説明

半導体装置

【課題】通信距離が極端に短い場合においても正常に動作し、且つ通信距離が長い場合においては、保護回路での消費電力を抑え、信頼性の高い半導体装置(RFID)を提供する。
【解決手段】無線によりデータの交信が可能な半導体装置(RFID)を構成する素子を保護するための保護回路107を設けることに特徴を有する。そして、整流回路102において生成された直流電源電位が所定の値(基準値)以上となるときに保護回路107が動作するようにし、生成される直流電源電位の値を小さくする。一方、整流回路102において生成された直流電源電位が所定の値(基準値)以下となるときは、保護回路107が動作しないようにし、生成された直流電源電位の値をそのまま用いる。また、保護回路107のトランジスタ201,202は、酸化物半導体層により構成されており、トランジスタ201,202のオフ電流を下げ、保護回路107での消費電力を抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する発明は、無線によりデータの交信(送信・受信)が可能な半導体装置(データキャリア)に関する。特に、無線通信において半導体装置が大電力を受信した場合に、半導体装置を構成する素子の破壊や劣化を防止する保護回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、個別の対象物にID(個体識別番号)を与えることで、その対象物が持っている情報の履歴を明確にし、生産、または管理等に役立てるといった個体認識技術が注目されている。特に、無線通信によりデータの送受信を行うRFID(Radio Frequency Identification)技術が世の中に普及されつつある。RFID技術を用いた無線通信システムは、無線通信装置(質問器)とデータキャリア(応答器)から構成され、無線により両者の間でデータのやりとりを行う通信システムである。無線通信装置は、リーダ/ライタ、携帯電話、パーソナルコンピュータなど、無線による信号の送受信が可能であるものを指すが、本明細書においては代表的にリーダ/ライタと表記する。また、データキャリアは、一般にRFID、RFタグ、IDタグ、ICタグ、ICチップ、無線タグ、電子タグ等と呼ばれているが、本明細書においては代表的にRFIDと表記する。
【0003】
RFIDは、電源を持たない受動型(パッシブ型)のものや、電源を内蔵する能動型(アクティブ型)のものがある。パッシブ型のRFIDは、リーダ/ライタから発せられる無線信号(搬送波、または搬送波に変調波を重畳して生成された振幅変調波)を、RFID内部に設けられた整流回路により直流電圧に変換する機能を有し、この直流電圧を用いてRFID内部の回路が動作する。搬送波の強さは、一般に電力として表され、電力が放射される点から測定点までの距離(以下、本明細書においては通信距離と表記する)が離れるほど減衰する。すなわち、リーダ/ライタとRFIDとの通信距離が変化すると、それに応じてRFIDに供給される電力も変化する。そして、リーダ/ライタとRFIDとの通信距離が極端に短い場合(例えば双方が接触しているような場合)、RFIDに大電力が供給されてしまう。RFIDに大電力が供給されると、RFIDはリーダ/ライタからの信号を正確に復調できずに誤動作をおこしてしまうか、RFID内部に設けられた素子が劣化または破壊されるおそれがある。
【0004】
一方、RFID技術を用いた無線通信システムは、リーダ/ライタにより複数のRFIDを同時に読み取ることが可能であるという利点があるが、複数のRFIDを同時に読み取る場合、リーダ/ライタと複数のRFIDそれぞれとの間の通信距離が異なってしまう。また、RFIDが貼り付けられた商品をカートンに詰めてフォークリフトでリーダ/ライタの前を通過するような場合、通信距離は時々刻々と変化する。このような無線通信システムの利用の実情を鑑みると、通信距離が意図せず極端に短くなってしまい、その結果RFIDに大電力が供給されてしまうおそれがある。
【0005】
このような問題に対応するため、RFIDに大電力が印加された際にRFID内部の素子を保護する保護回路を設けることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
保護回路は、大電力を逃がす専用のパスの状態を制御する機能を有している。通信距離が長く、受信する電力が小さい場合は、RFIDの動作に影響を及ぼさないように大電力を逃がす専用のパスを非導通の状態にする。一方、通信距離が短く、受信する電力が大きい場合は、RFID内部の素子に大電力が印加されないように、大電力を逃がす専用のパスを導通状態にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−180073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
保護回路の動作は、通信距離が極端に短い場合においては、正常に機能し、且つ通信距離が長い場合、すなわちRFIDに電力の供給が少ない場合においては、保護回路での消費電力が無いことが好ましい。
【0009】
本発明の一態様は、通信距離が極端に短い場合においても正常に動作し、且つ通信距離が長い場合においては、保護回路での消費電力を抑え、信頼性の高い半導体装置(RFID)を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、上記課題を解決するため、以下の構成を用いる。すなわち、本発明の一態様においては、無線によりデータの交信が可能な半導体装置(RFID)を構成する素子を保護するための保護回路を設けることに特徴を有する。そして、整流回路において生成された直流電源電位が所定の値(基準値)以上となるときに保護回路が動作するようにし、生成される直流電源電位の値を小さくする。一方、整流回路において生成された直流電源電位が所定の値(基準値)以下となるときは、保護回路が動作しないようにし、生成された直流電源電位の値をそのまま用いる。また、保護回路のトランジスタは、酸化物半導体層により構成されており、トランジスタのオフ電流を下げ、保護回路での消費電力を抑える。
【0011】
本発明に係わる一態様は、アンテナを介して受信した搬送波または振幅変調波を整流し内部電圧を生成する整流回路と、アンテナに電気的に接続されたゲート電極及びドレイン電極と、接地されたソース電極と、酸化物半導体層により形成された半導体層とを有する第1のトランジスタと、アンテナに電気的に接続されたソース電極と、接地されたゲート電極及びドレイン電極と、酸化物半導体層により形成された半導体層とを有する第2のトランジスタとを有する保護回路と、アンテナを介して受信した搬送波または振幅変調波を復調し内部信号を生成する復調回路と、整流回路にて生成された内部電圧を定電圧化して電源電圧として出力する定電圧回路と、定電圧回路にて生成された電源電圧と復調回路で生成された内部信号の解析、及び応答信号の生成を行う論理回路と、論理回路からの信号を変調しアンテナに変調信号を出力する変調回路とを有し、保護回路は、アンテナで受信した搬送波または振幅変調波の振幅が整流回路の最低動作電圧以上となったとき、動作することを特徴とする半導体装置である。
【0012】
本発明に係わる他の一態様は、アンテナを介して受信した搬送波または振幅変調波を整流し内部電圧を生成する整流回路と、アンテナに電気的に接続されたゲート電極及びドレイン電極と、接地されたソース電極と、第2のゲート電極と、酸化物半導体層により形成された半導体層を有する第1のトランジスタと、アンテナに電気的に接続されたソース電極と、接地されたゲート電極及びドレイン電極と、第2のゲート電極と、酸化物半導体層により形成された半導体層を有する第2のトランジスタとを有する保護回路と、アンテナを介して受信した搬送波または振幅変調波を復調し内部信号を生成する復調回路と、整流回路にて生成された内部電圧を定電圧化して電源電圧として出力する定電圧回路と、定電圧回路にて生成された電源電圧と復調回路で生成された内部信号の解析、及び応答信号の生成を行う論理回路と、論理回路からの信号を変調しアンテナに変調信号を出力する変調回路とを有し、保護回路は、アンテナで受信した搬送波または振幅変調波の振幅が整流回路の最低動作電圧以上となったとき、動作することを特徴とする半導体装置である。
【0013】
本発明に係わる他の一態様は、アンテナを介して受信した搬送波または振幅変調波を整流し内部電圧を生成する整流回路と、アンテナに電気的に接続されたゲート電極及びドレイン電極と、接地されたソース電極と、第2のゲート電極と、酸化物半導体層により形成された半導体層を有する第1のトランジスタと、アンテナに電気的に接続されたソース電極と、接地されたゲート電極及びドレイン電極と、第2のゲート電極と、酸化物半導体層により形成された半導体層を有する第2のトランジスタとを有する保護回路と、アンテナを介して受信した搬送波または振幅変調波を復調し内部信号を生成する復調回路と、整流回路にて生成された内部電圧を定電圧化して電源電圧として出力する定電圧回路と、定電圧回路にて生成された電源電圧と復調回路で生成された内部信号の解析、及び応答信号の生成を行う論理回路と、論理回路からの信号を変調しアンテナに変調信号を出力する変調回路と、論理回路からの信号により保護回路を制御するスイッチング回路とを有し、保護回路は、アンテナで受信した搬送波または振幅変調波の振幅が整流回路の最低動作電圧以上となったとき、及び整流回路から出力される内部電圧を参照して論理回路からの信号によりスイッチング回路を用いて動作することを特徴とする半導体装置である。
【0014】
上記構成において、さらに、論理回路と、変調回路と、定電圧回路と、電気的に接続されたクロック生成回路を有してもよい。
【0015】
また、本発明の一態様における半導体装置(RFID)は、リーダ/ライタと交信する周波数帯に依存性はなく、任意の周波数帯域に用いるRFIDに適用可能である。具体的には、周波数3MHz〜30MHz(例えば13.56MHz)のHF帯、周波数300MHz〜3GHz(例えば433MHz、953MHz、2.45GHz)のUHF帯、周波数135kHzのいずれの場合にも本発明の一態様におけるRFIDは適用可能である。
【0016】
本発明の一態様におけるRFIDは、RFタグ、IDタグ、ICタグ、ICチップ、無線タグ、電子タグ等の無線によりデータの交信が可能なものであれば、全てその範疇に含まれるものとする。
【0017】
また、本明細書において、「AとBとが電気的に接続されている」と記載する場合は、AとBとが電気的に接続されている場合(つまり、AとBとの間に別の素子や別の回路を挟んで接続されている場合)と、AとBとが機能的に接続されている場合(つまり、AとBとの間に別の回路を挟んで機能的に接続されている場合)と、AとBとが直接接続されている場合(つまり、AとBとの間に別の素子や別の回路を挟まずに接続されている場合)とを含むものとする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様に係る保護回路を有する半導体装置(RFID)は、通信距離が極端に短い場合においても、RFIDが受信する大電力から内部素子を保護することができる。また、通信距離が長い場合においては、保護回路での消費電力を抑える。このため、通信距離が極端に短い場合においても正常に動作し、通信距離が長い場合においても保護回路での消費電力が抑えられているため、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一態様に係るRFID全体、及び保護回路を示すブロック図。
【図2】本発明の一態様に係るトランジスタの一例を示す断面図。
【図3】本発明の一態様に係るRFID全体、及び保護回路を示すブロック図。
【図4】本発明の一態様に係るトランジスタの一例を示す断面図、及びトランジスタの回路記号。
