説明

収納装置およびその温度制御方法

【課題】陳列室内の温度を安定に制御できるショーケースを提供する。
【解決手段】陳列室3と、供給ダクト21と、吸引ダクト22と、吸引ダクト22と供給ダクト21とを接続し、エバポレータ31と、送風用のファン32とを少なくとも内蔵した接続ダクト23とを有するショーケース1において、供給ダクト21に冷気の温度を検出する温度センサ34aを設置し、吸引ダクト22に吸気の温度を検出する温度センサ34bを設置し、温度差が大きくなると送風ファン32の出力を上げるファン制御を行う。冷気の風量を増やすことによりエアーカーテンを安定にできるので、陳列室内の温度を安定に制御できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商品を冷却または冷凍した状態で展示するのに適した収納装置およびその温度制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ショーケースの庫内温度制御装置であって、温度センサにより庫内温度を検出し、庫内温度の設定値に対して上下に所定の幅で設定されたサーモディファレンシャルとの比較結果により電磁弁の弁駆動部を介して冷凍サイクル内の電磁弁の開閉駆動を制御することが記載されている。
【0003】
特許文献2には、ショーケースの内、オープンショーケースは前面にある開口部、平型ショーケースは上面にある開口部からの熱の侵入が大きく、庫内温度を直接検出して温度制御を行うことは極めて不安定であることが記載されている。そこで、実際に商品が収納される庫内とは隔てられ、外部からの温度影響の少ない冷気通路内に温度センサを挿入して庫内に吐出される吐出冷気の温度を検出し、この吐出冷気の温度と設定温度とを比較して圧縮機を制御し、温度制御をすることが記載されている。
【特許文献1】特開2003−207246号公報
【特許文献2】特開2005−337653号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吐出冷気の温度は、外部からの熱影響が少ないので安定しており、測定には適している。しかしながら、庫内の状況を反映しているとは必ずしも言えない。庫内から吸引した空気を冷凍サイクルにより冷やして吹き出す循環式のショーケースにおいては、吐出冷気の温度は、吸引した空気の温度にも影響されるので、庫内の状況はある程度反映される可能性はある。その一方で、エバポレータに着霜あるいは着氷した状態になると圧力損失が増大して風速が低下するので、冷気(冷風)の風量が低下し、吐出冷気の温度が下がる可能性がある。そのようなときは、吐出冷気の温度だけで制御しようとすると、ますます風量を絞るか、冷凍サイクルの能力を下げるようになるので、庫内の温度を維持することができなくなる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの態様は、商品を冷蔵および/または冷凍した状態で陳列するための陳列室と、陳列室へ冷気を供給するための供給ダクトと、陳列室から空気を吸引するための吸引ダクトと、吸引ダクトと供給ダクトとを接続し、吸引された空気を冷却するための冷却ユニットと、送風用のファンとを少なくとも内蔵した接続ダクトと、供給ダクト内の冷気の温度を検出するための第1の温度センサと、吸引ダクト内の吸気の温度を検出するための第2の温度センサと、送風用のファンを少なくとも制御するための制御ユニットとを有する収納装置である。制御ユニットは、第2の温度センサの検出温度と第1の温度センサの検出温度との差(温度差)が大きくなることにより送風用のファンの出力を上げるファン制御機能を備えている。送風用のファンの出力を上げる1つの方法は、ファンの回転数を上げることである。送風用のファンの出力を上げる他の方法の1つは、複数の送風用のファンを用意し、ファンの稼動台数を増やすことである。ファンの吸込み側および/または吹出し側の流量制御要素、例えば、ダンパーの開度を制御することにより、送風用のファンの出力を上げることも可能である。
【0006】
