説明

半導体チップのピックアップ装置及びピックアップ方法

【課題】半導体チップを損傷させずに効率よくピックアップできるピックアップ装置を提供することにある。
【解決手段】バックアップ体1内に上下方向に駆動可能に設けられ粘着テープ3を介して半導体チップ4をバックアップ体の上面から押し上げる押し上げ手段33と、押し上げ手段によって押し上げられた半導体チップをピックアップするピックアップ手段を具備し、押し上げ手段は、上端面の全周が外方から内方に向かって低く傾斜した傾斜面34bに形成された外側押し上げ体34と、外側押し上げ体の内部に設けられ上端面によって半導体チップの周辺部よりも内側の部分を吸引して周辺部を上方に向かって傾斜させる内側押し上げ体35,36と、外側押し上げ体と内側押し上げ体を一体的に上昇方向に駆動して粘着シートを引き伸ばしてから、内側押し上げ体だけを上昇方向に駆動して半導体チップの周辺部から粘着シートを剥離させるカム体53からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は粘着シートに貼着された半導体チップをピックアップするピックアップ装置及びピックアップ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハをさいの目状に切断して形成された半導体チップは粘着シートに貼着されており、この半導体チップを基板にボンディングする場合には吸着ノズルによって上記粘着シートから1つずつピックアップするようにしている。
【0003】
半導体チップを粘着シートからピックアップする場合、従来は特許文献1に示されるように、半導体チップが貼着された粘着シートの下面をバックアップ体の上面によって吸着保持する。バックアップ体内には先端が鋭利な突き上げピンが上下駆動可能に設けられている。
【0004】
そして、ピックアップされる半導体チップの上面を吸着ノズルによって吸着したならば、その半導体チップを下面側から上記突き上げピンによって突き上げるとともに、上記吸着ノズルを突き上げピンに連動させて上昇させる。
【0005】
それによって、上記粘着シートは引き伸ばされて上記半導体チップの下面周縁部から徐々に剥離するから、上記吸着ノズルによって上記半導体チップを上記粘着シートからピックアップすることができるようになっている。
【0006】
ところで、最近では半導体チップの厚さが50μm以下と非常に薄い場合があり、そのように薄い半導体チップを突き上げピンによって粘着シートを引き伸ばしながら突き上げると、突き上げられた半導体チップに部分的に大きな応力が加わり、損傷するということがある。
【0007】
そこで、特許文献2では半導体チップを突き上げピンによって突き上げず、バックアップホルダ内に半導体チップを支持する支持部を複数の可動軸によって構成し、これら可動軸の上端面を所定方向に沿って湾曲した湾曲面(窪み)に形成することが示されている。
【0008】
上記半導体チップは、可動軸の上端面に形成された吸引溝によって上記湾曲面に倣って所定方向(幅方向とする)に沿って湾曲した状態で粘着シートを介して上記バックアップホルダ内で発生する吸引力によって吸着保持される。
【0009】
半導体チップの下面側を上記湾曲面に吸着保持し、上面をピックアップ用のコレットで吸着保持した状態で、複数の可動軸を、上記湾曲面の湾曲方向に沿う幅方向両端に位置する可動軸から、幅方向中央に位置する可動軸の順で下降方向に駆動する。
【0010】
それによって、半導体チップが貼着された粘着シートには上記可動軸が下降した部分からバックアップホルダ内に発生する吸引力が作用すること、及び半導体チップが幅方向に沿って湾曲して上向きに反っていることで、半導体チップから粘着シートが剥離されるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−100644号公報
【特許文献2】特開2000−353710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、特許文献2に示された発明は、半導体チップが幅方向に沿う方向に湾曲しているから、半導体チップの湾曲方向に沿う方向の縁部では粘着シートが下方へ強く引っ張られるために剥離し易い。
【0013】
しかしながら、半導体チップは一方向(幅方向)だけが湾曲し、幅方向と直交する方向には湾曲していない。そのため、湾曲していない方向の半導体チップの縁部では粘着シートに強い引っ張り力が作用しないため、剥離し難いということがある。
【0014】
すなわち、特許文献2によると、粘着シートから半導体チップを剥離する際、粘着シートの剥離は半導体チップの湾曲方向の両端縁からだけ進行するため、半導体チップが吸着ノズルによってピックアップ可能な状態となるまでに時間が掛かり、生産性を向上させることができないといことになる。
【0015】
この発明は、半導体チップをピックアップするとき、その半導体チップを粘着シートから迅速かつ確実にピックアップ可能な状態に剥離することができるようにした半導体チップのピックアップ装置及びピックアップ方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明は、粘着シートの上面に貼着された矩形状の半導体チップをピックアップする半導体チップのピックアップ装置であって、
上面が上記粘着シートの下面を吸着保持する吸着面に形成されたバックアップ体と、
このバックアップ体内に上下方向に駆動可能に設けられ上記半導体チップを上記粘着テープを介して上昇方向に駆動して上記半導体チップを上記バックアップ体の上面から押し上げる押し上げ手段と、
この押し上げ手段によって押し上げられた半導体チップを上記粘着シートからピックアップするピックアップ手段を具備し、
上記押し上げ手段は、
