説明

合成樹脂製排水ます

【課題】余分な掘削を減らし、複数の外部流入管をそれらと高低差の異なる位置に布設された排水管に接続するための、任意の接続位置(高さ、方向)に複数の外部流入管を接続可能な宅地内または宅地外設置用の合成樹脂製排水ますを提供する。
【解決手段】外部流入管から流れ込む排水を落差をもって底部排水の流れ方向へ案内するための内副管または仕切り板が内蔵された樹脂製排水ますであって、前記排水ますの壁面には外部流入管と内部内副管、または外部流入管と排水ます内部とを連通させつつ接続するための支管が着脱自在に取付けられることを特徴とする前記樹脂製排水ますを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は合成樹脂製排水ます、特に、宅地内または宅地外設置用の合成樹脂製排水ますに関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、宅地内または宅地外排水設備における排水管の場合、たとえば、合流点には合流用インバ−トを形成した排水ますや合流用ドロップインバ−トを形成した排水ますが用いられており、この排水ますは合成樹脂製、たとえば、塩化ビニール樹脂製である場合は、インバ−ト部および立上り部、蓋部により構成されている。
【0003】
ところが、一般的には、排水ますのインバ−ト部の流出入口は略同一平面状に配置されているため、この流出入口とは異なる高さに布設される枝管(以下、「外部流入管」ともいう)をそのまま直接接続することはできない。そこで、たとえば建屋から延びた枝管を宅地内に布設される排水管へ落差(高低差)をもって合流させるような場合には、枝管と排水管との間で、一旦、垂直状の枝管やエルボなどの管継手(以下、これらを「落差配管」という)を介在させ、この垂直状の枝管によって落差を吸収させたあと、前記排水管が接続された排水ますへ合流している(特許文献1参照)。
【0004】
もっとも、たとえば手洗いや洗面所から延びた枝管の口径がφ50mm以下であるような場合には、例外的に枝管を合流用インバ−トを形成した排水ますや合流用ドロップインバ−トを形成した排水ますの立上り部に直接接続し、枝管の中を流れる排水を滝落し状にしてインバート内を流れる排水に合流させることが提案されている(特許文献2)。
【0005】
一方、最近の建屋、特に戸建住宅においては、フ−チング基礎や床下全面などは地表より約20cm高く打設された防湿コンクリ−トなどが形成されているため、それらの上に配置される建屋から延びた枝管は、宅地内に布設される排水管へ落差をもって接続される場合が多い。
【0006】
また、宅地内に布設される排水管が接続される公共排水ますは、公道下に深く布設された汚水本管の埋設深さを基準に設置されるため、かかる排水配管と公共排水ますとの間でも高低差が生じ、このため、宅地内の排水配管を公共排水ますへ接続するためには、宅地内に設置される排水ます(合流用ドロップインバ−トを形成したものを含む)とは別個にかかる高低差を吸収するための専用のドロップますなどの設置が必要となっている。
【0007】
この結果、建屋から延びた枝管を接続するための排水管を宅地内に布設したり、この排水管を公共排水ますへ接続する場合には、宅地内の排水管から公共排水ますにかけて広い範囲を宅地内に布設された排水管や排水ますの底部、および公共排水ますの底部まで深く掘り起こす必要があった。換言すれば、宅地内に排水管を布設するためには、建屋から延びた落差配管の高さに相当する深さ、および公共排水ますの高さに相当する深さを広範囲にわたって余分に掘削する必要があった。
【0008】
そこで、本出願人は、かかる余分な掘削を減らすことを1つの目的として、従来のインバ−ト排水ますやドロップインバ−ト排水ますの常識を転換し、宅地内設置用の塩化ビニール製内副管付き合流用排水ますを開発して好評を得ている(特許文献3)。
【0009】
すなわち、本出願人が開発したこの内副管付き合流用排水ますは、一般のものと同様のインバ−ト部および立上り部、蓋部から構成されているが、この立上り部を高さ調節用の管体および一体的に射出成形された枝管用受口付きの上部チ−ズ管体(以下、「アジャスタ−」ともいう)とから構成し、この上部チ−ズ管体の内部壁面上に内副管係止部を一体成形して、この係止部に内副管を係止している時は、内副管が枝管用受口の流出口に連通させつつ接続されるようにすると共に、蓋部を開いた時には、内副管を着脱できるようにしている。
【0010】
したがって、この内副管付き合流用排水ますによれば、余分な掘削を減らす目的を達成しながら、建屋から延びた枝管を流れる排水を内副管を介して落差をもってインバート部へ案内し、インバート部内を流れる排水に円滑に合流させることができ、また、排水ますの点検・掃除などの作業時には、内副管を取出して通常の作業を行うことができる。
【特許文献1】特開2001−220796号公報
【特許文献2】特許第3000247号公報
【特許文献3】特開2004−278095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、この内副管付き合流用排水ますでは、その後、次のような問題があることが判明した。
【0012】
すなわち、この排水ますの特徴の1つは、その布設時の余分な掘削溝の掘り起こしをなくすことであるから、この効果によって実際の排水ますの布設場所は狭隘化しており、この限られたスペース内で建屋から延びた枝管を排水ますに接続する必要がある。ところが、排水ますに接続される枝管は、建屋から導出される際に各種の打設されたコンクリ−トなどに邪魔されて、その接続高さや接続方向が制限されているのに対して、排水ますに設けられている水平状に延びた枝管用受口は、上部チ−ズ管体に一体的に射出成形させた固定された構造となっているため、枝管の接続高さや接続方向に合わせて枝管用受口の位置(高さ、方向)を自由に設定することができない。このため、狭隘化された排水ますの布設場所においては、枝管と排水ますとの接続作業が面倒となり、施工方法によっては、枝管の配置が入り組んでしまって非常に複雑化することもあった。
【0013】
また、この排水ますに使用される上部チ−ズ管体は、外方向に突出した枝管用受口を射出成形により一体的に設ける必要があるため、射出成形機を更新してその射出能力を向上するなどしない限りは、枝管用受口の長さに相当する分だけ、逆に口径を小さくした小型の排水ますしか製造できないという問題があった。
