説明

刈取装置

【課題】コンバインの製造コストを低減しつつ引起ラグの作用範囲を拡大して、全面刈の際の刈取性能を向上すると共に倒伏適応性能を向上する刈取装置を提供する。
【解決手段】駆動スプロケット(14)が上部寄りに軸支されると共に従動輪体(18)が下部寄りに軸支される引起ケース(12)が複数有り、引起ラグ(17)を備えたラグチェン(16)を該駆動スプロケット(14)及び従動輪体(18)に巻き掛ける。何れか一つの引起ケース(12)の従動輪体(18)の直径が、他の引起ケース(12)の従動輪体(18)の直径より大径とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバイン等に備えられる刈取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンバインは、走行装置を備えた機台の左右一側に脱穀装置を設け、脱穀装置の横側に穀粒貯留装置を設け、穀粒貯留装置の前側に操縦部を設け、前端部に植立穀稈を分草する分草体を設け、操縦部および脱穀装置の前側で分草体の後側に穀稈を引起す刈取装置を設け、刈取装置の後側に穀稈を刈り取る刈刃と刈取後の穀稈を後方の合流部まで搬送する搬送装置を設けたものがあるが、特に刈取装置は、作物を引き起こす引起装置の外枠となる引起ケースの上部に出力軸と同軸に駆動スプロケットを軸支して設け、引起ケースの下部に従動輪体を軸支し、前記駆動スプロケットと従動輪体との間に多数の引起ラグを備えたラグチェンを巻き掛けて構成されている。
【0003】
穀稈の刈取作業に際しての圃場や株等の条件としては、種々のものが考えられる。例えば、株抜けしやすい圃場での作業や稈切れしやすい作物を収穫する場合だけでなく、株が完全に倒伏している状態などの場合が考えられる。また、中割等の全面刈の際には引起装置の引起ラグの軌跡の幅を広げる必要もある。これに対して、引起装置の引起ラグの軌跡の幅を広げ、引き起し性能を向上したコンバインの刈取装置が特許文献1に開示されている。
【0004】
この特許文献1では、複数の引起装置が並んで配置されて3条刈のコンバインの刈取装置とされているが、既刈地側に対応する右端の引起装置の引起ラグの作用範囲を拡大するために、2つの従動輪体である下部従動輪及びチェン張出し部材を設けた構造とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−47318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された3条刈のコンバインの刈取装置の引起装置では、下部従動輪の他にローラであるチェン張出し部材が回転部材として必要であることから、構造が複雑になりコンバインの製造コストが増大する欠点を有していた。
そこで、本発明の目的は、コンバインの製造コストを低減しつつ引起ラグの作用範囲を拡大して、全面刈の際の刈取性能を向上すると共に倒伏適応性能を向上する刈取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
請求項1に係る発明は、上部の駆動スプロケット(14)と下部の従動輪体(18)との間に多数の引起ラグ(17)を備えたラグチェン(16)を巻き掛けて引起装置(10)を構成し、
該引起装置(10)を左右方向に複数並設し、
該複数の引起装置(10)のうちの何れか一つの引起装置の従動輪体(18)の直径を、他の引起装置の従動輪体(18)の直径よりも大径に設定したことを特徴とする刈取装置である。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記各引起ケース(12)の下部前側に分草体(9)を夫々備え、
前記大径の従動輪体(18)を有する第1引起装置(10A)に備えた分草体(9)と該第1引起装置(10A)に隣接する第2引起装置(10B)に備えた分草体(9)との左右間隔を、他の分草体(9)の左右間隔よりも広く設定したことを特徴とする請求項1記載の刈取装置である。
【0009】
請求項3に係る発明は、前記引起装置(10)を左右方向に3基並べて3条刈の刈取装置を構成し、
前記大径の従動輪体(18)を有する第1引起装置(10A)を右端に配置し、
他の2つの引起装置(10)の引起ラグ(17)の突出方向を対向させたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の刈取装置である。
【0010】
請求項4に係る発明は、相互に有効直径の異なる2つの駆動スプロケット(61、62)を前記引起装置(10)の上部にそれぞれ軸支し、
駆動源からの駆動力を前記2つの駆動スプロケット(61、62)の何れか一方に選択的に伝動する切換機構(60,60A)を設けたことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の刈取装置である。
【0011】
請求項5に係る発明は、前記従動輪体(18)の支持軸(18A)にテンションアーム(76)の基部側を上下回動自在に軸支し、該テンションアーム(76)の先端側に前記ラグチェン(16)を緊張させるテンションローラ(77)を軸支したことを特徴とする請求項4記載の刈取装置である。
【0012】
請求項6に係る発明は、前記切換機構(60)を、前記2つの駆動スプロケット(61、62)を夫々備えた引起伝動軸(61A、62A)に2つの中間軸(65、66)を直交姿勢で連動させ、該中間軸(65,66)に従動平歯車(65B、66B)を夫々取付け、