角筒状に形成され上端面の全周が外方から内方に向かって低く傾斜した傾斜面に形成された外側押し上げ体と、
上記外側押し上げ体の内部に設けられ上端面が平坦面に形成され下降位置でその上端面が上記傾斜面の傾斜方向の下端とほぼ同じ高さに位置決めされ上記上端面によって上記半導体チップの上記周辺部よりも内側の部分を吸引することで上記周辺部を上方に向かって傾斜させる内側押し上げ体と、
上記傾斜面によって上記半導体チップの周辺部が上方に向かって傾斜された状態で上記外側押し上げ体と内側押し上げ体を一体的に上昇方向に駆動して上記粘着シートの上記半導体チップの周縁部に位置する部分を引き伸ばしてから、上記内側押し上げ体だけを上昇方向に駆動して上記半導体チップを押し上げてこの半導体チップの周辺部から上記粘着シートを剥離させる上下駆動手段と
によって構成されていることを特徴とする半導体チップのピックアップ装置にある。
【0017】
上記内側押し上げ体は、角筒状の第1の内側押し上げ体と、この第1の内側押し上げ体内に挿通された角柱状の第2の内側押し上げ体とによって構成されていて、
上記上下駆動手段は上記第1の内側押し上げ体と上記第2の内側押し上げ体を上記第1の内側押し上げ体の上昇限まで押し上げてから、上記第2の内側押し上げ体をさらに上昇させることが好ましい。
【0018】
この発明は、粘着シートの上面に貼着された矩形状の半導体チップを下方から押し上げてピックアップする半導体チップのピックアップ方法であって、
上記半導体チップの周辺部全体を上方に向かって傾斜させる工程と、
周辺部が傾斜させられた上記半導体チップを上昇方向に駆動して上記粘着テープの上記半導体チップの周辺部に位置する部分を引き伸ばす工程と、
粘着テープの周辺部を引き伸ばしたならば、上記半導体チップの周辺部よりも内側の部分を押し上げて上記半導体チップの周辺部から上記粘着テープを剥離する工程と、
周辺部から粘着テープが剥離された半導体チップをピックアップする工程と
を具備したことを特徴とする半導体チップのピックアップ方法にある。
【0019】
この発明は、粘着シートの上面に貼着された矩形状の半導体チップをピックアップする半導体チップのピックアップ装置であって、
上面が上記粘着シートの下面を吸着保持する吸着面に形成されたバックアップ体と、
このバックアップ体内に上下方向に駆動可能に設けられ上記半導体チップを上記粘着テープを介して上昇方向に駆動して上記半導体チップを上記バックアップ体の上面から押し上げる押し上げ手段と、
この押し上げ手段によって押し上げられた半導体チップを上記粘着シートからピックアップするピックアップ手段を具備し、
上記押し上げ手段は、
上端面が上記半導体チップの4つの側辺部のうちの1つの側辺部を除く3つの側辺部に対応するほぼコ字状であって、上記半導体チップの上記1つの側辺部に向かって低く傾斜した傾斜面に形成された第1の押し上げ体と、
上端面が平面であって上記半導体チップの上記3つの側辺部以外の部分に対応する形状に形成された筒状の第2の押し上げ体と、
上端面が平面であって上記第2の押し上げ体の内部に挿通された第3の押し上げ体と、
上記第1の押し上げ体を上昇方向に駆動してその傾斜面で上記半導体チップを湾曲させることなく傾斜させて上記粘着シートを引き伸ばしながら押し上げてから、上記第2、第3の押し上げ体を上昇方向に駆動して上記粘着シートをさらに引き伸ばしながら上記半導体チップを上記傾斜面から離れて水平になるまで上昇させた後、上記第3の押し上げ体を上昇方向に駆動して上記半導体チップを上記第2の押し上げ体の上面から離れる高さまで上昇させて上記半導体チップの周辺部から上記粘着シートを剥離させる上下駆動手段と
によって構成されていることを特徴とする半導体チップのピックアップ装置にある。
【0020】
この発明は、粘着シートの上面に貼着された矩形状の半導体チップを下方から押し上げてピックアップする半導体チップのピックアップ方法であって、
水平に保持された上記半導体チップを湾曲させることなく幅方向一端から他端に向かって低くなるよう傾斜させて押し上げて上記粘着テープを引き伸ばす工程と、
傾斜させられた上記半導体チップを水平となるよう上昇させて上記粘着テープの上記半導体チップの幅方向他端に位置する部分を引き伸ばす工程と、
上記粘着テープの上記半導体チップの周辺部全体に位置する部分を引き伸ばしたならば、上記半導体チップをさらに水平に上昇させて上記半導体チップの周辺部から上記粘着テープを剥離する工程と、
周辺部から粘着テープが剥離された上記半導体チップをピックアップする工程と
を具備したことを特徴とする半導体チップのピックアップ方法にある。
【0021】
水平になった半導体チップをさらに上昇させるために上記半導体チップを押し上げるとき、半導体チップを水平に押し上げるときよりも小さな押圧面積で上記半導体チップを押し上げることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、半導体チップの周辺部全体を上方に向かって傾斜させてからその半導体チップを押し上げるようにしたから、粘着シートは半導体チップの周辺部全体から剥離される。
そのため、粘着シートの剥離が半導体チップの周辺部全体から進行するから、ピックアップ可能な状態となるまでの粘着シートの剥離を短時間で実現することが可能となる。
【0023】
また、この発明は、半導体チップを幅方向一端から他端に向かって低くなるよう傾斜させてから水平にした後、水平な状態で上昇させるようにしたから、半導体チップを湾曲させることなく、周辺部全体から粘着シートを剥離することができる。
したがって、半導体チップを損傷させることなく、短時間でピックアップ可能な状態となるまで粘着シートを半導体チップから剥離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の第1の実施の形態を示すピックアップ装置の概略的構成図。
