説明

受光装置

【課題】 入射光の強度が大きくなっても、光強度のピーク値の上昇を抑制する技術が望まれている。
【解決手段】 テーパ導波路が、入力導波路とフォトダイオードとを接続する。入力導波路に接続された入力端から、フォトダイオードに接続された出力端に向かって、テーパ導波路の幅が広がる。テーパ導波路の広がり半角は、入力導波路から信号光が入力されると、高次モードを励振する大きさである。フォトダイオードの幅は一定であるか、またはテーパ導波路の出力端から遠ざかる向きに広がっており、その広がり半角は、テーパ導波路の広がり半角以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導波路とフォトダイオードとを同一の基板上に配置し、導波路を伝播した信号光をフォトダイオードで受信する受光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
四位相偏移変調(QPSK)等の光コヒーレント通信用の受光装置として、光ハイブリッド導波路とフォトダイオードとを集積した導波路集積型受光装置が、小型化や組立コストの低減の観点から有望である。光ハイブリッド導波路は、位相変調光を強度変調光に変換する。光ハイブリッド型導波路には、多モード干渉(MMI)導波路等が用いられる。
【0003】
1枚の基板上に形成された導波路とフォトダイオードとは、例えばバットジョイント構造により結合される。バットジョイント構造では、導波路を伝播した信号光がフォトダイオードの吸収層に直接入射する。このため、光の伝播方向に関してフォトダイオードの寸法を小さくしても、高い光吸収効率を確保することができる。
【0004】
一方、バットジョイント構造では、フォトダイオードの入射端から数μm程度の狭い領域で、入射光の大部分が吸収される。このため、入射端の近傍でフォトキャリアの密度が高くなりやすい。入射光の強度が高い場合には、フォトダイオードの吸収層内にフォトキャリの蓄積が生じやすくなる。蓄積されたフォトキャリアによる電界が印加電界を弱める方向に作用するため、フォトダイオードの動作帯域が狭くなる。
【0005】
入力導波路とフォトダイオードとの間に、MMI導波路を配置して、幅方向に関する光強度分布のピークを低減する技術が提案されている。シングルモードの信号光がMMI導波路に入射すると、MMI導波路の出射端において、光強度分布に複数のピークが表れる。このため、ピーク1つ当りの光強度が弱くなる。これにより、入射光によって発生するフォトキャリアの密度の局所的な上昇を抑制することができる。
【0006】
また、MMI導波路と同様の機能を持つ光導波装置として、シングルモード光導波路を伝播する信号光を、テーパ状の導波路を用いて、複数の出力ポートに均等に分割して出力する光導波装置が公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−127333号公報
【特許文献2】特開2002−243961号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】K. Hyun et al., “Multimode Interferometer-Fed InGaAs Waveguide Photodiode for High Power Detection”, Jpn. J. Appl. Phys. Vol. 47, No. 11, (2008) pp. 8426-8429
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
入力導波路とフォトダイオードとの間にMMI導波路を配置すると、出射端において複数のピークが現れる。ピークとピークとの間においては、ピーク強度に比べて光強度が著しく低くなる。このため、フォトダイオードの吸収層内において、フォトキャリアの幅方向の密度分布にばらつきが生じる。また、入射光がフォトダイオード内を伝播すると、幅方向に関する光強度分布が変化し、光強度のばらつきが大きくなる場合がある。このため、入射光の強度が大きくなると、フォトキャリアの密度が局所的に高くなってしまう。
【0010】
入射光の強度が大きくなっても、光強度のピーク値の上昇を抑制する技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一観点によると、
基板上に形成された入力導波路と、
前記基板の上に形成されたフォトダイオードと、
前記基板の上に形成され、前記入力導波路と前記フォトダイオードとを接続し、前記入力導波路に接続された入力端から、前記フォトダイオードに接続された出力端に向かって、幅が広がるテーパ導波路と
を有し、
前記テーパ導波路の広がり半角は、前記入力導波路から信号光が入力されると、高次モードを励振する大きさであり、
前記フォトダイオードの幅は一定であるか、または前記テーパ導波路の出力端から遠ざかる向きに広がっており、その広がり半角は、前記テーパ導波路の広がり半角以下である受光装置が提供される。
【0012】
本発明の他の観点によると、
基板上に形成された入力導波路と、
前記基板の上に形成されたフォトダイオードと、
前記基板の上に形成され、前記入力導波路と前記フォトダイオードとを接続し、前記入力導波路に接続された入力端から、前記フォトダイオードに接続された出力端に向かって、幅が広がるテーパ導波路と
を有し、
前記テーパ導波路と前記フォトダイオードとの接続箇所における前記テーパ導波路の幅を、Wo[μm]とし、前記テーパ導波路の広がり半角をθ[°]としたとき、広がり半角θは、
θ≧−0.08Wo+2.37Wo−11.5、かつ
θ≦−0.04Wo+1.16Wo+0.0145
の範囲内であり、
