説明

吸排気弁駆動装置

【課題】動弁系の重量を増大させることなくリフト量を可変にすることができる吸排気弁駆動装置を提供する。
【解決手段】エンジン2の吸気弁31または排気弁32が、ロッカーシャフト4を支点にカム5の回転に応じて揺動するロッカーアーム6によりリフトされ、そのロッカーアーム6は、一端部に上記吸気弁31または上記排気弁32が係合すると共に他端部に上記カム5が摺接し、それら両端部の間に上記ロッカーシャフト4が係合する吸排気弁駆動装置1において、上記ロッカーシャフト4を上記ロッカーアーム6に沿って移動させ上記ロッカーアーム6の揺動の支点を変更して、上記吸気弁31または上記排気弁32のバルブリフト量Lを変更するバルブリフト量変更手段7を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの吸気弁または排気弁を開閉すると共に、そのバルブリフト量を可変とした吸排気弁駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載された原動機(エンジン)の吸入空気量、負荷に応じて、吸気弁・排気弁の位相やバルブリフト量を可変とすることにより、より良い効率、燃費向上、排ガス低減を可能とする機構が、種々提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
例えば、吸気弁・排気弁の位相を可変にするものとしては、図4に示すようなカム位相可変機構がある。
【0004】
図4に示すように、カムシャフト101には、吸気弁または排気弁を開閉するための複数のカム102と、クランクシャフトからの回転をカムシャフト101に伝達するためのドリブンギア103とが設けられる。そのドリブンギア103の内部には、作動油が供給・排出される作動油室が形成され、その作動油室内には、カムシャフト101に結合されたベーンが回動可能に収容される。
【0005】
この図4のカム位相可変機構では、作動油室内の作動油の油圧制御によりカムシャフト101をドリブンギア103に対して回動させることで、カム102が吸気弁・排気弁を押圧するタイミングを変更して位相を可変としている。
【0006】
また、吸気弁・排気弁のバルブリフト量を可変にするものとしては、BMWのバルブトロニック(登録商標)が知られている。そのバルブトロニックの概要を図5に基づき説明する。図5(a)は、高リフト時のバルブ閉状態を示し、図5(b)は高リフト時のバルブ開状態を示す。図5(c)は、低リフト時のバルブ閉状態を示し、図5(d)は低リフト時のバルブ開状態を示す。
【0007】
図5(a)−図5(d)において、111は吸気弁または排気弁、112はカム、113はスイングアーム式のロッカーアーム、114はロッカーアーム113の回動中心をなすラッシュアジャスターである。
【0008】
この図5の機構では、カム111とロッカーアーム113との間に中間アーム115が設けられる。カム111は、ロッカーアーム113に直接作動せず、中間アーム115を介して作動する。中間アーム115の上方にはピボットポイント116が設けられる。そのピボットポイント116を左右に動かすことにより中間アーム115のレバー比が変化し、ロッカーアーム113のレバー比が変化する。このように、図5の機構は、バルブリフト量が図5(a)および(b)と、図5(c)および(d)との間で連続的に、かつ大きな変化を得る構造になっている。
【0009】
【特許文献1】特開2003−214123号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、図5の機構は、中間アーム115が追加されているため、動弁系(吸排気弁や、その吸排気弁にカムからの動力を伝達する部材)の重量が増加してしまい、バルブスプリング荷重を強くしなければならない。また、中間アーム115とロッカーアーム113との間に摩擦が生じるため、燃費の得られる効果を減ずることになる。また、図5の機構には、ピボットポイント116を動かすための動力源を外部に追加する必要がある。
【0011】
他方、図4の機構は、バルブ開閉時期のクランクアングルに対するタイミングを可変にすることはできるが、バルブリフト量を変えることはできない。特に、圧縮比の高いディーゼル機関においては、ピストンにバルブリセス(逃げ)を十分に設けることができず、位相をずらすとバルブとピストンの干渉を引き起こす。
【0012】
以上のように、従来の機構には、バルブリフト量を可変にできない(図4)、または動弁系の重量が増大してしまう(図5)という問題があった。
