説明

収納物搬入装置、農産物収穫機

【課題】 特に新たな駆動機構を追加することなく、簡易且つ低コストに、タンクやコンテナ等の収納容器内に均平に収納物を搬入する。
【解決手段】 収納容器Tの投入口に終端位置が臨み、エンドレスの搬送体11を備えたコンベヤ10を備え、搬送体11に接してこれを移動させる回転伝動要素12の周速度に速度ムラを生じさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク,コンテナ等の収納容器に収納物を搬入する収納物搬入装置、或いは収納容器を搭載した農産物収穫機に関する。
【背景技術】
【0002】
タンク,コンテナ等の収納容器に収納物を搬入するには、一般に、バケットエレベータ,ロータリバケット等の揚上装置とコンベヤ等の搬送装置を組み合わせて、所定の高さに位置する収納容器の投入口まで収納物を揚上し、搬送装置の終端を投入口に臨ませて、収納物を収納容器内に投入するようにしている。農産物の収穫機、特に根菜類収穫機を例にすると、掘り取り部によって地中から掘り上げられた根菜類を選別・搬送装置上で根菜類と土等に分離しながら搬送し、搬送された収穫物をロータリバケット内に落下させて所定の高さまで揚上し、更に搬送装置上に落下させて、この搬送装置の終端から収穫物をタンク内に投入するようにしている。
【0003】
この際に、大型化した収納容器に対して、投入口に臨む搬送装置の終端位置が固定されていると、収納容器の内に収納物が偏って堆積されて山を作ってしまい、収納容器の大きな容積を効率的に活用できない問題が生じる。
【0004】
特に、前述した根菜類収穫機のような農産物収穫においては、近年、機械の大型化が進んでおり、それに伴ってタンク等の収納部も当然大型化している。この際に、前述のような問題が生じると、大型化したタンク等の収納部の容積に満たない積載量で収納部がオーバーフローすることになり、連続作業をその都度中止しなければならなくなるので、大型化による作業効率の向上が達成できなくなってしまう問題が生じる。
【0005】
この問題に対しては従来から各種の提案が成されている。例えば、下記特許文献1には、コンテナの開口に臨む根菜選別装置の終端を左右に揺動させるようにして、コンテナ内に収穫物を均等満載するようにした玉葱収穫機が記載されており、下記特許文献2には、拾い上げられた農産物を後方に運搬する選別コンベヤの後端に隣接して、農産物を左右外側に振り分けてコンテナ内に落下させる回転ローラを設けた農産物収穫機が記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−136207号公報
【特許文献2】特開2004−154070号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述した従来技術によると、新たな駆動機構を要するので、装置が複雑化すると共に、部品点数が増えることになり、コストアップと重量増の問題が生じる。また、ある程度凹凸のある圃場を移動する収穫機に搭載されるタンクやコンテナへの収納を考えると、移動中に生じる振動によってある程度収納物の均平化がなされることもあるので、前述の従来技術のように新たな駆動機構を追加することはオーバースペックであり、簡易且つコストアップを招かない解決手段の提案が望まれていた。
【0008】
本発明は、このような事情に対処するために提案されたものであって、特に新たな駆動機構を追加することなく、簡易且つ低コストに、タンクやコンテナ等の収納容器内に均平に収納物を搬入できる収納物搬入装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために、本発明は、一つには、収納容器内に収納物を搬入する収納物搬入装置であって、前記収納容器の投入口に終端位置が臨み、エンドレスの搬送体を備えたコンベヤを備え、前記搬送体を移動させる回転伝動要素の周速度に速度ムラを生じさせることを特徴とする。
【0010】
また、一つには、前述した特徴に併せて、前記回転伝動要素は、偏芯状態で回動されるスプロケットであることを特徴とする。
【0011】
また、一つには、前述した特徴に併せて、前記回転伝動要素は、外周が楕円形状を有するスプロケットであることを特徴とする。
【0012】
