説明

双方向ダイオード、双方向ダイオードを用いた不揮発性半導体記憶装置、およびその製造方法

【課題】金属電極/半導体層/金属電極または金属電極/絶縁体層/金属電極の積層構造を有した双方向ダイオードにおいて、オン/オフ電流比を向上させることができる構造および、その製造方法を提供すること。
【解決手段】上に向かって凸型の形状を有する下部電極203を形成する工程と、その上に堆積表面の角度に対して堆積レートが異なる成膜法を用いて半導体層または絶縁体層202を形成する工程と、その上に上部電極201を形成する工程と、を備えることを特徴とする。
このような構成にすることにより、双方向ダイオードの印加電圧がオフ領域のときに流れるオフ電流は素子端部のみを流れるが、印加電圧がオン領域のときのオン電流は素子全面を流れるようになり、オン/オフ電流比を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、双方向ダイオードとして機能する、金属電極/半導体層/金属電極または金属電極/絶縁体層/金属電極の積層構造を有する双方向ダイオード、前記双方向ダイオードを用いた不揮発性半導体記憶装置、およびその製造方法関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、いわゆる抵抗変化型素子を用いて構成されたメモリセルを有する不揮発性記憶装置の研究開発が進んでいる。抵抗変化型素子とは、その上下に接続された上下電極間に印加される電気的信号に応じて抵抗値の変化が生じる性質を有し、この抵抗値の変化によって情報を記憶することが可能な素子のことをいう。
【0003】
また、抵抗変化型素子を用いたメモリセルについて、その1つにいわゆるクロスポイント構造が用いられる。クロスポイントメモリアレイは、マトリクス状に並べられた抵抗変化素子と、その上下に配線された複数のビット線およびワード線からなる。ビット線は均等な間隔で平行に配置されており、ワード線も同様に均等な間隔で平行に配置されている。ここで、ビット線とワード線は、平面視において互いに直交するが、空間的に異なる高さで配置されているためお互いに交わることはない。また、ビット線とワード線の平面視における交点には抵抗変化素子が配置されており、ビット線およびワード線に電気的に接続されている。メモリは、抵抗変化素子の抵抗値(高抵抗あるいは低抵抗)として記憶され、その読出しは、抵抗変化素子の上下のビット線とワード線間に電圧を印加したときの電流値として実行される。
【0004】
クロスポイントメモリアレイは、その読出しにおいて、マージンが狭くなるという問題を持つ。
【0005】
読出し動作において、ビット線−ワード線間に電圧を印加することによって電流は選択されたビット線から、選択された抵抗変化素子を経由して、選択されたビット線に流れるが、同時に、選択されたビット線に接続された非選択の抵抗変化素子→非選択のワード線→非選択のワード線に接続された非選択の抵抗変化素子→非選択のビット線→非選択のビット線に接続された非選択の抵抗素子→選択されたワード線、を経由して流れる電流(漏れ電流)が発生する。
【0006】
すなわち、クロスポイントメモリアレイにおける読出し電流は、選択された抵抗変化素子の電流+漏れ電流となり、本来の抵抗変化素子の抵抗値変化に対する読出し電流の変化が小さくなり、読み出し時の感度を劣化させ、また消費電流を増大させるといった問題を引き起こす。
【0007】
この問題に対して、例えば特許文献1で示されているような、クロスポイントの全メモリアレイのエリアをトランジスタスイッチなどでより小さなブロックに分割する技術を用いて、リークパスを許容できる量まで減少させることは可能である。
【0008】
また、非選択の抵抗変化素子に流れる電流は、抵抗変化素子に直列にダイオード(ある極性の低い電圧印加により順方向電流が流れ、逆方向の電圧印加ではほとんど電流が流れない特性を有する)を接続することによって減少させることができる。
【0009】
ダイオードを接続することによって、非選択のワード線→非選択のワード線に接続された非選択の抵抗変化素子→非選択のビット線、のバイアス状態は逆バイアス状態となるため、その経路の漏れ電流を極微小に抑えることができる。
【0010】
しかし、抵抗変化素子には、印加する電気パルスの極性が1つで、電圧値を変えてセット(高抵抗→低抵抗)またはリセット(低抵抗→高抵抗)動作を行うユニポーラ型の抵抗変化素子と、極性が異なる電気パルスを印加してセットまたはリセット動作を行うバイポーラ型の抵抗変化素子があり、抵抗値を変化させるために、ダイオードに対して逆バイアス条件となる書込み電圧を用いるような場合(バイポーラ型抵抗変化素子)には、この方法は適用できないが、バイポーラ型抵抗変化素子はセット、リセット時にともに高速の書き込み特性を有し、高速の不揮発性記憶装置の実現に向け、期待が高い。
【0011】
この問題に対処する方法として、ダイオードの代わりに双方向ダイオードを用いることができる。
【0012】
双方向ダイオードは、正負バイアス条件に対して対称な特性を持ち、バイアスの絶対値が小さい領域ではダイオードの逆バイアス特性、バイアスの絶対値が大きい領域ではダイオードの順方向特性に近い特性を示す。
【0013】
双方向ダイオードを抵抗変化素子に直列に接続することにより、書込みおよび読み出し時において、選択された抵抗変化素子に繋がる双方向ダイオードは順方向特性を示す領域で動作し、それ以外の抵抗変化素子に繋がる双方向ダイオードは逆方向特性を示す領域で動作するようになる。
【0014】
漏れ電流を小さくし、読出し時のマージンを大きくするためには、順方向領域でのオン電流と逆方向領域でのオフ電流との電流比をできるだけ大きくすることが望ましい。
【0015】
従来の金属電極/半導体層/金属電極の構造を有する双方向ダイオードの製造方法としては、特許文献2に開示された構成がある。
【0016】
図25は、この双方向ダイオードの概略構成を示す断面図である。この双方向ダイオードは、上部電極(TiN)414/半導体(Si)410/下部電極(TiN408/Pt406)404、の積層構造を有する。
【0017】
その製造方法としては、平坦な表面を有する基板上402に、Pt膜、TiN膜、Si膜、TiN膜の順に、DCスパッタ法もしくはCVD法を用いて、積層膜を形成した後、パターニングして双方向ダイオードを形成する方法が示されている。
【特許文献1】特許第3913258号公報
【特許文献2】特開2007−311772号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、前記従来の双方向ダイオードの構成では、オン/オフ電流比を大きくできないという問題があった。したがって、本発明の目的はオン/オフ電流比を向上させることができる双方向ダイオード、およびその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、従来の構成において所望のオン/オフ電流比が得られない原因を検討したところ、特許文献2のダイオードにおける半導体膜(Si410)の膜厚は均一であり、これに起因して、双方向ダイオードを流れる電流は、半導体膜の全面を流れるため、オフ電流が小さくできず、オン/オフ電流比も大きくできないのではないかと考えた。そこで、半導体層または絶縁体層の膜厚を中心部が厚く、端部が薄い構造にしたところ、従来の構造に比べ、オン/オフ電流比が格段に優れた素子を提供できることを見い出した。
