説明

可動機械制御装置及び可動機械制御システム

【課題】
操作装置と可動機械制御装置とを非接続状態としても可動機械を稼働させる場合において、接続状態に戻す際に、非常停止機能の安全性を確認するために可動機械を停止する必要があった。
【解決手段】
半導体スイッチ34,34Aは、教示操作装置50が非接続状態において、オン作動すると、リレーRY1,RY3を励磁して非常停止スイッチ回路SC1,SC2が外されたことによるロボットRの停止を無効化する。診断回路40,40Aは、半導体スイッチ34,34Aがオン作動している期間に、メーク接点RY1a,RY3aがオフ作動しない範囲で半導体スイッチ34,34Aの診断を行う。教示操作装置50を接続状態に戻す際に可動機械を停止することなく非常停止機能の安全性を診断することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動機械制御装置及び可動機械制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非常停止スイッチ回路を有する教示操作装置とロボット制御装置からなる可動機械の制御システムでは、教示操作装置とロボット制御装置とが連結されていない状態において、ロボットを作動させることが一般的に行われている。具体的には、特許文献1では、上記の一般的な機能を備えると共に、教示操作装置をロボット制御装置から取り外しても、ロボットが非常停止して動作が止まらない仕組みをリレー接点や切り替えスイッチを用いて実現している。具体的には、特許文献1では、着脱スイッチをオン操作している場合に、教示操作装置のロボット制御装置との接続を解除した際には、非常停止手段による非常停止の作動を禁止することにより、ロボットを非常停止させないようにしている。
【0003】
又、特許文献2では、非常停止スイッチ回路を備えた教示操作装置が、ロボット制御装置との着脱が可能なポートを経由して前記ロボット制御装置に対して有線接続される構成が開示されている。
【0004】
特許文献3では、作業者が意図しなくても、作業モードを切り替える毎に一旦ロボットの駆動モータをサーボ制御するサーボアンプの機能を停止させることにより、ロボットの動作を停止させ、自動的にロボットの非常停止回路の機能の点検を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2672417号公報
【特許文献2】特許第4085952号公報
【特許文献3】特許第4137932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1及び特許文献2では、非常停止スイッチ回路を備えた教示操作装置をロボット制御装置から取り外した際に、ロボットの動作を止めないで運用することは可能である。しかし、特許文献1及び特許文献2は、教示操作装置を取り外したときにロボットの動作を止めない仕組みに対して自動的な点検を行える方法がなく、非常停止スイッチ回路の故障や人為的なミスがあると有事の際に非常停止スイッチを操作してもロボットが停止しない場合が起こりえる。
【0007】
特許文献3は、自動的に非常停止スイッチ回路の機能の点検を行うことができるが、一旦サーボアンプの機能を落としてロボット(可動機械)の動作を止める必要がある。このため、教示操作装置をロボット制御装置に装着すると、ロボットが作業中(例えば、生産中)であれば、動作を止めて確認するまで機能の診断が行えない問題がある。
【0008】
本発明の目的は、非常停止スイッチ回路を備えた操作装置を可動機械制御装置から取り外しても可動機械の動作を止めずに運用する場合において、非常停止スイッチ回路に対して並列に接続される半導体スイッチを設け、前記操作装置を非接続状態としたときに半導体スイッチの動作チェックを行い、安全性を向上させることができる可動機械制御システムを提供することにある。
【0009】
