説明

印刷機において印刷インキ層及びラッカー層の硬化度または乾燥度を判定する方法

【課題】印刷機において印刷インキ層またはラッカー層を効率的に、且つエネルギを節減して乾燥させるために、乾燥方法または硬化方法の監視を改善する。
【解決手段】グラビア、フレキソまたはオフセット印刷方法で塗工された印刷基材上の印刷された1つまたは複数の印刷インキ層及び/またはラッカー層の硬化度または乾燥度を判定する方法が提案される。そのために、硬化度または乾燥度が、硬化または乾燥工程による印刷基材上の印刷インキ層及び/またはラッカー層の機械的特性及び/または粘弾性特性の変化を介して間接的に判定される。そのために超音波測定方法が使用される。測定は乾燥機の通過前並びに通過後に行われ、把握され解析された値が比較される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフセット、フレキソまたはグラビア印刷方法のいずれかで印刷される印刷インキ層及び/またはラッカー層の硬化度を検査する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷インキ層またはラッカー層の硬化または乾燥は、まず、溶剤の蒸発、または印刷基材内への溶剤の浸透(Wegschlagen)によって行うことができる。更に、酸化によって硬化または乾燥を行うこともできる。最後に、紫外線または電子ビームによる乾燥を用いた重合化によって硬化または乾燥を行うこともでき、あるいは前記乾燥メカニズムによる方法の組合せによって硬化または乾燥が実施される。
【0003】
印刷層及びラッカー層の完全硬化(Durchhartung)を制御するには多くの要因が有用である。印刷された印刷インキが充分に乾燥及び硬化することが高品質の印刷の前提条件である。機械を通るシート(Bogen)の搬送経路内で、印刷またはラッカー塗工したてのシート表面の接触が損傷を生じ、刷り損じ(損紙)になってしまうことがある。枚葉紙印刷機の排紙装置内にある、または巻き取られた(aufgerollte)、輪転印刷機のロールウェブは、印刷された印刷インキまたはラッカーが充分に乾燥していなければならず、そうでないと、積み重ねまたは巻き取りの際に汚れ詰まってしまう。実際に、紙詰まりにより印刷製品のその後の処理が困難になるか、全く不可能になる。
【0004】
異なる構造の乾燥装置の調整には、印刷工程中に高い要件が課される。できるだけ短時間に、且つ少ない損紙(事前損紙)しか出さずに必要な品質を製造できるように、オペレータは印刷機の設置時から乾燥機の調整を行わなければならない。乾燥装置の性能を高く調整しすぎると、印刷機のエネルギ消費が高く、且つ排熱量が高くなって、印刷室の温度が上昇し、あるいは空調によって除熱しなければならなくなるだけではなく、印刷工程自体にも悪影響が及ぶ。周知のように、印刷インキまたはラッカーの流動性及び粘性は変化するので、印刷インキ及びディスペンサ機構の加熱と共に機械の強い加熱により頻繁に再調節する必要が生じ、それがまた損紙を生ずる原因となる。乾燥効果または乾燥性能を低く調整しすぎることも避けなければならないが、それはそうしないと印刷されたばかりのシートが、搬送中に、または排紙装置内で前述のように汚れる恐れがあるからである。
【0005】
乾燥機の制御によって、損紙の削減の他に、大幅なエネルギ節減も可能になる。乾燥機構は実情に応じて必要な性能で動作されるので、機構の電流消費はそのつど必要な値に低減される。乾燥装置は排熱も生成するので、機械要素または機械全体の加熱も低減される。それによって機械または機械部品の寿命も延びる。最後に、乾燥機の性能を低減することで印刷室の温度上昇も避けられる。空調設備がある印刷室の場合も、それによってエネルギが節減される。
【0006】
ビーム硬化される印刷インキ及びラッカーの印刷では、印刷機での硬度管理を必要とする特別の問題が生ずる。ビーム硬化性のオフセット印刷インキでの印刷は現在の印刷業界で広く普及している。ビーム硬化性印刷インキによる印刷の利点は、紫外線放射源による照射後の架橋結合(Vernetzung)が迅速且つ自発的であり、印刷インキに溶剤がいらず、非吸収性の印刷基材(例えばフォイル)が良好に印刷可能なことである。
【0007】
それに対して、従来の印刷インキは油性であるか、または溶剤を含んでいる。油性の印刷インキはオイルベースの結合剤の酸化によって乾燥し、または印刷インキ中の揮発性オイルの気化によって乾燥する(熱硬化方式)。それに対して、ビーム硬化性印刷インキ及びラッカーは、架橋結合とも呼ばれる光化学過程によって硬化する。流体の、または架橋結合していない印刷インキ膜は、紫外線の作用下での重合によって固体状態に移行する。
【0008】