駆動源に繋がる伝動平歯車(69B)を何れか一方の従動平歯車(65B、66B)に択一的に噛み合わせる構成としたことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の刈取装置である。
【0013】
請求項7に係る発明は、前記切換機構(60A)を、前記2つの駆動スプロケット(61、62)を夫々備えた引起伝動軸(61A、62A)に2つの中間軸(65、66)を直交姿勢で連動させ、該中間軸(65,66)と駆動源に繋がる駆動中間軸(69)との間に爪クラッチ(73、74)を設ける構成としたことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の刈取装置である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、例えば3条刈のコンバインの場合には、右端の引起装置の下部に配置された従動輪体(18)の直径を、他の引起装置の従動輪体(18)の直径より大きくすることで、右端の引起装置の引起ラグ(17)の作用範囲を左右方向に拡大できる。
【0015】
このため、従動輪体(18)を他の引起装置のものと相違するものに換えるだけでよく、刈取装置の製造コストを低減しつつ引起ラグ(17)の作用範囲を拡大して倒伏適応性能を向上できる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、引起ラグ(17)の作用範囲が左右方向に拡大されることで、隣り合う分草体(9)の間隔を広く設定しても、この間隔部に導入される穀稈を円滑に引き起こすことができるので、例えばこの間隔部に2条の穀稈を導入して刈り取ることもでき、刈取作業の能率が向上する。
【0017】
請求項3記載の発明によると、請求項1及び2に記載の発明の効果に加えて、大径の従動輪体(18)を有した第1引起装置(10A)を右端に配置したことで、通常は3条の穀稈列を刈り取る刈取装置でありながら、4条の穀稈列も刈り取ることができ、刈取作業の能率を向上できる。
【0018】
請求項4記載の発明によると、請求項1〜3記載の発明の効果に加えて、有効直径の異なる2つの駆動スプロケット(61、62)を択一的に駆動することにより、引起ラグ(17)の引き起し速度を変更することで、倒伏適応性能等の作業適応性能を一層向上できる。
【0019】
請求項5記載の発明によると、請求項4記載の発明の効果に加えて、通常上側に配置されるテンションローラ(77)を下部側に配置したことで、2つの駆動スプロケット(61、62)を引起装置(10)の上部に配置できる。
【0020】
請求項6記載の発明によると、請求項4、5記載の発明の効果に加えて、伝動平歯車(69B)を何れか一方の従動平歯車(65B、66B)へ択一的に噛み合わせることで、引起ラグ(17)の引き起し速度を変速できる。
【0021】
請求項7記載の発明によると、請求項4、5記載の発明の効果に加えて、爪クラッチ(73、74)の噛み合いを切換えることでも、引起ラグ(17)の引き起し速度を変速できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態に係るコンバインの前側寄りの側面図である。
【図2】第1実施形態に係るコンバインの前側寄りの平面図である。
【図3】3つの引起装置の構造を概念的に表わす図である。
【図4】引起装置内の構造を表わす正面図である。
【図5】引起装置の要部横断面図である。
【図6】伝動軸ケースの周辺を表わす断面図である。
【図7】伝動軸ケースの周辺を表わす側面拡大断面図である。
【図8】伝動軸ケースの要部周辺を表わす拡大断面図である。
【図9】第1実施形態に係るコンバインの掻込スターホイル周辺の平面図である。
【図10】第1実施形態に係るコンバインの掻込スターホイル周辺の側面図である。
【図11】第2実施形態に係る引起装置の概念図である。
【図12】第2実施形態に係る切換機構を表わす動力伝達図である。
【図13】第3実施形態に係る切換機構を表わす動力伝達図である。
【図14】第4実施形態に係る駆動スプロケットの配置を表わす図である。
【図15】第5実施形態に係るコンバインの前側寄りの平面図である。
【図16】第5実施形態に係るコンバインの前側寄りの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
3条刈のコンバインを例示し本発明の実施形態について説明する。以下、操縦部1Cに着座する操縦者から見て右手側を「右側」、左手側を「左側」、上方側を「上方」、下方側を「下方」、コンバインの進行方向を「前側」と、後退方向を「後側」という。
【0024】
<第1実施形態>
図1〜図8は、本発明の第1実施形態を示している。図1に示すとおりコンバイン1のクローラ等による駆動装置1Bを下部に備えた機台1Aの前側に、下方に延出する後フレーム2の後端部が回動可能に取付けられている。この後フレーム2の中程の部分がコンバイン1の機台1Aから伸縮可能に突出する油圧シリンダ3により支持される。後フレーム2の前端部は、刈取底部に位置する伝動軸ケース4を介して、前側上方に夫々延出している3本の引起伝動筒5(図1において1本のみ示す)の下端側に、連結される。
【0025】
