説明

回転振れ測定装置およびスケール部

【課題】測定対象物の変位に対する出力特性の変動を抑えることで、測定対象物の軸心の振れの測定精度を向上させることができる回転振れ測定装置およびスケール部を提供する。
【解決手段】スケール部11をシャフトFに取り付け、X軸ヘッド部22に対してシャフトFを回転させると、スケール部11は、X軸ヘッド部22の照射ユニット30から照射されたレーザー光線L1を、シャフトFが一回転する間連続してX軸ヘッド部22のエンコーダ受光ユニット40に反射する。このように、シャフトFの軸心Tの振れを、スケール部11の変位によるレーザー光線L2の強さの変化の回数によって測定しているので、長時間の測定においても、シャフトFの電気的特性変化に影響されることなくシャフトFの軸心Tの振れを測定することができる。よって、長時間の測定において軸心Tの振れの測定精度を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転振れ測定装置に関し、特に、軸状の測定対象物の変位に対する出力特性の変動を抑えることで、測定対象物の軸心の振れの測定精度を向上させることができる回転振れ測定装置およびスケール部に関するものである。
【背景技術】
【0002】
測定対象物の回転変位量を測定する測定装置として、測定対象物に非接触とすることで測定対象物への影響を除去して、回転している測定対象物の軸心の振れを測定する回転振れ測定装置が知られている。その内の1つに測定対象物の静電容量を測定する静電容量型変位計がある。
【0003】
例えば、特開2005−43203号公報には、静電容量型変位計を用いて、精密測定器などの回転軸の振れを測定する技術が記載されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2005−43203号公報([段落0002])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の技術では、静電容量型変位計を用いているため、測定対象物の温度変化によって静電容量が変動して、測定対象物の変位に対する出力特性が変動する。そのため、特に、長時間の計測では、測定対象物が回転することにより発生する摩擦熱などの影響で測定対象物の温度が変動して、測定対象物の変位に関係なく測定される静電容量が変動していた。その結果、測定対象物の変位に対する静電容量の出力特性が変動し、測定精度が悪化するという問題点があった。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、測定対象物の変位に対する出力特性の変動を抑えることで、測定対象物の軸心の振れの測定精度を向上させることができる回転振れ測定装置およびスケール部を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために請求項1記載の回転振れ測定装置は、光線を照射する照射部と、その照射部により照射された光線を反射回折すると共に測定対象物に取着されるスケール部と、そのスケール部によって反射回折された光線の強さを測定するエンコーダ受光部とを備え、前記スケール部は、前記照射部より照射された光線を吸収拡散するか透過させる複数のスケール吸収部と、それら複数のスケール吸収部の間に交互に配設されると共に前記光線を反射する複数のスケール反射部とを備え、前記エンコーダ受光部は、前記光線の強さを測定するA相受光部と、そのA相受光部と同時に前記光線を測定できる範囲内に配設されその範囲内で前記スケール部の移動方向に前記A相受光部と位置を違えて配設されると共に前記光線の強さを測定するB相受光部とを備えるものであり、前記スケール吸収部は、環状に構成され、前記スケール反射部は、前記スケール吸収部に対して同心円の環状に構成されている。
【0007】
請求項2記載の回転振れ測定装置は、請求項1記載の回転振れ測定装置において、前記エンコーダ受光部を複数備え、それら複数のエンコーダ受光部の内の少なくとも1つは、その他のエンコーダ受光部に対して前記同心円格子の中心を挟んだ対向する位置に配設されている。
【0008】
請求項3記載の回転振れ測定装置は、請求項1記載の回転振れ測定装置において、前記エンコーダ受光部を複数備え、それら複数のエンコーダ受光部の内の少なくとも1つは、前記同心円格子の中心に対して前記同心円の円周方向にその他のエンコーダ受光部から直角に位置を違えて配設されている。
【0009】
請求項4記載の回転振れ測定装置は、請求項1から3のいずれかに記載の回転振れ測定装置において、前記照射部により照射された光線を反射回折すると共に測定対象物に取着される角度スケール部を備え、前記角度スケール部は、環状に構成され、前記照射部より照射された光線を吸収拡散するか透過させる複数の角度スケール吸収部と、前記角度スケールの円周方向でそれら複数の角度スケール吸収部の間に交互に配設されると共に前記光線を反射する複数の角度スケール反射部とを備え、前記角度スケール部は、前記スケール部と一体として構成されている。
【0010】
請求項5記載のスケール部は、請求項1から4のいずれかに記載の回転振れ測定装置に使用されること。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の回転振れ測定装置によれば、照射部からスケール部に光線が照射される。スケール部のスケール吸収部に照射された光線は、スケール吸収部に吸収拡散され、スケール部のスケール反射部に照射された光線は、スケール反射部にて反射され、エンコーダ受光部にて測定される。そのため、照射部およびエンコーダ受光部の位置が固定された状態で、複数のスケール吸収部および、それら複数のスケール吸収部の間毎に交互に配設される複数のスケール反射部が、スケール吸収部とスケール反射部とを結ぶ方向に移動された場合には、スケール反射部にて反射される光線も同じ方向に同じ距離だけ移動する。
【0012】
よって、複数のスケール反射部の間毎には、複数のスケール吸収部が配設されているので、エンコーダ受光部にて測定される光線の強さが変化する。その光線の強さの変化の回数を測定することで、照射部およびエンコーダ受光部に対するスケール部の移動量を測定することができる。
【0013】
また、A相受光部およびB相受光部は、それぞれが同時に光線を測定できる範囲内に配設され、その範囲内でそれぞれが配設される位置がスケール部の移動方向に対して異なる。よって、スケール部がA相受光部からB相受光部へ向かう方向に移動すると、A相受光部が光線を測定した後に、A相受光部およびB相受光部が同時に光線を測定して、その後、B相受光部が光線を測定する。
【0014】
一方、スケール部がB相受光部からA相受光部へ向かう方向に移動すると、B相受光部が光線を測定した後にB相受光部およびA相受光部が同時に光線を測定して、その後、A相受光部が光線を測定する。