【0020】
即ち、本発明は、金属電極/半導体層/金属電極または金属電極/絶縁体層/金属電極の積層構造を有する双方向ダイオードであって、
基板と、前記基板上方に形成された下部電極と、前記下部電極上に形成された半導体層または絶縁体層と、前記半導体層または絶縁体層上に形成された上部電極とを備え、前記下部電極の端部上の前記半導体層または絶縁体層の膜厚が、前記下部電極の中央部上の前記半導体層または絶縁体層の膜厚より薄く形成されていること、を特徴とする。
【0021】
また、前記下部電極と前記半導体層または絶縁体層との界面は、上部電極側に向かって凸型に形成されていてもよい。
【0022】
さらに、前記半導体層または絶縁体層および前記上部電極は、前記下部電極の上部全面を覆うように形成されていてもよい。
【0023】
このような構成にすることにより、双方向ダイオードの印加電圧がオフ領域のときに流れるオフ電流は素子端部のみを流れるが、印加電圧がオン領域のときのオン電流は素子全面を流れるようになり、オン/オフ電流比を向上させることができる。
【0024】
また、本発明の双方向ダイオードは、電気パルスの印加によりその電気抵抗値が変化しかつ前記変化した後、電気パルスの印加をやめても電気抵抗値を維持する抵抗変化素子と直列に接続されて、前記電気パルスの印加時に流れる電流を制御する機能を有する記憶素子を構成する。
【0025】
前記記憶素子の双方向ダイオードは、下部電極と、上部電極と、前記下部電極と前記上部電極との間に配設された半導体層または絶縁体層と、を備え、前記双方向ダイオードの、前記下部電極の端部上の前記半導体層または絶縁体層の膜厚が、前記下部電極の中央部上の前記半導体層または絶縁体層の膜厚より薄く形成されている。
【0026】
さらに、前記複数の記憶素子と、複数のビット線と、前記複数のビット線に各々立体交差する複数のワード線と、を備え、前記複数の記憶素子が、前記ビット線と前記ワード線とが立体交差する各々の部分に配設され、前記各々の部分において、前記記憶素子の一端がその対応する前記ビット線に、前記記憶素子の他端がその対応する前記ワード線に、各々接続されている、クロスポイントメモリアレイ型の記憶装置を構成してもよい。
【0027】
また、本発明は、金属電極/半導体層/金属電極または金属電極/絶縁体層/金属電極の積層構造を有する双方向ダイオードの製造方法であって、基板に対して水平な表面を有する下部電極を形成する工程と、前記下部電極の中央部上の前記半導体層または絶縁体層の膜厚より、前記下部電極の端部上の前記半導体層または絶縁体層の膜厚が薄くなるように前記半導体層または絶縁体層を前記下部電極上に堆積する工程と、前記半導体層または絶縁体層の上に上部電極膜を堆積する工程と、を備えることを特徴とする。
【0028】
さらに、前記下部電極を形成する工程は、基板に対して水平な表面を有する下部電極を形成する工程と、前記下部電極の半導体層または絶縁体層側の表面が前記上部側に向かって凸型になるように下部電極を形成する工程を含んでいてもよい。
【0029】
また、前記下部電極を形成する工程は前記基板に層間絶縁膜を堆積する工程と、前記層間絶縁膜にホールを形成する工程と、前記ホール内及び前記層間絶縁膜の上に下部電極膜を堆積する工程と、CMP法を用いて前記下部電極膜表面を研磨して、前記ホール内のみに下部電極を形成する工程と、前記ホール内から下部電極が露出するまで前記層間絶縁膜の表面のみを選択的にエッチングして、前記層間絶縁膜の表面の高さを、前記下部電極の表面の高さより低くする工程と、ウェハを自転させながら、基板表面に対して30度〜60度の範囲の入射角度でエッチングイオンを入射させるイオンミリング法を用いて、前記下部電極の半導体層または絶縁体層側の表面を上部電極側に向かって凸型に形成する工程を含んでいてもよい。
【0030】
また、本発明の金属電極/半導体層/金属電極または金属電極/絶縁体層/金属電極の積層構造の双方向ダイオードの製造方法は、前記下部電極の半導体層または絶縁体層側の表面を上部電極側に向かって凸型に形成する工程において、反応性ドライエッチング法を用いてもよい。
【0031】
あるいは、前記半導体層または絶縁体層を堆積する工程は、凸型に形成された前記下部電極の上に堆積表面の角度に対して堆積レートが異なる成膜法を用いてもよい。
【0032】
さらに好ましくは、前記半導体層または絶縁体層を堆積する工程は、ターゲットから飛散する粒子の方向性を揃えた成膜方法(ターゲット(半導体層または絶縁体層材料)と堆積対象の基板との距離を長くして、ターゲット粒子の直進性を向上させたロングスロースパッタ法や、ターゲットと堆積対象基板の間にコリメータを介在させることでターゲットから飛散する粒子の方向を揃えたコリメーションスパッタ法)を用いてもよい。
【0033】
ロングスロースパッタ法では、基板に向かってほぼ垂直な運動方向を持つターゲット粒子のみが基板表面に到達できるため、基板表面の角度によってその堆積レートが大きく変化する。具体的には、基板表面がターゲット粒子に対して垂直なほど堆積レートが大きく、平行なほど堆積レートは小さくなる。
【0034】
また、本発明に関わる双方向ダイオードの製造方法では、CVD法を用いて半導体層または絶縁体層を堆積する場合は、半導体層または絶縁体層の形成後、基板を傾けた状態でイオンミリング法によるエッチングを行うことが望ましい。
【0035】
さらには、前記半導体層または絶縁体層の表面をエッチバックする工程は、ウェハを自転させながら、基板表面に対して45度〜60度の範囲の入射角度でエッチングイオンを入射させるイオンミリング法を用いてもよい。
【0036】
このような形成方法にすることによって、基板に対するエッチングイオンの入射角度を調整することで、下部電極表面の曲率を調整することが可能になるため、下部電極上の半導体層または絶縁体層の膜厚差を調整しやすくなるという効果が得られる。
【0037】
本発明の構成および製造方法によって、下部電極上の半導体層または絶縁体層の膜厚を、中心部が最も厚く、その周辺部がそれより薄い、構造を実現することが可能となるため、オフ電流を小さくし、オン/オフ電流比を向上させた双方向ダイオードを実現することができる。
【0038】
なお、本明細書において、「凸型」とは、突起出している、膨らんでいる、盛り上がっている、おわん状、などの状態を指す。
【発明の効果】
【0039】
本発明の双方向ダイオードは、下部電極上の半導体層または絶縁体層の膜厚を中心部が厚く、端部が薄い構造にすることによって、印加電圧が高い状態(オン状態)での電流(オン電流)を大きく、かつ印加電圧が低い状態(オフ状態)での電流(オフ電流)を小さくできるという効果を持つ。
【0040】
すなわち、オフ電流とオン電流との電流比(オン/オフ電流比)を向上させることができるという大きな効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、同じ要素については同じ符号を付して説明を省略する場合がある。また、記憶部等の形状については模式的なものであり、その個数等についても図示しやすい個数としている。