前記フォトダイオードの幅は、前記テーパ導波路との接続箇所において、前記テーパ導波路の出射端の幅以上であり、前記テーパ導波路の出力端から遠ざかる向きに広がっており、その広がり半角θpdは、
0≦θpd≦−0.04Wo+1.16Wo+0.0145
の範囲内である受光装置が提供される。
【0013】
本発明のさらに他の観点によると、
基板の上に形成され、2つの入力ポートに、それぞれ位相偏移変調された信号光及びローカルオシレータ光が入力され、複数の出力ポートに、それぞれ位相偏移変調された信号光が強度変調信号光に変換されて出力されるハイブリッド導波路と、
前記基板の上に形成され、前記ハイブリッド導波路の前記出力ポートにそれぞれ接続された複数の入力導波路と、
前記基板の上に形成され、前記入力導波路に対応して配置されたフォトダイオードと、
前記基板の上に形成され、前記入力導波路と、対応する前記フォトダイオードとを接続するテーパ導波路と
を有し、
前記テーパ導波路の各々の広がり半角は、前記入力導波路から信号光が入力されると、高次モードを励振する大きさであり、
前記フォトダイオードの各々の幅は一定であるか、または前記テーパ導波路の出力端から遠ざかる向きに広がっており、その広がり半角は、前記テーパ導波路の広がり半角以下である受光装置が提供される。
【発明の効果】
【0014】
入力導波路とフォトダイオードとの間にテーパ導波路を介することにより、フォトダイオード内における光強度分布の最大ピーク強度を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1Aは、実施例1による受光装置の平面図であり、図1Bは、図1Aの一点鎖線1B−1Bにおける断面図である。
【図2】図2A、図2B、図2Cは、それぞれ図1Aの一点鎖線2A−2A、一点鎖線2B−2B、一点鎖線2C−2Cにおける断面図である。
【図3】図3Aは比較例による受光装置の部分平面図であり、図3Bは実施例1による受光装置の部分平面図であり、図3C及び図3Dは、それぞれ実施例1の変形例1及び変形例2による受光装置の部分平面図である。
【図4】図4は、図3A及び図3Bに示した受光装置のMMI導波路及びテーパ導波路の出射端における幅方向の光強度分布のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図5】図5Aは、図3A及び図3Bに示した受光装置のフォトダイオード内の伝播方向に関する最大ピーク強度の分布のシミュレーション結果を示すグラフであり、図5Bは、図3B、図3C、及び図3Dに示した受光装置のフォトダイオード内の伝播方向に関する最大ピーク強度の分布のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図6】図6は、テーパ導波路の出射端の幅と、広がり半角との好ましい関係を示すグラフである。
【図7】図7は、テーパ導波路の出射端の幅と、入射端の片側の拡幅量との好ましい関係を示すグラフである。
【図8】図8は、実施例2による受光装置の部分平面図である。
【図9】図9は、実施例3による光コヒーレントレシーバの平面図である。
【図10】図10は、実施例4による光コヒーレントレシーバモジュールの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施例1]
図1Aに、実施例1による受光装置の平面図を示す。半絶縁性の基板30の上に、入力導波路20、テーパ導波路21、及びフォトダイオード22が形成されている。基板30として半絶縁性のものを用いるのは、寄生容量低減のためである。入力導波路20は、例えば波長1.55μmの光を伝播させるシングルモード光導波路である。
【0017】
テーパ導波路21は、入力導波路20とフォトダイオード22とを接続する。テーパ導波路21の幅は、入力導波路20に接続された入力端から、フォトダイオード22に接続された出力端に向かって広がっている。テーパ導波路21の入力端の幅は、入力導波路20の幅よりも広い。テーパ導波路21の出力端の幅は、フォトダイオード22の入力端の幅と等しい。
【0018】
フォトダイオード22の幅は、テーパ導波路21の出射端から遠ざかる向きに広がっている。フォトダイオード22の幅の広がり角は、テーパ導波路21の広がり角と同一である。
【0019】
入力導波路20、テーパ導波路21、及びフォトダイオード22の両側に、半絶縁性の埋込半導体層35が形成されている。フォトダイオード22の側方に、フォトダイオード22から離れて、埋込半導体層35が除去されてn型クラッド層31が現れた領域が画定されている。フォトダイオード22の後方(図1Aにおいて右方)に、n型クラッド層31が除去されて基板30が現れた領域が画定されている。
【0020】
n型クラッド層31が除去され、基板30が現れた領域に、p側電極パッド25及びn側電極パッド26が配置されている。p側引出電極27が、フォトダイオード22をp側電極パッド25に接続する。n側引出電極28が、n型クラッド層31を、n側電極パッド26に接続する。
【0021】
図1Bに、図1Aの一点鎖線1B−1Bにおける断面図を示す。基板30の上に、n型クラッド層31が形成されている。基板30の右端近傍においては、n型クラッド層31が除去され、基板30が現れている。基板30として、例えば半絶縁性のInP基板が用いられる。n型クラッド層31は、例えばn型InPで形成され、その厚さは2μmである。
【0022】
入力導波路20及びテーパ導波路21が配置される領域のn型クラッド層31の上に、コア層32及び上部クラッド層33がこの順番に積層されている。コア層32は、例えばノンドープのInGaAsPで形成され、その厚さは0.5μmである。上部クラッド層33は、例えばノンドープのInPで形成され、その厚さは1.5μmである。