具体的には、図6に示すようにエンジンの回転動力は、刈取回動支持部20の伝動機構20Aに設けられた入力プーリ20Bに入力され、この入力回転は、ベベルギヤを介して後フレーム2内の第1伝達軸41内に伝達される。他方、図6〜図8に示すように伝動軸ケース4の中央部を円管状の中央ギヤケース31が構成し、該中央ギヤケース31の両端部には、円管状で相互にほぼ対称形状の端部ギヤケース32、33が夫々ボルト止められている。これにより、伝動軸ケース4は、3つのアルミニウム等のダイカスト製品とされる中央ギヤケース31及び端部ギヤケース32、33を横方向に連結させた構成である。
【0026】
該中央ギヤケース31の中央上部には、第1伝達軸41が内部に貫通している円管状の後フレーム2の下端が連結され、軸受35により軸支されている該第1伝達軸41の下端部には、ベベルギヤ46が固定される。該中央ギヤケース31内には、第2伝達軸42が伸びていると共に、該第2伝達軸42の中央部を軸支している軸受36を取付ける為の支持壁51が立設されていて、この支持壁51が中央ギヤケース31内を左右に区画している。この際、支持壁51からは円環状のリブ51Bが突出していて、軸受36がこのリブ51Bに嵌合しつつ支持壁51に押しつけられて、安定的に支持される。
尚、第2伝達軸42にはベベルギヤ42Aが取付けられ、該第1伝達軸41と対向して、ベベルギヤ6Aが取付けられた引起伝動軸6が配置されていて、該引起伝動軸6にもベベルギヤ46からベベルギヤ42Aを介して動力が伝達される。
【0027】
この他、第2伝達軸42の両端部はカップリング40を介して第3伝達軸43の一端に連結されていて、左右の端部ギヤケース32、33内まで第3伝達軸43が伸びている。左右の端部ギヤケース32、33内には、第3伝達軸43が各2つの軸受37により軸支されている。このことで、メンテナンスの際には、ボルト止めを解除し端部ギヤケース32、33を夫々中央ギヤケース31から取り外すが、同時にカップリング40の部分から第2伝達軸42と第3伝達軸43が外れてメンテナンスが容易となる。
【0028】
これら第3伝達軸43には、各2つのベベルギヤ48が固定されていて、この第3伝達軸43と直交する方向に延びる引起伝動軸6及び第4伝達軸44に取付けられたベベルギヤ49に該ベベルギヤ48が噛み合って、第3伝達軸43から引起伝動軸6及び第4伝達軸44に動力が伝達される。中央に位置する引起伝動軸6及び左右端の引起伝動軸6は、引起伝動筒5内を通って引起装置10A、10B、10Cの引起ケース12及び掻込装置等に繋がっていて、動力が引起ケース12及び掻込装置等に伝達される。さらに、内側の2本の第4伝達軸44により穀稈を刈り取る刈刃装置70に動力が伝達される。
【0029】
本実施形態では、粘度の低いオイルをベベルギヤ等の潤滑剤として用い、図7及び図8に示すように、中央ギヤケース31の上側であって後フレーム2の左隣部分には、開口部であるオイル注入口52が設けられ、この中央ギヤケース31の下側であって同じく後フレーム2の左隣部分には、同じく開口部であるドレン口53が設けられているが、通常はボルト55の締結により夫々塞がれている。これらと図7において直交する方向の中央ギヤケース31の部分であって同じく後フレーム2の左隣には、レベルゲージを有したチェック口54が取付けられていて、この部分から内部のオイル量の確認が可能となっている。
【0030】
尚、図7の矢印Aで示す部分が、刈刃装置70で刈り取られて掻込装置の掻込スターホイル81で送られる穀稈の搬送通路とされているが、最も近く配置されることになるオイル注入口52であっても、この矢印Aで示す部分の邪魔にならないような配置とされている。他方、支持壁51の底部寄りに円弧状の貫通穴51Aが穿設されていて、一箇所のオイル注入口52からのオイル注入により、軸受36を取付ける為の支持壁51が存在していても、オイルを左右の端部ギヤケース32、33の末端まで送り込んで潤滑性能を向上させる構成である。
【0031】
従って、図6〜図8に示す矢印B1のようにオイル注入口52から注入されると、中央ギヤケース31内だけでなく、支持壁51の底部寄りに存在する円弧状の貫通穴51Aを通って伝動軸ケース4内の隅々までオイルが行き渡る。また、伝動軸ケース4内からオイルを排出する場合には、矢印B2のようにドレン口53から排出出来る。
【0032】
グリースの充填による潤滑ではなく、グリースよりも粘度の低いオイルを伝動軸ケース4内に注入するだけでなく、油通しの為の円弧状の貫通穴51Aを設けたことで、オイルが左右の端部ギヤケース32、33の末端まで円滑に広がり、潤滑性能が向上する。これに伴い、分割されている伝達軸の連結部であるカップリング40の部分にも常にオイルが付着して潤滑効果が有ることから、伝動軸ケース4の寿命が延長する。
【0033】
以上より、本実施形態では、中央ギヤケース31の後フレーム2が連結される箇所に対して左側の上下分部とされる穀稈の搬送通路から遠方側に、これらオイル注入口52、ドレン口53、チェック口54を集中化して配置した。このことで、オイル注入及びオイル排出の容易化が図られただけでなく、図7の矢印Aで示す穀稈の搬送通路に邪魔にならない箇所に、これらオイル注入口52等を配置したことで、穀稈の搬送抵抗の増大も回避できる構成である。
【0034】
さらに、ベベルギヤ6A、42A、46の集中部にオイル注入口52を配置し、該ベベルギヤ6A、42A、46によるオイルのよごれを分散化できるだけでなく、粘度の低いオイルを潤滑油として用いたことにより、動力伝達に伴う騒音の消音が図られると共に、温度上昇による焼き付き防止が図られた。
【0035】