【図5】本発明の一態様に係るRFID全体、及び保護回路を示すブロック図。
【図6】本発明の一態様に係るRFID全体を示すブロック図。
【図7】本発明の一態様に係るトランジスタの一例を示す断面図。
【図8】本発明の一態様に係るトランジスタの一例を示す断面図。
【図9】本発明の一態様に係るRFIDの使用例を示す図。
【図10】本発明の一態様に係るトランジスタの一例を示す断面図、及びトランジスタの電気特性を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一態様に係る実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更しうることは当業者であれば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態において、同じ物を指し示す符号は異なる図面において共通とする。
【0021】
また、以下に説明する実施の形態及び実施例それぞれにおいて、特に断りがない限り、本明細書に記載されている他の実施形態及び実施例と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0022】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の半導体装置に適用可能な回路について図1(A)、図1(B)及び図2を用いて説明する。
【0023】
半導体装置の構成ブロック図を図1(A)に示す。半導体装置は、搬送波または振幅変調波を受信するアンテナ101と、アンテナ101によって受信した搬送波または振幅変調波を整流し、内部電圧Vinを生成する整流回路102と、アンテナ101で受信した搬送波または振幅変調波から信号を復調し、内部信号を生成する復調回路103と、整流回路102にて生成された内部電圧Vinを定電圧化して電源電圧Vddとして出力する定電圧回路104と、定電圧回路104で生成された電源電圧Vdd及び復調回路103で生成された復調信号を用いた信号の解析、並びに応答信号の生成を行う論理回路105と、論理回路105からの信号を変調し、アンテナ101に変調信号を出力する変調回路106と、アンテナ101で生成された交流電圧の振幅が大きい場合に機能し、アンテナ101で受信した搬送波または振幅変調波の振幅があるリミット電圧Vlimよりも大きい場合に、その余剰分の一部をカットする保護回路107と、を有する。
【0024】
なお、リミット電圧Vlimは任意に設定することが可能であるが、後段に設けられている回路の最低動作電圧以上の数値とすることが好ましい。
【0025】
以下に、図1(B)を参照して、保護回路107の構成を説明する。
【0026】
図1(B)に示す保護回路107は、第1端子及び第2端子を有する。なお、第1端子はアンテナ101に電気的に接続し、第2端子は接地する。また、保護回路107は、ドレイン電極およびゲート電極がアンテナに電気的に接続され、ソース電極が接地された第1のトランジスタ201と、ソース電極がアンテナに電気的に接続され、ドレイン電極およびゲート電極が接地された第2のトランジスタ202とを有する。
【0027】
図1(B)では、3つずつ直列接続された第1のトランジスタ201及び第2のトランジスタ202がそれぞれ2列ずつ並列接続されているが、保護回路107の構成は、この構成に限定されない。保護回路107の構成としては、第1のトランジスタ201及び第2のトランジスタ202が同数設けられ、且つ第1のトランジスタ201及び第2のトランジスタ202が並列接続される構成であればよい。なお、第1のトランジスタ201同士及び第2のトランジスタ202同士の接続は直列又は並列に限定されず、任意に接続すればよい。
【0028】
保護回路107は、アンテナ101で受信した搬送波または振幅変調波の振幅が大きくなると機能する。つまり、ある正の電圧以上になると第1のトランジスタ201が導通し、ある負の電圧以下になると第2のトランジスタ202が導通する。整流回路102に入力される搬送波または振幅変調波の振幅がある一定値以上になると、第1のトランジスタ201および第2のトランジスタ202が導通することで、アンテナ101が過剰に受信した搬送波または振幅変調波の一部を保護回路107が消費するようになり、後段の整流回路102および復調回路103への負荷が軽減される。
【0029】
また、第1のトランジスタ201及び第2のトランジスタ202をそれぞれ直列に複数個接続する時、直列接続するトランジスタの個数によって、第1の保護回路107の動作電圧が決定される。さらに、直列に複数個接続された第1のトランジスタ201及び第2のトランジスタ202を、複数並列に接続することによって、同時に流すことのできる電流量を増加させることができる。
【0030】
さらに、第1のトランジスタ201及び第2のトランジスタ202は、半導体層に酸化物半導体層を用いる。図2に、半導体層に酸化物半導体層を用いたトランジスタの断面構造の例を示す。
【0031】
図2に示す半導体層に酸化物半導体層を用いたトランジスタ300は、ボトムゲート構造のトランジスタの一例であり、逆スタガ型トランジスタともいう。本発明においてはこれに限定されず、例えばゲート電極層が半導体層の上層に位置する構造であってもよい。
【0032】
トランジスタ300は、絶縁表面を有する基板301上の、ゲート電極302、ゲート絶縁層303、酸化物半導体層304、ソース電極またはドレイン電極305a、及びソース電極またはドレイン電極305bを含む。また、トランジスタ300を覆い、酸化物半導体層304に接する絶縁層306が設けられている。絶縁層306上にはさらに保護絶縁層307が形成されている。
【0033】
本実施の形態では、半導体層として酸化物半導体層304を用いる。酸化物半導体層304に用いる酸化物半導体としては、四元系金属酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O系酸化物半導体や、三元系金属酸化物であるIn−Ga−Zn−O系、In−Sn−Zn−O系、In−Hf−Zn−O系、In−Al−Zn−O系、Sn−Ga−Zn−O系、Al−Ga−Zn−O系、Sn−Al−Zn−O系酸化物半導体や、二元系金属酸化物であるIn−Zn−O系、Sn−Zn−O系、Al−Zn−O系、Zn−Mg−O系、Sn−Mg−O系、In−Mg−O系酸化物半導体や、In−O系、Sn−O系、Zn−O系酸化物半導体などがある。また、上記酸化物半導体にSiOを添加してもよい。ここで、例えば、In−Ga−Zn−O系酸化物半導体とは、少なくともInとGaとZnを含む酸化物であり、その組成比に特に制限はない。また、InとGaとZn以外の元素を含んでもよい。
【0034】
また、酸化物半導体層304は、化学式InMO(ZnO)(m>0)で表記される酸化物半導体を用いることができる。ここで、Mは、Sn、Hf、Ga、Al、MnおよびCoから選ばれた一または複数の金属元素を示す。例えば、Mとしては、Ga、Ga及びAl、Ga及びMn、またはGa及びCoなどがある。
【0035】
基板301に使用することができる基板に大きな制限はない。例えば、液晶表示装置などに用いられるガラス基板や、石英基板などを用いることができる。また、シリコンウェハ上に絶縁層を形成した基板などを用いても良い。
【0036】
ゲート電極302は、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料またはこれらを主成分とする合金材料を用いて形成することができる。また、その構造は、単層構造としても良いし、積層構造としても良い。
【0037】
なお、下地となる絶縁層を基板301とゲート電極302の間に設けてもよい。当該絶縁層は、基板からの不純物元素の拡散を防止する機能があり、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、又は酸化窒化シリコン膜から選ばれた一又は複数の膜により形成することができる。
【0038】
ゲート絶縁層303は、プラズマCVD法やスパッタリング法などを用いて、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、窒化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、窒化酸化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜などから選ばれた一又は複数の膜により形成することができる。例えば、第1のゲート絶縁層としてプラズマCVD法により膜厚50nm以上200nm以下の窒化シリコン膜(SiN(y>0))を形成し、第1のゲート絶縁層上に第2のゲート絶縁層としてスパッタリング法により膜厚5nm以上300nm以下の酸化シリコン膜(SiO(x>0))を形成して、合計膜厚200nmのゲート絶縁層303とすることができる。
【0039】
ソース電極またはドレイン電極305a、ソース電極またはドレイン電極305bは、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料またはこれらを主成分とする合金材料を用いて形成することができる。例えば、アルミニウムや銅などの金属層と、チタン、モリブデン、タングステンなどの高融点金属層との積層構造とすることができる。ヒロックやウィスカーの発生を防止する元素(シリコン、ネオジム、スカンジウムなど)が添加されたアルミニウム材料を用いることで耐熱性を向上させても良い。
【0040】
また、ソース電極またはドレイン電極305a、ソース電極またはドレイン電極305bとなる導電膜として、導電性の金属酸化物膜を用いても良い。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム酸化スズ合金(In―SnO、ITOと略記する場合がある)、酸化インジウム酸化亜鉛合金(In―ZnO)またはこれらの金属酸化物材料に酸化シリコンを含ませたもの、などを用いることができる。
【0041】
絶縁層306としては、代表的には酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化ガリウム膜、酸化アルミニウム膜、または酸化窒化アルミニウム膜などの無機絶縁膜を用いることができる。
【0042】
保護絶縁層307としては、窒化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、窒化酸化シリコン膜、窒化酸化アルミニウム膜などの無機絶縁膜を用いることができる。
【0043】
また、保護絶縁層307上には、トランジスタ起因の表面凹凸を低減するための平坦化絶縁膜を形成してもよい。平坦化絶縁膜としては、ポリイミド、アクリル、ベンゾシクロブテン、等の有機材料を用いることができる。また、上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)等を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで、平坦化絶縁膜を形成してもよい。
【0044】
上記構成による酸化物半導体を用いた第1のトランジスタ201、及び第2のトランジスタ202はオフ電流が非常に小さい特徴を有する。アンテナ101で受信した搬送波または振幅変調波が小さい場合、すなわち、半導体装置と無線通信装置の間隔が広い場合は、保護回路107が電力を消費してしまうことは好ましくない。ゆえに、第1のトランジスタ201及び第2のトランジスタ202に酸化物半導体を用いたトランジスタを用いることで、アンテナ101で受信した搬送波または振幅変調波が小さい場合、保護回路107での電力の損失を最小限にすることができる。
【0045】