【0015】
このように、スケール部の移動方向によりA相受光部およびB相受光部の光線を測定する順番が変わることを利用して、照射部およびエンコーダ受光部に対してのスケール部の移動方向を判別する。
【0016】
上述したように、光線の強さの変化の回数を測定することと、A相受光部およびB相受光部が光線を測定する順番によってスケール部の移動方向を判別することで、照射部およびエンコーダ受光部に対しての移動量を測定する。
【0017】
ここで、本発明によれば、スケール吸収部は、環状に構成され、スケール反射部は、スケール吸収部に対して同心円の環状に構成されているので、測定対象物の軸心の振れを測定することができる。
【0018】
即ち、スケール吸収部およびスケール反射部を測定対象物に取り付け、測定対象物を照射部およびエンコーダ受光部に対して回転させると、スケール吸収部およびスケール反射部は、それぞれ同心円の環状に構成されているので、照射部から照射された光線を測定対象物が一回転する間連続してエンコーダ受光部に反射する。
【0019】
そのため、エンコーダ受光部にて測定される光線の強さの変化を、測定対象物が一回転する間連続して測定することができるので、その光線の強さの変化の回数を測定することと、スケール部の移動方向を判別することで、照射部およびエンコーダ受光部に対するスケール部の移動量を測定することができる。よって、測定対象物が一回転する間の移動量を、測定対象物の軸心の振れとして測定することができる。
【0020】
このように、測定対象物の軸心の振れを、スケール反射部の変位による光線の強さの変化によって測定しているので、長時間の測定においても測定対象物の電気的特性変化に影響されることなく、測定対象物の変位に対する出力特性の変動を抑えて、測定対象物の軸心の振れを測定することができる。よって、長時間の測定において、測定対象物の軸心の振れの測定精度を向上させることができるという効果がある。
【0021】
請求項2記載の回転振れ測定装置によれば、請求項1記載の回転振れ測定装置の奏する効果に加え、それら複数のエンコーダ受光部の内の少なくとも1つは、その他のエンコーダ受光部に対して同心円格子の中心を挟んだ対向する位置に配設されているので、それら一対のエンコーダ受光部で測定対象物の移動量を測定して得られた一対の測定データの差を取ることで、温度変化や遠心力による同心円格子の形状変化の影響が相殺された測定データを得ることができる。
【0022】
即ち、それら一対のエンコーダ受光部は、同心円格子の中心を挟んだ対向する位置に配設されているので、同心円格子が移動すると、それぞれのエンコーダ受光部の測定結果は、移動方向は異なるが移動量は同一となる。例えば、温度変化や遠心力によりスケール部の半径方向への形状が拡大した場合には、同心円格子も拡大するので、同心円格子の中心が移動していなくてもスケール部の半径方向の拡大量を向きの異なる移動量として測定する。
【0023】
よって、それら一対のエンコーダ受光部の測定データの差を取ると、その測定データの差からは、スケール部の半径方向への形状の拡大量が相殺されて、その測定データの差は、同心円格子の中心の移動量に対して2倍となるので、その測定データの差を半分にすることで、温度変化や遠心力によるスケール部の形状変化の影響が相殺された測定データを得ることができる。
【0024】
そのため、温度変化や遠心力によるスケール部の形状変化の影響を相殺して、測定対象物の軸心の振れを測定することができる。その結果、温度変化や遠心力により、スケール部の形状が半径方向へ拡大した場合でも同心円格子の中心の測定データには影響しないので、測定対象物の回転速度が変化したり環境温度が変わったりする長時間の測定において、測定対象物の軸心の振れの測定精度を向上させることができる。
【0025】
請求項3記載の回転振れ測定装置によれば、請求項1記載の回転振れ測定装置の奏する効果に加え、複数のエンコーダ受光部の内の少なくとも1つは、その他のエンコーダ受光部から前記同心円格子の円周方向で、前記同心円格子の中心に対して直角に位置を違えて配設されているので、直交する2方向から測定対象物の移動量を測定することで、その直交する2方向を座標軸とする座標値として測定対象物の軸心の位置を定義することができる。
【0026】
よって、その座標位置に基づいて測定対象物の軸心の軌跡を表示させてその軌跡の形状を観察することで、測定対象物の軸心の動きの良否を視覚的に判断することができるという効果がある。
【0027】
請求項4記載の回転振れ測定装置によれば、請求項1から3のいずれかに記載の回転振れ測定装置の奏する効果に加え、軸心の振れの測定精度を向上させることができるという効果がある。
【0028】
即ち、照射部から角度スケール吸収部に照射された光線は、角度スケール吸収部に吸収拡散され、照射部から角度スケール反射部に照射された光線は、角度スケール反射部にて反射され、エンコーダ受光部にて測定される。
【0029】
そのため、照射部およびエンコーダ受光部の位置が固定された状態で、複数の角度スケール吸収部と、それら複数の角度スケール吸収部の間に交互に配設される複数の角度スケール反射部とが、角度スケール吸収部と角度スケール反射部とを結ぶ方向(角度スケール部の円周方向)に移動された場合には、角度スケール反射部にて反射された光線も同じ方向に同じ距離だけ移動する。
【0030】
よって、複数の角度スケール反射部の間毎には、複数の角度スケール吸収部が配設されているので、エンコーダ受光部にて測定される光線の強さが変化する。その光線の強さの変化の回数を測定することで照射部およびエンコーダ受光部に対する角度スケール部の移動量を測定することができる。
【0031】
また、角度スケール部がスケール部と一体として構成されているので、測定対象物の回転角度を計測する装置(以下、「回転角度計測装置」と称す。)をスケール部と別体とする場合に比べて、スケール部を位置決めして固定した後に、回転角度計測装置を固定することがなく、回転角度計測装置の固定によりスケール部の固定位置がずれることがない。
【0032】
よって、回転角度計装置をスケール部と別体とする場合に比べて、スケール部の組み付け精度が向上されるので、軸心の振れの測定精度を向上させることができるという効果がある。
【0033】
また、角度スケール部がスケール部と一体として構成されているので、回転角度計測装置を別体とする場合に比べて、スケール部または角度スケール部のどちらか一方の位置を決めれば、必然的に、他方の位置がきまる。よって、測定対象物の回転角度を計測する装置の組み付け時の位置調整の手間を省くことができるという効果がある。
【0034】