前記引起伝動筒5は、途中で屈曲して刈取装置に備えられた図2及び図3に示す引起装置10における各引起装置10A、10B、10Cの上部に上端側が連結される。本実施形態のコンバイン1では、図2及び図3に示すとおり右端側に第1引起装置10Aが配置され、中央部に第2引起装置10Bが配置され、左端側に第3引起装置10Cが配置されることで、引起装置10A、10B、10Cが左右方向に3基並べて3条刈とされる。また、引起伝動筒5の内部に前述のように引起伝動軸6が配置され、各引起装置10A、10B、10Cの外枠とされる引起ケース12の上端側には駆動スプロケット14が夫々軸支されていて、図示しないベベルギヤを介して該駆動スプロケット14に引起伝動筒5内の引起伝動軸6が連結されて、動力が伝達されることで該駆動スプロケット14が回転する。
【0036】
ここで、3つの引起装置10A、10B、10Cの内の左端側の第3引起装置10Cを例として以下に具体的な構造を説明する。
まず、この第3引起装置10Cの引起ケース12は、図4及び図5に示すとおり前側に位置する前側ハーフ12Aと後側に位置する後側ハーフ12Bとで構成される。駆動スプロケット14の直下とされる引起ケース12の下部寄りの箇所には、従動輪体18が軸支される。該駆動スプロケット14の支持軸14A廻りに回動可能に、テンションアーム28が支持され、このテンションアーム28の先端側となる位置に、テンションスプロケット26の支持軸26Aが軸支される。
【0037】
さらに、図4及び図5に示すように、これら駆動スプロケット14、従動輪体18、テンションスプロケット26には、ラグチェン16が連続的に巻き掛けられて、このラグチェン16が、引起ケース12を構成する前側ハーフ12Aと後側ハーフ12Bとの間に位置している。この為、引起伝動軸6からの動力伝達により駆動スプロケット14が駆動回転されるのに伴い、これら従動輪体18、テンションスプロケット26により案内されつつ、ラグチェン16が回転する。
【0038】
他方、図5に示すように、引張スプリング29が、テンションスプロケット26のブラケット部26Bと後側ハーフ12Bの支持金具30との間に配置され、テンションスプロケット26がこの引張スプリング29により常時上方に付勢されつつ、テンションアーム28に支持される。従って、引張スプリング29によりラグチェン16の外周側である上側に向かってテンションスプロケット26が付勢されることで、ラグチェン16が緩まない結果、確実に動力が駆動スプロケット14からラグチェン16に伝達される。
【0039】
また、このラグチェン16の外周側に、作物を引き起すための多数の引起ラグ17が等間隔に取り付けられる。この為、駆動スプロケット14が回転するのに伴い、従動輪体18に案内されつつ、ラグチェン16が回転することで、多数の引起ラグ17が引起ケース12周りに回転する。
【0040】
この引起ラグ17の基端側には、図4の紙面に垂直な方向に突出する突出部17Bが設けられているが、この突出部17Bはこの引起ラグ17の延びる方向に対してほぼ垂直方向に長く形成される。この引起ラグ17の突出部17B内には、ラグチェン16に回動可能に連結される支点17Aが設けられていて、この支点17A廻りに各引起ラグ17が回動して折りたたみ可能となる。
【0041】
以上より、従動輪体18の外周面に突出部17Bが当接して引起ラグ17を起立させた状態を維持できる他、前側ハーフ12A及び後側ハーフ12Bの上昇行程に対応する部分に、図示しない溝部が形成され、この溝部に引起ラグ17の突出した突出部17Bが嵌り込んで、引起ラグ17が起立された状態が維持される。従って、引起ケース12の下部から上昇行程中において引起ラグ17が起立され、引起ケース12の上部から引起ラグ17を倒伏させることで、これら多数の引起ラグ17の内の必要なものが引起ケース12内から外側に突出する。
【0042】
尚、図3に示すように、中央の第2引起装置10Bと左端側の第3引起装置10Cとは、引起ケース12内から突出する引起ラグ17の突出方向が対向する構成とされるが、対称構造とされている。右端側の第1引起装置10Aも、他の2つの引起装置10B、10Cと同様の構造とされているものの、引起ケース12内から突出する引起ラグ17が中央の第2引起装置10Bに向いている。
【0043】
第1引起装置10Aの引起ケース12の下部寄りに配置された従動輪体18の直径D1が、他の2つの引起装置10B、10Cの引起ケース12の下部寄りに配置された従動輪体18の直径D2より大径に設定されている。例えば、第1引起装置10A側の従動輪体18の直径D1が、引起装置10B、10C側の従動輪体18の直径D2より50〜80%大径となっている場合には、巻付き角の相違にもよるが、ラグチェン16と対向する外周面がほぼ50〜80%大きくなる。
【0044】
この際、第1引起装置10Aの従動輪体18の支持軸18Aの位置が、他の2つの引起装置10B、10Cの従動輪体18の支持軸18Aより高い箇所に配置することで、第1引起装置10Aの従動輪体18により案内される際の引起ラグ17の先端の最下端を、他の2つの引起装置10B、10Cにおける従動輪体18により案内される際の引起ラグ17の先端の最下端と同一にできる。
【0045】
以上より、本実施形態では、中央の第2引起装置10Bと左端側の第3引起装置10Cとが左右対称の構造とされ、右端側の第1引起装置10Aと中央の第2引起装置10Bとがほぼ同一構造とされているが、従動輪体18の直径が他のものと相違する。この為、従動輪体18を他の引起装置のものと相違するものに換えるだけでよく、従動輪体18を除き、共用部品が多くなり同一部品により各引起装置10A、10B、10Cが形成されるので、従来技術と比較して、構造が単純化されてコンバイン1の製造コストが低減される。
