半導体装置およびその製造方法
【課題】モールド樹脂の剥離を抑制可能な半導体装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】半導体チップ20と、一面10aを有すると共に一面10aに導電性部材搭載領域を有し、導電性部材搭載領域に半導体チップ20が導電性部材30を介して搭載される搭載部材10と、搭載部材10の少なくとも一部および半導体チップ20を封止するモールド樹脂40と、を有し、搭載部材10の一面10aのうちモールド樹脂40と接する部位が凹凸形状とされている半導体装置において、搭載部材10のうちモールド樹脂40と接する部位の表面に水酸化物13を形成する。
【解決手段】半導体チップ20と、一面10aを有すると共に一面10aに導電性部材搭載領域を有し、導電性部材搭載領域に半導体チップ20が導電性部材30を介して搭載される搭載部材10と、搭載部材10の少なくとも一部および半導体チップ20を封止するモールド樹脂40と、を有し、搭載部材10の一面10aのうちモールド樹脂40と接する部位が凹凸形状とされている半導体装置において、搭載部材10のうちモールド樹脂40と接する部位の表面に水酸化物13を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搭載部材の一面上に半導体チップを搭載し、搭載部材および半導体チップをモールド樹脂にて封止してなる半導体装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、特許文献1には、搭載部材の一面上にはんだを介して半導体チップを搭載し、搭載部材および半導体チップをモールド樹脂にて封止してなる半導体装置が開示されている。具体的には、この半導体装置では、搭載部材はモールド樹脂と接する部位は凹凸形状とされている。
【0003】
これによれば、搭載部材はモールド樹脂と接する部位が凹凸形状とされているため、アンカー効果等によって搭載部材とモールド樹脂との密着性を向上させることができ、モールド樹脂が剥離することを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−201036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記半導体装置は、搭載部材の凹凸形状によってモールド樹脂との密着性を向上させているものの、高温環境下と低温環境下との間で繰り返し使用される場合には、モールド樹脂の剥離が生じる可能性がある。このため、最近では、さらにモールド樹脂の剥離が抑制可能な半導体装置が望まれている。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、モールド樹脂の剥離を抑制可能な半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明者らは、ヒートシンクの一面にニッケルメッキ膜が形成されてなる搭載部材を用い、搭載部材のうちニッケルメッキ膜が形成されている一面に半導体チップが搭載されていると共に当該搭載部材におけるニッケルメッキ膜のうちモールド樹脂と接する部位が凹凸形状とされている半導体装置に対して、せん断接着強度(MPa)に関する実験を行った。そして、モールド樹脂の化学的な結合力を利用することにより、さらにモールド樹脂の剥離が抑制できることを見出した。図13は、せん断接着強度と、搭載部材の一面との関係を示す図である。なお、ニッケルメッキ膜ははんだ濡れ性を向上させるための膜であり、本実験ではヒートシンクの一面全面に形成されている。
【0008】
図13に示されるように、ヒートシンクにニッケルメッキ膜を形成し、当該ニッケルメッキ膜を平坦とした場合には、せん断接着強度は5MPaであった。また、ニッケルメッキ膜のうちモールド樹脂と接する部位を凹凸形状とした場合には、せん断接着強度の平均は10MPaであった。そして、ニッケルメッキ膜のうちモールド樹脂と接する部位を凹凸形状とすると共に表面に水酸化物としての水酸化ニッケル(Ni(OH)2)を形成した場合には、せん断接着強度の平均は約15MPaであった。
【0009】
すなわち、ニッケルメッキ膜のうちモールド樹脂と接する部位を凹凸形状とすると共に表面に水酸化ニッケル(Ni(OH)2)を形成した場合には、ニッケルメッキ膜のうちモールド樹脂と接する部位を凹凸形状とした半導体装置と比較して、せん断接着強度の平均を約1.5倍高くすることができた。この理由については未だ完全に解明されていないが、本発明者らは、水酸化ニッケル(Ni(OH)2)に含まれるOH基がニッケルやニッケルメッキ膜の表面に形成される自然酸化膜と比較してモールド樹脂(エポキシ環)と結合しやすく、化学結合力によって密着性が向上するためであると考えている。
【0010】
このため、請求項1に記載の発明では、搭載部材(10)のうちモールド樹脂(40)と接する部位の表面には、水酸化物(13)が形成されていることを特徴としている。
【0011】
このような半導体装置では、搭載部材(10)のうちモールド樹脂(40)と接する部位の表面に水酸化物(13)が形成されているため、OH基によるモールド樹脂(40)との化学結合力によってモールド樹脂(40)の剥離を抑制することができる。
【0012】
例えば、請求項2に記載の発明のように、搭載部材(10)は、板状のヒートシンク(11)と、ヒートシンク(11)とモールド樹脂(40)との間に形成され、表面が凹凸形状とされたニッケルメッキ膜(12)と、を備え、ニッケルメッキ膜(12)の表面に水酸化物(13)としてのニッケル水酸化物が形成されているものとすることができる。そして、請求項3に記載の発明のように、ニッケル水酸化物を水酸化ニッケルとすることができる。
【0013】
また、請求項4に記載の発明のように、導電性部材(30)をはんだとし、搭載部材(10)の導電性部材搭載領域に、搭載部材(10)のうちモールド樹脂(40)と接する部位よりもはんだ濡れ性が高いはんだ接合膜(110)を形成することができる。
【0014】
この場合、請求項5に記載の発明のように、はんだ接合膜(110)を金メッキ膜とすることができる。また、請求項6に記載の発明のように、はんだ接合膜(110)を凹凸形状とされたニッケルメッキ膜とすることができる。
【0015】
また、請求項7に記載の発明では、搭載部材(10)を用意する工程と、搭載部材(10)の一面(10a)に導電性部材(30)を介して半導体チップ(20)を搭載する搭載工程と、搭載部材(10)にウェットブラストを行い、搭載部材(10)のうちモールド樹脂(40)と接する部位の表面を凹凸形状にすると共に当該表面に水酸化物(13)を形成する粗化工程と、搭載部材(10)の少なくとも一部および半導体チップ(20)をモールド樹脂(40)にて封止する封止工程と、を行うことを特徴としている。
【0016】
このように、搭載部材(10)にウェットブラストを行って水酸化物(13)を形成することにより、モールド樹脂(40)の剥離を抑制することができる。
【0017】
この場合、請求項8に記載の発明のように、搭載部材(10)を用意する工程は、一面を有する板状のヒートシンク(11)にニッケルメッキ膜(12)が備えられたものを用意し、粗化工程では水酸化物(13)としてニッケル水酸化物を形成することができる。
【0018】
また、請求項9に記載の発明のように、粗化工程は、搭載工定の後に行い、搭載部材(10)の一面(10a)をウェットブラストする際には、半導体チップ(20)をマスクとしてウェットブラストすることができる。これによれば、半導体チップ(20)をマスクとしているため、搭載部材(10)の一面(10a)のうち導電性部材(30)と接触する導電性部材接触領域と、ウェットブラストされた粗化領域との間に非粗化領域が形成されることを抑制することができる。
【0019】
そして、請求項10に記載の発明のように、粗化工程は、導電性部材搭載領域にマスク(80)を配置して行い、搭載工程は、粗化工程の後に行い、導電性部材搭載領域に導電性部材(30)としてのはんだを配置し、スパンカ(110)によってはんだを導電性部材搭載領域の全面に広げた後に当該はんだを介して搭載部材(10)に半導体チップ(20)を搭載することができる。
【0020】
これによれば、スパンカ(110)によってはんだを導電性部材搭載領域の全面に広げているため、はんだ引けやはんだ乗り上げが発生することを抑制することができる。
【0021】
さらに、請求項11に記載の発明のように、搭載部材(10)を用意する工程は、導電性部材搭載領域に、搭載部材(10)のうちモールド樹脂(40)と接する部位よりもはんだ濡れ性が高いはんだ接合膜(110)が形成されたものを用意し、搭載工程は、導電性部材(30)としてのはんだを介してはんだ接合膜(110)に半導体チップ(20)を搭載することができる。
【0022】
この場合、請求項12に記載の発明のように、搭載部材(10)を用意する工程は、導電性部材搭載領域を含む領域にはんだ接合膜(110)が形成されたものを用意し、粗化工程は、搭載部材(10)のうちモールド樹脂(40)と接する部位に形成されたはんだ接合膜(110)を除去しつつ、モールド樹脂(40)と接する部位の表面を凹凸形状にすると共に当該表面に水酸化物(13)を形成し、搭載工程は、粗化工程の後に行うことができる。
【0023】
また、請求項13に記載の発明のように、搭載部材(10)を用意する工程は、導電性部材搭載領域に、無電界メッキにて形成され、表面が凹凸形状とされたニッケルメッキ膜(12)を有するものを用意し、搭載工程は、粗化工程の後に行うことができる。
【0024】
これら請求項11ないし13に記載のように、搭載部材(10)のうちモールド樹脂(40)と接する部位よりもはんだ濡れ性が高いはんだ接合膜(110)にはんだを介して半導体チップ(20)を搭載することにより、はんだが濡れ広がりやすくなるため、はんだ引けやはんだ乗り上げが発生することを抑制することができる。
【0025】
また、請求項14に記載の発明のように、粗化工程は、搭載部材(10)の一面(10a)および一面(10a)と反対側の他面(10b)側から同時にウェットブラストを行うことができる。
【0026】
このように、搭載部材(10)一面(10a)側および他面(10b)側から同時にウェットブラストを行うことにより、搭載部材(10)が反ることを抑制することができる。
【0027】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態における半導体装置の断面構成を示す図である。
【図2】図1中の領域Aの拡大図である。
【図3】図1に示す半導体装置の製造工程を示す断面図である
【図4】(a)は搭載部材の平面図であり、(b)は(a)中の領域Bの拡大図である。
【図5】ニッケルメッキ膜におけるはんだ接触領域と粗化領域との間の距離と、モールド樹脂の剥離の有無を調べた結果である。
【図6】本発明の第2実施形態における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図8】搭載部材の平面図である。