【0014】
さらに、この排水ますに内副管を装着する場合は、上述された枝管用受口の他に、内副管を係止するための内副管係止部を上部チーズ管体の内壁に一体成形しておく必要があり、その結果、排水ますに使用される上部チーズ管体は特殊な構造を有する非常に高価な部品となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そこで、これらの問題点を解消するため、請求項1に係る発明では、外部流入管から流れ込む排水を落差をもって底部排水の流れ方向へ案内するための内副管または仕切り板が内蔵された樹脂製排水ますであって、前記排水ますの壁面には外部流入管と内部内副管、または外部流入管と排水ます内部とを連通させつつ接続するための支管を着脱自在に取付けた。
【0016】
この結果、請求項1に記載の発明によれば、外部流入管(枝管)を接続するために排水ますの立上り部に着脱自在に取付けられる支管は、ホ−ルソ−の使用が可能であれば、立上り部の任意の位置(高さ、方向)に後付けすることが可能となるため、たとえ、外部流入管の接続高さや接続方向に制限がある場合(例えば、外部流入管の接続口が上下左右方向に固定されている場合)であっても、無理なく外部流入管を排水ますに接続することができる。
【0017】
また、内副管を係止めするための内副管係止手段は、後述されるように排水ますの立上り部ではなく、外部流入管と接続される支管に一体的に設けられており、さらに、かかる支管は立上り部にホールソーを用いて穴加工を施したあと後付けされるものであるため、排水ますの立上り部には、特殊な加工や特殊な形状を必要としない通常の寸胴状の円筒管を使用することが可能となる。
【0018】
この結果、本発明による排水ますによれば、従来の内副管付き合流排水ますに対して大幅なコストダウンを図ることができる。さらに、本発明による排水ますは、立上り部から排除された枝管用受口の長さに相当する分だけ、従来の内副管付き排水ますより、より大きな口径を有する大径の排水ますを製造することが可能となり、宅地内のみならず、宅地外にも設置されるような大型の公共排水ますとしても使用することができる。
【0019】
また、本発明によれば、外部流入管から流れ込む排水を、排水ますに内蔵される内副管または仕切り板により落差をもって底部を流れる排水へ円滑に案内するため、1つの排水ますで排水管およびその排水管とは布設高さの異なる外部流入管を接続することが可能となり、排水経路中に落差配管やドロップますなどといった高低差を吸収するための特別の排水設備を設ける必要がなくなる。このため、本発明による排水ますは極狭小地においても据付けることが可能となり、また、これに伴って落差配管やドロップますなどを布設するための余分な掘削を行う必要もなくなる。
【0020】
請求項2に係る発明では、インバート部と、前記インバート部に接続される立上り部と、そして前記立上り部を覆う蓋部とからなる樹脂製排水ますであって、前記排水ますの内部には、外部流入管から流れ込む排水を落差をもって前記インバート部へ案内するための内副管または仕切り板が内蔵されており、前記立上り部の壁面には、前記外部流入管および内副管、または外部流入管と排水ます内部とを連通させつつ接続するための支管を着脱自在に取付けた。
【0021】
すなわち、請求項2に記載の発明によれば、排水ます本体を排水管に接続されるインバート部と、地表に略一致させて設置される蓋部と、それらの間に接続される立上り部との3つの部品に分けて構成したため、前記立上がり部の高さ(管長)を調節することにより、いかなる埋設深さにある排水管に対しても本発明による排水ますを接続することができる。
【0022】
請求項3に係る発明では、請求項1又は2に記載の樹脂製排水ますの支管にナット締付型支管を適用した。
【0023】
この結果、請求項3に記載の発明によれば、外部流入管を接続するために排水ますの立上り部に着脱自在に取付けられる支管は、ホ−ルソ−の使用が可能であれば、立上り部の任意の位置(高さ、方向)に後付けすることが可能となるため、たとえ、外部流入管の接続高さや接続方向に制限がある場合(例えば、外部流入管の接続口が上下左右方向に固定されている場合)であっても、また、外部流入管が複数あって外部流入管の高さや方向が異なっていても、無理なく外部流入管を排水ますに接続することができる。
【0024】
請求項4に係る発明では、請求項3に記載の樹脂製排水ますのナット締付型支管の排水ます内部側突出部には、前記支管および外部流入管の内部を点検または掃除するための当たり面を設けた。
【0025】
この結果、請求項4に記載の発明によれば、排水ます立上り部の壁面に取付けられたナット締付型支管が排水ます内部壁面から内側へ突出した形状であっても、この突出部に設けられた当たり面を通してナット締付型支管およびこれに接続された外部流入管の内部を容易に点検または掃除などすることができる。
【0026】
請求項5に係る発明では、請求項1又は2に記載の樹脂製排水ますの内副管は、前記支管と一体となって形成された内副管係止手段により、前記排水ます上部から着脱自在に支持するようにした。
【0027】
すなわち、請求項5に記載の発明によれば、内副管係止手段を排水ますの立上り部ではなく、内副管と接続される支管に一体的に設けたため、内副管が支管に直接係止されることによりそれらの接続が確実になると共に、排水ますの立上り部を特殊な加工や特殊な形状を必要としない通常の円筒管の形状に簡略化することができる。
【0028】
請求項6に係る発明では、請求項5に記載の樹脂排水ますの内副管係止手段は、前記内副管の外周面上に設けられた凸部と嵌合する凹部を含む構造とした。
【0029】
すなわち、請求項6に記載の発明によれば、内副管の係止手段に内副管の凸部と支管の内副管係止手段に設けられた凹部とが嵌合する構造を採用したため、かかる内副管係止手段に発生する応力やモーメントに対抗しながら、内副管を片持ち支持によってもしっかりと係止することができる。また、この結果、内副管は支管の上部から抜き差しすることによって支管の係止手段に容易に着脱することができる。
【0030】
さらに、前記内副管の外周面上に設けられる凸部は、たとえば、内副管と枝管との接続端にフランジ部を設けるような構造であってもよく、そのため、極めて簡単な構造で内副管と一体成形することが可能となる。一方、支管に一体成形される凹部は、一続きの半円弧状の溝部であってもよく、さらには、この溝部を2以上に分割して配置したものであってもよい。特に、溝部を“逆ハの字”状のように2つに分割した場合は、内副管に設けられる凸部の外径寸法などに多少の製作誤差が生じていても、かかる誤差を吸収することにより内副管をしっかりと係止することができる。