しかし、架橋結合していない印刷インキ成分が印刷後の枚葉紙印刷機の排紙スタックでの押捺(Abklatsch)によって、またはローラでの押捺によって上にある印刷基材の裏面に転写されるという欠陥も知られている。印刷インキの成分が印刷基材を貫いて移行することもある。印刷インキ成分の移行、または印刷インキの押捺は、包装時に充填物に感覚的影響を及ぼすことがある。特定の移行限度を超えると、食品用包装の場合、消費者に対する健康上の悪影響を避けることができない。特定の移行限度を超えると、パッケージはそのつど市場から回収しなければならず、その結果、経済上の結果の他に、市場でブランドメーカーの評判を失ってしまうことが多い。健康上懸念がないことの保証が優先される。LMBG(食品日用品法)第30条によれば、規定通りに使用した場合に材料組成物により、特に有毒な物質または不純物により健康を害する作用のある日用品を製造することは禁止されている。その上、ドイツ及び欧州の法律によれば、且つ米国でも「非移行の原則(No-Migration-Prinzip)」が適用されており、すなわち包装された食品に物質が移行することを避けなければならない。従って、ビーム硬化性印刷インキの印刷基材上での架橋結合を確実にすることが特に重要である。
【0009】
ビーム硬化性の印刷インキまたはラッカーが硬化しないとオペレータの安全にも影響を及ぼす。ビーム硬化性の印刷インキまたはラッカーが印刷基材上で適正に硬化せず、オペレータが例えば印刷品質を管理するために見本を引っ張った場合、印刷インキの移行性成分が皮膚を通って吸収される虞がある。健康への危険の他に、皮膚の刺激やアレルギー反応が生ずることもある。更に、架橋結合しない印刷インキまたはラッカー成分を塗工したシートは通常、特殊廃棄物として扱われるので、硬化しないラッカー及び印刷インキによって付加的な廃棄物処理コストも発生する。それによって必然的に物流管理上の追加経費が必要になり、通常は廃棄物処理のための追加コストが生ずる。
【0010】
従って、印刷基材上の印刷インキ層及びラッカー層の硬化度または乾燥度を測定し、測定値を形成し、次いでその値を直接にまたはオペレータ入力を介して乾燥機の制御に利用することが極めて有用である。補足的に、これらの測定値から品質プロトコルを導き出して、ユーザーが印刷インキまたはラッカーが充分に硬化していることの確証を得られるようにすることもできる。ビーム硬化性の印刷インキ及びラッカーと関連して製品の安全性という理由から、このことがしばしば実際に必要となる。
【0011】
印刷層及びラッカー層の硬化度または乾燥度を評価する必要性はしばしば論じられてきた。例えば特許文献1では、印刷工程を特徴付ける数値の少なくとも1つの信号がそこに供給される、乾燥装置用の制御器を設けることが提案されている。その結果、乾燥装置の動作方法がそれによって企図通りに変更される信号が制御器によって生成される。印刷基材で測定された測定値に基づいて乾燥装置の制御を行うことも提案されている。測定値として、ラッカーまたは印刷インキ層の厚み、またはラッカー塗工の光沢が挙げられている。
【0012】
特許文献2は、ラッカー層の乾燥度を、ラッカー塗工された印刷基材と相互作用するマイクロ波信号の強度測定によって判定することを提案している。その場合、測定信号から形成される状態変数を乾燥機制御の制御変数として利用することができる。しかしこの方法は、例えば溶剤として水を含む分散ラッカーのような、マイクロ波エネルギを強く吸収するコーティング媒体を使用する場合にしか適さない。硬化された印刷インキ層及びラッカー層の重合化の検査については言及されていない。
【0013】
特許文献3は、使用される溶剤に対応する波長がウェブ上で連続的に解析され、乾燥後に測定される平均値が事前に設定された最大値と比較される、印刷及びコーティング機の速度の測定及び調節方法を開示している。この場合、測定機構は、連続的に放射するアナライザヘッドと、解析される製品を反射または濾光する(durchfiltert)放射を受け取る受光器とからなっている。その欠点は、溶剤の組成があらかじめわかっていなければならないことにある。簡単な溶剤組成物を使用する印刷方法では、それは比較的簡単である。多数の溶剤を使用する現在の印刷方法では、印刷インキの組成がおおざっぱにしか表示されていないことが多いので、それは困難である。この方法は、溶剤を放出しない印刷インキの場合、すなわちビーム硬化、酸化、及び浸透により乾燥する印刷インキの場合は役に立たない。この測定方法は汎用ではなく、また解析に時間がかかり複雑なので高速印刷機にも使用できない。
【0014】
実験室では重合化を判定するために赤外線分光法またはラマン分光法が使用される。これらの方法は、複雑で、プローブを用意する必要があるので、印刷所の過酷な機械環境にはあまり適さないが、原理的には使用可能である。従って、重合化の度合いを印刷インキ層及びラッカー層の物理的機械的特性の変化から導出することが考えられた。1つの可能性は、重合化度の増大につれて変化する表面の滑り摩擦係数の決定である。この方法の欠点は、表面でしか有効ではなく、深部の硬化が近似的にしか判定できないことである。その上、滑り摩擦の測定は、印刷インキまたはラッカーの表面の損傷をもたらす恐れのある接触測定方法である。
