説明

回転検出装置及び回転検出システム

【課題】エンコーダ等のセンサを設けることなく、直流モータの回転状態を精度良く検出できるようにすることを目的とする。
【解決手段】モータ2は、3相の各相コイルL1,L2,L3のうち第1相コイルL1と並列にコンデンサC1が接続された構成となっており、これにより、180°回転する毎にモータ回路のインピーダンスが二段階に変化する。制御部6は、モータ2をPWM制御にて駆動している。そのため、モータ2に流れる電流は、PWM制御による駆動スイッチMOSのON・OFFの切り替えに応じて脈動する。つまり、PWM制御によってモータ電流には交流成分が含まれることになる。また、回転に伴うモータ回路のインピーダンスの変化に応じて、その交流成分の振幅も変化する。そこで制御部6は、その交流成分の振幅変化に基づいて、モータ2の回転角や回転速度を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流モータの回転角や回転方向などの回転状態を検出する回転検出装置、及びこの回転検出装置を備えた回転検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ブラシ付きの直流モータ(以下単に「直流モータ」という)は、車両においても従来から用いられており、例えば、車両の空調装置における温度調整用のエアミックスダンパーや吹き出し口切り替え用のモードダンパーなどの開閉角度を調整するために用いられている。このような用途で用いられる直流モータを制御するにあたっては、各ダンパーの開閉角度を精度良く調整するために、直流モータの回転角や回転方向、回転速度などの回転状態を検出し、その検出した回転状態に基づいて、各ダンパーの開閉角度が所望の角度となるように制御していた。
【0003】
直流モータの回転状態を検出する一般的方法として、ロータリエンコーダやポテンショメータ等のセンサを設け、このセンサからの検出信号に基づいて検出する方法がよく知られている。そのため、車両においても、このようなセンサを設けて回転状態を検出する方法が採用されている。
【0004】
しかし、このようにセンサを設けて回転状態を検出する方法では、センサを設置するスペースが直流モータ毎に必要になると共に、直流モータへの直流電源供給用のハーネスとは別に、センサによる検出信号を他の装置(車載ECU等)へ伝送するためのハーネスも直流モータ毎に必要となり、車両の重量増・コストアップを招く。そのため、センサやそれに伴うハーネスを削減するために、センサレス方式化の要望が高まっている。
【0005】
ロータリエンコーダ等の大がかりなセンサを用いることなく直流モータの回転状態を検出するセンサレス方式は種々提案されており、例えば、整流子とブラシが切り替わるときに発生するサージパルスを検出・計数することにより検出する方法が知られている。しかし、この方法では、モータが起動・停止する際の低回転時にはモータの起電力が小さくなってサージパルスも小さくなるため、回転速度が低くなればなるほどサージパルスを検出することが困難となって誤検出してしまう可能性が高くなる。
【0006】
また、別のセンサレス方式として、整流子に形成された複数のセグメント(整流子片)のうち特定の2つのセグメント間に(即ちこのセグメント間に接続されている相コイルと並列に)抵抗器を接続し、このセグメント間に流れる電流に基づいて回転パルスを検出する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
この特許文献1に開示されたセンサレス方式では、いずれか一つの相コイルに抵抗器が並列接続されることにより、ブラシを介してモータ回路(複数相の相コイルからなる電機子コイル側の回路)に直流電流が供給されると、ブラシ間に流れる電流は、モータの回転角に応じて周期的な変動を伴うように変化する。この電流の変化に基づいて回転パルスを検出することにより、上述した単なるサージパルスに基づく検出方法と比較してその検出精度を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−111465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、1つの相コイルに抵抗器が並列接続されていることによる、モータに流れる直流電流の周期的な変動に基づいて、回転パルスを検出するようにしているため、例えば電源電圧の変動などの、抵抗器の接続による変動以外の他の要因によって、直流電流の変動が生じると、回転パルスが誤検出されるおそれがあった。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、エンコーダ等のセンサを設けることなく、直流モータの回転状態を精度良く検出できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、直流電源からの電源供給を受けて回転する直流モータの回転状態を検出する回転検出装置であって、直流モータは、該直流モータにおける、直流電源からの直流電圧が印加される少なくとも一対のブラシ間のインピーダンスが、該直流モータの回転に伴って周期的に変化するように構成されている。
【0012】
そして、当該回転検出装置は、直流電源から直流モータへの通電経路に配置され、該通電経路を導通・遮断するための少なくとも1つのスイッチング手段を有する駆動手段と、この駆動手段が有する少なくとも1つのスイッチング手段のON・OFFを制御する制御手段と、直流モータに流れる電流に関する電気量を検出する通電検出手段と、この通電検出手段により検出された電気量に基づき、直流モータの回転に伴うインピーダンスの変化に応じて生じる、直流モータに流れる電流に含まれる交流成分の変化を検出する交流成分変化検出手段と、この交流成分変化検出手段による検出結果に基づいて、直流モータの回転角、回転方向及び回転速度のうち少なくとも何れか1つを検出する回転状態検出手段と、を備えている。
【0013】
このように構成された請求項1に記載の回転検出装置では、直流モータの回転が、スイッチング手段のON・OFFにより制御されるため、そのスイッチング手段のON・OFFによって、直流モータに流れる電流に変動が生じる。一方、検出対象の直流モータは、回転に伴ってインピーダンスが周期的に変化するよう構成されている。そのため、上記スイッチング手段のON・OFFによる電流変動自体も、直流モータのインピーダンスの変化に応じて変化する。つまり、直流モータに流れる電流には、スイッチング手段のON・OFFによって生じる交流成分が含まれることとなる。そのため、その交流成分の変化に基づいて直流モータの回転状態を検出することが可能となる。
【0014】
従って、請求項1に記載の回転検出装置によれば、エンコーダ等のセンサを設けることなく、直流モータの回転状態を精度良く検出することが可能な回転検出装置を提供することが可能となる。
【0015】
ここで、制御手段によるスイッチング手段の制御方法は種々考えられるが、例えば直流モータへの通電をPWM制御するように構成すれば、請求項2に記載のように、そのPWM制御によって生じる交流成分に基づいて回転状態を検出することができる。