さらに、半導体層に酸化物半導体を用いたトランジスタの特徴として、保護回路の電気的負荷および発熱に対する耐性が高い点が挙げられる。一般的に、保護回路には比較的大きな電気的負荷がかかり、さらに発熱することが想定される。一般的に用いられるSiトランジスタでは、素子が発熱することによって特性劣化を進行させ、最悪の場合、絶縁破壊を誘発して不良に至ることもある。その点、半導体層に酸化物半導体を用いたトランジスタは電気的負荷および発熱に対する耐性が非常に高い。したがって、保護回路として、半導体層に酸化物半導体を用いたトランジスタを用いることで、保護回路の電気的負荷および発熱に対する耐性が向上する。そのため、アンテナ101より振幅の大きい信号が供給された場合においても保護回路は正常に機能することができ、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0046】
以上のように半導体装置に、上述した保護回路107を設けることによって、半導体装置に振幅の大きい信号が供給された場合においても、正常に動作し、通信距離が長い場合においても保護回路での消費電力が抑えられるため、信頼性の高い半導体装置が得られる。
【0047】
(実施の形態2)
本実施の形態では、図3(A)、図3(B)、図4(A)、及び図4(B)を参照して、アンテナ、整流回路、および保護回路に適用可能な回路が実施の形態1とは異なる構成について説明する。
【0048】
以下に、本発明の半導体装置に適用可能な回路について、図3(A)及び図3(B)を用いて説明する。
【0049】
半導体装置の構成ブロック図を図3(A)に示す。半導体装置は、搬送波または振幅変調波を受信するアンテナ401と、搬送波または振幅変調波を整流し、内部電圧Vinを生成する整流回路402と、アンテナ401で受信した搬送波または振幅変調波から信号を復調し、内部信号を生成する復調回路403と、整流回路402にて生成された内部電圧Vinを定電圧化して電源電圧Vddとして出力する定電圧回路404と、定電圧回路404で生成された電源電圧Vdd及び復調回路403で生成された復調信号を用いた信号の解析、並びに応答信号の生成を行う論理回路405と、論理回路405からの信号を変調し、アンテナ401に変調信号を出力する変調回路406と、アンテナ401で受信した搬送波または振幅変調波の振幅があるリミット電圧Vlimよりも大きい場合に、その余剰分の一部をカットするとともに、整流回路402からの内部電圧Vinの出力を参照することでリミット電圧Vlimが押し下げられ、その余剰分をカットできる保護回路407と、を有する。
【0050】
以下に、図3(B)を参照して、保護回路407の構成を説明する。
【0051】
図3(B)に示す保護回路407は、第1端子、第2端子および第3端子を有する。なお、第1端子はアンテナ401に電気的に接続し、第2端子は接地し、第3端子は整流回路402の入力端子に電気的に接続される。
【0052】
また、保護回路407は、ドレイン電極および第1のゲート電極がアンテナに電気的に接続され、ソース電極が接地され、第2のゲート電極が保護回路402の入力に電気的に接続された第1のトランジスタ501と、ソース電極がアンテナに電気的に接続され、ドレイン電極および第1のゲート電極が接地され、第2のゲート電極が保護回路402の入力に電気的に接続された第2のトランジスタ502とを有する。
【0053】
図3(B)では、3つずつ直列接続された第1のトランジスタ501及び第2のトランジスタ502がそれぞれ2列ずつ並列接続されているが、保護回路407の構成は、この構成に限定されない。保護回路407の構成としては、第1のトランジスタ501及び第2のトランジスタ502が一つ以上設けられ、且つ第1のトランジスタ501及び第2のトランジスタ502が並列接続される構成であればよい。なお、第1のトランジスタ501同士及び第2のトランジスタ502同士の接続は直列又は並列に限定されず、任意に接続すればよい。
【0054】
保護回路407は、アンテナ401で受信した搬送波または振幅変調波の振幅が大きくなると機能する。つまり、ある正の電圧以上になると第1のトランジスタ501が導通し、ある負の電圧以下になると第2のトランジスタ502が導通する。整流回路402に入力される搬送波または振幅変調波の振幅がある一定値以上になると、第1のトランジスタ501および第2のトランジスタ502が導通することで、アンテナ401が過剰に受信した搬送波または振幅変調波の一部を保護回路407が消費するようになり、後段の整流回路402および復調回路403への負荷が軽減される。
【0055】
また、整流回路402の入力端子に電気的に接続され、保護回路407内に設けられた第3端子は、第1のトランジスタ501、及び第2のトランジスタ502の第2のゲート電極に接続されている。従って、整流回路402に入力される搬送波または振幅変調波の振幅がある一定値以上になると、第1のトランジスタ501、及び第2のトランジスタ502に接続されている第2のゲート電極の電位が上昇する。第1のトランジスタ501、及び第2のトランジスタ502は、半導体層として酸化物半導体層を使用しており、酸化物半導体層は第2のゲート電極の電位が上昇することで、トランジスタのしきい値がマイナス方向にシフトし、所轄ノーマリーオンのトランジスタ特性になる。よって、トランジスタ501、及びトランジスタ502が導通し、保護回路407が消費する電流量が増大し、後段の整流回路402及び復調回路403への負荷がさらに軽減される。
【0056】
さらに、第1のトランジスタ501及び第2のトランジスタ502は、半導体層に酸化物半導体層を用いる。図4(A)に、半導体層に酸化物半導体層を用いたトランジスタの断面構造の例を示す。
【0057】
図4(A)に示す半導体層に酸化物半導体層を用いたトランジスタ600は、デュアルゲート構造のトランジスタの一例である。
【0058】
トランジスタ600は、絶縁表面を有する基板601上の、第1のゲート電極602、ゲート絶縁層603、酸化物半導体層604、ソース電極またはドレイン電極605a、及びソース電極またはドレイン電極605bを含む。また、トランジスタ600を覆い、酸化物半導体層604に接する絶縁層606が設けられている。絶縁層606上にはさらに保護絶縁層609が形成されている。また、酸化物半導体層604に対し、絶縁層606、及び保護絶縁層609を挟んで第1のゲート電極602に対向するように配置された第2のゲート電極607が設けられている。
【0059】
本実施の形態では、半導体層として酸化物半導体層604を用いる。酸化物半導体層604に用いる酸化物半導体としては、四元系金属酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O系酸化物半導体や、三元系金属酸化物であるIn−Ga−Zn−O系、In−Sn−Zn−O系、In−Al−Zn−O系、Sn−Ga−Zn−O系、Al−Ga−Zn−O系、Sn−Al−Zn−O系酸化物半導体や、二元系金属酸化物であるIn−Zn−O系、Sn−Zn−O系、Al−Zn−O系、Zn−Mg−O系、Sn−Mg−O系、In−Mg−O系酸化物半導体や、In−O系、Sn−O系、Zn−O系酸化物半導体などがある。また、上記酸化物半導体にSiOを添加してもよい。ここで、例えば、In−Ga−Zn−O系酸化物半導体とは、少なくともInとGaとZnを含む酸化物であり、その組成比に特に制限はない。また、InとGaとZn以外の元素を含んでもよい。
【0060】
また、酸化物半導体層604は、化学式InMO(ZnO)(m>0)で表記される酸化物半導体を用いることができる。ここで、Mは、Ga、Al、MnおよびCoから選ばれた一または複数の金属元素を示す。例えば、Mとしては、Ga、Ga及びAl、Ga及びMn、またはGa及びCoなどがある。
【0061】
絶縁表面を有する基板601は、使用することができる基板に大きな制限はない。例えば、液晶表示装置などに用いられるガラス基板や、石英基板などを用いることができる。また、シリコンウェハ上に絶縁層を形成した基板などを用いても良い。
【0062】
ゲート電極602は、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料またはこれらを主成分とする合金材料を用いて形成することができる。また、その構造は、単層構造としても良いし、積層構造としても良い。
【0063】
なお、下地となる絶縁層を基板601とゲート電極602の間に設けてもよい。当該絶縁層は、基板からの不純物元素の拡散を防止する機能があり、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、又は酸化窒化シリコン膜から選ばれた一又は複数の膜により形成することができる。
【0064】
ゲート絶縁層603は、プラズマCVD法やスパッタリング法などを用いて、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、窒化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、窒化酸化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜などから選ばれた一又は複数の膜により形成することができる。例えば、第1のゲート絶縁層としてプラズマCVD法により膜厚50nm以上200nm以下の窒化シリコン膜(SiN(y>0))を形成し、第1のゲート絶縁層上に第2のゲート絶縁層としてスパッタリング法により膜厚5nm以上300nm以下の酸化シリコン膜(SiO(x>0))を形成して、合計膜厚200nmのゲート絶縁層603とすることができる。
【0065】
ソース電極またはドレイン電極605a、ソース電極またはドレイン電極605bは、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料またはこれらを主成分とする合金材料を用いて形成することができる。例えば、アルミニウムや銅などの金属層と、チタン、モリブデン、タングステンなどの高融点金属層との積層構造とすることができる。ヒロックやウィスカーの発生を防止する元素(シリコン、ネオジム、スカンジウムなど)が添加されたアルミニウム材料を用いることで耐熱性を向上させても良い。
【0066】
また、ソース電極またはドレイン電極605a、ソース電極またはドレイン電極605bとなる導電膜として、導電性の金属酸化物膜を用いても良い。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム酸化スズ合金(In―SnO、ITOと略記する場合がある)、酸化インジウム酸化亜鉛合金(In―ZnO)またはこれらの金属酸化物材料に酸化シリコンを含ませたもの、などを用いることができる。
【0067】
絶縁層606としては、代表的には酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化ガリウム、酸化アルミニウム膜、または酸化窒化アルミニウム膜などの無機絶縁膜を用いることができる。
【0068】
保護絶縁層609としては、窒化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、窒化酸化シリコン膜、窒化酸化アルミニウム膜などの無機絶縁膜を用いることができる。
【0069】
第2のゲート電極607としては、ソース電極またはドレイン電極605a、ソース電極またはドレイン電極605bと同様の材料を用いることができる。
【0070】
また、保護絶縁層609、及び第2のゲート電極607上には、トランジスタ起因の表面凹凸を低減するための平坦化絶縁膜を形成してもよい。平坦化絶縁膜としては、ポリイミド、アクリル、ベンゾシクロブテン、等の有機材料を用いることができる。また、上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)等を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで、平坦化絶縁膜を形成してもよい。