【0042】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態の双方向ダイオードおよび、この双方向ダイオードを用いて構成される抵抗変化素子アレイの断面視における構成の一例を示す断面図である。図1(a)はビット線に平行な断面を示す断面図、同図(b)はワード線に平行な断面を示す断面図である。
【0043】
図1(a),(b)に示すとおり、本実施形態による双方向ダイオード20は、上に向かって凸型の形状を有する下部電極203と、この下部電極203を覆うように形成された半導体層または絶縁体層202と、この半導体層または絶縁体層202の上に形成された上部電極201とで構成される。また、半導体層または絶縁体層202の膜厚は、下部電極203の中央付近で最も厚く、端部で薄くなっている。また、双方向ダイオード20は、抵抗変化素子10とペアを構成し、このペアが複数集積されて抵抗変化素子アレイ100が構成されている。
【0044】
このように前記半導体層または絶縁体層および前記上部電極が、前記下部電極の上部全面を覆う構成とすることで、半導体層または絶縁体層202の膜厚が薄い端部の面積を大きくすることができるのでオン電流を増大させることができ、オン/オフ電流比を向上させることができる、という効果がある。
【0045】
この抵抗変化素子アレイ100は、基板101を備えている。そして、基板101の上には、複数の帯状のワード線111が所定のピッチで互いに平行に形成されている。また、ワード線111の上には、その長手方向に複数の第1ビア121が互いに間隔を置いて形成され、第1ビア121の下面は、ワード線111に接続されている。また、第1ビア121の上には、抵抗変化素子10が形成されており、抵抗変化素子10の下面と第1ビア121の上面は接続されている。
【0046】
さらに、抵抗変化素子10の上には、下部ビア122が形成されており、抵抗変化素子10の上面と下部ビア122の下面は接続されている。また、下部ビア122の上には、双方向ダイオード20が形成されており、下部電極203の下面と下部ビア122の上面は接続されている。そして、双方向ダイオード20の上には、上部ビア123が形成されており、上部ビア123の下面と双方向ダイオード20の上面は接続されている。
【0047】
また、ワード線111、第1ビア121、抵抗変化素子20、下部ビア122、双方向ダイオード20、および上部ビア123は、それぞれ複数存在し、それぞれ同じ部位同士の間隙を埋めるように層間絶縁膜105が形成されている。
【0048】
この層間絶縁膜105の上面、および上部ビア123の上面は一つの略平坦な面を形成している。この略平坦な面の上に複数の帯状のビット線110が形成されている。また、ビット線110は所定のピッチで互いに平行に形成されている。そして、平面視において、ビット線110はワード線111に直交するように形成されていて、このビット線110とワード線111の各交点に位置するように上述の抵抗変化膜10、および双方向ダイオード20が形成されている。
【0049】
かかる構成により図11および図12に示すように、a方向に伸びるワード線111とb方向に伸びるビット線110の各交点に、マトリクス状に双方向ダイオード20および抵抗変化素子10を有する、抵抗変化素子アレイ100(クロスポイントメモリアレイ)が形成される。
【0050】
なお、本実施形態および他の実施形態では、抵抗変化膜10と双方向ダイオード20の物理的位置関係として、抵抗変化膜10が下側(基板側)で双方向ダイオード20が上側(表面側)の場合についてのみ説明をしているが、位置関係はこれに限定されるものではなく、抵抗変化膜10が上側(表面側)で双方向ダイオード20が下側(基板側)に配置されていても、同様の効果を持つクロスポイントメモリアレイが形成される。
【0051】
さらに、図1には図示していないが、基板101は、シリコン単結晶基板を用いてトランジスタ等の能動素子を集積した半導体回路を有する。また、ワード線111およびビット線110は、能動素子(図示せず)にそれぞれ接続されている。また、ワード線111およびビット線110は、例えばAl、Cu、Al−Cu合金、Ti−Al−N合金を用いてスパッタ法により成膜し、露光プロセスとエッチングプロセスを経ることで容易に形成できる。また、ワード線111およびビット線110の厚さは200nm〜400nm、幅は約0.6μm、隣接するワード線111同士の間隔(間隙)およびビット線110同士の間隔(間隙)は約0.8μm、であることが好ましい。また、下部電極203および上部電極201には、Ta、TaN、Al、W、Pt、Cuあるいはこれらの組み合わせを用いる。また、第1ビア121、下部ビア122および上部ビア123は、例えばW、CuあるいはAlが用いられる。
【0052】
また、半導体層または絶縁体層202は、窒素不足型窒化シリコン(SiN)が用いられる。下部電極203および上部電極201の厚さは30nm〜100nm、半導体層または絶縁体層202の厚さは5nm〜50nmであり、平面視による双方向ダイオード20の幅および長さは、例えば共に約0.8μmである。
【0053】
抵抗変化素子10は、鉄を含む酸化物、例えば四酸化三鉄(Fe)や、その他の遷移金属酸化物である酸化チタン、酸化バナジウム、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化亜鉛、ニオブ酸化膜、タンタル酸化膜、ハフニウム酸化膜等の上下を金属電極で挟んだ構造で構成される(図中では単層で図示している)。
【0054】
この遷移金属酸化物は、スパッタ法やCVD法等で形成される。この金属電極には、例えば、Pt、Ir、Cu、TiN、Wが用いられ、スパッタリング法等で形成される。このような遷移金属酸化物材料を金属電極で挟んだ構造では、閾値以上の電圧または電流が積層構造に対して垂直に印加されたときに、同方向の抵抗値が特定の値を示し、その抵抗値は新たに一定の大きさのパルス電圧またはパルス電流が印加されるまでは、その抵抗値を維持しつづける。
【0055】
また、層間絶縁膜105には、絶縁性の酸化物材料を用いることができる。具体的には、CVD法による酸化シリコン(SiO)やオゾン(O)とテトラエトキシシラン(TEOS)を用いてCVD法により形成したTEOS−SiO膜あるいはシリコン窒化(SiN)膜を用いることができる。
【0056】
さらに、低誘電率材料であるシリコン炭窒化(SiCN)膜やシリコン炭酸化(SiOC)膜あるいはシリコンフッ素酸化(SiOF)膜等を用いてもよい。さらに、上記材料の積層構造を用いても良い。
【0057】
層間絶縁膜105は、ワード線111間、第1ビア121間、抵抗変化素子10間、下部ビア122間、双方向ダイオード20間、および上部ビア123間を絶縁するために用いられるが、その作製は一度に行われるものではなく、層に分けて作製される(図2から図11にて詳細説明)。このため、層間絶縁膜105はプロセスを経るごとに上層に向かって積み重なっていくが、説明簡略化のため、最初に形成される層から各プロセス時点までの最上層までを含めて層間絶縁膜105と表記する。
【0058】
