータ7Mが標準速位置に切り換わってから刈取クラッチ17が入り状態に切り換わり、走行変速装置7の油圧モータ7Mが高速位置にあって刈取部2が高速駆動される事態の発生を回避しながら走行装置1を高速から標準速度に減速して駆動でき、刈取部2による刈取りに適切な標準速度で作業走行を行うことができる。
【0083】
移動走行を終えて作業走行に入る際、オートスイッチ30をオフ状態[OFF]に操作している(オートクラッチ手段70がオフになっている)場合、オートスイッチ30をオン状態[ON]に操作するとともに刈取クラッチレバー26を入り位置[ON]に操作し、かつ昇降レバー29を下げ位置[D]に操作するか、あるいは昇降レバー29を下げ位置[D]に操作するとともに走行変速スイッチ34を操作する。
【0084】
オートスイッチ30をオン状態[ON]に操作するとともに刈取クラッチレバー26を入り位置[ON]に操作し、昇降レバー29を下げ位置[D]に操作した場合、オートクラッチ手段70によって刈取部2が下降操作されるとともに刈取クラッチ17が入り状態に切り換えられ、刈取部2が下降作業高さになるとともに駆動されて作業走行を行なうことができる。
【0085】
このとき、刈取部2が下降作業高さなると、連係手段71によって走行変速装置7の油圧モータ7Mが高速位置から標準速位置に切り換え操作されて走行変速装置7が高速位置から標準速位置に減速される。さらに、連係手段71が刈取クラッチ17の入り状態への切り換わりに先立って油圧モータ7Mを標準速位置に切り換え操作することにより、油圧モータ7Mが標準速位置に切り換わってから刈取クラッチ17が入り状態に切り換わり、走行変速装置7の油圧モータ7Mが高速位置にあって刈取部2が高速駆動される事態の発生を回避しながら走行装置1を高速から標準速度に減速して駆動でき、刈取部2による刈取りに適切な標準速度で作業走行を行うことができる。
【0086】
昇降レバー29を下げ位置[D]に操作し、走行変速スイッチ34を操作した場合、刈取部昇降手段72によって刈取部2が下降操作され、走行制御手段74によって刈取クラッチ17が入り状態に切り換え操作され、走行制御手段74によって刈取変速装置18が低速位置に操作され、刈取部2が下降作業高さになるとともに駆動されて作業走行を行なうことができる。
【0087】
このとき、刈取部2が下降作業高さなると、連係手段71によって走行変速装置7の油圧モータ7Mが高速位置から標準速位置に切り換え操作されて走行変速装置7が高速位置から標準速位置に減速される。さらに、連係手段71が刈取クラッチ17の入り状態への切り換わりに先立って油圧モータ7Mを標準速位置に切り換え操作することにより、油圧モータ7Mが標準速位置に切り換わってから刈取クラッチ17が入り状態に切り換わり、走行変速装置7の油圧モータ7Mが高速位置にあって刈取部2が高速駆動される事態の発生を回避しながら走行装置1を高速から標準速度に減速して駆動でき、刈取部2による刈取りに適切な標準速度で作業走行を行うことができる。
【0088】
路上を移動走行する場合、刈取部2を設定連結高さ以下の比較的低い連結高さにして刈取収穫機の全体としての重心高さが低くなるようにしても、かつ作業走行より高速で走行しても、走行地面の凹凸がないとかわずかであることにより、刈取部2に大きな振動が発生しにくくて刈取部2の接地トラブルが発生しにくい。このような場合、刈取クラッチ17を切り状態にしておけば、走行変速装置7の油圧モータ7Mが高速位置に操作されている状態で刈取部2を設定連結高さよりも低い連結高さにしても、連係手段71による油圧モータ7Mの標準速位置への切り換え操作が行なわれず、油圧モータ7Mが高速位置に維持されて高速位置に維持された走行変速装置7によって走行装置1が駆動され、移動走行を作業走行よりも高速で行なうことができる。
【0089】
〔別実施形態〕
上記した実施形態の如く移動走行状態、標準刈取状態、低速刈取状態を現出するのに、走行変速装置7の油圧モータ7Mの変速操作によって走行変速装置1を変速する構成に替え、走行変速装置7の油圧ポンプ7Pの変速操作によって走行変速装置1を変速する構成、あるいは走行変速装置7とは別に副変速用の走行変速装置を設け、この副変速用の走行変速装置を変速操作する構成を採用して実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、稲、麦などの穀稈を収穫対象とする刈取収穫機の他、い草などの各種の作物を収穫対象とする刈取収穫機にも利用できる。
【符号の説明】
【0091】
1 走行装置
2 刈取部
7 走行変速装置
17 刈取クラッチ
61 連結高さセンサ
70 オートクラッチ手段
77 変速牽制手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体に刈取部が上昇非作業高さと下降作業高さとに昇降操作自在に連結され、前記走行機体の走行装置を変速駆動する走行変速装置を備えた刈取収穫機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記した刈取収穫機では、刈取部による刈り取りを行いながらの走行、いわゆる作業走行を行なう場合、走行速度の速すぎに起因した茎稈の押し倒しなどの刈取り不良が発生することを防止できるように、走行装置を走行変速装置によって低速側に変速して駆動することが可能となり、刈取部を上昇非作業高さに上昇させて行う走行、いわゆる移動走行を行なう場合、作業走行時よりも高速で迅速に移動できるように、走行装置を走行変速装置によって高速側に変速して駆動することが可能となったものである。
この種の刈取収穫機として、従来、たとえば特許文献1に記載されたコンバインがあった。特許文献1に記載されたコンバインでは、エンジン8の出力軸8aの回動力を、伝動ベルト17を介して走行用変速装置18の入力軸18aに伝達し、この走行用変速装置18の出力軸18bの回動力を、走行用ミッションMを介して左右の走行装置1に伝達する。走行用変速装置18の出力軸18bの回動力を、刈取クラッチ19を介して刈取部3の入力軸3dに伝達する。(各符号は、公報に記載されたものである。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−262643号公報(段落〔0021〕、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図16は、コンバインによる収穫作業において採用されることがある作業形態を示す説明図である。