又、本発明の他の目的は、非常停止スイッチ回路を備えた操作装置を可動機械制御装置から取り外しても可動機械の動作を止めずに運用する場合、非常停止スイッチ回路に対して並列に接続される半導体スイッチを設け、前記操作装置を非接続状態としたときに半導体スイッチの動作チェックを行い、安全性を向上させることができる可動機械制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、リレー手段を備え、前記リレー手段が励磁されることにより可動機械を可動可能に制御する可動機械制御装置であって、前記可動機械を非常停止させる非常停止スイッチ回路を有する操作装置に対し、通信可能な接続状態と通信不能な非接続状態との選択が可能な可動機械制御装置において、前記操作装置が前記接続状態において前記非常停止スイッチ回路と並列に接続された際、オフ作動することにより、前記非常停止スイッチ回路を有効化して前記リレー手段の励磁を解消可能とし、一方、前記操作装置が前記非接続状態において、オン作動することにより、前記リレー手段を励磁して前記非常停止スイッチ回路が外されたことによる前記可動機械の停止を無効化する半導体スイッチ手段と、前記半導体スイッチ手段がオン作動中に、前記リレー手段のリレー接点がオフ作動しない範囲で前記半導体スイッチ手段の診断を行う診断手段を備えることを特徴とする可動機械制御装置を要旨としている。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1において、前記リレー手段、前記半導体スイッチ手段、及び前記診断手段が多重化されて構成されており、多重化された非常停止スイッチ回路を有する操作装置に対して、通信可能な接続状態と通信不能な非接続状態との選択が可能であることを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2において、前記操作装置とは有線又は無線で、前記接続状態を実現するものである。
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載の可動機械制御装置と、前記可動機械制御装置に対して通信可能な接続状態と通信不能な非接続状態との選択が可能な操作装置であって、前記可動機械を非常停止させる前記非常停止スイッチ回路を有する操作装置を含む可動機械制御システムを要旨としている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明の可動機械制御装置によれば、非常停止スイッチ回路に対して並列に接続される半導体スイッチを設け、操作装置および可動機械制御装置を非接続状態にするときは、前記半導体スイッチをオン作動させることによって操作装置を可動機械制御装置から切り離し、可動機械制御装置単独で可動機械を稼働可能としている。そして、上記オン作動中に半導体スイッチを診断するようにしたことによって、操作装置及び可動機械制御装置を接続状態に戻すときであっても、稼働中の可動機械を停止させることなく、非常停止機能の安全性を確認することができる。
【0014】
請求項2の発明の可動機械制御装置によれば、半導体スイッチの診断を多重化された半導体スイッチ手段の各々について実施するようにしたことによって、非常停止機能の安全性を向上させることができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、可動機械制御装置と操作装置とが、有線又は無線で接続状態を実現する可動機械制御装置において、請求項1乃至請求項2のうち、いずれか1項に記載の効果を容易に実現できる。
【0016】
請求項4の発明の可動機械制御システムによれば、請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載の効果を容易に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明を具体化した第1実施形態のロボット制御装置のブロック回路図。
【図2】信号波形図。
【図3】第2実施形態のロボット制御装置のブロック回路図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、本発明の可動機械制御システムをロボット制御システムに具体化した第1実施形態を図1、図2を参照して説明する。本実施形態では、ロボット制御システムは可動機械制御装置としてのロボット制御装置10と、操作装置としての教示操作装置50からなる。教示操作装置50は、可搬式であって持ち運びが可能である。
【0019】