【図9】スパンカによってはんだを押圧している際の断面図である。
【図10】本発明の第4実施形態における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図11】本発明の第5実施形態における半導体装置の断面構成を示す図である。
【図12】図11に示す半導体装置の製造工程を示す図である。
【図13】せん断接着強度と搭載部材の一面との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態における半導体装置の断面構成を示す図であり、図2は、図1中の領域Aの拡大図である。
【0030】
図1に示されるように、半導体装置は、搭載部材10に半導体チップ20が本発明の導電性部材に相当するはんだ30を介して搭載され、これら搭載部材10および半導体チップ20がモールド樹脂40にて封止されて構成されている。
【0031】
搭載部材10は、一面10aおよび当該一面10aと反対側の他面10bを有し、板状のヒートシンク11がニッケルメッキ膜12に覆われて構成されている。ヒートシンク11は、Fe、Cu、Mo、42アロイ、コバール等の放熱性に優れた金属材料で構成されており、一面10a側から他面10b側に向かって面積が小さくなるテーパ形状の板状とされている。特に限定されるものではないが、本実施形態のヒートシンク11は、一面10a側が一辺が20mmとされた正方形状とされ、厚さが2mmとされている。また、ヒートシンク11は、所定の一辺に図1中紙面右側方向へ突出する端子部11aを備えており、端子部11aを介して外部と電気的な接続が図られるようになっている。
【0032】
半導体チップ20は、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)素子等のパワー素子が形成されてチップの表裏面の間に電流を流すものであり、一辺が10mmの正方形状とされていると共に厚さが0.2mmとされている。以下では、半導体チップ20の裏面をコレクタ面とし、半導体チップ20の表面をエミッタ面として説明する。
【0033】
半導体チップ20は、裏面が搭載部材10の一面10aと対向するように、搭載部材10の一面10aの略中央部にはんだ30を介して搭載されており、搭載部材10と電気的および熱的に接続されている。すなわち、半導体チップ20のコレクタ面が搭載部材10と電気的に接続されている。
【0034】
また、搭載部材10の外側には、接続端子部50が備えられている。接続端子部50は、金属性の棒状部材51がニッケルメッキ膜12に覆われて構成されている。本実施形態では、搭載部材10を挟んで端子部11aと反対側に2本の接続端子部50が備えられているが、接続端子部50は、例えば、端子部11a側に備えられていてもよい。そして、これら接続端子部50は、半導体チップ20のエミッタ面に形成されたゲートパッドおよびエミッタパッドとボンディングワイヤ60を介して結線されて電気的に接続されている。なお、図1では、エミッタパッドと電気的に接続される接続端子部、およびエミッタパッドと接続端子部とを結線するボンディングワイヤを省略して示してある。
【0035】
そして、これら搭載部材10、半導体チップ20、接続端子部50、およびボンディングワイヤ60は、端子部11aの一部および接続端子部50の一部がアウターリードとして露出するように、モールド樹脂40によって封止されている。
【0036】
なお、モールド樹脂40は、エポキシ系樹脂にシリカ、アルミナ、窒化ボロン(BN)等のフィラーが混在され、ヒートシンク11の熱膨張係数に近づけたものを用いることが好ましい。
【0037】
そして、図2に示されるように、搭載部材10の一面10aにおけるニッケルメッキ膜12のうちモールド樹脂40と接する部位は凹凸形状とされていると共に表面にニッケル水酸化物13としての水酸化ニッケル(Ni(OH)2)が形成されている。本実施形態では、ニッケルメッキ膜12は7μm程度形成されており、ニッケル水酸化物13が5nm程度形成されている。
【0038】
以上説明した半導体装置は、次の製造方法により製造される。図3は、図1に示す半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【0039】
まず、図3(a)に示されるように、ヒートシンク11および棒状部材51が図示しないフレーム部によって一体化されたリードフレーム70を用意し、リードフレーム70の表面全面に無電界メッキ等によってニッケルメッキ膜12を7μm程度形成する。そして、搭載部材10の一面10aのうちはんだ搭載領域にSUS等で構成されるマスク80を配置する。なお、はんだ搭載領域とは、搭載部材10と半導体チップ20とを接続するはんだ30が搭載される領域のことであり、本発明の導電性部材搭載領域に相当している。
【0040】
その後、搭載部材10の一面10aがブラストガン90と対向するようにリードフレーム70を配置し、ブラストガン90から水と研磨材からなるスラリーを吹き付けることによってウェットブラストを行う。これによって、図3(a)中では図示しないが、図2に示されるように、搭載部材10の一面10aにおけるニッケルメッキ膜12のうちマスク80が配置されていない部位、すなわちはんだ30が搭載されずにモールド樹脂40と接する部位は、スラリーによって凹凸形状となると共に表面にニッケル水酸化物13としての水酸化ニッケル(Ni(OH)2)が形成される。
【0041】
特に限定されるものではないが、ウェットブラストは、例えば、研磨材として粒子径が4〜40μm程度であるアルミナを用いることができ、0.2〜0.3MPaの圧力でブラストガン90からスラリーを吹き付けることによって行うことができる。この条件でウェットブラストを行うことにより、ニッケルメッキ膜12を7μm形成した場合には、最も凹まされた部分の最大深さを7μm以下とすることができ、リードフレーム70がニッケルメッキ膜12から露出しないようにすることができると共に、ニッケルメッキ膜12の表面に1nm程度のニッケル水酸化物13を形成することができる。
【0042】
続いて、図3(b)に示されるように、リードフレーム70からマスク80を除去した後、はんだ搭載領域にはんだ30を配置すると共に半導体チップ20を配置する。そして、真空リフローによって、搭載部材10に半導体チップ20をはんだ30を介して接合する。このリフロー工程は、はんだ30のボイド率を低減させるために還元雰囲気にて行うことが好ましい。
【0043】
なお、ニッケル水酸化物13としての水酸化ニッケルは、還元雰囲気下においてもはんだ濡れ性が低いため、リフロー工程の際に、はんだ搭載領域に配置されたはんだ30が必要以上に濡れ広がることを抑制することができる。すなわち、はんだ30がはんだ搭載領域からはみ出すことを抑制することができる。
【0044】
次に、図3(c)に示されるように、半導体チップ20と接続端子部50とをボンディングワイヤ60を介して結線して電気的に接続する。続いて、上記のように、シリカ等を混在させて熱膨張係数をヒートシンク11に近づけたモールド樹脂40によって、端子部11aおよび接続端子部50の一部が露出するように、搭載部材10、半導体チップ20、はんだ30、ボンディングワイヤ60を封止し、図示しないフレーム部を切断して搭載部材10と接続端子部50とを分離することにより、図1に示す半導体装置が製造される。
【0045】
以上説明したように、本実施形態の半導体装置では、搭載部材10の一面10aにおけるニッケルメッキ膜12のうちモールド樹脂40と接する部位は、凹凸形状とされていると共に表面にニッケル水酸化物13が形成されている。このため、凹凸形状により、アンカー効果によってモールド樹脂40の剥離を抑制することができる。また、ニッケル水酸化物13に含まれるOH基によるモールド樹脂40との化学結合力によって、さらにモールド樹脂40の剥離を抑制することができる。
【0046】
なお、上記では、搭載部材10の一面10aにおけるニッケルメッキ膜12のうちモールド樹脂40と接する部位が凹凸形状とされていると共に表面にニッケル水酸化物13が形成されている例について説明した。しかしながら、搭載部材10の側面や他面10bに形成されたニッケルメッキ膜12についても、凹凸形状とされていると共に表面にニッケル水酸化物13が形成されていてもよく、この場合はさらにモールド樹脂40の剥離を抑制することができる。なお、このように搭載部材10の側面や他面10bに形成されたニッケルメッキ膜12を凹凸形状にすると共に表面にニッケル水酸化物13を形成する場合には、例えば、図3(a)の工程において、リードフレーム70の配置を変更しながらウェットブラストを行えばよい。
【0047】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。上記第1実施形態では、搭載部材10にマスク80を配置してウェットブラストを行っているが、マスク80を配置する際や半導体チップ20を搭載する際に位置ズレが生じることがある。この場合、ニッケルメッキ膜12のうちはんだ30と接触するはんだ接触領域と、ニッケルメッキ膜12のうちウェットブラストされた粗化領域(以下では、単に粗化領域という)との間に非粗化領域が形成される場合がある。すなわち、マスク80が配置されるはんだ搭載領域と、実際にはんだ30が接触するはんだ接触領域とが異なる可能性があり、この場合には次の問題が発生する。
【0048】
図4(a)は搭載部材10の平面図であり、ニッケルメッキ膜12のうちはんだ接触領域と粗化領域との間に非粗化領域が形成されるように半導体チップ20を搭載して半導体装置を構成したときのものであって半導体チップ20は省略して示してある。また、図4(b)は図4(a)中の領域Bの拡大図である。図5は、ニッケルメッキ膜12におけるはんだ接触領域と粗化領域との間の距離と、モールド樹脂40の剥離の有無を調べた結果である。なお、図5は、ヒートシンク11として熱膨張係数が17ppm/℃であるCuを用い、モールド樹脂40として熱膨張係数が14ppm/℃になるようにエポキシ系樹脂にシリカを混在させたものを用い、外部温度を−40℃から150℃の温度範囲で1000回繰り返し変化させたときの結果である。
【0049】
図4に示されるように、ニッケルメッキ膜12のうちはんだ接触領域12aと粗化領域12bとの間の距離、すなわち非粗化領域12cの幅をdとする。この場合、図5に示されるように、はんだ接触領域12aと粗化領域12bとの間の距離が1mm以下である場合には、モールド樹脂40の剥離は観察されなかったが、はんだ接触領域12aと粗化領域12bとの間の距離が1.2mm以上である場合にはモールド樹脂40の剥離が観察された。なお、図5中では、モールド樹脂40の剥離が生じなかった場合を○、剥離が生じた場合を×として示してある。
【0050】