この図に示すように、畦80に沿った作業走行を行なって未刈り地81の一辺側および他辺側と畦80との間に移動走行地82ができると、未刈り地81の移動走行地82に沿った方向での一端部に位置する作業対象列に対する作業走行を行なう。この作業走行を終えて一方の移動走行地82に至ると、この移動走行地82を未刈り地81の他端部に向けて移動走行する。未刈り地81の他端部に到達すると、この端部に位置する作業対象列に対する作業走行を行う。この作業走行を終えて他方の移動走行地82に至ると、この移動走行地82を未刈り地81の一端部に向けて移動走行してこの端部に位置する作業対象列に対する作業走行を行う。このように、未刈り地81の両端部での作業走行と、各移動走行地82での移動走行とを繰り返して行なうという作業形態を採用されることがある。
つまり、作業走行を終えて枕地に至ると、枕地で旋回を行なって先の作業走行箇所に隣り合って位置する次の作業対象列に対する作業走行を行なうという作業形態を採用した場合、枕地での旋回に前後進の繰り返しが必要になるなどによって時間が掛かりがちになる。これに対し、上記した如く未刈り地の一端部と他端部の間を移動走行する作業形態を採用した場合、枕地での煩わしい旋回が不要になる。
【0005】
上記した如き移動走行を行なう作業形態を採用した場合、走行装置を作業走行時よりも高速側に変速して駆動して移動走行すれば、移動走行を迅速に行なって作業をより能率よく行なうことができる。
【0006】
移動走行を作業走行よりも高速で行なう場合、刈取部を低い連結高さにして行なわれると、作業地は不整地でありがちであって、高速走行及び走行地の凹凸に起因した走行機体の振動が大きくなりやすいことにより、刈取部が走行地の隆起部に突っ込んだり走行地面に衝突したりする事態が発生しやすくなる。
【0007】
本発明の目的は、刈取部の接地トラブルを回避しながら高速移動されるようにできる刈取収穫機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本第1発明は、走行機体に刈取部が上昇非作業高さと下降作業高さとに昇降操作自在に連結され、前記走行機体の走行装置を変速駆動する走行変速装置を備えた刈取収穫機において、
前記刈取部の走行機体に対する連結高さを検出する連結高さセンサを備え、
前記走行変速装置が設定低速位置から増速操作されることを牽制する牽制作用状態と、前記走行変速装置が設定低速位置から増速操作されることを許容する牽制解除状態とに切り換え自在な変速牽制手段を備え、
前記刈取部が設定連結高さより高い連結高さに位置する状態において前記変速牽制手段が牽制解除状態に切り換わり、前記刈取部が前記設定連結高さ以下に位置する状態において前記変速牽制手段が牽制作用状態に切り換わるように、前記変速牽制手段と前記連結高さセンサとを連係させてある。
【0009】
本第1発明の構成によると、刈取部を設定連結高さ以下の連結高さにすれば、変速牽制手段が牽制作用状態となって走行変速装置の設定低速位置からの増速操作が牽制され、刈取部を設定連結高さよりも高い連結高さにすれば、変速牽制手段が牽制解除状態となって走行変速装置の設定低速位置からの増速操作に対する牽制が解除されるから、刈取部の設定連結高さ及び走行変速装置の設定低速位置を適切な連結高さや速度位置に設定することにより、刈取部を高速移動に不適切な低い連結高さにしたままであると、走行変速装置を高速側に変速できなくて作業用などの低速でしか走行できず、刈取部を高速移動に適切な高い連結高さにすれば、走行変速装置を高速側に変速できて高速で走行できるようになる。
【0010】
したがって、上記した作業形態での作業を行うに当たり、刈取部を高速移動に適切な高い連結高さにしないと高速移動できず、刈取部の接地による変形や破損を回避しながら高速で移動走行して能率よく作業を行うことが可能な刈取収穫機を得ることができる。
【0011】
本第2発明では、前記刈取部に対する伝動を入り切りする刈取クラッチを備え、前記刈取部が前記設定連結高さより高い連結高さに上昇させる操作によって前記刈取クラッチが切り状態に切換え操作されるように、前記刈取部と前記刈取クラッチとを連係させたオートクラッチ手段を備えている。
【0012】
本第2発明の構成によると、刈取部を設定連結高さに上昇させる操作が行われると、オートクラッチ手段による刈取部と刈取クラッチとの連係により、刈取クラッチが自ずと切り状態に切り換え操作されるから。作業走行を終えて移動走行に入る際、高速で移動走行するように、刈取部を高速移動に適切な連結高さに上昇操作されると、刈取クラッチが自ずと切り状態に切り換わって刈取部が停止する。
【0013】
したがって、上記した作業形態での作業を行うに当たり、作業走行を終えて移動走行に入るべく刈取部を切り状態に切り換えるのに刈取部を上昇させる操作を行うだけで済ませ、この面からも能率よく作業を行なえる刈取収穫機を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】刈取収穫機の全体を示す側面図である。
【図2】伝動装置を示す説明図である。
【図3】操作装置を示すブロック図である。
【図4】走行変速装置の油圧回路図である。
【図5】移動走行状態、標準刈取状態、低速刈取状態を示す説明図である。
【図6】オートスイッチ及び刈取クラッチレバーの操作状態とオートクラッチ手段の状態との関係を示す説明図である。
【図7】刈取部制御を示すフロー図である。
【図8】オートクラッチ制御を示すフロー図である。
【図9】刈取部昇降制御を示すフロー図である。
【図10】刈取クラッチ制御を示すフロー図である。
【図11】走行制御を示すフロー図である。
【図12】標準制御を示すフロー図である。
【図13】低速制御を示すフロー図である。
【図14】移動制御を示すフロー図である。
【図15】連係制御を示すフロー図である。
【図16】収穫作業の作業形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る刈取収穫機の全体を示す側面図である。この図に示すように、本発明の実施形態に係る刈取収穫機は、左右一対のクローラ式の走行装置1,1によって自走するように構成され、かつ運転座席3aが装備された運転部3を有した走行機体を備え、この走行機体の機体フレームの前部に連結された刈取部2を備え、走行機体の機体フレームの後部側に走行機体横方向に並べて設けられ脱穀装置4と穀粒タンク5を備えて構成されている。
【0016】
この刈取収穫機は、稲、麦などの収穫作業を行う。
つまり、刈取部2は、機体フレームに軸芯P1まわりに上下揺動自在に支持された刈取部フレーム20、この刈取部フレーム20に支持された分草具21、引起し装置22、バリカン形の刈取装置23、供給装置24を備えている。この刈取部2は、刈取部フレーム20が油圧式でかつ単動形の昇降シリンダ27によって上下に揺動操作されることにより、分草具21が地面の近くに下降した下降作業高さと、分草具21が地面から高く上昇した上昇非作業高さとに昇降する。
【0017】
刈取部2を下降作業高さに下降させて走行機体を走行させると、刈取部2は、分草具21によって植立穀稈を刈取り対象と非刈取り対象とに分草し、刈取り対象の植立穀稈を引起し装置22によって引起し処理するとともに刈取装置23によって刈取処理し、刈取り穀稈を供給装置24によって脱穀装置4の前部に搬送して脱穀フィードチェーン28の始端部に供給する。
