説明

刈取装置

【課題】倒伏した穀稈を円滑に刈り取れるものとし、また、この穀稈の株元を視認し易くして、刈取作業の能率を高める。
【解決手段】多数の引起ラグ(21)を備えた複数の引起装置(20)を左右方向に並べて配置し、該複数の引起装置(20)のうちの左右方向端部に配置した第1引起装置(20R)の前側に、該第1引起装置(20R)に対して左右外側方に偏倚させて後上がり傾斜した分草体(18R)を配置し、該分草体(18R)の下端部の直後に移送装置(24)の移送作用域(I)の下端部を配置し、該移送装置(24)の移送作用域(I)の上端部を分草体(18R)の上端部よりも左右方向内側方へ偏倚させて第1引起装置(20R)の引起作用域(H)に近接させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、刈取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンバイン等の刈取装置は、多数の引起ラグを備えた複数の引起装置を左右方向に並べて配置し、各引起装置の前側に、後上がり傾斜した分草体を配置している。
ところが、コンバインで刈り取ろうとする穀稈が、未刈側(コンバインの進行方向で右側)に向けて倒伏している状態では、この穀稈を既刈側端部の分草体で掬い上げようとすると、この掬い上げようとする力が過大に作用して穀稈が株ごと抜けてしまう。これによって、以後の刈取搬送経路で詰まったり、脱穀装置の内部で過負荷を生じて、収穫作業を中断せざるをえなくなる。
【0003】
また、穀稈を既刈側端部の分草体で掬い上げる際に、この穀稈によって分草体が隠れ、操縦席からこの分草体を視認することが困難となる。このため、この既刈側端部の分草体を条間に沿わせて操向操作することが困難となる。
【0004】
これに対して、下記特許文献1には、分草体の後側にラグ式の掻込装置を設ける技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭48−102120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に開示された技術において、移送装置の移送作用域は、分草体の側縁部に沿って形成されている。従って、この特許文献1に開示された技術は、分草体による穀稈の分草を、移送装置の移送作用によって補助するものに止まる。即ち、この特許文献1には、この分草後の穀稈を分草体の上端部から遠ざけ、引起装置の引起作用域へ積極的に案内する技術思想は示唆されておらず、上述のような従来の課題を解決することはできない。
【0007】
この発明は、穀稈の分草および引起しを円滑に行なうと共に、分草作用中の分草体の視認性を高め、刈取作業の能率を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上述の課題を解決するために、次の技術的手段を講じる。
即ち、請求項1に記載の発明は、多数の引起ラグ(21)を備えた複数の引起装置(20)を左右方向に並べて配置し、該複数の引起装置(20)のうちの左右方向端部に配置した第1引起装置(20R)の前側に、該第1引起装置(20R)に対して左右外側方に偏倚させて後上がり傾斜した分草体(18R)を配置し、該分草体(18R)の下端部の直後に移送装置(24)の移送作用域(I)の下端部を配置し、該移送装置(24)の移送作用域(I)の上端部を分草体(18R)の上端部よりも左右方向内側方へ偏倚させて第1引起装置(20R)の引起作用域(H)に近接させたことを特徴とする刈取装置とした。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記移送装置(24)の非移送作用域(S)を正面視で分草体(18R)に重合させて配置すると共に、該移送装置(24)の移送作用域(I)の上端部を分草体(18R)の上端部よりも前方に偏倚させたことを特徴とする請求項1に記載の刈取装置とした。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記分草体(18R)の下端部の直後に配置した下部遊動輪体(25)と、分草体(18R)の上端部よりも左右方向内側方へ偏倚した上部遊動輪体(26)と、分草体(18R)の上端部の直後に配置した駆動輪体(27)とにわたってラグ付ベルト(28)を巻き掛けて前記移送装置(24)を構成したことを特徴とする請求項2記載の刈取装置とした。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記分草体(18R)の下部に、移送装置(24)の移送ラグ(28a)が分草体(18R)の後側から前側へ通過する切欠溝(40)を形成したことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の刈取装置とした。
