説明

収穫機

【課題】 作業走行の際も移動走行の際も前方を適切に照明しながら走行することができる収穫機を、構造面及び操作面で有利な状態に得る。
【解決手段】 自走機体に対して下降作業状態と上昇非作業状態とに揺動昇降操作自在に連結された収穫前処理部10に前照灯装置20を固設してある。収穫前処理部10が下降作業状態に下降された状態において、前照灯装置20が固定分草具12及び固定分草具12の前方の地面上を照射し、収穫前処理部10が上昇非作業状態に上昇された状態において、収穫前処理部10が下降作業状態にある場合よりも自走機体から前方側に離れた地面上を前照灯装置20が照明するように、前照灯装置20の照射向きを設定してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収穫前処理部を下降作業状態と上昇非作業状態とに揺動昇降操作自在に自走機体の前部に連結した収穫機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記収穫機において、従来、たとえば特許文献1に示されるように、ヘッドライト1の支持アーム2を、刈取部Aの側方カバー13に対して支点02中心に回動するように枢着し、支持アーム2に連結した引張ばね14を備えるとともに、刈取部Aを回動支点01中心に回動自在に枢支する支持部10と、支持アーム2とを連結するワイヤー4を備え、刈取部Aを上げても下げても、ワイヤー4や引張ばね14の作用によってヘッドライト1の向きが変化しないものがあった。
【0003】
【特許文献1】実開昭63−23143号公報(2−5頁、第1−3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記収穫機にあっては、収穫前処理部の前端部に固定された分草具やその前方の地面上が照射されるように前照灯装置を収穫前処理部に設けると、夜間でも収穫作業が行ないやすくなる。ところが、収穫前処理部を上昇非作業状態に上昇させた際、収穫前処理部が作業時よりも上向きになることから、前照灯装置も上向きになってしまって前方の地面上が照射されなくなると、夜間での移動走行が行いにくくなる。このため上記した従来の技術を採用することにより、収穫前処理部を上昇させても地面上が照射されるようにすると、複雑な前照灯取り付け構造が必要になり、かつ、前照灯装置の向き調節機構が必要になっていた。
【0005】
本発明の目的は、夜間の作業も移動走行も行いやすいものでありながら構造面でも操作面でも有利な状態に得ることができる収穫機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本第1発明にあっては、収穫前処理部を下降作業状態と上昇非作業状態とに揺動昇降操作自在に自走機体の前部に連結した収穫機において、
収穫前処理部に前照灯装置を固設する。収穫前処理部が下降作業状態にあると、前照灯装置が収穫前処理部の固定分草具、及び、この固定分草具より前方の地面上を照射し、収穫前処理部が上昇非作業状態にあると、収穫前処理部が下降作業状態にある場合よりも自走機体から前方に離れた地面上を前照灯装置が照射するように、前照灯装置の照射向きを設定してある。
【0007】
すなわち、収穫前処理部を下降作業状態に下げると、前照灯装置の照射向き設定のために前照灯装置が固定分草具及びこれの前方の地面上を照射し、収穫前処理部を上昇非作業状態に上昇させると、前照灯装置の照射向き設定により、収穫前処理部が下降作業状態にある場合よりも前方に離れた地面上を前照灯装置が照射するものだから、前照灯装置を収穫前処理部に対して固設するだけの構造簡単な取り付け構造によって取り付けても、かつ収穫前処理部を下降作業状態にした場合も上昇非作業状態にした場合も所望の固定分草具や地面上が照射されるように前照灯装置の照射向きを調節する調節機構や調節手間を不要にしながら、作業時においては、固定分草具及びその前方の地面上が照明されて固定分草具やその付近の状況を見やすくすることができ、移動時においては、作業時よりも前方の地面上が照明されて走行先を見やすくすることができる。
【0008】