【0016】
即ち、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の回転検出装置であって、制御手段は、駆動手段が有する上記少なくとも1つのスイッチング手段のON・OFFを、予め設定された周波数及びデューティ比にてPWM制御することにより、直流モータの回転を制御する。そして、交流成分変化検出手段は、制御手段によるPWM制御によって生じる、直流モータに流れる電流の変動を、上記交流成分として、該交流成分の変化を検出する。
【0017】
このように構成された請求項2に記載の回転検出装置によれば、PWM制御によっていわば必然的に生じる、直流モータの通電電流の変動が、回転状態の検出に有効利用される。そのため、回転状態の検出を確実に行うことができる。
【0018】
次に、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の回転検出装置であって、制御手段は、回転中の直流モータを停止させる際、該停止させることが可能なデューティ比にてPWM制御を行う。
【0019】
このように構成された請求項3に記載の回転検出装置によれば、停止させる際もPWM制御が行われるため、減速から停止にかけても回転状態を確実に検出することができる。また、停止中であっても、停止し得る程度のデューティ比にてPWM制御を続ける限り、直流モータの回転状態を検出できるため、停止後に例えば何らかの外力を受けて回転してしまったとしても、これを確実に検出することができる。
【0020】
PWM制御によって生じる、直流モータの通電電流の変動(交流成分の変化)の態様は、直流モータのブラシ間のインピーダンスが回転に伴ってどのように変化するか、またどのような回路構成によってそのインピーダンスの変化が生じるか、などによって様々であり、インピーダンスの変化の幅や回路構成等によって、交流成分の変化の幅も異なる。
【0021】
回転状態を良好に検出するためには、回転に伴う交流成分の変化も大きい方がよく、そのための直流モータの具体的構成としては、例えば、一回転中、一対のブラシ間に所定の静電容量値の静電容量素子が接続された状態となる静電容量素子接続期間が生じるような構成が考えられる。直流モータがこのように構成されている場合、直流モータの一回転中における静電容量素子接続期間においては、PWM制御により直流電源から直流モータへの通電経路が導通される導通タイミングで静電容量素子に充電電流が流れ、また、PWM制御により通電経路が遮断される遮断タイミングでは静電容量素子から放電される放電電流が流れる。これら充電電流及び放電電流は、短時間で突発的に生じる電流であり、その値は比較的大きい。
【0022】
そこで、直流モータが上記例のように(即ち静電容量素子接続期間が生じるように)構成されている場合には、例えば請求項4に記載のように、交流成分変化検出手段は、上記充電電流及び放電電流のうち少なくとも一方を、上記交流成分として、該交流成分の変化を検出するようにするとよい。
【0023】
このように、静電容量素子接続期間において生じる充電電流や放電電流に基づいて回転状態を検出することで、回転状態をより確実に検出することが可能となる。
ところで、制御手段によるPWM制御の方法は種々考えられ、駆動手段の構成によっても様々であるが、例えば請求項5や請求項6に記載のように構成することができる。
【0024】
請求項5に記載の発明は、請求項2〜請求項4の何れか1項に記載の回転検出装置であって、駆動手段は、複数のスイッチング手段を有すると共に、該各スイッチング素子の何れか1つ又は複数がONされることによって直流モータを短絡させることが可能に構成されている。そして、制御手段は、PWM制御として、直流電源から直流モータへ通電させる通電駆動と直流モータを短絡させる短絡駆動とを上記デューティ比にて切り替えることにより、直流モータの回転を制御することが可能に構成されている。
【0025】
また、請求項6に記載の発明は、請求項2〜請求項4の何れか1項に記載の回転検出装置であって、駆動手段は、複数のスイッチング手段を有すると共に、該各スイッチング素子のON・OFFの組み合わせにより直流モータへの通電方向を切り替えて該直流モータの回転方向を切り替えることが可能に構成されている。そして、制御手段は、PWM制御として、直流電源から直流モータへの通電方向を上記デューティ比にて切り替えることにより、直流モータの回転を制御することが可能に構成されている。
【0026】
請求項5及び請求項6のいずれのPWM制御方法によっても、そのデューティ比を適宜設定することで、起動から停止までPWM制御を継続的に行うことができ、これにより起動から停止まで継続的に交流成分を発生させてそれに基づいて回転状態を検出することが可能となる。
【0027】
次に、請求項7に記載の発明は、請求項5又は請求項6に記載の回転検出装置であって、駆動手段は、4つのスイッチング手段からなるHブリッジ回路にて構成されている。
請求項5又は請求項6に記載の回転検出装置のように、直流モータを短絡させたり、或いは回転方向を切り替えることができるようにするための駆動手段の具体的構成は種々考えられるが、Hブリッジ回路を用いれば、これらを簡易的な回路構成にて実現でき、しかも上述した短絡及び回転方向切り替えの双方を実現可能となる。
【0028】
次に、請求項8に記載の発明は、直流電源からの電力供給を受けて回転する直流モータと、この直流モータの回転状態を検出する回転検出装置と、を備えた回転検出システムである。
【0029】
直流モータは、該直流モータにおける、直流電源からの直流電圧が印加される少なくとも一対のブラシ間のインピーダンスが、該直流モータの回転に伴って周期的に変化するように構成されている。
【0030】
そして、回転検出装置は、直流モータに流れる電流に関する電気量を検出する通電検出手段と、この通電検出手段により検出された電気量に基づき、直流モータの回転に伴うインピーダンスの変化に応じて生じる、直流モータに流れる電流に含まれる交流成分の変化を検出する交流成分変化検出手段と、この交流成分変化検出手段による検出結果に基づいて、直流モータの回転角、回転方向及び回転速度のうち少なくとも何れか1つを検出する回転状態検出手段と、を備えている。
【0031】
この回転検出システムによれば、直流モータの回転状態を検出するための回転検出装置として、上述した請求項1〜請求項7の何れかに記載の構成のものを備えているため、上述した各請求項1〜7と同様の効果を得ることができる。
【0032】
そして、回転に伴って一対のブラシ間のインピーダンスが周期的に変化するような直流モータの具体的構成は種々考えられ、例えば請求項9や請求項10に記載の構成が挙げられる。
【0033】
即ち、請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の回転検出システムであって、直流モータは、少なくとも3相の相コイルからなる電機子コイルと、この電機子コイルが接続される複数の整流子片を有する整流子と、この整流子を介して各相コイルへ電流を供給する少なくとも一対のブラシと、を有している。そして、複数の整流子片のうち何れか2つの整流子片を一組として、少なくとも一組の整流子片間は、他の組の整流子片間とは異なる値の静電容量値を持つように構成されている。
