説明

可変パッド

【課題】
鉄道レールを敷設してスラブ軌道を施工する際に用いられる可変パッドにおいて、硬化性樹脂中に空気が入らない、均質な可変パッドを提供する。
【解決手段】
可変パッドは、スラブ軌道のプレストレストコンクリートに締結されたタイプレートと、レールに接する軌道パッドとの間に挿入され、硬化性樹脂を注入して固定するために用いられるもので、樹脂シート13a・13bを重ね合わせて外周囲部14が融着され、一隅に硬化性樹脂の注入口が取り付けられた気密袋13であって、袋の一部が線状融着され連通しつつ区画されており、区画の該注入口の側に補強繊維布15が広げて挟み込まれ、別の側に硬化性樹脂流の抵抗体16を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道レールを敷設してスラブ軌道を施工する際に用いられる可変パッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
スラブ軌道は、コンクリート路盤上にスラブと呼ばれるプレストレストコンクリート製板を敷き並べ、列車通過によるスラブへの喰い込みを防止するタイプレートとレールからの振動を緩和する軌道パッドとを、スラブ上に重ねて等間隔に配置し、その上に鉄道レールを載せスラブに締結したものである。
【0003】
これら部材の不均等や施工時の部材のずれがあっても、タイプレートと軌道パッドとの間に隙間を生じないよう施工精度を高めるため、特許文献1に記載されているように、補強繊維布を挟み込んだ2枚の熱可塑性樹脂フィルムが周囲で、加熱しつつ加圧して融着させた袋状の可変パッドを、タイプレートと軌道パッドとの間に挟み込み、可変パッドに硬化性樹脂を注入し硬化させて、この隙間を埋めている。
【0004】
従来の可変パッドは、硬化性樹脂の注入の際、空気が入ってしまうと、硬化した時に空気が残り、隙間を埋める効果が得られなかった。そこで硬化性樹脂に空気が入らないようにするために、あらかじめ空気を完全に抜いたり、硬化性樹脂を余分に注入し、排出口から出して空気を抜いたりする作業が必要であった。
【0005】
特許文献2には、空気抜きのためのネックがある可変パッドが記載されており、硬化性樹脂を硬化させた後、ネックを最後に切り落として使用するものである。施工の時には、可変パッド内の空気が抜けるまでネックから樹脂を排出するので、樹脂を注入する作業者とは別に、ネックのところで排出された樹脂を受ける作業者が必要である。
【0006】
【特許文献1】実公平4−5532号公報
【特許文献2】特開2004−169437号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、硬化性樹脂中に空気が入らず、均質で、空気抜きのためのネックがない作業効率に優れた可変パッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するためになされた請求項1に記載の発明は、スラブ軌道のプレストレストコンクリートに締結されたタイプレートと、レールに接する軌道パッドとの間に挿入され、硬化性樹脂を注入して固定するための可変パッドにおいて、樹脂シートを重ね合わせて外周囲部が融着され、一隅に硬化性樹脂の注入口が取り付けられた気密袋であって、袋の一部が線状融着され連通しつつ区画されており、区画の該注入口の側に補強繊維布が広げて挟み込まれ、別の側に硬化性樹脂流の抵抗体を有することを特徴とする可変パッドである。
【0009】
この可変パッドは、タイプレートの上に載置し、区画に空気抜き用の孔を開け、気密袋内に液状硬化性樹脂の主剤と硬化剤の混合物を注入すると、樹脂によって、内部の空気が区画に押し遣られる。その後区画まで到達した樹脂は抵抗体により、流れが遅くなり、空気だけが排出される。可変パッドが空気を含まない樹脂で十分に充填されたら、注入を止め、樹脂が硬化する。これにより、隙間が埋められ、安定する。
【0010】
空気抜き用の孔を開ける時には、針や千枚通しなどを用いて、可変パッドの気密袋を貫通するように開ける。孔を開ける場所は、区画おいて最後に樹脂が到達するあたりが好ましい。
【0011】
請求項2に記載の発明は、該硬化性樹脂流の抵抗体が、不織布、織布、スポンジ、パルプ、またはそれらの混合物であることを特徴とする請求項1に記載の可変パッドである。