【0031】
請求項7に係る発明では、請求項1又は2に記載の樹脂製排水ますの内副管または仕切り板の流出口下端を、前記排水ますの底部から下流側流出口の内径の1/2以上の高さに設置した。
【0032】
請求項7に記載の発明によれば、外部流入管から流れ込む排水は内副管または仕切り板を介して底部排水の流れ方向へ合流させるが、このとき、内副管または仕切り板の流出口下端を排水ますの底部から下流側流出口の内径の1/2以上の高さに設定しておけば、排水ますの底部を流れる排水の流れを阻害することなく、内副管または仕切り板から流れ込む排水を底部排水へ円滑に合流させることができる。
【0033】
請求項8に係る発明では、請求項1又は2に記載の樹脂製排水ますの仕切り板は、前記排水ます本体の内部継目部分における管体の肉厚の違いにより形成された段差、または前記排水ます本体の内部壁面と一体となって形成された段差からなる仕切り板係止手段により、前記排水ます上部から着脱自在に支持させた。
【0034】
すなわち、請求項8に記載の発明によれば、請求項5に記載の内副管係止手段の場合と異なり、仕切り板係止手段を支管から分離して排水ます本体の立上り部とインバート部との内部継目部分、または排水ます本体の立上り部の内部壁面に設けたため、仕切り板は外部流入管の取付け位置とは無関係に独立して排水ます内部に着脱自在に取付けることが可能となる。このため、排水ますに複数の外部流入管を取付けて任意の方向から排水を流入させるような場合であっても、仕切り板を外部流入管の接続位置およびその数などに合わせて設置する必要がなくなり、排水ますの内部スペースを有効利用しながら1つの仕切り板で対応することが可能となる。
【0035】
請求項9に係る発明では、請求項8に記載の樹脂製排水ますに使用される仕切り板は、底部排水の流れ方向に沿って下向きに傾斜しており、かつ、その仕切り面積は排水ます立上り部の水平断面積に対して1/2以上とした。
【0036】
この結果、請求項9に記載の発明によれば、外部流入管から流れ込む排水の流れを仕切り板で受け取り、これを排水ますの底部を流れる排水の流れの向きに方向転換することによって円滑に底部排水へ合流させることができる。
【0037】
請求項10に係る発明では、請求項9に記載の樹脂製排水ますの仕切り板には、前記外部流入管から流れ込む排水を円滑に合流させるための曲面部分が形成させた。
【0038】
この結果、請求項10に記載の発明によれば、たとえば、排水ますに複数の外部流入管を取り付けて任意の方向から排水を流入させるような場合であっても、外部流入管から流れ込む排水を底部排水の流れの向きに方向転換させながら効率よく仕切り板上に集めることができ、底部排水とのより円滑な合流を達成することができる。
【0039】
請求項11に係る発明では、請求項1又は2に記載の樹脂製排水ますに複数個の支管を取付けた。
【0040】
この結果、請求項11に記載の発明によれば、排水ます立上り部の外部表面に外部流入管(枝管)を取付けるための物理的スペースさえ確保すれば、立上り部の任意の位置(高さ、方向)に複数の外部流入管を取り付けることができるため、排水管およびその排水管とは布設高さの異なる複数の外部流入管を1つの排水ますに接続することが可能となり、また、排水経路中に落差配管やドロップますなどといった高低差を吸収するための特別な排水設備を設ける必要がなくなる。
【0041】
請求項12に係る発明では、請求項1又は2に記載の樹脂製排水ますのインバート部を、宅地内排水管または宅地外排水管に接続した。
【0042】
この結果、請求項12に記載の発明によれば、本発明に係る樹脂製排水ますを宅地内のみならず、宅地外にも設置されるような大型の公共排水ますとしても使用することが可能となり、公共ますと接続するために必要となる落差配管やドロップますなどといった高低差を吸収するための特別の排水設備を設ける必要がなくなる。このため、本発明による排水ますは極狭小地においても据付けることが可能となり、また、これに伴って落差配管やドロップますなどを布設するための余分な掘削を行う必要もなくなる。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、外部流入管(枝管)を接続するために排水ますの立上り部に着脱自在に取付けられる支管は、ホ−ルソ−の使用が可能であれば、立上り部の任意の位置(高さ、方向)に後付けすることが可能となるため、たとえ、外部流入管の接続高さや接続方向に制限がある場合(例えば、外部流入管の接続口が上下左右方向に固定されている場合)であっても、無理なく外部流入管を排水ますに接続することができる。
【0044】
また、本発明によれば、内副管を係止めするための内副管係止手段は、排水ますの立上り部ではなく、外部流入管と接続される支管に一体的に設けられており、さらに、かかる支管は立上り部にホールソーを用いて穴加工を施したあと後付けされるものであるため、排水ますの立上り部には、特殊な加工や特殊な形状を必要としない通常の寸胴状の円筒管を使用することが可能となる。
【0045】
この結果、本発明による排水ますは、従来の内副管付き合流排水ますに対して大幅なコストダウンを図ることができる。さらに、本発明による排水ますは、立上り部から排除された枝管用受口の長さに相当する分だけ、従来の内副管付き排水ますより、より大きな口径を有する大径の排水ますを製造することが可能となり、宅地内のみならず、宅地外にも設置されるような大型の公共排水ますとしても使用することができ、その設置場所は外部流入管の接続範囲が自由であることから特に制限されることがない。
【0046】
さらに、本発明によれば、外部流入管から流れ込む排水を、排水ますに内蔵される内副管または仕切り板により落差をもって底部を流れる排水へ円滑に案内するため、1つの排水ますで互いに布設高さの異なる複数の外部流入管を接続することが可能となり、排水経路中に落差配管やドロップますなどといった高低差を吸収するための特別の排水設備を設ける必要がなくなる。このため、本発明による排水ますは極狭小地においても据付けることが可能となり、また、これに伴って落差配管やドロップますなどを布設するための余分な掘削を行う必要もなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、本発明の一実施形態に係る樹脂製排水ますについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示される実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。