非常停止回路部Jを備えたロボット制御装置10本体には可動機械としてのロボットRが接続されるとともに、接続ポート30が設けられている。前記接続ポート30はロボット制御装置10本体に設けられていてもよく、或いは、ロボット制御装置10の本体ケースの近くの位置に設置されていてもよい。なお、図1では説明の便宜上、接続ポート30はロボット制御装置10の外部に設けられた状態で図示されているが、接続ポート30は、ロボット制御装置10を構成するものである。
【0020】
前記接続ポート30は複数のコネクタCN1〜CN4、CN11,CN12を備えている。教示操作装置50は自信のコネクタCN5〜CN8、CN9,CN10に接続された通信線を介して接続ポート30のコネクタCN1〜CN4,CN11,CN12に対して着脱自在になっている。
【0021】
教示操作装置50には、非常停止スイッチ52が設けられている。非常停止スイッチ52は、他のスイッチに関係なく最優先でロボットRの動作を緊急停止させるための常閉接点52a、52bを有する押しボタンスイッチにて構成されている。常閉接点52aの回路、すなわち、非常停止スイッチ回路としての第1非常停止スイッチ回路SC1は、コネクタCN7,CN8、及び通信線を介して接続ポート30のコネクタCN3,CN4に接続される。
【0022】
常閉接点52bの回路は、すなわち、非常停止スイッチ回路としての第2非常停止スイッチ回路SC2は、コネクタCN9,CN10、及び通信線を介して接続ポート30のコネクタCN11,CN12に接続される。このように非常停止スイッチ回路は2重化されている。
【0023】
又、教示操作装置50と接続ポート30には、教示通信用のコネクタ(図示しない)がそれぞれ設けられている。教示操作装置50の図示しない教示データ通信用に使用するコネクタは、接続ポート30の教示通信用のコネクタに対して図示しない通信線を介して着脱自在になっている。教示操作装置50は、接続ポート30を経由して、図示しない操作キーの操作により教示データがロボット制御装置10に対して送信が可能である。
【0024】
又、教示操作装置50には、接続検出用のループバック回路54が設けられている。ループバック回路54は、コネクタCN5,CN6、及び通信線を介して接続ポート30のコネクタCN1,CN2に接続される。
【0025】
接続ポート30には、前記コネクタCN1,CN2に接続された検出手段としての検出器32が設けられている。検出器32は、コネクタCN1側に確認信号を出力し、コネクタCN2側から前記確認信号が返ってきた場合には、教示操作装置50が接続されていると検出し、前記確認信号が返らない場合には、教示操作装置50が接続されていないことを検出する。
【0026】
接続ポート30において、コネクタCN3,CN4間には、例えば、MOSFETからなる半導体スイッチ手段としての第1半導体スイッチ34が接続されている。第1半導体スイッチ34は、教示操作装置50が接続ポート30に接続された際、前記非常停止スイッチ52の第1非常停止スイッチ回路SC1と並列回路を構成する。コネクタCN3は、+V電源に接続されるとともに、コネクタCN4は、リレー手段としての第1リレーRY1を介して接地されている。前記リレーRY1はリレー手段に相当する。
【0027】
第1リレーRY1は、教示操作装置50が接続されている状態(以下、接続状態という)で、非常停止スイッチ52の常閉接点52aが閉のとき、或いは、教示操作装置50が接続されていない状態(以下、非接続状態という)のとき、第1半導体スイッチ34のオン作動により、コイルが励磁して後述する第1メーク接点RY1aをオン作動する。
【0028】
接続ポート30には、第1駆動回路38及び第1診断回路40が設けられている。第1診断回路40は診断手段に相当する。
第1駆動回路38は前記検出器32が教示操作装置50の接続がされていないことを検出すると、第1半導体スイッチ34のゲートを介して第1半導体スイッチ34にゲート制御信号を出力することによりオン作動して、第1リレーRY1のコイルに励磁電流を供給する。又、第1駆動回路38は前記検出器32が教示操作装置50の接続がされていることを検出すると第1半導体スイッチ34をオフ作動させる。第1診断回路40は、第1半導体スイッチ34の出力端子に接続されて、第1半導体スイッチ34のオンオフ動作を監視するようにしている。
【0029】