【0012】
硬化性樹脂流の抵抗体は、樹脂の流れを抑制し、空気を通過させるものであれば、用いることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、該硬化性樹脂流の抵抗体が、樹脂シートの部分的な融着であることを特徴とする請求項1に記載の可変パッドである。
【0014】
請求項4に記載の発明は、該硬化性樹脂流の抵抗体が、不織布、織布、スポンジ、パルプ、またはそれらの混合物、および樹脂シートの部分的な融着であることを特徴とする請求項1に記載の可変パッドである。
【0015】
請求項5に記載の発明は、前記区画の別の側に、外部に通じる小孔を有することを特徴とする請求項1に記載の可変パッドである。
【発明の効果】
【0016】
以上、詳細に説明したように本発明の可変パッドは、液状硬化性樹脂の主剤と硬化剤の混合物を注入すると、区画の空気抜き用の孔から自然に空気が押し出され、その後に樹脂が硬化するものであり、あらかじめ空気を抜く作業や空気が抜けるまで硬化性樹脂を過剰に注入する必要がなく、作業の効率をあげることができる。
【0017】
この可変パッドは、硬化性樹脂中に空気が入らないため、均質で、強度の優れたものになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
前記の目的を達成するためになされた本発明の可変パッドを、図1を参照して説明する。可変パッド1は、重ね合わせた熱可塑性プラスチックシート13a・13bの内側部に補強繊維布15が広げて挟み込まれ、外周囲部14が融着され、一隅には硬化性樹脂の注入口となるネック11にチューブ12が取り付けられた気密袋13であって、袋の一部が線状融着され連通した区画17となっており、その区画17に抵抗体16が挟み込まれている。
【0019】
この可変パッド1の製造方法は、先ず、無延伸ナイロンシート(40μm厚)と、低密度ポリエチレンシート(80μm厚)と、酢酸ビニルおよびエチレン(酢酸ビニル含有率6%)の共重合体シート(170μm厚)とによりラミネートシートを形成する。
【0020】
このラミネートシートを、ネック11の部分が突き出した略方形に裁断して、同外形の二つのフィルム13a・13bとする。
【0021】
#350のガラス繊維織布15をフィルム13a・13bよりもやや小さな方形に裁断し、フィルム13aの上に広げて敷く。
【0022】
抵抗体16を区画17よりもやや小さな方形に裁断し、フィルム13aの上の区画17になる部分に置く。
【0023】
ネック11の部分にチューブ12を置いて、その上にフィルム13bを重ねあわせる。そして外周部分14とネック11の部分、区画17の部分に高周波ウエルダ加工して融着する。するとフィルム13aおよび13bにより気密袋13が形成され、気密袋13にはガラス繊維織布15が、区画17には抵抗体16がそれぞれ封入され、ネック11の部分にチューブ12が挿入されて封止される。
【0024】
可変パッド1は、前記外周囲部14の融着と区画17の形成が、同時の加熱加圧、超音波溶着、または高周波ウエルダでなされていると、簡便に製造することができるので、好ましい。
【0025】
気密袋13が、生分解性樹脂製であることが好ましい。この袋内へ硬化性樹脂が圧入されて硬化した後、この袋は不要となるから、分解して消失すると、回収時の廃棄物が少なくて済む。
【0026】
可変パッド1は、図3に示すように鉄道レールを敷設してスラブ軌道を施工する際にプレストレストコンクリート2に締結されたタイプレート4の上に載置され、軌道パッド5を介してレール8が載せられて使用されるものである。
【0027】
図2に示すように、区画17に、空気抜き用の孔を貫通するように開け、ネック11の先端を切って、逆止弁の付されたチューブ12を露出させる。このチューブ12から、硬化性樹脂としてイソシアネートと硬化剤とからなるウレタン樹脂を、可変パッド1内へ圧入する。すると、硬化性樹脂の主剤と硬化剤の混合物は、ガラス繊維織布15の表裏面側に分かれながら、可変パッド1の隅々まで行きわたる。気密袋13内の空気は硬化性樹脂で押し遣られて区画17の空気抜き用の孔から排出される。さらに、区画17に入った樹脂は、抵抗体16により、流れる速さが遅くなるため、空気だけが排出され、樹脂が孔から排出されることはない。また、抵抗体16に染み込んだ樹脂により、空気は逆戻りできないため、硬化性樹脂中には空気が入ることがなく、均質で、強度の優れた可変パッド1が得られる。