【0071】
次に、図4(A)に示すトランジスタ600の回路記号表記したものを図4(B)に示す。図4(B)においてVdおよびVsは、図4(A)におけるドレイン電極605aおよびソース電極605bに印加される電圧を表し、Vgは第1のゲート電極602に印加される電圧、Vbgは第2のゲート電極607に印加される電圧とする。Idはドレイン電極からソース電極に流れる電流である。
【0072】
図4(A)における第1のゲート電極602と第2のゲート電極607は、それぞれが図4(B)におけるVgおよびVbgを印加する電極のいずれかに対応すれば足り、1通りに限定されるものではない。例えば、図4(A)における第1のゲート電極602が図4(B)におけるVbgを印加する電極に対応し、図4(A)における第2のゲート電極607が図4(B)におけるVgを印加する電極に対応する場合であってもよい。
【0073】
半導体層に酸化物半導体を用いた第1のトランジスタ501、及び第2のトランジスタ502はオフ電流が非常に小さい特徴を有する。アンテナ401で受信した搬送波または振幅変調波が小さい場合、すなわち、半導体装置と無線通信装置の間隔が広い場合は、保護回路407が電力を消費してしまうことは好ましくない。ゆえに、第1のトランジスタ501及び第2のトランジスタ502に上述のトランジスタを用いることで、アンテナ401で受信した搬送波または振幅変調波が小さい場合、保護回路での電力の損失を最小限にすることができる。
【0074】
さらに、半導体層に酸化物半導体を用いた第1のトランジスタ501、及び第2のトランジスタ502の特徴として、保護回路の電気的負荷および発熱に対する耐性が高い点が挙げられる。一般的に、保護回路には比較的大きな電気的負荷がかかり、さらに発熱することが想定される。一般的に用いられるSiトランジスタでは、素子が発熱することによって特性劣化を進行させ、最悪の場合、絶縁破壊を誘発して不良に至ることもある。その点、半導体層に酸化物半導体を用いた第1のトランジスタ501、及び第2のトランジスタ502は電気的負荷および発熱に対する耐性が非常に高い。したがって、保護回路407において、半導体層に酸化物半導体を用いた第1のトランジスタ501、及び第2のトランジスタ502を用いることで、保護回路407の電気的負荷および発熱に対する耐性が向上する。そのため、アンテナ401より振幅の大きい信号が供給された場合においても保護回路407は正常に機能することができ、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0075】
以上のように半導体装置に、上述した保護回路を設けることによって、半導体装置に振幅の大きい信号が供給された場合においても、正常に動作し、通信距離が長い場合においても保護回路での消費電力が抑えられるため、信頼性の高い半導体装置が得られる。
【0076】
(実施の形態3)
本実施の形態では、図5(A)、図5(B)を参照して、アンテナ、整流回路、および保護回路に適用可能な回路が実施の形態1及び実施の形態2とは異なる構成について説明する。
【0077】
以下に、図5(A)および図5(B)に示す保護回路の構成について詳述する。
【0078】
半導体装置の構成ブロック図を図5(A)に示す。半導体装置は、搬送波または振幅変調波を受信するアンテナ701と、搬送波または振幅変調波を整流し、内部電圧Vinを生成する整流回路702と、アンテナ701で受信した搬送波または振幅変調波から信号を復調し、内部信号を生成する復調回路703と、整流回路702にて生成された内部電圧Vinを定電圧化して電源電圧Vddとして出力する定電圧回路704と、定電圧回路704で生成された電源電圧Vdd及び復調回路703で生成された復調信号を用いた信号の解析、並びに応答信号の生成を行う論理回路705と、論理回路705からの信号を変調し、アンテナ701に変調信号を出力する変調回路706と、整流回路702からの内部電圧Vinの出力を参照し、論理回路705からの信号により保護回路707の第2のゲート電極を制御するスイッチング回路708と、アンテナ701で受信した搬送波または振幅変調波の振幅があるリミット電圧Vlimよりも大きい場合にその余剰分の一部をカットするとともに、整流回路702からの内部電圧Vinの出力を参照することでリミット電圧Vlimが押し下げられ、より多くの余剰分をカットできる保護回路707と、を有する。
【0079】
以下に、図5(B)を参照して、スイッチング回路708、および保護回路707の構成を説明する。
【0080】
図5(B)に示す保護回路707は、第1端子、第2端子および第3端子を有する。なお、第1端子はアンテナ701に電気的に接続し、第2端子は接地する。また、保護回路707の第3端子は、スイッチング回路708に設けられたトランジスタ803のソース電極に接続される。
【0081】
また、保護回路707は、ドレイン電極および第1のゲート電極がアンテナに電気的に接続され、ソース電極が接地され、第2のゲート電極がスイッチング回路708の出力に電気的に接続された第1のトランジスタ801と、ソース電極がアンテナに電気的に接続され、ドレイン電極及び第1のゲート電極が接地され、第2のゲート電極がスイッチング回路708の出力に電気的に接続された第2のトランジスタ802とを有する。
【0082】
スイッチング回路708に設けられたトランジスタ803のドレイン電極は、整流回路702の出力に電気的に接続される。スイッチング回路708に設けられたトランジスタ803のゲート電極は、論理回路705に電気的に接続されており、論理回路705からスイッチング回路708に設けられたトランジスタ803を用い、保護回路707に設けられた第1のトランジスタ801、及び第2のトランジスタ802の第2のゲート電極を任意の電位で保持させることができ、保護回路707を制御することができる。
【0083】
図5(B)では、3つずつ直列接続された第1のトランジスタ801及び第2のトランジスタ802がそれぞれ2列ずつ並列接続されているが、保護回路707の構成は、この構成に限定されない。保護回路707の構成としては、第1のトランジスタ801及び第2のトランジスタ802が一つ以上設けられ、且つ第1のトランジスタ801及び第2のトランジスタ802が並列接続される構成であればよい。なお、第1のトランジスタ801同士及び第2のトランジスタ802同士の接続は直列又は並列に限定されず、任意に接続すればよい。
【0084】
さらに、第1のトランジスタ801、第2のトランジスタ802、及びトランジスタ803は、半導体層に酸化物半導体層を用いる。第1のトランジスタ801、及び第2のトランジスタ802は、実施の形態2で示したトランジスタ600と同じ構成のトランジスタを用いることができる。トランジスタ803は、実施の形態1で示したトランジスタ300と同じ構成のトランジスタを用いることができる。よって、本実施の形態においては、第1のトランジスタ801、第2のトランジスタ802、及びトランジスタ803の説明は省略する。
【0085】
スイッチング回路708に設けられたトランジスタ803のドレイン電極は、整流回路702の出力に電気的に接続され、ソース電極は保護回路707に設けられたトランジスタ801、及びトランジスタ802の第2のゲート電極に接続されている。従って、整流回路702に入力される搬送波または振幅変調波の振幅がある一定値以上になると、論理回路705にてスイッチング回路708内のトランジスタ803を制御することにより、任意の電位で保護回路707の第2のゲート電極の電位を保持することができる。第2のゲート電極を任意の電位にて保持することで、保護回路707に設けられたトランジスタのしきい値電圧を制御することができ、保護回路707が消費する電力量を制御することが可能となり、後段の整流回路702及び定電圧回路704への負荷を軽減させることができる。
【0086】
以上のように半導体装置に、上述した保護回路707を設けることによって、半導体装置に振幅の大きい信号が供給された場合においても、正常に動作し、通信距離が長い場合においても保護回路での消費電力が抑えられるため、信頼性の高い半導体装置が得られる。
【0087】
(実施の形態4)
本実施の形態では、図6を参照して、保護回路に適用可能な回路が上記実施の形態とは異なる構成について説明する。
【0088】
図1(A)、図3(A)、及び図5(A)に示した半導体装置(RFID)のブロック図の構成は、アンテナで受信した搬送波または振幅変調波を論理回路105、論理回路405、及び論理回路705の内部に含まれる回路で適宜加工して、各論理回路の動作に必要なクロック信号CLKを生成する場合の構成である。一方、アンテナで受信した搬送波または振幅変調波を参照せずに、論理回路の動作に必要なクロック信号CLKを生成する場合は、半導体装置(RFID)の内部にクロック生成回路を別途有する構成とすればよい。特に、300MHz〜3GHz(UHF帯)の周波数帯でリーダ/ライタとデータのやり取りを行う遠隔型のRFIDにおいては、クロック生成回路を別途有する構成とすることが好ましい。
【0089】
本実施の形態では、図6にクロック生成回路を有する半導体装置のブロック図の構成を示す。
【0090】
半導体装置は、搬送波または振幅変調波を受信するアンテナ901と、アンテナ901によって受信した搬送波または振幅変調波を整流し、内部電圧Vinを生成する整流回路902と、アンテナ901で受信した搬送波または振幅変調波から信号を復調し、内部信号を生成する復調回路903と、整流回路902にて生成された内部電圧Vinを定電圧化して電源電圧Vddとして出力する定電圧回路904と、定電圧回路904で生成された電源電圧Vdd及び復調回路903で生成された復調信号を用いた信号の解析、並びに応答信号の生成を行う論理回路905と、論理回路905からの信号を変調し、アンテナ901に変調信号を出力する変調回路906と、論理回路905の動作に必要なクロック信号CLKを生成するクロック生成回路908と、アンテナ901で生成された交流電圧の振幅が大きい場合に機能し、アンテナ901で受信した搬送波または振幅変調波の振幅があるリミット電圧Vlimよりも大きい場合に、その余剰分の一部をカットする保護回路907と、を有する。
【0091】
クロック生成回路908には、一定の周波数のクロック信号CLKを安定して論理回路905に供給する機能が求められる。このため、クロック生成回路908には一定の電位が供給される必要がある。
【0092】
クロック生成回路908に供給する一定の電位としては、定電圧回路904で生成された電源電位Vddを用いてもよい。しかしながら、電源電位Vddは他の回路にも供給されるものであり、他の回路の動作によって電源電位Vddが変動するおそれがある場合は、他の回路に供給される電源電位Vddとは別の電源電位Vdd_CLKを定電圧回路904で生成し、その電源電位Vdd_CLKをクロック生成回路908に供給する構成とすることが好ましい。この構成を採用することにより、クロック生成回路908は一定の周波数のクロック信号CLKを安定して論理回路905に供給することが容易となる。
【0093】
なお、図6に示す半導体装置のブロック図において、クロック生成回路908以外の回路は図1(A)に示す回路構成と同様のものを用いることができ、保護回路907に用いる回路構成、及びトランジスタも同様のものを用いることができるので、ここでは説明を省略する。
【0094】
保護回路907は、アンテナ901で受信した搬送波または振幅変調波の振幅が大きくなると機能する。つまり、整流回路902に入力される搬送波または振幅変調波の振幅がある一定値以上になると保護回路907内に設けられたトランジスタが機能し、アンテナ901が過剰に受信した搬送波または振幅変調波の一部を保護回路907が消費するようになり、後段の整流回路902及び復調回路903への負荷が軽減される。