吸引ダクトは、室内(庫内)の空気を吸い込む。したがって、第2の温度センサにより得られる吸引ダクトの吸気の温度(吸気温度)は、室内の温度を制御するには適している。しかしながら、冷蔵されている品温が上昇するような状態になったときに、その条件が吸気温度に反映されるのに時間を要する場合がある。例えば、着霜などにより風量が下がり、冷気の温度が低下したときは、風量の低下により品温が上昇するような事態になるまでは、冷蔵されている商品が蓄熱材として作用し、吸気温度の変化が遅くなる可能性がある。
【0007】
これに対し、ファン制御機能では、第1の温度センサが検出する温度(冷気温度、給気温度)と、第2の温度センサが検出する温度(吸気温度)との差(温度差)が広がることによりファンの出力を上げる。「温度差が大きくなる」とは、温度差の絶対値が大きくなり、検出温度の差が広がることを示す。温度差が大きくなる1つの要因は、エバポレータが着霜および/または着氷することにより風量が低下することである。風量の低下により冷気の温度が低下するので、吸気温度が変わらなければ温度差は大きくなる。したがって、温度差が大きくなることにより送風用のファンの出力を上げ、低下した風量を元に戻したり、風量をさらに増加すると、着霜および/または着氷に起因する風量の低下による室内温度の変動を抑制できる。吸気温度のみを制御要素(ターゲット)として制御した場合、風量の低下を検出するのに時間が経過し、品温が上昇してしまう可能性がある。また、吸気温度の上昇により、冷媒の循環量を増やしたりすると、エバポレータの着霜および着氷を促進することにより、除霜までのサービス時間を短縮することになりかねない。
【0008】
温度差が大きくなる他の要因の1つは、オープンショーケースにおいて、室内の商品の収納状態などにより、エアーカーテンの状態が乱れることである。オープンショーケースにおいては、供給ダクトから供給される冷気を吸引ダクトにより吸引することにより、陳列室の開口にエアーカーテンが形成され、それにより陳列室内の温度が維持される。例えば、顧客が商品を陳列室に戻したときに、エアーカーテンの形成を阻害するような状態になると、吸引ダクトは外気をより多く吸い込む可能性があり、吸気温度が上昇し、冷気の温度との温度差が拡大する。
【0009】
このファン制御機能は、そのようなときに、まず、送風用のファンの出力を上げてエアーカーテンを形成するための風量を増加し、エアーカーテンの状態を改善する。吸気温度のみをターゲットとして制御した場合、吸気温度の上昇により、冷媒の循環量を増やすなどの方法で冷気の温度を下げる。したがって、陳列室内の温度差が広がる可能性があり、また、着霜および着氷が促進されて除霜までのサービス時間が短縮される可能性がある。
【0010】
このように、吸気温度により冷却ユニットの冷却能力を制御すること、例えば、冷媒の循環量を制御したり、コンプレッサをオンオフ制御したりすることに、このファン制御機能を加えることにより、除霜までのサービス時間を延長できるなどのメリットが得られる。
【0011】
このファン制御機能においては、温度差により送風用のファンの出力を連続的に制御しても良く、温度差が所定の値より大きくなることにより送風用のファンの出力を段階的に上げても良い。送風用のファンの出力を段階的に制御した方が、このファン制御機能と、吸気温度により冷却ユニットの冷却能力を制御する機能とを協調させ易い。
【0012】
冷却ユニットは、複数の管部を含むエバポレータを備えており、長手方向および周方向に断続した形状の間欠型のフィンがそれぞれの管部の半径方向に突き出ているものであることが好ましい。このような管は、スパインフィン型チューブとも称されており、霜あるいは氷は、フィンの先端に付着し、成長する。したがって、プレートフィンあるいはコルゲートフィンのように、フィンの間が氷で詰まる可能性は少なく、送風用のファンの出力を上げることにより、風量を改善し易く、除霜までのサービス時間を確保し易い。
【0013】
また、このファン制御機能は、陳列室の一部が開口になったオープンショーケースに適している。その一形態は、陳列室の上方が開口した、陳列室の断面がほぼコ字形の平型のショーケースである。このショーケースにおいては、供給ダクトの供給口および吸引ダクトの吸引口は、陳列室の対峙する壁の上部に配置されている。