図12は、図1の抵抗変化素子アレイの電気等価回路を示す回路図である。
【0059】
次に、図2から図11を用いて、本実施形態の双方向ダイオード20および、それにより構成される抵抗変化素子アレイ100の製造方法を説明する。
【0060】
各図において(a)は上面を示す模式図、(b)は各図(a)におけるX−X’線の断面を矢印方向から見た断面図である。
【0061】
まず、基板101の上にスパッタ法やCVD法等を用いて第1配線膜102が堆積される(図2)。なお、この第1配線膜102には、先述したように種々の材料を用いることができるが、本実施形態では、スパッタ法によりAl膜を形成する。
【0062】
次に、第1配線膜102を露光プロセスを用いてマスキングしてエッチングすることにより、所定の幅を有するワード線111が互いに平行に所定のピッチで形成される(図3)。
【0063】
次に、図4に示すように、第1ビア121を層間絶縁膜105中に埋め込まれるように形成するが、これは以下のようにすれば形成できる。
【0064】
すなわち、図3で示した構造の上に、例えばCVD法を用いてTEOS−SiOからなる層間絶縁膜105を堆積し、例えばCMPを行うことでその表面を略平坦にする。なお、この層間絶縁膜105としては、先述したように種々の材料を用いることができる。その後、層間絶縁膜105にワード線111に接続するためのコンタクトホールを形成する。これらについては、一般的な半導体プロセスで用いられている技術を用いれば容易に形成することができる。
【0065】
このようなコンタクトホールを形成後、例えばCVD法を用いてタングステン(W)からなる第1ビア121となる導体膜を形成した後、例えばCMPを行うことで、図4に示すような構造を形成することができる。なお、第1ビア121としては、例えば、タングステン(W)以外にも、銅(Cu)、Alを用いることができる。
【0066】
次に、図5に示すように、第1ビア121を含む層間絶縁膜105上に、抵抗変化素子10を形成するが、これは以下のようにすれば形成できる。すなわち、スパッタ法やCVD法等を用いて金属電極層/遷移金属酸化物層/金属電極層の積層構造を形成後、露光プロセスを用いてマスキングしてエッチングすることにより、所定の寸法の抵抗変化素子10を形成する。なお、この抵抗変化素子10の金属電極層および遷移金属酸化物層には、先述したように種々の材料を用いることができるが、例えば、スパッタリングによりPt/TaOx/Ptの積層構造を形成する。
【0067】
次に、図6に示すように、下部ビア122を層間絶縁膜105中に埋め込まれるように形成するが、これは以下のようにすれば形成できる。すなわち、図5で示した構造の上に、例えばCVD法を用いてTEOS−SiOからなる層間絶縁膜を堆積し、例えばCMPを行うことでその表面を略平坦することで、層間絶縁膜105を上層に向かって拡張する。その後、層間絶縁膜105に抵抗変化素子10の上面に接続するためのコンタクトホールを形成する。これらについては、一般的な半導体プロセスで用いられている技術を用いれば容易に形成することができる。
【0068】
このようなコンタクトホールを形成後、例えばCVD法を用いてタングステン(W)からなる下部ビア122となる導体膜を形成した後、例えばCMPにより層間絶縁膜105と下部ビア122は同じ研磨レートで研磨することで、図6に示すような構造を形成することができる。なお、下部ビア122としては、例えば、タングステン(W)以外にも、銅(Cu)、Alを用いることができる。
【0069】
次に、図7に示すように、下部電極203’を層間絶縁膜105中に埋め込まれるように形成するが、これは以下のようにすれば形成できる。すなわち、図6で示した構造の上に、例えばCVD法を用いてTEOS−SiOからなる層間絶縁膜を堆積し、例えばCMPを行うことでその表面を略平坦することで、層間絶縁膜105を上層に向かって拡張する。その後、層間絶縁膜105に下部ビア122の上面に接続するためのホールを形成する。これらについては、一般的な半導体プロセスで用いられている技術を用いれば容易に形成することができる。
【0070】
このようなホールを形成後、例えばスパッタ法を用いて窒化タンタル(TaN)からなる下部電極203’となる導体膜を形成した後、例えばCMPを行うことで、図7に示すような構造を形成することができる。
【0071】
一般にタングステン(W)を埋め込んで形成したビアでは、その表面は平坦ではなく、CMP後でも10〜40nm程度の凹凸が残る。このため、このビアの上に成膜された下部電極は、この凹凸を反映するため平坦にならない。しかし、本実施形態では、下部電極形成後に再び下部電極表面の凹凸をCMPによって平坦化するため、下部電極の表面の平坦性を向上させることができる。これにより、素子特性のバラツキを低減することが可能となる。
【0072】
次に、図7の表面をエッチバックして層間絶縁膜105の表面をエッチングし、下部電極203’のおおよそ半分の高さまで、層間絶縁膜105の表面を下げる。このときのエッチングは、例えば層間絶縁膜105のみが選択的にエッチングされる条件のドライエッチング法が用いられる。
【0073】
次に、下部電極203’の形状を、図8のように上に凸型に形成して、下部電極203を形成するが、これは以下のようにすれば形成できる。すなわち、例えばエッチングイオンの入射角度を45度に設定したイオンミリング装置で、ウェハを自転させながらイオンミリングを行うと、下部電極203’の角の部分が優先的にエッチングされるため、テーパーが形成される(図8)。ことのとき、層間絶縁膜105の表面もイオンミリングによりエッチングされるため、表面の高さが下がる。
【0074】
なお、下部電極203’に形成されるテーパーの角度および曲率は、エッチングイオンの入射角度によって調整することが可能であり、後述の半導体層または絶縁体層212の成膜方法と併せて、膜厚差の調整をすることができる。
【0075】
しかし、エッチングイオンの入射角度を基板表面に対して垂直に近づけすぎるとテーパーが付きにくくなり、また、基板表面に対して平行に近づけすぎると隣接する下部電極が壁となってテーパーが形成されなくなる。これらより、エッチングイオンの入射角度としては、基板表面に対して、30度〜60度であることが望ましい。
【0076】
また、イオンミリング装置の代わりに、同様な方法で反応性ガスの入射角度を傾けたドライエッチング法を用いても良い。なお、図8では、層間絶縁膜105の表面の高さについて、下部電極203の下面より少し上の場合について示されているが、必ずしもこのような高さ関係にある必要は無く、層間絶縁膜105の表面の高さが、下部電極203の下面と同じかもしくは、下部電極203の下面より下がっていても良い。
【0077】
なお、図7の状態からCMPのみを用いて図8の下部電極を形成することも可能である。すなわち、スラリー、CMPパッド圧力、回転数等を制御して、層間絶縁膜の研磨レートが下部電極材料の研磨レートより大きくなるようにして研磨を行うことにより実現できる。
【0078】
次に、図9に示すように、半導体層または絶縁体層212を堆積する。半導体層または絶縁体層212には、例えば窒素不足型窒化シリコン(SiN)が用いられる。
【0079】