【0095】
以上のように半導体装置に、上述した保護回路907を設けることによって、半導体装置に振幅の大きい信号が供給された場合においても、正常に動作し、通信距離が長い場合においても保護回路での消費電力が抑えられるため、信頼性の高い半導体装置が得られる。
【0096】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0097】
(実施の形態5)
本実施の形態では、上記実施の形態1乃至4において、トランジスタの半導体層に用いる酸化物半導体層を用いたトランジスタの他の一例を、図7を用いて説明する。なお、トランジスタの構造は特に限定されず、例えば、トップゲート構造またはボトムゲート構造の、スタガ型またはプレーナ型など、適当な構造を採用することができる。また、トランジスタはチャネル形成領域を一つ有するシングルゲート構造でも、二つ有するダブルゲート構造であっても、三つ有するトリプルゲート構造であっても良い。また、チャネル領域の上下にゲート絶縁層を介して配置された2つのゲート電極を有する、デュアルゲート型でもよい。なお、以下に説明する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0098】
図7(A)乃至図7(C)には、トランジスタの断面構造の例を示す。図7(A)乃至図7(C)に示すトランジスタは、半導体として酸化物半導体を用いるものである。酸化物半導体を用いることのメリットは、簡単なプロセス、低温のプロセスで、高い移動度と低いオフ電流が実現できることといえる。
【0099】
図7(A)に示すトランジスタ1020は、チャネル保護型(チャネルストップ型ともいう)と呼ばれるボトムゲート構造のトランジスタの一例であり、逆スタガ型トランジスタともいう。
【0100】
トランジスタ1020は、絶縁表面を有する基板1000上の、ゲート電極1001、ゲート絶縁層1002、酸化物半導体層1003、チャネル保護層として機能する絶縁層1027、ソース電極またはドレイン電極1005a、及びソース電極またはドレイン電極1005bを含む。また、トランジスタ1020を覆う保護絶縁層1009が設けられている。
【0101】
図7(B)に示すトランジスタ1030は、ボトムゲート型のトランジスタの一例である。トランジスタ1030は、絶縁表面を有する基板1000上の、ゲート電極1001、ゲート絶縁層1002、ソース電極またはドレイン電極1005a、ソース電極またはドレイン電極1005b、及び酸化物半導体層1003を含む。また、トランジスタ1030を覆い、酸化物半導体層1003に接する絶縁層1007が設けられている。絶縁層1007上にはさらに保護絶縁層1009が形成されている。
【0102】
トランジスタ1030においては、ゲート絶縁層1002は基板1000及びゲート電極1001上に接して設けられ、また、ゲート絶縁層1002上には、ソース電極またはドレイン電極1005a、ソース電極またはドレイン電極1005bが接して設けられている。そして、ゲート絶縁層1002、及びソース電極またはドレイン電極1005a、ソース電極またはドレイン電極1005b上に酸化物半導体層1003が設けられている。
【0103】
図7(C)に示すトランジスタ1040は、トップゲート構造のトランジスタの一例である。トランジスタ1040は、絶縁表面を有する基板1000上の、絶縁層1037、酸化物半導体層1003、ソース電極またはドレイン電極1005a、及びソース電極またはドレイン電極1005b、ゲート絶縁層1002、ゲート電極1001を含む。そして、ソース電極またはドレイン電極1005a、ソース電極またはドレイン電極1005bにそれぞれ配線1036a、配線1036bが接して設けられている。
【0104】
本実施の形態では、半導体層として酸化物半導体層1003を用いる。酸化物半導体層1003に用いる酸化物半導体としては、四元系金属酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O系酸化物半導体や、三元系金属酸化物であるIn−Ga−Zn−O系、In−Sn−Zn−O系、In−Al−Zn−O系、Sn−Ga−Zn−O系、Al−Ga−Zn−O系、Sn−Al−Zn−O系酸化物半導体や、二元系金属酸化物であるIn−Zn−O系、Sn−Zn−O系、Al−Zn−O系、Zn−Mg−O系、Sn−Mg−O系、In−Mg−O系酸化物半導体や、In−O系、Sn−O系、Zn−O系酸化物半導体などがある。また、上記酸化物半導体にSiOを添加してもよい。ここで、例えば、In−Ga−Zn−O系酸化物半導体とは、少なくともInとGaとZnを含む酸化物であり、その組成比に特に制限はない。また、InとGaとZn以外の元素を含んでもよい。
【0105】
また、酸化物半導体層1003は、化学式InMO(ZnO)(m>0)で表記される酸化物半導体を用いることができる。ここで、Mは、Ga、Al、MnおよびCoから選ばれた一または複数の金属元素を示す。例えば、Mとしては、Ga、Ga及びAl、Ga及びMn、またはGa及びCoなどがある。
【0106】
酸化物半導体層1003を用いたトランジスタ1020、トランジスタ1030、及びトランジスタ1040は、オフ電流が非常に小さい特徴を有する。よって、これを保護回路に用いることにより、アンテナで受信した搬送波または振幅変調波が小さい場合に、保護回路での電力の損失を最小限にすることができる。
【0107】
絶縁表面を有する基板1000に使用することができる基板に大きな制限はない。例えば、液晶表示装置などに用いられるガラス基板や、石英基板などを用いることができる。また、シリコンウェハ上に絶縁層を形成した基板などを用いても良い。
【0108】
ボトムゲート構造のトランジスタ1020、トランジスタ1030において、下地となる絶縁層を基板とゲート電極の間に設けてもよい。当該絶縁層は、基板からの不純物元素の拡散を防止する機能があり、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、又は酸化窒化シリコン膜から選ばれた一又は複数の膜により形成することができる。
【0109】
ゲート電極1001は、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料またはこれらを主成分とする合金材料を用いて形成することができる。また、その構造は、単層構造としても良いし、積層構造としても良い。
【0110】
ゲート絶縁層1002は、プラズマCVD法やスパッタリング法などを用いて、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、窒化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、窒化酸化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜などから選ばれた一又は複数の膜により形成することができる。例えば、第1のゲート絶縁層としてプラズマCVD法により膜厚50nm以上200nm以下の窒化シリコン膜(SiN(y>0))を形成し、第1のゲート絶縁層上に第2のゲート絶縁層としてスパッタリング法により膜厚5nm以上300nm以下の酸化シリコン膜(SiO(x>0))を形成して、合計膜厚200nmのゲート絶縁層1002とすることができる。
【0111】
ソース電極またはドレイン電極1005a、ソース電極またはドレイン電極1005bは、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料またはこれらを主成分とする合金材料を用いて形成することができる。例えば、アルミニウムや銅などの金属層と、チタン、モリブデン、タングステンなどの高融点金属層との積層構造とすることができる。ヒロックやウィスカーの発生を防止する元素(シリコン、ネオジム、スカンジウムなど)が添加されたアルミニウム材料を用いることで耐熱性を向上させても良い。
【0112】
また、ソース電極またはドレイン電極1005a、ソース電極またはドレイン電極1005b(これらと同じ層で形成される配線を含む)となる導電膜として、導電性の金属酸化物膜を用いても良い。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム酸化スズ合金(In―SnO、ITOと略記する場合がある)、酸化インジウム酸化亜鉛合金(In―ZnO)またはこれらの金属酸化物材料に酸化シリコンを含ませたもの、などを用いることができる。
【0113】
ソース電極またはドレイン電極1005a、ソース電極またはドレイン電極1005bに接する配線1036a、配線1036bについては、ソース電極またはドレイン電極1005a、ソース電極またはドレイン電極1005bと同様の材料を用いて形成することができる。
【0114】
絶縁層1007、絶縁層1027、絶縁層1037としては、代表的には酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化ガリウム、酸化アルミニウム膜、または酸化窒化アルミニウム膜などの無機絶縁膜を用いることができる。
【0115】
保護絶縁層1009としては、窒化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、窒化酸化シリコン膜、窒化酸化アルミニウム膜などの無機絶縁膜を用いることができる。
【0116】
また、保護絶縁層1009上には、トランジスタ起因の表面凹凸を低減するための平坦化絶縁膜を形成してもよい。平坦化絶縁膜としては、ポリイミド、アクリル、ベンゾシクロブテン、等の有機材料を用いることができる。また、上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)等を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで、平坦化絶縁膜を形成してもよい。
【0117】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0118】
(実施の形態6)
本実施の形態では、実施の形態1において、図2に示した酸化物半導体層を用いたトランジスタの作製方法の一例を、図8を用いて詳細に説明する。
【0119】
図8(A)乃至図8(E)は、トランジスタの作製工程にかかる断面図である。なお、ここで示すトランジスタ1110は、逆スタガ型トランジスタである。なお、トランジスタ1110は実施の形態1において、例示した図2のトランジスタ300と同一の構造となる。
【0120】
本実施の形態の半導体層に用いる酸化物半導体は、n型不純物である水素を酸化物半導体から除去し、酸化物半導体の構成元素以外の不純物が極力含まれないようにし、酸化物半導体に酸素を供給し、当該酸化物半導体の酸素欠陥を低減し、高純度化することによりI型(真性)の酸化物半導体、又はI型(真性)に限りなく近い酸化物半導体としたものである。
【0121】
なお、高純度化された酸化物半導体中ではキャリアが極めて少なく、キャリア濃度は1×1014/cm未満、好ましくは1×1012/cm未満、さらに好ましくは1×1011/cm未満となる。また、このようにキャリアが少ないことで、オフ状態における電流(オフ電流)は十分に小さくなる。
【0122】
具体的には、上述の酸化物半導体層を具備するトランジスタでは、室温(25℃)におけるチャネル幅1μmあたりのオフ電流密度を、100zA/μm(1×10−19A/μm)以下、さらには10zA/μm(1×10−20A/μm)以下にすることが可能である。
【0123】
また、高純度化された酸化物半導体層を具備するトランジスタ1110は、オン電流の温度依存性がほとんど見られず、高温状態においてもオフ電流は非常に小さいままである。
【0124】
以下、図8(A)乃至図8(E)を用い、基板1105上にトランジスタ1110を作製する工程を説明する。