【0018】
脱穀装置4は、脱穀フィードチェーン28によって刈取穀稈の株元側を挟持して走行機体後方向きに搬送しながら、刈取穀稈の穂先側を扱室(図示せず)に供給して脱穀処理する。穀粒タンク5は、脱穀装置4から搬送された脱穀粒を回収して貯留していく。
【0019】
走行機体は、運転座席3aの下方に設けたエンジン6を備え、このエンジン6が出力する駆動力を機体フレームの前端部に設けたミッションケース8を介して左右一対の走行装置1,1及び刈取部2に伝達する伝動装置を備えている。
【0020】
図2は、伝動装置の説明図である。この図に示すように、伝動装置は、前記ミッションケース8を備える他、このミッションケース8の上端部に連設された走行変速装置7を備えている。伝動装置は、エンジン6の出力軸6aの駆動力を、ベルトテンションクラッチで成る主クラッチ9を介して走行変速装置7の入力軸7aに伝達し、この走行変速装置7の出力軸7bの駆動力を、ミッションケース8の内部に位置するミッション(図示せず)を介して左右の走行装置1,1のクローラ駆動軸1aに伝達する。ミッションケース8の内部に位置するミッションは、走行変速装置7の出力軸7bに一体回転自在に連動した第1伝動ギヤ10に噛み合った入力ギヤ19を備え、この入力ギヤ19の駆動力を左右のクローラ駆動軸1a,1aに伝達する操向機構(図示せず)を備えている。操向機構は、入力ギヤ19の駆動力を左右のクローラ駆動軸1a,1aに伝達し、あるいは左右のクローラ駆動軸1a,1aに対する伝動を各別に絶ったり変速したりして左右の走行装置1,1を各別に駆動、停止、変速し、これによって走行機体の操向操作を行う。
【0021】
伝動装置は、走行変速装置7の出力軸7bの駆動力を、ミッションケース8の上端部に内装された刈取変速装置18に入力し、この刈取変速装置18の出力軸13の駆動力を、ベルトテンションクラッチで成る刈取クラッチ17を介して刈取部2の入力軸2aに伝達する。これにより、伝動装置は、走行変速装置7の出力軸7bの駆動力を刈取部2に伝達し、走行変速装置7による走行装置1の変速が行なわれると、走行装置1の変速に同調させて刈取部2を変速する。
【0022】
図2に示すように、刈取変速装置18は、前記第1伝動ギヤ10に噛み合った低速伝動ギヤ14、走行変速装置7の出力軸7bに第1伝動ギヤ10及び伝動軸12を介して一体回転自在に連動した第2伝動ギヤ11、この第2伝動ギヤ11に噛み合った高速伝動ギヤ15、出力軸13に一体回転自在に支持されたシフトギヤ16を備えて構成してある。
刈取変速装置18は、シフトギヤ16が摺動操作されて低速伝動ギヤ14に噛み合うことによって低速位置に切り換わり、シフトギヤ16が摺動操作されて高速伝動ギヤ15に噛み合うことによって高速位置に切り換わる。
【0023】
図2,3に示すように、走行変速装置7は、入力軸7aをポンプ軸として備えた可変容量形の油圧ポンプ7Pを備え、出力軸7bをモータ軸として備えた油圧モータ7Mを備えて構成してある。油圧モータ7Mは、油圧ポンプ7Pによって供給される圧油によって駆動される。この油圧モータ7Mは、可変容量形の油圧モータに構成してある。
【0024】
走行変速装置7は、静油圧式無段変速装置に構成されており、油圧ポンプ7Pの斜板角の変更操作が行われることにより、エンジン6からの駆動力を前進側と後進側の駆動力に変換して、かつ前進側においても後進側においても無段階に変速して左右の走行装置1,1に伝達する。
【0025】
走行変速装置7は、油圧モータ7Mの斜板角の変更操作が行われることにより、高速位置と標準速位置と低速位置とに切り換わって左右の走行装置1,1の副変速を行なう。
すなわち、走行変速装置7は、標準位置に切り換えられると、左右の走行装置1,1を植立穀稈の倒伏が無いとか少ない場合の作業走行に適切な標準速度で駆動する。走行変速装置7は、低速位置に切り換えられると、左右の走行装置1,1を標準速度よりも低速であって、植立穀稈の倒伏が激しい場合の作業走行に適切な速度で駆動する。走行変速装置7は、高速位置に切り換えられると、左右の走行装置1,1を標準速度よりも高速であって、移動走行に適切な速度で駆動する。
【0026】
図3に示すように、走行変速装置7の油圧モータ7Mの斜板角を変更する操作軸は、揺動リンクなどを利用した機械式の連係機構33を介して変速レバー43に連動されている。変速レバー43は、運転部3に走行機体の前後方向に揺動自在に設けられている。
【0027】
つまり、走行変速装置7は、変速レバー43が中立位置Nに操作されることにより、中立状態に切り換わり、油圧モータ7Mを停止させて左右の走行装置1,1に対する伝動を絶つ。走行変速装置7は、変速レバー43が中立位置Nから走行機体前方側に揺動した前進域Fに操作されることにより、前進駆動状態に切り換わり、エンジン6からの駆動力を前進駆動力に変換して左右の走行装置1,1に伝達する。走行変速装置7は、変速レバー43が中立位置Nから走行機体後方側に揺動した後進域Rに操作されることにより、後進駆動状態に切り換わり、エンジン6からの駆動力を後進駆動力に変換して左右の走行装置1,1に伝達する。
【0028】
図3に示すように、走行変速装置7は、油圧モータ7Mの斜板角を変更する操作軸に連動された油圧式の操作シリンダ56を備えており、この操作シリンダ56が制御弁58によって操作されることにより、高速位置と標準速位置と低速位置とに切り換わる。
【0029】
図4は、走行変速装置7の油圧回路図である。この図に示すように、油圧ポンプ7Pと油圧モータ7Mとは、一対の油路7cで接続されている。走行変速装置7の入力軸7aにチャージポンプ44及び油圧ポンプ60が接続されて、入力軸7aによりチャージポンプ44及び油圧ポンプ60が駆動される。チャージポンプ44から延出されたチャージ油路45が油路7cに接続され、チャージ油路45にフィルタ49が備えられている。オイルタンク46とチャージポンプ44とに亘って油路47が接続されており、油路47にフィルタ48が備えられている。油圧ポンプ60の作動油が昇降シリンダ27の制御弁に供給される。オイルタンク46はミッションケース8とは別に設けられている。
【0030】
チャージ油路45から油路57が分岐しており、制御弁58は、操作シリンダ56に対して油路57の作動油を給排操作して操作シリンダ56を操作する。チャージ油路45にリリーフ弁50が接続されている。このリリーフ弁50は、走行変速装置7を収容するケース51に接続されている。ケース51とオイルタンク46とに亘って油路52が接続され、油路52にオイルクーラー53が備えられている。
【0031】
