説明

単結晶ファイバーレーザー装置

【課題】ファイバーの側面に現れる上下ファセット1組に等しい大きさで反対向きの力を付与することが可能な、ファイバーの固定台を構成要素とするレーザー装置を提供すること。
【解決手段】本発明に係るファイバーの固定台(501)は、ファイバー(500)を設置するための溝(514)を備え、前記溝の形状は、長円を該長円の長軸で分割した形状であり、前記溝の深さは、前記ファイバーの断面に外接する正方形の1辺の長さを2で除した値から0μm〜20μmを引いた値であり、前記溝の幅は、該正方形の1辺の長さに0μm〜40μmを足した値であることを特徴とする。
また本発明では、ファイバー(500)の左右両脇且つ固定台(501)の上下のブロックの間に金属箔(505、506)を挟む。ファイバー(500)は、その長手方向に垂直な結晶軸が水平方向になるように、固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー装置に関し、具体的には測定装置や加工装置に用いられる、レーザー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の単結晶ファイバーもしくはガラス光ファイバーを用いたレーザー装置では、図1に示すように、固定用のU型溝110と平面111でファイバー100を挟み込む固定台101が使用されていた(例えば、非特許文献1を参照)。この場合下部は曲面でありファイバー100に広い面積で接触するが、上部は平面であるからファイバー100へはほぼ線接触となるため接触面積は狭い。また、ファイバー100の直径とほぼ同じ深さの溝にファイバー100をはめ込むため、ファイバー側面の剪断応力付与部121において強い摩擦力が働き、剪断応力が発生する。ファイバー内に生じる応力分布は、これらのファイバー側面にかかる応力等に因って、図1中に矢印で示すように反転対称から大きく異なり、上部と下部は非対称である。ここで、矢印は夫々、外部からの力の方向を表す。
【0003】
また、本願発明で使用する単結晶ファイバーのファイバー断面は、上下・左右ともに反転対称形状からのずれがあるため、ファイバー内中心部の大部分における応力の主軸は水平・垂直方向から傾き、その角度も広い分布を持つことになる。その結果、光弾性効果による複屈折の主軸もファイバー断面内の位置によって大きく変化する。このような状態のファイバーに結晶軸方向と平行な偏波面を持つ直線偏光を導波すると、透過光は楕円偏波となり、その長軸の方向も結晶軸より傾く。
【0004】
レーザー装置では共振器内にブリュースター角の入射面を持つ複屈折フィルターや分散補償媒体を配置するため、設計者が意図した偏波面より発振光の偏光面が傾くと大きな光損失が発生し、効率が低下することになる。また、発振中のファイバー内にはポンプ光により生じる温度勾配があり、それによる応力が複屈折を誘起し、発振光の偏波を設計方向より傾かせる。しかしながら、図1に示した固定台は、この偏波のずれを抑制する機能を持ち得ない。
【0005】
図2に示すように、ガラス光ファイバーを固定する際に通常用いられている、60°V溝212と平面211で挟み込む固定台201を用いた場合、四角形に近い断面形状を持つCr:YAG単結晶ファイバー200に対しては対称的な応力分布とならず、ファイバー中心付近での応力の主軸が水平・垂直方向より傾く。ここで、図2中の矢印は夫々、外部からの力の方向を表す。
【0006】
また、図3に示すように、図2で示した固定台の改良版として上下から90°V溝313でファイバー300を挟み込む固定台301を用いた場合であっても、図3中に矢印で示すように、応力付与部322から2組の対向面に働く主応力と摩擦により生じる剪断応力とに、4回回転対称からのずれに起因する非対称性がある。その結果、中心部での複屈折の主軸が水平・垂直方向から傾いてしまう。従って、図3で示したような90°V溝を用いた場合であっても、ブリュースター角での入射面を持つ共振器内素子によって光損失を生じるので、レーザー装置として問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3555098号明細書
【特許文献2】米国特許第5851284号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J. L. Nightingale et al. " Monolithic Nd:YAG fiber laser," Optics Letters, Vol.11, (1986) p. 437.
【非特許文献2】S.P.ティモシェンコら、金多 潔 訳、「弾性論」、コロナ社、1973年、p. 125
【非特許文献3】W. Koechner, Springer-Verlag, "Solid-state laser engineering," (1992) p. 387.