【実施例1】
【0048】
図1は、本発明の実施例1の概観図、図2は図1の要部詳細図、図3は図2の要部図で、(A)は上面図、(B)は正面図である。
【0049】
先ず、本発明の実施例1の概要を述べる。本実施例1の内副管付き合流用塩化ビニール製排水ます1は、建屋の基礎コンクリ−ト(図示せず)近傍の屋外に設置する小口径ます(公共排水ますを含んでもよい)であって、全体が合成樹脂製、特に塩化ビニール射出成形品で構成されている。
【0050】
この排水ます1の主な構成は、インバ−ト部2、立上り部3および蓋部4からなり、特に立上り部3は、寸胴状の管体で構成されている。なお、ここで寸胴状の管体と称されるものには、たとえば、後述されるネジ機構のようなナット締付型支管15の取付け位置を上下または左右方向に自在に調節するための構造が立上り部3の下端に付加されているものも含まれる。
【0051】
インバ−ト部2には、その内部に図示されるような段差をもったストレ−ト状の底部排水流路や、図示しないが平面で90°屈折した大曲り状の流路が形成されている。換言すれば、インバート部2には、排水の流入口および流出口、流路が略同一平面上に配置されており、雨水ますやドロップインバ−トのように、これらのすべてが同一平面上に配置されず、複雑な凹凸をもった底部形状を有するものではない。
【0052】
排水ますの蓋部4は密閉型開閉蓋で構成されており、立上り部(点検筒)3に高さ調節用の管体を介在させることなく直接にリング状の蓋枠5を付加することによって、その表面が地表GLと略一致するように設けられている。したがって、立上り部3に接続される枝管(外部流入管)11は、地表GLから浅い深さに埋設される。
【0053】
そして、インバ−ト部2のインバ−ト6の流入口7には、上流側の塩化ビニール製パイプからなる排水管8が、流出口9には下流側の塩化ビニール製パイプからなる排水管10がストレ−ト状にそれぞれの流入口7および流出口9に接着などにより接続されている。
【0054】
ここで、排水ます1に接続される建屋から延びた塩化ビニール製パイプからなる枝管11は、水平面に対して投影的に見ると、排水管8、10に対して直交(図示せず)または平行(図1参照)に配置されるが、垂直面に対して投影的に見ると、その中を流れる排水が落差をもって底部排水と合流するように接続される。したがって、実施例1においては、枝管11から流れ込む排水が滝落し状となって底部排水と合流し、底部排水の円滑な流れを阻害することがないように、立上り部3には内副管12が取付けられる。
【0055】
また、この内副管12は、従来例と同様、排水ます1や排水管8、10の点検または掃除などを行う場合には、蓋部4を開け取出し自在に設置されている。
【0056】
そのため、内副管12の流入口13の外縁の下半分には、図1および図2に示されるように、半円弧状の外向きに拡がったツバ(凸部)14が設けられており、このツバ14を後述されるナット締付型支管15の流出口16から突出して設けられた内副管係止手段(フック)17の凹部に着脱自在に嵌め込むことにより、内副管12をナット締付型支管15に直接係止される。すなわち、内副管12はナット締付型支管15により片持ちに支持されており、マンホ−ルなどに使用されるような固定バンドを使用することなく係止することができる。
【0057】
そして、このナット締付型支管15は、前述されたように寸胴状の管体からなる立上り部3に、施工現場で枝管11との接続位置に合せてホ−ルソ−で開口したあと後付けされることから、任意の高さで、かつ、任意の向きに取付けることができる。また、支管15は後付けタイプのナット締付型であり、このナット締付型支管15は予め立上り部13に固定されていないことから、特に、接続の自由度が制限されている枝管11との接続が容易に、かつ、高い施工精度で行えるようになる。
【0058】
さらに、立上り部3自体には内副管係止手段17が設けられていないので、特殊な加工や特殊な形状を必要としない通常の円筒管の形状に簡略化することができる。
【0059】
次に、本実施例1に用いられる内副管12およびナット締付型支管15について詳細に述べる。
【0060】
内副管12は、合成樹脂製(塩化ビニール製)の射出成形品であって、浅く埋設された枝管11の中の流れaを落差をもって屋外の排水管8、10(建屋の外近傍に略平行に布設され、その下流側を公共ますに接続する)の流れbに円滑に合流させるため、ナット締付型支管15の管軸線延長上に取付けられる。
【0061】
内副管12は、ナット締付型支管15の流出口16から水平に延びた管軸から下方向へ90°方向転換するための90°エルボ18と、この90°エルボ18と接続され、管を切断することにより高さを調節するための連結管体19と、そしてこの連結管体19と接続される半椀状の流出案内部材20とから構成されている。
【0062】
また、内副管12の90°エルボ18の下向き開口部は、立上り部3と略同心円状になるように配置され、かつ、流出案内部材20の開口部の高さ方向の下端位置は、排水ますの底部からインバート部2の流出口9またはこれに接続される下流側排水管10の内径の1/2以上の高さに設置することにより、宅地内の排水管8、10の流れbを阻害することがないようにしている。
【0063】
したがって、この流出案内部材20の開口は、下流側の排水管10の流れb方向に向けて開口していると共に、インバ−ト部2側の立上り部とも高さ方向に重なり合って開口している(図1参照)。
【0064】
なお、排水ます1の立上り部3に複数の内副管12が取り付けられるような場合や、内副管12の口径に対して立上り部3の口径が十分に大きい場合などは、内副管12の90°エルボ18の下向き開口部は、必ずしも立上り部3と同心円状になるように配置される必要はない。
【0065】
また、これらの90°エルボ18および連結管体19、流出案内部材20は、それぞれに接着接合されて一体の内副管12として、蓋部4を開口した時に取出すことができる。
【0066】
