説明

半導体装置の製造方法および研磨シート

【課題】リテーナリングの表面を研磨する際のコストの削減。
【解決手段】ウエハ22を保持するヘッド30に設けられたリテーナリング20を交換する工程と、プラテン10上に設けられたパッド12上に、研磨シート50を貼り付ける工程と、前記研磨シート50を用い前記リテーナリング20の下面を研磨する工程と、前記研磨シート50を剥がす工程と、前記パッド12を用い前記ウエハ22の下面を研磨する工程と、を含む半導体装置の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法および研磨シートに関し、例えば、リテーナリングを研磨する半導体装置の製造方法および研磨シートに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程においては、CMP(Chemical Mechanical Polish)装置等の研磨装置が用いられる。研磨装置においては、スラリーのような遊離砥粒を用いウエハを研磨する。研磨装置は、ウエハの周囲にウエハを固定するリテーナリングを備えている。ウエハの研磨を多数行なうと、リテ−ナリングの表面が磨耗により消費される。このため、リテーナリングを定期的または不定期に交換する。新品のリテーナリングに交換した際は、ラッピング処理によりリテーナリングの研磨を行なう。リテーナリングの表面を研磨することで、新品のリテーナリングの角部に生じたバリ取りを行なう。また、リテーナリング交換後のリテーナリングの取り付け誤差および定盤との接触状態を調整する。
【0003】
リテーナリングの研磨方法として、ウエハの研磨を行なうプラテンとは別の研磨機構を用いることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−149408号公報
【特許文献2】特開2009−260142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リテーナリングの研磨を、ウエハ研磨を行なうプラテン上のパッドを用い行なう場合、リテーナリングの研磨には長い時間がかかってしまう。このため、パッドが消耗し、スラリーが消費される。これらにより、コストの増加となる。
【0006】
一方、リテーナリングの研磨をウエハの研磨を行なうプラテンとは異なる研磨機構を用いて行なう場合、リテーナリングの研磨を行なった研磨機構とウエハの研磨を行なうプラテンとが異なる。このため、プラテン上面とリテーナリング下面とが完全に平行でない場合がある。この場合、ウエハの研磨を行なうプラテン上でリテーナリングを再度研磨することになる。結局、コストの増加となってしまう。
【0007】
本半導体装置の製造方法および研磨シートは、リテーナリングの表面をラッピングする際のコストの削減を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
例えば、ウエハを保持するヘッドに設けられたリテーナリングを交換する工程と、プラテン上に設けられたパッド上に、研磨シートを貼り付ける工程と、前記研磨シートを用い前記リテーナリングの下面を研磨する工程と、前記研磨シートを剥がす工程と、前記パッドを用い前記ウエハの下面を研磨する工程と、を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法を用いる。
【0009】
例えば、ウエハを研磨する研磨装置のパッド上に貼り付く粘着層と、前記粘着層の上に形成され、リテーナリングの下面を研磨する研磨層と、を具備することを特徴とする研磨シートを用いる。
【発明の効果】
【0010】
本半導体装置の製造方法および研磨シートは、リテーナリングの表面をラッピングする際のコストの削減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1(a)は、研磨装置の平面図、図1(b)は、研磨ヘッドの下面図、図1(c)は、図1(a)のA−A断面図である。
【図2】図2は、実施例1に係る半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
【図3】図3(a)から図3(c)、研磨装置の断面図(その1)である。
【図4】図4(a)から図4(c)、研磨装置の断面図(その2)である。
【図5】図5は、実施例2に係る研磨シートの断面図である。
【図6】図6(a)および図6(b)は、研磨テープの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照し、実施例について説明する。
【実施例1】
【0013】