【0015】
印刷業界では測定方法として超音波測定が知られている。超音波による検査方法は、材料の特性を判定する必要がある場合に侵襲的でも破壊的でもないという利点を有している。
【0016】
紫外線照射によって誘発される重合化工程中、印刷インキまたはラッカー層の材料の機械的強度は硬化度と共に高まる。この強度上昇は、材料または印刷インキ層またはラッカー層を通る超音波の伝搬速度が時間の関数として記録されることにより、入力される超音波パルスを追跡することによって観察できる。
【0017】
流動媒体中の超音波の伝搬速度νは、下記の関係式に従って媒体の密度及び断熱圧縮性に依存する。
【0018】
【数1】

【0019】
ν=音速
ρ=密度
βad=断熱圧縮性
【0020】
密度も圧縮性も温度に依存する物質固有の定数であるため、音波はどの物質内でも温度に応じて特徴的な速度で伝搬する。その際、音速は物質の構造によって、すなわち原子群及び分子群、異性体または鎖長によって規定される。従って、この関係により、超音波を用いて物質を特徴付けることが可能になる。
【0021】
単量体−重合体系では一般的に、単量体と重合体の間に生ずる音速差が第一に鎖長並びに分岐度結合度によって規定されることが当てはまる。
【0022】
多成分系では、音速は下記のものに依存する。
− 単一成分の音速
− 温度及び圧力に関する状態
− 物質の相互作用
【0023】
従って基本的に多成分系の組成が判定可能であり、その前提はすべての影響要因が判明していることである。
【0024】
ウェブの強度を検査するための1つの手法は、ウェブ内を伝搬する音波の伝搬速度及び伝搬強度の測定である。特許文献4には、高速移動する連続ウェブにおける製造時の被破壊検査方法が記載されている。この場合、紙の多くの強度パラメータが弾性係数に関係することが利用される。弾性係数を、ウェブを通って伝搬する音波の速度と関連付けすることができる。音波送信機(変換器)が紙に信号を送り、受信機が紙からの超音波信号を受信する。超音波が紙を通って伝搬する時間、及びその際に進む距離から、超音波の速度が計算される。変換器はウェブ上に載置されるホイール中に配置される。ホイールと変換器の同期の関する要件が厳しいので、この発明はそれほど実用的ではない。このような測定は印刷された用紙上では接触により更に困難になると思われる。
【0025】
従って、音波の非接触的な結合が行われる測定が望ましいであろう。特許文献5は、紙幣のたるみ(Lappigkeit)の無接触測定として、紙幣に音波を当て紙製品から発される音波を検知することを提案しており、その場合、透過及び反射される音波が検知され、そこから紙幣の汚れ度に関係ない紙製品のたるみ度の値が導出される。発見されたこの解決方法の欠点は、とりわけ音波受信機が紙の両側に配置されることである。その上、透過または反射される音波だけが評価され、表面での音波の伝搬は考慮されない。
【0026】
超音波はローラ及び印刷基材上のインキ層の厚みを測定するためにも使用される。特許文献6は、インキの層厚が進行時間の差に基づいて判定される方法を記載している。
【特許文献1】欧州特許第1142711号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第19737785号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第2458935号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第3045581号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第10318104号明細書
【特許文献6】独国特許発明第4318445号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
従って本発明の課題は、紙、フォイル、またはカートンの印刷基材上のラッカー層及び印刷インキ層の硬化または乾燥をより正確に把握し、その際にラッカー層または印刷インキ層の硬化度または乾燥度に関する具体的な情報が示されるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0028】
この課題は請求項1の特徴によって解決される。
【0029】
有意義な変形形態は従属請求項から明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明によれば、硬化または乾燥度に関する情報は、印刷ウェブが乾燥機を通過する前と後にウェブ上で取得された印刷インキ層またはラッカー層の物理的及び/または化学的特性の比較によって決定される。その際に、同一の、または類似の測定箇所が用いられる。
【0031】
それに関連して、変換器、例えば圧電変換器または磁気抵抗変換器を用いて材料内に導入できる超音波を使用することができる。超音波は更に、レーザパルスによって、またはプラズマによって材料内で発生させることもできる。