【0034】
また、請求項10に記載の発明は、請求項8に記載の回転検出システムであって、直流モータは、内周面においてその周方向に界磁発生用の複数の磁石が固定されたハウジングと、このハウジング内に設けられ、複数の相コイルからなる電機子コイルを有するロータコアと、電機子コイルが接続される複数の整流子片を有する整流子と、この整流子に摺接する少なくとも一対のブラシと、を有している。そして、回転に伴って上記一対のブラシ間のインダクタンスが周期的に変化するよう構成されている。
【0035】
請求項9に記載の回転検出システムにおける直流モータは、整流子片間の静電容量値に差を持たせることで、回転に伴うインピーダンスの周期的な変化が生じるように構成されており、一方、請求項10に記載の回転検出システムにおける直流モータは、回転に伴ってインダクタンスが周期的に変化するように構成されており、これにより回転に伴うインピーダンスの周期的な変化が生じるように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】第1実施形態の回転検出システムの概略構成を表す図である。
【図2】第1実施形態のモータが180°回転する間に生じる3種類の状態(モータ回路)を説明するための説明図である。
【図3】第1実施形態のモータの回転中に流れるモータ電流波形の一例を表す図である。
【図4】第1実施形態の回転信号検出部の構成を表す回路図である。
【図5】第1実施形態の信号処理部の動作を説明するための説明図である。
【図6】第1実施形態のモータ駆動制御処理を表すフローチャートである。
【図7】第2実施形態の回転検出システムの概略構成を表す図である。
【図8】第2実施形態のモータが180°回転する間に生じる3種類の状態(モータ回路)を説明するための説明図である。
【図9】第2実施形態のモータの回転中に流れるモータ電流波形の一例を表す図である。
【図10】第2実施形態の信号処理部の構成と動作を説明するための説明図である。
【図11】第3実施形態の回転検出システムの概略構成を表す図である。
【図12】第3実施形態のモータの回転中に流れるモータ電流波形の一例を表す図である。
【図13】第3実施形態の信号処理部の動作を説明するための説明図である。
【図14】第3実施形態のモータ駆動制御処理を表すフローチャートである。
【図15】検出対象のモータの他の実施例を表す説明図である。
【図16】図15のモータの回転中に流れるモータ電流波形の一例を表す図である。
【図17】回転検出システム(駆動回路)の他の実施例を表す説明図である。
【図18】検出対象のモータの他の実施例を表す説明図である。
【図19】検出対象のモータの他の実施例を表す説明図である。
【図20】検出対象のモータの他の実施例を表す説明図である。
【図21】検出対象のモータの他の実施例を表す説明図である。
【図22】回転検出システムの他の実施例を表す説明図である。
【図23】回転検出システムの他の実施例を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
図1に、本発明が適用された実施形態の回転検出システムの概略構成を示す。図1に示すように、本実施形態の回転検出システム1は、直流モータ(以下単に「モータ」と称す)2を備え、このモータ2の回転角を検出するためのシステムであって、モータ2を回転駆動させる(トルクを発生させる)ための直流電圧を出力する直流電源3と、直流電源3からモータ2への直流電力の供給経路を導通・遮断するための直流電源スイッチ4と、上記直流電力の供給経路における直流電源スイッチ4とモータ2の間に設けられ、モータ2に流れる電流(モータ電流)に基づいてモータ2の回転角に応じた信号(回転パルスSp)を生成し出力する回転信号検出部5と、この回転信号検出部5から出力される回転パルスSpに基づいてモータ2の回転角を検出する制御部6と、を備えている。
【0038】
直流電源3は、所定電圧値Vbの直流電圧を出力するものであり、その直流電圧がモータ2に印加される(詳しくは各ブラシ16,17間に印加される)。直流電源3とモータ2の間には、直流電源スイッチ4が設けられており、この直流電源スイッチ4は、制御部6からの直流印加制御信号Sdcにより制御(ON・OFF)され、ONされているときには直流電源3の直流電圧がモータ2に印加され、OFFされているときには直流電源3の直流電圧の印加が遮断される。
【0039】
また、直流電源3の正極からモータ2を経てグランドライン(グランド電位)に至る経路におけるモータ2の下流側、即ちグランドライン側のブラシ17とグランドラインの間の経路には、この経路を導通・遮断するための駆動スイッチMOS(本発明のスイッチング手段に相当)が配置されている。この駆動スイッチMOSは、NチャネルMOSFETであり、制御部6からの駆動信号Smに従ってON・OFFされる。制御部6からの駆動信号Smは、0V(ローレベル)又は5V(ハイレベル)のパルス状の信号であり、駆動スイッチMOSは、駆動信号Smが0VのときはOFFされ、駆動信号Smが5VのときにONされる。尚、この駆動スイッチMOSは、モータ2の上流側に配置されてもよい。
【0040】
制御部6は、回転信号検出部5から入力される回転パルスSpに基づいてモータ2の回転角Dや回転速度を演算する。そして、その演算結果に基づいて、直流印加制御信号Sdcによる直流電源スイッチ4の制御、及び駆動信号Smによる駆動スイッチMOSの制御を行うことにより、モータ2の回転を制御する。
【0041】
本実施形態の制御部6は、後で詳しく述べるように、起動から停止までの全期間で、駆動スイッチMOSを所定のDuty(デューティ比)にてON・OFFさせるいわゆるPWM制御によって、モータ2の回転を制御する。
【0042】
より具体的には、起動〜定常回転中は、例えば5:5のDuty(以下「定常時Duty」という)で駆動スイッチMOSをON・OFF制御し、定常回転中のモータ2を停止させるための制動制御時は、例えば1:9のDuty(以下「制動時Duty」という)で駆動スイッチMOSをON・OFF制御する。
【0043】
このようなPWM制御により、DutyにおけるONの比率を大きくすればモータ2のトルクも上昇し、逆に、OFFの比率を大きくするほどモータ2のトルクや回転速度は小さくなって、上記例の1:9のようにOFFの比率を非常に大きくすると、ONの期間があるもののモータ2は停止する。
【0044】
そのため、回転時にモータ2に流れる電流は、図3に示すように、PWM制御の周波数(PWM周波数Sf)で増減(脈動)する電流、即ち、交流成分を含む電流となる。なお、図3は、制御部6が駆動スイッチMOSを5:5のDutyにてON・OFF制御する起動〜定常回転時におけるモータ電流の一例を示している。図3から明らかなように、駆動信号Smが5Vとなって駆動スイッチMOSがONされるとモータ電流は増加し、逆に駆動信号Smが0Vとなって駆動スイッチMOSがOFFされるとモータ電流は減少し、これがPWM周波数Sfで繰り返される。
【0045】
