説明

動物侵入防止フェンス

【課題】動物の穴掘りに対処可能な動物侵入防止フェンスを提供すること。
【解決手段】クリンプされた線材を使用した金網からなるフェンス本体が複数の支柱間に固定された動物侵入防止フェンスにおいて、金網は波形凹凸部分が形成された縦線2と横線3が各々縦横平行に配置されてなり、縦線2はその上部及び下部において、隣接する半ピッチずれた2本線以上の横線3の凹凸部分に通されて係合され、この2本線以上の横線3を1組として、隣接する横線3の組が互いに3ピッチ以上離れて、金網が平行四辺形に変形可能にされ、2本線以上の1組の側部縦線2と1組の横線3が絡み合って四方枠6が形成され、四方枠6がフェンス本体の両側部に形成され、各縦線の下端部には、隣接する1.5又は2.5ピッチずれて間隔をおいた少なくとも3本の下端部の横線3cの凹凸部分に通されて係合され、少なくとも3本の下端部の横線3cを縦線2の下端部と共に地中に埋め込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、侵入防止フェンスに係り、特に、クリンプされた線材を使用した金網を用いた動物侵入防止フェンスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、山あいに建設された高速自動車道路や幹線鉄道線路などでは、小動物が道路内に侵入しないように、道路の両側に動物侵入防止フェンスが設けられる。従来、この防獣フェンスは、縦、横胴縁の間に溶接格子金網を張ったものが一般に使用されているが、この溶接格子金網を使用したフェンスを傾斜地に施工するには、その傾斜地の角度に合わせて横線の角度を変えて縦線に溶接した格子金網を専用に作成し施工していた。これは非常に作業性が悪く、また、それぞれの傾斜角度に対応することも非常に難しかった。溶接格子金網のフェンスを傾斜地に設置する、さらに他の設置方法として、施工現場にて傾斜角度に合わせて溶接金網の上下を切断して施工することがあるが、作業性が悪いし、美観も悪かった。
【0003】
前記の問題点に鑑み傾斜地に対応できる格子金網の特許はいくつか出願されている。
例えば、(1)特開昭61−85670号「傾斜地設置可能なネットフェンス」がある。この先行技術には、フェンスの金網部分を構成する縦線と横線の交点を単に接触状態に保持している傾斜地施工可能なネットフェンスが開示されている。しかし、この従来例(1)は、交点が固定されていないため、線材が横、または、縦にずれることがあり、横胴縁、縦胴縁で金網を固定するまでは、金網が崩れないように維持する必要がある。従って、梱包、運搬、施工時には十分な注意を払う必要があり、また、一度、金網が崩れた際には、それを戻すのに非常に手間ひまがかかる。
【0004】
(2)特開2002−81231号「小動物進入防止用フェンス金網」には、フェンスの金網の縦線と横線が交差する箇所に、縦線と横線を組み合わせるための凹状の屈曲部または湾曲部を設け、この凹状部を相互に嵌め合わせて構成している金網を使用した小動物進入防止用フェンス金網が開示されている。しかし、この従来例(2)のフェンス金網も線材にコ字状の凹状部があり、ずれにくくはなっているが、縦線と横線の交点を単に接触状態に保持している点では、(1)と同様であり、前記と同様に金網が崩れる可能性があるし、また、コ字状の凹状部をもった線材を製造するのに手間が掛り、生産性が悪い。
【0005】