すなわち、上記第1実施形態の半導体装置では、ヒートシンク11として熱膨張係数が17ppm/℃であるCuを用い、モールド樹脂40として熱膨張係数が14ppm/℃になるようにエポキシ系樹脂にシリカを混在させたものを用いた場合には、マスク80の位置ズレや半導体チップ20を搭載する際の位置ズレが発生し、ニッケルメッキ膜12のうちはんだ接触領域12aと粗化領域12bとの間の距離が1mmより大きくなると、ニッケル水酸化物13によってモールド樹脂40の剥離を抑制することができるものの、最終的にはモールド樹脂40が剥離することになる。
【0051】
また、マスク80や半導体チップ20の位置ズレが発生すると、はんだ搭載領域のうち端部まではんだ30が行き渡らずにはんだ引けが発生したり、はんだ搭載領域を超えてはんだが広がるはんだ乗り上げが発生したりする。この場合、はんだ引けが発生した部分では接続不良が発生する可能性がある。また、はんだ乗り上げが発生した部分では、粗化領域は水酸化物によってはんだ濡れ性が低くなるため、ボイドが発生しやすく接続不良が発生する可能性がある。
【0052】
このため、本実施形態は第1実施形態に対してウェットブラストを行う際のマスク80を変更し、ニッケルメッキ膜12におけるはんだ接触領域12aと粗化領域12bとの間の距離が1mm以下となるようにしたものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。図6は、本実施形態における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【0053】
まず、図6(a)に示されるように、図2(a)と同様に、リードフレーム70を用意し、リードフレーム70の表面全面にニッケルメッキ膜12を形成する。そして、搭載部材10の一面10aのうちはんだ搭載領域にはんだ30を配置すると共に半導体チップ20を配置し、リフロー工程を行って搭載部材10に半導体チップ20をはんだ30を介して接合する。
【0054】
続いて、図6(b)に示されるように、搭載部材10の一面10aがブラストガン90と対向するように、半導体チップ20を搭載したリードフレーム70を配置し、半導体チップ20をマスクとしてウェットブラストを行う。これにより、搭載部材10の一面10aにおけるニッケルメッキ膜12のうち、はんだ30と接触するはんだ接触領域以外の領域はウェットブラストされることになる。このため、ニッケルメッキ膜12のうちはんだ接触領域12aと粗化領域12bとの間に非粗化領域12cが形成されることを抑制することができ、はんだ接触領域12aと非粗化領域12cとの間の距離をほぼ無くすことができる。すなわち、本実施形態では、はんだ搭載領域とはんだ接触領域とが完全に等しくなる。
【0055】
その後は、図6(c)に示されるように、上記図2(c)と同様に、モールド樹脂40によって、端子部11aおよび接続端子部50の一部が露出するように、搭載部材10、半導体チップ20、はんだ30、ボンディングワイヤ60を封止する。
【0056】
このような製造方法では、搭載部材10に半導体チップ20を搭載した後にウェットブラストを行っている。このため、ニッケルメッキ膜12のうちはんだ接触領域12aと粗化領域12bとの間に非粗化領域12cが形成されることを抑制することができ、モールド樹脂40が剥離することを抑制することができる。
【0057】
また、搭載部材10に半導体チップ20を搭載した後にウェットブラストを行うため、はんだ引けやはんだ乗り上げが発生することも抑制することができる。
【0058】
さらに、図6では、はんだ30を簡易化して示してあるが、実際には搭載部材10の一面10a側から視たとき、はんだ30は半導体チップ20からわずかにはみ出している。このため、半導体チップ20からはみ出しているはんだ30にも凹凸形状が形成されることになる。したがって、はんだ30とモールド樹脂40との密着性を向上させることもできる。
【0059】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。上記第1実施形態では、はんだ引けやはんだ乗り上げが発生してしまう可能性があり、上記第2実施形態では半導体チップ20をマスクとするために半導体チップ20にスラリーによってダメージが印加されて素子不良が発生する可能性がある。このため、本実施形態では、半導体チップ20を搭載する際にスパンカによってはんだ30を広げる工程を行うものであり、その他に関しては上記第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。図7は、本実施形態における半導体装置の製造工程を示す図である。
【0060】
まず、上記図2(a)と同様に、リードフレーム70を用意し、リードフレーム70の表面全面にニッケルメッキ膜12を形成する。そして、搭載部材10の一面10aのうちはんだ搭載領域にマスク80を配置してウェットブラストを行う。
【0061】
次に、図7(b)に示されるように、搭載部材10のうちはんだ搭載領域にはんだ30を塗布する。続いて、図7(c)に示されるように、はんだ30を所定形状に整形するスパンカ100によってはんだ30を押圧し、はんだ30をはんだ搭載領域の端部まで押圧して広げる。
【0062】
ここで、本実施形態のスパンカ100について説明する。本実施形態のスパンカ100は、はんだ30を押圧する底面100aと、底面の外縁に沿って設けられた側面100bとを有している。底面100aは、はんだ搭載領域に対応する形状とされており、正方形状とされている。側面100bは、底面100aとのなす内角θが鈍角とされており、本実施形態では120°となるテーパ形状とされている。そして、このスパンカ100によってはんだ30を押圧することにより、はんだ30をはんだ搭載領域の全域に行き渡らせている。
【0063】
図8は、搭載部材10の平面図であり、マスク80の位置ズレが生じたときのものである。図9は、スパンカ100によってはんだ30を押圧している際の断面図であり、(a)の搭載部材10は図8中のC−C断面図、(b)の搭載部材10は図8中のD―D断面図に相当している。なお、図9では、ニッケル水酸化物13は省略して示してある。
【0064】
例えば、図8に示されるように、はんだ搭載予定領域(図8中点線)に対してマスク80が紙面右側にずれてしまい、実際のはんだ搭載領域(図8中実線)が紙面右側にずれてしまう場合がある。この場合、スパンカ100をはんだ搭載予定領域と底面100aとが対向する状態で配置し、はんだ30を押圧すると、側面100bは底面100aとの成す内角θが鈍角となるテーパとされているため、図9(a)に示されるように、はんだ搭載予定領域に対して内側にズレた領域では、はんだ30が濡れ広がるときにニッケル水酸化物13および側面100bによりはんだ30の濡れ広がりが止まる。また、図9(b)に示されるように、はんだ搭載予定領域に対して外側にズレた領域では、スパンカ100の側面によってはんだ30が粗化領域まで濡れ広がる。
【0065】
なお、ここでは、スパンカ100の底面100aがはんだ搭載予定領域と対応する形状とされたものについて説明したが、例えば、スパンカ100の底面100aがはんだ搭載領域より大きくされていてもよい。この場合であっても、はんだ30をスパンカ100によって押圧することにより、はんだ30は、ニッケル水酸化物13が形成された領域では濡れ広がりが止まって濡れ広がっていない領域に濡れ広がろうとするため、はんだ搭載領域の端部まで濡れ広がることになる。
【0066】
その後は、図7(d)に示されるように、上記図2(b)と同様に、搭載部材10に半導体チップ20を搭載し、図7(e)に示されるように、上記図2(c)と同様に、モールド樹脂40によって、端子部11aおよび接続端子部50の一部が露出するように、搭載部材10、半導体チップ20、はんだ30、ボンディングワイヤ60を封止する。
【0067】
このような製造方法では、スパンカ100によってはんだ30を押圧してはんだ搭載領域の全域に行き渡らせた後、搭載部材10に半導体チップ20を搭載している。このため、半導体チップ20にダメージを印加することなく、はんだ引けが発生したり、はんだ乗り上げが発生したりすることを抑制することができる。
【0068】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態について説明する。上記第1〜第3実施形態では、搭載部材10の一面10a側からウェットブラストを行う方法を説明したが、ウェットブラストはスラリーを衝突させるために搭載部材10(リードフレーム70)に反りが発生する可能性がある。このため、本実施形態は、搭載部材10の一面10a側および他面10b側から同時にウェットブラストを行うものであり、その他に関しては上記第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。図10は、本実施形態における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【0069】
まず、図10(a)に示されるように、リードフレーム70を用意し、リードフレーム70の表面全面にニッケルメッキ膜12を形成する。そして、搭載部材10の一面10aのうちはんだ搭載領域にマスク80を配置する。その後、搭載部材10の一面10aおよび他面10bがブラストガン90と対向するようにリードフレーム70を配置し、搭載部材10の一面10a側に配置されているブラストガン90および他面10b側に配置されているブラストガン90からスラリーを吹き付けて同時にウェットブラストを行う。
【0070】
なお、ウェットブラストは、搭載部材10の一面10a側に配置されているブラストガン90および他面10b側に配置されているブラストガン90から同じスラリーを同じ圧力で吹き付け、搭載部材10の一面10a側および他面10b側に同じ力が印加されるようにする。
【0071】
その後は、図10(b)に示されるように、上記図2(b)と同様に、搭載部材10に半導体チップ20を搭載し、図10(c)に示されるように、上記図2(c)と同様に、モールド樹脂40によって、端子部11aおよび接続端子部50の一部が露出するように、搭載部材10、半導体チップ20、はんだ30、ボンディングワイヤ60を封止する。
【0072】
このような製造方法では、搭載部材10の一面10a側および他面10b側から同時にウェットブラストを行うため、搭載部材10が沿ってしまうことを抑制することができる。また、搭載部材10における側面および他面10bのニッケルメッキ膜12もウェットブラストされるため、さらにモールド樹脂40の剥離を抑制することができる。
【0073】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態について説明する。本実施形態では、第1実施形態に対して搭載部材10のはんだ搭載領域に、搭載部材10のうちモールド樹脂40と接する部位よりもはんだ濡れ性が高いはんだ接合膜110を配置したものであり、その他に関しては上記第4実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。図11は、本実施形態における半導体装置の断面構成を示す図である。