更に、本発明は、前述した特徴を有する収納物搬入装置を備えた農産物収穫機であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
このような特徴によると、収納容器の投入口に終端位置が臨み、エンドレスの搬送体を備えたコンベヤを備え、前記搬送体を移動させる回転伝動要素の周速度に速度ムラを生じさせることにより、搬送体の移動速度にムラが生じることになる。これによって、収納容器内に投入される収容物の投げ入れ速度にばらつきが生じ、収納容器内での偏った堆積が解消される。
【0014】
そして、このような作用を得るための改良としては、コンベヤを構成する一つの回転伝動要素を変更するだけでよいから、特に新たな駆動機構を追加することなく、簡易且つ低コストに、これを実現することができる。
【0015】
特に、農産物収穫機にこの収納物搬入装置を採用した場合には、圃場を移動する際に圃場の凹凸から機体が受ける振動と相俟って、収容物の投げ入れ速度に更に大きなばらつきが生じ、落下後にもこの振動によって収納物の均平化がなされることになるので、最小限の改良で実用的な効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る収納物搬入装置を説明する説明図である。収納容器T内に各種の収納物を搬入する収納物搬入装置は、収納容器Tの投入口に終端位置が臨み、エンドレスの搬送体11を備えたコンベヤ10を備え、この搬送体10に接してこれを移動させるスプロケット等の回転伝動要素12の周速度に速度ムラを生じさせている。
【0017】
この際、コンベヤ10の構成自体は従来技術と変わりが無く、両端部に配備される両端支持輪13A,13Bに巻き回された搬送体11と、これを支持する支持ローラ14A〜14F或いはテンションローラ15A〜15D等からなる(フレーム等の支持構造は図示省略している)。ここでは、搬送体11の中間位置にテンションローラ15A〜15Dによって巻き付き部を形成して、そこに動力が伝達される回転伝動要素12が噛み合うようにしている。当然ながら、回転伝動要素12の伝動軸は機体フレームに軸受けを介して支持されており、駆動軸からベルト伝動機構等を介して回転駆動されるようになっている。
【0018】
ここでは、搬送体11の中間位置に周速度ムラを生じる回転伝動要素12を設けているが、搬送体11の一方の端部を動力伝達要素として、それを同様の回転伝動要素12とすることもできる。
【0019】
図2に、回転伝動要素12をスプロケットとした場合の具体例を示す。同図(a)に示す例は、スプロケット12Aの伝動軸Oをe(10ミリ程度)だけ偏芯させたもので、偏芯状態で回転することによって、周速度に速度ムラを生じさせるものである。また、同図(b)に示す例は、スプロケット12Bの外周が長径aと短径bからなる楕円形状を有するようにしたもので、これを伝動軸Oの周りに回動させることで、周速度に速度ムラを生じさせるものである。これらの例では、振れ回りするスプロケット12A,12Bと搬送体11との接触が外れないように、テンションローラ15A,15Bに所望のばね付勢がなされている。
【0020】
このように、搬送体11に動力を伝える回転伝動要素12の周速度に速度ムラを生じさせることで、搬送体11の移動速度にムラが生じ、これによって、収納容器T内に投入される収容物の投げ入れ速度にばらつきが生じて、収納容器T内での偏った堆積が解消されることになる。
【0021】
図3は、前述した実施形態に係る収納物搬入装置を採用することができる農産物収穫機を説明する説明図である。本発明の収納物搬入装置は、特に用途が限定されるものではなく、移動機体に搭載されたタンクやコンテナ等の収納容器への搬入を行うものであっても、施設内に配備された固定のタンクやコンテナ等の収納容器への搬入を行うものであってもよいが、特に、圃場を移動しながら収穫物を収納タンク内に搬入する農産物収穫機に採用することで実用的な効果を得ることができる。
【0022】
ここでは、農産物収穫機の一例としてビート収穫機を例に機体の構成例を説明する。一般に、ビート収穫機100は、機体100aに、地中のビートを掘り上げる掘り上げ部と、掘り上げられたビートを搬送する搬送部と、搬送されたビートを収納する収納部とからなる基本構成を備えている。
【0023】