また、従来、JIS規格のクリンプ金網はフェンス用としては、使用されることがあまりなかった。というのは、クリンプ金網は、縦線と横線が隣接する波形凹凸部分に配置する構成ではなく、複数の凹凸部分を隔てた一定ピッチのピッチでかなり細かく編成されており、縦横線材どおしの拘束力が強く、わずかな傾斜地にしか対応することができなかった。また、傾斜地に対応できるように、大きなピッチで編成すると平行四辺形に変形可能で、傾斜地には対応できるが、線材どおしの拘束力が少なく、たやすく線材がずれて、金網が崩れてしまう欠点があったからである。また、かなり密に編んでいるクリンプ金網フェンスもあるが、線材どうしの拘束力が強く、わずかな傾斜地にしか対応できなかったし、密に編んだことによる景観性を目的としたフェンスであった。このクリンプ金網を傾斜地に設置するには、縦線と横線をある程度の間隔をあけて格子状に編み込み、かつ平行四辺形を保って変形自在に構成し、製作時は長方形に編成した金網を施工時に平行四辺形を保って上下辺が傾斜するように変形させて傾斜地に設置するものである。
【0006】
傾斜地対応型のクリンプ金網は前記のように編成するが、この場合、平行四辺形を保って変形可能に縦線と横線を編成するためには、その交差部にある程度の自由度を確保する必要がある。このため縦線と横線は、隣接する波形凹凸部分に配置する構成ではなく、複数の凹凸部分を隔てて位置するように編成されている。このため傾斜地対応型の従来のクリンプ金網も、(1)(2)の従来例と同様に線材がずれやすい構造となって、製作時から施工に至る間の取り扱いには十分な注意を払う必要があり、また、一度、金網が崩れた際には、それを戻すのに非常に手間ひまがかかる問題があった。
【0007】
また、これらの従来技術より優れた技術として、図15から図19に示すように、縦線2と横線3が組まれた、クリンプされた線材を使用した金網からなるフェンス本体が複数の支柱8間に固定されているフェンスにおいて、2本線以上からなる1組の側部縦線2と、2本線以上からなる1組の横線3が絡み合って四方枠6が形成され、前記四方枠6をフェンス本体19の両側部の上下部及び中間部に形成したフェンス本体を備えたフェンスも知られている。
前記の形態では、フェンス本体19の上部を、胴縁12に形成した爪23と取り付けボルト24と胴縁取り付け金具25を取り付け(図19a,b参照)、フェンス本体19の側端部を支柱8の鍔部22に支承させると共に、押さえ金具29、Uボルト30、ナット31でフェンス本体19の端部を支柱8に固定(図19c,d参照)するか、支柱8と押さえ金具32とボルト28並びにナット34によりフェンス本体19の端部を支柱8に固定(図19e,f参照)している。
しかも、この形態では、2本線からなる1組の横線3を地中部に埋め込む形態とされている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭61−85670号
【特許文献2】特開2002−81231号
【特許文献3】特開2006−152616号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記の四方枠を形成する形態のフェンスでは、2本線以上からなる1組の側部縦線2と、2本線以上からなる1組の横線3が絡み合って四方枠が形成されており、しかもその四方枠6が、フェンス本体19の両側部における上端部と下部とに形成されていると共に、2本線以上からなる1組の横線3が上端部と下部に配置され、これらに絡み合っている2本線以上からなる1組の縦線2が両側部に配置されて剛性の大きい枠状部を形成している。そのため、平行四辺形を保って変形可能で、運搬も容易で、前記の枠状部の剛性の大きい両側部を重ねるようにして支柱8側に強固に取り付けることができる。
しかし、この形態では、2本線からなる1組の横線3を地盤7の地中部に埋め込んで、小動物のフェンス本体下側の穴掘りを防止するようにしているが、小動物に対しては有効に機能しているが、イノシシ或は犬などの動物の穴掘りに対しては不十分であったため、2本線からなる複数組以上の横線3を地中部に埋め込んで対応することも考えられるが、縦線も長くなると共に最低でも4本以上の偶数本の横線配置となるため、横線配置の自由度も低下し、地中部に埋め込む横線の本数も多くなり経済的でないという問題があった。
そのため、前記の四方枠の利点を生かしながら、さらに動物の穴掘りに対しては不十分であった点に対して経済的に有効な改善策が求められていた。