【0012】
請求項5に記載の発明は、前記駆動輪体(27)を駆動する電動モータ(37)を、正面視で分草体(18R)の後側に重合させて設けたことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の刈取装置とした。
【0013】
請求項6に記載の発明は、前記分草体(18R)と移送装置(24)を一体化し、該分草体(18R)の基部を分草フレーム(17R)の先端部に左右回動自在に取り付け、該分草体(18R)を左右外側方へ回動させることで刈幅を1条分拡大できる構成としたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の刈取装置とした。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によると、倒伏した穀稈を分草体(18R)で掬い上げながら、この穀稈の株元を移送装置(24)によって引起装置(20)の引起作用域へ向けて積極的に案内することで、円滑に刈り取ることができる。また、移送装置(24)の移送作用域(I)の上端部が分草体(18R)の上端部よりも左右方向内側方へ偏倚しているため、移送装置(24)で移送される穀稈の株元が分草体(18R)の内側縁部から離れ、分草体(18R)を視認し易くなる。これによって、刈取作業の能率を高めることができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によると、上記請求項1に記載の発明の効果を奏するうえに、移送装置(24)の非移送作用側に穀稈が干渉することがなく、また、移送装置(24)によって穀稈の株元を分草体(18R)の分草作用面から浮かせて移送することで、分草体(18R)に対する穀稈の摺動抵抗が減少し、刈取作業の能率を更に高めることができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によると、上記請求項2に記載の発明の効果を奏するうえに、移送装置(24)を駆動する駆動輪体(27)に穀稈が干渉しにくく、移送装置(24)の駆動状態を円滑に維持することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明によると、上記請求項2または請求項3に記載の発明の効果を奏するうえに、分草体(18R)の先端で分離した穀稈を移送装置(24)の移送作用域(I)の始端部に円滑に引き継ぐことができる。
【0018】
請求項5に記載の発明によると、上記請求項3または請求項4に記載の発明の効果を奏するうえに、移送装置(24)を駆動する電動モータ(37)に穀稈が干渉しにくく、この電動モータ(37)の駆動状態を円滑に維持することができる。
【0019】
請求項6に記載の発明によると、上記請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の発明の効果を奏するうえに、分草体(18R)と移送装置(24)を一体で左右回動させることで刈取装置の刈幅を1条分拡大し、刈取作業の能率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】コンバインの正面図
【図2】刈取装置の要部の正面図
【図3】刈取装置の説明用平面図
【図4】刈取装置の要部の平面図
【図5】刈取装置の要部の側面図
【図6】移送装置の平面図
【図7】移送装置の側面図
【図8】刈取装置の説明用平面図
【図9】刈取装置の説明用平面図
【図10】ブロック回路図
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施例を図面により説明する。この実施例において「左」および「右」とは、コンバインの前進方向における向きを指す。
図1に示す3条刈のコンバインは、走行装置1を備えた機台2上に、脱穀装置3と穀粒貯留装置4を左右に並べて搭載し、穀粒貯留装置4の前側に操縦部5を設け、該操縦部5および脱穀装置3の前側に刈取装置6を昇降自在に設けて構成する。
【0022】
前記走行装置1は、機台2の前部に取り付けた走行ミッションケースから駆動される左右の駆動スプロケットに、左右のクローラを巻き掛けた構成である。