以上の構造により、オイルタンク46の作動油が、フィルタ48、油路47、チャージポンプ44、フィルタ49及びチャージ油路45を介して走行変速装置7の油路7cに供給される。チャージ油路45の作動油が油路57及び制御弁58を介して操作シリンダ56に給排操作される。余剰の作動油がリリーフ弁50を介してケース51に排出される。走行変速装置7の各部からの作動油及び制御弁58の作動油がケース51に排出され、ケース51の作動油が油路52及びオイルクーラー53を通過してオイルタンク46に戻される。
【0032】
図3は、走行変速装置7及び刈取変速装置18の変速操作、刈取クラッチ17の入り切り操作、刈取部2の昇降操作を行う操作装置を示すブロック図である。この図に示すように、操作装置は、刈取クラッチ17を入り切り操作する電動式の操作モータ36、刈取変速装置18を変速操作する電動式の操作モータ37を備え、油圧シリンダ56の制御弁58の電磁操作部と刈取クラッチ17の操作モータ36と刈取変速装置18の操作モータ37と昇降シリンダ27とに連係された制御装置31を備え、この制御装置31に連係された刈取変速スイッチ35、走行変速スイッチ34、オートスイッチ30、刈取クラッチレバー26、昇降レバー29を備えている。制御装置31は、走行変速センサ38、刈取変速センサ40、連結高さセンサ61、刈取クラッチセンサ62、株元センサ78、刈取回転センサ79にも連係されている。
【0033】
刈取クラッチ17の操作モータ36は、テンションアームを揺動操作することによって刈取クラッチ17を入り状態と切り状態とに切り換え操作する。刈取変速装置18の操作モータ37は、シフトフォークに連動されており、このシフトフォークを移動操作することによってシフトギヤ16を低速伝動ギヤ14に噛み合わせたり、高速伝動ギヤ15に噛み合わせたりする。
【0034】
刈取変速スイッチ35は、変速レバー43の背部に設けられている。走行変速スイッチ34は、変速レバー43の横側部に設けられている。刈取変速スイッチ35及び走行変速スイッチ34は、押し操作されると、オンに切り換わって変速指令を制御装置31に出力する。
【0035】
刈取クラッチレバー26は、運転部3に設けられており、入りスイッチ65及び切りスイッチ66を介して制御装置31に連係されている。刈取クラッチレバー26は、走行機体の前後方向に揺動操作されることにより、入り位置[ON]と切り位置[OFF]とに切り換わる。この刈取クラッチレバー26は、入り位置[ON]に操作されると、入りスイッチ65をオン操作してこの入りスイッチ65によって入り指令を制御装置31に出力する。刈取クラッチレバー26は、切り位置[OFF]に操作されると、切りスイッチ66をオン操作してこの切りスイッチ66によって切り指令を制御装置31に出力する。
【0036】
昇降レバー29は、運転部3に設けられており、上げスイッチ67及び下げスイッチ68を介して制御装置31に連係されている。昇降レバー29は、走行機体の前後方向に揺動操作されることにより、上げ位置[U]と下げ位置[D]とに切り換わる。この昇降レバー29は、上げ位置[U]に操作されると、上げスイッチ67をオン操作してこの上げスイッチ67によって上げ指令を制御装置31に出力する。昇降レバー29は、下げ位置[D]に操作されると、下げスイッチ68をオン操作してこの下げスイッチ68によって下げ指令を制御装置31に出力する。
【0037】
昇降レバー29は、走行機体の横方向にも揺動自在に支持されており、走行機体の操向操作を行うレバーにもなっている。すなわち、昇降レバー29は、中立位置に操作されると、ミッションケース8に内装の操向機構を中立状態に操作して走行機体を直進走行するように操向操作する。昇降レバー29は、中立位置から走行機体左横側に揺動操作されると、操向機構を左旋回状態に操作して走行機体を左向きに旋回走行するように操向操作する。昇降レバー29は、中立位置から走行機体右横向きに揺動操作されると、操向機構を右旋回状態に操作して走行機体を右向きに旋回走行するように操向操作する。
【0038】
走行変速センサ38は、走行変速装置7の油圧モータ7Mの斜板の操作位置を走行変速装置7の高速位置、標準速位置、低速位置として検出し、この検出結果を制御装置31に出力する。
【0039】
刈取変速センサ40は、刈取変速装置7の操作モータ37の回転位置を刈取変速装置18の低速位置、高速位置として検出し、この検出結果を制御装置31に出力する。
【0040】
オートスイッチ30は、オン状態[ON]とオフ状態[OFF]とに切り換え操作でき、オン状態[ON]に操作されると、オートクラッチ手段70をオンに切り換え操作させる指令を制御装置31に出力し、オフ状態[OFF]に切り換え操作されると、オートクラッチ手段70をオフに切り換え操作させる指令を制御装置31に出力する。
【0041】
連結高さセンサ61は、刈取部フレーム20の機体フレームに対する揺動位置を刈取部2の走行機体に対する連結高さとして検出し、この検出連結高さを制御装置31に出力する。
【0042】
刈取クラッチセンサ62は、刈取クラッチ17の操作モータ36の回転位置を刈取クラッチ17の入り状態及び切り状態として検出し、この検出結果を制御装置31に出力する。
【0043】
株元センサ78は、刈取部2に設けられており、供給装置24によって搬送される刈取穀稈の株元側に接触して刈取部2に穀稈が存在することを検出し、この検出結果を制御装置31に出力する。
【0044】
刈取回転センサ79は、刈取部2に設けられており、引起し装置22に動力伝達されていることを検出し、この検出結果を制御装置31に出力する。
【0045】
制御装置31は、マイクロコンピュータを利用して構成してあり、連係手段71、オートクラッチ手段70、刈取部昇降手段72、刈取クラッチ制御手段73、走行制御手段74、状態設定手段75、変速牽制手段77を備えている。
【0046】
図6は、オートスイッチ30及び刈取クラッチレバー26の操作状態とオートクラッチ手段70の状態との関係を示す説明図である。図7は、刈取部制御を示すフロー図である。
【0047】
これらの図に示すように、制御装置31は、入りスイッチ65及び切りスイッチ66からの指令を基に、刈取クラッチレバー26が入り位置[ON]に操作されているか、切り位置[OFF]に操作されているかを判断する。制御装置31は、オートスイッチ30がオン状態[ON]に切り換え操作され、かつ刈取クラッチレバー26が入り位置[ON]に操作された場合、オートクラッチ手段74をオンに切り換え、オートクラッチ手段74によるオートクラッチ制御を行なわせる。制御装置31は、オートスイッチ30がオフ状態[OFF]に切り換え操作された場合、及びオートスイッチ30がオン状態[ON]に切り換え操作されていても刈取クラッチレバー26が切り位置[OFF]に操作されている場合、オートクラッチ手段70をオフに切り換え、刈取部昇降手段72による刈取部昇降制御、刈取クラッチ制御手段73による刈取クラッチ制御を行なわせる。
【0048】