【0032】
レーザによって誘発される超音波には多くの利点がある。これは試験される材料と接触する必要がなく、迅速な検査を可能にし、光エネルギを充分に小さく選択すれば非破壊的である。レーザによって誘発される超音波は、印刷機のような産業環境中で極めて良好に使用できる。これは、例えば圧電変換器の場合のように材料と発信器の接触の影響を受けることはないが、変換器を介する従来の結合と比較して高価であり、部分的に感度が低いという欠点を有する。
【0033】
固体物質内での超音波発生のメカニズムは以下のように記述できる。パルスレーザビームが被検材料上に導かれ、それによって部分的に吸収される。材料上に生ずる光エネルギが熱エネルギに変換される。それによって、局部的に極めて急激な材料膨張が生ずる。その結果、媒体内で超音波が発生される。光エネルギを充分に小さく選択すれば、材料は溶融も融除(ablatiert)もされない。光エネルギが充分に大きく、材料が溶融し、その結果プラズマが発生する場合も超音波が発生されるが、この場合、超音波は材料が分離する際にモーメントの伝達によって発生する。このような融除プロセスは印刷画像内では受け入れられないが、印刷ウェブの周縁領域、例えば後に破棄される調整ストライブの領域では許容される。
【0034】
印刷インキ膜及びラッカー膜の硬化及び乾燥は超音波によって判断することができる。印刷インキまたはラッカーは硬化または乾燥の際に明確な粘性変化を受ける。ビーム硬化性の印刷インキまたはラッカーの膜の場合は、紫外光または電子ビームの照射の直後に硬化されている。材料特性と音響パラメータの間には密接な関係がある。超音波が印刷インキまたはラッカー層内で誘発されると、縦及び横方向に進行する音波は構造及び分子緩和プロセスの影響を受ける。従って超音波法は1つまたは複数の機械的弾性率(modulus)の判定に極めて適している。
【0035】
その原理は、検査される材料の表面上を伝搬する機械的振動を誘発することである。振動の振幅は材料内で指数関数的に低減する。更に音波の浸透深さも周波数の上昇と共に低減する。
【0036】
不均質な印刷インキ層またはラッカー層では、音波の拡散及び反射によって形態情報を決定することができる。この方法により、印刷インキまたはラッカー膜の状態情報をそれぞれの印刷インキ層またはラッカー層の機械的特性の変化を介して観察することができる。
【0037】
超音波法では、担体と印刷膜の間の表面で音響反射係数が測定される。この測定は横波並びに縦波で、且つ様々な周波数で行われる。その際、縦方向及び横方向に進む音波のエコーが観察され、解析ソフトウエアを用いて解析される。
【0038】
印刷インキ層またはラッカー層の1つまたは複数の機械的弾性率の測定は通常、MHzからGHzの極めて高い周波数範囲で行われる。更に、低周波数範囲での機械的特性も関心の対象となることがある。1つだけではない周波数を含むパルスを発生させることもできる。広い連続した周波数スペクトルを使用することによって、硬化状態を正確に規定することができる。というのは、硬化状態に応じて異なる周波数部分が異なって伝送されるからである。測定後、スペクトルをフーリエ変換によって解析することができる。そこから、印刷インキ膜またはラッカー膜のスペクトル特性の解釈を時間の関数として表す周波数−時間曲線または周波数−時間平面を導出することができる。
【0039】
更に、超音波を極めて良く反射する、例えばガラスまたは水晶のような材料上にプローブを置くことによって測定を改良することが可能である。材料から反射した超音波は反射後に振幅が低減し、位相がずれる。この減衰及び移相も材料を特徴付ける特性である。
【0040】
更に、材料の粘弾性挙動が超音波の周波数及びプローブの温度と共に変化することも知られている。この影響変数は信号解析でデータを解釈する際に考慮されなければならない。
【0041】
超音波のエコーは、変換器または、例えば干渉計のような光学測定器によって把握することができる。
【0042】
測定によって得られた印刷インキ層及びラッカー層の1つまたは複数の機械的弾性率のデータは絶対測定値として、エキスパートシステムのデータメモリ、または基準値テーブルに保存された値と比較し、あるいは定義された硬化特性を有するプローブと比較して解析し評価することができる。その際、印刷インキ層及びラッカー層の硬化または乾燥は好ましくは、乾燥機温度、放射出力、機械速度などの機械パラメータを処理要件に適合させるために、機械オペレータが曲線形状を解釈せずに制御介入するのを可能にする、指標(Kennzahl)としてまとめられる。上記の適合化は、硬化及び乾燥の測定結果が機械制御によって直接引き継がれ、そこで適切な措置が講じられるなら自動的に行うこともできる。最も簡単な場合は、オペレータは調整の提案を受ける。より複雑な場合は、特性曲線、計算規定を介して直接に、あるいはエキスパートシステムに保存された知識に基づいて適切な修正措置が導き出される。これは、硬化もしくは乾燥が不十分である場合は、それを改善するための措置となり得る。充分に乾燥している場合は、エネルギ節減のために乾燥機の出力を低下させることもできる。