従って、本第1発明によれば、夜間であっても、固定分草具を所望どおりの位置や作用状態になるように調節するのに、固定分草具やその付近の状況が見やすくて容易にかつ精度よく調節できて作業することができ、かつ、収穫前処理部を上昇非作業状態に上げても作業時よりも前方の地面上が見やすくて移動走行することできるものである。それでありながら、前照灯装置の取り付け構造を簡略化するとともに前照灯装置の照射向き調節機構を不要にした構造簡単なものにして安価に得ることができ、かつ、照射向きの調節操作を行なわなくとも収穫前処理部を昇降操作するだけで済んで操作面でも有利なものに得ることができる。
【0009】
本第2発明にあっては、本第1発明の構成において、前照灯装置が、第1前照灯、及びこの第1前照灯より照射向きが下向きの第2前照灯を備えて構成されている。
【0010】
すなわち、作業や移動の際に必要な照明範囲が、照射向きの異なる第1前照灯と第2前照灯とで成る前照灯装置によって照明され、いずれか一方の前照灯で成る前照灯装置によって照明されるに比して、照明範囲全体にわたって明るく照明されるものである。
【0011】
従って、本第2発明によれば、固定分草具や地面上が明るく照明され、分草具やその付近、走行先の状況をより見やすくて作業や移動がより行ないやすくなる。
【0012】
本第3発明にあっては、本第2発明の構成において、第1前照灯が第2前照灯より収穫前処理部の機体上方側に配置されている。
【0013】
すなわち、第1前照灯が第2前照灯より収穫前処理部の機体上方側に位置するものだから、両前照灯が機体横方向に並ぶものに比し、第1及び第2前照灯の設置に必要な機体横方向でのスペースを小に済ませながら両前照灯を設置することができる。
【0014】
照射向きが下向きの方の第2前照灯を第1前照灯より機体上方側に配置すると、第2前照灯による固定分草具の照射が可能になるように第2前照灯を第1前照灯より機体前方側に突出させる必要があり、前照灯装置の前面側が機体側面視で凹凸面になる。これに対して、照射向きが上向きの方の第1前照灯が第2前照灯より機体上方側に位置するものだから、第2前照灯が第1前照灯より機体前方側に突出せず、前照灯装置の前面が機体側面視で平坦面やそれに近い状態になるようにしながら、固定分草具及びその前方を照射されるようにすることができる。
【0015】
従って、本第3発明によれば、固定分草具及びその前方が第1及び第2前照灯によって明るく照明されるものでありながら、前照灯装置を機体横方向でのスペースが小さい設置スペースにコンパクトに配置することでき、かつ、前照灯装置の前面側が機体側面視で平坦面やそれに近い状態になった簡素な状態に得ることができる。
【0016】
本第4発明にあっては、本第2又は第3発明の構成において、第1前照灯及び第2前照灯が点灯する両灯火状態と、第1前照灯が消灯し、第2前照灯が点灯する片灯火状態とに切り換え自在に構成してある。
【0017】
すなわち、収穫前処理部が上昇非作業状態にされた場合、下降作業状態にされた場合に比し、第1前照灯も第2前照灯も上向きになって対向車を照射しやすくなる。このとき、片灯火状態に切り換えると、第2前照灯よりも上向きの第1前照灯が消灯し、第2前照灯が点灯した状態になり、第1前照灯による対向車の照射を回避しながら前方を照明することができる。
【0018】
従って、本第4発明によれば、作業時には両灯火状態に切り換えることにより、固定分草具や地面上を第1及び第2前照灯によって明るく照明して作業しやすいものでありながら、移動時には、片灯火状態に切り換えることにより、第1前照灯による対向車の照射を回避して対向車を強く照射しないように配慮した状態で走行することができる。
【0019】
本第5発明にあっては、本第1〜本第4発明のうちのいずれか一つの構成において、前方に突出する分草爪が上昇駆動されるように構成された強制分草装置を、収穫前処理部の前部における前照灯装置の前方に備えてある。
【0020】
自走機体の進行方向に対して作物が左右方向に倒伏している場合に収穫機では、前方に突出する分草爪が上昇駆動されるように構成された強制分草装置を、収穫前処理部の前部に備えて、強制分草装置により左右方向に倒伏した作物を起こしながら、収穫前処理部により作物を収穫することがある。