本発明は、前記の四方枠の利点を生かしながら動物の穴掘りに対する課題を有利に解消することができる動物侵入防止フェンスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を有利に解決するために、第1発明の動物侵入防止フェンスでは、縦線と横線が組まれた、クリンプされた線材を使用した金網からなるフェンス本体が複数の支柱間に固定されている動物侵入防止フェンスにおいて、前記金網は、波形凹凸部分が形成された縦線と横線が各々縦横平行に配置されてなり、前記縦線はその上部及び下部において、隣接する半ピッチずれた2本線以上の横線の凹凸部分に通されて係合され、この2本線以上の横線を1組として、前記隣接する横線の組が互いに3ピッチ以上離れて、金網が平行四辺形に変形可能にされ、2本線以上からなる1組の側部縦線と、2本線以上からなる1組の横線が絡み合って四方枠が形成され、前記四方枠がフェンス本体の両側部に形成され、各縦線の下端部には、隣接する1.5ピッチ又は2.5ピッチずれて間隔をおいた少なくとも3本の下端部の横線の凹凸部分に通されて係合され、少なくとも3本の下端部の横線は縦線の下端部と共に地中に埋め込まれていることを特徴とする。
また、第2発明では、第1発明の動物侵入防止フェンスにおいて、隣接する1.5ピッチ又は2.5ピッチずれて間隔をおいた少なくとも3本の下端部の横線に代えて、1.5ピッチずれと2.5ピッチずれが混在するように間隔をおいた少なくとも3本の下端部の横線の凹凸部分に通されて係合されていることを特徴とする。
第3発明では、第1発明又は第2発明の動物侵入防止フェンスにおいて、少なくとも3本の下端部の横線から間隔をおいた上方の地上部には、1.5ピッチ又は2.5ピッチずれて間隔をおいた複数本の地際部用の横線が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のクリンプされた線材を使用した金網を用いたフェンスによると、次の効果がある。
(1)縦線と横線が組まれた、クリンプされた線材を使用した金網からなるフェンスにおいて、前記金網の波形凹凸部分が形成された縦線と横線が縦横平行に配置されてなり、前記縦線は、隣接する半ピッチずれた2本線以上の横線の凹凸部分に通されて係合されているので、近接した2本線による四方枠が形成され、線材がずれることなく、特に、横線の間隔をあけて金網を構成することもでき、運搬、施工が可能となる。
(2)さらに、縦線においても、金網の左右両端で、横線の隣接した凹凸部分に縦線を2本通すことにより、近接した2本線による四方枠が形成され、線材がずれることなく運搬、施工が可能になる。
(3)また、縦線と横線は固定されてなく、回転可能な状態であるため、格子が長方形から平行四辺形に変形し、傾斜地に施工することが可能になる。
(4)金網の大きさによっては、中間部にも、同様に隣接した凹凸部分に横線や縦線を通すことにより、格子の目合を小さくでき、フェンスの強度が向上すると共に、小動物の侵入をより確実に防止できる効果が高まる。
このように本発明によると、クリンプされた線材を使用した金網からなるフェンスは勾配が0°から約30°の範囲で平行四辺形を保持して自由に変形できると共に、柱・胴縁への取り付けが自由であることにより、平地に設置できるのは勿論、どんな傾斜地でも、現場にて角度を決めて容易に施工可能であり、しかも製作から梱包、運搬、施工時までの間のクリンプ金網の取扱に際し、縦線、横線が安定して編成されているので、ずれることがなく、フェンスの取り扱いが容易となり施工性が向上する。
(6) しかも、本発明によると、従来の2本線以上の横線の組を上下方向に間隔をおいて地中部に設置する形態の場合に比べれて、1.5ピッチずれ又は2.5ピッチずれ、あるいはこれらのピッチずれが混在する形態で、少なくとも3本の地中部の横線を配置すればよいので、地中部の横線の配置本数を少なくして経済的に配置することができ、しかも地際部の横線を小さいピッチで設けているので、小動物の侵入はもちろんのこと、イノシシ或は犬などの動物のフェンス直下の穴掘りを確実に防止することができる等の効果が得られる。