【非特許文献4】C. Pfistner, et al., "Thermal beam distortions in end-pumped Nd:YAG, Nd:GSGG, and Nd:YLF rods," IEEE J. Quantum Electron., vol. 30, (1994) p. 1605.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上説明したとおり、従来使用されてきたファイバー固定台をCr:YAG単結晶ファイバーレーザーに適用すると、導波光のエネルギーの大半が通過するファイバー中心部に於いて、複屈折の主軸が水平・垂直方向から傾いてしまう恐れがある。その場合、レーザー発振光の偏波面も水平方向(結晶軸方向)に対し角度を持つことになる。光源設計者は、ブリュースター角の入射面内に、単結晶ファイバーの最大利得が得られる結晶軸方向を設定する。しかし前述の複屈折の主軸がこの方向に一致していない場合は、発振偏光が設計方向から傾いてしまい、発振効率の低下を招く。これまでのファイバー固定台ではこの問題が避けられなかった。
【0010】
本発明の目的は、上記のような従来技術の問題を鑑みて、ファイバーの上面及び下面より、等しい大きさで反対向きの力を付与することが可能なファイバーの固定台を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、単結晶ファイバーと、単結晶ファイバーを上下から挟み込んで固定する2個1組の銅製ブロックから成る固定台とから構成されたレーザー装置であって、固定台の2個の銅製ブロックの夫々は、単結晶ファイバー設置面に於いて、単結晶ファイバーを固定するための溝を備え、溝の形状は、長手方向に垂直な断面が半長円形状であり、溝の深さは、単結晶ファイバーの側面に現れるファセットのうちの、対向するファセット対間の間隔を2で除した値から、0μm乃至20μmの範囲の何れか一値を引いた値であり、溝の幅は、対向するファセット対間の間隔に、0μm乃至40μmの範囲の何れか一値を足した値であることを特徴とする。
【0012】
本発明の一実施形態に於いて、単結晶ファイバーは、ガーネット型構造を有する結晶の溶融液に、種結晶を接触させ、この種結晶を引き上げることによって育成され、種結晶を引き上げる方向に、種結晶の<100>方向から10度以上、<110>方向から20度以上、及び<211>方向から20度以上離れた範囲にある一の方向、又は一の方向に結晶学的同価な方向を、一致させることを特徴とする。
【0013】
本発明の一実施形態に於いて、単結晶ファイバーの側面には厚さ1μmの石英膜が成膜されて、レーザー光の発振波長に対して無反射コーティングされていることを特徴とする。
【0014】
本発明の一実施形態に於いて、固定台の2個の銅製ブロックの夫々と、単結晶ファイバーとの間に、インジウム箔が挟み込まれており、インジウム箔の厚さは、5μm乃至50μmの範囲の何れか一値であることを特徴とする。
【0015】
本発明の一実施形態に於いて、単結晶ファイバーの左右両脇の夫々に且つ固定台の上下2個の銅製ブロックの間に、1枚又は複数枚の金属箔が挟み込まれており、金属箔の材質は、銅又は金であり、1枚又は複数枚の金属箔の全体の厚さは、単結晶ファイバーの左右で等しいことを特徴とする。
【0016】
本発明の一実施形態に於いて、単結晶ファイバーは、単結晶ファイバーの長手方向に垂直な結晶軸<001>が単結晶ファイバー設置面と水平になるように固定されることを特徴とする。
【0017】
本発明の一実施形態に於いて、レーザー装置は、ポンプ光源と、ポンプ光源からの励起光を集光する集光レンズと、2枚の凹面鏡から成る共振器とを備えたことを特徴とする。
【0018】
本発明の一実施形態に於いて、レーザー装置は、波長フィルター、可飽和吸収体、及び分散補償媒体を更に備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る固定台は、ファイバーの上面及び下面より、結晶軸に垂直な、上下反転対称の応力をファイバーに対して付与する。本発明に係る固定台においても、図1で示した従来技術と同様、側面から剪断応力が作用するが、その大きさは従来技術に比べて弱い。その結果、ファイバー断面中心領域の大部分で応力の主軸は、水平・垂直方向と一致する。従って、固定台からの応力に起因した発振光の偏波回転が起きず、また、ポンプ光による温度分布から生じる複屈折の影響を抑制することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】従来の単結晶ファイバー用又はガラス光ファイバー用のU字溝と平面で挟み込むファイバー固定台を用いた構成を説明するための断面図である。
【図2】従来の60°V字溝と平面で挟み込むファイバー固定台を用いた構成を説明するための断面図である。
【図3】従来の90°V字溝で挟み込むファイバー固定台を用いた構成を説明するための断面図である。
【図4】本発明の実施形態を説明するための説明図である。
【図5】本発明の実施形態を説明するための断面図である。
【図6】本発明の実施形態を説明するための斜視概略図である。
【図7】本発明の実施形態を説明するための説明図である。
【図8】本発明の実施例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明について詳細に説明する。
【0022】
本発明に係るレーザー装置は、半長円型の溝を持つ固定台に単結晶ファイバーを固定した構成を備える。ファイバー単結晶として、Cr,Ca:YAGを使用する。他のファイバー単結晶として、Cr,Mg:YAG、Nd:YAG、又はYb:YAG等も使用することが出来る。