【0074】
図11に示されるように、搭載部材10の一面10aのうち、はんだ搭載領域には、ニッケルメッキ膜12よりもはんだ濡れ性の高いはんだ接合膜110としての金メッキ膜が1μm程度形成されている。そして、この金メッキ膜上に半導体チップ20がはんだ30を介して搭載されている。
【0075】
図12は、本実施形態における半導体装置の製造工程を示す断面図である。まず、図12(a)に示されるように、リードフレーム70を用意し、リードフレーム70の全面にニッケルメッキ膜12を形成する。その後、ニッケルメッキ膜12の全面にはんだ接合膜110としての金メッキ膜を1μm程度形成する。そして、搭載部材10の一面10aのうちはんだ搭載領域にマスク80を配置する。
【0076】
続いて、搭載部材10の一面10aおよび他面10bがブラストガン90と対向するようにリードフレーム70を配置し、ウェットブラストを行う。ウェットブラストは、マスク80が配置されていない部分のはんだ接合膜110が除去されてニッケルメッキ膜12が露出し、露出したニッケルメッキ膜12に凹凸形状が形成されると共に表面にニッケル水酸化物13が形成されるまで行う。特に限定されるものではないが、例えば、金メッキ膜を1μm形成した場合には、粒子を粒子径が10μm程度であるアルミナを用い、圧力を0.2Mpaとしてウェットブラストを行うことで金メッキ膜を除去すると共にニッケルメッキ膜12の表面に凹凸形状を形成することができ、表面にニッケル水酸化物13を形成することができる。
【0077】
その後は、図12(b)に示されるように、上記図2(b)と同様に、搭載部材10に半導体チップ20を搭載し、図12(c)に示されるように、上記図2(c)と同様に、モールド樹脂40によって、端子部11aおよび接続端子部50の一部が露出するように、搭載部材10、半導体チップ20、はんだ30、ボンディングワイヤ60を封止する。
【0078】
このように、はんだ搭載領域にニッケルメッキ膜12よりはんだ濡れ性の高いはんだ接合膜110を形成することにより、リフロー工程の際にはんだ30がはんだ搭載領域の端部まで濡れ広がりやすくなるため、接続不良が発生することを抑制することができる。また、上記第3実施形態のようにスパンカ100を用いる必要もないため、製造工程を簡略化することもできる。
【0079】
(他の実施形態)
上記各実施形態では、導電性部材としてはんだ30を例に挙げて説明したが、例えば、導電性部材として銀ペーストや導電性接着剤等を用いることもできる。
【0080】
また、上記各実施形態では、搭載部材10が完全にモールド樹脂40に封止されている例について説明したが、例えば、搭載部材10の他面10bがモールド樹脂40から露出するハーフモールド構造とされていてもよい。すなわち、搭載部材10は少なくとも一部がモールド樹脂40によって封止されていればよい。
【0081】
さらに、上記各実施形態では、ヒートシンク11がテーパ形状であるものについて説明したが、ヒートシンク11はテーパ形状とされておらず、直方体状のものとされていてもよい。
【0082】
また、上記各実施形態では、端子部11aはヒートシンク11に備えられた例について説明したが、例えば、端子部11aは、ヒートシンク11と分離されており、はんだ等を介してヒートシンク11に接合されることでヒートシンク11と電気的に接続されるようになっていてもよい。
【0083】
そして、上記各実施形態では、搭載部材10はヒートシンク11がニッケルメッキ膜12によって覆われてなるものについて説明したが、搭載部材10をヒートシンク11のみで構成することもできる。この場合もウェットブラストを行うことによって、モールド樹脂40と接する部位が凹凸形状になると共に表面に水酸化物が形成されるため、本発明の効果を得ることができる。
【0084】
さらに、上記第5実施形態では、はんだ接合膜110として金メッキ膜を例に挙げて説明したが、はんだ接合膜110として次のものを用いることができる。例えば、はんだ接合膜110として、はんだ搭載領域のニッケルメッキ膜12を凹凸形状とし、平坦なニッケルメッキ膜よりはんだ濡れ性を向上させたものとすることができる。このように、はんだ接合膜110を凹凸形状を有するニッケルメッキ膜12とする場合には、メッキ条件を適宜変更することによりヒートシンク11の全面に凹凸形状を有するニッケルメッキ膜12を形成するようにしてもよいし、ヒートシンク11のうちはんだ搭載領域となるニッケルメッキ膜12のみ凹凸形状となるようにしてもよい。また、ヒートシンク11の全面にニッケルメッキ膜12を形成し、はんだ搭載領域が開口しているマスクを搭載部材10に配置した後、ドライブラスト等によってはんだ搭載領域のニッケルメッキ膜12に凹凸形状を形成してもよい。なお、ニッケルメッキ膜12のうちモールド樹脂40と接する部位は、ウェットブラストされることによって凹凸形状になるもののニッケル水酸化物13が形成されるため、はんだ接合膜110よりはんだ濡れ性は低くなる。
【符号の説明】
【0085】
10 搭載部材
11 ヒートシンク
11a 端子部
12 ニッケルメッキ膜
13 ニッケル水酸化物
20 半導体チップ
30 はんだ
40 モールド樹脂
50 接続端子部
60 ボンディングワイヤ
【技術分野】
【0001】
本発明は、搭載部材の一面上に半導体チップを搭載し、搭載部材および半導体チップをモールド樹脂にて封止してなる半導体装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、特許文献1には、搭載部材の一面上にはんだを介して半導体チップを搭載し、搭載部材および半導体チップをモールド樹脂にて封止してなる半導体装置が開示されている。具体的には、この半導体装置では、搭載部材はモールド樹脂と接する部位は凹凸形状とされている。
【0003】
これによれば、搭載部材はモールド樹脂と接する部位が凹凸形状とされているため、アンカー効果等によって搭載部材とモールド樹脂との密着性を向上させることができ、モールド樹脂が剥離することを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−201036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記半導体装置は、搭載部材の凹凸形状によってモールド樹脂との密着性を向上させているものの、高温環境下と低温環境下との間で繰り返し使用される場合には、モールド樹脂の剥離が生じる可能性がある。このため、最近では、さらにモールド樹脂の剥離が抑制可能な半導体装置が望まれている。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、モールド樹脂の剥離を抑制可能な半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明者らは、ヒートシンクの一面にニッケルメッキ膜が形成されてなる搭載部材を用い、搭載部材のうちニッケルメッキ膜が形成されている一面に半導体チップが搭載されていると共に当該搭載部材におけるニッケルメッキ膜のうちモールド樹脂と接する部位が凹凸形状とされている半導体装置に対して、せん断接着強度(MPa)に関する実験を行った。そして、モールド樹脂の化学的な結合力を利用することにより、さらにモールド樹脂の剥離が抑制できることを見出した。図13は、せん断接着強度と、搭載部材の一面との関係を示す図である。なお、ニッケルメッキ膜ははんだ濡れ性を向上させるための膜であり、本実験ではヒートシンクの一面全面に形成されている。
【0008】
図13に示されるように、ヒートシンクにニッケルメッキ膜を形成し、当該ニッケルメッキ膜を平坦とした場合には、せん断接着強度は5MPaであった。また、ニッケルメッキ膜のうちモールド樹脂と接する部位を凹凸形状とした場合には、せん断接着強度の平均は10MPaであった。そして、ニッケルメッキ膜のうちモールド樹脂と接する部位を凹凸形状とすると共に表面に水酸化物としての水酸化ニッケル(Ni(OH)2)を形成した場合には、せん断接着強度の平均は約15MPaであった。
【0009】
すなわち、ニッケルメッキ膜のうちモールド樹脂と接する部位を凹凸形状とすると共に表面に水酸化ニッケル(Ni(OH)2)を形成した場合には、ニッケルメッキ膜のうちモールド樹脂と接する部位を凹凸形状とした半導体装置と比較して、せん断接着強度の平均を約1.5倍高くすることができた。この理由については未だ完全に解明されていないが、本発明者らは、水酸化ニッケル(Ni(OH)2)に含まれるOH基がニッケルやニッケルメッキ膜の表面に形成される自然酸化膜と比較してモールド樹脂(エポキシ環)と結合しやすく、化学結合力によって密着性が向上するためであると考えている。
【0010】
このため、請求項1に記載の発明では、搭載部材(10)のうちモールド樹脂(40)と接する部位の表面には、水酸化物(13)が形成されていることを特徴としている。
【0011】
このような半導体装置では、搭載部材(10)のうちモールド樹脂(40)と接する部位の表面に水酸化物(13)が形成されているため、OH基によるモールド樹脂(40)との化学結合力によってモールド樹脂(40)の剥離を抑制することができる。
【0012】
例えば、請求項2に記載の発明のように、搭載部材(10)は、板状のヒートシンク(11)と、ヒートシンク(11)とモールド樹脂(40)との間に形成され、表面が凹凸形状とされたニッケルメッキ膜(12)と、を備え、ニッケルメッキ膜(12)の表面に水酸化物(13)としてのニッケル水酸化物が形成されているものとすることができる。そして、請求項3に記載の発明のように、ニッケル水酸化物を水酸化ニッケルとすることができる。
【0013】
また、請求項4に記載の発明のように、導電性部材(30)をはんだとし、搭載部材(10)の導電性部材搭載領域に、搭載部材(10)のうちモールド樹脂(40)と接する部位よりもはんだ濡れ性が高いはんだ接合膜(110)を形成することができる。
【0014】
この場合、請求項5に記載の発明のように、はんだ接合膜(110)を金メッキ膜とすることができる。また、請求項6に記載の発明のように、はんだ接合膜(110)を凹凸形状とされたニッケルメッキ膜とすることができる。
【0015】
また、請求項7に記載の発明では、搭載部材(10)を用意する工程と、搭載部材(10)の一面(10a)に導電性部材(30)を介して半導体チップ(20)を搭載する搭載工程と、搭載部材(10)にウェットブラストを行い、搭載部材(10)のうちモールド樹脂(40)と接する部位の表面を凹凸形状にすると共に当該表面に水酸化物(13)を形成する粗化工程と、搭載部材(10)の少なくとも一部および半導体チップ(20)をモールド樹脂(40)にて封止する封止工程と、を行うことを特徴としている。
【0016】
このように、搭載部材(10)にウェットブラストを行って水酸化物(13)を形成することにより、モールド樹脂(40)の剥離を抑制することができる。
【0017】