【0125】
まず、絶縁表面を有する基板1105上に導電層を形成した後、第1のフォトリソグラフィ工程によりゲート電極1111を形成する。なお、当該フォトリソグラフィ工程に用いるレジストマスクは、インクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0126】
絶縁表面を有する基板1105には、上記実施の形態における基板1000と同様の基板を用いることができる。本実施の形態では基板1105としてガラス基板を用いる。
【0127】
なお、下地となる絶縁層を基板1105とゲート電極1111との間に設けてもよい。当該絶縁層には、基板1105からの不純物元素の拡散を防止する機能があり、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜などから選ばれた一または複数の膜により形成することができる。
【0128】
また、ゲート電極1111は、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料またはこれらを主成分とする合金材料を用いて形成することができる。また、その構造は、単層構造としても良いし、積層構造としても良い。
【0129】
次いで、ゲート電極1111上にゲート絶縁層1107を形成する。ゲート絶縁層1107は、プラズマCVD法やスパッタリング法などを用いて形成することができる。また、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、窒化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、窒化酸化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜などから選ばれた一又は複数の膜により形成することができる。
【0130】
なお、ゲート絶縁層1107、酸化物半導体層1130に水素、水酸基及び水分がなるべく含まれないようにするために、酸化物半導体層1130の成膜の前処理として、スパッタリング装置の予備加熱室でゲート電極1111が形成された基板1105、またはゲート絶縁層1107までが形成された基板1105を予備加熱し、基板1105が吸着している水素、水分などの不純物を脱離させることが好ましい。また、予備加熱室に設ける排気手段は、クライオポンプとすることが好ましい。また、当該予備加熱は、ソース電極またはドレイン電極1115a及びソース電極またはドレイン電極1115bまで形成した基板1105に対して行っても良い。なお、この予備加熱の処理は省略することもできる。
【0131】
次いで、ゲート絶縁層1107上に、膜厚2nm以上200nm以下、好ましくは5nm以上30nm以下の酸化物半導体層1130を形成する(図8(A)参照)。
【0132】
酸化物半導体層1130には、上記実施の形態4に示した四元系金属酸化物、三元系金属酸化物、二元系金属酸化物、In−O系、Sn−O系、Zn−O系などを用いることができる。
【0133】
酸化物半導体層1130をスパッタリング法で作製するためのターゲットとして、酸化亜鉛を主成分とする金属酸化物のターゲットを用いることができる。また、金属酸化物のターゲットの他の例としては、In、Ga、及びZnを含む金属酸化物ターゲット(組成比として、In:Ga:ZnO=1:1:1[mol数比]を用いることができる。また、In、Ga、及びZnを含む金属酸化物ターゲットとして、In:Ga:ZnO=2:2:1[mol数比]、又はIn:Ga:ZnO=1:1:4[mol数比]の組成比を有するターゲットを用いることもできる。金属酸化物ターゲットの充填率は90%以上100%以下、好ましくは95%以上99.9%である。充填率の高い金属酸化物ターゲットを用いることにより、成膜した酸化物半導体膜は緻密な膜となる。
【0134】
酸化物半導体層1130の形成雰囲気は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気、酸素雰囲気、または、希ガス(代表的にはアルゴン)と酸素との混合雰囲気とするのが好適である。具体的には、例えば、水素、水、水酸基、水素化物などの不純物が、濃度1ppm以下(望ましくは濃度10ppb以下)にまで除去された高純度ガス雰囲気を用いるのが好適である。
【0135】
酸化物半導体層1130の形成の際には、例えば、減圧状態に保持された処理室内に被処理物を保持し、被処理物の温度が100℃以上550℃未満、好ましくは200℃以上450℃以下となるように被処理物を熱する。または、酸化物半導体層1130の形成の際の被処理物の温度は、室温(25℃±10℃)としてもよい。そして、処理室内の水分を除去しつつ、水素や水などが除去されたスパッタリングガスを導入し、上記ターゲットを用いて酸化物半導体層1130を形成する。被処理物を熱しながら酸化物半導体層1130を形成することにより、酸化物半導体層に含まれる不純物を低減することができる。また、スパッタリングによる損傷を軽減することができる。処理室内の水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプなどを用いることができる。また、ターボ分子ポンプにコールドトラップを加えたものを用いてもよい。クライオポンプなどを用いて排気することで、処理室から水素や水などを除去することができるため、酸化物半導体層1130中の不純物濃度を低減できる。
【0136】
酸化物半導体層1130の形成条件としては、例えば、被処理物とターゲットの間との距離が170mm、圧力が0.4Pa、直流(DC)電力が0.5kW、雰囲気が酸素(酸素100%)雰囲気、またはアルゴン(アルゴン100%)雰囲気、または酸素とアルゴンの混合雰囲気、といった条件を適用することができる。なお、パルス直流(DC)電源を用いると、ごみ(成膜時に形成される粉状の物質など)を低減でき、膜厚分布も均一となるため好ましい。酸化物半導体層1130の厚さは、1nm以上50nm以下、好ましくは1nm以上30nm以下とする。このような厚さの酸化物半導体層1130を用いることで、微細化に伴う短チャネル効果を抑制することが可能である。ただし、適用する酸化物半導体材料や、半導体装置の用途などにより適切な厚さは異なるから、その厚さは、用いる材料や用途などに応じて選択することもできる。
【0137】
なお、酸化物半導体層1130をスパッタリング法により形成する前には、アルゴンガスを導入してプラズマを発生させる逆スパッタリングを行い、形成表面(例えばゲート絶縁層1107の表面)の付着物を除去するのが好適である。ここで、逆スパッタリングとは、処理表面にイオンを衝突させることによってその表面を改質する方法のことをいう。処理表面にイオンを衝突させる方法としては、アルゴン雰囲気下で処理表面側に高周波電圧を印加して、被処理物付近にプラズマを生成する方法などがある。なお、アルゴン雰囲気に代えて窒素、ヘリウム、酸素などによる雰囲気を適用してもよい。
【0138】
次いで、酸化物半導体層1130を第2のフォトリソグラフィ工程により島状の酸化物半導体層に加工する。なお、当該フォトリソグラフィ工程に用いるレジストマスクは、インクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0139】
なお、ゲート絶縁層1107にコンタクトホールを形成する場合、その工程は酸化物半導体層1130の加工と同時に行うことができる。
【0140】
酸化物半導体層1130のエッチングは、ドライエッチングでもウェットエッチングでもよく、両方を用いてもよい。例えば、酸化物半導体層1130のウェットエッチングに用いるエッチング液としては、燐酸と酢酸と硝酸とを混合させた溶液、アンモニア過水(31重量%過酸化水素水:28重量%アンモニア水:水=5:2:2)などを用いることができる。また、ITO07N(関東化学社製)を用いてもよい。
【0141】
その後、酸化物半導体層に対して、熱処理(第1の熱処理)を行い、酸化物半導体層1131を得る(図8(B)参照)。この第1の熱処理によって酸化物半導体層中の過剰な水素(水や水酸基を含む)を除去し、酸化物半導体層の構造を整え、エネルギーギャップ中の欠陥準位を低減することができる。第1の熱処理の温度は、例えば、300℃以上650℃未満、好ましくは400℃以上500℃以下とする。
【0142】
熱処理は、例えば、抵抗発熱体などを用いた電気炉に被処理物を導入し、窒素雰囲気下、450℃、1時間の条件で行うことができる。この間、酸化物半導体層は大気に触れさせず、水や水素の混入が生じないようにする。
【0143】
熱処理装置は電気炉に限られず、加熱されたガスなどの媒体からの熱伝導、または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を用いても良い。例えば、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて熱処理を行う装置である。ガスとしては、アルゴンなどの希ガス、または窒素のような、熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。
【0144】
例えば、第1の熱処理として、熱せられた不活性ガス雰囲気中に被処理物を投入し、数分間熱した後、当該不活性ガス雰囲気から被処理物を取り出すGRTA処理を行ってもよい。GRTA処理を用いると短時間での高温熱処理が可能となる。また、被処理物の耐熱温度を超える温度条件であっても適用が可能となる。なお、処理中に、不活性ガスを、酸素を含むガスに切り替えても良い。酸素を含む雰囲気において第1の熱処理を行うことで、酸素欠損に起因するエネルギーギャップ中の欠陥準位を低減することができるためである。
【0145】
なお、不活性ガス雰囲気としては、窒素、または希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン等)を主成分とする雰囲気であって、水、水素などが含まれない雰囲気を適用するのが望ましい。例えば、熱処理装置に導入する窒素や、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上(すなわち、不純物濃度が1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とする。
【0146】
いずれにしても、第1の熱処理によって酸化物半導体層から、水、水素などの不純物を低減することで、極めて優れた特性のトランジスタを実現することができる。
【0147】
ところで、上述の熱処理(第1の熱処理)には水素や水などを除去する効果があるから、当該熱処理を、脱水化処理や、脱水素化処理などと呼ぶこともできる。当該脱水化処理や、脱水素化処理は、酸化物半導体層1130の形成後、島状の酸化物半導体層に加工する前において行うことも可能である。また、このような脱水化処理、脱水素化処理は、一回に限らず複数回行っても良い。
【0148】
なお、第1の加熱処理は、上記以外に、ソース電極およびドレイン電極を形成した後、ソース電極およびドレイン電極上に絶縁層を形成した後、などのタイミングにおいて行うことができる。
【0149】
また、酸化物半導体を2回に分けて成膜し、2回に分けて加熱処理を行って結晶化した酸化物半導体層を用いても良い。この様な工程を行うことで、下地部材を問わず、膜表面に対して垂直にc軸配向した膜厚の厚い結晶領域(単結晶領域)を形成することができる。
【0150】
例えば、3nm以上15nm以下の第1の酸化物半導体層を成膜し、窒素、酸素、希ガス、または乾燥空気の雰囲気下で450℃以上850℃以下、好ましくは550℃以上750℃以下の第1の加熱処理を行い、表面を含む領域に結晶領域(板状結晶を含む)を有する第1の酸化物半導体層を形成する。そして、第1の酸化物半導体層よりも厚い第2の酸化物半導体層を形成し、450℃以上850℃以下、好ましくは600℃以上700℃以下の第2の加熱処理を行う。