【0023】
本発明に於いては、ガーネット型構造を有する結晶の溶融液に、種結晶を接触させ、この種結晶を引き上げることによって単結晶を育成する。具体的には、ガーネット型構造を有する結晶からなる母材の先端部を溶融し、溶融された先端部に種結晶を接触させる。次いで、種結晶を引き上げることによってファイバー状の単結晶を育成する。あるいは、るつぼに収納されたガーネット型構造を有する結晶の溶融液に、種結晶を接触させ、次いで、回転しながら種結晶を引き上げることによって棒状の単結晶を育成しても良い。種結晶を引き上げる方向に、種結晶の<100>方向から10度以上、<110>方向から20度以上、および<211>方向から20度以上離れた範囲にある一の方向、または一の方向に結晶学的同価な方向を、一致させる(特許文献1、特許文献2を参照)。
【0024】
本発明に於いては、上述した方法を用いて、Cr,Ca:YAG単結晶は、<100>方位から<010>方位に向けて15°回転した方位に引き上げられる。その結果、図4に示すように、ファイバーの側面にファセット(晶癖)が現れ、ファイバーの断面形状が角を丸めた四角形に近い形になる。対向するファセット2面をもって1組と見れば、2組のファセット対で断面が囲まれているが、そのうちの1組に垂直な方向が結晶軸<001>となっている。なお、本願発明で使用するファイバーはその断面が反転対称性を有さず、図4に示すように、断面の内側に示した正方形は厳密にはファイバーに内接していない。
【0025】
図5に示すように、単結晶ファイバーを固定するための固定台の溝形状は、光源単結晶の放熱及び固定のために、長手方向に垂直な断面が半長円形状となる。図5は、本実施形態に係る固定台501に単結晶ファイバー500を設置したときの断面図であり、詳細は後述する。
【0026】
図6に示すように、上下面対称形状の2個1組の銅製ブロックから成る固定台601は、四隅のネジ602により、ベースとなる銅製の台603上に固定される。
【0027】
再度、図5を参照する。単結晶ファイバー500の断面領域に於いて、対向するファセット対間の間隔が120μmのときに、半長円溝の幅を150μm、深さを55μmとした。ただしこれは一例であり、半長円の溝の深さは、対向するファセット対間の間隔の1/2より小さく設定すれば良い。更に具体的には、半長円の溝の深さは、対向するファセット対間の間隔を2で除した値から、0μm乃至20μmの範囲の一値を引いた深さであれば良く、半長円の溝の幅は、対向するファセット対間の間隔に0μm乃至40μmの範囲の一値を足した値であれば良い。固定台501の上下のブロックの夫々とファイバー500との間には、インジウム箔504(厚さは30μm)を挟み込む。ファイバーの断面サイズが上記の実施形態と異なる場合には、それに合わせて半長円溝のサイズとインジウム箔の厚さも変更する。インジウム箔の厚さは、5μm乃至50μmの範囲の一値を取ることが出来る。上下の半長円溝の左右位置を一致させて固定する。この際、結晶軸<001>に垂直なファセット対が側面になるようファイバー500の向きをセットする。即ち水平面内でファイバー長手方向に垂直な方向に結晶軸<001>が設置されることになる。ファイバー500の両脇且つ固定台501の上下のブロックの間に金属箔を挟み、ネジ止めする。挟み込む金属箔として、1枚の金属箔又は複数枚の金属箔の組み合わせを用いる。箔全体の厚みを増減することで、ファイバーに付与する力の大きさを調整することが出来る。複数枚の金属箔の組み合わせを利用することで、力の繊細な調整が可能となる。箔全体の厚みは、30μm乃至60μm程度であり、挟み込んだ金属箔の厚みを左右両脇で等しくする。本実施形態に於いては、厚さ40μmの銅箔505及び厚さ5μmの銅箔506を使用した。箔の材質として他に、金も使用することが出来る。
【0028】
本実施形態に係る固定台に設置された単結晶ファイバー、端面鏡、及び波長選択素子等を組み合わせて共振器を構成する。半導体レーザー又は固体レーザー等からの励起光を単結晶ファイバー端面に集光し、長手方向に導波させつつ吸収させる。それによる単結晶ファイバーからの長手方向への発光を利得として共振器をレーザー発振させる。
【0029】
本実施形態に係る半長円形状溝固定具の効果をモデル化し、数値計算によってファイバー内の複屈折を算出した。図7に示すように、直径120μmの円柱形状YAG単結晶ファイバーに上下対称位置にある長手方向の直線からファイバー中心に向かって上下対称の力を付与すると仮定する。モデルの簡単化のため、無限長のファイバーを想定する。ファイバー長手方向(図7のz軸方向)の並進対称性が成り立ち、z軸に垂直な全ての面についてファイバーの反転対称性も成り立つものとする。x,y座標は、図7に示すように設定する。このモデルは、上下2点から上下対称の力を付与した円盤の場合とほぼ等しい(非特許文献2を参照)。ただし、非特許文献2のモデルに於けるz軸方向への応力成分無しという条件は、今回のモデルに於いては上記の対称性の結果としてz軸方向への変位無しという条件に変わる。座標軸方向の歪みをεx,εy,εzとし、剪断歪みをγxy,γyz,γzxとすると、次の(1)式を得る。
【0030】
【数1】