【0013】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、動弁系の重量を増大させることなくバルブリフト量を可変にすることができる吸排気弁駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために本発明は、エンジンの吸気弁または排気弁が、ロッカーシャフトを支点にカムの回転に応じて揺動するロッカーアームによりリフトされ、そのロッカーアームは、一端部に上記吸気弁または上記排気弁が係合すると共に他端部に上記カムが摺接し、それら両端部の間に上記ロッカーシャフトが係合する吸排気弁駆動装置において、上記ロッカーシャフトを上記ロッカーアームに沿って移動させ上記ロッカーアームの揺動の支点を変更して、上記吸気弁または上記排気弁のバルブリフト量を変更するバルブリフト量変更手段を備えたものである。
【0015】
好ましくは、上記バルブリフト量変更手段は、上記ロッカーシャフトを保持するロッカーシャフトキャリアと、上記ロッカーシャフトを上記ロッカーアームに沿って移動させるべく、上記ロッカーシャフトキャリアを、上記ロッカーシャフトからオフセットされた回動軸まわりに回動させるキャリア回動手段とを有するものである。
【0016】
好ましくは、上記ロッカーシャフトが上記ロッカーアームに当接すると共に、そのロッカーアームにおける上記ロッカーシャフトとの当接面が上記ロッカーシャフトの回動軌跡に沿った曲面状に形成されたものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、動弁系の重量を増大させることなくバルブリフト量を可変にすることができるという優れた効果を発揮するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好適な一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0019】
本実施形態の吸排気弁駆動装置は、例えば、車両に搭載されたディーゼルエンジンなどに適用される。
【0020】
図1から図3に基づき本実施形態の吸排気弁駆動装置の概略構造を説明する。なお、図1において、左が車両前方、右が車両後方である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態のディーゼルエンジン(以下エンジンという)2は、複数(図1では4つ)の気筒を有する多気筒エンジンである。図例のエンジン2では、1つの気筒に2つの吸気弁31と2つの排気弁32とが各々設けられる。
【0022】
これら吸気弁31と排気弁32とを開閉駆動するための吸排気弁駆動装置1がエンジン2に設けられる。ここで、本実施形態の吸排気弁駆動装置1は、吸気弁31と排気弁32とのいずれをも対象とし得るので、以下、吸気弁31および排気弁32をあわせてバルブ3として説明する。
【0023】
図2に示すように、エンジン2のシリンダヘッド21には、気筒内に吸気を供給するための、或いは排気を排出するためのポート22が形成され、そのポート22がバルブ3により開閉される。そのバルブ3は、閉弁時、図示しないバルブスプリングにより閉弁側(図2では上側)に付勢されてポート22のバルブシート23に着座する。他方、開弁時には、バルブ3のステム301が吸排気弁駆動装置1により開弁側(図2では下側)に押圧されてリフトする。
【0024】
その吸排気弁駆動装置1は、ロッカーシャフト4を支点として回動するロッカーアーム6を介してカムシャフト51のカム5のリフトをバルブ3に伝える構造を有するエンジン2(原動機)に適用される。吸排気弁駆動装置1は、ロッカーシャフト4をロッカーシャフトキャリア8に保持させ、そのロッカーシャフトキャリア8を回転させることによってロッカーシャフト4を移動させることが可能となるような構造を有する。吸排気弁駆動装置1は、ロッカーシャフト4の位置を移動させることにより、バルブリフト時(開弁時)のロッカーアーム6の支点が変わり、連続的にバルブリフト量を変化させることを可能ならしめる装置である。
【0025】
より具体的には、吸排気弁駆動装置1は、エンジン2により回転駆動されるカムシャフト51と、カムシャフト51に設けられカムシャフト51と一体的に回転するカム5と、そのカム5の回転に応じてロッカーシャフト4を支点に揺動してバルブ3をリフトさせるロッカーアーム6と、そのロッカーアーム6のロッカー比を変更することでバルブ3のバルブリフト量Lを変更するバルブリフト量変更手段7とを備える。
【0026】
これらカムシャフト51、カム5、ロッカーアーム6、およびバルブリフト量変更手段7は、シリンダヘッド21の上部に設けられたロッカーケース25内に収容される。カムシャフト51は、シリンダヘッド21の上面と同じ高さに中心を持つように配置されている。カムシャフト51とバルブ3の上に、ロッカーアーム6が置かれており、ロッカーアーム6は、その上に置かれているロッカーシャフト4を支点としてカム5のカムリフト量をバルブ3に伝える。