そして、この90°エルボ18の流入口13の外周面の略下半分には、前述されたように半円弧状の内副管係止部材であるツバ14が一体成形されている。
【0067】
また、この90°エルボ18の管頂部には、上方向に延びたハンドル21を一体的に設けて、蓋部4を開口した時に内副管12を容易に着脱できるようにしている。
【0068】
図2には、本実施例1で使用されるナット締付型支管15を排水ます1の立上り部3に取り付けた状態での断面図が示されており、図2には、ナット締付型支管15の本体22の上面図および正面図が示されている。
【0069】
ナット締付型支管15は、合成樹脂製、たとえば塩化ビニール射出成形品であって、その基本構造は、本出願人が既に提案し、特許となっている特開2001−56083号公報の中に示されるように、支管本体22と、キ−溝に嵌め込まれているパッキン23を含み前記支管本体22上にスライド自在に嵌め合わされるスペ−サ24と、支管本体22上に刻まれた雄ネジ25と回転して嵌まり合うナット26とから構成されており、前記支管本体22とスペ−サ24との間にはOリング27を介在させてシ−ルしている。
【0070】
この支管本体22の一端には、垂直面に対して投影的に見ると、高さ方向が長径で水平方向が短径である楕円状で外向きに拡がったフランジ28が支管本体22の管軸に対して直交するように一体成形されており、かつ、立上り部3と接するフランジ28の外向きの面は、立上り部3の内部壁面に密接するように弯曲している。
【0071】
また、ナット締付型支管15を取付けるためにホ−ルソ−などを用いて立上り部3に開けられる円形の取付け開口29は、前記フランジ28の長径よりも小さく、そして前記フランジ28の短径よりも若干大きな口径となるように開口される。
【0072】
そして、このフランジ28を取付け開口29を通過させて立上り部3の内部へ挿入するため、フランジ28の内面近傍には取付け開口29と接合するための段差部30と、これに隣接した凹部31とが支管本体22の外周面に設けられている。
【0073】
さらに、この支管本体22には、フランジ28が楕円状に一体成形された端部側とは反対側に、枝管11を接着接合するための規格化された寸法の受口32が形成されている。この受口32の外周部には、前記雄ネジ25が刻まれている。
【0074】
したがって、ナット締付型支管15を立上り部3に設けた取付け開口29に取付けるためには、このフランジ28を取付け開口29に対して傾けて立上り部3の内部へ通過させた後、凹部31を前記取付け開口29の口縁に載せるようにして設置する。
【0075】
次いで、この支管本体22を立上り部3の外部へ若干引き抜き、取付け開口29の口縁に段差部30を当接させると共に、立上り部3と接するフランジ28の外向きの面を立上り部3の内部壁面に密接させ、ナット26を締付けることによりパッキン23付きスペ−サ24を前進させて、これを立上り部3に密接させる。
【0076】
その結果、フランジ28とパッキン23付きスペ−サ24とで立上り部3の周壁を内側および外側から挟み込むことにより、ナット締付型支管15を立上り部3の任意の位置に固定することができる。
【0077】
したがって、立上り部3に取付けられたナット締付型支管15には、その後、枝管11を接合することができる。また、施工現場で、接続される枝管11の位置合わせが必要でない場合は、ナット締付型支管15を生産工場などの施工現場以外の場所で立上り部3に予め取付けておくこともできる。
【0078】
また、ナット締付型支管15の取付作業において、もし、枝管11が建屋のコンクリ−ト基礎などにより邪魔されて、ナット締付型支管15との接続の自由度が制限されるような場合には、予めナット締付型支管15の受口32に枝管11を接合しておいてから、自由にしていたナット26を締付けることによりナット締付型支管15を立上り部3に固定してもよい。このような手順を採用した場合は、固定前の支管本体22の接続方向の柔軟性により、受口32の向きを枝管11の接続位置に合わせて自由に設定することが可能となることから、特に、狭隘化された排水ます1の布設場所においても枝管11と排水ます1との接続作業が容易となり、枝管11の配置が入り組んで非常に複雑化することも回避できる。
【0079】
ナット締付型支管15の流出口16の下半分には、フランジ28から突出した半円弧状の凹部を有する内副管係止手段(フック)17が一体的に設けられており、この係止手段17の凹部に内副管12のツバ14を着脱自在に嵌め込むことにより、内副管12をナット締付型支管15に直接係止するようにしている。
【0080】
なお、内副管係止手段17の形状は、必ずしも一続きの半円弧状の凹部を有する形状である必要はなく、たとえば、この凹部を2以上に分割して配置したものであってもよい。特に、凹部を“逆ハの字”状のように2つに分割した場合は、内副管12に設けられるフランジ28の外径などに多少の製作誤差が生じていても、かかる誤差を吸収することにより内副管12をしっかりと係止することができる。
【0081】
この結果、ナット締付型支管15には内副管係止手段17を形成し、立上り部3には上述されたように内副管係止手段17を設けず、通常の寸胴状の管体で構成することができるので、従来の宅地内設置用の塩化ビニール製内副管付き合流用排水ますでは、その使用が必須とされていたアジャスタ−(枝管用受口付きの上部チ−ズ管体)や高さ調節用の管体を取付ける必要がなくなり、汎用の塩化ビニル製のパイプを用いることもでき、立上り部3における部品点数を大幅に削減することができる。
【0082】
また、ナット締付型支管15の流出口16の管頂部には、ナット締付型支管15および枝管11の内部を点検または掃除するための円弧状凹部33を設けてもよい。この場合は、排水ます1の立上り部3の壁面に取付けられたナット締付型支管15の流出口16が立上り部3の内部壁面から内側へ突出した形状であっても、この突出部に設けられた円弧状凹部33を通してナット締付型支管15およびこれに接続された枝管11の内部を容易に点検または掃除などすることができるようになる。
【0083】
さらに、通常の場合、立上り部3とインバ−ト部2との接続は、立上り部3の下端側を切断し、これをTS接合やゴム輪受口接合によりインバ−ト部2と接続するが、たとえば、立上り部3にナット締付型支管15を予め固定しておき、これを施工現場に持ち込んで現場作業を簡略化しようとする場合などは、立上り部3の下端側に、図1に示されるようなネジ機構34などの高さ調節機構を付加して、インバ−ト部2との接続に際しナット締付型支管15の高さ調節に利用することもできる。