【0031】
ファイバー垂直断面内における垂直応力成分σx,σy、剪断応力成分τxyの計算結果は、次式のようになる。
【0032】
【数2】

【0033】
【数3】

【0034】
【数4】

【0035】
ここでfは、単位長さ当りの力の大きさを表す。
【0036】
フックの法則と(1)式より、以下の(5)式が成り立つ。
【0037】
【数5】

【0038】
これにより、
【0039】
【数6】

【0040】
【数7】

【0041】
【数8】

【0042】
となる。ここでEはヤング率、νはポアソン比を表す。
【0043】
YAGが立方晶(結晶点群はm3m)であるため、その歪光学係数は次の3値により表される。即ち、p11=−0.029,p12=+0.0091,p44=−0.0615である(非特許文献3を参照)。また、ヤング率は310GPaであり、ポアソン比は0.30である(非特許文献4を参照)。図4に示した本発明に於ける単結晶ファイバーの結晶軸座標へ(6)式〜(8)式の歪み成分を座標変換し、これらの歪光学係数を利用すればこのファイバーの屈折率楕円体を計算することが出来る。そこから光進行方向、つまりファイバー長手方向の複屈折を計算する。fが40000N/mのとき、複屈折はファイバー中心で4.3×10-4、中心よりy軸方向に30μmの位置で5.7×10-4、中心よりx軸方向に30μmの位置で2.1×10-4となる。これらの値は光通信に使用される偏波保持ファイバーにおける複屈折と同程度であり、充分大きい。従って、ポンプ光による温度分布から生じる複屈折の偏波回転への影響を十分に抑制することが出来ると考えられる。なお、40000N/mは、通常用いられる長さ20mmのファイバーに対しては800Nとなり、これはM2ネジ4本により付与可能な力の大きさである。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の一実施例について、説明する。
【0045】
図8に示すように、Cr,Ca:YAG単結晶ファイバー800を曲率半径100mmの凹面鏡2枚(807、808)で構成する共振器の中に置き、レーザー装置を作製する。単結晶ファイバー800の長さは20mmであり、その断面の形状に外接する正方形の1辺の長さは120μmである。凹面鏡807は、波長1.064μmのポンプ光を透過し、波長1.40μm乃至1.60μmの発振光に対する反射率は99.9%である。凹面鏡808は、出力結合鏡であり、波長1.40μm乃至1.60μmの発振光に対し1%の透過率を持つ。単結晶ファイバーの側面には厚さ1μmの石英膜を成膜し、端面において、波長1.40μm乃至1.60μmの発振光に対する無反射膜を持つようにする。
【0046】
図8の単結晶ファイバー800は、前述したように、半長円溝のある固定台801に厚さ30μmのインジウム箔を間に挟んで固定される(図5を参照)。固定台は水平に置かれ、単結晶ファイバーは結晶軸が水平になるよう設置される。固定台の上下ブロックは、溝の位置を合わせて固定される。
【0047】
再度、図5を参照して本実施例を説明する。長円溝514は、その深さを55μmとし、その幅を150μmとした。厚さ40μmの銅箔505と厚さ5μmの銅箔506各1枚(合計厚さ45μm)を1セットとして、上下ブロックの間且つ単結晶ファイバー500の左右両脇に1セットずつ挟みこむ。
【0048】
図5及び図8で示したようなレーザー光源の構成において、波長1.064μmのポンプ光を焦点距離120mmの集光レンズ809で単結晶ファイバーに集光し発振させた。ポンプ光入射パワーが2.3Wのときに、発振光の波長は1.43μmであり、発振光の出力パワーは110mWであり、発振光はその偏光面が水平面に一致した直線偏光であった。
【0049】
比較のため、図3で示した従来技術の90°V溝上下セットのファイバー固定台301を使用し、それ以外は上記同様の構成で実験を行った。この場合、ポンプ光入射パワーが2.3Wのときに、発振光の波長は1.43μmであり、発振光の出力パワーは110mWであり、発振光の偏光面は水平より15°傾いていた。従って、本実施例に係るレーザー装置の有効性を確認することが出来た。
【0050】
また、本発明のレーザー装置は、必要に応じて、波長フィルター、可飽和吸収体、及び分散補償媒体を更に備えることも出来る。
【符号の説明】
【0051】
100,200,300,400,500,700,800 単結晶ファイバー
101,201,301,501,601,801 固定台
110 U字溝
111,211 平面
120 主応力付与部
121 剪断応力付与部