【0027】
図1に示すように、カムシャフト51は、シリンダヘッド21の長手方向(図1の左右方向)に、シリンダヘッド21のほぼ全長に亘り延びる。カムシャフト51は、シリンダヘッド21の幅方向(図1の上下方向)のほぼ中央に配置され、バルブ3(吸気弁31および排気弁32)に対して上記幅方向に離間する。カムシャフト51には、その軸方向に間隔を隔てて複数(図例では5つ)の軸受部52が形成され、それら軸受部52がシリンダヘッド21および/またはロッカーケース25に回転自在に支持される。
【0028】
カムシャフト51の一端(図1の左端)には、ドリブンギヤ53が設けられ、そのドリブンギヤ53に、図示しない動力伝達機構(ギヤトレーンなど)を介してエンジン2のクランク軸からの回転駆動力が伝達される。
【0029】
そのカムシャフト51には複数のカム5が設けられる。カム5は、各バルブ3(吸気弁31および排気弁32)ごとに各々形成される。
【0030】
図2に示すように、カム5は、バルブ3のステム301の上端部とほぼ同じ高さ位置に配置される。それらカム5とバルブ3との上方には、ロッカーアーム6が配置される。
【0031】
そのロッカーアーム6は、カムシャフト51と直交する方向に延びる。そのロッカーアーム6は、一端部(左端部)にバルブ3が係合すると共に他端部(右端部)にカム5が摺接し、それら両端部の間にロッカーシャフト4が係合する。具体的には、ロッカーアーム6の左端部の下面に、バルブ3のステム301の上端に当接するリフタ62が設けられ、右端部の下面に、カム5と摺接するスリッパ61が設けられる。
【0032】
ロッカーアーム6の上面には、ロッカーシャフト4が当接する当接面63が形成される。その当接面63は下方に窪む曲面形状を有し、ロッカーアーム6の長手方向に所定長さ延びる。詳しくは後述するが、本実施形態では、ロッカーシャフト4がロッカーアーム6の長手方向に円弧状の軌跡に沿って移動可能であることから、当接面63は、ロッカーシャフト4の回動軌跡とほぼ同じ形状(断面円弧状)に形成される。
【0033】
ロッカーアーム6は、シリンダヘッド21および/またはロッカーケース25に設けられた図示しない支持部材により、その長手方向(図2の左右方向)と幅方向(図2の紙面表裏方向)とに移動不能に支持される。
【0034】
ロッカーシャフト4は、ロッカーアーム6の上方にロッカーアーム6の当接面63に当接させて配置される。図1に示すように、ロッカーシャフト4は、カムシャフト51とほぼ平行にシリンダヘッド21のほぼ全長に亘り延びる。そのロッカーシャフト4が、バルブリフト量変更手段7により保持される。
【0035】
そのバルブリフト量変更手段7は、ロッカーシャフト4を保持するロッカーシャフトキャリア8と、そのロッカーシャフトキャリア8を、ロッカーシャフト4から上方にオフセットされた回動軸Cまわりに回動させるキャリア回動手段9と、ロッカーシャフトキャリア8の回動角を検出するためのキャリア回動角検出手段をなす回転角センサ71とを有する。
【0036】
ロッカーシャフトキャリア8は、回動軸Cに同心的な円板状に形成された複数(図例では5つ)の保持部材81を有する。それら保持部材81は、ロッカーシャフト4の軸方向に沿って並べられる。図例の保持部材81は、ロッカーシャフト4の両端部と、各気筒間とに各々配置される。保持部材81は、シリンダヘッド21および/またはロッカーケース25に、回動軸Cまわりに回動自在に収容される。
【0037】
図2に示すように、各保持部材81には、ロッカーシャフト4が嵌合する保持穴82が形成される。その保持穴82は、保持部材81の中心(回動軸C)から下方に離間した位置に配置される。図1に示すように、これら保持部材81のうち、最も右側の保持部材81にキャリア回動手段9が連結される。
【0038】
そのキャリア回動手段9は、油圧で作動するベーン型の揺動アクチュエータからなる。
【0039】
すなわち、ロッカーシャフト4は、ロッカーシャフトキャリア8に保持されており、そのロッカーシャフトキャリア8の後端は、キャリア回動手段9の後述する作動油室92のベーン93に連結シャフト94を介して接合されている。そのロッカーシャフトキャリア8の後端に設けられた作動油室92に、作動油がオイルコントロールバルブ3を介してロッカーシャフトキャリア8の内部に設けられた油通路921を通り導かれる。
【0040】
より具体的には、キャリア回動手段9は、シリンダヘッド21および/またはロッカーケース25に固定されたハウジング91と、そのハウジング91内に形成され作動油(図例ではエンジン2の潤滑油)が供給または排出される作動油室92と、その作動油室92内に相対回動可能に収容されたベーン93と、そのベーン93をロッカーシャフトキャリア8に連結する連結シャフト94と、ベーン93を回動させるべく作動油室92内の作動油の流量(または油圧)を制御するためのオイルコントロールバルブ95とを有する。