前記脱穀装置3は、扱胴を内装すると共に外側部にフィードチェンを備えた上側の扱室と、揺動選別棚を内装すると共に下部に唐箕と一番移送螺旋と二番移送螺旋をこの順に備えた下側の選別室とから構成する。
【0023】
前記穀粒貯留装置4は、脱穀装置3から一番揚穀筒7を介して投入される合成樹脂製のタンクであり、螺旋を内蔵した旋回、昇降、伸縮が自在な排出筒8を備える。
前記操縦部5は、操縦席9の前側に立設した操作ポストに操向レバー10とハンドル11を備え、操縦席9の左側に配置した操作パネルに主変速レバー12と副変速レバー13と刈取・脱穀クラッチレバー(図示省略)を備えて構成する。前記操向レバー10は、その前後傾倒操作によって油圧シリンダを伸縮させて刈取装置6を昇降調節し、その左右傾倒操作によって走行ミッションケース内の差動機構を作動して左右のクローラの駆動速度に差をもたせてコンバインを旋回させるものである。前記ハンドル11は、操向レバー10の直後の部位が高く、その左側の部位が低くなるように屈曲させ、右側端部に方向指示器14とバックミラー15を支持する。
【0024】
しかして、前記刈取装置6は、機台2の前部に立設した懸架台の上部に、後上がり傾斜した支持フレーム(図示省略)の上端部を上下回動自在に支持することで、機体に装着する。
【0025】
以下、上記刈取装置6の具体構成として、4条刈の刈取装置を例示して説明する。
図3に示すように、支持フレームの下端部に左右方向の伝動軸を内装した下部ギヤケース16の中央部を連結し、該下部ギヤケース16の左右両端部および中間部に、5本の分草フレーム17の基部をボルト締結によって取り付ける。該分草フレーム17の先端部には、機体正面視および平面視で逆三角形状の後上がり傾斜姿勢の面を有した分草体18を夫々取り付ける。また、分草フレーム17における分草体18の取り付け部の後側の部位から支持部材19を起立させ、この支持部材19によって引起装置20の下部を支持する。尚、引起装置20の上部は、該引起装置20に駆動力を入力する伝動筒(図示省略)によって支持する。この引起装置20は、上端部に配置した駆動スプロケットおよびテンションスプロケットと、下端部に配置した遊動ローラとに亘って無端チェンを巻き掛け、この無端チェンに多数の引起ラグ21を起伏回動自在に軸着し、外縁部に沿って案内レールを設けた構成である。この引起装置20は、右端(既刈側)の分草フレーム17Rと右端から2番目の分草フレーム17との間に配置した第1引起装置20Rと、右端から2番目の分草フレーム17と右端から3番目の分草フレーム17との間に配置した引起装置20と、右端から3番目の分草フレーム17と左端(未刈側)から2番目の分草フレーム17との間に配置した引起装置20と、左端(未刈側)から2番目の分草フレーム17と左端の分草フレーム17Lとの間に配置した引起装置20からなる。この右端の第1引起装置20Rと右端から2番目の引起装置20とは、右端から2番目の分草フレーム17の上方において各引起ラグ21の先端部が対向するように配置し、左端の引起装置20と左端から2番目の引起装置20とは、左端から2番目の分草フレーム17の上方において各引起ラグ21の先端部が対向するように配置する。この構成により、駆動スプロケットが駆動されると、無端チェンに軸着した多数の引起ラグ21が案内レールによって起立案内された状態で上昇し、この引起ラグ21の上昇軌跡によって引起作用域Hが形成される。
【0026】
また、引起装置20の後側には、この引起装置20によって引き起こされた穀稈を掻き込む掻込装置22を設け、この掻込装置22の掻込始端部下方には、掻き込まれた穀稈の株元を切断する刈刃装置(図示省略)を設け、掻込装置22の後側に続いて、刈取られた穀稈をフィードチェンへ向けて搬送する搬送装置23を設ける。
【0027】
そして、図2〜図5に示すように、第1引起装置20Rと右端の分草体18Rとの間に移送装置24を設ける。
即ち、図4、図5に示すように、右端の分草フレーム17Rの先端部に側面視コ字形状のステー29を固着する一方、先端に右端の分草体18Rを取り付けた支持フレーム30の基部には側面視コ字形状のステー31を固着し、これらステー29とステー31を対向させて上下方向の回動支点軸32で左右回動自在に軸着する。前記支持フレーム30の基部には、左右方向に延出したアーム部33を形成し、左側(内側)のアーム部33の端部に引張スプリング34の一端部を連結し、右側(外側)のアーム部33の端部には操作ワイヤ35の一端部を連結する。前記引張スプリング34の他端部は分草フレーム17Rの中間部に係止し、操作ワイヤ35の他端部は、操縦部5に配置した操作レバー(図示省略)に連繋する。この操作レバーの操作によって、右端の分草体18Rが左右回動する構成である。これにより、分草体18Rを左右外側方へ回動させることで刈幅を1条分拡大できる。