【0014】
本発明の他の態様の1つは、上記の収納装置の温度制御方法であり、第1の温度センサと第2の温度センサとにより検出される温度差が大きくなることにより送風用のファンの出力を上げるファン制御工程を有する。上述したように、ファン出力を上げることにより、風量を元に戻すようにしたり、風量を上げることによりエアーカーテンの状態を改善できる。このため、陳列室内の状態を改善でき、陳列している商品の品質劣化を防止できる。
【0015】
この温度制御方法は、第2の温度センサの検出温度により冷却ユニットの冷却能力を制御する工程を、さらに有することが望ましい。また、この冷却ユニットの冷却能力を制御する工程との協調制御を行い易いという点で、ファン制御工程では、温度差が所定の値より大きくなることにより送風用のファンの出力を段階的に上げることが望ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1に、本発明の実施形態に係る収納装置の概略構成を断面図により示している。この収納装置1は、アイスクリーム、冷凍食品などを収納および陳列販売するのに適したオープンタイプの冷凍ショーケースであり、床置き型で上部が開口2になった平型(平らな直方体状)のハウジング10を有し、このハウジング10の中央が、上方が開いた断面がほぼコ字形の陳列室(貯蔵空間、収納領域、収納庫)3となっている。ショーケース1は、さらに、陳列室3に対し冷気Aを供給し、陳列室3から空気Bを吸引するダクトシステム20を備えており、このダクトシステム20は、陳列室3を構成する内壁5と、ハウジング10との間に配置されている。
【0017】
ダクトシステム20は、陳列室3に冷気(給気)Aを供給するための供給ダクト21と、陳列室3から空気(吸気)Bを吸引するための吸引ダクト22と、吸引ダクト22と供給ダクト21とを接続する接続ダクト23とを備えている。接続ダクト23には、吸引された空気Bを冷却するための冷却ユニットであるエバポレータ31と、ダクトシステム20により陳列室3に冷気Aを供給するための送風用のファン(送風ファン)32とが内蔵されている。送風用のファン32はモータ32mにより駆動され、モータ32mの回転数を変えることにより風量を制御できるようになっている。接続ダクト23は、陳列室3を構成する内壁5の底部5bの反対側に、底部5bに沿って延びており、供給ダクト21および吸引ダクト22は、内壁5の側部(側壁)5aおよび5cに沿って立ち上がっている。そして、供給ダクト21および吸引ダクト22は、対峙する側壁5aおよび5cの上部に設けられた供給口25および吸引口26にそれぞれ繋がり、冷気Aを供給し、陳列室3から空気Bを吸い込むことにより、陳列室3の上部開口にエアーカーテンを形成できるようになっている。
【0018】
また、供給ダクト21の内部の供給口25の近傍と、吸引ダクト22の内部の吸引口26の近傍とに、温度センサ34aおよび34bが設けられている。温度センサ(第1の温度センサ)34aにより、陳列室3に供給される冷気Aの温度(冷気の温度)を測定することができる。温度センサ(第2の温度センサ)34bにより、陳列室3から吸い込まれる吸気Bの温度(吸気温度)を測定することができる。
【0019】
ショーケース1は、さらに、接続ダクト23の下側に配置された排熱部40を有する。排熱部40は、エバポレータ31に供給される冷媒を圧縮するためのコンプレッサ41と、圧縮された冷媒を冷却するためのコンデンサ42と、外気を導入してコンデンサ42を冷却するための放熱用のファン43とを備えている。また、排熱部40には、ドレンを自己蒸発するためのドレンパン44が設けられており、接続ダクト23からドレン管39を介してドレンを受け入れられるようになっている。
【0020】