このような半導体特性を有するSiN膜は、例えばSiターゲットを用いた窒素ガス雰囲気中でのリアクティブスパッタ法により形成することができ、xを変化させることによって、そのバンドギャップを変化させることができ、双方向ダイオードの電流−電圧特性を調節することができる。
【0080】
成膜方法としては、例えば、室温条件で、チャンバーの圧力を0.1Pa〜1Paとし、Ar/N流量を18sccm/2sccmとして製作すればよい。成膜方法としては、堆積表面の角度に対して堆積レートが異なる成膜法が用いられる。
【0081】
本実施形態では、基板とターゲットの距離を離したロングスロースパッタ法と呼ばれる成膜法を選択した。この成膜法では、堆積表面が基板101と平行である場合に堆積レートが最大になり、堆積表面が基板101に対して垂直に近くなるほど堆積レートが下がる。
【0082】
このような成膜法を用いることで、下部電極203の中心部での膜厚d1が、周辺部での膜厚d2より厚くなるように、半導体層または絶縁体層212を堆積することができる。
【0083】
このように、基板上方に凸型に形成された下部電極に対してロングスロースパッタ法を用いて形成することで、所望の膜厚を持つ半導体層または絶縁体層を簡易に形成することができる。また、半導体層または絶縁体層を形成した後に半導体層または絶縁体層をエッチングして所望の形状を形成する場合に比べ、エッチングによる半導体層または絶縁体層の表面荒れを防ぐことができるので、オフ状態でのリーク電流を低減することができる。それによって、オン/オフ電流比を向上させることができる。
【0084】
次に、図9に示すように、例えばスパッタ法を用いて窒化タンタル(TaN)からなる上部電極層211を成膜する。なお、成膜方法としては、スパッタ法だけでなく、CVD法等を用いても良い。
【0085】
次に、図10に示すように、露光プロセスを用いてマスキングして上部電極層211および、半導体層または絶縁体層211をエッチングすることにより、所定の寸法の双方向ダイオード20を形成する。この場合に、上部電極201および半導体層または絶縁体層202の寸法は、露光プロセスにおける位置合せ精度を考慮して、下部電極203より大きくすることが望ましい。
【0086】
次に、図11に示すように、上部ビア123およびビット線110を形成するが、これは以下のようにすれば形成できる。すなわち、図10で示した構造の上に、例えばCVD法を用いてTEOS−SiOからなる層間絶縁膜を堆積し、例えばCMPを行うことでその表面を略平坦することで、層間絶縁膜105を上層に向かって拡張する。その後、層間絶縁膜105に上部電極201の上面に接続するためのホールを形成する。これらについては、一般的な半導体プロセスで用いられている技術を用いれば容易に形成することができる。
【0087】
このようなホールを形成後、例えばスパッタ法を用いてAl膜を形成し、露光プロセスを用いてマスキングしてエッチングすることにより、所定の幅を有するビット線110が互いに平行に所定のピッチで形成される。
【0088】
平面視において、ビット線110はワード線111に直交するように形成されている。このような製造工程を経ることにより図11および図12に示すように、a方向に伸びるワード線111とb方向に伸びるビット線110の各交点に、マトリクス状に抵抗変化素子10と双方向ダイオード20とを有する、抵抗変化素子アレイ100が形成される。
【0089】
なお、本実施の形態では、下部電極203および整流素子20の平面視における形状として、正方形で示したが、本形状はこれに限定されるものではなく、長方形、楕円、円、多角形などの形状を用いても同様の効果が得られる。これについては後述する。第2の実施形態以降の説明においても、同様である。なお、本実施の形態では、半導体層または絶縁体層202としてSiNを用いるMSMダイオードの場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、シリコン(Si)、酸化タンタル(TaO)、アルミナ(AlO)あるいはチタニア(TiO)を用いてもよい。TaOを用いる場合には、例えばTa膜を成膜した後、ドライ熱酸化法、ウエット熱酸化法、プラズマ酸化法あるいは反応性スパッタリング方式により直接TaO膜を形成する方法等、いずれの方法でもよい。
【0090】
本実施形態における双方向ダイオード20の特徴は、下部電極203の上部が凸型(上方に湾曲するように)形成され、さらに、半導体層または絶縁体層202の膜厚が中心部で厚く、端部で薄くなるように形成されている点にある。このような構成によると、上部電極201と下部電極203間に電圧を印加したときの電流の分布が、印加電圧の大きさによって異なる。
【0091】
一般にMSMダイオードを流れる電流密度(J)は(数1)により得られる。
【0092】
【数1】

【0093】
なお、V:印加電圧、n:キャリア密度、μ:移動度、q:電子の電荷、d:非導体層の厚み、E:トラップ深さ、k:ボルツマン定数、T:絶対温度、ε:真空の誘電率、εopt:絶縁体層の光学的な比誘電率
式(1)からわかるように、MSMダイオードの電流密度は、非導体層(半導体層または絶縁体層202に相当)の厚みに対して指数関数的に変化する。したがって、本実施形態における双方向ダイオード20のように、非導体層の膜厚が部分的に異なるような場合には、MSMダイオードを流れる電流のほとんどが、非導体層の膜厚が薄い部分に集中して流れるため、MSMダイオードの実効的な接合面積は実接合面積より小さくなる。
【0094】
このため、本実施形態における双方向ダイオード20では、同じ接合面積で均一な膜厚(本実施形態の双方向ダイオードで最も薄い部分の半導体層または絶縁体層の厚さとする)の半導体層または絶縁体層を有する双方向ダイオードに比べて、印加電圧が小さいときのオフ電流を小さくすることができる。
【0095】
一般に、MSMダイオードに印加される電圧が大きくなり、流れる電流が増加すると、ジュール発熱によりMSMダイオードの温度が上昇する(オン領域)。
【0096】
(数1)からわかるように、MSMダイオードの電流密度は、温度が上昇すると指数関数的に増加する。
【0097】
これが更なる温度上昇を引き起こし、限界温度に達するとショートなどの故障に至るが、このショートが発生する箇所は、最も放熱効率の悪い、双方向ダイオード中心部で発生する。
【0098】
これに対して、本実施形態における双方向ダイオード20では、構造的に電流は素子の端部を中心に流れ、ジュール発熱も素子端部で発生するため、層間絶縁膜105に対する放熱が行われやすく、双方向ダイオード20全体の温度上昇が抑えられる。
【0099】
また、ジュール発熱により双方向ダイオード端部の温度が上昇すると、それにつれて双方向ダイオード中心部の温度も上昇し、中心部でも電流が流れるようになるため、双方向ダイオード20の実効的な接合面積は増加する。
【0100】
図13は、計算機シミュレーションによって計算した、MSMダイオードの電流−電圧特性である。
【0101】
双方向ダイオードでは、電圧の印加方向に対する電圧−電流特性は対称であるため、正方向に電圧を印加したときの結果を示している。
【0102】