【0028】
このようにして可変パッド1は、タイプレート4と可変パッド5との隙間で膨らむ。遂にはこの隙間を埋め尽くし、軌道パッド5端からはみ出てさらに膨らむ。十分に硬化性樹脂が気密袋13内に充填されたら、圧入を止める。
【0029】
暫くすると、膨らんだ可変パッド1の形状で、ガラス繊維織布15は広がったまま、硬化性樹脂が硬化し、タイプレート4と軌道パッド5との隙間が埋まる。
【0030】
最後に、邪魔なネック11を根元から切り落として作業が完了する。
【0031】
また、気密袋の一部が線状融着され連通しつつ区画される位置は、タイプレートと軌道パッドとの間の隙間を埋めることができれば、任意の位置でよく、図4の一部切欠き平面図に示すように、区画17が三角形になるように融着されていてもよい。
【0032】
図5の一部切欠き平面図は、硬化性樹脂流の抵抗体が、不織布および樹脂シートの部分的な融着の例である。抵抗体が不織布と樹脂シートの部分的な融着であると、不織布だけのときと比べて、さらに、樹脂の流れを遅くすることができるため、空気抜き用の孔から空気だけを抜き、樹脂が漏れることがない。
【0033】
硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、または発泡性ウレタン樹脂であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明を適用する可変パッドの実施例を示す一部切欠き平面図である。
【0035】
【図2】本発明を適用する可変パッドの使用途中を示す断面図である。
【0036】
【図3】本発明を適用する可変パッドの使用途中を示す斜視図である。
【0037】
【図4】本発明を適用する可変パッドの別な実施例を示す一部切欠き平面図である。
【0038】
【図5】本発明を適用する可変パッドの別な実施例を示す一部切欠き平面図である。
【符号の説明】
【0039】
1は可変パッド、2はプレストレストコンクリート、4はタイプレート、5は軌道パッド、6は板バネ、8はレール、11はネック、12はチューブ、13は気密袋、13a・13bはフィルム、14は外周囲部、15は補強繊維布、16は抵抗体、17は区画である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラブ軌道のプレストレストコンクリートに締結されたタイプレートと、レールに接する軌道パッドとの間に挿入され、硬化性樹脂を注入して固定するための可変パッドにおいて、樹脂シートを重ね合わせて外周囲部が融着され、一隅に硬化性樹脂の注入口が取り付けられた気密袋であって、袋の一部が線状融着され連通しつつ区画されており、区画の該注入口の側に補強繊維布が広げて挟み込まれ、別の側に硬化性樹脂流の抵抗体を有することを特徴とする可変パッド。
【請求項2】
該硬化性樹脂流の抵抗体が、不織布、織布、スポンジ、パルプ、またはそれらの混合物であることを特徴とする請求項1に記載の可変パッド。
【請求項3】
該硬化性樹脂流の抵抗体が、樹脂シートの部分的な融着であることを特徴とする請求項1に記載の可変パッド。
【請求項4】
該硬化性樹脂流の抵抗体が、不織布、織布、スポンジ、パルプ、またはそれらの混合物、および樹脂シートの部分的な融着であることを特徴とする請求項1に記載の可変パッド。
【請求項5】
前記区画の別の側に、外部に通じる小孔を有することを特徴とする請求項1に記載の可変パッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−233477(P2006−233477A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−46869(P2005−46869)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(000109037)ダイニック株式会社 (55)
【出願人】(590001094)ダイニック・ジュノ株式会社 (5)
【出願人】(000162995)興和化成株式会社 (15)
【Fターム(参考)】