図8は、オートクラッチ手段70によるオートクラッチ制御を示すフロー図である。この図に示すように、オートクラッチ手段70は、昇降センサ61及び操作モータ36に連係されていることによって刈取部2と刈取クラッチ17とを連係させており、オンに切り換えられると、刈取部2の昇降制御を行なうに加え、刈取部2の昇降に連係させた刈取クラッチ17の制御を行う。
【0049】
すなわち、オートクラッチ手段70は、上げスイッチ67及び下げスイッチ68からの情報を基に昇降レバー29が上げ位置[U]に操作されたか、下げ位置[D]に操作されたかを判断する。
オートクラッチ手段70は、昇降レバー29が上げ位置[U]に操作されたと判断した場合、昇降シリンダ27を上げ側に切り換え操作し、昇降レバー29の上げ位置[U]への操作が解除されるまで、あるいは刈取部2が上限高さに上昇するまで刈取部2を上げ操作する。このとき、オートクラッチ手段70は、連結高さセンサ61による検出情報と、制御装置31が備える連結高さ設定手段76による設定連結高さとを基に、刈取部2の連結高さが設定連結高さよりも高くなったか否かを判断し、刈取部2の連結高さが設定連結高さよりも高くなったと判断した場合、刈取クラッチ17の操作シリンダ27を切り側に操作して刈取クラッチ17を切り状態に切り換え操作する。
設定連結高さとして、作業走行に使用される連結高さのうちの最も高い連結高さよりもやや高い連結高さであって、下限の連結高さと上限の連結高さとの間に位置する連結高さを設定してある。刈取部2を設定連結高さよりも高い連結高さにした場合、走行機体を圃場で高速走行させて刈取部2に上下振動が発生しても、刈取部2の接地が発生しにくい。
【0050】
オートクラッチ手段70は、昇降レバー29が下げ位置[D]に操作されたと判断した場合、後述する連係手段71による連係制御(図15参照)に移行し、昇降レバー29の下げ位置[D]への操作が解除されるまで、あるいは刈取部2が下限高さに下降するまで刈取部2を下げ操作する。
【0051】
図9は、刈取部昇降手段72による刈取部昇降制御を示すフロー図である。この図に示すように、刈取部昇降手段72は、上げスイッチ67及び下げスイッチ68からの情報を基に昇降レバー29が上げ位置[U]に操作されたか、下げ位置[D]に操作されたかを判断する。
刈取部昇降手段72は、昇降レバー29が上げ位置[U]に操作されたと判断した場合、昇降シリンダ27を上げ側に切り換え操作し、昇降レバー29の上げ位置[U]への操作が解除されるまで、あるいは刈取部2が上限高さに上昇するまで刈取部2を上げ操作する。
刈取部昇降手段72は、昇降レバー29が下げ位置[D]に操作されたと判断した場合、後述する連係手段71による連係制御(図15参照)に移行し、昇降レバー29の下げ位置[D]への操作が解除されるまで、あるいは刈取部2が下限高さに下降するまで刈取部2を下げ操作する。
【0052】
図10は、刈取クラッチ制御手段73による刈取クラッチ制御を示すフロー図である。この図に示すように、刈取クラッチ制御手段73は、入りスイッチ65及び切りスイッチ66からの情報を基に刈取クラッチレバー26が入り位置[ON]に操作されたか、切り位置[OFF]に操作されたかを判断する。
刈取クラッチ制御手段73は、刈取クラッチレバー26が入り位置[ON]に操作されたと判断した場合、操作モータ36を入り側に切り換え操作して刈取クラッチ17を入り状態に切り換え操作する。
刈取クラッチ制御手段73は、刈取クラッチレバー26が切り位置[OFF]に操作されたと判断した場合、操作モータ36を切り側に切り換え操作して刈取クラッチ17を切り状態に切り換え操作する。
【0053】
状態設定手段75は、走行機体に設定する状態としての移動走行状態、標準刈取状態、低速刈取状態を設定している。図5は、移動走行状態、標準刈取状態、低速刈取状態を示す説明図である。この図に示すように、移動走行状態は、走行変速装置7の油圧モータ7Mを高速位置に切り換え操作し、刈取クラッチ17を切り状態に切り換え操作し、刈取変速装置18を低速位置に切り換え操作した状態を設定している。標準刈取状態は、走行変速装置7の油圧モータ7Mを標準速位置に切り換え操作し、刈取クラッチ17を入り状態に切り換え操作し、刈取変速装置18を低速位置に切り換え操作した状態を設定している。低速刈取状態は、走行変速装置7の油圧モータ7Mを低速位置に切り換え操作し、刈取クラッチ17を入り状態に切り換え操作し、刈取変速装置18を高速位置に切り換え操作した状態を設定している。
【0054】
制御装置31は、刈取変速スイッチ35及び走行変速スイッチ34が操作されると、刈取変速スイッチ35及び走行変速スイッチ34からの指令を基に走行制御手段74による走行制御を行なわせる。
【0055】
図11は、走行制御手段74による走行制御を示すフロー図である。この図に示すように、走行制御手段74は、走行変速スイッチ34及び刈取変速スイッチ35が操作されると、走行変速センサ38、刈取変速センサ40、刈取クラッチセンサ62による検出情報を基に、移動走行状態と標準刈取状態と低速刈取状態のいずれが設定されているかを判断する。
【0056】
走行制御手段74は、走行変速スイッチ34が操作されたと判断し、かつ走行機体に移動走行状態が設定されていると判断した場合、標準制御を行なう。走行制御手段74は、走行変速スイッチ34の操作が行われたと判断し、かつ走行機体に標準刈取状態が設定されていると判断した場合、後述する走行制御手段74と変速牽制手段77とによる移動制御(図14参照)に移行する。走行制御手段74は、走行変速スイッチ34の操作が行われたと判断し、かつ走行機体に低速刈取状態が設定されていると判断した場合、後述する走行制御手段74と移動制御とによる移動制御(図14参照)に移行する。
【0057】
走行制御手段74は、刈取変速スイッチ35が操作されたと判断し、かつ走行機体に標準刈取状態が設定されていると判断した場合、低速制御を行なう。走行制御手段74は、刈取変速スイッチ35が操作されたと判断し、かつ走行機体に低速刈取状態が設定されていると判断した場合、標準制御を行なう。走行制御手段74は、刈取変速スイッチ35が操作されたと判断し、かつ走行機体に移動走行状態が設定されていると判断した場合、低速制御を行なう。
【0058】
図12は、走行制御手段74による標準制御を示すフロー図である。この図に示すように、走行制御手段74による標準制御では、走行制御手段74は、走行変速スイッチ34及び刈取変速スイッチ35による状態の切り換え指令があったか否かを判断する。走行制御手段74は、状態の切り換え指令が合ったと判断した場合、走行変速装置7の油圧モータ7Mを標準速位置に切り換え操作し、刈取クラッチ17を入り状態に切り換え操作し、刈取変速装置18を低速位置に切り換え操作する。
【0059】