【0151】
この工程により、第1の酸化物半導体層が種結晶となり、第2の酸化物半導体層全体を下部から上部に向かって結晶成長させることができ、結果として膜厚の厚い結晶領域を有する酸化物半導体層が形成される。
【0152】
次いで、ゲート絶縁層1107、及び酸化物半導体層1131上に、ソース電極またはドレイン電極となる導電膜を形成する。ソース電極またはドレイン電極に用いる導電層としては、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料またはこれらを主成分とする合金材料を用いて形成することができる。例えば、アルミニウムや銅などの金属層と、チタン、モリブデン、タングステンなどの高融点金属層との積層構造とすることができる。ヒロックやウィスカーの発生を防止する元素(シリコン、ネオジム、スカンジウムなど)が添加されたアルミニウム材料を用いることで耐熱性を向上させても良い。
【0153】
また、ソース電極またはドレイン電極となる導電膜として、導電性の金属酸化物膜を用いても良い。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム酸化スズ合金(In―SnO、ITOと略記する場合がある)、酸化インジウム酸化亜鉛合金(In―ZnO)またはこれらの金属酸化物材料に酸化シリコンを含ませたもの、などを用いることができる。
【0154】
次に、第3のフォトリソグラフィ工程により導電膜上にレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行ってソース電極またはドレイン電極1115a、ソース電極またはドレイン電極1115bを形成した後、レジストマスクを除去する(図8(C)参照)。
【0155】
第3のフォトリソグラフィ工程でのレジストマスク形成時の露光には、紫外線やKrFレーザ光やArFレーザ光を用いるとよい。なお、トランジスタのチャネル長(L)は、ソース電極とドレイン電極との間隔によって決定される。このため、チャネル長(L)が25nm未満のトランジスタの作製に用いるマスク形成時の露光には、数nm〜数10nmと波長の短い超紫外線(Extreme Ultraviolet)を用いるのが望ましい。超紫外線による露光は、解像度が高く焦点深度も大きい。従って、後に形成されるトランジスタのチャネル長(L)を、10nm以上1000nm(1μm)以下とすることも可能であり、回路の動作速度を高めることが可能である。また、微細化によって、半導体装置の消費電力を低減することも可能である。
【0156】
また、フォトリソグラフィ工程で用いるフォトマスク数及び工程数を削減するため、多階調マスクによって形成されたレジストマスクを用いてエッチング工程を行ってもよい。多階調マスクを用いて形成されたレジストマスクは異なる厚さの領域を有し、エッチングを行うことでさらに形状を変形することができるため、異なるパターンに加工するための複数のエッチング工程に用いることができる。よって、一枚の多階調マスクによって、少なくとも二種類以上の異なるパターンに対応するレジストマスクを形成することができる。これにより、露光マスク数を削減することができ、対応するフォトリソグラフィ工程も削減できるため、工程の簡略化が可能となる。
【0157】
なお、導電層のエッチングの際には、酸化物半導体層1131がエッチングにより分断されることのないように、エッチング条件を最適化することが望まれる。しかしながら、導電膜のみをエッチングし、酸化物半導体層1131を全くエッチングしないという条件を得ることは難しく、導電層のエッチングの際に、酸化物半導体層1131の一部がエッチングされ溝部(凹部)が形成されることもある。
【0158】
導電層のエッチングには、ウェットエッチング、ドライエッチングのいずれを用いても良い。なお、素子の微細化という観点からはドライエッチングを用いるのが好適である。エッチングガスやエッチング液については被エッチング材料に応じて適宜選択することができる。本実施の形態では、導電膜としてチタン膜を用い、酸化物半導体層1131にはIn−Ga−Zn−O系の材料を用いているため、例えばウェットエッチングを適用する場合には、エッチャントとしてアンモニア過水(31重量%過酸化水素水:28重量%アンモニア水:水=5:2:2)を用いることができる。
【0159】
次いで、NO、N、またはArなどのガスを用いたプラズマ処理を行い、露出している酸化物半導体層の表面に付着した水素や水などを除去するのが望ましい。当該プラズマ処理を行う場合、大気に触れない条件で、保護絶縁膜となる絶縁層1116を形成する。
【0160】
絶縁層1116は、少なくとも1nm以上の膜厚とし、スパッタリング法など、絶縁層1116に水や水素等の不純物を混入させない方法を用いて形成することが望ましい。絶縁層516に水素が含まれると、その水素の酸化物半導体層への侵入や、水素による酸化物半導体層中の酸素の引き抜きなどが生じ、酸化物半導体層のバックチャネルが低抵抗化(n型化)して寄生チャネルが形成されるおそれがあるからである。また、絶縁層1116には、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、または酸化窒化アルミニウム膜、酸化ガリウム膜などを用いるのが望ましい。
【0161】
本実施の形態では、絶縁層1116として膜厚200nmの酸化シリコン膜を、スパッタリング法を用いて成膜する。成膜時の基板温度は、室温(25℃)以上300℃以下とすればよく、本実施の形態では100℃とする。酸化シリコン膜のスパッタリング法による成膜は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、または希ガスと酸素の混合雰囲気下において行うことができる。また、ターゲットとして酸化シリコンターゲットまたはシリコンターゲットを用いることができる。
【0162】
酸化物半導体層1130の成膜時と同様に、絶縁層1116の成膜室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプ(クライオポンプなど)を用いることが好ましい。クライオポンプを用いて排気した成膜室で成膜することにより、絶縁層1116に含まれる不純物の濃度を低減できる。また、絶縁層1116の成膜室内の残留水分を除去するための排気手段として、ターボ分子ポンプにコールドトラップを加えたものを用いても良い。
【0163】
絶縁層1116の成膜に用いるスパッタリングガスは、水素や水などの不純物が除去された高純度ガスであることが望ましい。
【0164】
次いで、不活性ガス雰囲気下、または酸素雰囲気下で第2の熱処理を行う。熱処理の温度は、200℃以上450℃以下、好ましくは250℃以上350℃以下とする。例えば、窒素雰囲気下で250℃、1時間の熱処理を行えばよい。第2の熱処理を行うことによって、トランジスタの電気的特性のばらつきを軽減することができる。また、絶縁層1116から酸化物半導体層1131への酸素の供給により、該酸化物半導体層1131の酸素欠損を補填して、I型(真性半導体)またはI型に限りなく近い酸化物半導体層を形成することもできる。
【0165】
なお、本実施の形態では、絶縁層1116の形成後に第2の熱処理を行っているが、第2の熱処理のタイミングはこれに限定されない。例えば、第1の熱処理に続けて第2の熱処理を行っても良いし、第1の熱処理に第2の熱処理を兼ねさせても良い。
【0166】
上述のように、第1の熱処理および第2の熱処理によって、酸化物半導体層1131を、その構成元素以外の不純物が極力含まれないようにし、酸化物半導体に酸素を供給し、当該酸化物半導体の酸素欠陥を低減することで高純度化し、I型(真性)化することができる。
【0167】
以上の工程でトランジスタ1110が形成される(図8(D)参照)。
【0168】
なお、絶縁層1116上には、さらに保護絶縁層1106を形成するのが望ましい(図8(E)参照)。保護絶縁層1106は、水素や水などが外部からの侵入を防止する。保護絶縁層1106としては、例えば、窒化シリコン膜、窒化アルミニウム膜などを用いることができる。成膜方法は特に限定されないが、RFスパッタリング法は量産性がよいため、保護絶縁層1106の成膜方法として適している。また、保護絶縁層1106として、ポリイミド、アクリル、ベンゾシクロブテン、等の有機材料を用いることができる。これらの有機材料を用いることにより、さらなる絶縁性の向上を図ることができる。また、保護絶縁層1106は、上記の材料を積層した構造としても良く、例えば、窒化シリコン膜上にポリイミド膜を積層した構造とすることができる。このような構造にすることで、保護絶縁層1106は、水素や水などの侵入を防ぎ、且つ絶縁性を向上させることができる。
【0169】
なお、保護絶縁層1106の形成後には、さらに、大気中、100℃以上200℃以下、1時間以上30時間以下の条件で、熱処理を行ってもよい。
【0170】
このように、本実施の形態を用いて作製した、高純度化された酸化物半導体層を含むトランジスタを用いることにより、オフ電流が非常に小さくすることが可能である。よって、これを保護回路に用いることにより、アンテナで受信した搬送波または振幅変調波が小さい場合に、保護回路での損失を最小限にすることができる。
【0171】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0172】
(実施の形態7)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る保護回路を備えたRFIDの使用例について図9を用いながら説明する。RFIDの用途は広範にわたるが、例えば、紙幣、硬貨、有価証券類、無記名債券類、証書類(運転免許証や住民票等、図9(A)参照)、包装用容器類(包装紙やボトル等、図9(C)参照)、記録媒体(DVDソフトやビデオテープ等、図9(B)参照)、乗り物類(自転車等、図9(D)参照)、身の回り品(鞄や眼鏡等)、食品類、植物類、動物類、人体、衣類、生活用品類、または電子機器(液晶表示装置、EL表示装置、テレビジョン装置、または携帯電話)等の物品、若しくは各物品に取り付ける荷札(図9(E)、図9(F)参照)等に設けて使用することができる。
【0173】
本発明の一態様に係るRFID4000は、プリント基板に実装、表面に貼る、または埋め込むことにより、物品に固定される。例えば、本であれば紙に埋め込み、有機樹脂からなるパッケージであれば当該有機樹脂の内部に埋め込み、各物品に固定される。本発明の一態様に係るRFID4000は、小型、薄型、軽量を実現するため、物品に固定した後もその物品自体のデザイン性を損なうことがない。また、紙幣、硬貨、有価証券類、無記名債券類、または証書類等に本発明の一態様に係るRFID4000を設けることにより、認証機能を設けることができ、この認証機能を活用すれば、偽造を防止することができる。また、包装用容器類、記録媒体、身の回り品、食品類、衣類、生活用品類、または電子機器等に本発明の一態様に係るRFIDを取り付けることにより、検品システム等のシステムの効率化を図ることができる。また、乗り物類であっても、本発明の一態様に係るRFIDを取り付けることにより、盗難などに対するセキュリティ性を高めることができる。
【0174】
以上のように、本発明の一態様に係わる保護回路を搭載したRFIDを本実施の形態に挙げた各用途に用いることにより、所定の通信距離を有するRFIDにおいて、例えば、通信距離が極端に短い場合においても、保護回路が機能しRFID素子内部にかかる大電力をカットすることが実現できるため、物品の認証性、またはセキュリティ性に対する信頼性を高めることができる。
【実施例1】
【0175】
本実施例では、本発明の一態様に係わる保護回路に用いるトランジスタの特性について説明する。