これにより、本第5発明によれば、前照灯装置により強制分草装置も照射されることになるので、強制分草装置やその付近の状況を見やすくすることができる。
【0021】
従って、本第5発明によれば、夜間であっても、強制分草装置を所望どおりの位置や作用状態になるように調節するのに、強制分草装置やその付近の状況が見やすくて容易にかつ精度よく調節することができるようになる。
【0022】
本第6発明にあっては、本第5発明の構成において、前照灯装置の上下中間部の前方に強制分草装置の上端部を位置させて、前照灯装置の上下中間部から下方に強制分草装置を備えてある。
【0023】
前述のように強制分草装置を収穫前処理部の前部における前照灯装置の前方に備える場合、前照灯装置の照射が強制分草装置によって遮られるような状態になることが考えられる。
これにより、本第6発明によれば、前照灯装置の上下中間部から上方は強制分草装置によって遮られていないので、前照灯装置の照射が強制分草装置によって全て遮られると言うような状態は生じない。特に本第3発明の場合、第1前照灯の前方が強制分草装置によって遮られないようにすることができるので、第1前照灯による前方の地面上の照射が無理なく行われるようになる。
【0024】
従って、本第6発明によれば、強制分草装置を収穫前処理部の前部における前照灯装置の前方に備える場合、前照灯装置の照射が強制分草装置によって全て遮られると言うような状態を避けることができて、作業や移動がより行いやすくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、クローラ走行装置1によって自走し、かつ運転座席2を有した運転部3などを備えた自走機体の機体フレーム4の前部に、刈取り前処理部10の前処理部フレーム11の基部を回動自在に連結するとともに、この前処理部フレーム11にリフトシリンダ5を連動させ、機体フレーム4の後部側に脱穀装置6及び穀粒タンク7を設けて、稲、麦などを収穫するコンバインを構成してある。
【0026】
すなわち、リフトシリンダ5を伸縮操作すると、このリフトシリンダ5が前処理部フレーム11を機体フレーム4に対して上下に揺動操作し、刈取り前処理部10を固定分草具12などが地面上近くに位置した下降作業状態と、固定分道具12などが地面上から高く上昇した上昇非作業状態とに自走機体に対して揺動昇降操作する。刈取り前処理部10を下降作業状態にして自走機体を走行させると、刈取り前処理部10は、図2,3の如く刈取り前処理部10の前端部にこの刈取り前処理部10の機体横方向に並べて固定された複数個の固定分草具12によって植立穀稈を刈取り対象と非刈取り対象とに分草し、かつ、複数の刈取り対象の植立穀稈列の植立穀稈を後方の所定の引起し経路(図示せず)に入るように分草し、固定分草具12からの植立穀稈を、各引起し経路に上端側ほど機体後方側に位置する若干後上がり状態の傾斜姿勢で設けた引起し装置13の引起し爪13aによって引起し処理するとともに、引起し経路の終端部に位置するバリカン形の刈取装置14によって刈取り処理し、刈取装置14からの刈取穀稈を供給装置15によって機体後方向きに搬送して脱穀装置6の脱穀フィードチェーン6aの始端部に供給する。脱穀装置6は、脱穀フィードチェーン6aによって刈取穀稈の株元側を機体後方側に挟持搬送しながらその穂先側を扱室(図示せず)に供給して脱穀処理する。穀粒タンク7は、脱穀装置6からの脱穀粒を回収して貯留していくようになっている。
【0027】
図2などに示すように、刈取り前処理部10の前部の両横側であって、前処理部機体の横方向に並ぶ複数の引起し装置13のうちの最も機体横外側に位置する引起し装置13の上端部のやや機体横外側に位置する部位に、前照灯装置20を固設してある。
【0028】
図2,3,4に示すように、左右の前照灯装置20は、前処理サイドカバー16の機体前方向きの前向き板部16aと、機体横外向きの横向き板部16bとにわたって切欠きを形成することによって、前処理サイドカバー16に設けた組み付け孔17に組み付けてある。これにより、左右の前照灯装置20は、前処理サイドカバー16の前向き板部16aと横向き板部16bとによってかこまれた隅部に位置しており、かつ、前照灯装置20のレンズ21が前処理サイドカバー16の前向き板部16a及び横向き板部16bから突出しないとかあまり突出しなくなっている。