【図2】バックアップ体を示す縦断面図。
【図3】バックアップ体の上面を示す平面図。
【図4】(a)〜(d)は半導体チップをピックアップする手順を順次示した説明図。
【図5】この発明の第2の実施の形態を示す第1乃至第3の押し上げ体の平面図。
【図6】(a)〜(d)は半導体チップをピックアップする手順を順次示した説明図。
【図7】この発明の第3の実施の形態を示す第1乃至第3の押し上げ体の平面図。
【図8】(a)〜(d)は半導体チップをピックアップする手順を順次示した説明図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
図1乃至図4はこの発明の第1の実施の形態であって、図1に示すピックアップ装置はバックアップユニット10を備えている。このバックアップユニット10はバックアップ体1を備えている。このバックアップ体1は、ウエハリング2に張設された粘着シート3の下面側に対向して設けられ、図示しないZ駆動源によってZ方向において、後述するごとくバックアップ体1の上面が粘着シート3の下面に接触する位置と、粘着シート3から離れた位置との間で駆動されるようになっている。
【0026】
上記ウエハリング2は固定リング5の上面に押圧リング6によって押圧保持される。このとき、ウエハリング2に保持された粘着シート3の下面周辺部はエキスパンドリング7に当たる。それによって、上記粘着シート3が引き伸ばされ、この粘着シート3の上面に多数の半導体チップ4に分割されて貼着された半導体ウエハが引き伸ばされ、各半導体チップ4の間隔が拡大される。
【0027】
上記固定リング5、押圧リング6及びエキスパンドリング7はエキスパンド機構8を構成し、このエキスパンド機構8は図示しないX及びY駆動源によって水平方向に駆動可能になっている。それによって、粘着シート3に貼着された複数の半導体チップ4のうち、ピックアップされる半導体チップ4はバックアップユニット10に対してX及びY方向に位置決め可能となっている。
【0028】
なお、バックアップユニット10に代わり、エキスパンド機構8をZ方向に駆動するようにしてもよく、要はウエハリング2とバックアップユニット10とが相対的にX、Y及びZ方向に駆動されるようになっていればよい。
【0029】
上記粘着シート3の上面側で、上記バックアップユニット10の上方にはピックアップ手段11が設けられている。このピックアップ手段11は可動体12を有する。この可動体12には軸線を垂直にして配置された駆動ねじ軸13が螺合されている。この駆動ねじ軸13は上下駆動モータ14によって回転駆動される。それによって、上記可動体12は上下方向である、Z方向に駆動されるようになっている。この可動体12には吸着ノズル17が設けられている。それによって、吸着ノズル17はZ方向に駆動可能となっている。
なお、上記上下駆動モータ14は制御装置18によって駆動が制御されるようになっている。
【0030】
上記バックアップ体1は、図2と図3に示すように上端面に矩形状の開口部23が形成され下端面が閉塞された角筒状をなしている。つまり、バックアップ体1には角柱状の収容部24が上下方向に沿って形成されている。上記開口部23は、図3に鎖線で示すピックアップの対象となる矩形状の半導体チップ4よりもわずかに小さな矩形状に形成されている。つまり、開口部23は半導体チップ4と相似形状に形成されている。
【0031】
図3に示すように、上記バックアップ体1の上面には、上記開口部23を囲む3つの環状溝25が同心的に形成されている。3つの環状溝25はバックアップ体1の径方向に沿って形成された4つの連通溝26によって連通している。4つの連通溝26の1つには吸引孔28の一端が開口している。この吸引孔28は上記バックアップ体1の周壁に上下方向に沿って穿設されていて、その他端はバックアップ体1の下部側面に開口している。
【0032】
上記吸引孔28の他端には上記制御装置18によって作動が制御される吸引ポンプ31が配管32(ともに図1に示す)によって接続されている。吸引ポンプ31が作動すれば、吸引孔28及び連通溝26を介して3つの環状溝25に吸引力が発生する。
【0033】
したがって、バックアップ体1の上面を粘着シート3の下面に接触させれば、その上面に粘着シート3が吸着保持される。つまり、バックアップ体1の上面は粘着シート3を吸着保持する吸着面となっている。
【0034】
上記バックアップ体1の角柱状の収容部24にはピックアップされる半導体チップ4を押し上げるための押し上げ手段33を構成する外側押し上げ体34、第1の内側押し上げ体35及び第2の内側押し上げ体36が収容されている。
【0035】
上記外側押し上げ体34は外形状が上記収容部24とほぼ同じ形状をなした角筒状であって、その上端面は全周にわたって外周から内周に向かって低く傾斜した傾斜面34bに形成されている。この傾斜面34bの傾斜角度は10〜30度の範囲に設定される。なお、傾斜面34bは平面であるが、凹状に湾曲した湾曲面であってもよい。
【0036】
上記外側押し上げ体34の下端部の外周面の対向する一対の側面には図2に示すように断面形状がL字状の一対の第1の鍔37が設けられている。
【0037】
上記第1の鍔37は上記収容部24の対向する一対の内面に形成された第1の凹部38に上下方向に移動可能に収容されている。つまり、第1の凹部38の高さ寸法は上記第1の鍔37の高さ寸法よりも大きく設定されている。
【0038】
上記第1の鍔37と上記第1の凹部38の上面との間には第1のばね39が圧縮状態で収容されている。それによって、上記外側押し上げ体34は上記第1の鍔37の下端面が上記第1の凹部38の下端面に当たる位置で弾性的に保持されている。その状態において、外側押し上げ体34の傾斜面34bの傾斜方向の上端は上記バックアップ体1の上面と同じ高さになっている。