【0041】
連結シャフト94は、ハウジング91に回動自在に支持され回動軸Cと同心的に配置される。連結シャフト94は、左端がロッカーシャフトキャリア8に結合され右端がベーン93の後述するボス部96に結合される。その連結シャフト94には、回転角センサ71のための検出歯(図示せず)が形成される。
【0042】
図3に示すように、ベーン93は、ボス部96と、そのボス部96から放射状に径方向外側に延びる複数のベーン本体97とを有する。ベーン本体97は扇状に形成され、作動油室92内に配置される。
【0043】
作動油室92は、ハウジング91内にベーン本体97と同じ数だけ形成される。それら作動油室92は、ベーン93のボス部96まわり(回動軸Cまわり)に周方向に間隔を隔てて配置される。各作動油室92は、ベーン本体97とほぼ同様の扇状に形成され、ベーン本体97が周方向に揺動可能なようにベーン本体97よりも周方向に長く形成される。
【0044】
オイルコントロールバルブ95は、作動油室92の流入量および流出量をコントロールするものであり、作動油室92に連通する2つの油通路921、921と、シリンダヘッド21などに形成された潤滑油供給ライン98および潤滑油排出ライン99とに各々接続される。
【0045】
また、オイルコントロールバルブ95は、エンジン2の電子コントロールユニット(以下、ECUという)10に接続され、そのECU10からの制御信号を受信する。
【0046】
このECU10がオイルコントロールバルブ95により作動油室92の流量を制御してベーン本体97に作用する油圧を調整することで、ベーン93(ロッカーシャフトキャリア8)の回動角度が所定範囲θ内で連続的に変更される。
【0047】
回転角センサ71は、連結シャフト94の回動角を、ロッカーシャフトキャリア8の回動角として検出する。回転角センサ71は、連結シャフト94の検出歯(図示せず)に臨ませて、キャリア回動手段9のハウジング91に取り付けられる。回転角センサ71は、ECU10に接続されECU10に検出値を送信する。
【0048】
次に、図2に基づき本実施形態の吸排気弁駆動装置1の作用を説明する。
【0049】
図2に示すように、エンジンからの駆動力によりカムシャフト51が回転すると、その回転に伴いカム5は、ロッカーアーム6のスリッパ61を上方に押圧する。スリッパ61を押圧されたロッカーアーム6は、ロッカーシャフト4との当接位置を支点に反時計回りに回動し、その回動に伴いロッカーアーム6のリフタ62がバルブ3のステム301を下方に押圧する。これにより、バルブ3が押し下げられてバルブシート23から下方に離間し、バルブ3がリフトする。
【0050】
このときのバルブ3のバルブリフト量Lは、カム5のカムリフト量に、ロッカー比(ロッカーシャフト4からリフタ62までの距離/ロッカーシャフト4からスリッパ61までの距離)を乗じたものになる。
【0051】
つまり、バルブリフト量Lを変更するパラメータとしては、カムリフト量および/またはロッカー比が考えられるが、本実施形態では、ロッカーシャフト4(支点)の位置を変更することでロッカー比を変更し、バルブリフト量Lを変更する。
【0052】
具体的には、キャリア回動手段9によりロッカーシャフトキャリア8を回動させると、その回動に伴いロッカーシャフト4がロッカーアーム6の長手方向に移動し、ロッカーシャフト4とロッカーアーム6との当接位置が変わる。これにより、ロッカーアーム6の揺動(回動)の支点が変わり、ロッカー比が変わり、バルブリフト量Lが変わる。
【0053】
例えば、図2のA位置にロッカーシャフト4が位置するときに、ロッカーシャフトキャリア8を反時計回りに所定角度θ回動させると、ロッカーシャフト4は円周Tに沿ってリフタ62側に図1のB位置まで移動する。この場合、ロッカー比は小さくなり、バルブリフト量Lが小さくなる。なお、バルブリフト量Lの変更は、全ての気筒のバルブ3(吸気弁31または排気弁32)で一度に行われる。
【0054】
このように、ロッカーシャフトキャリア8の回動方向によりバルブリフト量Lが増大するか減少するかが決まり、ロッカーシャフトキャリア8の回動角の大きさによりバルブリフト量Lの大きさ(変更量)が決まる。
【0055】
このバルブリフト量Lの制御が、例えばECU10によりエンジン2の運転状態に基づいて行われる。その制御の一例を説明すると、まず、ECU10はエンジン負荷やエンジン回転数などから目標バルブリフト量を求め、その求めた目標バルブリフト量を得るためのロッカーシャフトキャリア8の目標角度を求める。次に、ECU10は、求めた目標角度に、回転角センサ71により検出されるロッカーシャフトキャリア8の実際の角度が一致するように、オイルコントロールバルブ95を制御する。