212 60°V字溝
222,322 応力付与部

313 90°V字溝

504 インジウム箔
505,506 銅箔
514 半長円溝

602 ネジ
603 ベース
615 長円溝

807,808 凹面鏡
809 集光レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶ファイバーと、
前記単結晶ファイバーを上下から挟み込んで固定する2個1組の銅製ブロックから成る固定台と
から構成されたレーザー装置であって、
前記固定台の2個の銅製ブロックの夫々は、単結晶ファイバー設置面に於いて、前記単結晶ファイバーを固定するための溝を備え、
前記溝の形状は、長手方向に垂直な断面が半長円形状であり、
前記溝の深さは、前記単結晶ファイバーの側面に現れるファセットのうちの、対向するファセット対間の間隔を2で除した値から、0μm乃至20μmの範囲の何れか一値を引いた値であり、
前記溝の幅は、前記対向するファセット対間の間隔に、0μm乃至40μmの範囲の何れか一値を足した値であることを特徴とするレーザー装置。
【請求項2】
前記単結晶ファイバーは、ガーネット型構造を有する結晶の溶融液に、該種結晶を接触させ、この種結晶を引き上げることによって育成され、該種結晶を引き上げる方向に、該種結晶の<100>方向から10度以上、<110>方向から20度以上、および<211>方向から20度以上離れた範囲にある一の方向、または一の方向に結晶学的同価な方向を、一致させることを特徴とする請求項1に記載のレーザー装置。
【請求項3】
前記単結晶ファイバーの側面には厚さ1μmの石英膜が成膜されて、レーザー光の発振波長に対して無反射コーティングされていることを特徴とする請求項1に記載のレーザー装置。
【請求項4】
前記固定台の2個の銅製ブロックの夫々と、前記単結晶ファイバーとの間に、インジウム箔が挟み込まれており、前記インジウム箔の厚さは、5μm乃至50μmの範囲の何れか一値であることを特徴とする請求項1に記載のレーザー装置。
【請求項5】
前記単結晶ファイバーの左右両脇の夫々に且つ前記固定台の上下2個の銅製ブロックの間に、1枚又は複数枚の金属箔が挟み込まれており、前記金属箔の材質は、銅又は金であり、前記1枚又は複数枚の金属箔の全体の厚さは、前記単結晶ファイバーの左右で等しいことを特徴とする請求項1に記載のレーザー装置。
【請求項6】
前記単結晶ファイバーは、該単結晶ファイバーの長手方向に垂直な結晶軸<001>が前記単結晶ファイバー設置面と水平になるように固定されることを特徴とする請求項1に記載のレーザー装置。
【請求項7】
ポンプ光源と、前記ポンプ光源からの励起光を集光する集光レンズと、2枚の凹面鏡から成る共振器とを備えたことを特徴とする請求項1に記載のレーザー装置。
【請求項8】
波長フィルター、可飽和吸収体、及び分散補償媒体を更に備えたことを特徴とする請求項7に記載のレーザー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−248616(P2012−248616A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118067(P2011−118067)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】