【0176】
本実施例におけるトランジスタ構造を図10(A)に示す。
【0177】
図10(A)に示すトランジスタは、基板1201として0.7mmのガラス基板を用い、基板1201上に絶縁層1208を形成する。絶縁層1208は、スパッタリング装置を用いて、酸化シリコン層を300nm形成した。
【0178】
次に、絶縁層1208上に第1のゲート電極1202を形成する。第1のゲート電極1202は、スパッタリング装置を用いて、タングステン層を100nm形成した。
【0179】
次に、絶縁層1208、及びゲート電極1202上にゲート絶縁層1203を形成する。ゲート絶縁層1203は、酸化窒化シリコン層を100nmにてプラズマCVD装置を用いて形成した。なお、形成された酸化窒化シリコン層の比誘電率(ε)は、4.1F/mとなる。
【0180】
次に、ゲート絶縁層1203上に酸化物半導体層1204を形成する。酸化物半導体層1204は、Ar=30sccm、O=15sccm、電力=0.5kW(DC)、圧力=0.4Pa、T−S間距離=60mm、基板温度=200℃、膜厚=30nmにてスパッタリング装置を用いて形成した。なお、スパッタリングターゲットとしては、In:Ga:ZnO=1:1:1[mol数比]の組成比の金属酸化物ターゲットを用いた。
【0181】
次に、酸化物半導体層1204を形成した後、ベーク炉を用いて、窒素雰囲気下、450℃において1時間の熱処理を行った。
【0182】
次に、ソース電極1205a、及びドレイン電極1205bを形成する。ソース電極1205a、及びドレイン電極1205bは、スパッタリング装置を用いて、チタン層を100nm形成し、チタン層上にアルミニウム層を200nm形成し、アルミニウム層上にチタン層を100nm形成することにより形成した。なお、ソース電極1205a、及びドレイン電極1205bはチタン層とアルミニウム層とチタン層の3層構造になり、3層とも真空中で連続して形成した。
【0183】
次に、ゲート絶縁層1203、ソース電極1205a、ドレイン電極1205b、及び酸化物半導体層1204上に絶縁層1206を形成する。絶縁層1206として、スパッタリング装置を用いて、酸化シリコン層を300nm形成した。
【0184】
次に、絶縁層1206上に保護絶縁層1209を形成する。保護絶縁層1209として、スパッタリング装置により窒化シリコン膜を200nm形成した。
【0185】
次に保護絶縁層1209上に第2のゲート電極1207を形成する。第2のゲート電極1207として、スパッタリング装置を用いて、チタン層を100nm形成した。
【0186】
以上の工程でトランジスタ1200が作製される。トランジスタ1200の半導体層は、酸化物半導体層により形成され、オフ電流の少ないトランジスタ特性を提供することができる。また、第2のゲート電極を第1のゲート電極に対向して形成しているために、第2のゲート電極を用いて、トランジスタ1200のしきい値電圧を調整することが可能となる。
【0187】
次に、本実施例で示したトランジスタ1200を用いて、トランジスタの電気特性の一つであるドレイン電流Id−ゲート電圧Vg測定を行った。ドレイン電流Id−ゲート電圧Vg測定結果について、図10(B)に示す。チャネル長Lは3μmであり、チャネル幅Wは5μmである。なお、トランジスタのソース電極とドレイン電極間の電圧Vdは1Vとした。
【0188】
図10(B)に示す実線1301、実線1302、実線1303、実線1304は、ソース電極とドレイン電極間の電圧Vdを1Vとし、第1のゲート電極1202に印加された電圧Vgを−3Vから3Vまで0.1V間隔で変化させた際のドレイン電流Idである。
【0189】
なお、実線1301は、第2のゲート電極1207に印加された電圧Vbgが無印加(すなわち、0V)、実線1302は、第2のゲート電極1207に印加された電圧Vbgが1V、実線1303は、第2のゲート電極1207に印加された電圧Vbgが2V、実線1304は、第2のゲート電極1207に印加された電圧Vbgが3Vと、それぞれ第2のゲート電極1207に印加した際のドレイン電流Idである。
【0190】
図10(B)に示すトランジスタの特性図において、第2のゲート電極1207に印加される電圧Vbgが増加するほど、第1のゲート電極1202に印加される電圧Vgに対するしきい値電圧Vthはマイナス方向にシフトすることが示されている。
【0191】
また、図10(B)に示すトランジスタの特性図において、トランジスタ1200の半導体層に酸化物半導体層1204を用いることで、トランジスタのオフ電流が1×10−12Aと非常に低いことが示されている。
【0192】
以上のように、保護回路を有する半導体装置に、上述したトランジスタを用いることによって、半導体装置に振幅の大きい信号が供給された場合においても、正常に動作し、通信距離が長い場合においても保護回路での消費電力が抑えられるため、信頼性の高い半導体装置が得られる。
【符号の説明】
【0193】
101 アンテナ
102 整流回路
103 復調回路
104 定電圧回路
105 論理回路
106 変調回路
107 保護回路
201 トランジスタ
202 トランジスタ
300 トランジスタ
301 基板
302 ゲート電極
303 ゲート絶縁層
304 酸化物半導体層
305a ソース電極またはドレイン電極
305b ソース電極またはドレイン電極
306 絶縁層
307 保護絶縁層
401 アンテナ
402 整流回路
403 復調回路
404 定電圧回路
405 論理回路
406 変調回路
407 保護回路
501 トランジスタ
502 トランジスタ
505 基板
507 保護回路
516 絶縁層
600 トランジスタ
601 基板
602 ゲート電極
603 ゲート絶縁層
604 酸化物半導体層
605a ソース電極またはドレイン電極
605b ソース電極またはドレイン電極
606 絶縁層
607 ゲート電極
609 保護絶縁層
701 アンテナ
702 整流回路
703 復調回路
704 定電圧回路
705 論理回路
706 変調回路
707 保護回路
708 スイッチング回路
801 トランジスタ
802 トランジスタ
803 トランジスタ
901 アンテナ
902 整流回路
903 復調回路
904 定電圧回路
905 論理回路
906 変調回路
907 保護回路
908 クロック生成回路
1000 基板
1001 ゲート電極
1002 ゲート絶縁層
1003 酸化物半導体層
1005a ソース電極またはドレイン電極
1005b ソース電極またはドレイン電極
1007 絶縁層
1009 保護絶縁層
1020 トランジスタ
1027 絶縁層
1030 トランジスタ
1036a 配線
1036b 配線
1037 絶縁層
1040 トランジスタ
1105 基板
1106 保護絶縁層
1107 ゲート絶縁層
1110 トランジスタ
1111 ゲート電極
1115a ソース電極またはドレイン電極
1115b ソース電極またはドレイン電極
1116 絶縁層
1130 酸化物半導体層
1131 酸化物半導体層
1200 トランジスタ
1201 基板
1202 ゲート電極
1203 ゲート絶縁層
1204 酸化物半導体層
1205a ソース電極
1205b ドレイン電極
1206 絶縁層
1207 ゲート電極
1208 絶縁層
1209 保護絶縁層
1301 実線
1302 実線
1303 実線
1304 実線
4000 RFID

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナを介して受信した搬送波または振幅変調波を整流し内部電圧を生成する整流回路と、
前記アンテナに電気的に接続されたゲート電極及びドレイン電極と、接地されたソース電極と、酸化物半導体層により形成された半導体層とを有する第1のトランジスタと、前記アンテナに電気的に接続されたソース電極と、接地されたゲート電極及びドレイン電極と、酸化物半導体層により形成された半導体層とを有する第2のトランジスタとを有する保護回路と、
前記アンテナを介して受信した搬送波または振幅変調波を復調し内部信号を生成する復調回路と、
前記整流回路にて生成された内部電圧を定電圧化して電源電圧として出力する定電圧回路と、
前記定電圧回路にて生成された電源電圧と前記復調回路で生成された内部信号の解析、及び応答信号の生成を行う論理回路と、
前記論理回路からの信号を変調し前記アンテナに変調信号を出力する変調回路とを有し、
前記保護回路は、前記アンテナで受信した搬送波または振幅変調波の振幅が前記整流回路の最低動作電圧以上となったとき、動作することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
アンテナを介して受信した搬送波または振幅変調波を整流し内部電圧を生成する整流回路と、
前記アンテナに電気的に接続されたゲート電極及びドレイン電極と、接地されたソース電極と、第2のゲート電極と、酸化物半導体層により形成された半導体層を有する第1のトランジスタと、前記アンテナに電気的に接続されたソース電極と、接地されたゲート電極及びドレイン電極と、第2のゲート電極と、酸化物半導体層により形成された半導体層を有する第2のトランジスタとを有する保護回路と、
前記アンテナを介して受信した搬送波または振幅変調波を復調し内部信号を生成する復調回路と、
前記整流回路にて生成された内部電圧を定電圧化して電源電圧として出力する定電圧回路と、
前記定電圧回路にて生成された電源電圧と前記復調回路で生成された内部信号の解析、及び応答信号の生成を行う論理回路と、
前記論理回路からの信号を変調し前記アンテナに変調信号を出力する変調回路とを有し、
前記保護回路は、前記アンテナで受信した搬送波または振幅変調波の振幅が前記整流回路の最低動作電圧以上となったとき、動作することを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
アンテナを介して受信した搬送波または振幅変調波を整流し内部電圧を生成する整流回路と、
前記アンテナに電気的に接続されたゲート電極及びドレイン電極と、接地されたソース電極と、第2のゲート電極と、酸化物半導体層により形成された半導体層を有する第1のトランジスタと、前記アンテナに電気的に接続されたソース電極と、接地されたゲート電極及びドレイン電極と、第2のゲート電極と、酸化物半導体層により形成された半導体層を有する第2のトランジスタとを有する保護回路と、
前記アンテナを介して受信した搬送波または振幅変調波を復調し内部信号を生成する復調回路と、
前記整流回路にて生成された内部電圧を定電圧化して電源電圧として出力する定電圧回路と、
前記定電圧回路にて生成された電源電圧と前記復調回路で生成された内部信号の解析、及び応答信号の生成を行う論理回路と、
前記論理回路からの信号を変調し前記アンテナに変調信号を出力する変調回路と、
前記論理回路からの信号により前記保護回路を制御するスイッチング回路とを有し、
前記保護回路は、前記アンテナで受信した搬送波または振幅変調波の振幅が前記整流回路の最低動作電圧以上となったとき、及び前記整流回路から出力される内部電圧を参照して前記論理回路からの信号により前記スイッチング回路を用いて動作することを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一つにおいて、
前記論理回路と、前記変調回路と、前記定電圧回路と、電気的に接続されたクロック生成回路を有することを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−53866(P2012−53866A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169031(P2011−169031)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】