なお、第1診断回路40の機能の説明は後述する。
又、接続ポート30には、第2半導体スイッチ34A、第2駆動回路38A、第2リレーRY3、及び第2診断回路40Aが設けられている。第2半導体スイッチ34A、第2駆動回路38A、第2リレーRY3、及び第2診断回路40Aは、それぞれ第1半導体スイッチ34、第1駆動回路38、第1リレーRY1、及び第1診断回路40とそれぞれ同一構成、同一機能を有するため、詳細な説明を省略する。なお、第2診断回路40Aは診断手段に相当する。
【0030】
第2リレーRY3は、教示操作装置50が接続状態で、非常停止スイッチ52の常閉接点52bが開のとき、或いは、教示操作装置50が接続されていないときに、第2半導体スイッチ34Aがオン作動により、コイルが励磁して、後述する第2メーク接点RY3aを作動する。なお、第2リレーRY3は、コネクタCN11,CN12間に接続されている。このようにして、半導体スイッチ、駆動回路、リレー、及び診断回路は2重化されている。前記リレーRY3はリレー手段に相当する。
【0031】
接続ポート30の端子Ha,Hb間、及び端子Hc,Hd間には、第1メーク接点RY1a及び第2メーク接点RY3aがそれぞれ接続されている。
ロボット制御装置10の本体に設けられた+V電源、端子He間、及び+V電源、端子Hg間には、リレーRY2,RY4がそれぞれ接続されている。前記端子He,Hgは、前記端子Ha,Hcに対してそれぞれ接続線を介して接続されている。又、接続ポート30の端子Hb,Hdは、接続線を介してロボット制御装置10の本体に設けられた端子Hf,Hhに接続されるとともに、接地されている。
【0032】
前記リレーRY2,RY4のメーク接点RY2a,RY4aは直列回路を構成するとともに、交流電源ACと制御部としてのサーボユニット47との間に設けられ、閉じたときにサーボユニット47によるロボットRの作動を停止させる。又、前記メーク接点RY2a,RY4aは、ともに閉成したときには、サーボユニット47によるロボットRの作動制御が可能になる。
【0033】
又、+V電源からリレーRY2、端子He、端子Ha、第1メーク接点RY1a、端子Hb、端子Hfを経由して接地されているまでの回路は、第1非常停止回路部J1を構成する。+V電源からリレーRY4、端子Hg、端子Hc、第2メーク接点RY3a、端子Hd、端子Hhを経由して接地されているまでの回路は、第2非常停止回路部J2を構成する。
【0034】
(実施形態の作用)
さて上記のように構成されたロボット制御システムの作用を説明する。なお、説明の便宜上、教示操作装置50が接続状態から説明する。
【0035】
教示操作装置50が接続ポート30に接続状態で、まず、コネクタCN5・CN1間、コネクタCN6・CN2間の接続を解除する。
検出器32は、このコネクタCN5・CN1間、コネクタCN6・CN2間の接続解除の検出結果を、第1駆動回路38、第2駆動回路38Aに出力する。この検出に基づいて第1駆動回路38、第2駆動回路38Aは第1半導体スイッチ34、第2半導体スイッチ34Aをオン作動させる。このため、第1リレーRY1、第2リレーRY3に励磁電流が供給されて、第1メーク接点RY1a、第2メーク接点RY3aが閉成される。この結果、リレーRY2、RY4に励磁電流が供給されるため、メーク接点RY2a、RY4aが閉成されることにより、サーボユニット47のロボットRに対する制御が許容される。
【0036】
この後、コネクタCN7・CN3間、コネクタCN8・CN4間の接続、及び教示操作装置50の図示しない教示データ通信用に使用するコネクタ(図示しない)と、接続ポート30の教示通信用のコネクタ(図示しない)間の接続を解除して、教示操作装置50を接続ポート30から取り外す。このため、本実施形態では、教示操作装置50が接続状態はもちろんのこと、非常停止スイッチ52を備えた教示操作装置50が非接続状態においても、ロボットRの動作を止めないで運用することが可能である。
【0037】
教示操作装置50が接続ポート30と接続されておらず、第1リレーRY1、第2リレーRY3のそれぞれのコイルに対し励磁電流を供給している状態で第1診断回路40及び第2診断回路40Aは、それぞれ診断処理を常時行う。なお、本実施形態では、この診断処理を常時行うようにしているが、教示操作装置50が非接続状態において、ロボットRの動作を止めないで運用する際、定期的に行うようにしてもよい。