なお、本実施形態ではPWM周波数Sfは一定に設定されているのであるが、これはあくまでも一例であり、状況に応じてPWM周波数Sfを可変設定できるようにしてもよい。
【0046】
また、PWM周波数Sfは、モータ2の定格上の最大回転速度における、ブラシと整流子片の切り替わり周波数(回転パルスSpの周波数でもある)よりも高い周波数に設定されている。これは、後述するように本実施形態ではブラシと整流子片の切り替わりによって周期的に生じるモータ2のインピーダンスの変化を利用してモータ2の回転状態を検出するよう構成されているからである。
【0047】
なお、状態C(C’)の期間で、モータ電流にパルス状の波形が含まれているが、これについては後で説明する。
モータ2は、互いに対向して(即ち回転方向に180°離れて)配置された一対のブラシ16,17を備え、電機子コイルとして3相の相コイルを有するブラシ付きの3相直流モータであり、各ブラシ16,17と接触する3つの整流子片11,12,13からなる整流子10を備えている。そして、電機子コイルを構成する3つ(3相)の各相コイルL1,L2,L3が、それぞれ、図示のようにΔ結線されている。
【0048】
即ち、第3整流子片13と第1整流子片11との間に第1相コイルL1が接続され、第1整流子片11と第2整流子片12との間に第2相コイルL2が接続され、第2整流子片12と第3整流子片13との間に第3相コイルL3が接続されている。これら3つの相コイルL1,L2,L3からなる電機子コイル及び整流子10により、アーマチャが構成される。なお、各相コイルL1,L2,L3のインダクタンスは同じ値(L1=L2=L3)である。また、各相コイルL1,L2,L3は、互いに電気角で2/3πずつ離れるように配置されている。
【0049】
そして、3つの整流子片11,12,13のうちいずれか2つが、各ブラシ16,17にそれぞれ接触しており、モータ2の回転による整流子10の回転に伴って、各ブラシ16,17と接触する2つの整流子片は切り替わっていく。
【0050】
なお、本実施形態のモータ2は、図示は省略したものの、ヨークハウジングを有すると共に、ヨークハウジングの内壁側に永久磁石からなる界磁が設けられ、この界磁と対向するようにアーマチャが配置されている。
【0051】
更に、本実施形態では、モータ2において、第1相コイルL1と並列に、コンデンサC1が接続されている。
コンデンサC1は、周知の通り、直流的には電流がほとんど流れない非常に高い抵抗として機能し、交流的には周波数が高くなればなるほど電流が流れやすい低インピーダンス特性を有する。そのため、直流電源3からみればこのコンデンサC1は等価的に存在しないものとして扱うことができ、よって、直流電源3からの直流電流は各相コイルL1,L2,L3にのみ流れることとなる。
【0052】
一方、各ブラシ16,17間のモータ2内の回路(モータ回路)を交流回路としてみれば、各相コイルL1,L2,L3は高インピーダンスであるのに対してコンデンサC1は低インピーダンスとなり、両者の差は大きい。そのため、例えば図1に示す状態からモータ2が時計回りに回転(即ち整流子10が時計回りに回転)して、通電経路の下流側(グランド電位側)のブラシ17に第1整流子片11が接触するようになると、各ブラシ16,17間に、第1相コイルL1とコンデンサC1の並列回路が形成される。即ち、各ブラシ16,17間にコンデンサC1のみの通電経路が形成され、モータ回路全体として、このコンデンサC1と、各相コイルL1,L2,L3の合成インダクタンスとの、並列共振回路が形成される。そのため、その状態では、各ブラシ16,17間のモータ回路のインピーダンスは並列共振特性を有し、その共振周波数以上の周波数帯域では周波数が高くなればなるほどインピーダンスは低くなる。
【0053】
つまり、直流的にみればモータ回路は3つの相コイルL1,L2,L3のみからなる回路とみなせ、故に、直流電源3からの直流電流によって回転するモータ2の回転速度やトルクにコンデンサC1の存在が影響することはない。
【0054】
これに対し、交流的にみれば、モータ2の回転角に応じて各ブラシ16,17と接触する2つの整流子片が切り替わる毎に、各ブラシ間に形成されるモータ回路も変化し、よってモータ回路のインピーダンスも変化する。但し、本実施形態では、第1相コイルL1に対してのみコンデンサC1を一つ接続しているため、モータ2が180°回転する間に整流子片の切り替わりは3回生じるもののインピーダンスの変化は二段階である。
【0055】
図2(a)に、モータ2が180°回転する間における、モータ2内部の結線状態の変化、即ち各ブラシ16,17間に形成されるモータ回路の変化を示す。図2(a)に示すように、本実施形態のモータ2のモータ回路は、モータ2が180°回転する間に、主として状態A、状態B、及び状態Cの三種類に変化する。
【0056】
状態Aは、図示の如く、直流電源3の正極側(以下「Vb側」ともいう)のブラシ16に第1整流子片11が接触し、グランド電位側(以下「GND側」ともいう)のブラシ17に第2整流子片12が接触した状態である。この状態Aでのモータ2の等価回路、即ち各ブラシ16,17間に形成されるモータ回路は、図中右側に示す回路となる。
【0057】
この状態Aでは、コンデンサC1と第3相コイルL3とが直列に接続された状態となっているため、各ブラシ16,17間には、コンデンサC1のみの通電経路は存在せず、一方のブラシ16から他方のブラシ17に至るまでの経路には必ずいずれかの相コイルが存在することになる。そのため、この状態Aでは、各相コイルL1,L2,L3によるインダクタンスが支配的となってモータ回路全体のインピーダンスは高くなる。
【0058】
状態Bは、状態Aから時計回りに約50°回転した状態であり、Vb側のブラシ16に接触する整流子片が、状態Aのときの第1整流子片11から第3整流子片13へと切り替わっている。GND側のブラシ17には第2整流子片12が接触している。
【0059】
この状態Bでも、コンデンサC1と第2相コイルL2とが直列に接続された状態となっているため、各ブラシ16,17間には、コンデンサC1のみの通電経路は存在せず、一方のブラシ16から他方のブラシ17に至るまでの経路には必ずいずれかの相コイルが存在することになる。そのため、この状態Bでもモータ回路全体のインピーダンスは高い。なお、この状態Bと状態Aは、図の等価回路を比較して明らかなように、回路全体のインピーダンスは同じである。
【0060】
状態Cは、状態Bからさらに時計回りに約50°回転した状態であり、GND側のブラシ17に接触する整流子片が、状態A,Bのときの第2整流子片12から第1整流子片11へと切り替わっている。Vb側のブラシ16には第3整流子片13が接触している。
【0061】
この状態Cでは、第2相コイルL2及び第3相コイルL3の直列回路と、第1相コイルL1と、コンデンサC1とが、それぞれ並列接続された状態となる。そのため、各ブラシ16,17間には、コンデンサC1のみの通電経路が存在する。これにより、モータ回路のインピーダンスは低くなる。
【0062】
特に本実施形態では、モータ回路全体として並列共振回路が形成され、そのインピーダンスは並列共振特性を持つことになる。そのため、その共振周波数より高い周波数帯域では、周波数が高くなるほどコンデンサC1が支配的となってインピーダンスは低くなる。