【0039】
上記第1の内側押し上げ体35は上記外側押し上げ体34内に収容される大きさの角筒状であって、その下端部の対向する一対の側面には断面形状がL字状の一対の第2の鍔41が設けられている。この第2の鍔41は上記外側押し上げ体34の対向する一対の内面に形成された第2の凹部42に上下方向に移動可能に収容されている。つまり、第2の凹部42の高さ寸法は上記第2の鍔41の高さ寸法よりも大きく設定されている。
【0040】
上記第2の鍔41と上記第2の凹部42の上面との間には上記第1のばね39よりも荷重に対する変形量が小さい、つまり強い第2のばね43が圧縮状態で収容されている。それによって、上記第1の内側押し上げ体35は上記第2の鍔41の下端面が上記第2の凹部42の下端面に当たる位置で弾性的に保持されている。その状態において、第1の内側押し上げ体35の上端面35bは上記外側押し上げ体34の傾斜面34bの傾斜方向の下端と同じ高さになっている。
【0041】
上記第2の内側押し上げ体36は上記第1の内側押し上げ体35内に収容される大きさの角軸状であって、その下端部の対向する一対の側面には断面形状がL字状の一対の第3の鍔44が設けられている。この第3の鍔44は上記第1の内側押し上げ体35の対向する一対の内面に形成された第3の凹部45に上下方向に移動可能に収容されている。つまり、第3の凹部45の高さ寸法は上記第3の鍔44の高さ寸法よりも大きく設定されている。
【0042】
上記第3の鍔44と上記第3の凹部45の上面との間には上記第2のばね43よりも強い第3のばね46が圧縮状態で収容されている。それによって、上記第2の内側押し上げ体36は上記第3の鍔44の下端面が上記第3の凹部45の下端面に当たる位置で弾性的に保持されている。その状態において、第2の内側押し上げ体36の上端面36bは上記第1の内側押し上げ体35の上端面35bと同じ高さになっている。
【0043】
上記第2の内側押し上げ体36の下端には駆動軸部48が下方に向けて延出されている。この駆動軸部48は上記バックアップ体1の底壁に形成された通孔51から外部に気密に突出していて、その下端部にはカムフォロア52が設けられている。
【0044】
上記カムフォロア52はカム体53の外周面に当接している。このカム体53は図1に示す回転モータ54によって回転駆動される。回転モータ54は上記制御装置18によって駆動が制御される。カム体53が回転駆動されると、上記第2の内側押し上げ体36はこのカム体53の上死点と下死点との間で上下駆動される。図2は第2の内側押し上げ体36が下降位置にある状態を示している。上記カム体53と回転モータ54は上下駆動手段56を構成し、この上下駆動手段56は上記外側押し上げ体34、第1、第2の内側押し上げ体35,36とで上記押し上げ手段33を構成している。
【0045】
上記カム体53が回転駆動されて上記第2の内側押し上げ体36が上昇方向に駆動されると、この第2の内側押し上げ体36の上昇に上記第1の内側押し上げ体35と外側押し上げ体34が第3、第2のばね46,43を介して連動する。このとき、押し上げ手段33の最も外側に位置する外側押し上げ体34は第1のばね39を圧縮する。
【0046】
第1のばね39を圧縮しながら外側押し上げ体34が上昇し、その第1の鍔37の上端が第1の凹部38の上面に当たると、この外側押し上げ体34の上昇が停止する。しかしながら、第1の内側押し上げ体35は第2のばね43を圧縮しながらさらに上昇し、それに第2の内側押し上げ体36が第3のばね46を介して連動する。
【0047】
第2のばね43が圧縮されて第1の内側押し上げ体35の第2の鍔41の上端が第2の凹部42の上面に当たると、この第1の内側押し上げ体35の上昇が停止して第2の内側押し上げ体36だけが第3のばね46を圧縮しながら上昇する。
【0048】
そして、上記駆動軸部48に設けられたカムフォロア52が上記カム体53の上死点に移行したときに、上記第2の内側押し上げ体36の上昇が最大となる。その後、カム体53の回転によって第3乃至第1の各可動部材36,35,34はそれぞれ第3乃至第1のばね46,42,39の復元力によって上昇時とは逆方向に順次下降位置に戻ることになる。
【0049】
すなわち、第1乃至第3のばね39,43,46の強さを順次強くしたことで、第1乃至第2の内側押し上げ体34〜36を段階的に上昇させることができるようになっている。
【0050】
なお、押し上げ手段33は上記実施の形態の構成に限られず、各押し上げ体34、35,36を他の構成の上下駆動手段、たとえばリニアモータやシリンダなどの上下駆動手段によってそれぞれ上下駆動させるようにしてもよい。
【0051】
図3に示すように、上記外側押し上げ体34と第1の内側押し上げ体35の周壁には上下方向に貫通した複数の吸引孔34a,35aが周方向に所定間隔で穿設されている。上記第2の内側押し上げ体36の中心部には一端を上面に開口させた吸引孔36aが穿設されている。この吸引孔36aの他端は図2に示すように上記第2の内側押し上げ体36の下端から延出された駆動軸部48の上記収容部24内に位置する部分の外周面に開口している。
【0052】
上記バックアップ体1の周壁の下端部には上記収容部24に連通する連通孔55が形成されていて、この連通孔55は上記吸引ポンプ30に配管32によって接続されている。それによって、上記吸引ポンプ30の吸引力は、各可動部材34〜36に形成された吸引孔34a〜36aを通じてこれら可動部材34〜36の上面に作用することになる。
【0053】
つぎに、上記構成のピックアップ装置の作用を図4(a)〜(d)を参照しながら説明する。