各部の構成を具体的に説明すると、機体100aの左右両側は車輪101で支持されており、機体100aの前部下方から後方へ向けて配備される堀上げコンベヤ102を備え、その前端部に固定された堀取り刃103とその両側に配設されるロータリコールタ104によって掘り取り口105が形成されている。掘り上げコンベヤ102Aの上方には揚上押えコンベヤ106が配備され、これらの後方に搬送分離コンベヤ102Bを介してロータリエレベータ107が配備され、その上方受け部に搬入コンベヤ108の始端部が配備され、この搬入コンベヤ207の終端部に収納タンク109の投入口が配備されている。
【0024】
これによって、ビート収穫機100を畦に沿って牽引することで、掘り取り口105で掘り取られたビートが、掘り上げコンベヤ102A又は揚上押えコンベヤ106,搬送コンベヤ102B,ロータリエレベータ107,搬入コンベヤ108からなる搬送部を介して収納タンク109に投入されるようになっている。110は収納タンク109の前後に設けられた単動形のタンク油圧シリンダであり、これを延伸すると収納タンク109が上昇し、収納されたビート等を排出できるようになっている。111はトラクタからの外部油圧を受けて各部を動作させる油圧制御ユニットを示している。また、機体100aはヒッチバー120を介して図示省略のトラクタ(走行機体)の後部ヒッチに連結されるが、このヒッチバー120は垂直面に摺動する平行リンク機構を形成するリンクバー120A,120Bからなり、先端がクレビス121でトラクタのヒッチに連結され、後端が機体100aに首振り自在に枢支されている。
【0025】
このようなビート収穫機100において、収納タンク109の投入口に終端位置が臨む搬入コンベヤ108に前述のコンベヤ10の構成を採用する。これによって、搬入コンベヤ108の搬送体移動速度に速度ムラを生じさせることができるので、収納タンク109に投入される収穫物の投げ入れ速度にばらつきが生じることになる。そして、圃場を移動する際に圃場の凹凸から機体100aが受ける振動と相俟って、収穫物の投げ入れ速度に更に大きなばらつきが生じ、落下後にもこの振動によって収穫物の均平化がなされることになるので、収納タンク109内には全体に亘ってほぼ均等に収穫物が堆積することになる。
【0026】
以上説明したように、本発明の実施形態によると、特に新たな駆動機構を追加することなく、簡易且つ低コストに、タンクやコンテナ等の収納容器内に均平に収納物を搬入することができる。そして、これを農産物収穫機に採用した場合には、搭載した収納タンクへ堆積される収穫物を均平化して、効率よく収納タンクを満載することができるので、大型化によって収穫機械の作業効率を有効に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係る収納物搬入装置の説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係る収納物搬入装置の要部を示す説明図である。
【図3】本発明の実施形態を採用することができる農産物収穫機の説明図である。
【符号の説明】
【0028】
10 コンベヤ
11 搬送体
12 回転伝動要素
12A,12B スプロケット
13A,13B 両端支持輪
14A〜14F 支持ローラ
15A〜15D テンションローラ
100 ビート収穫機(農産物収穫機)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納容器内に収納物を搬入する収納物搬入装置であって、
前記収納容器の投入口に終端位置が臨み、エンドレスの搬送体を備えたコンベヤを備え、前記搬送体を移動させる回転伝動要素の周速度に速度ムラを生じさせることを特徴とする収納物搬入装置。
【請求項2】
前記回転伝動要素は、偏芯状態で回動されるスプロケットであることを特徴とする請求項1記載の収納物搬入装置。
【請求項3】
前記回転伝動要素は、外周が楕円形状を有するスプロケットであることを特徴とする請求項1記載の収納物搬入装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載された収納物搬入装置を備えた農産物収穫機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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