【0023】
フォトダイオード22が配置される領域のn型クラッド層31の上に、光吸収層37、p型クラッド層38、及びコンタクト層39がこの順番に積層されている。n型クラッド層31、光吸収層37、及びp型クラッド層38が、pin型フォトダイオード22を構成する。光吸収層37は、例えばノンドープのInGaAsで形成され、その厚さは0.5μmである。p型クラッド層38は、例えばp型InPで形成される。コンタクト層39は、例えばp型InGaAs層とp型InGaAsP層との2層を含む。p型クラッド層38とコンタクト層39との合計の厚さは1.5μmである。
【0024】
テーパ導波路21のコア層32とフォトダイオード22の光吸収層37とは、バットジョイント構造により結合している。入力導波路20及びテーパ導波路21のコア層32内を伝播した光が、フォトダイオード22の光吸収層37に入射する。フォトダイオード22の後方(図1Bにおいて右方)にも、コア層32及び上部クラッド層33の一部が配置されている。
【0025】
n型クラッド層31は、フォトダイオード22の後方に配置されたコア層32よりもやや後方まで延びている。上部クラッド層33、コンタクト層39、n型クラッド層31、及び基板30の表面を、絶縁性の保護膜40が覆う。n型クラッド層31が除去された領域の保護膜40の上に、p側電極パッド25が形成されている。
【0026】
保護膜40に、コンタクト層39の一部を露出させる開口が形成されている。この開口内に露出したコンタクト層39に、p側引出電極27の一端が接続されている。p側引出電極27の他端は、p側電極パッド25に連続している。p側引出電極27は、エアブリッジ構造を有する。
【0027】
図2Aに、図1Aの一点鎖線2A−2Aにおける断面図を示す。基板30の上に、n型クラッド層31が形成されている。n型クラッド層31の表面のうち、一方向(図2Aの紙面に垂直な方向)に延在する領域の上に、コア層32及び上部クラッド層33が形成されている。コア層32の両側のn型クラッド層31の上面が、コア層32の直下のn型クラッド層31の上面よりもやや低くなっている。
【0028】
コア層32及び上部クラッド層33からなるメサ構造の両側が、埋込半導体層35で埋め込まれている。埋込半導体層35は、例えば半絶縁性のInPで形成され、その上面は、上部クラッド層33の上面と同じ高さである。埋込半導体層35及び上部クラッド層33の上に、保護膜40が形成されている。コア層32、及びそれを取り囲むn型クラッド層31、上部クラッド層33、及び埋込半導体層35が、埋込型の入力導波路20を構成する。
【0029】
図2Bに、図1Aの一点鎖線2B−2Bにおける断面図を示す。図2Aに示した断面と比較すると、コア層32及び上部クラッド層33の幅が、図2Aに示した断面における幅より広い。その他の構造は、図2Aに示した断面の構造と同一である。コア層32、及びそれを取り囲むn型クラッド層31、上部クラッド層33、及び埋込半導体層35が、埋込型のテーパ導波路21を構成する。
【0030】
図2Cに、図1Aの一点鎖線2C−2Cにおける断面図を示す。基板30の上に、n型クラッド層31が形成されている。n型クラッド層31の一部の領域に、光吸収層37、p型クラッド層38、及びコンタクト層39がこの順番に積層されている。光吸収層37の両側のn型クラッド層31の上面は、光吸収層37の直下のn型クラッド層31の上面よりやや低くなっている。光吸収層37、p型クラッド層38、及びコンタクト層39を含むメサの両側が、埋込半導体層35で埋め込まれている。埋込半導体層35の上面は、コンタクト層39の上面とほぼ同じ高さである。n型クラッド層31、光吸収層37、及びp型クラッド層39が、フォトダイオード22を構成する。
【0031】
フォトダイオード22の側方に、フォトダイオード22から離れて、埋込半導体層35が除去された領域が画定されている。埋込半導体層35、コンタクト層39、及びn型クラッド層31の上面が、保護膜40で覆われている。保護膜40に、コンタクト層39の一部、及びn型クラッド層31の一部を露出させる開口が形成されている。露出したコンタクト層39の上に、p側引出電極27が形成されている。露出したn型クラッド層31の上に、n側引出電極28が形成されている。
【0032】
次に、図1A、図1B、及び図2A〜図2Cを参照して、実施例1による受光装置の製造方法について説明する。
【0033】
図1Bに示すように、半絶縁性のInPからなる基板30の上に、n型クラッド層31、光吸収層37、p型クラッド層38、及びコンタクト層39を堆積させる。これらの層の堆積には、例えば有機金属化学気相成長(MOCVD)が用いられる。
【0034】
コンタクト層39の上に、例えば低圧化学気相成長(LPCVD)により酸化シリコン膜を形成する。バッファードフッ酸を用いて、この酸化シリコン膜をパターニングすることにより、マスクパターンを形成する。このマスクパターンは、図1Aに示したフォトダイオード22、及びフォトダイオード22を幅方向(図1Aにおいて上下方向)に引き伸ばした領域を覆う。このマスクパターンをエッチングマスクとして用い、コンタクト層39から、n型クラッド層31の上面までエッチングする。
【0035】
n型クラッド層31が露出した領域に、コア層32及び上部クラッド層33を選択成長させる。選択成長後、マスクパターンを除去する。この段階で、上部クラッド層33とコンタクト層39とが露出している。
【0036】
上部クラッド層33及びコンタクト層39の上に、入力導波路20、テーパ導波路21、及びフォトダイオード22(図1A)に整合するマスクパターンを形成する。
【0037】