また、各1本の横線を地中部に埋め込み配置しても、地中部なので、剛性も高くなり、縦線に係合する隣接の横線とも連結しているんで、安定性もある等の効果が得られる。
また、地中部に埋め込み配置される少なくとも3本の横線及びこれに係合した縦線により、中間部に位置する縦線が安定した状態で位置保持されるため、地際部の各横線も安定した状態になり、動物の侵入を確実に防止することができる。
地中部に埋め込まれる横線の配置ピッチが3.5ピッチ以上だと、各縦線との係合が弱くなり、横線が緩くなって抜けやすくなり、フェンス本体の運搬が困難になる。
また、第3発明のように、1.5ピッチずれ又は2.5ピッチずれを混在するようにすると、1,5ピッチずれの横線配置の場合に比べて、地中部の横線の配置を少なくすることも可能になり、2.5ピッチずれの横線配置に比べて、密に配置して動物の穴掘り侵入を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)は、本発明のフェンス本体を構成するクリンプされた線材を使用した金網の正面図、(b)は側面図、(c)は(b)のA部の詳細図である。
【図2】(a)は、図1(a)のB部の拡大図、(b)は(a)のC−C断面図、(c)は(a)のD−D断面図である。
【図3】(a)はフェンス本体の一部の斜視図、(b)は縦線と横線の線径と波形凹凸部分の深さ(h)の関係を示す説明図である。
【図4】(a)は、図1のフェンス本体を平地に設置する場合の正面図、(b)は(a)のフェンス本体の平行四辺形を保持して変形させて傾斜地に設置する場合の正面図である。
【図5】図1〜図4に示すフェンス本体で構成したフェンスを平地に設置した状態を示す正面図である。
【図6】図5の一部縦断側面図である。
【図7】図6の一部を拡大して示す縦断側面図である。
【図8】支柱間におけるフェンス本体下端部と地中埋め込み部との関係を示す縦断側面図である。
【図9】上部胴縁とフェンス本体(クリンプ金網)の連結構造を示す正面図である。
【図10】(a)(b)(c)は、上部胴縁の詳細図、(d)(e)は、上部胴縁の端部連結構造の詳細図である。
【図11】(a)(b)は図5のE部における胴縁と支柱との連結部を示すものであって、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図12】(a)(b)は、図5のF部の詳細図を示すものであって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図13】図1〜図4に示すフェンス本体で構成したフェンスを傾斜地に設置した状態を示す正面図である。
【図14】(a)は、本発明のフェンス本体を構成するクリンプされた線材を使用した他の形態の金網の正面図、(b)は側面図、(c)は(b)の上端部側を拡大して示す図である。
【図15】従来のフェンス本体を構成するクリンプされた線材を使用した金網の正面図、図(b)は、側面図、図(c)は、図(b)のG部の詳細図である。
【図16】(a)は、図15(a)のG部の拡大図、(b)は、(a)のH−H断面図である。
【図17】(a)(b)は、図15〜図16に示すフェンス本体で構成したフェンスを平地に設置した状態を示す正面図と側面図である。
【図18】(a)は、上部胴縁とフェンス本体(クリンプ金網)の連結構造を示す正面図、(b)(c)(d)は、上部胴縁の詳細図、(e)(f)は、上部胴縁の端部連結構造の詳細図である。
【図19】(a)(b)は、図17のJ部詳細図、(c)(d)は、図17のK部詳細図、(e)(f)は、図17のL部詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0014】