請求項5記載のスケール部によれば、請求項1から4のいずれかに記載の回転振れ測定装置に使用されるスケール部と同等の効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、回転振れ測定装置100の構成について説明する。図1(a)は、回転振れ測定装置100の上面の概略を示した概略上面図である。なお、理解を容易とするために、スケール吸収部12及び角度スケール吸収部16にハッチングを施している。また、図面を簡素化するために、ヘッド部20が取り付けられ軸受Eを支持する土台を省略して図示している。図1(b)は、図1(a)のIb−Ib線における断面の概略を示した回転振れ測定装置100の概略断面図である。なお、理解を容易とするために、ヘッド部20へのハッチングを省略し、寸法Sの尺度のみ拡大して図示している。
【0036】
図1(a)及び図1(b)に示す矢印Xは、スケール基体部10の半径方向を示しており、矢印Yは、スケール基体部10の半径方向で矢印Xに直交する方向を示しており、矢印Zは、スケール基体部10が取り付けられているシャフトFの軸心Tの方向を示している。なお、ヘッド部20から照射されたレーザー光線L1を実線で、スケール基体部10にて反射回折されたレーザー光線L2を破線で示している。
【0037】
回転振れ測定装置100は、軸受外筒Gに対するシャフトFの変位を測定するものであり、そのシャフトFの軸心Tにスケール基体部10の中心Cを一致させて取り付けることでスケール基体部10の中心CをシャフトFの軸心Tと見なし、スケール基体部10の軸心Tに直交する方向の変位を測定することにより、シャフトFの軸心Tの振れを測定するものである。
【0038】
なお、軸受Eは、土台に支持される円筒形状の軸受外筒Gと、その軸受外筒Gの内部で回転する軸状体であるシャフトFとを備えている。例えば、軸受Eは、NC加工機と切削工具との間に介在して使用されるものがあり、その軸受Eを使用して高精度な切削を行う場合には、軸受外筒Gに対するシャフトFの振れを測定することが必要となる。
【0039】
図1(a)及び図1(b)に示すように、回転振れ測定装置100は、レーザー光線L1を照射すると共に後述するレーザー光線L2を受光するヘッド部20と、そのヘッド部20のレーザー光線L1を照射する側(図1(b)下側)に配設されるスケール基体部10とを備えている。
【0040】
図1(a)及び図1(b)に示すように、スケール基体部10は、円形の板状体の一対の円形面の内の一方の円形面から円柱状体が凸設された形状にアルミ素材にて構成されている。その円柱状体の軸心Tと、円形の板状体の軸心Tとは、同一である。その円板の円形面上で、円柱状体が凸設された円形面の反対側の円形面(以下、「測定面」と称す。)には、スケール部11と、角度スケール部15とが形成されている。
【0041】
また、図1(b)に示すように、上述したヘッド部20は、測定面から軸心T方向でシャフトFの反対側(図1(b)Z方向上側)に寸法Sの距離に配設されている。なお、本実施の形態において、寸法Sは、2mm〜4mmの範囲に設定され、スケール基体部10の円板の直径D1(図1(a)参照)は、50mmに設定されている。
【0042】
図1(b)に示すように、スケール部11は、複数のスケール吸収部12と、複数のスケール反射部13とを備えている。複数のスケール吸収部12は、測定面から軸心T方向でシャフトF側(図1(b)Z方向下側)に向かって凹設された断面V字形状の複数の溝である。それら複数の溝は、測定面上に延設されており、上面視(図1(a)Z方向視)において、スケール基体部10の中心Cを中心とするそれぞれ半径の異なる円形に構成されている(図1(a)参照)。
【0043】
また、図1(a)に示すように、半径R1がスケール吸収部12の最大半径で、半径R2がスケール吸収部12の最小半径であり、その他の複数の円の半径は、1.6×10−3mmずつ異なる半径に構成されている。なお、本実施の形態では、半径R1が20mmであり、半径R2が10mmに設定されている。
【0044】
図1(b)に示すように、複数のスケール反射部13は、複数のスケール吸収部12の間毎に配設される複数の平坦面であり、それら複数の平坦面は、測定面上に延設されており、上面視(図1(a)Z方向視)において、スケール基体部10の中心Cを中心とするそれぞれ半径の異なる円形に構成されている(図1(a)参照)。また、それら同心円の半径は、1.6×10−3mmずつ異なる半径に設定されている。
【0045】
このように、スケール吸収部12とスケール反射部13とが交互に配設されているので、スケール吸収部12でレーザー光線L1が拡散されて、スケール反射部13でレーザー光線L1が反射回折される。
【0046】
なお、レーザー光線L1は、コヒーレント性が高く、反射回折される際に、進行方向の異なる複数の光線に分けられる。本実施の形態では、1個のレーザー光線L1がスケール反射部13にて反射回折されることで複数の光線に分けられるが、その内の1個の光線をレーザー光線L2として測定に使用している。
【0047】
また、後述する照射回折格子部32では、回折により分かれた複数のレーザー光線L1の内の2個のレーザー光線L1を、エンコーダ回折格子部42a,42bでは、回折により分かれた複数のレーザー光線L2の内の1個のレーザー光線L2を測定に使用している(図2(a)参照)。
【0048】
即ち、照射回折格子部32から2個のレーザー光線L1がスケール部11に照射され、その2個のレーザー光線L1がスケール部11にて反射回折された後、エンコーダ回折格子部42a,42bに照射され、そのエンコーダ回折格子部42a,42bに照射された2個のレーザー光線L2がエンコーダ回折格子部42a,42bにて1個のレーザー光線L2に合成される(図2(a)参照)。
【0049】
図1(a)に示すように、角度スケール部15は、複数の角度スケール吸収部16と、それら複数の角度スケール吸収部16の間毎に交互に配設される複数の角度スケール反射部17とを備えている。
【0050】
図1(b)に示すように、複数の角度スケール吸収部16は、軸心T方向(図1(a)矢印Z方向)に凹設された断面V字形状の複数の溝として構成され、それら複数の溝は、中心Cに向かって延設されると共にスケール基体部10の外周部分の全周に渡って中心Cを中心として1度毎に配設されている(図1(a)参照)。
【0051】
図1(a)に示すように、複数の角度スケール反射部17は、複数の角度スケール吸収部16の間毎に配設される平坦面として構成され、それら複数の平坦面は、スケール基体部10の外周部分の全周に渡って中心Cを中心として1度毎に配設されている。
【0052】
このように、角度スケール吸収部16と角度スケール反射部17とが交互に配設されているので、角度スケール吸収部16でレーザー光線L1が拡散されて、角度スケール反射部17でレーザー光線L1が反射回折される。
【0053】