実施例1は、研磨装置としてCMP装置を用いる例である。図1(a)は、研磨装置の平面図、図1(b)は、研磨ヘッドの下面図、図1(c)は、図1(a)のA−A断面図である。図1(a)および図1(c)のように、プラテン10(例えば定盤)上にパッド12(例えば研磨布)が貼り付けられている。回転軸14は、プラテン10を回転させる。ヘッド30の下面には、ウエハ保持バッド32を介しウエハ22が保持される。ウエハ22の周囲にはリテ−ナリング20が設けられている。回転軸34はヘッド30を回転させる。ノズル40はパッド12上にスラリー(例えば研磨剤)を供給する。プラテン10およびヘッド30を回転させた状態でウエハ22をパッド12に接触させる。これにより、ウエハ22の下面が研磨される。
【0014】
プラテン10およびヘッド30には、例えばステンレスのような硬質な材料が用いられる。パッド12には、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂またはエポキシ樹脂等の樹脂のような材料が用いられる。ウエハ22は、真空吸着等によりパッド12に保持される。この際、ウエハ22の表面を保護するためウエハ保持パッド32には、シリコンゴム等の軟質材が用いられる。リテーナリング20は、例えばテフロン(登録商標)またはPPS(Polyphenylene Sulfide)等が用いられる。リテ−ナリング20は、ウエハ22のエッジを保護するとともに、ウエハ22の研磨の分布を調整する機能がある。なお、研磨装置は、プラテン10およびヘッド30を複数備えていてもよい。これにより、複数のウエハの研磨を同時に行なうことができる。
【0015】
図2は、実施例1に係る半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。図3(a)から図4(c)は、研磨装置の断面図である。図2および図3(a)のように、リテーナリング20が磨耗すると、リテーナリング20を新しいリテーナリング20aと交換する(ステップS10)。パッド12上に研磨シート50(例えば研磨テープ)を貼り付ける(ステップS12)。パッド12が水分を含んでいる場合、プラテン10を回転させ、パッド12の水分をある程度除去した後、研磨シート50を貼り付けることが好ましい。
【0016】
図2および図3(b)のように、研磨シート50を用い、リテーナリング20aの下面を研磨する。この研磨の際は、例えば、スラリーを用いず水(例えば純水)を用いる。また、ヘッド30がダミーウエハ22aを保持した状態でリテーナリング20aを研磨してもよい。リテーナリング20aの研磨により、リテーナリング20aの下面が平坦となる。また、リテーナリング20aのエッジ部分の突起等を除去する。リテーナリング20aのエッジ部分の突起がパッド12上に残存すると、ウエハ22を研磨する際に、ウエハ22表面の傷の原因となるためである。
【0017】
図2および図3(c)のように、リテーナリング20aの研磨が終了すると、研磨シート50を剥離する(ステップS16)。このとき、研磨シート50をパッド12から剥離してもよい。
【0018】
図2および図4(a)のように、ステップS16において、パッド12を剥離した場合、プラテン10上に新しいパッド12aを貼り付ける(ステップS18)。図2および図4(b)のように、コンディショニングディスク60が回転軸62を中心に回転することにより、コンディショニングディスク60を用い新しいパッド12aの上面を研磨する。これにより、パッド12a表面がウエハ22の研磨をし易くコンディショニングされる。ヘッド30を用いウエハ22を研磨する際は、コンディショニングディスク60はプラテン10上方から退避されている。コンディショニングディスク60はパッド12aの上面を研磨する際にプラテン10上に配置される。コンディショニングディスク60を用いパッド12aを研磨する際には、ヘッド30はプラテン10上方から退避されている。コンディショニングディスク60のパッド12と接する面には例えばダイヤモンド粒子がニッケル電着等の電着方法により取り付けられている。パッド12aを研磨する際は、ノズル40から研磨剤46をパッド12a上面に供給する。研磨剤46は、ウエハ22を研磨する際に用いるスラリー42と同じでもよいし異なっていてもよい。
【0019】
図2および図4(c)のように、ダミーウエハを用いパッド12a表面をならし処理する(ステップS22)。ダミーウエハを用い、研磨レート及び研磨の際の塵の検査を行なう(ステップS24)。検査に合格すると、製品を形成するための半導体ウエハを研磨する(ステップS26)。CMP装置を用い研磨する半導体ウエハの表面(図2および図4(c)においては下面)は、例えば、酸化シリコン膜等の絶縁膜、銅またはタングステン等の金属等が形成されている。
【0020】