【0063】
このように、モータ2が180°回転する間には、各ブラシ16,17と接触する整流子片の切り替わりが3回生じ、これに伴って各ブラシ16,17間のモータ回路は状態A,B,Cの三種類に切り替わる。但し状態Aと状態Bは、既述の通り、回路全体のインピーダンスが等しいため、180°回転の間に生じるインピーダンスの変化は二段階である。
【0064】
なお、モータ2の回転の過程では、隣接する2つの整流子片に一つのブラシが同時に接触する切り替わり期間が存在し、この切り替わり期間においてもブラシ間のインピーダンスが変化するが、この切り替わり期間はモータ2が一回転する間において瞬間的に生じるのみであり、これに伴うインピーダンスの変化も瞬間的なものである。そのため、本実施形態ではこの切り替わり期間については考慮しないものとする。
【0065】
状態Cから更に回転が進むと、Vb側のブラシ16に接触する整流子片が、状態Cのときの第3整流子片13から第2整流子片12へと切り替わる。GND側のブラシ17には第1整流子片11が接触している。この状態は、上述した状態Aにおいて、Vb側のブラシ16とGND側のブラシ17とが入れ替わった状態であり、モータ回路全体のインピーダンスは状態Aと同じである。そのため、以下の説明ではこの状態を状態A’という。
【0066】
この状態A’から更に回転が進むと、GND側のブラシ17に接触する整流子片が、状態A’のときの第1整流子片11から第3整流子片13へと切り替わる。Vb側のブラシ16には第2整流子片12が接触している。この状態は、上述した状態Bにおいて、Vb側のブラシ16とGND側のブラシ17とが入れ替わった状態であり、モータ回路全体のインピーダンスは状態Bと同じである。そのため、以下の説明ではこの状態を状態B’という。
【0067】
この状態B’から更に回転が進むと、Vb側のブラシ16に接触する整流子片が、状態B’のときの第2整流子片12から第1整流子片11へと切り替わる。GND側のブラシ17には第3整流子片13が接触している。この状態は、上述した状態Cにおいて、Vb側のブラシ16とGND側のブラシ17とが入れ替わった状態であり、モータ回路全体のインピーダンスは状態Cと同じである。そのため、以下の説明ではこの状態を状態C’という。
【0068】
そして、この状態C’から更に回転が進むと、再び状態Aに切り替わり、以下、回転が進むにつれて状態B→状態C→状態A’→状態B’→状態C’→状態A→・・・と切り替わる。
【0069】
つまり、モータ2は、一回転する間にその回転角に応じてモータ回路が状態A、B、C、A’、B’、C’の六種類に順次切り替わるのであり、60°回転毎に状態が切り替わるということになる。このうち、状態A、B、A’、B’は、いずれも同じインピーダンス(高インピーダンス)である。また、状態C、C’も同じインピーダンスであり、その値は状態A等のインピーダンスよりも非常に低い。
【0070】
図2(b)に、各状態におけるモータ回路のインピーダンスの周波数特性を示す。上述の通り、状態A,B,A’,B’のモータ回路のインピーダンスは同じである。この状態A,B,A’,B’の場合、コンデンサC1の影響はほとんどなく、周波数faで小さなピーク値(小さな共振点)が生じるものの、全体としてみれば周波数が高くなるほどインピーダンスが増加する特性となる。
【0071】
これに対し、状態C,C’の場合、各相コイルL1,L2,L3とコンデンサC1との共振によってインピーダンス特性は大きく変化し、共振周波数fbを中心(最大値)としてインピーダンスは小さくなる。そのため、状態A,B,A’,B’と状態C,C’とでは、インピーダンスが一致(特性が交差)する周波数fcを除き、インピーダンスが異なる。特に、周波数fcよりもある程度高い周波数以上の帯域では、インピーダンスの比が大きくなる。
【0072】
そして、上述したモータ回路のインピーダンスの変化は、モータ2に流れるモータ電流に含まれる交流成分(交流電流成分)の変化として直接現れる。
具体的には、図3に示すように、状態A、B、A’、B’のときは、各ブラシ16,17間にコンデンサC1のみの経路が存在せずモータ回路のインピーダンスは大きいため、比較的小さな振幅で、駆動スイッチMOSのON・OFFに追随して電流が脈動する。
【0073】
一方、状態C、C’のときは、各ブラシ16,17間にコンデンサC1のみの経路が生じる。そのため、この状態C,C’の期間(本発明の静電容量素子接続期間に相当)では、駆動スイッチMOSがONされると、そのONの瞬間に、コンデンサC1への突入電流(パルス状の電流)が流れる。この突入電流は、コンデンサC1を充電させるための充電電流である。この突入電流によってコンデンサC1が瞬間的に充電されると、以後、OFFされるまで、モータ電流はモータ回路の合成インダクタンス値に応じた傾きで増加していく。
【0074】
そして、駆動スイッチMOSがOFFされると、そのOFFの瞬間に、コンデンサC1の充電電荷が放電され、その放電によってパルス状の電流(放電電流)が流れる。この放電電流によってコンデンサC1の電荷が瞬間的に放電されると、以後、再びONされるまで、モータ電流はモータ回路の合成インダクタンス値に応じた傾きで減少していく。
【0075】
つまり、状態C、C’のときは、他の状態A、B、A’、B’のときと同じようにPWM周波数での電流の脈動が生じるのに加えて、更に、駆動スイッチMOSのON時及びOFF時のそれぞれにおいて、各ブラシ16,17間に接続されたコンデンサC1の充電、放電に伴うパルス状の電流が流れる。
【0076】
そこで本実施形態では、回転信号検出部5が、モータ2の回転に伴うモータ回路のインピーダンス変化によって生じる、モータ電流の変化(本実施形態では特に、上述したパルス状の電流の有無)に基づいて、回転パルスSpを生成する。そして、その回転パルスSpに基づき、制御部6が、モータ2の回転角を検出する。
【0077】
図4に、回転信号検出部5の具体的構成を示す。回転信号検出部5は、モータ2に流れる電流を検出する電流検出部21と、この電流検出部21により検出されたモータ電流に基づく各種信号処理を行って回転パルスSpを生成する信号処理部22とを備えている。
【0078】
電流検出部21は、モータ電流が流れる通電経路に配置された電流検出抵抗R1からなり、この電流検出抵抗R1の両端のうちモータ2側に接続されている一端とグランドの間の電圧が、モータ電流に応じた検出信号(本発明の電気量に相当)として信号処理部22へ取り込まれる。
【0079】
尚、このように電流検出抵抗R1の一端(モータ2側)とグランドの間の電圧を検出することによってモータ電流を検出する構成はあくまでも一例であり、モータ電流を直接又は間接的に検出できる限り、その具体的構成は他にも種々考えられる。例えば、電流検出抵抗R1の両端の電圧を差動増幅回路で増幅し、その差動増幅後の電圧(モータ電流を示す電圧)を信号処理部22に入力するようにしてもよい。また例えば、電流プローブを設けて電流を検出するようにしてもよい。
【0080】