図1(a)及び図1(b)に示すように、ヘッド部20は、スケール部11の軸心T方向で、スケール部11の円形面に対向して配設される平面視矩形のY軸ヘッド部21と、中心Cを回転の中心としてY軸ヘッド部21を時計回り(図1(a)紙面垂直方向視右回り)に90度回転させた位置に配設されるX軸ヘッド部22と、中心Cを回転の中心としてX軸ヘッド部22を時計回り(図1(a)紙面垂直方向視右回り)に180度回転させた位置に配設される補正用ヘッド部23と、その補正用ヘッド部23の外側(図1(a)左側)に配設される回転角度用ヘッド部24とを備えている。
【0054】
次に、図2を参照して、Y軸ヘッド部21、X軸ヘッド部22、補正用ヘッド部23及び回転角度用ヘッド部24の詳細な構成について説明する。図2(a)は、図1(b)のIIaで示した部分を拡大した拡大断面図である。なお、理解を容易とするために、照射遮断部34及びエンコーダ遮断部44a,44bには、ハッチングを施している。
【0055】
また、図2(a)に示す矢印Xは、スケール基体部10の半径方向を示しており、矢印Yは、スケール基体部10の半径方向で矢印Xに直交する方向を示しており、矢印Zは、スケール1が取り付けられているシャフトFの軸心Tの方向を示している。なお、図2(a)には、スケール部11、照射回折格子部32及びエンコーダ回折格子部42a,42bで回折されて分けられた複数のレーザー光線L1,L2の内、測定に使用されるレーザー光線L1,L2のみを図示している。
【0056】
また、理解を容易とするために、照射回折格子部32の1箇所の照射通過部33を通過するレーザー光線L1を1本の線で図示している。ただし、実際、レーザー光線L1には、照射幅があるので、複数の照射通過部33を通過してスケール部11にて反射回折された後、複数のエンコーダ通過部43a,43bを通過してエンコーダ受光部41a,41bにて受光される。
【0057】
図2(b)は、図2(a)の矢印Z方向でスケール部11側から照射回折格子部32とエンコーダ回折格子部42a,42bとの底面を模式的に示した底面模式図であり、照射回折格子部32及びエンコーダ回折格子部42a,42bの一部を代表的に図示している。また、図2(b)に示す矢印Xは、スケール基体部10の半径方向を示しており、矢印Yは、スケール基体部10の半径方向で矢印Xに直交する方向を示しており、矢印Zは、スケール1が取り付けられているシャフトFの軸心Tの方向を示している。なお、理解を容易とするために、照射遮断部34及びエンコーダ遮断部44a,44bには、ハッチングを施している。
【0058】
なお、図2(a)に示す矢印X、矢印Y及び矢印Zは、図1(b)に示す矢印X、矢印Y及び矢印Zにそれぞれ対応しており、図2(b)に示す矢印X、矢印Y及び矢印Zは、図1(a)に示す矢印X、矢印Y及び矢印Zにそれぞれ対応しており、図2(b)に示す矢印Zの方向は、図1(b)に示す矢印Zに対して180度反転されている。
【0059】
また、Y軸ヘッド部21、X軸ヘッド部22及び補正用ヘッド部23は、スケール部11から反射回折されるレーザー光線L2の強さを測定し、回転角度用ヘッド部24は、角度スケール部15から反射回折されるレーザー光線L2の強さを測定している。
【0060】
上述したように、Y軸ヘッド部21、X軸ヘッド部22、補正用ヘッド部23及び回転角度用ヘッド部24には、測定するレーザー光線L2がスケール部11により反射回折されたものか、または、角度スケール部15により反射回折されたものかという違いがあるが、その他は、同一の構成である。そのため、Y軸ヘッド部21、補正用ヘッド部23及び回転角度用ヘッド部24の構成についての説明は省略し、X軸ヘッド部22の構成について説明する。
【0061】
図2(a)に示すように、X軸ヘッド部22は、スケール基体部10にレーザー光線L1を照射する照射ユニット30と、スケール部11によって反射回折されたレーザー光線L2の強さを測定するエンコーダ受光ユニット40とを備えており、照射ユニット30とエンコーダ受光ユニット40とは、X軸ヘッド部22の長手方向(図2矢印X方向)に並んで配設されている。
【0062】
照射ユニット30は、スケール部11にレーザー光線L1を照射する照射部31と、照射部31から照射されたレーザー光線L1を回折させる照射回折格子部32とを備えている。
【0063】
照射部31は、レーザー光線L1を発生させる装置であり、照射回折格子部32は、透明板に金属被膜が印刷された平板状の格子である。照射回折格子部32は、照射部31から発生されたレーザー光線L1の進行方向(図2(a)矢印Z方向)に対して金属被膜が印刷された平面を垂直にして配設されている。
【0064】
図2(b)に示すように、照射回折格子部32は、レーザー光線L1を通過させる矩形の透明部分である複数の照射通過部33と、それら複数の照射通過部33の間毎に配設されレーザー光線L1を遮断する矩形の印刷部分である複数の照射遮断部34とを備えている。
【0065】
そのため、図2(a)に示すように、照射部31から照射されたレーザー光線L1は、進行方向の異なる複数のレーザー光線L1に分けられる。その複数のレーザー光線L1の内の2個(0次回折光、一対の一次回折光の内の一方)のレーザー光線L1が測定に使用されている。また、図2(b)に示すように、複数の照射通過部33は、ピッチPの間隔で配設されており、同様に複数の照射遮断部34は、ピッチPの間隔で配設されている。なお、本実施の形態において、ピッチPは、1.6×10−3mmに設定されている。
【0066】
図2(a)に示すように、エンコーダ受光ユニット40は、スケール部11によって反射回折されたレーザー光線L2の強さを測定するエンコーダ受光ユニット40aと、そのエンコーダ受光ユニット40aに対して照射ユニット30とエンコーダ受光ユニット40とを結ぶ方向(図2(b)矢印X方向)に距離Wだけ位置をずらして配設されると共にスケール部11によって反射回折されたレーザー光線L2の強さを測定するエンコーダ受光ユニット40bとを備えている。本実施の形態では、距離Wは、ピッチPの半分の寸法値に設定されている。
【0067】
なお、エンコーダ受光ユニット40aとエンコーダ受光ユニット40bとは、同一の構成であるので、エンコーダ受光ユニット40bの構成についての説明は省略し、エンコーダ受光ユニット40aの構成について説明する。
【0068】
図2(a)に示すように、エンコーダ受光ユニット40aは、エンコーダ受光部41aとエンコーダ回折格子部42aとを備えている。エンコーダ受光部41aは、スケール部11に反射されたレーザー光線L2を受光して、その光の強さをエンコーダアンプ(図示せず)に電気信号として出力するセンサであり、エンコーダ回折格子部42aは、透明板に金属被膜が印刷された平板状の格子である。
【0069】