図1〜図4に示すように、フェンス本体(クリンプされた線材を使用した金網)1は複数本の縦線2と横線3を格子状に編成して構成される。縦線2と横線3の各線材は、凹部4と凸部5を持った波状の線材であり、この線材で構成した縦線2と横線3を所定の目合に配列して編み上げた金網として構成されている。図1においては、両側部の縦線2がフェンス本体1の両側部を構成し、最上部の横線3と下部の横線3がフェンス本体1の上部と下部を構成し、両側部の縦線2最上部と下部の横線3とで囲まれる長方形の枠の内側に複数本の縦線2と横線3を一定の目合に配列して編み上げていると共に、下端側に所定のピッチで編み上げられた多数の横線を備えた金網として構成されている。
下端部の多数の各横線3cは、1本線からなる横線3cを地中部に埋め込まれる埋め込み用の横線群13aを下端側に備えていると共に、その上側に、地表面に近接して配置される横線3を含む地際部の横線群13bを備えている。
【0015】
フェンス本体1の両側部を構成する縦線2aと、最上部と下部を構成する横線3aが、それぞれ相手側の縦線2aと横線3aの連続した隣接の波形凹凸部分に通される構成としている。
【0016】
図2、図3によってさらに説明すると、フェンス本体1の2本の側部縦線2aの凹部4と凸部5は、下部横線3aの凸部5と凹部4に直交して係合している。このように2本以上の1組の側部縦線2aと下部横線3aが絡み合って四方枠6が形成されて、相互にずれないように編み込まれている。このような四方枠6がフェンス本体1の両側部に形成されることで、フェンス本体1の長方形の4辺が安定して組まれることになる。隣り合う側部縦線2a、下部横線3aは、それぞれ波形凹凸部分が半ピッチずれて配置されることで、相手側の線材の隣接する凸部5と凹部4で絡み合うように編み込まれる。側部縦線2aと下部横線3aは、少なくとも2本以上が連続して隣接する凸部5と凹部4に編み込まれるようになっていれば、3本以上であっても構わないが、理想的には2本乃至4本が望ましい。図示の形態では、上端部は3本1組の横線3とされ、中間部及び下部では、2本1組の横線3とされている。
また、下端側では、1本線からなる横線3cを、縦線2(2a,2b)の波形に対して、1,5ピッチのずれ(図示の形態、又は図示を省略するが、2.5ピッチのずれ)の間隔で、各縦線2に対して表裏から抱き込むように交互に配置されて編み込まれている。
下端部側の横線3cは、図示を省略するが、1,5ピッチのずれ配置と、2.5ピッチのずれ配置が混在させるように設けてもよい。
そして、1本線の横線3cを上下方向に間隔をおいて、地中部に埋め込まれる埋め込み用の横線群13a及び地際部の横線群13bにより、アナグマ、狸や犬或はイノシシ等の動物のフェンス際の穴掘りを防止するようにされている。
また、地中部に埋め込まれる埋め込み用の横線群13aは、少なくとも3本の横線3c、例えば3本〜5本の横線3cが設けられる。
また、地表面側に、地表面に近接して、横線3cが設けられていることで、動物によるフェンス本体直下の地表面の穴掘りが防止されるようにされている。
【0017】
フェンス本体1の上端部と左右両側部の3辺と、下端部から上方に離れた下部に位置する2本1組の両側部縦線2aと、3本1組又は2本一組の上下部横線3aに対して、その内側に複数の中間部縦線2bと中間部横線3bが編みこまれる。図において中間部横線3bは上下に隣接する2本1組をなし、かつ、上下に間隔をあけて複数段配設されており、その両端は、2本1組の両側部縦線2aの上下に隣接する凹部4と凸部5の間に配置される。このように3本一組の上端部横線3b又は2本1組の中間部横線3bと側部縦線2aが絡み合って四方枠6aが形成されることにより、側部縦線2aに対して中間部横線3bは安定して組み込まれてずれることがない。特に、2本1組の中間部横線3bは、上下方向に間隔をおいて配設されていても、両端部が側部縦線2aにしっかりと安定して支持される。中間部横線3bは、さらに線材の本数を増減してもよく、何れの場合も、端部は2本1組の両側部縦線2aの隣接する凹部4と凸部5によって安定に係止される。