【0029】
図3などに示すように、左右の前照灯装置20は、前処理部機体の上下方向に並ぶ一対の前照灯22,23を備えて構成してある。左右の前照灯装置20における上下一対の前照灯22,23のうちの前処理部機体上方側に位置する第1前照灯22も、前処理部機体下方側に位置する第2前照灯23も、前処理サイドカバー16の組み付け孔17の内部に配置して前処理サイドカバー16に固定されたリフレクタ22a,23a、図4の如くこのリフレクタ22a,23aの底部に位置するバルブ支持部22b,23bに取り付けたバルブ22c,23c、リフレクタ22a,23aの前側に固定されたレンズ21を備えて構成してある。第1前照灯22のリフレクタ22aと、第2前照灯23のリフレクタ23aとは、一体部品に成形してある。第1前照灯22のレンズ21と、第2前照灯23のレンズ21とは、一体部品に成形してある。
【0030】
図6に刈取り前処理部10が下降作業状態に下降された際に左右の前照灯装置20によって照射される自走機体平面視での照射範囲を示し、図5(a)に刈取り前処理部10が下降作業状態に下降された際に左右の前照灯装置20が照射する自走機体側面視での照射範囲を示し、図5(b)に刈取り前処理部10がストロークエンドまで上昇した上昇非作業状態に上昇された際に左右の前照灯装置20が照射する自走機体側面視での照射範囲を示すように、刈取り前処理部10が下降作業状態に下降された際、左側の前照灯装置20がこれの第1前照灯22と第2前照灯23とにより、車体横方向に並ぶ固定分草具12のうちの最も車体左横外側に位置する固定分草具12及びこの固定分草具12の左横外側方と前方の地面上を照射する照射範囲LDを照射し、右側の前照灯装置20がこれの第1前照灯22と第2前照灯23とにより、車体横方向に並ぶ前記固定分草具12のうちの最も車体右横外側に位置する固定分草具12及びこの固定分草具12の右横外側方と前方の地面上を照射する照射範囲RDを照射する。刈取り前処理部10がストロークエンドまで上昇された上昇非作業状態に上昇された際、左側の前照灯装置20がこれの第1前照灯22と第2前照灯23とにより、刈取り前処理部10が下降作業状態にある場合の照射範囲LDよりも自走機体から前方に離れた地面上を照射する照射範囲LUを照射し、右側の前照灯装置20がこれの第1前照灯22と第2前照灯23とにより、刈取り前処理部10が下降作業状態にある場合の照射範囲RDよりも自走機体から前方に離れた地面上を照射する照射範囲RUを照射するように、左右の前照灯装置20を次の如く構成してある。
【0031】
すなわち、図4に示すように、左側の前照灯装置20において、この前照灯装置20の自走機体平面視での照射向きがやや左横外向きの照射向きになるように、第1前照灯22及び第2前照灯23のバルブ22c,23c及びリフレクタ22a,23aを、自走機体の前後向きに対して約15度の傾斜角度Aで左横外向きに傾斜した取り付け姿勢で支持させてある。
【0032】
右側の前照灯装置20において、図示しないが、この前照灯装置20の自走機体平面視での照射向きがやや右横外向きの照射向きになるように、第1前照灯22及び第2前照灯23のバルブ22c,23c及びリフレクタ22a,23aを、左側の前照灯装置20と同様に自走機体の前後向きに対して約15度の傾斜角度Aで右横外向きに傾斜した取り付け姿勢で支持させてある。
【0033】
左側の前照灯装置20においても、右側の前照灯装置20においても、第2前照灯23のリフレクタ23aの照射方向を、第1前照灯22のリフレクタ22aの照射方向より下向きに設定することにより、第2前照灯23の照射向きを第1前照灯22の照射向きより下向きに設定してある。つまり、刈取り前処理部10が下降作業状態に下降された場合においても、上昇作業状態に上昇された場合においても、前処理部機体上方側に位置する第1前照灯22と、前処理部機体下方側に位置する第2前照灯23とは、第2前照灯23による照射範囲が第1前照灯22による照射範囲よりも自走機体後方側に位置する状態になって照明するように設定してある。