図2A〜図2Cに示すように、このマスクパターンをエッチングマスクとして用いて、n型クラッド層31の表層部までエッチングする。このエッチングには、ドライエッチングが適用される。これにより、入力導波路20、テーパ導波路21、及びフォトダイオード22を構成するメサ構造が形成される。メサ構造の両側に露出したn型クラッド層31の上に、埋込半導体層35を選択成長させる。その後、マスクパターンを除去する。
【0038】
図1A及び図1Bに示したフォトダイオード22の後方の領域、図1A及び図2Cに示したフォトダイオード22の側方の領域において、埋込半導体層35、上部クラッド層33、及びコア層32をドライエッチングにより除去する。これにより、n型クラッド層31が露出する。さらに、図1A及び図1Bに示したフォトダイオード22の後方の領域において、n型クラッド層31をドライエッチングにより除去する。これにより、基板30が露出する。
【0039】
全面に保護膜40を形成する。p側引出電極27及びn側引出電極28のコンタクトのための開口を、保護膜40に形成する。その後、p側電極パッド25、p側引出電極27、n側電極パッド26、及びn側引出電極28を形成する。
【0040】
図3A〜図3D、図4、及び図5A〜図5Bを参照して、実施例1及び比較例による受光装置内の光強度分布のシミュレーション結果について説明する。
【0041】
図3Aに、比較例による受光装置の一部の平面図を示す。比較例による受光装置においては、入力導波路20とフォトダイオード22との間にMMI導波路24が配置されている。MMI導波路24の幅、及びフォトダイオード22の幅は、光の伝播方向に関して一定であり、両者は等しい。
【0042】
図3Bに、実施例1による受光装置の一部の平面図を示す。入力導波路20とフォトダイオード22との間に、テーパ導波路21が配置されている。入力導波路20の幅Wsは、例えば2.5μmである。テーパ導波路21の入射端における幅Wiは4.5μm、出射端における幅Woは12μmである。テーパ導波路21の長さLtは65μmである。このとき、テーパ導波路21の拡がり半角θは約3.3°になる。ここで、「広がり半角」は、テーパ導波路21の中心線と、一方の縁とのなす角度を指す。
【0043】
テーパ導波路21とフォトダイオード22との接続箇所におけるフォトダイオード22の幅(フォトダイオード22の入射端の幅)Wpiは、テーパ導波路21の出射端の幅Woと等しい。フォトダイオード22の幅は、テーパ導波路21の出射端から遠ざかる向きに向かって広くなっている。フォトダイオード22の拡がり半角は、テーパ導波路21の拡がり半角θと等しい。このため、フォトダイオード22の両側の縁は、テーパ導波路21の両側の縁を延長した直線と一致する。
【0044】
コア層32(図2A、図2B)は組成波長1.05μmのInGaAsPとした。コア層の屈折率は3.25である。コア層32を取り囲むInPからなるクラッド層31、33、35の屈折率は、3.17である。
【0045】
図4は、図3AのMMI導波路24、及び図3Bのテーパ導波路21に、波長1.55μmのシングルモードの光が入射したしたときの出射端における光強度分布のシミュレーション結果を示す。光の伝播方向をx軸の正の方向とするxy直交座標系を定義する。幅方向の中心のy座標を0とし、テーパ導波路21の出射端、及びMMI導波路24の出射端のx座標を0とする。図4の横軸は、幅方向の位置(y座標)を、単位「μm」で表し、縦軸は光強度を、任意単位で表す。破線3A及び実線3Bは、それぞれ図3A及び図3Bに示した比較例及び実施例1による受光装置の、x座標が0の位置における光強度分布を示している。
【0046】
実施例1によるテーパ導波路21の出射端の光強度分布は、比較例によるMMI導波路24の出射端の光強度分布よりも平準化されていることがわかる。すなわち、実施例1の構造とすることにより、フォトダイオード23の入射端における光強度分布の最大ピーク強度を低減させることができる。
【0047】
光強度分布が平準化されるのは、信号光がテーパ導波路21を伝播するに従って、高次モードが励振されるためである。従って、テーパ導波路21の広がり半角θは、高次モードが励振されるような範囲に設定することが好ましい。
【0048】
図5Aは、図3AのMMI導波路24、及び図3Bのテーパ導波路21に、波長1.55μmのシングルモードの光が入射したしたときのフォトダイオード23内の伝播方向(x方向)に関する光強度分布の最大ピーク強度のシミュレーション結果を示す。横軸は、光の伝播方向の位置(x座標)を単位「μm」で表し、縦軸は、最大ピーク強度を任意単位で表す。図5Aのクロス記号及び中実菱形記号は、それぞれ図3A及び図3Bに示した比較例及び実施例1のフォトダイオード23内の最大ピーク強度を示す。なお、フォトダイオード23の内部における光の吸収による減衰は考慮されていない。
【0049】
実施例1の構造を採用することにより、フォトダイオード23の伝播方向に関しても、最大ピーク強度が平準化されている。これは、フォトダイオード22の入射側の縁(x座標が0の位置)のみならず、入射側の縁から伝播方向に進行した位置においても、幅方向に関して平準化された光強度分布が維持されていることを意味する。
【0050】
図4及び図5Aのシミュレーション結果から、実施例1による受光装置においては、最大ピーク強度を低減させ、局所的なフォトキャリア密度の過度の上昇を抑制できることがわかる。これにより、入力光の光強度が高くなっても、フォトキャリアの蓄積に起因する動作帯域幅の劣化を抑制することができる。
【0051】
図3C及び図3Dに、実施例1の変形例1及び変形例2による受光装置の一部の平面図を示す。図3Cに示した変形例1においては、フォトダイオード22の広がり半角が、テーパ導波路21の広がり半角θより小さい。図3Dに示した変形例2においては、フォトダイオード22の幅が、伝播方向に関して一定である。