図1及び図4(a)に示すようにバックアップ体1を、その吸着面としての上面が粘着シート3の下面に接触する位置まで上昇させたならば、粘着シート3が張設されたウエハリング2を含むエキスパンド機構8をX、Y方向に駆動し、ピックアップする半導体チップ4がバックアップ体1の上面の開口部23の上方に位置決めする。つまり、半導体チップ4はその中心が開口部23の中心に一致するよう位置決めされる。
【0054】
ピックアップされる半導体チップ4を位置決めしたならば、上下駆動モータ14を作動させる。それによって、吸着ノズル17が下降してその吸着面17aがピックアップされる半導体チップ4の上面に接触する。この時点では吸着ノズル17に吸引力は発生させない。
【0055】
上記吸着ノズル17を下降させ、その吸着面17aが半導体チップ4の上面に接触すると同時に、回転モータ54を作動させてから、吸引ポンプ31を作動させる。
【0056】
上記回転モータ54を作動させることで、図4(b)に示すように押し上げ手段33の外側押し上げ体34、第1、第2の内側押し上げ体35,36が一緒に上昇する。それによって、粘着シート3の半導体チップ4の周辺部に位置する部分が引き伸ばされる。このとき、上記吸着ノズル17は各押し上げ体34,35,36の上昇に連動して上昇する。
【0057】
上記吸引ポンプ31が作動すると、図4(b)に示すようにバックアップ体1の上面の環状溝25と外側押し上げ体34及び第1乃至第2の内側押し上げ体35,36の吸引孔34a〜36cに吸引力が生じる。それによって、その吸引力で粘着シート3のピックアップされる半導体チップ4が貼着された部分の下面がバックアップ体1及び各押し上げ体34〜36の上端面に吸着保持される。
【0058】
上記外側押し上げ体34の上端面は全長にわたって外方から内方に向かって低く傾斜した傾斜面34bに形成されている。そのため、上記半導体チップ4の周辺部は上記傾斜面34bの傾斜角度に応じた角度で上方に向かって湾曲傾斜する。
【0059】
上記半導体チップ4の周辺部が上方に向かって湾曲傾斜すると、その周辺部から粘着シート3が剥離され易い角度となっている。そのため、粘着テープ3に加わった張力によって上記半導体チップ4の周縁部全体から粘着テープ3の剥離が開始されることになる。
【0060】
このような状態から、上記回転モータ54によってカム体53がさらに回転させられると、図4(c)に示すように外側押し上げ体34は上昇せずに、第1の内側押し上げ体35と第2の内側押し上げ体36が一体的に上昇する。このとき、吸着ノズル17に吸引力を発生させて半導体チップ4を吸着保持する。
【0061】
第1の内側押し上げ体35と第2の内側押し上げ体36が一体的に上昇すると、外側押し上げ体34によって引き伸ばされた粘着シート3の半導体チップ4の周辺部に位置する部分にさらに引っ張り力が加わって引き伸ばされるとともに、半導体チップ4の周辺部が外側押し上げ体34の傾斜面34bから上昇する。
【0062】
それによって、粘着シート3の剥離は半導体チップ4の周縁部から第1の内側押し上げ体35の外周縁の箇所まで進行することになる。
【0063】
このとき、上方に向かって傾斜湾曲した半導体チップ4の周辺部は、外側押し上げ体34の傾斜面34bから離れてゆくことで、傾斜した状態から水平方向に戻ることになることで、下方へ湾曲し易くなる虞がある。
【0064】
しかしながら、半導体チップ4の周縁部からの粘着シート3の剥離は、半導体チップ4の周辺部が上方に向かって傾斜した状態のときにすでに開始されている。そのため、半導体チップ4の周辺部が傾斜した状態から水平になるときに粘着シート3の剥離が進行しても、そのときには粘着シート3の剥離が半導体チップ4の周辺部に大きな負荷を加えることなく進行するから、半導体チップ3の周辺部に粘着シート3の張力が加わっても、下方へ大きく湾曲して損傷するようなことがない。
【0065】
しかも、半導体チップ4は吸着ノズル17によって吸着保持されているから、そのことによっても周辺部が下方へ湾曲変形するのが阻止される。
【0066】
上記第1の内側押し上げ体35と第2の内側押し上げ体36とが所定の高さ、つまり第1の内側押し上げ体35の上昇限まで上昇すると、つぎは図4(d)に示すように第2の内側押し上げ体36だけが上昇する。
【0067】
それによって、半導体チップ4の下面からの粘着シート3の剥離がさらに進行し、第2の内側押し上げ体36によって支持された部分だけが粘着シート3に貼着した状態となる。つまり、半導体チップ4は吸着ノズル17によって粘着シート3からピックアップ可能な状態となる。
【0068】
上記吸着ノズル17には図4(c)の状態のときに吸引力が発生させられる。それによって、粘着シート3が図4(d)の状態まで剥離された半導体チップ4は上記吸着ノズル17によってピックアップされることになる。
【0069】
すなわち、上記構成のピックアップ装置によれば、半導体チップ4の周辺部を上方に向かって傾斜湾曲させた状態で、この半導体チップ4の周縁部から粘着シート3を剥離を開始させるため、半導体チップ4の周辺部に粘着シート3の引っ張り力が加わっても、その周辺部が下方に向かって大きく湾曲して損傷するということがない。
【0070】
しかも、粘着シート3の剥離が半導体チップ4の周辺部全体から同時に進行するため、半導体チップ4がピックアップ可能となるまでの粘着シート3の剥離を短時間で行なうことができる。それによって、生産性の向上を図ることができる。
【0071】
上記半導体チップ4の周辺部を上方に向かって傾斜させた状態で粘着シート3を引き伸ばして剥離するため、半導体チップ4の周縁から粘着シート3が剥離され易い角度となる。そのため、半導体チップ4からの粘着シート3の剥離を確実かつ迅速に行なうことができる。
【0072】