この場合、請求項8に記載の発明のように、搭載部材(10)を用意する工程は、一面を有する板状のヒートシンク(11)にニッケルメッキ膜(12)が備えられたものを用意し、粗化工程では水酸化物(13)としてニッケル水酸化物を形成することができる。
【0018】
また、請求項9に記載の発明のように、粗化工程は、搭載工定の後に行い、搭載部材(10)の一面(10a)をウェットブラストする際には、半導体チップ(20)をマスクとしてウェットブラストすることができる。これによれば、半導体チップ(20)をマスクとしているため、搭載部材(10)の一面(10a)のうち導電性部材(30)と接触する導電性部材接触領域と、ウェットブラストされた粗化領域との間に非粗化領域が形成されることを抑制することができる。
【0019】
そして、請求項10に記載の発明のように、粗化工程は、導電性部材搭載領域にマスク(80)を配置して行い、搭載工程は、粗化工程の後に行い、導電性部材搭載領域に導電性部材(30)としてのはんだを配置し、スパンカ(110)によってはんだを導電性部材搭載領域の全面に広げた後に当該はんだを介して搭載部材(10)に半導体チップ(20)を搭載することができる。
【0020】
これによれば、スパンカ(110)によってはんだを導電性部材搭載領域の全面に広げているため、はんだ引けやはんだ乗り上げが発生することを抑制することができる。
【0021】
さらに、請求項11に記載の発明のように、搭載部材(10)を用意する工程は、導電性部材搭載領域に、搭載部材(10)のうちモールド樹脂(40)と接する部位よりもはんだ濡れ性が高いはんだ接合膜(110)が形成されたものを用意し、搭載工程は、導電性部材(30)としてのはんだを介してはんだ接合膜(110)に半導体チップ(20)を搭載することができる。
【0022】
この場合、請求項12に記載の発明のように、搭載部材(10)を用意する工程は、導電性部材搭載領域を含む領域にはんだ接合膜(110)が形成されたものを用意し、粗化工程は、搭載部材(10)のうちモールド樹脂(40)と接する部位に形成されたはんだ接合膜(110)を除去しつつ、モールド樹脂(40)と接する部位の表面を凹凸形状にすると共に当該表面に水酸化物(13)を形成し、搭載工程は、粗化工程の後に行うことができる。
【0023】
また、請求項13に記載の発明のように、搭載部材(10)を用意する工程は、導電性部材搭載領域に、無電界メッキにて形成され、表面が凹凸形状とされたニッケルメッキ膜(12)を有するものを用意し、搭載工程は、粗化工程の後に行うことができる。
【0024】
これら請求項11ないし13に記載のように、搭載部材(10)のうちモールド樹脂(40)と接する部位よりもはんだ濡れ性が高いはんだ接合膜(110)にはんだを介して半導体チップ(20)を搭載することにより、はんだが濡れ広がりやすくなるため、はんだ引けやはんだ乗り上げが発生することを抑制することができる。
【0025】
また、請求項14に記載の発明のように、粗化工程は、搭載部材(10)の一面(10a)および一面(10a)と反対側の他面(10b)側から同時にウェットブラストを行うことができる。
【0026】
このように、搭載部材(10)一面(10a)側および他面(10b)側から同時にウェットブラストを行うことにより、搭載部材(10)が反ることを抑制することができる。
【0027】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態における半導体装置の断面構成を示す図である。
【図2】図1中の領域Aの拡大図である。
【図3】図1に示す半導体装置の製造工程を示す断面図である
【図4】(a)は搭載部材の平面図であり、(b)は(a)中の領域Bの拡大図である。
【図5】ニッケルメッキ膜におけるはんだ接触領域と粗化領域との間の距離と、モールド樹脂の剥離の有無を調べた結果である。
【図6】本発明の第2実施形態における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図8】搭載部材の平面図である。
【図9】スパンカによってはんだを押圧している際の断面図である。
【図10】本発明の第4実施形態における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図11】本発明の第5実施形態における半導体装置の断面構成を示す図である。
【図12】図11に示す半導体装置の製造工程を示す図である。
【図13】せん断接着強度と搭載部材の一面との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態における半導体装置の断面構成を示す図であり、図2は、図1中の領域Aの拡大図である。
【0030】
図1に示されるように、半導体装置は、搭載部材10に半導体チップ20が本発明の導電性部材に相当するはんだ30を介して搭載され、これら搭載部材10および半導体チップ20がモールド樹脂40にて封止されて構成されている。
【0031】
搭載部材10は、一面10aおよび当該一面10aと反対側の他面10bを有し、板状のヒートシンク11がニッケルメッキ膜12に覆われて構成されている。ヒートシンク11は、Fe、Cu、Mo、42アロイ、コバール等の放熱性に優れた金属材料で構成されており、一面10a側から他面10b側に向かって面積が小さくなるテーパ形状の板状とされている。特に限定されるものではないが、本実施形態のヒートシンク11は、一面10a側が一辺が20mmとされた正方形状とされ、厚さが2mmとされている。また、ヒートシンク11は、所定の一辺に図1中紙面右側方向へ突出する端子部11aを備えており、端子部11aを介して外部と電気的な接続が図られるようになっている。
【0032】
半導体チップ20は、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)素子等のパワー素子が形成されてチップの表裏面の間に電流を流すものであり、一辺が10mmの正方形状とされていると共に厚さが0.2mmとされている。以下では、半導体チップ20の裏面をコレクタ面とし、半導体チップ20の表面をエミッタ面として説明する。
【0033】
半導体チップ20は、裏面が搭載部材10の一面10aと対向するように、搭載部材10の一面10aの略中央部にはんだ30を介して搭載されており、搭載部材10と電気的および熱的に接続されている。すなわち、半導体チップ20のコレクタ面が搭載部材10と電気的に接続されている。
【0034】
また、搭載部材10の外側には、接続端子部50が備えられている。接続端子部50は、金属性の棒状部材51がニッケルメッキ膜12に覆われて構成されている。本実施形態では、搭載部材10を挟んで端子部11aと反対側に2本の接続端子部50が備えられているが、接続端子部50は、例えば、端子部11a側に備えられていてもよい。そして、これら接続端子部50は、半導体チップ20のエミッタ面に形成されたゲートパッドおよびエミッタパッドとボンディングワイヤ60を介して結線されて電気的に接続されている。なお、図1では、エミッタパッドと電気的に接続される接続端子部、およびエミッタパッドと接続端子部とを結線するボンディングワイヤを省略して示してある。
【0035】
そして、これら搭載部材10、半導体チップ20、接続端子部50、およびボンディングワイヤ60は、端子部11aの一部および接続端子部50の一部がアウターリードとして露出するように、モールド樹脂40によって封止されている。
【0036】
なお、モールド樹脂40は、エポキシ系樹脂にシリカ、アルミナ、窒化ボロン(BN)等のフィラーが混在され、ヒートシンク11の熱膨張係数に近づけたものを用いることが好ましい。
【0037】
そして、図2に示されるように、搭載部材10の一面10aにおけるニッケルメッキ膜12のうちモールド樹脂40と接する部位は凹凸形状とされていると共に表面にニッケル水酸化物13としての水酸化ニッケル(Ni(OH)2)が形成されている。本実施形態では、ニッケルメッキ膜12は7μm程度形成されており、ニッケル水酸化物13が5nm程度形成されている。
【0038】
以上説明した半導体装置は、次の製造方法により製造される。図3は、図1に示す半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【0039】
まず、図3(a)に示されるように、ヒートシンク11および棒状部材51が図示しないフレーム部によって一体化されたリードフレーム70を用意し、リードフレーム70の表面全面に無電界メッキ等によってニッケルメッキ膜12を7μm程度形成する。そして、搭載部材10の一面10aのうちはんだ搭載領域にSUS等で構成されるマスク80を配置する。なお、はんだ搭載領域とは、搭載部材10と半導体チップ20とを接続するはんだ30が搭載される領域のことであり、本発明の導電性部材搭載領域に相当している。
【0040】
その後、搭載部材10の一面10aがブラストガン90と対向するようにリードフレーム70を配置し、ブラストガン90から水と研磨材からなるスラリーを吹き付けることによってウェットブラストを行う。これによって、図3(a)中では図示しないが、図2に示されるように、搭載部材10の一面10aにおけるニッケルメッキ膜12のうちマスク80が配置されていない部位、すなわちはんだ30が搭載されずにモールド樹脂40と接する部位は、スラリーによって凹凸形状となると共に表面にニッケル水酸化物13としての水酸化ニッケル(Ni(OH)2)が形成される。
【0041】
特に限定されるものではないが、ウェットブラストは、例えば、研磨材として粒子径が4〜40μm程度であるアルミナを用いることができ、0.2〜0.3MPaの圧力でブラストガン90からスラリーを吹き付けることによって行うことができる。この条件でウェットブラストを行うことにより、ニッケルメッキ膜12を7μm形成した場合には、最も凹まされた部分の最大深さを7μm以下とすることができ、リードフレーム70がニッケルメッキ膜12から露出しないようにすることができると共に、ニッケルメッキ膜12の表面に1nm程度のニッケル水酸化物13を形成することができる。
【0042】
続いて、図3(b)に示されるように、リードフレーム70からマスク80を除去した後、はんだ搭載領域にはんだ30を配置すると共に半導体チップ20を配置する。そして、真空リフローによって、搭載部材10に半導体チップ20をはんだ30を介して接合する。このリフロー工程は、はんだ30のボイド率を低減させるために還元雰囲気にて行うことが好ましい。
【0043】
なお、ニッケル水酸化物13としての水酸化ニッケルは、還元雰囲気下においてもはんだ濡れ性が低いため、リフロー工程の際に、はんだ搭載領域に配置されたはんだ30が必要以上に濡れ広がることを抑制することができる。すなわち、はんだ30がはんだ搭載領域からはみ出すことを抑制することができる。
【0044】