【0052】
図5Bに、図3Bに示した実施例1、図3C及び図3Dに示した変形例1及び変形例2による受光装置のフォトダイオード22内における最大ピーク強度の分布を示す。横軸は、光の伝播方向の位置(x座標)を単位「μm」で表し、縦軸は、最大ピーク強度を任意単位で表す。図5Bの中実菱形記号、中空三角記号、及び中空四角記号は、それぞれ図3B、図3C、及び図3Dに示した受光装置における最大ピーク強度を示す。
【0053】
図3C及び図3Dに示した変形例1及び変形例2における最大ピーク強度は、図3Aに示した実施例1における最大ピーク強度より小さいことがわかる。最大ピーク強度を小さくするためには、フォトダイオード22の広がり半角を、テーパ導波路21の広がり半角より小さくするか、またはフォトダイオード22を等幅にすること(広がり半角を0°にすること)が好ましい。
【0054】
フォトダイオード22の広がり半角を、テーパ導波路21の広がり半角より小さくするか、またはフォトダイオード22を等幅にすると、フォトダイオード22の面積も小さくなる。このため、寄生容量を低減させることができる。
【0055】
フォトダイオード22の幅を、テーパ導波路21から遠ざかる向きに向かって徐々に狭くすると、フォトダイオード22の内部において、最大ピーク強度の増大が助長されてしまう。このため、フォトダイオード22の幅を一定にするか、またはテーパ導波路21の出射端から遠ざかる向きに徐々に広げることが好ましい。
【0056】
図6を参照して、テーパ導波路21の広がり半角θの好適値について説明する。テーパ導波路21の出射端の幅Woが7μmから12μmの範囲内で異なり、広がり半角θも異なる複数の評価対象について、出射端における光強度分布の最大ピーク強度を求めた。テーパ導波路21の入射端の幅Wiは4.5μmとした。図6に、テーパ導波路21の出射端の幅と、広がり半角θとの好適な範囲を示す。横軸は、テーパ導波路21の出射端の幅Woを単位「μm」で表し、縦軸は、テーパ導波路21の広がり半角を単位「°」で表す。
【0057】
中実四角記号は、テーパ導波路21の出射端における光強度分布の最大ピーク強度が最も低くなる広がり半角を示す。このときのピーク値を「参照ピーク強度」といい、広がり半角を「最適広がり半角」ということとする。広がり半角θを最適広がり半角から小さくしても、または大きくしても、最大ピーク強度は参照ピーク強度より高くなる。最大ピーク強度が参照ピーク強度の1.1倍になる広がり半角のうち、最適広がり半角より大きい方の角度を「広がり半角上限値」といい、最適広がり半角より小さい方の角度を「広がり半角下限値」ということとする。図6の中空菱形記号、及び中空三角記号は、それぞれ広がり半角上限値、及び広がり半角下限値を示す。
【0058】
出射端の幅をWo[μm]とし、広がり半角をθ[°]とすると、出射端の幅Woごとに算出された広がり半角下限値を連ねる曲線を近似する2次曲線は、
θ=−0.0832Wo+2.3667Wo−11.453
と表される。出射端の幅Woごとに算出された広がり半角上限値を連ねる曲線を近似する2次曲線は、
θ=−0.0392Wo+1.1611Wo+0.0145
と表される。広がり半角θを、
θ≧−0.08Wo+2.37Wo−11.5、かつ
θ≦−0.04Wo+1.16Wo+0.0145
の範囲内とすることにより、最大ピーク強度を、参照ピーク強度の1.1倍以下とすることができる。
【0059】
なお、最適広がり半角を連ねる近似曲線は、
θ=−0.025Wo+1.1573o−3.6994
と表される。
【0060】
なお、フォトダイオード22の広がり半角θpd[°]は、
0≦θpd≦−0.04Wo+1.16Wo+0.0145
の範囲内とすることが好ましい。
【0061】
導波路を伝播する光の波長が変わると、入射導波路20、テーパ導波路21、及びフォトダイオード22の平面形状を、縦横比の比率を維持したまま拡大または縮小すればよい。このため、伝播する光の波長が変わっても、広がり半角θの好適な範囲は、ほぼ上述の範囲に保たれる。
【0062】
図7を参照して、入射導波路20に対するテーパ導波路21の入射端の拡幅量の好適値について説明する。入力導波路20の出射端の幅Woが7μmから12μmの範囲内で異なり、テーパ導波路21の入射端の幅Wiも異なる複数の評価対象について、出射端における最大ピーク強度を求めた。入射導波路20の幅Wsは2.5μmとし、テーパ導波路21の広がり半角θは、幅Wiの各々において最大ピーク強度が最も低くなる値とした。
【0063】
図7の横軸は、テーパ導波路21の出射端の幅Woを単位「μm」で表し、縦軸は、テーパ導波路21の入射端の片側の拡幅量を、単位「μm」で表す。片側の拡幅量は、(Wi−Ws)/2に等しい。
【0064】
中実四角記号は、最大ピーク強度が最も低くなる片側の拡幅量を示す。このときの最大ピーク強度を「参照ピーク強度」といい、片側の拡幅量を「最適拡幅量」ということとする。拡幅量を最適拡幅量から小さくしても、または大きくしても、最大ピーク強度は参照ピーク強度より高くなる。最大ピーク強度が参照ピーク強度の1.1倍になる拡幅量のうち、最適拡幅量より大きい方の拡幅量を「拡幅量上限値」といい、最適拡幅量より小さい方の拡幅量を「拡幅量下限値」ということとする。図7の中空三角記号、及び中空菱形記号は、それぞれ拡幅量上限値、及び拡幅量下限値を示す。
【0065】
テーパ導波路21の出射端の幅が、少なくとも7μm〜12μmの範囲内という条件で、片側の拡幅量を0.5μm〜1.5μmの範囲内にすると、最大ピーク強度が参照ピーク強度の1.1倍以下に収まることがわかる。片側の拡幅量が0.5μm及び1.5μmのとき、テーパ導波路21の入射端の幅Wiは、入力導波路20の幅Wsの1.4倍及び2.2倍になる。