【0043】
機械的特性値を測定することによって硬化度または乾燥度を判定するこの手法により、過酷な印刷所の環境でも使用できる硬化管理が可能になる。それはオフラインで、すなわち印刷機の外部でも、またはインラインで、すなわち印刷機での製造中にでも行うことができる。この手法によって初めて、許容できる経費で統計または曲線形状または指標を有する製造プロトコルを得ることが可能となり、それによって印刷業者は充分な乾燥もしくは硬化を、従って製品の安全性を最終ユーザーに対して立証することが可能になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラビア、フレキソまたはオフセット印刷方法で印刷され、次いで乾燥される、例えば紙、カートン、プラスチックまたは複合材のような印刷基材に印刷された印刷インキ層及び/またはラッカー層の硬化度または乾燥度を判定する方法であって、
前記印刷インキ層及び/またはラッカー層の硬化度または乾燥度が、塗工された印刷基材が乾燥機を通過する前の第1の状態または時点と、通過した後の第2の状態または時点での前記印刷基材に塗布された印刷インキ層及び/またはラッカー層の物理的及び/または機械的及び/または化学的特性の判定によって確定されることを特徴とする方法。
【請求項2】
印刷基材が前記乾燥機を通過する前及び後の前記印刷インキ層及び/またはラッカー層の物理的及び/または機械的及び/または化学的特性の判定が、前記印刷基材上の同じ測定箇所、あるいは同様のまたは類似のインキ塗工及び/またはラッカー塗工の測定箇所で行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記印刷基材が印刷シートまたは印刷ウェブである請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記印刷基材の特性の判定が、印刷機の外部でオフラインで、または印刷機の内部でインラインで行われることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記印刷インキ層及び/またはラッカー層内で超音波振動または超音波信号が発生され、該印刷インキ層及び/またはラッカー層の機械的特性及び/または粘弾性特性を判定するために、前記超音波振動または超音波信号のエコーが評価されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
圧電または磁気抵抗変換器によって生成された超音波信号が、機械的結合または空気結合によって前記印刷インキ層及び/またはラッカー層中に導入されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記超音波信号がレーザビームまたはレーザパルスによって前記印刷インキ層及び/またはラッカー層内で発生され、その際に、該レーザビームまたはレーザパルスの熱エネルギによって前記印刷インキ層及び/またはラッカー層の迅速な局部的熱膨張が生じ、この熱膨張が該印刷インキ層及び/またはラッカー層内での超音波の発生をもたらすことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記熱膨張によって前記印刷インキ層及び/またはラッカー層の局部的な溶融または融除が生じ、それがプラズマの発生をもたらすことによって、前記超音波がレーザビームまたはレーザパルスによって前記印刷インキ層及び/またはラッカー層内で発生され、その際に、材料の分離によるモーメントの伝達によって、超音波振動または超音波信号が前記印刷インキ層及び/またはラッカー層内で発生されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記印刷インキ層及び/またはラッカー層内に導入される超音波信号または入力されるレーザパルスまたは前記印刷インキ層及び/またはラッカー層内で発生される超音波信号が周波数変調されることを特徴とする請求項5から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記印刷インキ層及び/またはラッカー層内に導入され、または前記印刷インキ層及び/またはラッカー層内で発生される超音波信号、あるいは入力されるレーザパルスは強度変調及び周波数変調されることを特徴とする請求項5から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記レーザの波長が選択可能であり、前記印刷インキ層及び/またはラッカー層の吸収特性に同調可能であることを特徴とする請求項6から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