ショーケース1は、さらに、接続ダクト23の底面23bに配置された除霜用の電気ヒータ33aおよび33bを有する。電気ヒータ33aは、接続ダクト23の底面23bの中のエバポレータ31の下側になる領域に配置されている。電気ヒータ33bは、接続ダクト23の底面23bの中の、送風ファン32の上流に配置されている。接続ダクト23の底面23bのエバポレータ31の下側は、エバポレータ31で発生した霜あるいは氷が堆積しやすい領域である。特に、陳列室3の一部が開口2になったオープンタイプのショーケース(オープンショーケース)においては、開口2にエアーカーテンを形成するが、その際に、吸気Bとして冷気Aのみではなく外気も吸い込む。このため、外気に含まれる湿分が霜あるいは氷となってエバポレータ31などに付着したり堆積したりする。付着した霜あるいは氷は、熱伝達の妨げになり、また、ダクト内の開口面積を減らすために圧力損失が発生し、陳列室3へ供給される冷気Aの風量が低下する要因となる。したがって、風量の低下が著しくなるなどの条件により、および/または定期的に、霜および/または氷を除去する除霜運転を行なう必要がある。
【0021】
図2に、ショーケース1の冷媒サイクルと制御構成とを示している。ショーケース1は、コンプレッサ41、コンデンサ42、エバポレータ31を含む冷媒サイクル45を有する。この冷媒サイクル45は、さらに、コンプレッサ41により圧縮され、コンデンサ42により冷却された冷媒を膨張してエバポレータ31に供給するための膨張弁46と、コンプレッサ41により圧縮され、コンデンサ42により冷却される前の冷媒(ホットガス)をエバポレータ31に導くためのホットガスバイパス弁35とを備えている。ホットガスバイパス弁35は、エバポレータ31を除霜する際に開になり、冷気を供給する通常のサービス状態では閉である。
【0022】
ショーケース1は、さらに、送風ファン32(ファンモータ32m)、コンプレッサ41、排熱用のファン43、ホットガスバイパス弁35、電気ヒータ33aおよび33bを制御する機能を備えた制御ユニット50を有する。この制御ユニット50は、さらに、2つの温度センサ34aおよび34bに接続されている。このため、制御ユニット50は、冷気Aの温度(冷気温度)ta、吸気Bの温度(吸気温度)tb、および冷気温度taと吸気温度tbとの差(温度差)δtの少なくともいずれかを参照して、上記の各機器の制御を行うことができる。本明細書において、温度差δtは、冷気温度taと吸気温度tbとの差の絶対値、または、吸気温度tbから冷気温度taを引いた値を示し、正の値として扱う。
【0023】
制御ユニット50は、冷気供給モードの制御を行う冷気供給制御機能51と、除霜モードの制御を行う除霜制御機能52とを含む。冷気供給モードにおいては、図2に示すように、送風用のファン32、排熱用のファン43およびコンプレッサ41がオンになり、ホットガスバイパス弁35が閉になり、電気ヒータ33aおよび33bはオフとなる。したがって、送風用のファン32の吸引力により吸引口26から吸い込まれた空気Bは、吸引ダクト22を介して接続ダクト23に導かれ、エバポレータ31により冷却される。そして、冷却された空気(冷気、冷風)Aは、供給ダクト21を通って供給口25から陳列室3に供給され、陳列室3を冷却する。冷気Aは、また、吸気Bとして吸込口26から吸い込まれることにより、開口2にエアーカーテンを形成する。
【0024】
冷気供給制御機能51は、さらに、ファン制御機能55と、コンプレッサ制御機能56とを含む。ファン制御機能55は、温度差δtにより、ファンモータ32mの回転数を変えて、送風ファン32の出力を制御する。具体的には、温度差δtが設定値TA以下になると、ファンモータ32mの回転数を段階的に上げて、送風ファン32の出力を段階的に向上する。エバポレータ31が着霜あるいは着氷することにより圧力損失が増加したときに、送風ファン32の出力を上げることにより、ダクトシステム20から陳列室3に供給される冷気Aの風量を確保したり、増やしたりすることができる。
【0025】
コンプレッサ制御機能56は、吸気温度tbにより、コンプレッサ41をオンオフし、エバポレータ31の冷却能力を制御する。具体的には、吸気温度tbが設定値(TB−Tb)またはそれ以下であると、コンプレッサ41をオフし、吸気温度tbが設定値TBまたはそれ以上であると、コンプレッサ41をオンにする。コンプレッサ制御機能56は、吸気温度tbを制御対象として、上下に幅(サーモディファレンシャル)Tbを設定してコンプレッサ41をオンオフ制御する機能である。