【0066】
伝播する光の波長が変わると、導波路の平面形状を、縦横比を保った状態で拡大または縮小すればよい。従って、一般的には、テーパ導波路21の入射端の幅を、入力導波路20の幅の1.4倍〜2.2倍の範囲内にすることが好ましい。
【0067】
フォトダイオード22の光吸収効率を高めるためには、その面積を広くすることが好ましい。ただし、面積を広くすると寄生容量が大きくなるため、フォトダイオード22の大面積化は、動作帯域を広帯域にするという観点では好ましくない。フォトダイオード22の面積は、所望の帯域幅、及び光吸収効率に基づいて決定される。フォトダイオード22に入射した光の大部分は、入射側の縁から12μm程度伝播する間に吸収される。従って、フォトダイオード22の伝播方向の長さを、12μm程度より長くしても、光吸収効率を高める点では大きな効果は期待できない。
【0068】
フォトダイオード22の面積及び長さから、その幅が決定される。フォトダイオード22の幅は、テーパ導波路21の出射端の幅と等しい。上述の考察を踏まえて、テーパ導波路21の出射端の幅は、入力導波路20の幅の2倍〜6倍の範囲内とすることが好ましい。
【0069】
[実施例2]
図8に、実施例2による受光装置の一部の平面図を示す。以下、図3Dに示した実施例1の変形例2と比較し、異なる構成について説明する。図3Dに示した変形例2では、フォトダイオード22の幅が、テーパ導波路21の出射端の幅Woと等しい。実施例2においては、フォトダイオード22の幅Wpが、テーパ導波路21の出射端の幅Woよりも広い。幅方向に関して、フォトダイオード22の中心は、テーパ導波路21の中心と一致している。テーパ導波路21の出射端の幅Woに対するフォトダイオード22の幅Wpの片側の拡幅量Dは、
D=(Wp−Wo)/2
と表される。
【0070】
コア層32(図2A、図2B)の側方に埋込半導体層35を配置した埋込型導波路においては、伝播する光がコア層32から側方に染み出る。波長1.55μmの光が伝播する場合、染み出しの長さは0.2μm程度である。フォトダイオード22の幅Wpを、テーパ導波路21の出射端の幅Woより広くすることにより、テーパ導波路21から側方に染み出した光の成分を、フォトダイオード22に取り込むことができる。
【0071】
フォトダイオード22の幅Wpを広くしすぎると、寄生容量が大きくなってしまう。染み出し成分を取り込み、かつ寄生容量の増大を抑制するために、フォトダイオード22の片側の拡幅量Dを、0.3μm以下にすることが好ましい。染み出し成分取り込みの十分な効果を得るためには、片側の拡幅量Dを、0.1μm以上にすることが好ましい。
【0072】
[実施例3]
図9に、実施例3による光コヒーレントレシーバの平面図を示す。実施例3による光コヒーレントレシーバは、QPSK方式に適用される。
【0073】
半絶縁性の基板50の上に、ハイブリッド導波路51、第1〜第4の受光素子70A〜70Dが形成されている。ハイブリッド導波路51は、4入力4出力のMMI導波路で構成される。MMI導波路の入力端に、第1〜第4入力ポートが、図9において上から下に向かって順番に配置され、出路端に、第1〜第4出力ポートが、上から下に向かって順番に配置されている。
【0074】
ハイブリッド導波路51の第2入力ポートに変調信号光導波路52が接続され、第4入力ポートにローカルオシレータ光導波路53が接続されている。第1入力ポート及び第3入力ポートには、導波路が接続されていない。第1〜第4の受光素子70A〜70Dは、ハイブリッド導波路51の第1出力ポートから第4出力ポートに向かう向きと同じ向きに、この順番に配列している。
【0075】
第1の受光素子70Aは、入力導波路60A、テーパ導波路61A、フォトダイオード62A、n型クラッド層63A、p側電極パッド65A、及びn側電極パッド66Aを含む。第2〜第4の受光素子70B〜70Dも、第1の受光素子70Aと同一の構成を有する。
【0076】
第1〜第4の受光素子70A〜70Dの各々は、上記実施例1または実施例2による受光装置と同一の構成を有する。例えば、基板50が、実施例1の基板30(図1B、図2A〜図2C)に対応する。入力導波路60A、テーパ導波路61A、及びフォトダイオード62Aが、それぞれ実施例1の入力導波路20、テーパ導波路21、及びフォトダイオード22(図1A、図1B)に対応する。p側電極パッド65A及びn側電極パッド66Aが、それぞれ実施例1のp側電極パッド25及びn側電極パッド26(図1A)に対応する。
【0077】
第1、第2、第3、第4の受光素子70A、70B、70C、70Dの入力導波路60A、60B、60C、60Dが、それぞれハイブリッド導波路51の第1、第4、第2、第3出力ポートに接続されている。第2の受光素子70Bの入力導波路60Bは、第3の受光素子70Cの入力導波路60C、及び第4の受光素子70Dの入力導波路60Dと交差している。交差角度を直角に近づけることにより、入力導波路間のクロストークは、無視できる程度まで小さくすることができる。
【0078】
QPSKの変調信号光が、変調信号光導波路52を伝播して、ハイブリッド導波路51に入力される。ローカルオシレータ光が、ローカルオシレータ光導波路53を伝播して、ハイブリッド導波路51に入力される。QPSKの変調信号光が強度変調信号光に変換されて、第1〜第4出力ポートから出力される。QPSK方式のIチャネル信号が、第1、第2の受光素子70A、70Bから取り出され、Qチャネル信号が、第3、第4の受光素子70C、70Dから取り出される。
【0079】