【0056】
これにより、バルブリフト量Lを、エンジン2の回転や負荷に応じた最適なバルブリフト量に制御することが可能となる。
【0057】
このように、本実施形態の吸排気弁駆動装置1では、動弁系の重量を増大させることなくバルブリフト量Lを可変にすることができる。
【0058】
すなわち、エンジン2のバルブリフト量Lを可変とすることは、排ガス、燃費に対して著しく効果があるが、本実施形態の吸排気弁駆動装置1は、図5の既知の装置と異なり、カムシャフト51を直接動かしているため、動弁系の重量も増加せず、また、従来の図5の機構のように中間アーム115などを必要としないことから、その燃費の効果はたいへん大きい。
【0059】
また、本実施形態では、ロッカーアーム6の当接面63をロッカーシャフト4の回動軌跡に沿って下方に窪む曲面状に形成したので、その当接面63上でロッカーシャフト4をスムーズに移動させることができる。
【0060】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、様々な変形例や応用例が考えられるものである。
【0061】
例えば、吸排気弁駆動装置1を適用するエンジンは、ディーゼルエンジンに限定されず、ガソリンエンジンでもよい。
【0062】
また、キャリア回動手段は、ベーン型の揺動アクチュエータに限定されず、様々なものが可能である。例えば、キャリア回動手段は、電動モータ(DCモータなど)でもよい。
【0063】
また、上述の実施形態では、ロッカーシャフトがロッカーアームの上面に当接するが、これに限定されず、ロッカーアームに、ロッカーシャフトが挿通されロッカーシャフトの移動軌跡に沿って延びるスリットを形成することも考えられる。
【0064】
また、上述の実施形態では、ロッカーシャフトを回動軸まわりに回動させたが、これに限定されず、ロッカーシャフトを直動させるようにしてもよい。例えば、バルブリフト量変更手段を、ロッカーシャフトを保持するロッカーシャフトキャリアと、そのロッカーシャフトキャリアおよびロッカーシャフトを、ロッカーアームの長手方向に沿って移動させるキャリア直動手段(リニアアクチュエータなど)とで構成することが考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は、本発明に係る一実施形態による吸排気弁駆動装置の平面図である。
【図2】図2は、本実施形態の吸排気弁駆動装置の側面図である。
【図3】図3は、本実施形態のキャリア回動手段の模式図である。
【図4】図4は、従来の吸排気弁駆動装置の概略図である。
【図5】図5は、従来の他の吸排気弁駆動装置の概略図である。
【符号の説明】
【0066】
1 吸排気弁駆動装置
2 エンジン
3 バルブ
4 ロッカーシャフト
5 カム
6 ロッカーアーム
7 バルブリフト量変更手段
8 ロッカーシャフトキャリア
9 キャリア回動手段
31 吸気弁
32 排気弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの吸気弁または排気弁が、ロッカーシャフトを支点にカムの回転に応じて揺動するロッカーアームによりリフトされ、そのロッカーアームは、一端部に上記吸気弁または上記排気弁が係合すると共に他端部に上記カムが摺接し、それら両端部の間に上記ロッカーシャフトが係合する吸排気弁駆動装置において、
上記ロッカーシャフトを上記ロッカーアームに沿って移動させ上記ロッカーアームの揺動の支点を変更して、上記吸気弁または上記排気弁のバルブリフト量を変更するバルブリフト量変更手段を備えたことを特徴とする吸排気弁駆動装置。
【請求項2】
上記バルブリフト量変更手段は、上記ロッカーシャフトを保持するロッカーシャフトキャリアと、上記ロッカーシャフトを上記ロッカーアームに沿って移動させるべく、上記ロッカーシャフトキャリアを、上記ロッカーシャフトからオフセットされた回動軸まわりに回動させるキャリア回動手段とを有する請求項1記載の吸排気弁駆動装置。
【請求項3】
上記ロッカーシャフトが上記ロッカーアームに当接すると共に、そのロッカーアームにおける上記ロッカーシャフトとの当接面が上記ロッカーシャフトの回動軌跡に沿った曲面状に形成された請求項2記載の吸排気弁駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−138714(P2010−138714A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313269(P2008−313269)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】