【0026】
除霜モードにおいては、除霜制御機能52が送風ファン32を停止すると共に、排熱用のファン43およびコンプレッサ41を駆動し、ホットガスバイパス弁35を開いてエバポレータ31を加熱する。さらに、電気ヒータ33aおよび33bをオン(通電)することにより接続ダクト23の底面23bなどの着霜または着氷が発生しやすい場所を加熱する。エバポレータ31に付着および/または堆積していた霜あるいは氷は融けてドレン化される。これらのドレンは、接続ダクト23の底面23bを通り、ドレン管39を介してドレンパン44に回収される。また、吸引ダクト22および接続ダクト23に付着および/または堆積していた霜あるいは氷も融けてドレン化される。この際、送風ファン32は停止しているので、吸引ダクト22、接続ダクト23および供給ダクト21を含むダクトシステム20の内部の空気の流れ(強制的な流れ)は止まり、陳列室3にはダクトシステム20からは冷風も温風も供給されない。
【0027】
除霜モードにおいては、除霜制御機能52は、所定の時間、たとえば、15分程度、上記の制御により霜および/または氷を溶かす。その後、除霜制御機能52は、コンプレッサ41を停止すると共に、ホットガスバイパス弁35を閉じ、電気ヒータ33aおよび33bをオフし、送風ファン32を駆動して、2分間程度水切りを行う。その後、再び、冷気供給モードに移行する。これにより、ダクトシステム20から冷風Aが陳列室3に供給され、陳列室3が冷却される。このショーケース1は、8時間の冷気供給モードと、水切りを含めて17分程度の除霜モードとを繰り返し、陳列室3の内部を低温に維持する。
【0028】
図3に、ショーケース1における温度制御をフローチャートにより示している。ショーケース1が起動すると、冷気供給制御機能51は、ステップ71の初期設定において、サービス時間Wを計測するタイマーをリセットし、コンプレッサ41をオンし、冷却ユニットであるエバポレータ31に冷媒を供給する。さらに、冷気供給制御機能51は、ファンモータ32mの回転数を低速度にセットして、ファンモータ32mをオンし、ダクトシステム20から陳列室3に対して冷風Aを供給するサービスを開始する。
【0029】
ステップ72において、所定のサービス時間W(例えば8時間)が経過すると、ステップ73において、除霜モードに移行し、除霜制御機能52が動作する。除霜モードへ移行するタイミングは、サービス時間Wで管理しても良く、供給ダクト21から供給される冷風Aの風量低下などの要素により管理しても良い。除霜制御機能52は、送風ファン32を停止し、ホットガスバイパス弁35をオープンし、各ヒータ33aおよび33bをオンにする。所定の除霜時間、例えば15分が経過すると、所定の時間、例えば2分間水切りを行う。その後、サービス時間Wを計測するタイマーをリセットし、冷気供給モードに移行する。すなわち、冷気供給制御機能51が、コンプレッサ41をオンし、ファンモータ32mの回転数を低速度にセットして駆動し、冷風の供給を再開する。
【0030】
ステップ74において、吸気温度tbが設定温度(TB−Tb)以下になると、ステップ75において、コンプレッサ制御機能56は、コンプレッサ41をオフする。これにより、冷却ユニットであるエバポレータ31への冷媒の供給が停止し、冷却ユニットの冷却能力を低下させ、陳列室3の室内温度が低くなりすぎるのを防止する。
【0031】
ステップ76において、吸気温度tbが設定温度TB以上になると、ステップ77において、コンプレッサ制御機能56は、コンプレッサ41をオンにする。これにより、冷却ユニットであるエバポレータ31への冷媒の供給が再開されるので、冷却ユニットの冷却能力が上がる。したがって、陳列室3の室内温度が高くなりすぎるのを防止できる。
【0032】
ステップ78において、吸気温度tbと冷気温度taとの温度差δtが設定温度TA以上になると、ステップ79において、ファン制御機能55は、ファンモータ32mの回転数を1段階上げる。これにより送風ファン32の出力が一段階上がり、エバポレータ31を通過する風量が増加する(ファン制御工程)。