【0028】
そして、右端の分草体18Rの下端部(先端部)の直後の位置に下部遊動輪体25を配置し、分草体18Rの上端部よりも左側に所定距離だけ偏倚した位置に上部遊動輪体26を配置し、この上部遊動輪体26の右側方であって分草体18Rの上端部の直後の位置に駆動輪体27を配置し、これら下部遊動輪体25と上部遊動輪体26と駆動輪体27とに亘って、多数の移送ラグ28aを備えたラグ付ベルト28を巻き掛ける。尚、ラグ付ベルト28に代えて、多数の移送ラグを軸着した無端チェンとしてもよい。
【0029】
図6、図7に示すように、前記下部遊動輪体25と上部遊動輪体26と駆動輪体27は、逆L字形状のフレーム36の端部および屈折部に夫々軸支する。屈折部に軸支した駆動輪体27は、ベアリング38を介してフレーム36に軸受し、その回転軸39の端部に設けたギヤを電動モータ37の出力軸に設けたウオームギヤに噛み合わせる。電動モータ37はフレーム36に固定しており、フレーム36に対して移送装置24を構成する全ての部材が一体化されてユニットを形成し、このユニットを前記右端の分草体18Rの背面に着脱自在に取り付けることで支持フレーム30に支持させる。この状態において、分草体18Rの下端部の直後に移送装置24の移送作用域Iの下端部が配置され、移送装置24の移送作用域Iの上端部が分草体18Rの上端部よりも左右方向内側方へ偏倚するとともに分草体18Rの上端部よりも前方に偏倚して第1引起装置20Rの引起作用域Hに近接し、移送装置24の非移送作用域Sが正面視で分草体18Rに重合し、電動モータ37は正面視で分草体18Rの後側に重合する。また、平面視において、移送作用域Iの上端部と、引起作用域Hの下端部とが一部重合する。
【0030】
尚、分草体18Rの下部には、移送装置24の移送ラグ28aが分草体18Rの後側から前側へ通過する切欠溝40を形成する。また、図1、図2に示すように、分草体18Rの上端縁部に、フレーム36の一部が入り込む切欠溝41を形成し、フレーム36が分草体18Rの後側から前側に突出する構成とする。
【0031】
以上の構成により、倒伏した穀稈を分草体18Rで掬い上げながら、この穀稈の株元を移送装置24によって引起装置20の引起作用域Hへ向けて積極的に案内することで、円滑に刈り取ることができる。また、移送装置24の移送作用域の上端部が分草体18Rの上端部よりも左右方向内側方へ偏倚しているため、移送装置24で移送される穀稈の株元が分草体18Rの内側縁部から離れ、分草体18Rを視認し易くなる。これによって、刈取作業の能率を高めることができる。
【0032】
また、移送装置24の非移送作用域Sが正面視で分草体18Rに重合する位置に配置されているため、この移送装置24の非移送作用側に穀稈が干渉することがない。また、移送装置24の移送作用域Iの上端部が分草体18Rの上端部よりも前方に偏倚しているために、移送装置24によって穀稈の株元を分草体18Rの分草作用面(分草体18Rの前面)から浮かせて移送することができ、分草体18Rに対する穀稈の摺動抵抗が減少し、刈取作業の能率を更に高めることができる。
【0033】
また、分草体18Rの上端部の直後の位置に駆動輪体27を配置し、電動モータ37を正面視で分草体18Rの後側に重合させて配置することで、これら駆動輪体27および電動モータ37に穀稈が干渉しにくく、移送装置24の作動状態を円滑に維持することができる。
【0034】
また、分草体18Rの下部に、移送装置24の移送ラグ28aが分草体18Rの後側から前側へ通過する切欠溝40を形成することで、分草体18Rの先端で分離した穀稈を移送装置24の移送作用域Iの始端部に円滑に引き継ぐことができる。
【0035】
また、右端の分草体18Rと移送装置24を一体で左右回動させても、移送装置24の移送作用域Iの上端部から引起装置24の引起作用域Hの下端部への穀稈の引継ぎは良好に維持され、この右端の分草体18Rと移送装置24を一体で左右回動させることで刈取装置6の刈幅を1条分拡大し、刈取作業の能率を高めることができる。
【0036】
また、図8、図9に示すように、左側端部の分草体18と引起装置20の間にも移送装置24を配置するとよい。