なお、前記の縦線2及び横線3の波形凸凹のピッチが同じであれば、縦線及び横線の線径は、異なる線径であってもよい。
【0018】
複数の中間部縦線2bは、多段に設けられた2本1組の中間部横線3bの横方向に隣接する凹部4と凸部5の間に係合して上下方向に伸長して設けられ、さらに、中間部縦線2bの上下端部は、2本1組の上下部横線3aの横方向に隣接する凹部4と凸部5の間に配置される。このように中間部縦線2bが2本1組の中間部横線3bと上下部横線3aに挟まれてずれないように支持されることで、フェンス本体1が安定して編成される。複数配設される中間部縦線2bの横方向の間隔は任意であるが、中間部横線3bの凹部4と凸部5の3ピッチ以上離れた配置に設けるのがよい。また、両側部縦線2aと中間部縦線2bの下端部は、最下段の2本一組の下部横線3aより下方に延長して、地際部の縦線部を形成していると共に、地中への埋設部の縦線部を形成している。
地際部の縦線部と、埋設部の縦線部とに、1本線の横線3cが、各縦線に対して交互に表裏となるように配置されている。
【0019】
各縦線2および横線3の線径は、波形の凹部4の深さ(h)以下に設けるのが望ましい。このように構成することにより縦線2と横線3は、相手側の縦線2と横線3の波形の凹部4内に納まって係合するので、凹部4から脱出しにくく安定した編成となると共に美観も向上する。また、縦線2と横線3は、例えば4Φmmの線径を規準として、線径(d)と波形の凹部の深さ(h)とピッチ(p)は、例えば、2:4:5にし、フェンスの面外変形を小さくする場合には、線径(d)と波形の凹部の深さ(h)とピッチ(p)適宜調整されたものを用いるのがよく、このように構成すると隣接する波形凹凸部分に互いに係合する縦線2と横線3は、互いに係合する相手側の線材の軸線方向にずれることがなく、しかも、前記線径に対して余裕を持たせて深さ(h)とピッチ(p)を設定しているため、縦線2と横線3とは互いに回動自在となる。即ち、縦線2と横線3の交差部を支点として、平行四辺形を保って円滑に変形できる。
【0020】
前記のフェンス本体1は、平地に設置するときは、図4(a)に示すように縦線2と横線3が直角に交わる長方形の状態で配置できると共に、傾斜地に設置するときは、図4(b)に示すようにフェンス本体1の両側を上下反対に移動させることで、フェンス本体1につき平行四辺形を保持して、つまり、縦線2につき鉛直方向に配向している状態を保持してフェンス本体1の上下部を傾斜させることができる。この場合、縦線2と横線3とが回動自在となるように、凹部4と凸部5の深さ(h)、ピッチ(p)を線径に対して余裕を持たせて設定しておくことにより、両線材の凹部4と凸部5が係合を保持したまま回動することで矩形状態から傾斜状態にスムーズに変形できる。
【0021】
しかも、縦線2と横線3は上下と左右に適度の間隙を置いて配設されているにも拘わらず、フェンス本体1の上端部及び下部並びに左右の部分は、2本1組の縦線2と横線3が隣接する波形の凹部4と凸部5に係合することで安定して組まれているので、全体の線材が安定し、ずれることがない。したがって、製作から梱包、運搬、施工までの間の取り扱いによって、縦線・横線が崩れるという不具合を解消している。
【0022】
フェンス本体1は図5に示すように、所定の間隔で地盤7に立設された支柱8に取り付けてフェンス10を構成する。図5〜図12によって説明すると、支柱8は横断面円形の鋼管製支柱であり、下端部が地盤7に埋め込み固定した鋼管基礎15内に配置されて、前記鋼管基礎15内に充填のコンクリート又はモルタルに埋設されている。隣接する支柱8の間にアングル材からなる上部胴縁12が架設され、フェンス本体1の上部はこの上部胴縁12に固定される。フェンス本体1の両側部は支柱1に固定金具を用いて固定される。