【0046】
また、3条刈のコンバインの場合には、本実施形態のように右端の引起ケース12が一般に片側作用とされるが、第1引起装置10Aの引起ケース12の下部に配置された従動輪体18の直径D1を、他の2つの引起装置10B、10Cの従動輪体18の直径D2より大径とすることで、最右端の引起ケース12が片側作用とされたときでも、引起ラグ17の作用範囲を左右方向に拡大できる。
【0047】
他方、引起装置10A、10B、10Cの後側に、穀稈を刈り取る刈刃装置70と刈取後の穀稈を後方の合流部まで搬送する搬送装置7が設けられる他、図2に示す引起装置10A、10B、10Cの下部前側には、伝動軸ケース4から延びる分草パイプ8を介して、分草体9が夫々備えられるが、これら分草体9は、右端側の第1引起装置10Aの右側下方部と、中央の第2引起装置10Bの右側下方部と、左端側の第3引起装置10Cの左側下方部と、これら第2引起装置10Bと第3引起装置10Cとの間とに夫々配置される。
【0048】
本実施形態では、直径を大径とした従動輪体18を第1引起装置10Aに採用したことから、第1引起装置10Aの引起ケース12とこれに隣接する第2引起装置10Bの引起ケース12との間の分草体9相互間の間隔L1が、他の分草体9相互間の間隔L2より、広くされている。つまり、第1引起装置10Aの引起ラグ17の作用範囲が左右方向に拡大されることで、隣り合う分草体9の間隔を広く設定しても、この間隔部に導入される穀稈を円滑に引き起こすことができる。この為、右端側の第1引起装置10Aに配置された分草体9は、従動輪体18の直径を大径としたことで、引起性能が高まることから、引起ケース12に対して通常より右側に配置可能になっている。
【0049】
以上より、本実施形態によれば、各引起ケース12相互間の間隔を大きくしなくとも、
第1引起装置10Aの引起ケース12と第2引起装置10Bの引起ケース12との間の分草体9の間に2条の穀稈を導入して、図2に示すように第1引起装置10Aにより作物Kを2条刈り取ることもでき、刈取作業の能率が向上する。この結果、コンバイン1の製造コストを低減しつつ、第1引起装置10Aの引起ラグ17の作用範囲が左右方向に拡大して倒伏適応性能を向上できる。
これに合わせて、大径の従動輪体18を有した第1引起装置10Aを右端に配置したことで、通常は3条の穀稈列を刈り取る刈取装置でありながら、4条の穀稈列も刈り取ることができ、刈取作業の能率を向上できる。
【0050】
尚、第1引起装置10Aの従動輪体18の直径を単に大径としただけでなく、他の引起装置10B、10Cと比較して、駆動スプロケット14の歯数を多くてラグチェン16の回転速度を速くすると共に、引起ラグ17の本数を増やしたり長くしたりして、第1引起装置10Aの全面刈の際の刈取性能を向上することも考えられる。
【0051】
図2に示すように、刈取装置に備えられた3つの引起装置10A、10B、10Cの後下側には、掻込装置の一対の掻込スターホイル81が位置していて、図9に示す一方の掻込スターホイル81がブラケット83に軸支されたスターホイル82に噛み合い、これらが回転することで、引起装置10A、10B、10Cで引き起された作物の穀稈を刈刃装置70で切断するのと合わせて搬送装置7を介してコンバイン1の後方側の脱穀装置に搬送している。
【0052】
図10に示すように、掻込スターホイル81の上部には、図示しない根元搬送チェンのチェンレール91Aを有した駆動スプロケット91が配置されていて、該掻込スターホイル81と一体的に回転されるようになる。この駆動スプロケット91の上部には、掻込モータ85と該掻込モータ85に取付けられたウォーム85Aと該ウォーム85Aに噛み合うウォームホィール86が配置されている。
【0053】
ウォームホィール86は、駆動スプロケット91内を貫通する搬送縦軸87を介して下側のスターホイル82にまで連結されていて、掻込モータ85の回転により、駆動スプロケット91が回転されて図示しない根元搬送チェンが回転されることで図2に示すラグ81Aが穀稈の掻込動作をするだけでなく、スターホイル82も回転され、これに合わせて一方のスターホイル82に噛み合う掻込スターホイル81が回転される。つまり、本実施形態では、左右の根元搬送チェンの搬送縦軸87を掻込モータ85からの伝動で回転し、従来のように引起伝動筒5からの動力伝動を用いていない。
【0054】
これら掻込モータ85、ウォーム85A、ウォームホィール86は、支持部材92により一体的に支持されていて、該支持部材92の一端に形成した取付金具92Aを引起伝動筒5に上下動可能に嵌合させる一方、ネジ軸93Aが取付けられた上下動モータ93を引起伝動筒5に設置する。そして、該取付金具92Aにネジ軸93Aを螺合させて、上下動モータ93の回転により支持部材92ごと、掻込モータ85、ウォーム85A、ウォームホィール86を上下動可能として、掻込スターホイル81の高さ調整する構成である。
【0055】
以上より、本実施形態では、根元搬送チェンが巻き掛けられる各チェンレール91Aを上部に配置した駆動スプロケット91が掻込モータ85により駆動回転されることで、該掻込モータ85の増速により搬送量を増加した大量搬送に対応可能とされる。
【0056】
他方、穀稈がスターホイル82との間で詰まって掻込スターホイル81がロックした時には、ブレーキによる摩擦で掻込スターホイル81を停止するのでなく、上下動モータ93を回転して掻込スターホイル81を上昇してスターホイル82との噛み合いを外したり、掻込モータ85の安全装置により通電を切って該掻込モータ85の回転を停止したり、或いは該掻込モータ85を逆方向に回転することで、詰まり時の早期解除を行う。