【0084】
また、本実施例1の支管15は、ボルト−ナット結合機構による後付け用のナット締付型支管15で説明したが、本発明はこれに限らず、バヨネット結合機構などを用いてもよく、さらには、インバ−ト部2の立上り受口部にゴム輪受口などを配置するスペース上の余裕がある場合は、立上り部3の外周面に密接するように湾曲しているフランジ部を有する一般の支管に内副管係止手段17を一体成形させておき、これを立上り部3の外周面に接着接合することによって後付けしてもよい。
【実施例2】
【0085】
図4は、本発明の実施例2の概観図であり、実施例2の排水ます1’には、2本の外部枝管(外部流入管)11、11’が接続されている点、および枝管11、11’から流れ込む排水を落差をもって底部排水の流れ方向へ案内するために仕切り板12’が用いられている点で実施例1の排水ます1とは異なる。
【0086】
先ず、本発明の実施例2の概要を述べる。本実施例2の仕切り板付き合流用塩化ビニール製排水ます1’は、建屋の基礎コンクリ−ト(図示せず)近傍の屋外に設置する小口径ます(公共排水ますを含んでもよい)であって、全体が合成樹脂製、特に塩化ビニール射出成形品で構成されている。
【0087】
この排水ます1’の主な構成は、実施例1の排水ます1と同様に、インバ−ト部2、立上り部3および蓋部4からなり、特に立上り部3は、寸胴状の管体で構成されている。なお、ここで寸胴状の管体と称されるものには、たとえば、管汎用パイプを単に所定長さで切断したもの、あるいは、ネジ機構のようなナット締付型支管15’の取付け位置を上下または左右方向に自在に調節するための構造が立上り部3の下端に付加されているものも含まれる。
【0088】
インバ−ト部2は、その内部に図示されるような段差をもったストレ−ト状の底部排水流路や、図示しないが平面で90°屈折した大曲り状の流路が形成されている。換言すれば、インバート部2には、排水の流入口および流出口、流路が略同一平面上に配置されており、雨水ますやドロップインバ−トのように、これらのすべてが同一平面上に配置されず、複雑な凹凸をもった底部形状を有するものではない。
【0089】
排水ますの蓋部4は密閉型開閉蓋で構成されており、立上り部(点検筒)3に高さ調節用の管体を介在させることなく直接にリング状蓋枠5を付加することによって、その表面が地表GLと略一致するように設けられている。したがって、立上り部3に接続される2本の枝管11、11’は、地表GLから浅い深さに埋設される。
【0090】
そして、インバ−ト部2のインバ−ト6の流入口7には、上流側の塩化ビニール製パイプからなる排水管8が、流出口9には下流側の塩化ビニール製パイプからなる排水管10がストレ−ト状にそれぞれの流入口7および流出口8に接着などにより接続されている。
【0091】
ここで、排水ます1’に接続される建屋から延びた塩化ビニール製パイプからなる枝管11、11’は、水平面に対して投影的に見ると、排水管8、10に対して直交(図示せず)または平行(図4参照)に配置されるが、垂直面に対して投影的に見ると、その中を流れる排水が落差をもって底部排水と合流するように接続される。したがって、実施例2においては、2本の枝管11、11’から流れ込む排水が滝落し状となって底部排水と合流し、底部排水の円滑な流れを阻害することがないように、立上り部3には仕切り板12’が取付けられる。
【0092】
また、この仕切り板12’は、排水ます1’や排水管8、10の点検または掃除などを行う場合には、蓋部4を開けて取出し自在に設置されている。なお、本実施例では、プレート形状の仕切り板12’を例示しているが、下流側に流出口を有する管構造を仕切り板12’に設けることも可能である。
【0093】
そのため、排水ます1’のインバート部2と立上り部3との内部継目には、インバート部2の立上り部の管壁の肉厚をこれに接続される立上り部3の管壁の肉厚より厚くして、インバート部2へ立上り部3を接続した時、インバート部2の立上り部の内部壁面が立上り部3の内部壁面より内側に突出させることにより、仕切り板12’ の縁部14’を下から着脱自在に支持するための段差からなる仕切り板係止手段17’が形成されている。
【0094】
また、このように管体の肉厚の違いにより形成された仕切り板係止手段17’は、必ずしも周方向に連続している必要はなく、内部壁面の周方向にわたって万遍なく設けられていれば、複数に分割して形成された仕切り板係止手段(段差部)17’であってもよい。さらに、仕切り板係止手段は、排水ます1’のインバート部2または立上り部3の内部壁面上に直接設けてもよい(図示せず)。
【0095】
管体の肉厚の違いにより仕切り板係止手段17’を形成させた場合は、立上り部3自体には仕切り板係止手段17’が設けられていないので、立上り部3は、特殊な加工や特殊な形状を必要としない通常の円筒管の形状に簡略化することができる。
【0096】
このように、仕切り板係止手段17’を後述されるナット締付型支管15’から分離して排水ます本体の立上り部3とインバート部2との内部継目部分、または排水ます本体の立上り部3の内部壁面に設けた場合は、仕切り板12’は枝管11、11’の取付け位置とは無関係に独立して排水ます1’内部に着脱自在に取付けることが可能となる。このため、排水ます1’に複数の枝管を取付けて任意の方向から排水を流入させるような場合であっても、仕切り板12’を枝管の接続位置およびその数などに合わせて設置する必要がなくなり、排水ます1’の内部スペースを有効利用しながら1つの仕切り板12’で対応することが可能となる。
【0097】
次に、本実施例2に用いられる仕切り板12’およびナット締付型支管15’について詳細に述べる。
【0098】
仕切り板12’は、合成樹脂製(塩化ビニール製)の射出成形品であって、浅く埋設された2本の枝管11、11’の中の流れa、a’を落差をもって屋外の排水管8、10(建屋の外近傍に略平行に布設され、その下流側を公共ますに接続する)の流れbに円滑に合流させるため、インバート部2と立上り部3とが嵌まり合うことによって重なり合う接続部近傍、換言すれば、インバート部2の立上り部上端近傍から、排水ますの底部からインバート部2の流出口9の内径の1/2以上の高さまでの領域に取付けられる。
【0099】