【0023】
各部の構成を順に説明すると、図11(a)(b)に示すようにアングル材からなる上部胴縁12の垂直部は、支柱8に当接されて、これらに渡って挿通されたボルト14及びこれにねじ込まれたナットにより支柱8に取り付けられている。
図9に示すように、フェンス本体1の3本1組の上部横線3aは、上部胴縁12の垂直部の内側面が当てがわれ、隣り合う中間部縦線2bの間において、金網取付金具16にて押さえられ、該金網取付金具16を貫通するボルト17及びこれにねじ込まれるナットを介して上部胴縁12に固定されている。また、図10(d)、(e)に示すように所定長さの上部胴縁12の端部は、段差部のある一方の胴縁の端部に重ね合わせ、固定ボルト18にて固定することでフェンスに設置長さに渡って連続して構成される。
【0024】
2本1組で多段に設けられた中間部横線2bは、支柱8に対して、図5F部に示す金具を用いて固定されている。図5のF部の金具は、その詳細を示す図12(a)(b)に示すように、支柱8とフェンス本体1との間に矩形状の鋼製支承板16を配置すると共に、前記の鋼製支承板16に、左右のフェンス本体の端部を重ね合わせ、隣接するフェンス本体1の中間部横線3bの端部と側部縦線2aとが当てがわれ、押さえ金具29で左右側が同時に押さえられる。この押さえ金具29及び前記鋼製支承板16には、支柱8を抱持したUボルト30の両端が挿通しており、ナット31を締結することで、鋼製支承板16及び押さえ金具29を介して、フェンス本体1の両側部を支柱8に固定している。
このように図5のF部の固定手段を上下方向に間隔をおいて設けることで、フェンス本体1の両側部は支柱8に固定されている。この固定手段は、フェンス本体1を平地と傾斜地の何れに設置するときも、共通に適用できる。フェンス本体1を支柱8に固定したとき、各フェンス本体1の左右両側部の下端部(隅部)で、鋼管基礎15に干渉する部分の縦線2及び1本線の横線3cは、適宜切断撤去される。なお、鋼管基礎15を用いない場合には、切断撤去する必要はない。
縦線2の下端部と、1本線の地中に埋め込まれる少なくとも3本の横線3cが縦線2の下端部と共に地盤(地中)7に埋め込み固定されることから、地中に埋め込まれる横線3cは動物の穴掘り動作により一部が露出しても、露出するスパンが小さいから曲げ剛性は全体が露出している地表部の横線よりは格段に剛性は大きくなり、そのため、縦線2の下部、及び地際部の1本線の各横線3cは位置が安定する。
【0025】
本実施形態のフェンス10は、波形凹凸部分が形成された縦線2と横線3が縦横平行に配置されてなり、縦線2は、隣接する半ピッチずれた2本以上の横線3の凹凸部分に通されて係合されている。また、縦線2の間隔と横線3の間隔は適度の余裕を持たせて配置されていて動物の侵入を阻止できると共に、長方形のフェンス本体1を平行四辺形を保って適宜の傾斜に変形させることで、施工現場にて平地および傾斜地に容易に対応させることができる。しかも、このフェンス本体1は、製作、梱包、運搬、施工の間の取り扱いによっても、縦線2と横線3の編成が崩れることがなく、取り扱いと施工性が向上する。なお、中間部の縦線2bと横線3bの本数や配置の間隔などは設置状況に適応するように変更して構わない。
【0026】
地中部に埋め込み配置される横線3cのピッチとして、1.5ピッチずれ又は2.5ピッチずれを混在するようにすると、1,5ピッチずれの横線配置の場合に比べて、地中部の横線の配置を少なくすることも可能になり、2.5ピッチずれの横線配置に比べて、密に配置して動物の穴掘り侵入を防止することができる。
【0027】
本発明を実施する場合、フェンス本体10としては、図14に示すように、フェンス本体1下部の地際部の横線群13bと地中部用の横線群13aと同様に上下対称に、フェンス本体1における縦線2を上方に延長して、1本線の上部横線3cを複数設けるようにして、施主の要望する規格に合わせるようにしてもよく。