なお、上記第1の実施の形態において、外側押し上げ体34の傾斜面34bに吸引力を発生させるようにしたが、第1、第2の内側押し上げ体35,36の上端面に吸引力を発生させれば、半導体チップ4の周辺部を傾斜湾曲させることが可能であるから、外側押し上げ体34の傾斜面34bに吸引力を発生させなくとも差し支えない。
【0073】
図5と図6(a)〜(d)はこの発明の第2の実施の形態を示す。
この第2の実施の形態は押し上げ手段の変形例であって、この押し上げ手段33Aは図5に示すように平面形状が矩形状の半導体チップ4の3つの側辺に対応するコ字状をなした第1の押し上げ体61と、筒状に形成され上記半導体チップ4の3つの側辺部以外の部分に対応する形状、つまり側辺部62a及び上記第1の押し上げ体61の内部に入り込む矩形部62bを有する第2の押し上げ体62と、この第2の押し上げ体62の矩形部62bに形成された断面矩形状の挿通部63に挿通された角柱状の第3の押し上げ体64からなる。
【0074】
上記第1の押し上げ体61の上端面はコ字状の閉塞端側から開放端側に向かって低くなる傾斜面61aに形成され、上記第2の押し上げ体62と第3の押し上げ体64の上端面は平坦面に形成されている。上記傾斜面61aの傾斜角度は10〜30度の範囲に設定されることが好ましい。
【0075】
上記第1乃至第3の押し上げ体61,62,64は図6に示すようにバックアップ体1内に上下方向に移動可能に設けられ、第1の実施の形態と同様、押し上げ手段33の上下駆動手段56によって順次上昇限まで上昇方向に駆動される。
【0076】
なお、第1乃至第3の押し上げ体61,62,64には上端面に開口する貫通孔(図示せず)が形成され、これら貫通孔にはバックアップ体1の内部空間を介して吸引力が発生するようになっている。
【0077】
つぎに、図6(a)〜(d)を参照しながら、半導体チップ4をピックアップする動作を説明する。
【0078】
初期状態では図6(a)に示すように第1の押し上げ体61の傾斜面61aの傾斜方向の上端がバックアップ体1の上端面と同じ高さに位置決めされ、第2、第3の押し上げ体62,64の上端面は上記傾斜面61aの傾斜方向下端と同じ高さに位置決めされている。その状態で上記バックアップ体1はX、Y方向に駆動されてピックアップされる半導体チップ4の下面に位置決めされ、さらにZ方向に駆動されて上端面が粘着シート3の下面に接触する高さに位置決めされる。
【0079】
位置決めされると、バックアップ体1の上端面に粘着シート3を吸着したなら、吸着ノズル17を下降させてから、第1乃至第3の押し上げ体61,62,64を、これらの上端面に吸引力を発生させながら、上下駆動手段56(第1の実施の形態に示す)によって一体的に上昇させる。
【0080】
それによって、まず、図6(b)に示すように第1の押し上げ体61の傾斜面61aは、粘着シート3の半導体チップ4の3つの側辺部の外側に位置する部分を引き伸ばしながら、半導体チップ4を上記傾斜面61aの傾斜角度に応じて傾斜上昇させる。このように、半導体チップ4が傾斜させられると、その3つの側辺部の外縁から粘着シート3の剥離が開始する。
【0081】
このとき、吸着ノズル17は半導体チップ3の上面を吸着した状態で、上記第1乃至第3の押し上げ体61,62,64の上昇に応じて上昇する。
【0082】
上記第1の押し上げ体61が上昇限まで上昇すると、つぎに図6(c)に示すように第2の押し上げ体62と第3の押し上げ体64が上昇し、これらの平坦な上端面によって上記傾斜面61aによって傾斜させられた半導体チップ4を上記傾斜面61aから押し上げながら水平な状態で上昇させる。
【0083】
半導体チップ4が傾斜した状態から水平な状態に角度を変えながら上昇させられると、上記傾斜面61aによって傾斜させられるときに引き伸ばされた、粘着シート3がさらに引き伸ばされる。それと同時に、粘着シート3の半導体チップ4の残りの1つの側辺部に対応する部分が上記第2の押し上げ体62の側辺部62aによって引き伸ばされる。
【0084】
それによって、半導体チップ4の上記3つの側辺部からの粘着テープ3の剥離がさらに進行するとともに、残りの1つの側辺部からの剥離も開始される。そして、その剥離は第2の押し上げ体62の外縁まで進行する。
【0085】
第2、第3の押し上げ体62,64が上昇限まで上昇すると、つぎは図6(d)に示すように第3の押し上げ64だけが上昇する。それによって、半導体チップ4からの粘着シート3の剥離がさらに進行し、第3の押し上げ体64の上面を除く部分が全て剥離されることになる。すなわち、粘着シート3は半導体チップ4を吸着ノズル17によってピックアップが可能となる状態まで剥離される。
【0086】
したがって、第3の押し上げ体64が上昇限まで上昇した後、上記半導体チップ4は上記吸着ノズル17によってピックアップされる。
【0087】
このような構成のピックアップ装置によれば、半導体チップ4を第1の押し上げ体61の傾斜面61aで傾斜させながら押し上げ、粘着シート3の半導体チップ4の三辺の外方に位置する部分を引き伸ばして剥離を開始させてから、上記半導体チップ4を第2、第3の押し上げ体62,64で水平にしながら押し上げることで、上記粘着シート3の上記三辺に対応する部分をさらに引き伸ばすとともに、残りの一辺に対応する部分も引き伸ばして剥離を開始させるようにした。
【0088】
そのため、半導体チップ4を湾曲させることなく、その周辺部全体から粘着シート3を剥離することができるから、湾曲させることで半導体チップ4を損傷させるということがないばかりか、ピックアップ可能な状態となるまでに要する剥離時間を短縮し、生産性の向上を図ることができる。
【0089】
しかも、半導体チップ4を傾斜させた状態で粘着シート3を引き伸ばして剥離するため、半導体チップ4の周縁から粘着シート3が剥離し易くなる。そのため、半導体チップ4からの粘着シート3の剥離を確実かつ迅速に行なうことができる。
【0090】