図5には、本実施例2で使用される仕切り板12’を排水ます1’の立上り部3に取付けた状態での平面図が示されており、図6には、図5で示された仕切り板12’をA−A断面で切り取った場合の断面図が示されている。
【0100】
図4および図5を参照すると、仕切り板12’は、底部排水の流れ方向bに沿って下向きに傾斜しており、そして水平面に対して投影的に見ると、立上り部3の内径と略同じ大きさの直径を有している。また、その仕切り板12’は排水ます立上り部3の水平断面積に対して1/2以上の面積を有しており、その一部に支持管15’から流れ込む排水を底部排水の流れへ合流させるための開口部36が半月状に形成されている。
【0101】
この結果、仕切り板12’は、枝管11、11’から流れ込む排水の流れa、a’を仕切り板12’で受け取り、これを排水ます1’の底部を流れる排水の流れの向きbに方向転換した後で底部排水へ合流させることができ、特に、図4に示されるように、排水が流れ込む方向が一定でない複数の枝管11、11’を排水ます1’に接続する場合に有利となる。
【0102】
図4および図6を参照すると、仕切り板12’は、底部排水の流れ方向bに沿って下向きに傾斜しながら緩やかな曲面で構成されており(図4参照)、かつ、その幅方向も底部排水の流れの中心線頂上で最も深くなるように下向きに湾曲するような形状の曲面が形成されている(図6参照)。
【0103】
この結果、実施例2の排水ます1’のように複数の枝管11、11’を取付けて任意の方向から排水を流入させるような場合であっても、枝管11、11’から流れ込む排水を底部排水の流れの向きに方向転換させながら効率よく仕切り板12’上に集めることができ、底部排水とのより円滑な合流を達成することができる。
【0104】
なお、仕切り板12’は、蓋部4を開口した時に容易に排水ます1’に着脱できるようにするために、仕切り板12’の上に上方向に延びたハンドルを一体的に設けてもよく、また、蓋部4と仕切り板12’との間に長さに余裕のある鎖などを連結させて着脱できるようにしてもよい。また、蓋部4を開口した時に適当な工具を用いて仕切り板12’を着脱できるようにしてもよい(いずれも図示せず)。
【0105】
ナット締付型支管15’は、前述されたように寸胴状の管体からなる立上り部3に、施工現場で複数の枝管11、11’毎の接続位置に合せてホ−ルソ−で開口したあと後付けされることから、任意の高さで、かつ、任意の向きに取付けることができる。また、支管15’は後付けタイプのナット締付型であり、このナット締付け支管15’は予め立上り部13に固定されていないことから、特に接続の自由度が制限されている枝管11、11’との接続が容易に、かつ、高い施工精度で行えるようになる。
【0106】
ナット締付型支管15’は、本出願人が既に提案し、特許となっている特開2001−56083号公報の中に示されているものと同一の構造を有するものであってよく、また、図4に示されるように、ナット締付型支管15’から流れ込む排水を水平方向から略下向き方向へ方向変換するための極めて短いエルボ18’が流出口16’と一体となって形成されているものであってもよい。
【0107】
また、後者のように支管本体22’の流出口16’に前記エルボ18’が接続されている場合は、エルボ18’の管頂部にナット締付型支管15’および枝管11、11’の内部を点検または掃除するための円弧状凹部33’を設けてもよい。この場合は、排水ます1’の立上り部3の壁面に取付けられたナット締付型支管15’のエルボ18’が立上り部3の内部壁面から内側へ突出した形状であっても、エルボ18’に設けた円弧状凹部33’を通してナット締付型支管15’およびこれに接続された枝管11、11’の内部を容易に点検または掃除などすることができるようになる。
【0108】
なお、実施例2で使用されるナット締付型支管15’の基本的構造は、上記特開2001−56083号公報および実施例1で詳述されたナット締付け型支管15と同じ構造であり、また、排水ます1’の立上り部3への取付け方法も同じであることから、ここでは、実施例2で使用されるナット締付型支管15’の基本的構造およびその取付け方法についての説明は省略する。
【0109】
この結果、実施例2で使用されるナット締付け型支管15’は、実施例1のナット締付型支管15と同様に、フランジ28’とパッキン付きスペ−サ24’とで立上り部3の周壁を内側および外側から挟み込むことにより、ナット締付型支管15’を立上り部3の任意の位置に固定することができる。
【0110】
特に、実施例2の排水ます1’の場合は、実施例1の内副管付き排水ます1の場合と異なり、仕切り板係止手段17’をナット締付型支管15’から分離して排水ます本体の立上り部3とインバート部2との内部継目部分、または排水ます本体の立上り部3の内部壁面に設けたため、仕切り板12’は枝管11、11’の取付け位置とは無関係に独立して排水ます内部に着脱自在に取付けることが可能となり、図4に示されるように、排水ます1’に複数の枝管を取付けて任意の方向から排水を流入させるような場合であっても、仕切り板12’を枝管の接続位置およびその数などに合わせて設置する必要がなくなり、排水ます1’の内部スペースを有効利用しながら1つの仕切り板12’で対応することが可能となる。
【0111】
また、実施例2の排水ます1’によれば、立上り部3の外部表面に枝管を取付けるための物理的スペースさえ確保すれば、立上り部3の任意の位置(高さ、方向)に複数の枝管を取り付けることができるため、排水管8、10およびその排水管とは布設高さの異なる複数の枝管を1つの排水ます1’に接続することが可能となり、また、排水経路中に落差配管やドロップますなどといった高低差を吸収するための特別な排水設備を設ける必要がなくなる。
【0112】
なお、立上り部3に取付けられたナット締付型支管15’は、取付け後、枝管11、11’を接合してもよいし、または、施工現場で、接続される枝管11、11’の位置合わせが必要でない場合は、ナット締付型支管15’を生産工場などの施工現場以外の場所で立上り部3に予め取付けておいてもよい。
【0113】
さらに、ナット締付け型支管15’の取付作業において、もし、枝管11、11’が建屋のコンクリ−ト基礎などにより邪魔されて、ナット締付型支管15’との接続の自由度が制限されるような場合には、予めナット締付型支管15’の受口32’に枝管11、11’を接合しておいてから、自由にしていたナット26’を締付けることによりナット締付型支管15’を立上り部3に固定してもよい。