カーブ(a)は、上下電極がTaNで、膜厚5.7nmのSiN0.67を半導体層として持つ一般的な双方向ダイオードの結果であり、SiN0.67の膜厚は素子全面で均一としている。カーブ(d)は、本実施形態における双方向ダイオードの結果であり、上下電極がTaN、周辺部のSiN0.67の膜厚が5nm、中心部は7nmの膜厚の場合である。
【0103】
カーブ(b)およびカーブ(c)は、カーブ(d)の周辺部(膜厚5nmの領域)の電流および中心部(膜厚7nmの領域)の電流成分をそれぞれ別々に示したものである。
【0104】
つまり、ある電圧における、カーブ(b)と、カーブ(c)の値の和が同電圧のカーブ(d)の値となっている。また、図13中に、シミュレーションに用いた構造の半導体層部を示した。従来の構造における上面図に記された(a)は、カーブ(a)に対応し、また本願構造における上面図に記された(b)、(c)、及び(d)は、カーブ(b)、(c)、及び(d)に対応している。
【0105】
図13の、カーブ(a)とカーブ(d)を比較すると、本実施形態の双方向ダイオードのオン領域(2.0〜2.5V)の電流は、一般的な双方向ダイオードの値であるカーブ(a)の値とほとんど変わらないが、オフ領域(0〜0.5V)の電流が約半分に減少していることが分かる。これは、クロスポイントメモリアレイにおいて、読み出し感度を向上させる効果がある。もしくは、メモリアレイを分割したサブアレイのサイズを約2倍にしても、読み出し感度を維持できる効果が得られる。
【0106】
以上から分かるように、本実施形態における双方向ダイオード20では、オン電流を低下させること無く、オフ電流を減少させることができるので、オン/オフ電流比を向上させることができる。
【0107】
また、本実施形態では、抵抗変化素子10として、遷移金属酸化物層の上下を金属電極で挟んだ構造を有するものの場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0108】
たとえば、抵抗変化素子として、相変化メモリに用いられる抵抗変化素子や、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)に用いられるMTJ(Magnetic Tunnel Junction)などを用いても良い。
【0109】
次に、図14および図15を用いて、第1の実施の形態の変形例の製造方法について説明する。第1の実施の形態の変形例では、下部電極と下部ビア兼用させる場合について示す。このため、図14までの工程は第1の実施形態における図6までの工程と同一である。
【0110】
図14は、下部ビア122の表面に層間絶縁膜CMP500を施す工程を示している。層間絶縁膜CMP500とは、層間絶縁膜105の研磨レートよりも下部ビア内電極材料の研磨レートが小さくなるような条件で研磨することを示す。この層間絶縁膜CMP500により、層間絶縁膜105の表面は優先的に研磨されるが、金属である下部ビア122はほとんど研磨されず、角の部分のみが優先的に機械的に研磨される。この結果、上に凸型の形状を有した、凸型下部ビア222が形成される。
【0111】
この表面に、堆積表面の角度に対して堆積レートが異なる成膜法が用いて非導体層を形成し、続いて上電極膜を成膜し、露光プロセスを用いてエッチングして上部電極層201および、半導体層または絶縁体層302を形成することにより、所定の寸法の双方向ダイオード50を形成する。
【0112】
以上のような製造方法を用いることにより、作製工程の削減を行うことができる。
【0113】
(第2の実施の形態)
図16は、本発明の第2の実施の形態の双方向ダイオード30および、この双方向ダイオード30を用いて構成される抵抗変化素子アレイの断面視における構成の一例を示す断面図である。本実施形態による双方向ダイオード30と、第1の実施の形態による双方向ダイオード20との違いは、下部電極303の形成方法の違いである。
【0114】
したがって、下部ビア122までの作製工程および、非導体層膜212形成以降の作製工程は、第1の実施の形態と同様であり、第1の実施の形態と第2の実施の形態とで共通する要素については、同一名称を付して説明を省略する。
【0115】
図16(a)はビット線に平行な断面を示す断面図、同図(b)はワード線に平行な断面を示す断面図である。
【0116】
次に、図17および図18を用いて、本実施形態の双方向ダイオードにおける、下部電極303の形成方法を説明する。
【0117】
各図において(a)は上面を示す模式図、(b)は各図(a)におけるX−X’線に沿った断面を示す模式図である。図17は、下部電極303’を形成するまでの工程を示す図である。図18は、下部電極303の形状を上に凸型に形成する工程を示す図である。
【0118】
図17に示すように、下部ビア122を覆うように、下部電極303’を層間絶縁膜105および下部ビア122の上に形成するが、これは以下のようにすれば形成できる。すなわち、例えばスパッタ法を用いて窒化タンタル(TaN)を成膜後、露光プロセスを用いてマスキングし、エッチングすることにより、所定の寸法の下部電極303’を形成する。なお、成膜方法としては、スパッタ法だけでなく、CVD法等を用いても良い。エッチングは、ドライエッチングなどの一般的な半導体プロセスで用いられている技術を用いる。
【0119】
次に、下部電極303’の形状を、図18のように上に凸型に形成して、下部電極303を形成するが、これは以下のようにすれば形成できる。すなわち、例えばエッチングイオンの入射角度を45度に設定したイオンミリング装置で、ウェハを自転させながらイオンミリングを行うと、下部電極303’の角の部分が優先的にエッチングされるため、テーパーが形成される(図18)。なお、下部電極303’に形成されるテーパーの角度および曲率を、エッチングイオンの入射角度によって調整することができるのは、第1の実施の形態と同様である。さらに、第1の実施の形態と同様の理由により、エッチングイオンの入射角度としては、基板表面に対して、30度〜60度であることが望しい。また、イオンミリング装置の代わりに、同様な方法で反応性ガスの入射角度を傾けたドライエッチング法を用いても良い。
【0120】
以降の工程は、第1の実施の形態の製造工程で示した、図9以降の工程と同様であり、このような工程を経ることによって、マトリクス状に抵抗変化素子10と双方向ダイオード30とを有する、抵抗変化素子アレイ200が形成される(図19)。
【0121】
以上のように、本実施形態による双方向ダイオード30では、下部電極303を形成するための工程を、第1の実施の形態より少なくすることができるため、作製期間やコストの短縮という効果が得られる。
【0122】
(第3の実施の形態)
図20は、本発明の第3の実施の形態の双方向ダイオード40および、この双方向ダイオード40を用いて構成される抵抗変化素子アレイの断面視における構成の一例を示す断面図である。
【0123】
本実施形態による双方向ダイオード40と、第1の実施の形態による双方向ダイオード20および第2の実施の形態による双方向ダイオード30との違いは、半導体層または絶縁体層302の形成方法の違いである。
【0124】