次に、図3(c)に示されるように、半導体チップ20と接続端子部50とをボンディングワイヤ60を介して結線して電気的に接続する。続いて、上記のように、シリカ等を混在させて熱膨張係数をヒートシンク11に近づけたモールド樹脂40によって、端子部11aおよび接続端子部50の一部が露出するように、搭載部材10、半導体チップ20、はんだ30、ボンディングワイヤ60を封止し、図示しないフレーム部を切断して搭載部材10と接続端子部50とを分離することにより、図1に示す半導体装置が製造される。
【0045】
以上説明したように、本実施形態の半導体装置では、搭載部材10の一面10aにおけるニッケルメッキ膜12のうちモールド樹脂40と接する部位は、凹凸形状とされていると共に表面にニッケル水酸化物13が形成されている。このため、凹凸形状により、アンカー効果によってモールド樹脂40の剥離を抑制することができる。また、ニッケル水酸化物13に含まれるOH基によるモールド樹脂40との化学結合力によって、さらにモールド樹脂40の剥離を抑制することができる。
【0046】
なお、上記では、搭載部材10の一面10aにおけるニッケルメッキ膜12のうちモールド樹脂40と接する部位が凹凸形状とされていると共に表面にニッケル水酸化物13が形成されている例について説明した。しかしながら、搭載部材10の側面や他面10bに形成されたニッケルメッキ膜12についても、凹凸形状とされていると共に表面にニッケル水酸化物13が形成されていてもよく、この場合はさらにモールド樹脂40の剥離を抑制することができる。なお、このように搭載部材10の側面や他面10bに形成されたニッケルメッキ膜12を凹凸形状にすると共に表面にニッケル水酸化物13を形成する場合には、例えば、図3(a)の工程において、リードフレーム70の配置を変更しながらウェットブラストを行えばよい。
【0047】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。上記第1実施形態では、搭載部材10にマスク80を配置してウェットブラストを行っているが、マスク80を配置する際や半導体チップ20を搭載する際に位置ズレが生じることがある。この場合、ニッケルメッキ膜12のうちはんだ30と接触するはんだ接触領域と、ニッケルメッキ膜12のうちウェットブラストされた粗化領域(以下では、単に粗化領域という)との間に非粗化領域が形成される場合がある。すなわち、マスク80が配置されるはんだ搭載領域と、実際にはんだ30が接触するはんだ接触領域とが異なる可能性があり、この場合には次の問題が発生する。
【0048】
図4(a)は搭載部材10の平面図であり、ニッケルメッキ膜12のうちはんだ接触領域と粗化領域との間に非粗化領域が形成されるように半導体チップ20を搭載して半導体装置を構成したときのものであって半導体チップ20は省略して示してある。また、図4(b)は図4(a)中の領域Bの拡大図である。図5は、ニッケルメッキ膜12におけるはんだ接触領域と粗化領域との間の距離と、モールド樹脂40の剥離の有無を調べた結果である。なお、図5は、ヒートシンク11として熱膨張係数が17ppm/℃であるCuを用い、モールド樹脂40として熱膨張係数が14ppm/℃になるようにエポキシ系樹脂にシリカを混在させたものを用い、外部温度を−40℃から150℃の温度範囲で1000回繰り返し変化させたときの結果である。
【0049】
図4に示されるように、ニッケルメッキ膜12のうちはんだ接触領域12aと粗化領域12bとの間の距離、すなわち非粗化領域12cの幅をdとする。この場合、図5に示されるように、はんだ接触領域12aと粗化領域12bとの間の距離が1mm以下である場合には、モールド樹脂40の剥離は観察されなかったが、はんだ接触領域12aと粗化領域12bとの間の距離が1.2mm以上である場合にはモールド樹脂40の剥離が観察された。なお、図5中では、モールド樹脂40の剥離が生じなかった場合を○、剥離が生じた場合を×として示してある。
【0050】
すなわち、上記第1実施形態の半導体装置では、ヒートシンク11として熱膨張係数が17ppm/℃であるCuを用い、モールド樹脂40として熱膨張係数が14ppm/℃になるようにエポキシ系樹脂にシリカを混在させたものを用いた場合には、マスク80の位置ズレや半導体チップ20を搭載する際の位置ズレが発生し、ニッケルメッキ膜12のうちはんだ接触領域12aと粗化領域12bとの間の距離が1mmより大きくなると、ニッケル水酸化物13によってモールド樹脂40の剥離を抑制することができるものの、最終的にはモールド樹脂40が剥離することになる。
【0051】
また、マスク80や半導体チップ20の位置ズレが発生すると、はんだ搭載領域のうち端部まではんだ30が行き渡らずにはんだ引けが発生したり、はんだ搭載領域を超えてはんだが広がるはんだ乗り上げが発生したりする。この場合、はんだ引けが発生した部分では接続不良が発生する可能性がある。また、はんだ乗り上げが発生した部分では、粗化領域は水酸化物によってはんだ濡れ性が低くなるため、ボイドが発生しやすく接続不良が発生する可能性がある。
【0052】
このため、本実施形態は第1実施形態に対してウェットブラストを行う際のマスク80を変更し、ニッケルメッキ膜12におけるはんだ接触領域12aと粗化領域12bとの間の距離が1mm以下となるようにしたものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。図6は、本実施形態における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【0053】
まず、図6(a)に示されるように、図2(a)と同様に、リードフレーム70を用意し、リードフレーム70の表面全面にニッケルメッキ膜12を形成する。そして、搭載部材10の一面10aのうちはんだ搭載領域にはんだ30を配置すると共に半導体チップ20を配置し、リフロー工程を行って搭載部材10に半導体チップ20をはんだ30を介して接合する。
【0054】
続いて、図6(b)に示されるように、搭載部材10の一面10aがブラストガン90と対向するように、半導体チップ20を搭載したリードフレーム70を配置し、半導体チップ20をマスクとしてウェットブラストを行う。これにより、搭載部材10の一面10aにおけるニッケルメッキ膜12のうち、はんだ30と接触するはんだ接触領域以外の領域はウェットブラストされることになる。このため、ニッケルメッキ膜12のうちはんだ接触領域12aと粗化領域12bとの間に非粗化領域12cが形成されることを抑制することができ、はんだ接触領域12aと非粗化領域12cとの間の距離をほぼ無くすことができる。すなわち、本実施形態では、はんだ搭載領域とはんだ接触領域とが完全に等しくなる。
【0055】
その後は、図6(c)に示されるように、上記図2(c)と同様に、モールド樹脂40によって、端子部11aおよび接続端子部50の一部が露出するように、搭載部材10、半導体チップ20、はんだ30、ボンディングワイヤ60を封止する。
【0056】
このような製造方法では、搭載部材10に半導体チップ20を搭載した後にウェットブラストを行っている。このため、ニッケルメッキ膜12のうちはんだ接触領域12aと粗化領域12bとの間に非粗化領域12cが形成されることを抑制することができ、モールド樹脂40が剥離することを抑制することができる。
【0057】
また、搭載部材10に半導体チップ20を搭載した後にウェットブラストを行うため、はんだ引けやはんだ乗り上げが発生することも抑制することができる。
【0058】
さらに、図6では、はんだ30を簡易化して示してあるが、実際には搭載部材10の一面10a側から視たとき、はんだ30は半導体チップ20からわずかにはみ出している。このため、半導体チップ20からはみ出しているはんだ30にも凹凸形状が形成されることになる。したがって、はんだ30とモールド樹脂40との密着性を向上させることもできる。
【0059】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。上記第1実施形態では、はんだ引けやはんだ乗り上げが発生してしまう可能性があり、上記第2実施形態では半導体チップ20をマスクとするために半導体チップ20にスラリーによってダメージが印加されて素子不良が発生する可能性がある。このため、本実施形態では、半導体チップ20を搭載する際にスパンカによってはんだ30を広げる工程を行うものであり、その他に関しては上記第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。図7は、本実施形態における半導体装置の製造工程を示す図である。
【0060】
まず、上記図2(a)と同様に、リードフレーム70を用意し、リードフレーム70の表面全面にニッケルメッキ膜12を形成する。そして、搭載部材10の一面10aのうちはんだ搭載領域にマスク80を配置してウェットブラストを行う。
【0061】
次に、図7(b)に示されるように、搭載部材10のうちはんだ搭載領域にはんだ30を塗布する。続いて、図7(c)に示されるように、はんだ30を所定形状に整形するスパンカ100によってはんだ30を押圧し、はんだ30をはんだ搭載領域の端部まで押圧して広げる。
【0062】
ここで、本実施形態のスパンカ100について説明する。本実施形態のスパンカ100は、はんだ30を押圧する底面100aと、底面の外縁に沿って設けられた側面100bとを有している。底面100aは、はんだ搭載領域に対応する形状とされており、正方形状とされている。側面100bは、底面100aとのなす内角θが鈍角とされており、本実施形態では120°となるテーパ形状とされている。そして、このスパンカ100によってはんだ30を押圧することにより、はんだ30をはんだ搭載領域の全域に行き渡らせている。
【0063】
図8は、搭載部材10の平面図であり、マスク80の位置ズレが生じたときのものである。図9は、スパンカ100によってはんだ30を押圧している際の断面図であり、(a)の搭載部材10は図8中のC−C断面図、(b)の搭載部材10は図8中のD―D断面図に相当している。なお、図9では、ニッケル水酸化物13は省略して示してある。
【0064】
例えば、図8に示されるように、はんだ搭載予定領域(図8中点線)に対してマスク80が紙面右側にずれてしまい、実際のはんだ搭載領域(図8中実線)が紙面右側にずれてしまう場合がある。この場合、スパンカ100をはんだ搭載予定領域と底面100aとが対向する状態で配置し、はんだ30を押圧すると、側面100bは底面100aとの成す内角θが鈍角となるテーパとされているため、図9(a)に示されるように、はんだ搭載予定領域に対して内側にズレた領域では、はんだ30が濡れ広がるときにニッケル水酸化物13および側面100bによりはんだ30の濡れ広がりが止まる。また、図9(b)に示されるように、はんだ搭載予定領域に対して外側にズレた領域では、スパンカ100の側面によってはんだ30が粗化領域まで濡れ広がる。
【0065】
なお、ここでは、スパンカ100の底面100aがはんだ搭載予定領域と対応する形状とされたものについて説明したが、例えば、スパンカ100の底面100aがはんだ搭載領域より大きくされていてもよい。この場合であっても、はんだ30をスパンカ100によって押圧することにより、はんだ30は、ニッケル水酸化物13が形成された領域では濡れ広がりが止まって濡れ広がっていない領域に濡れ広がろうとするため、はんだ搭載領域の端部まで濡れ広がることになる。