信号処理部22は、ハイパスフィルタ(HPF)23と、増幅部24と、包絡線検波部25と、ローパスフィルタ(LPF)26と、閾値設定部27と、比較部28と、を備えている。
【0081】
HPF23は、コンデンサC11及び抵抗R2からなる周知の高域通過フィルタ回路である。信号処理部22に取り込まれた電流検出抵抗R1による検出信号は、このHPF23によって所定の遮断周波数より低い帯域の信号がカットされ、遮断周波数以上の帯域の信号が通過する。
【0082】
この遮断周波数は、図2(b)に示した、周波数fcよりも大きい周波数f1に設定されており、この周波数f1以上の帯域が通過帯域としてこのHPF23を通過する。
この周波数f1以上の通過帯域には、上述した、状態C,C’において駆動スイッチMOSのON、OFFの瞬間に生じるパルス状の電流の周波数成分も含まれている。このパルス状の電流は、遮断周波数f1よりも高い所定の周波数を基本波周波数として、その基本波周波数の成分を含むのはもちろん、その基本波周波数のn倍(nは2以上の自然数)の周波数fnであるn倍波(2倍波、3倍波、4倍波、・・・)が含まれる。本実施形態では、パルス状の電流が有する全ての周波数成分がHPF23を通過し、後段の増幅部24へ入力される。
【0083】
増幅部24は、オペアンプ7と、オペアンプ7の出力端子と反転入力端子との間に接続された抵抗R3と、オペアンプ7の反転入力端子とグランドラインとの間に接続された抵抗R4とを備え、非反転入力端子に入力される信号(HPF23からの検出信号)が所定の増幅率にて増幅される。
【0084】
増幅部24にて増幅された検出信号は、包絡線検波部25にて包絡線検波される。この包絡線検波部25は、整流用のダイオードD1と、一端がこのダイオードD1のカソードに接続されて他端がグランド電位に接続された抵抗R5と、一端がダイオードD1のカソードに接続されて他端がグランド電位に接続されたコンデンサC12とを備えてなるものであり、ダイオードD1のアノードに、増幅部24からの検出信号が入力される。
【0085】
この包絡線検波部25により、増幅部24から入力された検出信号が包絡線検波され、その振幅に応じた一定の信号(以下「検波信号」という)が生成される。
そして、その生成された検波信号は、LPF26にて高周波成分がカットされた上で、比較部28に入力される。LPF26は、抵抗R6及びコンデンサC13からなる周知の構成のものである。なお、抵抗R6にはダイオードD2が並列接続されている。このダイオードD2の接続方向は、検波信号が入力される方向に対して逆方向となっている。
【0086】
比較部28は、コンパレータ8と、コンパレータ8の出力端子と反転入力端子との間に接続された抵抗R9と、一端がコンパレータ8の非反転入力端子に接続されて他端がLPF26に接続された抵抗R7と、一端がコンパレータ8の反転入力端子に接続されて他端が閾値設定部27に接続された抵抗R8とを備えてなるものである。
【0087】
包絡線検波部25から出力された検波信号は、LPF26を介して比較部28に入力され、この比較部28において抵抗R7を介してコンパレータ8の非反転入力端子に入力される。一方、コンパレータ8の反転入力端子には、抵抗R8を介して閾値設定部27からの閾値が入力される。これにより、コンパレータ8では、検波信号と閾値との比較が行われ、その比較結果が出力される。
【0088】
閾値設定部27にて設定され比較部28に入力される閾値は、本実施形態では、インピーダンスが大きい状態A、B、A’、B’の期間での検波信号よりも大きく、且つ、インピーダンスが小さくて駆動スイッチMOSのON・OFFのタイミングでパルス状の電流が流れる状態C、C’の期間での検波信号よりも小さい、所定の値が設定されている。
【0089】
そのため、状態A、B、A’、B’の期間では、包絡線検波部25から比較部28へ入力される検波信号は0Vであって閾値設定部27からの閾値よりも小さいため、コンパレータ8からはローレベルの信号が出力される。一方、状態C、C’の期間では、包絡線検波部25から比較部28へ入力される検波信号は閾値よりも大きくなるため、コンパレータ8からはハイレベルの信号が出力される。
【0090】
そして、コンパレータ8から出力されたローレベル、ハイレベルの信号が、モータ2の回転角に応じた回転パルスSpとして、制御部6へ出力される。
このように、信号処理部22では、電流検出抵抗R1にて検出されたモータ電流(検出信号)に対して各種信号処理を行った上で回転パルスSpが生成されるため、外乱やノイズが低減された正確な回転パルスSpが生成される。
【0091】
制御部6は、信号処理部22から入力された回転パルスSpに基づき、例えばその回転パルスSpの立ち上がりエッジを検出・計数するといった方法により、モータ2の回転角や回転速度を検出する。
【0092】
次に、モータ2が起動(回転開始)してから停止するまでのモータ電流波形の一例、及びそのモータ電流に基づく、信号処理部22による回転パルスSpの生成の概要を、図5を用いて説明する。
【0093】
図5に示すように、起動後、定常回転状態になるまでの初期段階では、一旦電流は急上昇した後に一定の電流値に落ち着いていく。そして、定常回転状態になると、電流値は平均的に一定となる。起動〜定常回転時は、定常時Dutyが5:5であるため、駆動スイッチMOSがONされる期間とOFFされる期間は同じである。そして、状態C,C’の期間は、ON・OFFされる毎にパルス状の電流が発生する。
【0094】
制動が開始されると、本実施形態では既述の通り制動時Dutyが1:9であることから、駆動スイッチMOSの制御は、極短い期間ONされてそれよりも遙かに長い期間OFFされる、という制御が繰り返される。これにより、制動開始時はモータ2の逆起電力によりモータ電流が一旦逆方向(定常回転時とは反対方向)に大きく低下するものの徐々に0に近づいていき、やがて、制動時Duty1:9の比率に応じた平均電流に落ち着いてモータ2は停止する。この制動開始〜停止の間も、定常回転時と同様、状態C,C’の期間は、駆動スイッチMOSがON・OFFされる毎にパルス状の電流が発生する。
【0095】
そのため、HPF23の出力は、起動〜停止までの全期間に渡って、状態A、B、A’、B’のときは基本的に何も出力されず、状態C,C’のときに、上記パルス状の電流の周波数成分が出力される。そして、そのパルス状の電流に対応した検出信号が包絡線検波部25により検波され、LPF26を経た後に、比較部28にて、閾値設定部27により設定される閾値と検波信号との比較がなされる。そして、検波信号が閾値よりも大きい期間において回転パルスSpが生成されることとなる。
【0096】
なお、図5に示したモータ電流波形では、当該モータ電流に含まれる交流成分のうち、状態C,C’の期間におけるパルス状の電流のみ図示し、パルス状の電流以外の波形、即ちPWM周波数Sfにて全期間に渡って生じる脈動(図3参照)については、図示を省略している。後述する図13についても同様である。
【0097】