【0057】
従って、従来技術では引起伝動筒5からウォームホィールによる伝動がされていて、穀稈が詰まってロックした時には、機械的にブレーキをかけて停止して安全を図っていたのに対して、本実施形態では、掻込モータ85により掻込スターホイル81を回転すると共に上下動モータ93により掻込スターホイル81の噛み合いを外すこと等で、安全装置の簡素化が図れる。さらには、掻き込みの際のトラブルが低減されることで、粗植対応性、倒伏稲対応性、短稈適応性の向上が図られるだけでなく、泥抜けの改善が可能ともなる。
【0058】
<第2実施形態>
図11及び図12は、本発明の第2実施形態を示している。
図11に示すとおり本実施形態の各引起装置10A、10B、10Cを構成する引起ケース12の上部寄りの箇所に、駆動スプロケットの引起伝動軸が軸支されているが、本実施形態では、相互に歯数の異なる2つの駆動スプロケット61、62を夫々備えた引起伝動軸61A、62Aが、第1引起装置10Aの引起ケース12の上部に対して相互に平行に軸支されていて、ラグチェン16が何れの駆動スプロケット61、62にも巻き掛けられている。尚、図示のように駆動スプロケット61の有効直径及び歯数よりも、駆動スプロケット62の有効直径及び歯数は大きい。
これに合わせて、テンションスプロケット26の替りに、本実施形態では、従動輪体18の支持軸18A廻りにテンションアーム76の基部側を上下回動自在に軸支し、このテンションアーム76の先端側にラグチェン16を緊張させるテンションローラ77の支持軸77Aが軸支される。
【0059】
このテンションローラ77の支持軸77Aには、引起ケース12の裏面に配置された圧縮スプリング78の一端が連結され、他端が引起ケース12の裏面側に同じく連結されている。このことから、テンションローラ77がこの圧縮スプリング78により常時左側に付勢されることで、テンションローラ77がラグチェン16の外周側に向かって付勢されて、該テンションローラ77がラグチェン16の張力を維持する。このことで、2つの駆動スプロケット61、62を引起装置10Aの上部に配置できる。
【0060】
また、エンジンからの駆動力が、2つの駆動スプロケット61、62の何れか一方に選択的に伝動する切換機構60で切換えられる。具体的には、図12に示すようにこれら2つの駆動スプロケット61、62が夫々取付けられる2つの引起伝動軸61A、62Aの基端側にベベルギヤ63、64が取付けられる。該引起伝動軸61A、62Aに対して夫々直交して伸びる2つの中間軸65、66に、このベベルギヤ63、64と噛み合うベベルギヤ65A、66Aが取付けられて、引起伝動軸61A、62Aに2つの中間軸65、66を直交姿勢で連動させ、この中間軸65、66の一端側に従動平歯車65B、66Bが夫々取付けられる。但し、これら2つの従動平歯車65B、66Bは相互に同一の外径を有していて、相互に並んで位置している。
【0061】
これに対して、ベベルギヤ6Bが先端側に取付けられた引起伝達軸6に、エンジンからの動力が伝達されるが、該引起伝達軸6に対して直交する方向に駆動中間軸69が回転可能に伸びている。該駆動中間軸69の一端側にもこのベベルギヤ6Bと噛み合うベベルギヤ69Aが取付けられ、この駆動中間軸69のスプライン状に形成された中央部に伝動平歯車69Bがスライド可能に取付けられている。該伝動平歯車69Bにはシフタ71の一端が連結されていて、このシフタ71を操作することで、駆動中間軸69に対してスライドして該伝動平歯車69Bが、2つの従動平歯車65B、66Bの何れか一方に択一的に噛み合わせるようになる。
【0062】
従って、引起伝達軸6からエンジンの回転が伝動平歯車69Bに伝達されるが、該伝動平歯車69Bを移動して、何れか一方の従動平歯車65B、66Bに該伝動平歯車69Bへ択一的に噛み合わせを切換え、中間軸65、66の何れか一方が回転するのに伴い、引起伝動軸61A、62Aの何れか一方の回転を介して、何れかの駆動スプロケット61、62が回転することで、引起ラグ17の引き起し速度を変速する構成である。
【0063】
この際、2つの駆動スプロケット61、62の歯数が相互に異なる為、上記構造の切換機構60で切換えることにより、ラグチェン16の回転速度が高速と低速との間で切換えられて変化することになる。具体的には、図12(A)に示すようにシフタ71を右側にずらすことで、各ベベルギヤ、平歯車等を介して大径の駆動スプロケット62が回転され、また、図12(B)に示すようにシフタ71を左側にずらすことで、各ベベルギヤ、平歯車等を介して小径の駆動スプロケット61が回転される。
【0064】
尚、各引起ケース12の裏に図示しない切換モータを設置し、この切換モータをコンバイン1の操縦席より操作することで、切換機構60を切換えることができるが、他の手段により切換えても良い。他方、シフタ71にワイヤ及びスプリング等を取付けて、シフタ71をワイヤを介して一方向に引張ると共に逆方向にスプリングで戻すことで、遠隔操作により集中的に切換え、または各引起ケース12の裏側で手動により切換えるようにしても良い。
【0065】
以上より、本実施形態のようなアーチレスの刈取装置において、切換機構60により有効直径の異なる2つの駆動スプロケット61、62を択一的に駆動して、引起ラグ17の引起速度を変速することで、倒伏適応性能が向上する。この結果、最適な速度で引き起しできるので、脱粒や飛散に対応できると共に、最適な引起速度とすることで、必要以上に高速で引起しすることがなく騒音や振動の対策ともなる。