実施例1によれば、図2のステップS10のように、ヘッド30に設けられたリテーナリング20を交換する。ステップS12のように、プラテン10上に設けられたパッド12上に、研磨シート50を貼り付ける。ステップS14のように、研磨シート50を用いリテーナリング20の下面を研磨する。ステップS16のように、研磨シート50を剥がす。その後、パッド12aを用いウエハ22の下面を研磨する。
【0021】
このように、研磨シート50を、ウエハ22を研磨するパッド12上に貼り付けてリテーナリング20を研磨する。これにより、ウエハ22を研磨するプラテン10と異なる研磨機構を用いリテーナリング20を研磨するのに比べ、プラテン10上面とリテーナリング20下面をより平行にできる。よって、余分なリテーナリング20の研磨を行なわなくてもよい。
【0022】
パッド12を用いウエハ22の研磨を行なう場合、研磨レートより、ウエハ表面の平坦性および研磨表面のスクラッチの抑制を重視する。このため、パッド12を用いリテーナリング20を研磨する場合、処理時間がかかり、パッド12の消耗、およびスラリーの消費が多くなる。実施例1によれば、パッド12とスラリーを用いる場合に比べ、研磨処理時間重視で研磨シート50を選択できる。よって、パッド12の消耗、スラリーの消費を抑制できる。また、研磨シート50を用いることで、リテーナリング20を研磨するプロセス間での研磨レートバラツキがなくなる。これらにより、リテーナリング20の研磨のコストを削減することができる。
【0023】
図2のステップS16において、パッド12を剥がさず、ステップS18において、新たなパッド12aをプラテン10に貼り付けなくともよい。しかしながら、研磨シート50を剥がす際には、研磨シート50とパッド12をプラテン10から剥がすことが好ましい。これにより、研磨シート50の粘着層58等により汚染されたパッド12を用いなくてもよい。
【0024】
リテーナリング20の研磨は、研磨シート50に設けられた研磨粒子等の固定砥粒を用いリテーナリング20を研磨することが好ましい。固定砥粒を用いた場合、スラリーのような遊離砥粒を用いる場合に比べ、リテーナリング20の下面と砥粒との接触効率よい。よって、機械的な研削効果が向上して、効果的にリテーナリング20のラッピング処理が行なえる。これにより、遊離砥粒を用いて研磨するよりも短時間で、効率よくリテーナリング20下面のラッピング処理が可能となる。よって、処理時間を短縮できる。また、リテーナリング20の下面を研磨する際は、スラリーを用いず水を用いることが好ましい。これにより、高価なスラリーを用いなくてよくコストを抑制することができる。
【実施例2】
【0025】
実施例2は、研磨シートの例である。図5は、実施例2に係る研磨シートの断面図である。図5のように、研磨シート50は、剥離用フィルム59、粘着層58、基材シート56および研磨層54が積層されている。研磨層54は、固定砥粒である研磨粒子52と研磨粒子52を保持するバインダー53とを含んでいる。粘着層58は、パッド12に貼り付くための層である。研磨シート50をパッド12に貼り付ける際は、剥離用フィルム59を剥がし、研磨シート50をパッド12上に貼り付ける。研磨層54は、リテーナリング20の下面を研磨する層である。
【0026】
基材シート56には、例えばポリエチレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニルおよびフッ素樹脂等の樹脂を使用できる。その他の材料でもよい。基材シート56の膜厚は、例えば10μm〜300μmとすることができる。好ましくは、50μm〜150μmである。
【0027】
研磨層54の厚みは20μm以下とすることが好ましい。研磨粒子52としては、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、α−アルミナ、θ−アルミナ、γ−アルミナ、ヒュームドアルミナ、ジルコニア、ゲルマニア、チタニアおよびセリア等の金属酸化物粒子のうち1種類または複数の混合物を用いることができる。ウエハを研磨する際に用いるスラリーと同一粒子特性の材料を用いることが好ましい。これにより、装置の汚染を抑制できる。例えば、一般的に用いられるシリカ等を用いることが好ましい。研磨粒子52の平均粒子径は、二次粒子径で10nm以上10μm以下が好ましい。平均粒子径が大きいと、リテーナリングの加工精度が低下して、バリおよび加工歪みを除去できない。さらにスクラッチを誘発し、高精度の加工面が得られない可能性がある。粒子形状としては、例えば非晶質シリカ粒子(1次粒子)の粒子間結合体からなる凝集シリカ粒子(2次粒子)等を用いてもよい。
【0028】