【0038】
この診断処理は、第1半導体スイッチ34、及び第2半導体スイッチ34Aのゲート制御信号を短い時間幅でOFFすることにより、各半導体スイッチが正常に動作しているか否かを診断する処理である。すなわち、第1駆動回路38、及び第2駆動回路38Aは、後述するゲート制御信号を第1半導体スイッチ34、第2半導体スイッチ34Aにそれぞれ出力する。
【0039】
ここで、第1半導体スイッチ34の前記ゲート制御信号のOFF時間幅の設定は、リレーの特性を利用したものであって、第1リレーRY1のa接点(すなわち、第1メーク接点RY1a)が開にならず、かつ第1リレーRY1であるコイルだけはOFFする条件を満たすものに設定されている。すなわち、前記ゲート制御信号のOFF時間幅は、該ゲート制御信号をONからOFFにした時から、第1リレーRY1(コイル)に蓄えられたエネルギーが放出されて前記a接点が動作する前にゲート制御信号をONに戻す迄の時間幅である。
【0040】
第2半導体スイッチ34Aのゲート制御信号のOFF時間幅の設定についても第1半導体スイッチ34の場合と同様であるため説明を省略する。
従って、このようなゲート制御信号により、第1半導体スイッチ34、第2半導体スイッチ34Aが正常のときは、ゲート制御信号と同期したオンオフの印加電圧が第1リレーRY1,第2リレーRY3にそれぞれ印加される。
【0041】
第1診断回路40は、第1半導体スイッチ34の出力端子を介して前記オンオフの印加電圧と、第1駆動回路38が出力している前記設定されたゲート制御信号とが同期しているか否かを診断する。同期していれば、第1診断回路40は、第1半導体スイッチ34が正常であると診断(判定)し、第1駆動回路38の第1半導体スイッチ34に対する前記設定されたゲート制御信号の印加を継続させる。反対に、同期していなければ、第1診断回路40は、第1半導体スイッチ34が異常であると診断(判定)し、第1駆動回路38に対して第1半導体スイッチ34をオフ作動させて、第1リレーRY1に励磁電流の供給を停止させる。
【0042】
第2診断回路40Aの第2半導体スイッチ34Aに対する診断も第1診断回路40と同様に行われる。
図2は、t1〜t3区間は、教示操作装置50が非接続状態で、診断用OFF区間を有するゲート制御信号を出力し、それに対して第1リレーRY1(又は第2リレーRY3)のコイルに対する印加電圧が同期している状態を示している。
【0043】
次に、教示操作装置50を接続ポート30に接続する場合、まず、コネクタCN7,CN8、及びコネクタCN9,CN10を、通信線を介して接続ポート30のコネクタCN3,CN4、及びコネクタCN11,CN12にそれぞれ接続する。又、教示操作装置50の図示しない教示データ通信用に使用するコネクタ(図示しない)と、接続ポート30の教示通信用のコネクタ(図示しない)間の接続を行う。
【0044】
この後、コネクタCN5・CN1間、コネクタCN6・CN2間を通信線を介して接続する。このコネクタ間が接続されると、すなわち、教示操作装置50が接続ポート30に接続されると、検出器32の検出に基づいて、第1駆動回路38、第2駆動回路38Aは第1半導体スイッチ34、第2半導体スイッチ34Aをそれぞれオフ作動させる。図2においては、t4時に、検出器32により教示操作装置50の接続ポート30に対する接続が検出されたことが示されるとともに、設定時間tm後のt5時にゲート制御信号がONからOFFに変化してOFFに保持されていることが示されている。この結果、第1リレーRY1(又は第2リレーRY3)がOFF作動したことが示されている。
【0045】
この状態では、非常停止スイッチ52が操作されない限り、第1リレーRY1、第2リレーRY3に励磁電流が供給されるため、メーク接点RY2aが閉成されて、サーボユニット47のロボットRに対する制御が許容される。又、図2においては、t5時に、非常停止スイッチ52が操作されて、常閉接点52a,52bが開き、第1リレーRY1,第2リレーRY3がOFFとなったことが図示されている。
【0046】
さて、本実施形態は下記の効果がある。