【0034】
左右の前照灯装置20,20のための操作スイッチ30を運転部3に設けてある。
図7に示すように、操作スイッチ30は、操作具31が消灯位置OFF、第1点灯位置ON1、第2点灯位置ON2の3つの操作位置に回転操作自在に備えられた切り換えスイッチで成り、操作具31を消灯位置OFFに操作することにより、左右の前照灯装20,20を第1前照灯22も第2前照灯23も消灯した消灯状態に切り換え操作し、操作具31を第1点灯位置ON1に操作することにより、左右の前照灯装置20,20を第1前照灯22が消灯し、第2前照灯23が点灯した片灯火状態に切り換え操作し、操作具31を第2点灯位置ON2に操作することにより、左右の前照灯装置20,20を第1前照灯22も第2前照灯23も点灯した両灯火状態に切り換え操作するようになっている。
【0035】
つまり、作業走行を行なう際、操作スイッチ30の回転操作具31を第2点灯位置ON1に操作しておく。すると、左右の前照灯装置20,20が第1前照灯22も第2前照灯23も点灯した両灯火状態になる。そして、作業時には刈取り前処理部10が下降作業状態に下降されることから、左側の前照灯装置20によって最も左横端の固定分草具12及びこの固定分草具12の前方の地面上が照明され、右側の前照灯装置20によって最も右横端の固定分草具12及びこの固定分草具12の前方の地面上が照明されてその左右の固定分草具12やその付近の状況が見やすくなり、夜間でも固定分草具12の植立穀稈に対する位置合わせを容易に行いながら作業することができる。このとき、左右の前照灯装置20,20のレンズ21が前処理サイドカバー16の前向き板部16a及び横向き板部16bから突出しないとか、あまり突出しないことにより、穀稈が各前照灯装置20のレンズ21に引っ掛かることを回避しながら作業できる。
【0036】
移動走行を行なう際、刈取り前処理部10が上昇非作業状態に上昇操作されて左側の前照灯装置20も右側の前照灯装置20も作業時よりも上向きになるが、左側の前照灯装置20も右側の前照灯装置20もこれらの照射向き設定のために作業時よりも自走機体から前方に離れた地面上を照射する。これにより、左右の前照灯装置20,20によって作業時よりも前方の地面上が照明されて走行先を容易に見ながら走行することができる。このとき路上などでは、操作スイッチ30の操作具31を第1点灯位置ON1に操作すると、左右の前照灯装置20,20は、第1前照灯22が消灯した片点灯状態に切り換わり、第1前照灯22による対向車の照射を回避した状態で前方を照明しながら走行することができる。
【0037】
[発明の実施の第1別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]に示すコンバインにおいて、図8及び図9に示すような構成を追加してもよい。
図8及び図9に示すように、強制分草装置32が刈取り前処理部10の前部における左の前照灯装置20の前方に固定されている。強制分草装置32は幅狭で縦長の支持ケース32aに、前方に突出する複数の分草爪32bが備えられ、分草爪32bが支持ケース32aに沿って上昇駆動されるようにして構成されている。引起し装置13と強制分草装置32の支持ケース32aの上部に亘って伝動ケース33が連結されており、引起し装置13の動力が伝動ケース33に内装された伝動軸(図示せず)を介して強制分草装置32に伝達される。
【0038】
図8及び図9に示すように、強制分草装置32(支持ケース32a)の上端部が、左の前照灯装置20の上下中間部(第1前照灯22と第2前照灯23との間)の前方に位置しており、左の前照灯装置20の上下中間部(第1前照灯22と第2前照灯23との間)から下方に強制分草装置32が備えられている。これにより左の前照灯装置20において、第2前照灯23の前方に強制分草装置32(支持ケース32a)が存在し、第1前照灯22の前方には強制分草装置32(支持ケース32a)が存在しない状態となる。
【0039】