バインダー53としては、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエステルウレタン、フェノール、塩化ビニル、アクリル、エポキシ等の樹脂を使用できる。熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を用い、これらを混合して使用してもよい。熱可塑性樹脂として、ポリエステル樹脂、アクリル-ポリエステル樹脂、アクリル-ウレタン樹脂、ポリエステル-ウレタン樹脂等を用いることができる。
【0029】
粘着層58に用いる接着剤としては、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエステルウレタン、フェノール、塩化ビニル、アクリル、エポキシ等の樹脂を使用できる。粘着層58の形成には、ワイヤーバーコーター、グラビアコーター、リバースコーター、ナイフコーター、ノズルコーター、ダイコーター、スクリーンコーター、グラビアコーターおよびグラビアオフセットコーター等を用いることができる。粘着層58の厚さは0.1μm〜50μmが好ましい。粘着層58が薄いと密着強度が得られず、研磨層が剥離し易くなる。パッド12は水分を含んでいることもある。そこで、接着効果を上げるために粘着層58に用いる接着剤は置換基にカルボン酸基等の極性基を含むことが好ましい。
【0030】
剥離用フィルム59は、粘着層58の保護のため用いることが好ましい。剥離用フィルム59としては、ポリエチレンテレフタラート、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等が使用できる。剥離用フィルム59の厚さは、例えば1μm〜100μmとすることができる。
【0031】
図6(a)および図6(b)は、研磨テープの上面図である。図6(a)のように、研磨層54は基材シート56上面の全面に形成されていてもよい。また、図6(b)のように、基材シート56上に研磨層54が同心円状に形成されていてもよい。これにより、リテーナリング20を研磨した際の異物を効果的に排出することができる。研磨層54は基材シート56上にらせん状に形成されていてもよい。
【0032】
実施例2によれば、粘着層58がウエハ22を研磨する研磨装置のパッド12上に貼り付く。研磨層54は、粘着層58の上に形成され、リテーナリング20の下面を研磨する。このような、研磨シートを用いることにより、実施例1のように、リテーナリング20を研磨するコストを低減することができる。なお、実施例2のように、研磨層54と粘着層58とを保持する基材シート56を設けることが好ましい。
【0033】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0034】
10 プラテン
12 パッド
20 リテーナリング
22 ウエハ
30 ヘッド
50 研磨シート
54 研磨層
58 粘着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハを保持するヘッドに設けられたリテーナリングを交換する工程と、
プラテン上に設けられたパッド上に、研磨シートを貼り付ける工程と、
前記研磨シートを用い前記リテーナリングの下面を研磨する工程と、
前記研磨シートを剥がす工程と、
前記パッドを用い前記ウエハの下面を研磨する工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記研磨シートを剥がす工程は、前記研磨シートと前記パッドを前記プラテンから剥がす工程であり、
前記ウエハの下面を研磨する工程は、前記プラテン上に貼り付けられた新しいパッドを用い前記ウエハの下面を研磨する工程であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記研磨シートは、固定砥粒を用い前記リテーナリングを研磨することを特徴とする請求項1または2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記リテーナリングの下面を研磨する工程は、スラリーを用いず水を用いることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
ウエハを研磨する研磨装置のパッド上に貼り付く粘着層と、
前記粘着層の上に形成され、リテーナリングの下面を研磨する研磨層と、
を具備することを特徴とする研磨シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−151306(P2012−151306A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9213(P2011−9213)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】