【0066】
<第3実施形態>
図13は、本発明の第3実施形態を示している。
本実施形態の第1引起装置10Aを構成する引起ケース12の上部寄りの箇所に、図13に示す第2実施形態と同様に、相互に歯数の異なる2つの駆動スプロケット61、62を夫々備えた引起伝動軸61A、62Aが引起ケース12の上部に対して相互に平行に軸支されていて、ラグチェン16が何れの駆動スプロケット61、62にも巻き掛けられている。これに合わせて、従動輪体18の支持軸18Aに対してテンションアーム76の基部側を上下回動自在に軸支し、このテンションアーム76の先端側にラグチェン16を緊張させるテンションローラ77が軸支されている。
【0067】
また、エンジンからの駆動力が、2つの駆動スプロケット61、62の何れか一方に選択的に伝動する切換機構60Aで切換えられる。具体的には、第2実施形態と同様に、2つの引起伝動軸61A、62Aの基端側にベベルギヤ63、64が取付けられ、この引起伝動軸61A、62Aに対して夫々直交して伸びる2つの中間軸65、66の一端側にこのベベルギヤ63、64と噛み合うベベルギヤ65A、66Aが取付けられて、引起伝動軸61A、62Aに2つの中間軸65、66を直交姿勢で連動させている。本実施形態では、この中間軸65、66の他端側に爪クラッチ73、74の一端側が相互に対向して取付けられている。
【0068】
これに対して、これら2つの爪クラッチ73、74の一端側の間には、爪クラッチ73、74の他端側を両面に有した駆動クラッチ部材75が配置されている。該駆動クラッチ部材75には駆動中間軸69の一端が連結されていて、該駆動中間軸69は一方の爪クラッチ74の一端側を貫通して他端側にベベルギヤ69Aが固定されている。他方、エンジンからの動力が伝達される引起伝達軸6からの動力が伝達されるベベルギヤ6Bが、このベベルギヤ69Aに噛み合っている。
【0069】
以上より、駆動中間軸69を往復動することで、駆動クラッチ部材75が移動して、何れかの爪クラッチ73、74の一端側に駆動クラッチ部材75の噛み合わせが択一的に切換わり、第2実施形態と同様に、中間軸65、66の何れか一方が回転するのに伴い、何れか一方の引起伝動軸61A、62Aの回転を介して何れかの駆動スプロケット61、62が回転することで、引起ラグ17の引き起し速度を変速する構成である。
この際、2つの駆動スプロケット61、62の歯数が相互に異なる為、上記構造の切換機構60Aで切換えることにより、ラグチェン16の回転速度が高速と低速との間で切換えられて変化することになる。具体的には、図13(A)に示すように駆動クラッチ部材75に取付けられたシフタ71を右側にずらすことで、爪クラッチ74の噛み合い等を介して大径の駆動スプロケット62が回転され、また、図13(B)に示すようにシフタ71を左側にずらすことで、爪クラッチ73の噛み合い等を介して小径の駆動スプロケット61が回転される。
【0070】
尚、本実施形態でも、第2実施形態と同様に、各引起ケース12の裏に図示しない切換モータを設置し、この切換モータをコンバインの操縦席より操作することで、切換機構60Aの駆動中間軸69を往復動して切換えることができるが、他の手段により切換えても良い。他方、駆動中間軸69にワイヤ及びスプリング等を取付けて、駆動中間軸69をワイヤを介して一方向に引張ると共に逆方向にスプリングで戻すようにすることで、遠隔操作により集中的に切換え、または各引起ケース12の裏側で手動により切換えるようにしても良い。さらには、爪クラッチ以外の他のクラッチを用いたり、ノークラッチ構造を採用しても良い。
【0071】
<第4実施形態>
図14は、本発明の第4実施形態を示している。
本実施形態の第1引起装置10Aを構成する引起ケース12の上部寄りの箇所に、第2実施形態と同様に、相互に歯数の異なる2つの駆動スプロケット61、62の引起伝動軸61A、62Aが引起ケース12に対して相互に平行に軸支されていて、ラグチェン16が何れの駆動スプロケット61、62にも巻き掛けられている。
【0072】
本実施形態では、図14(A)に示すとおりラグチェン16の上昇側であって主伝動となる引起ラグ17の作用側に、大径の駆動スプロケット62が配置され、ラグチェン16の下降側であって副伝動となる引起ラグ17の非作用側に、小径の駆動スプロケット61が配置されている。この際、引起ケース12の上部に平行に配列したこれら異なる有効直径及び歯数の駆動スプロケット61、62が取付けられた引起伝動軸61A、62Aの高さ位置を同等とした。
以上より、相互に歯数が異なって有効直径が異なっていても、駆動スプロケット61、62へのラグチェン16の噛み合い量が大きくなって歯飛びが防止され、駆動力伝達の安定化が図れる。
【0073】
本実施形態の変形例として、図14(B)に示すとおりこの内の主伝動となる引起ラグ17の作用側の駆動を小径の駆動スプロケット61とし、副伝動となる引起ラグ17の作用側の駆動を大径の駆動スプロケット62とすることが考えられる。この際、引起ケース12の上部に平行に配列したこれら異なる有効直径及び歯数の駆動スプロケット61、62が取付けられた引起伝動軸61A、62Aの高さ位置を相違させて、駆動スプロケット61、62の上部におけるピッチ円の最高さを同等とした。
以上より、相互に歯数が異なって有効直径が異なっていても、前記と同様に駆動スプロケット61、62へのラグチェン16の噛み合い量が大きくなって歯飛びが防止され、駆動力伝達の安定化が図れる。