このような形態のフェンス本体では、上下対称であるので、フェンス本体の表裏或は上下いずれでもよくなるため、上下反転配置したり、表裏を誤って配置しても、いずれも正しい設置状態になるので、設置が容易で誤配置の恐れがなくなる。
このような形態以外にも、図示を省略するが、施主の要望する規格に合わせるようにフェンスの高さを適宜設定するようにしてもよく、例えば、支柱を上方に伸ばして、番線等を支柱間に上下方向に間隔をおいて張設するようにしてもよい。
【0028】
本発明を実施する場合、支柱の形態或は胴縁とフェンス本体の取り付け形態としては、前記従来の形態と同様に、断面ハット形の支柱を用いてもよく、フェンス取り付け金具を胴縁に設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 フェンス本体
2 縦線
2a 側部縦線
2b 中間部縦線
3 横線
3a 上部と下部の横線
3b 中間部の横線
4 凹部
5 凸部
6 四方枠
7 地盤
8 支柱
10 フェンス
11 コンクリート基礎
12 上部胴縁
13 爪
14 取り付けボルト
15 鋼管基礎
16 金網取付金具
17 ボルト
18 ボルト
19 フェンス本体
20 フェンス
21 コンクリート基礎
22 鍔部
23 爪
24 取り付けボルト
25 胴縁取付金具
26 金網取付金具
27 ボルト
28 ボルト
29 押さえ金具
30 Uボルト
31 ナット
32 押さえ金具
33 固定ボルト
34 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦線と横線が組まれた、クリンプされた線材を使用した金網からなるフェンス本体が複数の支柱間に固定されている動物侵入防止フェンスにおいて、
前記金網は、
波形凹凸部分が形成された縦線と横線が各々縦横平行に配置されてなり、
前記縦線はその上部及び下部において、隣接する半ピッチずれた2本線以上の横線の凹凸部分に通されて係合され、この2本線以上の横線を1組として、
前記隣接する横線の組が互いに3ピッチ以上離れて、金網が平行四辺形に変形可能にされ、2本線以上からなる1組の側部縦線と、2本線以上からなる1組の横線が絡み合って四方枠が形成され、前記四方枠がフェンス本体の両側部に形成され、各縦線の下端部には、隣接する1.5ピッチ又は2.5ピッチずれて間隔をおいた少なくとも3本の下端部の横線の凹凸部分に通されて係合され、少なくとも3本の下端部の横線は縦線の下端部と共に地中に埋め込まれていることを特徴とする動物侵入防止フェンス。
【請求項2】
隣接する1.5ピッチ又は2.5ピッチずれて間隔をおいた少なくとも3本の下端部の横線に代えて、1.5ピッチずれと2.5ピッチずれが混在するように間隔をおいた少なくとも3本の下端部の横線の凹凸部分に通されて係合されていることを特徴とする請求項1に記載の動物侵入防止フェンス。
【請求項3】
少なくとも3本の下端部の横線から間隔をおいた上方の地上部には、1.5ピッチ又は2.5ピッチずれて間隔をおいた複数本の地際部用の横線が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の動物侵入防止フェンス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−132250(P2012−132250A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286504(P2010−286504)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000006839)日鐵住金建材株式会社 (371)
【出願人】(593211636)株式会社ニッケンフェンスアンドメタル (26)
【Fターム(参考)】