図8に示すように、自走機体の後部の上部にバックミラー34及び後方灯35が固定されており、運転部3からバックミラー34を介して自走機体の後方下方を目視することができるのであり、後方灯35が自走機体の後方下方を照射する。この場合、図7に示す操作具31を第2点灯位置ON2に操作した状態(左右の前照灯装置20において第1及び第2前照灯22,23が点灯した両灯火状態)において、自走機体を前進させると、第1及び第2前照灯22,23の両点灯状態で、後方灯35が消灯し、自走機体を後進させると、第2前照灯23が消灯し(第1前照灯22は点灯)、後方灯35が点灯するように構成されている。
【0040】
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]及び[発明の実施の第1別形態]において前照灯装置20を刈取り前処理部10の両横側に設ける他、刈取り前処理部10の運転部3から近い側又は離れた方の片側のみに設けて実施してもよく、この場合にも本発明の目的を達成することができる。前照灯装置20において第1及び第2前照灯22,23を上下方向に配置するのではなく、横方向に並べて配置してもよい。
【0041】
コンバインの他、玉ねぎ、人参など各種の作物を収穫する作業機にも本発明を適用することができる。従って、刈取り前処理部10を収穫前処理部10と呼称し、玉ねぎ、人参などを収穫する作業機やコンバインなどを総称して収穫機と呼称する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】コンバイン全体の側面図
【図2】刈取り前処理部の正面図
【図3】刈取り前処理部の前照灯配設部を示す斜視図
【図4】前照灯の断面図
【図5】(a)は、刈取り前処理部の下降作業状態での前照灯の照明状態を示す側面図、(b)は、刈取り前処理部の上昇非作業状態での前照灯の照明状態を示す側面図
【図6】刈取り前処理部の下降作業状態での前照灯の照明状態を示す平面図
【図7】操作スイッチの平面図
【図8】発明の実施の第1別形態のコンバイン全体の側面図
【図9】発明の実施の第1別形態の刈取り前処理部の正面図
【符号の説明】
【0043】
10 収穫前処理部
12 固定分草具
20 前照灯装置
22 第1前照灯
23 第2前照灯
32 強制分草装置
32b 分草爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収穫前処理部を下降作業状態と上昇非作業状態とに揺動昇降操作自在に自走機体の前部に連結した収穫機であって、
前記収穫前処理部に前照灯装置を固設するとともに、収穫前処理部が下降作業状態にあると、前記前照灯装置が収穫前処理部の固定分草具、及び、この固定分草具より前方の地面上を照射し、収穫前処理部が上昇非作業状態にあると、収穫前処理部が下降作業状態にある場合よりも自走機体から前方に離れた地面上を前記前照灯装置が照射するように、前記前照灯装置の照射向きを設定してある収穫機。
【請求項2】
前記前照灯装置が、第1前照灯、及び、この第1前照灯より照射向きが下向きの第2前照灯を備えて構成されている請求項1記載の収穫機。
【請求項3】
前記第1前照灯が前記第2前照灯より収穫前処理部の機体上方側に配置されている請求項2記載の収穫機。
【請求項4】
前記第1前照灯及び前記第2前照灯が点灯する両灯火状態と、前記第1前照灯が消灯し、前記第2前照灯が点灯する片灯火状態とに切り換え自在に構成してある請求項2又は3記載の収穫機。
【請求項5】
前方に突出する分草爪が上昇駆動されるように構成された強制分草装置を、前記収穫前処理部の前部における前照灯装置の前方に備えてある請求項1〜4のうちのいずれか一つに記載の収穫機。
【請求項6】
前記前照灯装置の上下中間部の前方に強制分草装置の上端部を位置させて、前記前照灯装置の上下中間部から下方に強制分草装置を備えてある請求項5記載の収穫機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−6319(P2006−6319A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−147950(P2005−147950)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】