図13は、走行制御手段74による低速制御を示すフロー図である。この図に示すように、走行制御手段74による低速制御では、走行制御手段74は、走行変速スイッチ34及び刈取変速スイッチ35による状態の切り換え指令があったか否かを判断する。走行制御手段74は、状態の切り換え指令が合ったと判断した場合、走行変速装置7の油圧モータ7Mを低速位置に切り換え操作し、刈取クラッチ17を入り状態に切り換え操作し、刈取変速装置18を高速位置に切り換え操作する。
【0060】
走行制御手段74と変速牽制手段77とによる移動制御について説明する。
変速牽制手段77は、牽制作用状態と牽制解除状態とに切り換え自在に構成されている。変速牽制手段77は、牽制作用状態に切り換わると、走行制御手段74に牽制作用し、走行制御手段74によって走行変速装置7の油圧モータ7Mが標準速位置及び低速位置から高速位置に切り換え操作されることを牽制する。変速牽制手段77は、牽制解除状態に切り換わると、走行制御手段77に対する牽制作用を解除し、走行制御手段77によって走行変速装置7の油圧モータ7Mが標準速位置及び低速位置から高速位置に切り換え操作されることを許容する。
【0061】
変速牽制手段77は、入りスイッチ65に連係されており、この入りスイッチ65からの情報を基に、刈取クラッチレバー26が入り位置[ON]に操作されているか否かを判断する。
【0062】
変速牽制手段77は、株元センサ78及び刈取回転センサ79に連係されており、株元センサ78及び刈取回転センサ79による検出情報を基に、刈取部2が作業中であるか否かを判断する。すなわち、変速牽制手段77は、株元センサ78と刈取回転センサ79とのいずれもが検出状態である場合、刈取部2が作業中であると判断し、株元センサ78と刈取回転センサ79のいずれもが非検出状態である場合、及び株元センサ78と刈取回転センサ79との少なくとも一方が非検出状態である場合、刈取部2が作業中ではないと判断する。
【0063】
変速牽制手段77は、連結高さセンサ61に連係されており、連結高さセンサ61による検出情報と連結高さ設定手段76による設定連結高さとを基に、刈取部2が設定連結高さ以下の連結高さに位置しているか否かを判断する。
【0064】
図14は、走行制御手段74と変速牽制手段77とによる移動制御を示すフロー図である。この図に示すように、走行制御手段74と変速牽制手段77とによる移動制御では、ステップ1に示すように、走行制御手段74は、走行変速スイッチ34による状態の切り換え指令があったか否かを判断する。ステップ1,2,3に示すように、走行制御手段74は、状態の切り換え指令があったと判断した場合、刈取クラッチ17を切り状態に切り換え操作し、刈取変速装置18を低速位置に切り換え操作する。
【0065】
ステップ4,5,6に示すように、変速牽制手段77は、刈取クラッチレバー26が入り位置[ON]に操作されていると判断し、かつ刈取部2が作業中であると判断した場合、刈取部2の連結高さ如何にかかわらず、牽制作用状態に切り換わって走行制御手段74に対して牽制作用する。
【0066】
ステップ4,5において、変速牽制手段77は、刈取クラッチレバー26が入り位置[ON]に操作されていると判断した場合でも、刈取部2が作業中でないと判断した場合、ステップ11に示すように、刈取部2の連結高さが設定連結高さ以下であるか否かを判断する。ステップ11,6に示すように、変速牽制手段77は、刈取部2の連結高さが設定転結高さ以下であると判断した場合、牽制作用状態に切り換わって走行制御手段74に牽制作用する。
【0067】
変速牽制手段77が牽制作用状態に切り換わった場合について次に説明する。
ステップ7,8に示すように、走行制御手段74は、走行変速センサ38による検出情報を基に走行変速装置7の油圧モータ7Mが標準速位置と低速位置とのいずれになっていかを判断する。ステップ7,9に示すように、走行制御手段74は、走行変速装置7の油圧モータ7Mが標準速位置になっていると判断した場合、油圧モータ7Mを標準速位置に維持操作し、変速牽制手段77は、走行変速装置7を標準速位置から高速位置に増速操作させない。ステップ8,10に示すように、走行制御手段74は、走行変速装置7の油圧モータ7Mが低速位置になっていると判断した場合、油圧モータ7Mを低速位置に維持操作し、変速牽制手段77は、走行変速装置7を低速位置から高速位置に増速操作させない。
【0068】
変速牽制手段77は、ステップ4において刈取クラッチレバー26が入り位置[ON]に操作されていないと判断した場合、及びステップ11において刈取部2の連結高さが設定連結高さ以下でないと判断した場合、ステップ12に示すように、牽制解除状態に切り換わって走行制御手段74に対する牽制作用を解除する。
【0069】
変速形成手段77が牽制解除状態に切り換わった場合、ステップ13に示すように、走行制御手段74は、走行変速装置7の油圧モータ7Mを高速位置に切り換え操作し、走行変速装置7を標準速位置あるいは低速位置から高速位置に増速操作する。
【0070】
連係手段71は、オートクラッチ手段70に連係され、かつ制御装置31を介して制御弁58に連係されていることよって刈取部2と走行変速装置7とを連係させており、刈取部2の下降操作に連係させて走行変速装置7の変速操作を行う。連係手段71は、オートクラッチ手段70に連係され、かつ制御装置31を介して刈取クラッチ17の操作モータ36に連係されていることよって刈取部2と刈取クラッチ17とを連係させており、刈取部2の下降操作に連係させて刈取クラッチ17の切り換え操作を行う。
【0071】
図15は、連係手段71による連係制御を示すフロー図である。この図に示すように、連係手段71は、ステップ1に示す如く下げスイッチ68による指令の有無を基に、刈取部2を下降作業高さに下げる操作があったか否かを判断する。ステップ2に示すように、連係手段71は、オートクラッチ手段70からの情報を基に、オートクラッチ手段70がオンとオフのいずれであるかを判断する。
【0072】
オートクラッチ手段70がオンである場合について説明する。
ステップ2,3,4に示すように、連係手段71は、オートクラッチ手段70がオンであると判断した場合、昇降シリンダ27を下げ側に操作して刈取部2を下降操作し、連結高さセンサ61による検出情報と連結高さ設定手段76による設定連結高さとを基に、刈取部2の連結高さが設定連結高さ以下であるか否かを判断する。
ステップ4,5,6に示すように、連係手段71は、刈取部2の連結高さが設定連結高さ以下であると判断し、かつ走行変速センサ38による検出情報を基に走行変速装置7の油圧モータ7Mが高速位置であると判断した場合、走行変速装置7の油圧モータ7Mを標準速位置する切り換え操作する。
ステップ7,8に示すように、連係手段71は、走行変速センサ38による検出情報を基に走行変速装置7の油圧モータ7Mが標準速位置に切り換わったか否かを判断し、油圧モータ7Mが標準速位置に切り換わったと判断した場合、刈取クラッチ17を入り状態に切り換え操作する。すなわち、連係手段71は、刈取クラッチ17が入り状態に切り換わるに先立って走行変速装置7が高速位置から標準速位置に減速するようにして走行変速装置7の減速、及び刈取クラッチ17の切り換えを行なう。