記変換器または前記レーザ発生源によって、1つの周波数または波長のみを有するパルスが送出されることを特徴とする請求項5から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記変換器または前記レーザ発生源によって、連続的または離散的に周波数スペクトルまたは波長スペクトルを横断するパルスが送出されることを特徴とする請求項5から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記横方向及び/または縦方向の音波の前記エコーが適切なセンサによって検出されることを特徴とする請求項5から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記センサの前記取得された信号が、硬化度及び乾燥度を判定するために印刷基材が乾燥機を通過する前及び後に信号解析に供され、該信号解析では前記乾燥機を通過する前と後の測定によって取得された値を比較し、その比較から前記硬化度または乾燥度の特性値が得られることを特徴とする請求項5から14のいずれか一項またはすべての項に記載の方法。
【請求項16】
前記信号解析の際に、印刷基材が乾燥機を通過する前と後の前記測定箇所の異なる温度が前記信号解析で考慮されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
印刷基材が乾燥機を通過する前と後の前記温度差が、前記エンコーダの前記測定値から直接導出されることを特徴とする請求1から16のいずれか一項またはすべての項に記載の方法。
【請求項18】
前記温度が印刷基材が乾燥機を通過する前と後に別々の温度センサによって検出され、この温度値が前記信号解析に供されることを特徴とする請求項1から17のいずれか一項またはすべての項に記載の方法。
【請求項19】
前記信号解析によって、前記乾燥されたインキ層及び/またはラッカー層の物理的状態を特徴付ける1つまたは複数の特性値が形成されることを特徴とする請求項15から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
信号解析によって取得された前記1つまたは複数の特性値が、好ましくは前記硬化度または乾燥度のパーセント表示であることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記信号解析の、好ましくは前記1つまたは複数の特性値の結果が表示装置に表示され、該表示が好ましくは前記乾燥装置及び/または機械パラメータの調整用ガイダンスと組み合わされることを特徴とする請求項15から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記結果が印刷機の制御ステーションに出力可能であることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記信号解析の結果から、例えば乾燥機の調整、製造速度など前記乾燥または硬化に影響を与えるプロセスパラメータの調整を変更するための制御信号が自動的に取得され、それが1つまたは複数の制御装置に転送され、該信号転送が、前記プロセスパラメータの変更を実行するために直接にまたはオペレータの承認後に行われることを特徴とする請求項15から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記印刷基材上の前記印刷インキまたはラッカー層の前記機械的及び/または粘弾性及び/または化学的特性の変化の前記判定が、紫外線または電子ビーム乾燥で硬化されたビーム硬化性の印刷インキまたはラッカー層で行われることを特徴とする請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記印刷基材上の前記印刷インキ層またはラッカー層の前記機械的及び/または粘弾性及び/または化学的特性の変化の前記判定が、溶剤または水を含む印刷インキまたはラッカーで行われることを特徴とする請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記印刷基材上の前記印刷インキ層またはラッカー層の前記機械的及び/または粘弾性及び/または化学的特性の変化の前記判定が、酸化的に、及び/または前記印刷基材内に浸透して乾燥した印刷インキで行われることを特徴とする請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。

【公開番号】特開2008−249710(P2008−249710A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−84777(P2008−84777)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(599011584)マンローラント・アーゲー (257)
【Fターム(参考)】