【0074】
<第5実施形態>
図15及び図16は、本発明の第5実施形態を示している。
図15及び図16に示すとおり本実施形態の4条刈の各引起装置10A、10B、10C、10Dを構成する引起ケース12の下部の箇所に存在する伝動軸ケース4から前方に左右の前フレームである分草パイプ8が伸びていて、この左右の分草パイプ8の前端部に分草体9が夫々配置されている。但し、本実施の形態では、左右の分草パイプ8を夫々途中で分割した構造とし、前側部分8Aと後側部分8Bとの間にコイルスプリング等の図示しない弾性部材を配置すると共に、伸縮を検出する図示しない接触センサを配置する。
【0075】
該接触センサは、コンバイン1の操縦部1Cに設置された無段変速レバーであるHSTレバー80に連動していて、例えば圃場の四隅に存在する畦Gに、左右端の分草体9の先端が接触した際、弾性部材が伸縮して分草体9が矢印のように逃げるようになるが、この弾性部材の伸縮を接触センサが感知する構成である。
【0076】
接触センサが伸縮を感知してオンとなると、HSTレバー80が中立に戻りコンバイン1が停車すると共に、掻込装置の掻き込み動作が一定時間自動的に行われる。以上より、コンバイン1が停車した場合でも、既に引き起された穀稈が掻き込み動作に伴いに掻き込まれることから、穀稈が無駄にならないと共に容易に再起動でき、周り刈の容易化及び作業能率の向上が図れるようになる。但し、接触センサの感度調節も有し、畦の硬さで接触センサの感度を調節出来るようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、2条〜7条刈りコンバインの刈取装置に利用できるものである。
【符号の説明】
【0078】
1 コンバイン
9 分草体
10A 第1引起装置
10B 第2引起装置
10C 第3引起装置
12 引起ケース
14 駆動スプロケット
16 ラグチェン
17 引起ラグ
18 従動輪体
18A 支持軸
60 切換機構
60A 切換機構
61、62 駆動スプロケット
61A、62A 引起伝動軸
65、66 中間軸
65B、66B 従動平歯車
69B 伝動平歯車
73、74 爪クラッチ
76 テンションアーム
77 テンションローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部の駆動スプロケット(14)と下部の従動輪体(18)との間に多数の引起ラグ(17)を備えたラグチェン(16)を巻き掛けて引起装置(10)を構成し、
該引起装置(10)を左右方向に複数並設し、
該複数の引起装置(10)のうちの何れか一つの引起装置の従動輪体(18)の直径を、他の引起装置の従動輪体(18)の直径よりも大径に設定したことを特徴とする刈取装置。
【請求項2】
前記各引起ケース(12)の下部前側に分草体(9)を夫々備え、
前記大径の従動輪体(18)を有する第1引起装置(10A)に備えた分草体(9)と該第1引起装置(10A)に隣接する第2引起装置(10B)に備えた分草体(9)との左右間隔を、他の分草体(9)の左右間隔よりも広く設定したことを特徴とする請求項1記載の刈取装置。
【請求項3】
前記引起装置(10)を左右方向に3基並べて3条刈の刈取装置を構成し、
前記大径の従動輪体(18)を有する第1引起装置(10A)を右端に配置し、
他の2つの引起装置(10)の引起ラグ(17)の突出方向を対向させたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の刈取装置。
【請求項4】
相互に有効直径の異なる2つの駆動スプロケット(61、62)を前記引起装置(10)の上部にそれぞれ軸支し、
駆動源からの駆動力を前記2つの駆動スプロケット(61、62)の何れか一方に選択的に伝動する切換機構(60,60A)を設けたことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の刈取装置。
【請求項5】
前記従動輪体(18)の支持軸(18A)にテンションアーム(76)の基部側を上下回動自在に軸支し、該テンションアーム(76)の先端側に前記ラグチェン(16)を緊張させるテンションローラ(77)を軸支したことを特徴とする請求項4記載の刈取装置。
【請求項6】
前記切換機構(60)を、前記2つの駆動スプロケット(61、62)を夫々備えた引起伝動軸(61A、62A)に2つの中間軸(65、66)を直交姿勢で連動させ、該中間軸(65,66)に従動平歯車(65B、66B)を夫々取付け、
駆動源に繋がる伝動平歯車(69B)を何れか一方の従動平歯車(65B、66B)に択一的に噛み合わせる構成としたことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の刈取装置。
【請求項7】
前記切換機構(60A)を、前記2つの駆動スプロケット(61、62)を夫々備えた引起伝動軸(61A、62A)に2つの中間軸(65、66)を直交姿勢で連動させ、該中間軸(65,66)と駆動源に繋がる駆動中間軸(69)との間に爪クラッチ(73、74)を設ける構成としたことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の刈取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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