図7と図8(a)〜(d)はこの発明の第3の実施の形態を示す。この実施の形態は押し上げ手段の変形例であって、この押し上げ手段33Bは平面形状が矩形状の半導体チップ4の3つの側辺に対応するコ字状をなした第1の押し上げ体66と、筒状に形成され上記半導体チップ4の3つの側辺部以外の部分に対応する形状、つまり側辺部67a及び上記第1の押し上げ体66の内部に入り込む矩形部67bを有する第2の押し上げ体67と、この第2の押し上げ体67の矩形部67bに形成された断面矩形状の空間部68に挿通された角柱状の第3の押し上げ体69からなる。
【0091】
上記第1の押し上げ体66の上端面はコ字状の閉塞端側から開放端側に向かって低く傾斜した第1の傾斜面66aに形成され、第2の押し上げ体67の上端面は側辺部67aから矩形部67bに向かって低く傾斜した第2の傾斜面67cに形成されている。つまり、第1の傾斜面66aと第2の傾斜面67cは逆向きに傾斜している。上記第1、第2の傾斜面66a,67cの傾斜角度は10〜30度の範囲に設定されることが好ましい。
【0092】
なお、第3の押し上げ体69の上端面は平坦面に形成されている。
【0093】
上記第1乃至第3の押し上げ体66,67,69はバックアップ体1内に上下方向に移動可能に設けられ、第1の実施の形態と同様、上下駆動手段56によって後述するように上下方向に駆動される。
【0094】
なお、第1乃至第3の押し上げ体66,67,69には上端面に開口する貫通孔(図示せず)が形成され、これら貫通孔にはバックアップ体1の内部空間を介して吸引力が発生するようになっている。
【0095】
つぎに、図8(a)〜(d)を参照しながら、半導体チップ4をピックアップする動作を説明する。
【0096】
初期状態では図8(a)に示すように第1の押し上げ体66の第1の傾斜面66aの傾斜方向の上端がバックアップ体1の上端面と同じ高さに位置決めされ、第2の押し上げ体67の第2の傾斜面67cの傾斜方向上端は上記第1の傾斜面66aの傾斜方向下端とほぼ同じ高さになっている。
【0097】
第3の押し上げ体64の上端面は第2の傾斜面67cの中途部に位置し、その傾斜面67cから上方に突出しない高さに位置決めされている。
【0098】
その状態で上記バックアップ体1はX、Y方向に駆動されてピックアップされる半導体チップ4の下面に位置決めされ、さらにZ方向に駆動されて上端面が粘着シート3の下面に接触する高さに位置決めされる。そして、吸着ノズル17によって半導体チップ4の上面が吸着される。
【0099】
ついで、バックアップ体1の上端面で粘着シート3を吸着したなら、第1乃至第3の押し上げ体66,67,69を、これらの上端面に吸引力を発生させながら、上下駆動手段56によって一体的に上昇させる。それによって、図8(b)に示すように第1の押し上げ体66の第1の傾斜面66aは、粘着シート3の半導体チップ4の3つの側辺部の外側に位置する部分を引き伸ばしながら、半導体チップ4を上記第1の傾斜面66aの傾斜角度に応じて傾斜させる。
【0100】
上記吸着ノズル17は第1乃至第3の押し上げ体66,67,69の上昇に応じて上昇する。
半導体チップ4を上記第1の傾斜面66aによって傾斜させると、その3つの側辺部の縁部から粘着シート3の剥離が開始される。
【0101】
上記第1の押し上げ体66が上昇限まで上昇すると、つぎに図8(c)に示すように第2の押し上げ体67と第3の押し上げ体69が上昇し、上記第1の傾斜面66aによって傾斜させられた半導体チップ4が、第1の傾斜面66aと逆方向に傾斜した第2の押し上げ体67の第2の傾斜面67cによって押し上げられる。
【0102】
このとき、吸着ノズル17によって半導体チップ4の上面に吸着保持する。それによって、半導体チップ4は第1、第2の傾斜面66a,67cに沿って湾曲することなく、水平な状態が維持される。
【0103】
このようにして半導体チップ4を押し上げると、粘着シート3の半導体チップ4の周辺部に位置する部分が全体にわたって十分に引き伸ばされるから、半導体チップ4の周辺部全体の縁部から粘着シート3が剥離される。
【0104】
第2、第3の押し上げ体67,69が上昇限まで上昇すると、つぎは図8(d)に示すように第3の押し上げ体69だけが上昇する。それによって、半導体チップ4からの粘着シート3の剥離がさらに進行し、粘着シート3は第3の押し上げ体69の上面に対応する部分だけが貼着した状態となる。
【0105】
したがって、粘着シート3から半導体チップ4をピックアップ可能な状態となるから、吸着ノズル17によってその半導体チップ4をピックアップすることができる。
【0106】
このような構成のピックアップ装置によれば、粘着シート3の剥離を、矩形状の半導体チップ4の周辺部全体から進行させることができるから、半導体チップ4をピックアップ可能な状態となるまで粘着シート3を剥離するために要する時間を短縮することができる。
【0107】
しかも、半導体チップ4を傾斜させた状態で粘着シート3を引き伸ばして剥離するため、その傾斜角度によって半導体チップ4の周縁から粘着シート3が剥離し易くなる。そのため、半導体チップ4からの粘着シート3の剥離を確実かつ迅速に行なうことができる。
【符号の説明】
【0108】
1…バックアップ体、3…粘着シート、4…半導体チップ、10…バックアップユニット、11…ピックアップ手段、17…吸着ノズル、33…押し上げ手段、34…外側押し上げ体、35…第1の内側押し上げ体、36…第2の内側押し上げ体、39,43,46…ばね、53…カム体、56…上下駆動手段、61,66…第1の押し上げ体、62,67…第2の押し上げ体、64,69…第3の押し上げ体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着シートの上面に貼着された矩形状の半導体チップをピックアップする半導体チップのピックアップ装置であって、