(1) 本実施形態のロボット制御装置10は、第1、第2半導体スイッチ34,34Aが、教示操作装置50(操作装置)の第1,第2非常停止スイッチ回路SC1,SC2(非常停止スイッチ回路)とそれぞれ並列に接続された際、オフ作動することにより、第1,第2非常停止スイッチ回路SC1,SC2を有効化して、第1リレーRY1,第2リレーRY3(リレー手段)の励磁を解消可能にする。
【0047】
又、第1、第2半導体スイッチ34,34Aは、教示操作装置50が非接続状態において、オン作動することにより、第1リレーRY1,第2リレーRY3を励磁して第1,第2非常停止スイッチ回路SC1,SC2が外されたことによるロボットRの停止を無効化する。そして、第1、第2半導体スイッチ34,34Aがオン作動の合間に、第1リレーRY1、第2リレーRY3の第1メーク接点RY1a,第2メーク接点RY3aがオフ作動しない範囲で第1、第2半導体スイッチ34,34Aの診断を行う第1,第2診断回路40,40A(診断手段)を備える。
【0048】
この結果、ロボット制御装置10は、教示操作装置50の非接続状態時に第1、第2半導体スイッチ34,34Aに対して診断を行うことによって、接続状態に戻すときに、ロボットRを停止させる必要がない。
【0049】
(2) 本実施形態のロボット制御装置10では、多重化された各第1、第2半導体スイッチ34,34Aの各々において、診断を行うようにしたことによって、非常停止機能の安全性を向上させることができる。
【0050】
(3) 本実施形態のロボット制御装置10では、教示操作装置50とは有線で接続状態を実現する。この結果、ロボット制御装置10において、上記(1)〜(2)の効果を容易に実現できる。
【0051】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を図3を参照して説明する。
第1実施形態では、教示操作装置50と、接続ポート30間を通信線を介して接続したが、第2実施形態では、無線接続可能に構成したところが異なっている。具体的には、教示操作装置50の代わりに、教示操作装置50Aが設けられている。教示操作装置50Aには、非常停止スイッチ52の常閉接点52a,52bの開閉をそれぞれ検出する開閉検出部53A,53Bが設けられるとともに、無線通信が可能な送受信装置55が設けられている。開閉検出部53A,53Bは、常閉接点52a,52bの開閉状態を常時検出し、その検出結果を送受信装置55に出力する。送受信装置55は、後述する接続ポート30Aと通信を確立した際に、開閉検出部53A,53Bの開閉検出結果を接続ポート30Aに送信する。なお、常閉接点52a,52bの一端は、+V電源に接続されている。
【0052】
一方、ロボット制御装置10は、接続ポート30の代わりに接続ポート30Aが設けられている。なお、図3に示すように、第2実施形態の接続ポート30の構成と同一構成又は相当する構成については、同一符号を付す。
【0053】
接続ポート30Aには、教示操作装置50Aの送受信装置55と通信が可能な送受信装置33が設けられている。送受信装置33は、1つの教示操作装置50Aと通信を確立した状態では他の教示操作装置との通信の確立が不能になっている。
【0054】
送受信装置33が、前述のように1つの教示操作装置50Aと通信を確立すると、送受信装置33は接続が確立したこと示す信号を検出器32Aに出力する。この結果、検出手段としての検出器32Aは、教示操作装置50Aとの接続を検出する。又、検出器32Aは、前記接続が確立したことを示す信号を入力しない場合には、教示操作装置50Aとの接続がされていないものとして検出する。
【0055】
又、第1,第2駆動回路38,38Aは前記検出器32Aが教示操作装置50Aの接続がされていない状態及び接続されている状態のいずれの状態においても、教示操作装置50Aから常閉接点52a,52bの開を示す信号を送受信装置33が受信しない限り、第1半導体スイッチ34をオン作動してリレーRY1(コイル)に電流を供給する。
【0056】
教示操作装置50Aと通信が確立した状態で、送受信装置33から検出器32Aを介して駆動回路38,38Aに常閉接点52a,52bの開を示す信号の入力があった場合、駆動回路38,38Aは第1半導体スイッチ34,第2半導体スイッチ34Aをオフ作動させる。この結果、リレーRY1の励磁電流が遮断されて、第1メーク接点RY1a,第2メーク接点RY3aが開放されることにより、リレーRY2,RY4には励磁電流が供給されないため、ロボットRは非常停止する。