即ち、左側端部の分草フレーム17の先端部に側面視コ字形状のステー29を固着する一方、先端に左端の分草体18を取り付けた支持フレーム30の基部には側面視コ字形状のステー31を固着し、これらステー29とステー31を対向させて上下方向の回動支点軸32で左右回動自在に軸着する。前記支持フレーム30の基部には、左右方向に延出したアーム部33を形成し、右側(内側)のアーム部33の端部に引張スプリング34の一端部を連結し、左側(外側)のアーム部33の端部には操作ワイヤ35の一端部を連結する。前記引張スプリング34の他端部は分草フレーム17Rの中間部に係止し、操作ワイヤ35の他端部は、操縦部5に配置した操作レバー(図示省略)に連繋する。この操作レバーの操作によって、左端の分草体18が左右回動する構成である。これにより、左端の分草体18を左右外側方へ回動させることで刈幅を1条分拡大でき、図8に示す状態から、図9に示すように上述の右端の分草体18Rと左端の分草体18とを夫々左右外側方へ回動させれば、刈幅を2条分拡大することができ、4条刈の刈取装置でありながら、6条分の穀稈を刈り取ることができるようになる。
【0037】
そして、左端の分草体18の下端部(先端部)の直後の位置に下部遊動輪体25を配置し、分草体18Rの上端部よりも右側に所定距離だけ偏倚した位置に上部遊動輪体26を配置し、この上部遊動輪体26の左側方であって分草体18の上端部の直後の位置に駆動輪体27を配置し、これら下部遊動輪体25と上部遊動輪体26と駆動輪体27とに亘って、多数の移送ラグ28aを備えたラグ付ベルト28を巻き掛ける。
【0038】
また、前記下部遊動輪体25と上部遊動輪体26と駆動輪体27は、逆L字形状のフレームの端部および屈折部に夫々軸支する。屈折部に軸支した駆動輪体27は、ベアリングを介してフレームに軸受し、その回転軸の端部に設けたギヤを電動モータの出力軸に設けたウオームギヤに噛み合わせる。電動モータはフレームに固定しており、フレームに対して移送装置24を構成する全ての部材が一体化されてユニットを形成し、このユニットを前記左端の分草体18の背面に着脱自在に取り付けることで支持フレームに支持させる。この状態において、左端の分草体18の下端部の直後に移送装置24の移送作用域Iの下端部が配置され、移送装置24の移送作用域Iの上端部が左端の分草体18の上端部よりも左右方向内側方へ偏倚するとともに左端の分草体18の上端部よりも前方に偏倚して左端の引起装置20の引起作用域Hに近接し、移送装置24の非移送作用域Sが正面視で左端の分草体18に重合し、電動モータは正面視で左端の分草体18の後側に重合する。
【0039】
これにより、右端の分草体18Rと移送装置24、及び、左端の分草体18と移送装置24を、夫々一体で左右回動させることで刈取装置6の刈幅を2条分拡大して6条刈の作業が行なえ、刈取作業の能率を高めることができる。
【0040】
また、図10に示すように、コントローラ42の入力側に、自動制御有効/無効切替スイッチ43と、刈取クラッチの接続状態または遮断状態を検出する刈取クラッチ入り切り検出センサー44と、脱穀クラッチの接続状態または遮断状態を検出する脱穀クラッチ入り切り検出センサー45と、刈取自動停止制御有効/無効切替スイッチ46と、機台2に対する刈取装置6の高さを検出するポジションセンサー47と、コンバインの走行速度を検出する車速検出センサー48と、副変速レバー13の変速操作位置を検出する副変速位置検出センサー49と、コンバインの後進状態を検出する後進検出センサー50と、刈取装置6によって刈り取られる穀稈を検出する穀稈検出センサー51とを接続する。一方、コントローラ42の出力側には、前記電動モータ37を接続する。
【0041】
以上の構成により、自動制御有効/無効切替スイッチ43を有効側に切り替え、刈取クラッチ及び脱穀クラッチを接続してこれを刈取クラッチ入り切り検出センサー44と脱穀クラッチ入り切り検出センサー45で検出した状態において、主変速レバー12を前進側へ操作して刈取作業を開始すると、車速検出センサー48で検出される車速に応じてコントローラ42から電動モータ37へ変速駆動出力がなされ、移送装置24が車速に応じて増減速制御される。即ち、車速が増速するほど移送装置24の移送速度が増速し、車速が減速するほど移送装置24の移送速度は減速し、停車に至ると移送装置24の移送も停止する。このように、車速に応じて移送装置24を変速制御することで、移送装置24から引起装置20Rへ引き継がれる穀稈の姿勢が安定し、円滑に引き継ぐことができる。尚、刈取クラッチ又は脱穀クラッチのいずれか一方を遮断すると、コントローラ42から電動モータ37への変速駆動出力が停止し、移送装置24の駆動は停止する。これにより、移送装置24用に特別な起動操作を必要とせず、操作性が向上する。