図2(b)に示すように、エンコーダ回折格子部42aは、レーザー光線L2を通過させる矩形の透明部分である複数のエンコーダ通過部43aと、それら複数のエンコーダ通過部43aの間毎に配設されレーザー光線L2を遮断する矩形の印刷部分である複数のエンコーダ遮断部44aとを備えている。
【0070】
そのため、2個(0次回折光、一対の一次回折光の内の一方)のレーザー光線L1がスケール部11で反射され、2個のレーザー光線L2(一対の1次回折光の内の一方)としてエンコーダ回折格子部42aに入射される。その2個のレーザー光線L2は、エンコーダ回折格子部42aへの入射角が異なるが、エンコーダ回折格子部42aで回折されて、エンコーダ受光部41aにて測定される。よって、エンコーダ受光部41aは、入射角の異なる2個のレーザー光線L2を測定することができる。また、複数のエンコーダ通過部43aは、ピッチPの間隔で配設されており、同様に、複数のエンコーダ遮断部44aは、ピッチPの間隔で配設されている。
【0071】
このように、回転振れ測定装置100によれば、スケール部11にX軸ヘッド部22の照射ユニット30からレーザー光線L1が照射される。スケール部11のスケール吸収部12に照射されたレーザー光線L1は、スケール吸収部12によって拡散され、スケール部11のスケール反射部13に照射されたレーザー光線L1は、スケール反射部13にて反射されてX軸ヘッド部22のエンコーダ受光ユニット40にて測定される。
【0072】
そのため、X軸ヘッド部22の位置が固定された状態で、複数のスケール吸収部12及びそれら複数のスケール吸収部12の間に交互に配設されるスケール反射部13が、スケール吸収部12とスケール反射部13とを結ぶ方向(スケール部11の半径方向)に移動された場合には、スケール反射部13にて反射されるレーザー光線L2も同じ方向に同じ距離だけ移動する。
【0073】
よって、エンコーダ受光ユニット40にて測定されるレーザー光線L2の強さが変化する。そのレーザー光線L2の強さの変化の回数を測定することでX軸ヘッド部22に対するスケール部11の移動量を測定することができる。
【0074】
また、エンコーダ受光ユニット40a,40bは、照射ユニット30とエンコーダ受光ユニット40とを結ぶ方向(図2(b)矢印X方向)に距離Wだけ位置をずらして配設されている。また、同様にエンコーダ回折格子部42a,42bも照射ユニット30とエンコーダ受光ユニット40とを結ぶ方向(図2(b)矢印X方向)に距離Wだけ位置をずらして配設されている。
【0075】
また、レーザー光線L1は、レーザー光線L1の進行方向に対して幅を持っているので、エンコーダ回折格子部42a,42bの両方にレーザー光線L2が照射される。そして、エンコーダ回折格子部42a,42bを通過してきたレーザー光線L2の強さをエンコーダ受光部41a,41bにて測定する。
【0076】
よって、スケール部11がエンコーダ受光部41aからエンコーダ受光部41bへ向かう方向(スケール部11の半径方向外側向き)に移動すると、レーザー光線L2の強さが変化し、例えば、エンコーダ受光部41aだけが強いレーザー光線L2(スケール反射部13によって反射されたレーザー光線L2)を測定した後に、エンコーダ受光部41a,41bが同時に強いレーザー光線L2を測定して、その後、エンコーダ受光部41bだけが強いレーザー光線L2を測定する。
【0077】
一方、スケール部11がエンコーダ受光部41bからエンコーダ受光部41aへ向かう方向(スケール部11の半径方向内側向き)に移動すると、エンコーダ受光部41bだけが強いレーザー光線L2(スケール反射部13によって反射されたレーザー光線L2)を測定した後に、エンコーダ受光部41b,41aが同時に強いレーザー光線L2を測定して、その後、エンコーダ受光部41aだけが強いレーザー光線L2を測定する。このように、スケール部11の移動する方向によって、エンコーダ受光部41a,41bが強いレーザー光線L2を測定する順番が変わることを利用して、スケール部11の移動方向を判別する。
【0078】
上述したように、エンコーダ受光部41a,41bが強いレーザー光線L2(スケール反射部13によって反射されたレーザー光線L2)を測定した回数と、強いレーザー光線L2を測定する順番によってスケール部11の移動方向を判別することとで、照射ユニット30及びエンコーダ受光ユニット40に対するスケール部11の移動量を測定する。
【0079】
ここで、本実施の形態によれば、スケール吸収部12は、環状に構成され、スケール反射部13は、スケール吸収部12に対して同心円の環状に構成されているので、スケール吸収部12及びスケール反射部13をシャフトFに取り付け、X軸ヘッド部22に対してシャフトFを回転させると、スケール吸収部12及びスケール反射部13は、X軸ヘッド部22の照射ユニット30から照射されたレーザー光線L1を、シャフトFが一回転する間連続してX軸ヘッド部22のエンコーダ受光ユニット40に反射する。
【0080】
そのため、X軸ヘッド部22のエンコーダ受光ユニット40にて測定されるレーザー光線L2の強さの変化をシャフトFが一回転する間連続して測定することができるので、強いレーザー光線L2(スケール反射部13によって反射されたレーザー光線L2)を測定した回数と、移動方向を判別することとで、X軸ヘッド部22に対するスケール部11の移動量(以下、「X軸移動量」と称す。)を測定することができる。よって、シャフトFが一回転する間の移動量を、シャフトFの軸心Tの振れとして測定することができる。
【0081】
このように、シャフトFの軸心Tの振れを、スケール部11の変位によるレーザー光線L2の強さの変化によって測定しているので、長時間の測定においても、シャフトFの電気的特性変化に影響されることなくシャフトFの軸心Tの振れを測定することができる。よって、長時間の測定において軸心Tの振れの測定精度を向上させることができる。
【0082】
また、例えば、極小径切削工具(直径が0.05mm以下である切削工具)をシャフトFに取り付けて切削加工を行う場合には、シャフトFの軸心Tの振れを、長時間連続して精度よく測定することができるので、軸心Tの振れが一定値を越えた値として測定された場合には、切削を中止することができる。よって、極小径切削工具によって切削加工されている加工物に対して精度が悪い加工を施すことを防止することができる。
【0083】
また、例えば、スケール部11の中心Cを、シャフトFの軸心Tを中心とする円(要求される測定精度以下の直径を有する円)の円周内領域に取り付けると、スケール部11の中心Cの位置と、シャフトFの軸心Tの位置とを同一と見なすことができる。
【0084】