第1〜第4の受光素子70A〜70Dのn型クラッド層は、隣接する受光素子間で直接導通しないように、受光素子の間に溝等を形成することによって、相互に分離されている。このため、第1〜第4の受光素子70A〜70Dの間で、十分に電気的な分離を行うことができる。その結果、フォトダイオード間のクロストークを低減させ、エラーの発生を抑制することができる。n型クラッド層を分離する溝の形成方法について、図2Cを参照して説明する。
【0080】
埋込半導体層35を形成した後、溝を形成すべき領域に開口を持つマスクパターンを形成する。このマスクパターンは、例えば酸化シリコンで形成される。マスクパターンをエッチングマスクとして、n型クラッド層31の底面まで到達する溝を形成する。その後、マスクパターンを除去する。
【0081】
実施例3では、第1〜第4の受光素子70A〜70Dに、実施例1または実施例2による受光装置が用いられている。このため、フォトダイオード内における光強度分布の最大ピーク強度を抑制することができる。これにより、ローカルオシレータ光の強度を増大させた場合の動作帯域幅の劣化を抑制することができる。
【0082】
[実施例4]
図10に、実施例4による光コヒーレントレシーバモジュールの平面図を示す。実施例4による光コヒーレントレシーバモジュールは、二偏波四位相偏移変調(DP−QPSK)方式に適用される。
【0083】
実装基板80に、第1、第2の光コヒーレントレシーバ81、82、第1、第2のビームスプリッタ87、88が実装されている。第1、第2の光コヒーレントレシーバ81、82は、図9に示した実施例3による光コヒーレントレシーバと同一の構成を有する。実装基板80に、信号光用光ファイバ85及びローカルオシレータ光用光ファイバ86が取り付けられている。信号光用光ファイバ85は、DP−QPSK方式の信号光を伝播させ、ローカルオシレータ光用光ファイバ86は、ローカルオシレータ光を伝播させる。信号光は、相互に直交する第1及び第2の偏波成分を有する。2つの偏波成分は、異なる信号を伝送している。
【0084】
信号光用光ファイバ85を伝播した信号光が、第1のビームスプリッタ87で、第1の偏波成分と第2の偏波成分とに分岐される。第1の偏波成分は、第1の光コヒーレントレシーバ81の変調信号光導波路90に入射し、第2の偏波成分は、第2の光コヒーレントレシーバ82の変調信号光導波路92に入射する。ローカルオシレータ光も第1の偏波成分と第2の偏波成分とを含む。ローカルオシレータ光用光ファイバ86を伝播したローカルオシレータ光が、第2のビームスプリッタ88で、第1の偏波成分と第2の偏波成分とに分岐される。第1の偏波成分は、第1の光コヒーレントレシーバ81のローカルオシレータ光導波路91に入射し、第2の偏波成分は、第2の光コヒーレントレシーバ82のローカルオシレータ光導波路93に入射する。なお、必要に応じて、実装基板80に集光レンズが搭載される。
【0085】
第1の光コヒーレントレシーバ81の後段に、第1、第2のトランスインピーダンス増幅器95、96が配置され、第2の光コヒーレントレシーバ82の後段に、第3、第4のトランスインピーダンス増幅器97、98が配置されている。
【0086】
第1の光コヒーレントレシーバ81のIチャネル用受光素子101の4つの電極パッドが第1のトランスインピーダンス増幅器95に接続され、Qチャネル用受光素子102の4つの電極パッドが第2のトランスインピーダンス増幅器96に接続されている。第2の光コヒーレントレシーバ82のIチャネル用受光素子103の4つの電極パッドが第3のトランスインピーダンス増幅器97に接続され、Qチャネル用受光素子104の4つの電極パッドが第4のトランスインピーダンス増幅器98に接続されている。
【0087】
第1、第2の光コヒーレントレシーバ81、82が、図9に示した実施例3による光コヒーレントレシーバと同一の構成を有するため、高出力、広帯域動作が可能である。
【0088】
上記実施例1〜実施例4では、信号光の波長が1.55μm帯である場合について説明した。伝播する信号光の波長が他の波長域の場合には、クラッド層、コア層、光吸収層等の半導体材料を、信号光の波長域に適したものに置き換えればよい。また、フォトダイオード22の光吸収層37(図1B)をノンドープの半導体で形成したが、光吸収層37の一部分または全域をp型またはn型の半導体で形成してもよい。
【0089】
導波路の及びフォトダイオードの側方が、埋込半導体層35(図2A〜図2C)で埋め込まれた埋込型導波路を採用したが、他の構造の導波路を採用してもよい。例えば、ハイメサ型導波路、リッジ型導波路等を採用してもよい。また、基板30として、半絶縁性の半導体に代えて、n型またはp型の半導体を用いてもよいし、サファイア等の絶縁材料を用いてもよい。
【0090】
図1Bに示したように、コア層32の厚さと光吸収層37の厚さとを同一としたが、目的に応じて両者の厚さを異ならせてもよい。また、p側引出電極27をエアブリッジ構造にする代わりに、半絶縁性の埋込半導体層35の上にp側電極パッド25を配置してもよい。
【0091】
図3C及び図3Dに示した構成例において、広がり半角θが変化する位置(x座標が0の位置)が、図1Bに示したコア層32と光吸収層37との境界に厳密に一致する必要はない。両者の位置が、光の伝播方向(x方向)に若干ずれても十分な効果が得られる。
【0092】
実施例3及び実施例4では、実施例1及び実施例2による受光装置を光コヒーレントレシーバに適用した。実施例1及び実施例2による受光装置は、その他の受信装置に適用することも可能である。
【0093】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0094】
20 入力導波路
21 テーパ導波路
22 フォトダイオード
24 MMI導波路
25 p側電極
26 n側電極