【0066】
その後は、図7(d)に示されるように、上記図2(b)と同様に、搭載部材10に半導体チップ20を搭載し、図7(e)に示されるように、上記図2(c)と同様に、モールド樹脂40によって、端子部11aおよび接続端子部50の一部が露出するように、搭載部材10、半導体チップ20、はんだ30、ボンディングワイヤ60を封止する。
【0067】
このような製造方法では、スパンカ100によってはんだ30を押圧してはんだ搭載領域の全域に行き渡らせた後、搭載部材10に半導体チップ20を搭載している。このため、半導体チップ20にダメージを印加することなく、はんだ引けが発生したり、はんだ乗り上げが発生したりすることを抑制することができる。
【0068】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態について説明する。上記第1〜第3実施形態では、搭載部材10の一面10a側からウェットブラストを行う方法を説明したが、ウェットブラストはスラリーを衝突させるために搭載部材10(リードフレーム70)に反りが発生する可能性がある。このため、本実施形態は、搭載部材10の一面10a側および他面10b側から同時にウェットブラストを行うものであり、その他に関しては上記第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。図10は、本実施形態における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【0069】
まず、図10(a)に示されるように、リードフレーム70を用意し、リードフレーム70の表面全面にニッケルメッキ膜12を形成する。そして、搭載部材10の一面10aのうちはんだ搭載領域にマスク80を配置する。その後、搭載部材10の一面10aおよび他面10bがブラストガン90と対向するようにリードフレーム70を配置し、搭載部材10の一面10a側に配置されているブラストガン90および他面10b側に配置されているブラストガン90からスラリーを吹き付けて同時にウェットブラストを行う。
【0070】
なお、ウェットブラストは、搭載部材10の一面10a側に配置されているブラストガン90および他面10b側に配置されているブラストガン90から同じスラリーを同じ圧力で吹き付け、搭載部材10の一面10a側および他面10b側に同じ力が印加されるようにする。
【0071】
その後は、図10(b)に示されるように、上記図2(b)と同様に、搭載部材10に半導体チップ20を搭載し、図10(c)に示されるように、上記図2(c)と同様に、モールド樹脂40によって、端子部11aおよび接続端子部50の一部が露出するように、搭載部材10、半導体チップ20、はんだ30、ボンディングワイヤ60を封止する。
【0072】
このような製造方法では、搭載部材10の一面10a側および他面10b側から同時にウェットブラストを行うため、搭載部材10が沿ってしまうことを抑制することができる。また、搭載部材10における側面および他面10bのニッケルメッキ膜12もウェットブラストされるため、さらにモールド樹脂40の剥離を抑制することができる。
【0073】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態について説明する。本実施形態では、第1実施形態に対して搭載部材10のはんだ搭載領域に、搭載部材10のうちモールド樹脂40と接する部位よりもはんだ濡れ性が高いはんだ接合膜110を配置したものであり、その他に関しては上記第4実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。図11は、本実施形態における半導体装置の断面構成を示す図である。
【0074】
図11に示されるように、搭載部材10の一面10aのうち、はんだ搭載領域には、ニッケルメッキ膜12よりもはんだ濡れ性の高いはんだ接合膜110としての金メッキ膜が1μm程度形成されている。そして、この金メッキ膜上に半導体チップ20がはんだ30を介して搭載されている。
【0075】
図12は、本実施形態における半導体装置の製造工程を示す断面図である。まず、図12(a)に示されるように、リードフレーム70を用意し、リードフレーム70の全面にニッケルメッキ膜12を形成する。その後、ニッケルメッキ膜12の全面にはんだ接合膜110としての金メッキ膜を1μm程度形成する。そして、搭載部材10の一面10aのうちはんだ搭載領域にマスク80を配置する。
【0076】
続いて、搭載部材10の一面10aおよび他面10bがブラストガン90と対向するようにリードフレーム70を配置し、ウェットブラストを行う。ウェットブラストは、マスク80が配置されていない部分のはんだ接合膜110が除去されてニッケルメッキ膜12が露出し、露出したニッケルメッキ膜12に凹凸形状が形成されると共に表面にニッケル水酸化物13が形成されるまで行う。特に限定されるものではないが、例えば、金メッキ膜を1μm形成した場合には、粒子を粒子径が10μm程度であるアルミナを用い、圧力を0.2Mpaとしてウェットブラストを行うことで金メッキ膜を除去すると共にニッケルメッキ膜12の表面に凹凸形状を形成することができ、表面にニッケル水酸化物13を形成することができる。
【0077】
その後は、図12(b)に示されるように、上記図2(b)と同様に、搭載部材10に半導体チップ20を搭載し、図12(c)に示されるように、上記図2(c)と同様に、モールド樹脂40によって、端子部11aおよび接続端子部50の一部が露出するように、搭載部材10、半導体チップ20、はんだ30、ボンディングワイヤ60を封止する。
【0078】
このように、はんだ搭載領域にニッケルメッキ膜12よりはんだ濡れ性の高いはんだ接合膜110を形成することにより、リフロー工程の際にはんだ30がはんだ搭載領域の端部まで濡れ広がりやすくなるため、接続不良が発生することを抑制することができる。また、上記第3実施形態のようにスパンカ100を用いる必要もないため、製造工程を簡略化することもできる。
【0079】
(他の実施形態)
上記各実施形態では、導電性部材としてはんだ30を例に挙げて説明したが、例えば、導電性部材として銀ペーストや導電性接着剤等を用いることもできる。
【0080】
また、上記各実施形態では、搭載部材10が完全にモールド樹脂40に封止されている例について説明したが、例えば、搭載部材10の他面10bがモールド樹脂40から露出するハーフモールド構造とされていてもよい。すなわち、搭載部材10は少なくとも一部がモールド樹脂40によって封止されていればよい。
【0081】
さらに、上記各実施形態では、ヒートシンク11がテーパ形状であるものについて説明したが、ヒートシンク11はテーパ形状とされておらず、直方体状のものとされていてもよい。
【0082】
また、上記各実施形態では、端子部11aはヒートシンク11に備えられた例について説明したが、例えば、端子部11aは、ヒートシンク11と分離されており、はんだ等を介してヒートシンク11に接合されることでヒートシンク11と電気的に接続されるようになっていてもよい。
【0083】
そして、上記各実施形態では、搭載部材10はヒートシンク11がニッケルメッキ膜12によって覆われてなるものについて説明したが、搭載部材10をヒートシンク11のみで構成することもできる。この場合もウェットブラストを行うことによって、モールド樹脂40と接する部位が凹凸形状になると共に表面に水酸化物が形成されるため、本発明の効果を得ることができる。
【0084】
さらに、上記第5実施形態では、はんだ接合膜110として金メッキ膜を例に挙げて説明したが、はんだ接合膜110として次のものを用いることができる。例えば、はんだ接合膜110として、はんだ搭載領域のニッケルメッキ膜12を凹凸形状とし、平坦なニッケルメッキ膜よりはんだ濡れ性を向上させたものとすることができる。このように、はんだ接合膜110を凹凸形状を有するニッケルメッキ膜12とする場合には、メッキ条件を適宜変更することによりヒートシンク11の全面に凹凸形状を有するニッケルメッキ膜12を形成するようにしてもよいし、ヒートシンク11のうちはんだ搭載領域となるニッケルメッキ膜12のみ凹凸形状となるようにしてもよい。また、ヒートシンク11の全面にニッケルメッキ膜12を形成し、はんだ搭載領域が開口しているマスクを搭載部材10に配置した後、ドライブラスト等によってはんだ搭載領域のニッケルメッキ膜12に凹凸形状を形成してもよい。なお、ニッケルメッキ膜12のうちモールド樹脂40と接する部位は、ウェットブラストされることによって凹凸形状になるもののニッケル水酸化物13が形成されるため、はんだ接合膜110よりはんだ濡れ性は低くなる。
【符号の説明】
【0085】
10 搭載部材
11 ヒートシンク
11a 端子部
12 ニッケルメッキ膜
13 ニッケル水酸化物
20 半導体チップ
30 はんだ
40 モールド樹脂
50 接続端子部
60 ボンディングワイヤ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップ(20)と、
一面(10a)を有すると共に前記一面(10a)に導電性部材搭載領域を有し、前記導電性部材搭載領域に前記半導体チップ(20)が導電性部材(30)を介して搭載される搭載部材(10)と、
前記搭載部材(10)の少なくとも一部および前記半導体チップ(20)を封止するモールド樹脂(40)と、を有し、
前記搭載部材(10)のうち前記モールド樹脂(40)と接する部位が凹凸形状とされている半導体装置において、
前記搭載部材(10)のうち前記モールド樹脂(40)と接する部位の表面には、水酸化物(13)が形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記搭載部材(10)は、板状のヒートシンク(11)と、前記ヒートシンク(11)と前記モールド樹脂(40)との間に形成され、表面が凹凸形状とされたニッケルメッキ膜(12)と、を備え、
前記ニッケルメッキ膜(12)の表面に前記水酸化物(13)としてのニッケル水酸化物が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ニッケル水酸化物は、水酸化ニッケルであることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記導電性部材(30)は、はんだであり、