【0114】
また、さらに実施例2の排水ます1’においても、立上り部3は略寸胴状の管体で構成することができるので、従来の宅地内設置用の塩化ビニール製内副管付き合流用排水ますでは、その使用が必須とされていたアジャスタ−(枝管用受口付きの上部チ−ズ管体)や高さ調節用の管体を取付ける必要がなくなり、立上り部3における部品点数を大幅に削減することができる。
【0115】
また、本実施例2の支管15’は、ボルト−ナット結合機構による後付け用のナット締付型支管15’で説明したが、本発明はこれに限らず、バヨネット結合機構などを用いてもよく、さらには、インバ−ト部2の立上り受口部にゴム輪受口などを配置するスペース上の余裕がある場合は、立上り部3の外周面に密接するように湾曲しているフランジ部を有する一般の支管を立ち上がり部3の外周面に接着接合することによって後付けしてもよい。
【実施例3】
【0116】
実施例3は、複数の外部枝管が接続されており、かつ、これに対応した数の内副管を内部に有する塩化ビニール製排水ますであって、図7にはその上面図が示されており、図8には図7に示された排水ますをB−B断面で切り取った場合の断面図が示されている。
【0117】
実施例3の排水ます1は、その内部に内副管12を備えている点で実施例1の排水ますと同じ構造を有し、また、立上り部3に複数のナット締付型支管15、15’を備えている点で実施例2の排水ますと同じ構造を有している。
【0118】
このように、本発明においては図7及び図8に示されるように、複数の内副管12とナット締付型支管15、15’を設置することも可能である。ここでは、流出口を下流側に配向させた2個の内副管12を設置しているが、立上り部3の口径が大きくなれば、内副管を3個、4個と増やすことも可能である。なお、実施例3の排水ます1の他の基本構造は、実施例1及び2で示した排水ますと同じである。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明の実施例1の全体図である。
【図2】図1の要部詳細図である。
【図3】図2の要部詳細図である。
【図4】本発明の実施例2の全体図である。
【図5】仕切り板を排水ますに取付け状態の要部平面図である。
【図6】図5の仕切り板をA−A断面で切り取った場合の要部断面図である。
【図7】複数の支管及び内副管を設置した本発明の実施例3の上面図である。
【図8】図7の排水ますをB−B断面で切り取った場合の断面図である。
【符号の説明】
【0120】
1、1’ …排水ます
2 …インバ−ト部
3 …立上り部
4 …蓋部
11、11’…枝管
12 …内副管
12’ …仕切り板
14 …ツバ
15、15’…支管(ナット締付型支管)
17 …内副管係止手段
17’ …仕切り板係止手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部流入管から流れ込む排水を落差をもって底部排水の流れ方向へ案内するための内副管または仕切り板が内蔵された樹脂製排水ますであって、
前記排水ますの壁面には外部流入管と内部内副管、または外部流入管と排水ます内部とを連通させつつ接続するための支管が着脱自在に取付けられることを特徴とする前記樹脂製排水ます。
【請求項2】
インバート部と、
前記インバート部に接続される立上り部と、そして
前記立上り部を覆う蓋部とからなる樹脂製排水ますであって、
前記排水ますの内部には、外部流入管から流れ込む排水を落差をもって前記インバート部へ案内するための内副管または仕切り板が内蔵されており、
前記立上り部の壁面には、前記外部流入管および内副管、または外部流入管と排水ます内部とを連通させつつ接続するための支管が着脱自在に取付けられることを特徴とする前記樹脂製排水ます。
【請求項3】
前記支管は、ナット締付型支管である請求項1又は2に記載の樹脂製排水ます。
【請求項4】
前記ナット締付型支管の排水ます内部側突出部には、前記支管および外部流入管の内部を点検または掃除するための当たり面が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の樹脂製排水ます。
【請求項5】
前記内副管は、前記支管と一体となって形成された内副管係止手段により、前記排水ます上部から着脱自在に支持されることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂製排水ます。
【請求項6】
前記内副管係止手段は、前記内副管の外周面上に設けられた凸部と嵌合する凹部を含むことを特徴とする請求項5に記載の樹脂製排水ます。
【請求項7】
前記内副管または前記仕切り板の流出口下端は、前記排水ますの底部から下流側流出口の内径の1/2以上の高さに設置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂製排水ます。
【請求項8】
前記仕切り板は、前記排水ます本体の内部継目部分における管体の肉厚の違いにより形成された段差、または前記排水ます本体の内部壁面と一体となって形成された段差からなる仕切り板係止手段により、前記排水ます上部から着脱自在に支持されることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂製排水ます。
【請求項9】
前記仕切り板は、底部排水の流れ方向に沿って下向きに傾斜しており、かつ、その仕切り面積は排水ます立上り部の水平断面積に対して1/2以上であることを特徴とする請求項8に記載の樹脂製排水ます。
【請求項10】
前記仕切り板には、前記外部流入管から流れ込む排水を円滑に合流させるための曲面部分が形成されていることを特徴とする請求項9に記載の樹脂製排水ます。
【請求項11】
前記支管は、複数個取付けられる請求項1又は2に記載の樹脂製排水ます。
【請求項12】
前記樹脂製排水ますは、宅地内排水管または宅地外排水管に接続される請求項1又は2に記載の樹脂製排水ます。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−266075(P2006−266075A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−419(P2006−419)
【出願日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】