【0073】
次に、ステップ2においてオートクラッチ手段70がオンでないと判断した場合(オートクラッチ手段70がオフである場合)について説明する。
ステップ2,9,10に示すように、連係手段71は、オートクラッチ手段70がオンでないと判断した場合、昇降シリンダ27を下げ側に操作して刈取部2を下降操作し、刈取部2の連結高さが設定連結高さ以下であるか否かを判断する。
ステップ10,11に示すように、連係手段71は、刈取部2の連結高さが設定連結高さ以下であると判断した場合、刈取クラッチセンサ62による検出情報を基に刈取クラッチ2が入り状態であるか否かを判断する。
ステップ11,12,13に示すように、連係手段71は、刈取クラッチ17が入り状態であると判断し、かつ走行変速センサ38による検出情報を基に走行変速装置7の油圧モータ7Mが高速位置にあると判断した場合、走行変速装置7の油圧モータ7Mを標準速位置に切り換え操作して走行変速装置7を高速位置から標準速位置に減速操作する。
ステップ10,11において刈取部2の連結高さが設定連結高さ以下であると判断した場合でも、刈取クラッチ17が入り状態ではないと判断した場合(刈取クラッチ17が切り状態である場合)、ステップ14,15に示すように、連係手段71は、走行変速装置7の油圧モータ7Mが高速位置にあっても、油圧モータ7Mを高速位置に維持操作して走行変速装置7を減速させないで高速位置に維持する。
【0074】
つまり、図16に示す作業形態を採用して収穫作業を行うに当たり、走行変速スイッチ34あるいは刈取変速スイッチ35を操作する。すると、走行制御手段74によって刈取クラッチ17が入り状態に切り換え操作され、走行制御手段74によって刈取変速装置18が低速位置あるいは高速位置に切り換え操作されて刈取部2を駆動することができる。さらに、走行制御手段74によって走行変速装置7の油圧モータ7Mが標準速位置あるいは低速位置に切り換えられて走行装置1が標準速度あるいは低速度で駆動され、倒伏が無いとか少ない植立穀稈の刈取りに適切な標準速度、あるいは倒伏が激しい植立穀稈の刈取りに適切な低速度で作業走行を行うことができる。
【0075】
未刈り地81の一端側及び他端側での作業対象列に対する作業走行を終えて移動走行地82に至ると、オートスイッチ30をオン状態[ON]に操作し、刈取クラッチレバー26を入り位置[ON]に操作している(オートクラッチ手段70がオンになっている)場合、昇降レバー29を上げ位置[U]に操作する。すると、オートクラッチ手段70によって刈取部2が上昇操作されるとともに刈取クラッチ17が切り状態に切り換えられ、刈取部2を上昇非作業高さにするとともに停止させながら移動走行を行なうことができる。
【0076】
このとき、走行変速スイッチ34を操作する。刈取部2が作業中でなく、かつ刈取部2が設定連結高さよりも高い連結高さになっておれば、変速牽制手段77が牽制解除状態に切り換わっていて走行制御手段74によって走行変速装置7の油圧モータ7Mが高速位置に切り換え操作され、高速位置になった走行変速装置7によって走行装置1が駆動されて移動走行を作業走行よりも高速で行なうことができる。
【0077】
しかし、刈取部2が作業中である場合、及び刈取部2が作業中でなくても刈取部2が設定連結高さ以下の低い連結高さになっている場合、走行変速スイッチ34を操作しても、変速牽制手段77が牽制作用状態になっていて走行制御手段74によって走行変速装置7の油圧モータ7Mが低速位置あるいは標準位置に維持操作され、作業走行よりも高速で走行できない。
【0078】
作業走行を終えて移動走行地82に至ると、オートスイッチ30をオフ状態[OFF]に操作している(オートクラッチ手段70がオフになっている)場合、昇降レバー29を上げ位置[U]に操作し、走行変速スイッチ34を操作する。すると、刈取部昇降手段72によって刈取部2が上昇操作され、走行制御手段74によって刈取クラッチ17が切り状態に切り換え操作され、刈取部2を上昇非作業高さにするとともに停止させながら移動走行を行なうことができる。
【0079】
このとき、刈取クラッチレバー26を切り位置[OFF]に操作している場合、及び刈取クラッチレバー26を入り位置[ON]に操作していても、刈取部2が作業中でなく、かつ刈取部2が設定連結高さよりも高い連結高さになっている場合、変速牽制手段77が牽制解除状態に切り換わっており、走行制御手段74によって走行変速装置7の油圧モータ7Mが高速位置に切り換え操作されて高速位置になった走行変速装置7によって走行装置1が駆動され、移動走行を作業走行よりも高速で行なうことができる。
【0080】
しかし、刈取クラッチレバー26が入り位置[ON]にあり、かつ刈取部2が作業中である場合、刈取クラッチレバー26が入り位置[ON]にあり、刈取部2が作業中でなくても刈取部2が設定連結高さよりも低い連結高さになっている場合、走行変速スイッチ34を操作しても、変速牽制手段77が牽制作用状態になっていて走行制御手段74によって走行変速装置7の油圧モータ7Mが低速位置あるいは標準位置に維持操作され、作業走行よりも高速で走行できない。
【0081】
移動走行地82での移動走行を終えて未刈り地81の一端側及び他端側の作業対象列に対する作業走行に入る際、オートスイッチ30をオン状態[ON]に操作し、刈取クラッチレバー26を入り位置[ON]に操作している(オートクラッチ手段70がオンになっている)場合、昇降レバー29を下げ位置[D]に操作する。すると、オートクラッチ手段70によって刈取部2が下降操作されるとともに刈取クラッチ17が入り状態に切り換えられ、刈取部2が下降作業高さになるとともに駆動されて作業走行を行なうことができる。
【0082】
このとき、刈取部2が下降作業高さになると、連係手段71によって走行変速装置7の油圧モータ7Mが高速位置から標準速位置に切り換え操作されて走行変速装置7が高速位置から標準速位置に減速される。さらに、連係手段71が刈取クラッチ17の入り状態への切り換わりに先立って油圧モータ7Mを標準速位置に切り換え操作することにより、油圧モータ7Mが標準速位置に切り換わってから刈取クラッチ17が入り状態に切り換わり、走行変速装置7の油圧モータ7Mが高速位置にあって刈取部2が高速駆動される事態の発生を回避しながら走行装置1を高速から標準速度に減速して駆動でき、刈取部2による刈取りに適切な標準速度で作業走行を行うことができる。
【0083】
移動走行を終えて作業走行に入る際、オートスイッチ30をオフ状態[OFF]に操作している(オートクラッチ手段70がオフになっている)場合、オートスイッチ30をオン状態[ON]に操作するとともに刈取クラッチレバー26を入り位置[ON]に操作し、かつ昇降レバー29を下げ位置[D]に操作するか、あるいは昇降レバー29を下げ位置[D]に操作するとともに走行変速スイッチ34を操作する。