前記搭載部材(10)の前記導電性部材搭載領域には、前記搭載部材(10)のうち前記モールド樹脂(40)と接する部位よりもはんだ濡れ性が高いはんだ接合膜(110)が形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれ1つに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記はんだ接合膜(110)は、金メッキ膜であることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記はんだ接合膜(110)は、凹凸形状とされたニッケルメッキ膜であることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置。
【請求項7】
導電性部材搭載領域を有する一面(10a)を備えた搭載部材(10)の前記一面(10a)に半導体チップ(20)が導電性部材(30)を介して搭載されており、前記搭載部材(10)の少なくとも一部および前記半導体チップ(20)がモールド樹脂(40)に封止されてなる半導体装置の製造方法において、
搭載部材(10)を用意する工程と、
前記搭載部材(10)の前記一面(10a)に導電性部材(30)を介して半導体チップ(20)を搭載する搭載工程と、
前記搭載部材(10)にウェットブラストを行い、前記搭載部材(10)のうちモールド樹脂(40)と接する部位の表面を凹凸形状にすると共に当該表面に水酸化物(13)を形成する粗化工程と、
前記搭載部材(10)の少なくとも一部および前記半導体チップ(20)を前記モールド樹脂(40)にて封止する封止工程と、を行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記搭載部材(10)を用意する工程は、板状のヒートシンク(11)にニッケルメッキ膜(12)が備えられたものを用意し、
前記粗化工程では前記水酸化物(13)としてニッケル水酸化物を形成することを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記粗化工程は、前記搭載工定の後に行い、前記搭載部材(10)の前記一面(10a)をウェットブラストする際には、前記半導体チップ(20)をマスクとしてウェットブラストすることを特徴とする請求項7または8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記粗化工程は、前記導電性部材搭載領域にマスク(80)を配置して行い、
前記搭載工程は、前記粗化工程の後に行い、前記導電性部材搭載領域に前記導電性部材(30)としてのはんだを配置し、スパンカ(110)によって前記はんだを前記導電性部材搭載領域の全面に広げた後に当該はんだを介して前記搭載部材(10)に前記半導体チップ(20)を搭載することを特徴とする請求項7または8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記搭載部材(10)を用意する工程は、前記導電性部材搭載領域に、前記搭載部材(10)のうち前記モールド樹脂(40)と接する部位よりもはんだ濡れ性が高いはんだ接合膜(110)が形成されたものを用意し、
前記搭載工程は、前記導電性部材(30)としてのはんだを介して前記はんだ接合膜(110)に前記半導体チップ(20)を搭載することを特徴とする請求項7または8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記搭載部材(10)を用意する工程は、前記導電性部材搭載領域を含む領域に前記はんだ接合膜(110)が形成されたものを用意し、
前記粗化工程は、前記搭載部材(10)のうち前記モールド樹脂(40)と接する部位に形成されたはんだ接合膜(110)を除去しつつ、前記モールド樹脂(40)と接する部位の表面を凹凸形状にすると共に当該表面に前記水酸化物(13)を形成し、
前記搭載工程は、前記粗化工程の後に行うことを特徴とする請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記搭載部材(10)を用意する工程は、前記導電性部材搭載領域に、無電界メッキにて形成され、表面が凹凸形状とされたニッケルメッキ膜(12)を有するものを用意し、
前記搭載工程は、前記粗化工程の後に行うことを特徴とする請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記粗化工程は、前記搭載部材(10)の前記一面(10a)および前記一面(10a)と反対側の他面(10b)側から同時にウェットブラストを行うことを特徴とする請求項7ないし13のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項1】
半導体チップ(20)と、
一面(10a)を有すると共に前記一面(10a)に導電性部材搭載領域を有し、前記導電性部材搭載領域に前記半導体チップ(20)が導電性部材(30)を介して搭載される搭載部材(10)と、
前記搭載部材(10)の少なくとも一部および前記半導体チップ(20)を封止するモールド樹脂(40)と、を有し、
前記搭載部材(10)のうち前記モールド樹脂(40)と接する部位が凹凸形状とされている半導体装置において、
前記搭載部材(10)のうち前記モールド樹脂(40)と接する部位の表面には、水酸化物(13)が形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記搭載部材(10)は、板状のヒートシンク(11)と、前記ヒートシンク(11)と前記モールド樹脂(40)との間に形成され、表面が凹凸形状とされたニッケルメッキ膜(12)と、を備え、
前記ニッケルメッキ膜(12)の表面に前記水酸化物(13)としてのニッケル水酸化物が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ニッケル水酸化物は、水酸化ニッケルであることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記導電性部材(30)は、はんだであり、
前記搭載部材(10)の前記導電性部材搭載領域には、前記搭載部材(10)のうち前記モールド樹脂(40)と接する部位よりもはんだ濡れ性が高いはんだ接合膜(110)が形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれ1つに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記はんだ接合膜(110)は、金メッキ膜であることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記はんだ接合膜(110)は、凹凸形状とされたニッケルメッキ膜であることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置。
【請求項7】
導電性部材搭載領域を有する一面(10a)を備えた搭載部材(10)の前記一面(10a)に半導体チップ(20)が導電性部材(30)を介して搭載されており、前記搭載部材(10)の少なくとも一部および前記半導体チップ(20)がモールド樹脂(40)に封止されてなる半導体装置の製造方法において、
搭載部材(10)を用意する工程と、
前記搭載部材(10)の前記一面(10a)に導電性部材(30)を介して半導体チップ(20)を搭載する搭載工程と、
前記搭載部材(10)にウェットブラストを行い、前記搭載部材(10)のうちモールド樹脂(40)と接する部位の表面を凹凸形状にすると共に当該表面に水酸化物(13)を形成する粗化工程と、
前記搭載部材(10)の少なくとも一部および前記半導体チップ(20)を前記モールド樹脂(40)にて封止する封止工程と、を行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記搭載部材(10)を用意する工程は、板状のヒートシンク(11)にニッケルメッキ膜(12)が備えられたものを用意し、
前記粗化工程では前記水酸化物(13)としてニッケル水酸化物を形成することを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記粗化工程は、前記搭載工定の後に行い、前記搭載部材(10)の前記一面(10a)をウェットブラストする際には、前記半導体チップ(20)をマスクとしてウェットブラストすることを特徴とする請求項7または8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記粗化工程は、前記導電性部材搭載領域にマスク(80)を配置して行い、
前記搭載工程は、前記粗化工程の後に行い、前記導電性部材搭載領域に前記導電性部材(30)としてのはんだを配置し、スパンカ(110)によって前記はんだを前記導電性部材搭載領域の全面に広げた後に当該はんだを介して前記搭載部材(10)に前記半導体チップ(20)を搭載することを特徴とする請求項7または8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記搭載部材(10)を用意する工程は、前記導電性部材搭載領域に、前記搭載部材(10)のうち前記モールド樹脂(40)と接する部位よりもはんだ濡れ性が高いはんだ接合膜(110)が形成されたものを用意し、
前記搭載工程は、前記導電性部材(30)としてのはんだを介して前記はんだ接合膜(110)に前記半導体チップ(20)を搭載することを特徴とする請求項7または8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記搭載部材(10)を用意する工程は、前記導電性部材搭載領域を含む領域に前記はんだ接合膜(110)が形成されたものを用意し、
前記粗化工程は、前記搭載部材(10)のうち前記モールド樹脂(40)と接する部位に形成されたはんだ接合膜(110)を除去しつつ、前記モールド樹脂(40)と接する部位の表面を凹凸形状にすると共に当該表面に前記水酸化物(13)を形成し、
前記搭載工程は、前記粗化工程の後に行うことを特徴とする請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記搭載部材(10)を用意する工程は、前記導電性部材搭載領域に、無電界メッキにて形成され、表面が凹凸形状とされたニッケルメッキ膜(12)を有するものを用意し、
前記搭載工程は、前記粗化工程の後に行うことを特徴とする請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記粗化工程は、前記搭載部材(10)の前記一面(10a)および前記一面(10a)と反対側の他面(10b)側から同時にウェットブラストを行うことを特徴とする請求項7ないし13のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−243889(P2012−243889A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111137(P2011−111137)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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