よって、スケール部11の中心CとシャフトFの軸心Tとの取り付け位置のずれを考慮する必要がなくなり、X軸移動量をそのままシャフトFの軸心Tの移動量とすることができる。その結果、要求される測定精度の範囲内であれば、X軸移動量をシャフトFの軸心Tの振れの値とすることができる。また、スケール吸収部12及びスケール反射部13の中心Cと、スケール部11の中心Cとは、同一である。
【0085】
また、X軸ヘッド部22と同様に、要求される測定精度の範囲内であれば、ヘッド部21、及び補正用ヘッド部23に対するスケール部11の移動量をシャフトFの軸心Tの振れの値と見なすことができる。
【0086】
また、照射回折格子部32と、エンコーダ回折格子部42a,42bとを備えているので、照射回折格子部32で分けられた2個のレーザー光線L1がスケール部11によって反射回折され、2個のレーザー光線L2としてエンコーダ回折格子部42aに入射されてエンコーダ受光部41aに向かう方向に合成される。その合成されたレーザー光線L2は、合成により干渉することにより、合成前のレーザー光線L2の半分の周期で変化するため、スケール部11がピッチPだけ移動するのに対して2周期変化をする。
【0087】
よって、照射回折格子部32と、エンコーダ回折格子部42a,42bとを省略した場合と比べて、スケール部11の移動量の分解能が半分になり、更に小さな移動でも測定することができる。
【0088】
また、スケール部11の中心Cを回転の中心として、X軸ヘッド部22を時計回り(図1(a)紙面垂直方向視右回り)に180度回転させた位置に補正用ヘッド部23が配設されているので、X軸ヘッド部22及び補正用ヘッド部23によってスケール部11を測定して得られた一対の測定データの差を取ることで、温度変化や遠心力によるスケール部11の形状変化の影響が相殺された測定データを得ることができる。
【0089】
即ち、X軸ヘッド部22と補正用ヘッド部23とは、スケール部11の中心Cを挟んだ180度対向する位置に配設されており、シャフトFの軸心Tの移動量を測定した測定データは、X軸ヘッド部22の測定方向と補正用ヘッド部23の測定方向とは異なるが移動量は同一となるので、例えば、温度変化や遠心力によりスケール部11の半径方向への形状が拡大した場合には、スケール部11の中心Cを挟んだ180度対向する位置に配設されているX軸ヘッド部22及び補正用ヘッド部23は、その拡大量をスケール部11の向きの異なる移動量として測定する。
【0090】
よって、X軸ヘッド部22の測定データと補正用ヘッド部23の測定データとの差を取ると、その測定データの差からは、半径方向への形状の拡大量が相殺されて、その測定データの差は、スケール部11の中心Cの移動量に対して2倍となるので、その測定データの差を半分にすることで、温度変化や遠心力によるスケール部11の形状変化の影響が相殺された測定データを得ることができる。
【0091】
その結果、温度変化や遠心力により、スケール部11の形状が半径方向へ拡大した場合でもスケール部11の中心Cの測定データには影響しないので、シャフトFの回転速度が変化したりシャフトFの環境温度が変わったりする長時間の測定において、シャフトFの軸心Tの振れの測定精度を向上させることができる。
【0092】
なお、スケール部11の半径方向の形状拡大は、円周方向に均等であるので、X軸ヘッド部22及び補正用ヘッド部23によって測定されて得られた一対の測定データの差を取っても、スケール部11の中心Cの位置の測定には影響を与えない。
【0093】
また、スケール部11の中心Cを回転の中心として、X軸ヘッド部22を時計回り(図1(a)紙面垂直方向視右回り)に180度回転させた位置に補正用ヘッド部23が配設されているので、補正用ヘッド部23を省略した場合と比べて、スケール部11のX軸方向への移動量を測定する測定感度を2倍とすることができる。
【0094】
また、例えば、スケール部11の中心CがX軸ヘッド部22及び補正用ヘッド部23を結ぶ方向に対して直角方向(図1(a)矢印Y方向)にずれた場合には、スケール部11のスケール吸収部12及びスケール反射部13が円形であるので、スケール吸収部12及びスケール反射部13は、X軸ヘッド部22に対しては、中心C方向(図1(a)左方向)に移動し、補正用ヘッド部23に対しては、中心C方向(図1(a)右方向)に移動する。
【0095】
このように、X軸ヘッド部22が検出するスケール吸収部12及びスケール反射部13の移動方向と、補正用ヘッド部23が検出するスケール吸収部12及びスケール反射部13の移動方向とが反対向きなので、X軸ヘッド部22と補正用ヘッド部23との測定データを平均すると、スケール部11の中心CがX軸ヘッド部22及び補正用ヘッド部23を結ぶ方向に対して直角方向(図1(a)矢印Y方向)に移動することによる測定データへの影響を取り除くことができる。
【0096】
また、Y軸ヘッド部21は、X軸ヘッド部22からスケール部11の円周方向にスケール部11の中心C及びシャフトFの軸心Tに対して直角に位置を違えて配設されているので、直交する2方向(図1(a)矢印X方向、矢印Y方向)からシャフトFの移動量を測定することで、その直交する2方向を座標軸とする座標値としてシャフトFの軸心Tの位置を定義することができる。よって、その座標位置に基づいてシャフトFの軸心Tの軌跡をモニタや紙面上に表示させてその軌跡の形状を観察することで、シャフトFの軸心Tの動きの良否を視覚的に判断することができる。
【0097】
また、シャフトFが磁気軸受で軸支されている場合には、測定された座標値を基にシャフトFの軸心Tの位置が所定の範囲内に収まるようにシャフトFの軸心Tの位置を補正することができる。特に、本実施の形態では、シャフトFの軸心Tの振れをスケール部11の変位によるレーザー光線L2の強さの変化によって測定しているので、長時間の測定においても、シャフトFの電気的特性変化に影響されることなくシャフトFの軸心Tの振れを測定することができ、長時間連続してシャフトFの軸心Tの位置を補正することができる。
【0098】
また、例えば、極小径切削工具(直径が0.05mm以下である切削工具)にて切削加工を行う場合には、切削工具が取り付けられるシャフトFの軸心Tの位置を、長時間連続して補正することができるので、長時間連続して切削しても切削工具による切削形状精度を高精度に保つことができる。
【0099】
よって、硬度が高く切削または研削が長時間におよぶ軸状の素材を旋盤にて加工する場合でも、素材が磁気軸受で軸支されていれば、素材の軸心の位置の振れを少なくできるので、素材から加工される製品の加工精度を向上させることができる。
【0100】
また、回転角度用ヘッド部24の照射ユニット30から角度スケール吸収部16に照射されたレーザー光線L1は、角度スケール吸収部16によって拡散され、回転角度用ヘッド部24の照射ユニット30から角度スケール反射部17に照射されたレーザー光線L1は、角度スケール反射部17にて反射されて回転角度用ヘッド部24のエンコーダ受光ユニット40にて測定される。