【0033】
例えば、エバポレータ31に着霜あるいは着氷(以降では、着氷も含めて着霜と呼ぶ)することにより風量が低下すると、冷気Aの温度taが下がり、温度差δtが増加する。この状態では、冷気Aの供給量が減っているので、時間が経過すると陳列室3の温度が上昇し、吸気温度tbも上昇する。したがって、温度差δtは比較的短期間に大きくなる。
【0034】
ファン制御機能55を動作させずに、コンプレッサ制御機能56だけで温度制御を行うと、冷気Aの供給量(風量)の減少により、吸気温度tbが下がり難くなる。このため、コンプレッサ制御機能56により、コンプレッサ41はオンオフを繰り返さなくなり、連続運転になり易いので、エバポレータ31への着霜が進行する。このため、冷気Aの風量が低下し、陳列室3の温度は上昇し、陳列室3に収納されている商品の温度も上昇するので、品質が劣化する。この状態を解消するためには除霜する必要があり、頻繁に除霜を繰り返すことになると、陳列室3の温度変化が大きくなりやすく、商品の品質の維持が難しくなる。さらに、コンプレッサ41が連続運転になりやすく、また、除霜に消費する電力も増加するので、消費電力が増加しやすい。
【0035】
これに対し、ファン制御機能55を動作させると、温度差δtが大きくなると、ファンモータ32mの回転数が上がり、冷気Aの供給量(風量)の減少が抑制される。あるいは、冷気Aの風量を増加させることもできる。冷気Aの風量を増加することにより、冷気温度taは上がり、吸気温度tbは下がる。このため、温度差δtは小さくなる。吸気温度tbが下がるので、コンプレッサ制御機能56は、コンプレッサ41のオンオフを繰り返して、陳列室3の温度を制御する。エバポレータ31への着霜の進行は遅くなり、冷気Aの風量の低下を抑制できる。温度差δtは陳列室内の温度や、商品の温度(品温)の変化に対して、比較的早い段階で変化する。したがって、長時間にわたり、陳列室3の温度上昇を早期に抑制でき、商品の品質を維持し易い。また、除霜の間隔を延ばし、冷風Aを連続して供給できる時間が長くなり、その間、コンプレッサ41をオンオフ制御できるので、消費電力も低減できる。
【0036】
また、陳列室3の商品の積み方により、開口2の付近の冷気の流れが阻害され、エアーカーテンの状態が不安定になると、吸気温度tbが上昇するので、温度差δtが増加する。
【0037】
このとき、ファン制御機能55を動作させずに、コンプレッサ制御機能56だけで温度制御を行うと、吸気温度tbが下がり難くなるので、コンプレッサ制御機能56は、コンプレッサ41を連続運転する。このため、冷気温度taが下がり、温度差δtはさらに大きくなる。陳列室3の冷気Aの供給口25の付近の商品の温度が大幅に低下し、吸引口26の付近の商品の温度が下がらず、陳列室3の内部の温度分布が大きくなり、商品の品質の維持が難しくなる。また、コンプレッサ41が連続運転になるため、除霜の進行が早くなり、冷気Aの風量が減るため、エアーカーテンの状態はさらに不安定になり、吸気温度tbはますます下がり難くなる。そして、除霜の間隔が短くなり、そのために消費電力が上がり易いことは上記のケースと同じである。
【0038】
これに対し、ファン制御機能55を動作させると、温度差δtが大きくなると、ファンモータ32mの回転数が上がり、冷気Aの供給量(風量)が増加する。エアーカーテンを形成する風量が増加するので、エアーカーテンの状態が安定になり、吸気温度tbが上昇するのを抑制できる。このため、温度差δtは小さくなる。吸気温度tbの上昇を抑制できるので、コンプレッサ制御機能56は、コンプレッサ41のオンオフを繰り返して、陳列室3の温度を制御する。このため、エバポレータ31への着霜の進行は遅くなり、冷気Aの風量の低下を抑制できる。したがって、長時間にわたり、陳列室3の温度上昇を抑制でき、商品の品質を維持し易い。また、除霜の間隔を延ばし、冷風Aを連続して供給できる時間が長くなり、その間、コンプレッサ41をオンオフ制御できるので、消費電力も低減できる。
【0039】