【0084】
オートスイッチ30をオン状態[ON]に操作するとともに刈取クラッチレバー26を入り位置[ON]に操作し、昇降レバー29を下げ位置[D]に操作した場合、オートクラッチ手段70によって刈取部2が下降操作されるとともに刈取クラッチ17が入り状態に切り換えられ、刈取部2が下降作業高さになるとともに駆動されて作業走行を行なうことができる。
【0085】
このとき、刈取部2が下降作業高さなると、連係手段71によって走行変速装置7の油圧モータ7Mが高速位置から標準速位置に切り換え操作されて走行変速装置7が高速位置から標準速位置に減速される。さらに、連係手段71が刈取クラッチ17の入り状態への切り換わりに先立って油圧モータ7Mを標準速位置に切り換え操作することにより、油圧モータ7Mが標準速位置に切り換わってから刈取クラッチ17が入り状態に切り換わり、走行変速装置7の油圧モータ7Mが高速位置にあって刈取部2が高速駆動される事態の発生を回避しながら走行装置1を高速から標準速度に減速して駆動でき、刈取部2による刈取りに適切な標準速度で作業走行を行うことができる。
【0086】
昇降レバー29を下げ位置[D]に操作し、走行変速スイッチ34を操作した場合、刈取部昇降手段72によって刈取部2が下降操作され、走行制御手段74によって刈取クラッチ17が入り状態に切り換え操作され、走行制御手段74によって刈取変速装置18が低速位置に操作され、刈取部2が下降作業高さになるとともに駆動されて作業走行を行なうことができる。
【0087】
このとき、刈取部2が下降作業高さなると、連係手段71によって走行変速装置7の油圧モータ7Mが高速位置から標準速位置に切り換え操作されて走行変速装置7が高速位置から標準速位置に減速される。さらに、連係手段71が刈取クラッチ17の入り状態への切り換わりに先立って油圧モータ7Mを標準速位置に切り換え操作することにより、油圧モータ7Mが標準速位置に切り換わってから刈取クラッチ17が入り状態に切り換わり、走行変速装置7の油圧モータ7Mが高速位置にあって刈取部2が高速駆動される事態の発生を回避しながら走行装置1を高速から標準速度に減速して駆動でき、刈取部2による刈取りに適切な標準速度で作業走行を行うことができる。
【0088】
路上を移動走行する場合、刈取部2を設定連結高さ以下の比較的低い連結高さにして刈取収穫機の全体としての重心高さが低くなるようにしても、かつ作業走行より高速で走行しても、走行地面の凹凸がないとかわずかであることにより、刈取部2に大きな振動が発生しにくくて刈取部2の接地トラブルが発生しにくい。このような場合、刈取クラッチ17を切り状態にしておけば、走行変速装置7の油圧モータ7Mが高速位置に操作されている状態で刈取部2を設定連結高さよりも低い連結高さにしても、連係手段71による油圧モータ7Mの標準速位置への切り換え操作が行なわれず、油圧モータ7Mが高速位置に維持されて高速位置に維持された走行変速装置7によって走行装置1が駆動され、移動走行を作業走行よりも高速で行なうことができる。
【0089】
〔別実施形態〕
上記した実施形態の如く移動走行状態、標準刈取状態、低速刈取状態を現出するのに、走行変速装置7の油圧モータ7Mの変速操作によって走行変速装置1を変速する構成に替え、走行変速装置7の油圧ポンプ7Pの変速操作によって走行変速装置1を変速する構成、あるいは走行変速装置7とは別に副変速用の走行変速装置を設け、この副変速用の走行変速装置を変速操作する構成を採用して実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、稲、麦などの穀稈を収穫対象とする刈取収穫機の他、い草などの各種の作物を収穫対象とする刈取収穫機にも利用できる。
【符号の説明】
【0091】
1 走行装置
2 刈取部
7 走行変速装置
17 刈取クラッチ
61 連結高さセンサ
70 オートクラッチ手段
77 変速牽制手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体に刈取部が上昇非作業高さと下降作業高さとに昇降操作自在に連結され、前記走行機体の走行装置を変速駆動する走行変速装置を備えた刈取収穫機であって、
前記刈取部の走行機体に対する連結高さを検出する連結高さセンサを備え、
前記走行変速装置が設定低速位置から増速操作されることを牽制する牽制作用状態と、前記走行変速装置が設定低速位置から増速操作されることを許容する牽制解除状態とに切り換え自在な変速牽制手段を備え、
前記刈取部が設定連結高さより高い連結高さに位置する状態において前記変速牽制手段が牽制解除状態に切り換わり、前記刈取部が前記設定連結高さ以下に位置する状態において前記変速牽制手段が牽制作用状態に切り換わるように、前記変速牽制手段と前記連結高さセンサとを連係させてある刈取収穫機。
【請求項2】
前記刈取部に対する伝動を入り切りする刈取クラッチを備え、
前記刈取部が前記設定連結高さより高い連結高さに上昇させる操作によって前記刈取クラッチが切り状態に切換え操作されるように、前記刈取部と前記刈取クラッチとを連係させたオートクラッチ手段を備えている請求項1記載の刈取収穫機。
【請求項1】
走行機体に刈取部が上昇非作業高さと下降作業高さとに昇降操作自在に連結され、前記走行機体の走行装置を変速駆動する走行変速装置を備えた刈取収穫機であって、
前記刈取部の走行機体に対する連結高さを検出する連結高さセンサを備え、
前記走行変速装置が設定低速位置から増速操作されることを牽制する牽制作用状態と、前記走行変速装置が設定低速位置から増速操作されることを許容する牽制解除状態とに切り換え自在な変速牽制手段を備え、
前記刈取部が設定連結高さより高い連結高さに位置する状態において前記変速牽制手段が牽制解除状態に切り換わり、前記刈取部が前記設定連結高さ以下に位置する状態において前記変速牽制手段が牽制作用状態に切り換わるように、前記変速牽制手段と前記連結高さセンサとを連係させてある刈取収穫機。
【請求項2】
前記刈取部に対する伝動を入り切りする刈取クラッチを備え、
前記刈取部が前記設定連結高さより高い連結高さに上昇させる操作によって前記刈取クラッチが切り状態に切換え操作されるように、前記刈取部と前記刈取クラッチとを連係させたオートクラッチ手段を備えている請求項1記載の刈取収穫機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−172213(P2010−172213A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15653(P2009−15653)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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