【0101】
そのため、回転角度用ヘッド部24の位置が固定された状態で、複数の角度スケール吸収部16と、それら複数の角度スケール吸収部16の間毎に交互に配設される複数の角度スケール反射部17とが、角度スケール吸収部16と角度スケール反射部17とを結ぶ方向(角度スケール部15の円周方向)に移動された場合には、角度スケール反射部17にて反射されたレーザー光線L2も同じ方向に同じ距離だけ移動される。
【0102】
よって、回転角度用ヘッド部24のエンコーダ受光ユニット40にて測定される角度スケール部15にて反射されたレーザー光線L2の強さが変化する。そのレーザー光線L2の強さの変化の回数を測定することで回転角度用ヘッド部24に対する角度スケール部15の移動量を測定することができる。その結果、角度用ヘッド部24に対するシャフトFの回転角度を測定することができる。
【0103】
また、シャフトFの表面の2点を原子間力顕微鏡によって高精度に測定し、その測定値により算出されるシャフトFの軸心Tの軌跡(回転角度測定値を含む。)を、本実施の形態にて測定されたシャフトFの軸心Tの軌跡(回転角度測定値を含む。)と回転角度毎に比較すると、それら軌跡に差が生じている場合に、その差の分を本実施の形態にて測定されたシャフトFの軸心Tの軌跡(回転角度測定値を含む。)から計算にて取り除くことで、スケール吸収部12及びスケール反射部13の形状や、シャフトFに対する取り付け位置のずれにより発生するシャフトFの測定精度の低下を防ぐことができる。よって、本実施の形態における測定精度を原子間力顕微鏡によって測定される測定精度並みに向上させることができる。
【0104】
また、シャフトFの回転角度を測定するための角度スケール部15と、シャッフトFの変位を測定するためのスケール部11とが一体として構成されているので、シャフトFの回転角度を計測する装置(以下、「ロータリーエンコーダ」と称す。)を別体とする場合に比べて、スケール部11を位置決めして固定した後に、ロータリーエンコーダを固定する必要がないので、ロータリーエンコーダを固定することによりシャフトFに対するスケール部11の固定位置がずれることがない。よって、ロータリーエンコーダを別体とする場合に比べて、スケール部11の組み付け精度が向上されるので、シャフトFの軸心Tの振れの測定精度を向上させることができる。
【0105】
また、角度スケール部15がスケール部11と一体として構成されているので、シャフトFの回転角度を計測する装置を別体とする場合に比べて、スケール部11又は角度スケール部15のどちらか一方の位置を決めれば、必然的に、他方の位置がきまる。よって、ロータリーエンコーダの組み付け時の位置調整の手間を省くことができる。
【0106】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0107】
例えば、上記各実施の形態で挙げた数値(例えば、各構成の数量や寸法・角度など)は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
【0108】
上記実施の形態では、スケール吸収部12が軸心T方向(図1(a)矢印Z方向)に凹設された断面V字形状の溝であり、スケール反射部13が複数のスケール吸収部12の間毎に配設される平坦面である場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、スケール基体部10を透明な材質により構成して、スケール基体部10に反射物質(金属被膜)を印刷することでスケール反射部13を形成し、その印刷されたスケール反射部13の間の透明な部分をスケール吸収部12としても良い。
【0109】
この場合、印刷にてスケール吸収部12及びスケール反射部13をスケール基体部10上に形成することができる。よって、複数のスケール基体部10を製作するときには、スケール基体部10を1つずつ製作する場合に比べて、それら複数のスケール基体部10上に形成されるスケール吸収部12及びスケール反射部13の形状を一様に製作することができるので、スケール吸収部12及びスケール反射部13の形状のばらつきを抑えることができる。
【0110】
また、上記実施の形態では、スケール吸収部12が軸心T方向(図1(a)矢印Z方向)に凹設された断面V字形状の溝である場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、スケール吸収部12を凸設された断面V字状の凸部としても良い。この場合、上記実施の形態と同等の効果を奏することができる。
【0111】
上記実施の形態では、角度スケール吸収部16が軸心T方向(図1(a)矢印Z方向)に凹設された断面V字形状の溝であり、角度スケール反射部17が複数の角度スケール吸収部16の間毎に配設される平坦面である場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、角度スケール部15を透明な材質により構成して、角度スケール部15に反射物質(金属被膜)を印刷することで角度スケール反射部17を形成し、その印刷された角度スケール反射部17の間の透明な部分を角度スケール吸収部16としても良い。
【0112】
この場合、印刷にて角度スケール吸収部16及び角度スケール反射部17をスケール基体部10上に形成することができる。よって、複数のスケール基体部10を製作するときには、スケール基体部10を1つずつ加工する場合に比べて、それら複数のスケール基体部10上に形成される角度スケール吸収部16及び角度スケール反射部17の形状を一様に製作することができるので、角度スケール吸収部16及び角度スケール反射部17の形状のばらつきを抑えることができる。
【0113】
また、上記実施の形態では、角度スケール吸収部16が軸心T方向(図1(a)矢印Z方向)に凹設された断面V字形状の溝である場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、角度スケール吸収部16を凸設された断面V字状の凸部としても良い。この場合、上記実施の形態と同等の効果を奏することができる。
【0114】
また、上記実施の形態では、補正用ヘッド部23がX軸ヘッド部22に180度対向する位置にのみ配設される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、さらに、補正用ヘッド部23をY軸ヘッド部21に180度対向する位置にも配設しても良い。
【0115】