27 p側引出電極
28 n側引出電極
30 基板
31 n型クラッド層
32 コア層
33 上部クラッド層
35 埋込半導体層
37 光吸収層
38 p型クラッド層
39 コンタクト層
40 保護膜
50 基板
51 ハイブリッド導波路
52 変調信号光導波路
53 ローカルオシレータ光導波路
60A 入力導波路
61A テーパ導波路
62A フォトダイオード
63A n型クラッド層
65A p側電極パッド
66A n側電極パッド
70A 第1の受光素子
70B 第2の受光素子
70C 第3の受光素子
70D 第4の受光素子
80 実装基板
81 第1の光コヒーレントレシーバ
82 第2の光コヒーレントレシーバ
85 信号光用光ファイバ
86 ローカルオシレータ光用光ファイバ
87 第1のビームスプリッタ
88 第2のビームスプリッタ
91、93 変調信号光導波路
92、94 ローカルオシレータ光導波路
95 第1のトランスインピーダンス増幅器
96 第2のトランスインピーダンス増幅器
97 第3のトランスインピーダンス増幅器
98 第4のトランスインピーダンス増幅器
101、103 Iチャネル用受光素子
102、104 Qチャネル用受光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された入力導波路と、
前記基板の上に形成されたフォトダイオードと、
前記基板の上に形成され、前記入力導波路と前記フォトダイオードとを接続し、前記入力導波路に接続された入力端から、前記フォトダイオードに接続された出力端に向かって、幅が広がるテーパ導波路と
を有し、
前記テーパ導波路の広がり半角は、前記入力導波路から信号光が入力されると、高次モードを励振する大きさであり、
前記フォトダイオードの幅は一定であるか、または前記テーパ導波路の出力端から遠ざかる向きに広がっており、その広がり半角は、前記テーパ導波路の広がり半角以下である受光装置。
【請求項2】
基板上に形成された入力導波路と、
前記基板の上に形成されたフォトダイオードと、
前記基板の上に形成され、前記入力導波路と前記フォトダイオードとを接続し、前記入力導波路に接続された入力端から、前記フォトダイオードに接続された出力端に向かって、幅が広がるテーパ導波路と
を有し、
前記テーパ導波路と前記フォトダイオードとの接続箇所における前記テーパ導波路の幅を、Wo[μm]とし、前記テーパ導波路の広がり半角をθ[°]としたとき、広がり半角θは、
θ≧−0.08Wo+2.37Wo−11.5、かつ
θ≦−0.04Wo+1.16Wo+0.0145
の範囲内であり、
前記フォトダイオードの幅は、前記テーパ導波路との接続箇所において、前記テーパ導波路の出射端の幅以上であり、前記テーパ導波路の出力端から遠ざかる向きに広がっており、その広がり半角θpdは、
0≦θpd≦−0.04Wo+1.16Wo+0.0145
の範囲内である受光装置。
【請求項3】
前記テーパ導波路と前記フォトダイオードとの接続箇所において、前記フォトダイオードの幅が、前記テーパ導波路の前記出力端の幅よりも両側に広がっており、片側の広がり幅が、0.1μm〜0.3μmの範囲内である請求項1または2に記載の受光装置。
【請求項4】
前記テーパ導波路と前記フォトダイオードとの接続箇所において、前記フォトダイオードの幅が、前記テーパ導波路の前記出力端の幅と同一である請求項1または2に記載の受光装置。
【請求項5】
前記入力導波路と前記テーパ導波路との接続箇所において、前記テーパ導波路の幅が前記入力導波路の幅よりも広い請求項1乃至4のいずれか1項に記載の受光装置。
【請求項6】
前記テーパ導波路の前記入力端において、前記入力導波路の中心と前記テーパ導波路の中心とが一致し、前記テーパ導波路の幅が、前記入力導波路の幅の1.4倍〜2.2倍の範囲内である請求項5に記載の受光装置。
【請求項7】
前記テーパ導波路の前記出力端における幅が、前記入力導波路の幅の2倍〜6倍の範囲内である請求項1乃至6のいずれか1項に記載の受光装置。
【請求項8】
前記テーパ導波路の前記出力端において、前記フォトダイオードの幅が、前記テーパ導波路の幅と等しいか、または前記テーパ導波路の幅よりも広い請求項1乃至7のいずれか1項に記載の受光装置。
【請求項9】
基板の上に形成され、2つの入力ポートに、それぞれ位相偏移変調された信号光及びローカルオシレータ光が入力され、複数の出力ポートに、それぞれ位相偏移変調された信号光が強度変調信号光に変換されて出力されるハイブリッド導波路と、
前記基板の上に形成され、前記ハイブリッド導波路の前記出力ポートにそれぞれ接続された複数の入力導波路と、
前記基板の上に形成され、前記入力導波路に対応して配置されたフォトダイオードと、
前記基板の上に形成され、前記入力導波路と、対応する前記フォトダイオードとを接続するテーパ導波路と
を有し、
前記テーパ導波路の各々の広がり半角は、前記入力導波路から信号光が入力されると、高次モードを励振する大きさであり、
前記フォトダイオードの各々の幅は一定であるか、または前記テーパ導波路の出力端から遠ざかる向きに広がっており、その広がり半角は、前記テーパ導波路の広がり半角以下である受光装置。
【請求項10】
さらに、前記フォトダイオードから電気信号が入力されるトランスインピーダンス増幅器を有する請求項9に記載の受光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−199373(P2012−199373A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62291(P2011−62291)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】