本実施形態では、起動〜定常回転時はもちろん、制動制御時においても、直流電源3からの直流電力の供給を完全に遮断するのではなく、所定のDutyにてPWM制御を行うことにより、モータ2に電流を流すようにしている。制動制御時には、モータ2を停止し得る程度のDuty(上記の制動時Duty)にてPWM制御することにより、モータ2が停止するまでPWM制御を継続する。そのため、回転速度に関係なくモータ2の回転角を検出することができるのである。勿論、完全に停止した後も、引き続き、モータ2が回転しない程度の低いDutyにてPWM制御を継続してもよい。
【0098】
なお、本実施形態の回転検出システム1は、回転パルスSpに基づいてモータ2の回転角を検出するよう構成されたものであるが、回転パルスSpの間隔(例えば立ち上がりエッジの間隔)に基づいてモータ2の回転速度も検出できるよう構成してもよい。
【0099】
次に、制御部6が実行する、モータ2の回転制御及び回転角Dの算出を行うためのモータ駆動制御処理について、図6を用いて説明する。図6は、制御部6が実行するモータ駆動制御処理のフローチャートである。
【0100】
制御部6は、モータ2を回転させるべき旨の外部からの指令を受けることによりこのモータ駆動制御処理を開始すると、まずS110にて、目標回転角Do、PWM周波数Sf、定常時Duty、及び制動時Dutyを取得する。
【0101】
目標回転角Doは、ここでは制動を開始するタイミング(角度)であって、最終的に停止したときの目標とすべき角度を示すものではない。これは、制動をかけてもモータ2がすぐに停止するとは限らず、制動を開始した後もモータ2が完全に停止するまでは惰性で回転を続けるためである。そのため、目標回転角Doとして、最終的に停止したときの角度を設定する場合は、制動開始から完全に停止するまでの惰性回転量を考慮した値に設定する必要がある。
【0102】
上記各値を取得すると、S120にて、モータ回転制御を行う。即ち、駆動スイッチMOSを、定常時Duty(本例では5:5)にてPWM制御する。
そして、S130にて、直流電源スイッチ4へHレベルの直流印加制御信号Sdcを出力することにより直流電源スイッチ4をONさせて、モータ2へ直流電源3の直流電圧を印加する。これにより、モータ2が回転を開始する。
【0103】
そして、S140にて、回転パルスSpが検出された否か、即ち信号処理部22から回転パルスSpが入力されたか否かを判断し、回転パルスSpが検出された場合(S140:YES)、S150にて、その回転パルスSpに基づいて回転角Dを算出する。
【0104】
なお、回転角Dは、回転パルスSpをカウントすることによりそのカウント値に基づいて算出される。また、図示は省略したが、回転パルスSpの出力間隔(周期)に基づいて回転速度の算出も行われる。
【0105】
S150にて回転角Dを算出した後は、S160にて、現時点での回転角Dが目標回転角Doに等しいか否かを判断する。そして、回転角Dが目標回転角Doに到達するまではS140〜S150の処理を繰り返すが、回転角Dが目標回転角Doに到達すると(S160:YES)、モータ2を制動させるべく、S170にて制動制御を開始する。即ち、駆動スイッチMOSを制動時Duty(本例では1:9)にてPWM制御する。
【0106】
S170による制動制御開始後、S180にて、そのS170による制動制御開始からy秒経過したか否かを判断する。このy秒は、制動制御開始からモータ2が完全に停止するまでの必要十分な時間である。つまり、S180の判断処理は、モータ2が完全に停止したか否かを判断する処理であると言える。
【0107】
S180にて、制動制御開始からまだy秒経過していない場合は、S190に進み、S140と同様に回転パルスSpが検出されたか否かを判断する。そして、回転パルスSpが検出された場合は(S190:YES)、S200にて、S150と同様に回転角Dの算出を行い、再びS180に戻る。
【0108】
そして、S170の制動制御開始からy秒経過すると(S180:YES)、S210にて、直流電源スイッチ4へLレベルの直流印加制御信号Sdcを出力することにより直流電源スイッチ4をOFFさせて、モータ2への直流電圧の印加を遮断する。そして、続くS220にて、停止制御、即ち、駆動スイッチMOSをOFFさせて、このモータ駆動制御処理を終了する。
【0109】
以上説明したように、本実施形態の回転検出システム1では、モータ2が、3相の各相コイルL1,L2,L3のうち第1相コイルL1と並列に回転角検出用のコンデンサC1が接続された構成となっており、これにより、180°回転する毎にモータ回路のインピーダンスが二段階に変化する。このうち、特に状態C,C’では、各ブラシ16,17間にコンデンサC1が直接接続された状態となることから、駆動スイッチMOSがONされる毎、及びOFFされる毎に、そのON・OFFの瞬間にパルス状の電流が流れる。
【0110】
そして、制御部6は、モータ2を、起動〜停止までの全期間に渡ってPWM制御にて駆動している。そのため、起動〜停止までの全期間に渡って、モータ2の回転角が状態C,C’に相当する位置にある間は、上記パルス状の電流が周期的に発生することになる。一方、インピーダンスが高くなる状態A,A’,B,B’では、パルス状の電流は発生しない。そこで、信号処理部33は、モータ電流に含まれる上記パルス状の電流を検出してそれに対応した回転パルスSpを生成する。そして、制御部6はその回転パルスSpに基づいて回転角Dや回転速度などの回転状態を検出する。
【0111】
従って、本実施形態の回転検出システム1によれば、モータ2が起動してから停止するまでの全期間で回転角Dや回転速度を確実に検出することができる。しかも、回転角Dの検出は、PWM制御によって生じるパルス状の電圧の有無に基づいて行っており、モータ駆動に影響を与えることなく検出が行われる。そのため、ロータリエンコーダ等の大がかりなセンサを設けることなく、回転速度によらずに回転角を精度良く検出することができる。
【0112】
上述した特許文献1に開示された方法は、抵抗器を設けたことによって生じる直流電流の変動に基づいて検出を行うものであるため、減速〜停止にかけてモータに流れる直流電流が小さくなっていくとその変動も小さくなって、検出が困難となる。
【0113】
これに対し、本実施形態では、PWM制御によって生じる交流成分に基づいて検出を行っているため、モータ2の回転速度にかかわらず、PWM制御を行っている限り(さらにはスイッチMOSをON・OFF制御している限り)、モータ2の回転状態を検出することができるのである。
【0114】
また、特許文献1に開示された方法では、いずれか一つの相コイルに抵抗器を接続することによってモータ回路に流れる直流電流に変動が生じるようにしているため、この電流変動に伴って必然的にモータのトルク変動が生じてしまう。モータのトルク変動は、モータ自身の騒音、或いはモータにより駆動される駆動対象の騒音の発生原因になる。
【0115】
これに対し、本実施形態では、第1相コイルL1にコンデンサC1を並列接続することによってモータ2の回転に伴うインピーダンスの変化を生じさせるようにしており、コンデンサC1は直流的にみれば高インピーダンスであってその存在は無視し得る。そのため、回転検出のためコンデンサC1が設けられているものの、それによってモータ2のトルクにトルク変動等の影響を与えることはなく、この点でも本実施形態の回転検出システム1は優れている。