この場合、スケール部11のスケール吸収部12及びスケール反射部13が円形であるため、スケール部11の中心CがY軸ヘッド部21及び補正用ヘッド部23を結ぶ方向に対して直角方向(図1(a)矢印X方向)にずれた場合には、スケール吸収部12及びスケール反射部13は、Y軸ヘッド部21に対しては、中心C方向(図1(a)下方向)に移動し、補正用ヘッド部23に対しては、中心C方向(図1(a)上方向)に移動する。
【0116】
このように、Y軸ヘッド部21と補正用ヘッド部23とが検出するスケール吸収部12及びスケール反射部13の移動方向が反対向きなので、Y軸ヘッド部21と補正用ヘッド部23との測定データを平均すると、スケール部11の中心CがY軸ヘッド部21及び補正用ヘッド部23を結ぶ方向に対して直角方向(図1(a)矢印X方向)に移動することによる測定データへの影響を取り除くことができる。加えて、温度変化や遠心力によるスケール部11の形状変化を補正用ヘッド部23にて2方向から測定することができるので、測定データの測定精度を向上させることができる。
【0117】
また、スケール部11の中心Cを回転の中心として、Y軸ヘッド部21を時計回り(図1(a)紙面垂直方向視右回り)に180度回転させた位置に補正用ヘッド部23を配設するので、その補正用ヘッド部23が配設されていない場合と比べて、スケール部11のY軸方向への移動量を測定する測定感度を2倍とすることができる。
【0118】
また、上記実施の形態では、回転角度用ヘッド部24が補正用ヘッド部23の外側(図1(a)左側)にのみ配設される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、さらに、回転角度用ヘッド部24をX軸ヘッド部22の外側(図1(a)右側)にも配設しても良い。
【0119】
この場合、スケール部11の中心Cがそれら2個の回転角度用ヘッド部24を結ぶ方向に対して直角方向(図1(a)矢印Y方向)にずれた場合に、それら2個の回転角度用ヘッド部24の内の一方の回転角度用ヘッド部24は、そのずれによって角度スケール部15の角度変化が増加したように計測し、他方の回転角度用ヘッド部24は、減少したように計測する。
【0120】
そのため、それぞれの回転角度用ヘッド部24の計測する回転角の平均を取ることで、回転角度増減を相殺することができ、中心Cの位置ずれが発生していても精度良く回転角度を計測することができる。
【0121】
さらに、2個の回転角度用ヘッド部24の内の一方をY軸ヘッド部21の外側(図1(a)上側)に配設し、他方を一方に対して中心Cを挟んで対向する位置に配設しても良い。この場合、スケール部11の中心Cがそれら2個の回転角度用ヘッド部24を結ぶ方向に対して直角方向(図1(a)矢印X方向)にずれた場合にも、同様に、それぞれの回転角度用ヘッド部24の計測する回転角の平均を取ることで、回転角度増減を相殺することができ、中心Cの位置ずれが発生していても精度良く回転角度を計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】(a)は、回転振れ測定装置の上面の概略を示した概略上面図であり、(b)は、図1(a)のIb−Ib線における断面の概略を示した概略断面図である。
【図2】(a)は、図1(b)のIIで示した部分を拡大した拡大断面図であり、(b)は、図2(a)の矢印Z方向でスケール部側から照照射回折格子部とエンコーダ回折格子部との底面を模式的に示した底面模式図である。
【符号の説明】
【0123】
100 回転振れ測定装置
10 スケール基体部
11 スケール部
12 スケール吸収部
13 スケール反射部
15 角度スケール部
16 角度スケール吸収部
17 角度スケール反射部
31 照射部
41a エンコーダ受光部(A相受光部)
41b エンコーダ受光部(B相受光部)
L1,L2 レーザー光線(光線)
M 軸受(測定対象物)
F シャフト(測定対象物の一部)
C 中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光線を照射する照射部と、その照射部により照射された光線を反射回折すると共に測定対象物に取着されるスケール部と、そのスケール部によって反射回折された光線の強さを測定するエンコーダ受光部とを備え、前記スケール部は、前記照射部より照射された光線を吸収拡散するか透過させる複数のスケール吸収部と、それら複数のスケール吸収部の間に交互に配設されると共に前記光線を反射する複数のスケール反射部とを備え、前記エンコーダ受光部は、前記光線の強さを測定するA相受光部と、そのA相受光部と同時に前記光線を測定できる範囲内に配設されその範囲内で前記スケール部の移動方向に前記A相受光部と位置を違えて配設されると共に前記光線の強さを測定するB相受光部とを備える回転振れ測定装置において、
前記スケール吸収部は、環状に構成され、
前記スケール反射部は、前記スケール吸収部に対して同心円の環状に構成されていることを特徴とする回転振れ測定装置。
【請求項2】
前記エンコーダ受光部を複数備え、
それら複数のエンコーダ受光部の内の少なくとも1つは、その他のエンコーダ受光部に対して前記同心円格子の中心を挟んだ対向する位置に配設されていることを特徴とする請求項1記載の回転振れ測定装置。
【請求項3】
前記エンコーダ受光部を複数備え、
それら複数のエンコーダ受光部の内の少なくとも1つは、前記同心円格子の中心に対して前記同心円の円周方向にその他のエンコーダ受光部から直角に位置を違えて配設されていることを特徴とする請求項1記載の回転振れ測定装置。
【請求項4】
前記照射部により照射された光線を反射回折すると共に測定対象物に取着される角度スケール部を備え、
前記角度スケール部は、環状に構成され、
前記照射部より照射された光線を吸収拡散するか透過させる複数の角度スケール吸収部と、
前記角度スケール部の円周方向でそれら複数の角度スケール吸収部の間に交互に配設されると共に前記光線を反射する複数の角度スケール反射部とを備え、
前記角度スケール部は、前記スケール部と一体として構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の回転振れ測定装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の回転振れ測定装置に使用されることを特徴とするスケール部。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−42191(P2009−42191A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−210485(P2007−210485)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(304027349)国立大学法人豊橋技術科学大学 (391)
【出願人】(000103367)オーエスジー株式会社 (180)
【Fターム(参考)】