【0042】
また、副変速位置検出センサー49によって、副変速レバー13が路上走行時に使用する高速位置に変速操作されていることが検出されると、車速検出センサー48によって車速が検出されても、コントローラ42から電動モータ37へ変速駆動出力がなされず、移送装置24は停止状態を維持する。これによって、副変速レバー13を高速位置に操作した状態で刈取作業を開始しようとしても、移送装置24が駆動しないことによって操縦者が誤操作に気付き、刈取装置6や脱穀装置3の過負荷を防止することができる。
【0043】
また、後進検出センサー50によってコンバインの後進状態が検出されている状態では、車速検出センサー48によって車速が検出されても、コントローラ42から電動モータ37へ変速駆動出力がなされず、移送装置24は停止状態を維持する。これによって、刈取作業中の圃場コーナー部での旋回など、移送装置24を駆動する必要のない場面で、電動モータ37による電力の消費を抑え、省エネルギー化を図ることができる。
【0044】
また、移送装置24が駆動している状態において、操向レバー10を操縦者の手前側へ傾倒操作して刈取装置6を上昇させてポジションセンサー47で検出される刈取装置6の高さが設定高さに達し、且つ、穀稈検出センサー51が穀稈を検出しなくなると、コントローラ42から電動モータ37への変速駆動出力が停止し、移送装置24が停止する。これにより、圃場のコーナー部分で旋回する際に、刈取装置6を上昇操作するだけで移送装置24を停止させることができ、旋回操作性が向上する。
【符号の説明】
【0045】
17R 分草フレーム
18 分草体
18R 分草体(右端の分草体)
20 引起装置
20R 第1引起装置
21 引起ラグ
24 移送装置
25 下部遊動輪体
26 上部遊動輪体
27 駆動輪体
28 ラグ付ベルト
28a 移送ラグ
37 電動モータ
40 切欠溝
H 引起作用域
I 移送作用域
S 非移送作用域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の引起ラグ(21)を備えた複数の引起装置(20)を左右方向に並べて配置し、該複数の引起装置(20)のうちの左右方向端部に配置した第1引起装置(20R)の前側に、該第1引起装置(20R)に対して左右外側方に偏倚させて後上がり傾斜した分草体(18R)を配置し、該分草体(18R)の下端部の直後に移送装置(24)の移送作用域(I)の下端部を配置し、該移送装置(24)の移送作用域(I)の上端部を分草体(18R)の上端部よりも左右方向内側方へ偏倚させて第1引起装置(20R)の引起作用域(H)に近接させたことを特徴とする刈取装置。
【請求項2】
前記移送装置(24)の非移送作用域(S)を正面視で分草体(18R)に重合させて配置すると共に、該移送装置(24)の移送作用域(I)の上端部を分草体(18R)の上端部よりも前方に偏倚させたことを特徴とする請求項1に記載の刈取装置。
【請求項3】
前記分草体(18R)の下端部の直後に配置した下部遊動輪体(25)と、分草体(18R)の上端部よりも左右方向内側方へ偏倚した上部遊動輪体(26)と、分草体(18R)の上端部の直後に配置した駆動輪体(27)とにわたってラグ付ベルト(28)を巻き掛けて前記移送装置(24)を構成したことを特徴とする請求項2記載の刈取装置。
【請求項4】
前記分草体(18R)の下部に、移送装置(24)の移送ラグ(28a)が分草体(18R)の後側から前側へ通過する切欠溝(40)を形成したことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の刈取装置。
【請求項5】
前記駆動輪体(27)を駆動する電動モータ(37)を、正面視で分草体(18R)の後側に重合させて設けたことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の刈取装置。
【請求項6】
前記分草体(18R)と移送装置(24)を一体化し、該分草体(18R)の基部を分草フレーム(17R)の先端部に左右回動自在に取り付け、該分草体(18R)を左右外側方へ回動させることで刈幅を1条分拡大できる構成としたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の刈取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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