上面が上記粘着シートの下面を吸着保持する吸着面に形成されたバックアップ体と、
このバックアップ体内に上下方向に駆動可能に設けられ上記半導体チップを上記粘着テープを介して上昇方向に駆動して上記半導体チップを上記バックアップ体の上面から押し上げる押し上げ手段と、
この押し上げ手段によって押し上げられた半導体チップを上記粘着シートからピックアップするピックアップ手段を具備し、
上記押し上げ手段は、
角筒状に形成され上端面の全周が外方から内方に向かって低く傾斜した傾斜面に形成された外側押し上げ体と、
上記外側押し上げ体の内部に設けられ上端面が平坦面に形成され下降位置でその上端面が上記傾斜面の傾斜方向の下端とほぼ同じ高さに位置決めされ上記上端面によって上記半導体チップの上記周辺部よりも内側の部分を吸引することで上記周辺部を上方に向かって傾斜させる内側押し上げ体と、
上記傾斜面によって上記半導体チップの周辺部が上方に向かって傾斜された状態で上記外側押し上げ体と内側押し上げ体を一体的に上昇方向に駆動して上記粘着シートの上記半導体チップの周縁部に位置する部分を引き伸ばしてから、上記内側押し上げ体だけを上昇方向に駆動して上記半導体チップを押し上げてこの半導体チップの周辺部から上記粘着シートを剥離させる上下駆動手段と
によって構成されていることを特徴とする半導体チップのピックアップ装置。
【請求項2】
上記内側押し上げ体は、角筒状の第1の内側押し上げ体と、この第1の内側押し上げ体内に挿通された角柱状の第2の内側押し上げ体とによって構成されていて、
上記上下駆動手段は上記第1の内側押し上げ体と上記第2の内側押し上げ体を上記第1の内側押し上げ体の上昇限まで押し上げてから、上記第2の内側押し上げ体をさらに上昇させることを特徴とする請求項1記載の半導体チップのピックアップ装置。
【請求項3】
粘着シートの上面に貼着された矩形状の半導体チップを下方から押し上げてピックアップする半導体チップのピックアップ方法であって、
上記半導体チップの周辺部全体を上方に向かって傾斜させる工程と、
周辺部が傾斜させられた上記半導体チップを上昇方向に駆動して上記粘着テープの上記半導体チップの周辺部に位置する部分を引き伸ばす工程と、
粘着テープの周辺部を引き伸ばしたならば、上記半導体チップの周辺部よりも内側の部分を押し上げて上記半導体チップの周辺部から上記粘着テープを剥離する工程と、
周辺部から粘着テープが剥離された半導体チップをピックアップする工程と
を具備したことを特徴とする半導体チップのピックアップ方法。
【請求項4】
粘着シートの上面に貼着された矩形状の半導体チップをピックアップする半導体チップのピックアップ装置であって、
上面が上記粘着シートの下面を吸着保持する吸着面に形成されたバックアップ体と、
このバックアップ体内に上下方向に駆動可能に設けられ上記半導体チップを上記粘着テープを介して上昇方向に駆動して上記半導体チップを上記バックアップ体の上面から押し上げる押し上げ手段と、
この押し上げ手段によって押し上げられた半導体チップを上記粘着シートからピックアップするピックアップ手段を具備し、
上記押し上げ手段は、
上端面が上記半導体チップの4つの側辺部のうちの1つの側辺部を除く3つの側辺部に対応するほぼコ字状であって、上記半導体チップの上記1つの側辺部に向かって低く傾斜した傾斜面に形成された第1の押し上げ体と、
上端面が平面であって上記半導体チップの上記3つの側辺部以外の部分に対応する形状に形成された筒状の第2の押し上げ体と、
上端面が平面であって上記第2の押し上げ体の内部に挿通された第3の押し上げ体と、
上記第1の押し上げ体を上昇方向に駆動してその傾斜面で上記半導体チップを湾曲させることなく傾斜させて上記粘着シートを引き伸ばしながら押し上げてから、上記第2、第3の押し上げ体を上昇方向に駆動して上記粘着シートをさらに引き伸ばしながら上記半導体チップを上記傾斜面から離れて水平になるまで上昇させた後、上記第3の押し上げ体を上昇方向に駆動して上記半導体チップを上記第2の押し上げ体の上面から離れる高さまで上昇させて上記半導体チップの周辺部から上記粘着シートを剥離させる上下駆動手段と
によって構成されていることを特徴とする半導体チップのピックアップ装置。
【請求項5】
粘着シートの上面に貼着された矩形状の半導体チップを下方から押し上げてピックアップする半導体チップのピックアップ方法であって、
水平に保持された上記半導体チップを湾曲させることなく幅方向一端から他端に向かって低くなるよう傾斜させて押し上げて上記粘着テープを引き伸ばす工程と、
傾斜させられた上記半導体チップを水平となるよう上昇させて上記粘着テープの上記半導体チップの幅方向他端に位置する部分を引き伸ばす工程と、
上記粘着テープの上記半導体チップの周辺部全体に位置する部分を引き伸ばしたならば、上記半導体チップをさらに水平に上昇させて上記半導体チップの周辺部から上記粘着テープを剥離する工程と、
周辺部から粘着テープが剥離された上記半導体チップをピックアップする工程と
を具備したことを特徴とする半導体チップのピックアップ方法。
【請求項6】
水平になった半導体チップをさらに上昇させるために上記半導体チップを押し上げるとき、半導体チップを水平に押し上げるときよりも小さな押圧面積で上記半導体チップを押し上げることを特徴とする請求項5記載の半導体チップのピックアップ方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−212509(P2010−212509A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58409(P2009−58409)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】