したがって、下部電極303までの作製工程および、上部ビア123形成以降の作製工程は、第1の実施の形態および第2の実施の形態と同様であり、第1の実施の形態および第2の実施の形態と第3の実施の形態で共通する要素については、同一名称を付して説明を省略する。
【0125】
次に、図21から図24を用いて、本実施形態の双方向ダイオード40の形成方法を説明する。
【0126】
まず、図21に示すように、下部電極303が形成された基板表面に、例えばCVD法を用いてSiN膜を形成する。CVD法では、堆積表面の角度が基板101に対して平行でない場合でも、均等に堆積することができる。このような成膜法を用いることで、下部電極303の中心部での膜厚a1と、周辺部での膜厚a2が等しくなる。
【0127】
次に、半導体層または絶縁体層312の表面をエッチバックするが、例えばエッチングイオンの入射角度を45度に設定したイオンミリング装置で、ウェハを自転させながらイオンミリングを行うと、エッチングイオンの入射角度に対して垂直な表面ほどエッチングレートを高くすることができるので、下部電極303の端部上での膜厚b2を、中心部上での膜厚b1より薄くなるように形成することができる(図22)。
【0128】
しかし、エッチングイオンの入射角度を基板表面に対して垂直に近づけすぎると、下部電極303の中心部上での半導体層または絶縁体層312の膜厚が、下部電極303の端部上での膜厚より薄くなってしまう。また、基板表面に対して平行に近づけすぎると隣接する下部電極303上の半導体層または絶縁体層312が壁となってエッチングされなくなる。
【0129】
これらより、エッチングイオンの入射角度としては、基板表面に対して、45度〜60度であることが望ましく、エッチングイオンの基板101に対する入射角度を調整することによって、エッチバック後の膜厚差(b1−b2)を調整することが可能である。
【0130】
次に、図23に示すように、例えばスパッタ法を用いて窒化タンタル(TaN)からなる上部電極層211を成膜する。なお、成膜方法としては、スパッタ法だけでなく、CVD法等を用いても良い。
【0131】
次に、図24に示すように、露光プロセスを用いてマスキングして上部電極層211および、半導体層または絶縁体層312をエッチングすることにより、所定の寸法の双方向ダイオード40を形成する。
【0132】
この場合に、上部電極201および半導体層または絶縁体層302の寸法は、露光プロセスにおける位置合せ精度を考慮して、下部電極303より大きくすることが望ましい。
【0133】
以降の工程は、第1の実施の形態の製造工程で示した、図11以降の工程と同様であり、このような工程を経ることによって、マトリクス状に抵抗変化素子10と双方向ダイオード40とを有する、抵抗変化素子アレイ300が形成される(図20)。
【0134】
以上のように、本実施形態による双方向ダイオード40では、図22における膜厚差(b1−b2)を、エッチバック時のミリング角度で調整することができるため、第1の実施の形態に比べ、素子特性の調整範囲が広くなるという効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明にかかる双方向ダイオードは、材料を変更することなく、双方向ダイオードのオン−オフ特性を向上させることができるので、双方向ダイオードを用いる種々の電子機器分野に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】(a)は本発明の第1の実施の形態に係る双方向ダイオードを用いて構成される抵抗変化素子アレイのビット線に平行な断面を示す模式図、(b)は同図(a)のワード線に平行な断面を示す模式図
【図2】(a)は本発明の第1の実施の形態の双方向ダイオードを用いて構成される抵抗変化素子アレイの製造方法において、基板上に第1配線膜を形成する工程を示す上面の模式図、(b)は同図(a)の断面を示す模式図
【図3】(a)は本発明の第1の実施の形態の双方向ダイオードを用いて構成される抵抗変化素子アレイの製造方法において、ワード線を形成する工程を示す上面からの模式図、(b)は同図(a)の断面を示す模式図
【図4】(a)は本発明の第1の実施の形態の双方向ダイオードを用いて構成される抵抗変化素子アレイの製造方法において、第1ビアを形成するまで工程を示す上面からの模式図、(b)は同図(a)の断面を示す模式図
【図5】(a)は本発明の第1の実施の形態の双方向ダイオードを用いて構成される抵抗変化素子アレイの製造方法において、抵抗変化膜を形成する工程を示す上面からの模式図、(b)は同図(a)の断面を示す模式図
【図6】(a)は本発明の第1の実施の形態の双方向ダイオードを用いて構成される抵抗変化素子アレイの製造方法において、下部ビアを形成するまでの工程を示す上面からの模式図、(b)は同図(a)の断面を示す模式図
【図7】(a)は本発明の第1の実施の形態の双方向ダイオードを用いて構成される抵抗変化素子アレイの製造方法において、形状加工前の下部電極を形成する工程を示す上面からの模式図、(b)は同図(a)の断面を示す模式図
【図8】(a)は本発明の第1の実施の形態の双方向ダイオードを用いて構成される抵抗変化素子アレイの製造方法において、下部電極の形状を上に凸型に加工する工程を示す上面からの模式図、(b)は同図(a)の断面を示す模式図
【図9】(a)は本発明の第1の実施の形態の双方向ダイオードを用いて構成される抵抗変化素子アレイの製造方法において、上部電極層を形成する工程を示す上面からの模式図、(b)は同図(a)の断面を示す模式図
【図10】(a)は本発明の第1の実施の形態の双方向ダイオードを用いて構成される抵抗変化素子アレイの製造方法において、双方向ダイオードを形成する工程を示す上面からの模式図、(b)は同図(a)の断面を示す模式図
【図11】(a)は本発明の第1の実施の形態の双方向ダイオードを用いて構成される抵抗変化素子アレイの製造方法において、ビット線を形成する工程を示す上面からの模式図、(b)は同図(a)の断面を示す模式図
【図12】本発明の双方向ダイオードを用いて構成される抵抗変化素子アレイの電気等価回路を示す回路図
【図13】計算機シミュレーションによって計算した、本発明による双方向ダイオードの電圧−電流特性を示す図
【図14】本発明の第1の実施の形態の係る双方向ダイオードの変形例の製造方法において、層間絶縁膜CMPを施す工程を示す断面の模式図
【図15】本発明の第1の実施の形態の係る双方向ダイオードの変形例の製造方法において、双方向ダイオードを形成する工程を示す断面の模式図
【図16】(a)は本発明の第2の実施の形態の双方向ダイオードを用いて構成される抵抗変化素子アレイのビット線に平行な断面を示す模式図、(b)は同図(a)のワード線に平行な断面を示す模式図
【図17】(a)は本発明の第2の実施の形態の双方向ダイオードを用いて構成される抵抗変化素子アレイの製造方法において、形状形成前の下部電極を形成するまでの工程を示す上面からの模式図、(b)は同図(a)の断面を示す模式図
【図18】(a)は本発明の第2の実施の形態の双方向ダイオードを用いて構成される抵抗変化素子アレイの製造方法において、下部電極の形状を上に凸型に加工する工程を示す上面からの模式図、(b)は同図(a)の断面を示す模式図