図4に、エバポレータ31の一部の構成を拡大し、断面図により示している。エバポレータ31は、スパインフィン64を備えたチューブ(スパインフィンチューブ)69を、接続ダクト23を横断する方向に折り曲げて複数の管部66を形成したスパインフィン型の熱交換器である。したがって、それぞれのチューブ本体62からは、長手方向および周方向に断続した形状のスパインフィン64が半径方向に突き出ている。スパインフィンチューブ69は、板材に切れ目を入れて短冊状に形成し、板材をΠ状に折り曲げた帯状部材をフィン64としてチューブ本体62に螺旋状に巻きつけて接合することにより製造できる。
【0040】
スパインフィン64の間隔は、根元(チューブ本体62の側)は狭く、先端は広くなっている。したがって、スパインフィンチューブ69を採用したエバポレータ31では、着霜または着氷が進んでも、フィン64の先端が広がっているので閉塞し難く、冷気Aの風量が急激に低下することは少ない。また、霜または氷による目詰まりが急激に進行し難いので、送風ファン32の出力を上げて風量を増加させることにより、所望の冷気Aの風量を確保または増加させることができる。したがって、上記のファン制御機能55と相まって、除霜の間隔を延ばし、冷風の供給時間(サービス時間)を長くすることができる。
【0041】
なお、上記では、ファン制御機能55によりファンモータ32mの回転数を上げる(速くする)ことにより送風ファン32の出力を上げている。送風ファン32の出力を制御するシステムはこれに限定されない。ファンモータ32mの回転数を変える代わりに、流体継手などを用いて送風ファン32の回転数を制御しても良い。また、複数の送風ファン32を設置して、送風ファン32の稼動台数を変えることにより、実質的な送風ファン32の合計の出力を制御しても良い。さらに、ダンパー、ベーンなどの風量を制御するための要素をダクトシステム20の適当な箇所に設置しても良い。
【0042】
また、上記のファン制御機能55は、送風ファン32の出力を1段階に限らず、多段階に変えても良い。温度差δtが設定値TA以上になる都度、段階的にファン32の出力を上昇させることができる。また、ファン制御機能55は、温度差δtが一定になるように、送風ファン32の出力を連続的に制御しても良い。しかしながら、吸気温度tbによりコンプレッサ制御機能56がコンプレッサ41をオンオフ制御することにより、送風ファン32の出力が脈動する可能性がある。したがって、ファン制御機能55と、コンプレッサ制御機能56とを協調制御するには、送風ファン32の出力は段階的に変えることが好ましい。
【0043】
また、上記のショーケース1では、エバポレータ31を冷却ユニットとし、エバポレータ31に冷媒を供給するコンプレッサ41をコンプレッサ制御機能56によりオンオフ制御することにより冷却ユニットの冷却能力を制御している。コンプレッサ41をオンオフ制御する代わりに、バルブなどによりエバポレータ31への冷媒の供給量を制御したり、冷媒の供給をオンオフ制御しても良い。また、エバポレータ31を複数設けて、冷媒が供給されるエバポレータの数を制御しても良い。さらに、小型のショーケース1においては、エバポレータ31の代わりに、ペルチェ素子により吸熱するタイプの冷却ユニットを採用することも可能である。この場合は、ペルチェ素子ユニットの稼動台数を制御したり、ペルチェ素子に印加される電圧を制御することにより冷却能力を制御できる。
【0044】
さらに、上記では、平型のオープンショーケースを例に本発明を説明しているが、平型に限らず、正面あるいは背面が開放されたオープンショーケースであっても良い。さらに、ドアなどにより開閉可能な陳列室(収納室、貯蔵室)を備えたクローズドタイプ、あるいは半クローズドタイプの冷蔵あるいは冷凍ショーケースなどの収納装置に対しても本発明を適用できる。その結果、陳列室内の温度変化を抑制でき、陳列室内に収納された商品の品質劣化を未然に防止できる。また、除霜間隔を長く、冷風の供給時間を長く設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】平型のショーケースの概略構成を示す断面図。