【0057】
第2実施形態のロボット制御システムの他の構成及び機能は、第1実施形態と同一構成及び同機能を有する。
上記構成により第2実施形態では、第1実施形態と同様の作用効果を実現することができる。
【0058】
なお、本発明の実施形態は以下のように変更してもよい。
・ 前記第1及び第2実施形態では、教示データをロボット制御装置10に付与することができる教示操作装置を操作装置としたが、操作装置は教示操作装置に限定するものではなく、接続ポート30に着脱自在に接続するとともに非常停止スイッチを備える操作装置であればよい。
【0059】
・ 前記実施形態では、可動機械をロボットRにしたが、ロボットに限定されるものではなく、制御装置により制御動作する機械であってもよい。
・ 前記各実施形態では、第1リレーRY1、第2リレーRY3(リレー手段)、第1、第2半導体スイッチ34,34A(半導体スイッチ手段)、第1,第2診断回路40,40A(診断手段)、及び、第1,第2非常停止スイッチ回路SC1,SC2(非常停止スイッチ回路)のように2重化したが。これらをさらに3重化以上に多重化できることは勿論のことである。
【符号の説明】
【0060】
10…ロボット制御装置(可動機械制御装置)、
30…接続ポート、32…検出器(検出手段)、
50…教示操作装置(操作装置)、52…非常停止スイッチ、
52a…常閉接点、
J1…第1非常停止回路部J1、J2…第2非常停止回路部J2、
R…ロボット(可動機械)、
RY1…第1リレー(リレー手段)、RY1a…第1メーク接点(リレー接点)、RY3…第2リレー(リレー手段)、RY3a…第2メーク接点(リレー接点)、
SC1…第1非常停止スイッチ回路(非常停止スイッチ回路)、
SC2…第2非常停止スイッチ回路(非常停止スイッチ回路)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リレー手段を備え、前記リレー手段が励磁されることにより可動機械を可動可能に制御する可動機械制御装置であって、前記可動機械を非常停止させる非常停止スイッチ回路を有する操作装置に対し、通信可能な接続状態と通信不能な非接続状態との選択が可能な可動機械制御装置において、
前記操作装置が前記接続状態において前記非常停止スイッチ回路と並列に接続された際、オフ作動することにより、前記非常停止スイッチ回路を有効化して前記リレー手段の励磁を解消可能とし、一方、前記操作装置が前記非接続状態において、オン作動することにより、前記リレー手段を励磁して前記非常停止スイッチ回路が外されたことによる前記可動機械の停止を無効化する半導体スイッチ手段と、
前記半導体スイッチ手段がオン作動中に、前記リレー手段のリレー接点がオフ作動しない範囲で前記半導体スイッチ手段の診断を行う診断手段を備えることを特徴とする可動機械制御装置。
【請求項2】
前記リレー手段、前記半導体スイッチ手段、及び前記診断手段が多重化されて構成されており、多重化された非常停止スイッチ回路を有する操作装置に対して、通信可能な接続状態と通信不能な非接続状態との選択が可能であることを特徴とする請求項1に記載の可動機械制御装置。
【請求項3】
前記操作装置とは有線又は無線で、前記接続状態を実現するものである請求項1又は請求項2に記載の可動機械制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載の可動機械制御装置と、前記可動機械制御装置に対して通信可能な接続状態と通信不能な非接続状態との選択が可能な操作装置であって、前記可動機械を非常停止させる前記非常停止スイッチ回路を有する操作装置を含む可動機械制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−197857(P2011−197857A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62002(P2010−62002)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【出願人】(000005197)株式会社不二越 (625)
【Fターム(参考)】