【図19】(a)は本発明の第2の実施の形態の双方向ダイオードを用いて構成される抵抗変化素子アレイの製造方法において、ビット線を形成する工程を示す上面からの模式図、(b)は同図(a)の断面を示す模式図
【図20】本発明の第3の実施の形態の双方向ダイオードを用いて構成される抵抗変化素子アレイの断面視における構成の一例を示すビット線に平行な断面を示す模式図
【図21】本発明の第3の実施の形態の双方向ダイオードを用いて構成される抵抗変化素子アレイの製造方法において、均一な膜厚を有する半導体層または絶縁体層を形成するまでの工程を示す断面の模式図
【図22】本発明の第3の実施の形態の双方向ダイオードを用いて構成される抵抗変化素子アレイの製造方法において、半導体層または絶縁体層を加工し、膜厚差を形成するまでの工程を示す断面の模式図
【図23】本発明の第3の実施の形態の双方向ダイオードを用いて構成される抵抗変化素子アレイの製造方法において、上部電極層211を形成するまでの工程を示す断面の模式図
【図24】本発明の第3の実施の形態の双方向ダイオードを用いて構成される抵抗変化素子アレイの製造方法において、双方向ダイオードを形成する工程を示す断面の模式図
【図25】従来技術による双方向ダイオードの断面構成の一例を示す模式図
【符号の説明】
【0137】
10 抵抗変化素子
20,30,40,50 双方向ダイオード
100,200,300 双方向ダイオードを備える抵抗変化素子アレイ
101 基板
102 第1配線膜
110 ビット線
111 ワード線
121 第1ビア
122 下部ビア
123 上部ビア
105 層間絶縁膜
201 上部電極
202,302 半導体層または絶縁体層
203,303 下部電極
203’,303’ 凸型形状加工前の下部電極
211 上部電極層
212,312 半導体層または絶縁体層
222 凸型下部ビア
402 基板
404 下部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上方に形成された下部電極と、
前記下部電極上に形成された半導体層または絶縁体層と、
前記半導体層または絶縁体層上に形成された上部電極とを備え、
前記下部電極の端部上の前記半導体層または絶縁体層の膜厚が、前記下部電極の中央部上の前記半導体層または絶縁体層の膜厚より薄く形成されていること、
を特徴とする双方向ダイオード。
【請求項2】
前記下部電極と前記半導体層または絶縁体層との界面が上部電極側に向かって凸型に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の双方向ダイオード。
【請求項3】
前記半導体層または絶縁体層および前記上部電極が、前記下部電極の上部全面を覆うように形成されていること、
を特徴とする請求項2に記載の双方向ダイオード。
【請求項4】
電気パルスの印加によりその電気抵抗値が変化しかつ前記変化した後、電気パルスの印加をやめても電気抵抗値を維持する抵抗変化素子と、
前記抵抗変化素子に直列に接続され、前記電気パルスの印加時に流れる電流を制御する双方向ダイオードと、を備える記憶素子であって、
前記双方向ダイオードは、下部電極と、上部電極と、前記下部電極と前記上部電極との間に配設された半導体層または絶縁体層と、を備え、
前記双方向ダイオードの、前記下部電極の端部上の前記半導体層または絶縁体層の膜厚が、前記下部電極の中央部上の前記半導体層または絶縁体層の膜厚より薄く形成されていること、
を特徴とする記憶素子。
【請求項5】
複数の請求項4に記載の記憶素子と、
複数のビット線と、
前記複数のビット線に各々立体交差する複数のワード線と、を備え、
前記複数の記憶素子が、前記ビット線と前記ワード線とが立体交差する各々の部分に配設され、前記各々の部分において、前記記憶素子の一端がその対応する前記ビット線に、前記記憶素子の他端がその対応する前記ワード線に、各々接続されている、記憶装置。
【請求項6】
基板に対して水平な表面を有する下部電極を形成する工程と、
前記下部電極の中央部上の前記半導体層または絶縁体層の膜厚より、前記下部電極の端部上の前記半導体層または絶縁体層の膜厚が薄くなるように前記半導体層または絶縁体層を前記下部電極上に堆積する工程と、
前記半導体層または絶縁体層の上に上部電極膜を堆積する工程と、
を備えることを特徴とする双方向ダイオードの製造方法。
【請求項7】
前記下部電極を形成する工程は、
基板に対して水平な表面を有する下部電極を形成する工程と、
前記下部電極の半導体層または絶縁体層側の表面が前記上部側に向かって凸型になるように下部電極を形成する工程を有する請求項6に記載の双方向ダイオードの製造方法。
【請求項8】
前記下部電極を形成する工程は
前記基板に層間絶縁膜を堆積する工程と、
前記層間絶縁膜にホールを形成する工程と、
前記ホール内及び前記層間絶縁膜の上に下部電極膜を堆積する工程と、
CMP法を用いて前記下部電極膜表面を研磨して、前記ホール内のみに下部電極を形成する工程と、
前記ホール内から下部電極が露出するまで前記層間絶縁膜の表面のみを選択的にエッチングして、前記層間絶縁膜の表面の高さを、前記下部電極の表面の高さより低くする工程と、
ウェハを自転させながら、基板表面に対して30度〜60度の範囲の入射角度でエッチングイオンを入射させるイオンミリング法を用いて、前記下部電極の半導体層または絶縁体層側の表面を上部電極側に向かって凸型に形成する工程とからなる請求項7に記載の双方向ダイオードの製造方法。
【請求項9】
前記下部電極の半導体層または絶縁体層側の表面を上部電極側に向かって凸型に形成する工程において、反応性ドライエッチング法を用いることを特徴とする、請求項7に記載の双方向ダイオードの製造方法。
【請求項10】
前記半導体層または絶縁体層を堆積する工程は、
凸型に形成された前記下部電極の上に堆積表面の角度に対して堆積レートが異なる成膜法を用いることを特徴とする、
請求項7〜9のいずれかに記載の双方向ダイオードの製造方法。
【請求項11】
前記半導体層または絶縁体層を堆積する工程は、
ターゲットから飛散する粒子の方向性を揃えた成膜方法を用いることを特徴とする、
請求項7〜9のいずれかに記載の双方向ダイオードの製造方法。
【請求項12】
前記半導体層または絶縁体層を堆積する工程は、
スパッタ法またはCVD法を用いて半導体層または絶縁体層を堆積する工程と、
前記半導体層または絶縁体層の表面をエッチバックする工程を有することを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の双方向ダイオードの製造方法。
【請求項13】
前記半導体層または絶縁体層の表面をエッチバックする工程は、ウェハを自転させながら、基板表面に対して45度〜60度の範囲の入射角度でエッチングイオンを入射させるイオンミリング法を用いることを特徴とする請求項12に記載の双方向ダイオードの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2010−50124(P2010−50124A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−210413(P2008−210413)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】