【図2】図1に示すショーケースの冷媒サイクルおよびシステム構成を示す図。
【図3】図1に示すショーケースの温度制御方法を示すフローチャートである。
【図4】エバポレータの構成を拡大して示す断面図。
【符号の説明】
【0046】
1 ショーケース、 3 陳列室(収納領域)、 5 陳列室の内壁
10 ハウジング
20 ダクトシステム、 21 供給ダクト、 22 吸引ダクト、 23 接続ダクト
25 供給口、 26 吸引口
31 エバポレータ、 32 送風用のファン(送風ファン)、 32m ファンモータ
33a、33b ヒータ(電気ヒータ)、
34a、34b 温度センサ
41 コンプレッサ、 42 コンデンサ
50 制御ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商品を冷蔵および/または冷凍した状態で陳列するための陳列室と、
前記陳列室へ冷気を供給するための供給ダクトと、
前記陳列室から空気を吸引するための吸引ダクトと、
前記吸引ダクトと前記供給ダクトとを接続し、吸引された空気を冷却するための冷却ユニットと、送風用のファンとを少なくとも内蔵した接続ダクトと、
前記供給ダクト内の冷気の温度を検出するための第1の温度センサと、
前記吸引ダクト内の吸気の温度を検出するための第2の温度センサと、
前記送風用のファンを少なくとも制御するための制御ユニットとを有し、
前記制御ユニットは、前記第2の温度センサの検出温度と前記第1の温度センサの検出温度との差が大きくなることにより前記送風用のファンの出力を上げるファン制御機能を備えている、収納装置。
【請求項2】
請求項1において、前記制御ユニットは、前記第2の温度センサの検出温度により前記冷却ユニットの冷却能力を制御する機能を、さらに備えている、収納装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記制御ユニットの前記ファン制御機能は、前記送風用のファンの出力を段階的に上げる、収納装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記冷却ユニットは、複数の管部を含むエバポレータを備えており、長手方向および周方向に断続した形状の間欠型のフィンがそれぞれの管部の半径方向に突き出ている、収納装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、前記陳列室は、上方が開口している断面がコ字形の平型である、収納装置。
【請求項6】
商品を冷蔵および/または冷凍した状態で陳列するための陳列室を有する収納装置の温度制御方法であって、前記収納装置は、さらに、
前記陳列室へ冷気を供給するための供給ダクトと、
前記陳列室から空気を吸引するための吸引ダクトと、
前記吸引ダクトと前記供給ダクトとを接続し、吸引された空気を冷却するための冷却ユニットと、送風用のファンとを少なくとも内蔵した接続ダクトと、
前記供給ダクト内の冷気の温度を検出するための第1の温度センサと、
前記吸引ダクト内の吸気の温度を検出するための第2の温度センサと、を有し、
当該温度制御方法は、
前記第2の温度センサの検出温度と前記第1の温度センサの検出温度との差が大きくなることにより前記送風用のファンの出力を上げるファン制御工程を有する、温度制御方法。
【請求項7】
請求項6において、前記第2の温度センサの検出温度により前記冷却ユニットの冷却能力を制御する工程を、さらに有する、温度制御方法。
【請求項8】
請求項6または7において、前記ファン制御工程では、前記送風用のファンの出力を段階的に上げる、温度制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−151451(P2008−151451A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−341435(P2006−341435)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(591150797)GAC株式会社 (69)
【Fターム(参考)】