【0116】
また、本実施形態では、モータ2に流れる交流成分に基づいて回転状態を検出するようにしているが、交流成分に基づく回転状態の検出という観点でいえば、上記実施形態のような方法以外にも、例えば、別途交流電源を設けてその交流電源から例えばカップリングコンデンサを用いること等によってモータ2へ交流成分を重畳させることもできる。
【0117】
しかし、このように別途交流電源を設ける方法は、交流電源を設ける必要性があることから、その分のコストアップや装置構成の大型化を招く。しかも、特に中・大型のモータになると、モータ自身のインピーダンスが小さくなるため、カップリングコンデンサを用いた交流重畳自体が困難となる。
【0118】
これに対し、本実施形態のようにPWM制御によって生じる交流成分に基づいて回転状態を検出する方法は、別途交流電源を設けることなく交流成分を生じさせることができるため、上述した各種問題が生じないという利点がある。
【0119】
[第2実施形態]
図7に、本実施形態の回転検出システム30の概略構成を示す。本実施形態の回転検出システム30は、検出対象のモータ31に対し、第1実施形態と同様にその回転角や回転速度を検出できるのに加え、更に、モータ31の回転方向も検出可能に構成されたシステムである。
【0120】
本実施形態の回転検出システム30も、モータ31に駆動用の直流電圧を印加するための直流電源3を備え、また、直流電源スイッチ4とモータ2の間に電流検出部21が備えられている。また、モータ2からグランドラインに至る経路上に駆動スイッチMOSが設けられていること、及びこの駆動スイッチMOSが制御部34によって起動〜停止まで全期間に渡ってPWM制御されることは、第1実施形態の回転検出システム1と同じである。また、PWM制御において、起動〜定常回転時は定常時Duty(5:5)で制御され、制動制御時には制動時Duty(1:9)で制御されることについても、第1実施形態と同様である。
【0121】
そのため、第1実施形態と同じ構成要素には第1実施形態と同じ符号を付し、その詳細説明を省略する。そして、以下、第1実施形態の回転検出システム1とは異なる構成を中心に説明する。
【0122】
本実施形態の回転検出システム30では、モータ31が、第1相コイルL1と並列にコンデンサC1が接続されているのに加え、更に、第2相コイルL2にもコンデンサC2が並列接続された構成となっている。このコンデンサC2の静電容量値は、第1相コイルL1に並列接続されたコンデンサC1の静電容量値とは異なる値である。
【0123】
そのため、このモータ31が180°回転する間、各ブラシ16,17と接触する整流子片が切り替わる毎、即ち各ブラシ16,17間のモータ回路が変化する毎に、そのモータ回路のインピーダンスはそれぞれ異なる値に変化する。つまり、第1実施形態では、図2に示したように、180°回転する間にモータ回路は状態A〜Cの3種類に変化するもののインピーダンスの変化は状態A,Bの高インピーダンスと状態Cの低インピーダンスの二段階種類であったのに対し、本実施形態では、モータ回路が3種類に変化する毎に、インピーダンスもそれぞれ異なる値(3種類の値)となる。即ち、180°回転する間にモータ回路のインピーダンスは3段階に変化するのである。
【0124】
状態A,B,Cのそれぞれでモータ回路のインピーダンスが異なることについて、図8を用いて説明する。図8(a)に、モータ31が180°回転する間における、モータ31内部の結線状態の変化、即ち各ブラシ16,17間に形成されるモータ回路の変化を示す。図8(a)に示すように、本実施形態のモータ31のモータ回路は、モータ2が180°回転する間に、主として状態A、状態B、及び状態Cの三種類に変化する。
【0125】
状態Aでは、各ブラシ16,17間にコンデンサC2のみの経路が存在しているため、ブラシ間には、このコンデンサC2と、このコンデンサC2に並列接続された合成インダクタンスとの並列共振回路が形成される。そのため、この状態Aでのブラシ間のインピーダンスは、図8(b)に示すように、周波数fdを共振周波数とする並列共振特性を有する。
【0126】
状態Bは、状態Aから時計回りに約50°回転した状態である。この状態Bでは、ブラシ間に、コンデンサC1とコンデンサC2の直列回路が接続された状態となっている。そのため、ブラシ間には、この各コンデンサC1,C2の直列合成容量と、これらに並列接続された合成インダクタンスとの、並列共振回路が形成される。そのため、この状態Bで形成される並列共振回路のインピーダンスは、図8(b)に示すように、周波数fgを共振周波数とする並列共振特性を有する。そして、この状態Bでの共振周波数fgは、状態Aでの共振周波数fdよりも高い。
【0127】
状態Cは、状態Bからさらに時計回りに約50°回転した状態である。この状態Cでは、ブラシ間にコンデンサC1のみの経路が存在しているため、ブラシ間には、このコンデンサC1と、このコンデンサC1に並列接続された合成インダクタンスとの並列共振回路が形成される。そのため、この状態Cでのブラシ間のインピーダンスは、図8(b)に示すように、周波数feを共振周波数とする並列共振特性を有する。そして、この状態Cでの共振周波数feは、状態Aでの共振周波数fdよりも高く、状態Bでの共振周波数fgよりは低い。
【0128】
そして、本実施形態でも、第1実施形態と同様、PWM制御におけるPWM周波数Sfが、状態Bでの共振周波数fgよりも高い周波数に設定される。そのため、モータ31のモータ回路のインピーダンスは、状態Aが最も小さくて状態Bが最も大きく、状態Cは両者の間である。
【0129】
つまり、本実施形態のモータ31は、回転に伴って、モータ回路のインピーダンスの変化が三段階生じる。また、状態A,B,Cのいずれも、静電容量値の差こそあれ、ブラシ間にコンデンサのみの経路が存在する。
【0130】
そのため、いずれの状態においても、駆動スイッチMOSのON時及びOFF時にパルス状の電流が発生する。具体的には、図9に例示する通りであり、インピーダンスが最も大きくなる状態Bが最も小さいパルスとなり、インピーダンスが小さくなる状態Aが最も大きいパルスとなり、インピーダンスが状態Aと状態Bの中間である状態Cが、両者の中間の大きさのパルスとなる。
【0131】
つまり、モータ31に流れるモータ電流に含まれるパルス状の交流電流成分は、モータ31が同一方向に回転している限り、その振幅が、小振幅、中振幅、大振幅の3種類段階に順次変化する。
【0132】
そこで本実施形態の回転検出システム30では、回転信号検出部32を構成する信号処理部33が、図10(a)に示すように、2つの閾値設定部38,39と、2つの比較部36,37を備え、各比較部36,37からそれぞれ第1回転パルスSp11、第2回転スSp12が出力されるよう構成されている。
【0133】
即ち、図10(a)に示す信号処理部33は、HPF23、増幅部24、包絡線検波部25、及びLPF26を備えている点では、図4に示した第1実施形態の信号処理部22と同じである。そして、本実施形態の信号処理部33は、LPF26から出力された検波信号が、第1比較部36及び第2比較部37に入力される。
【0134】
第1比較部36では、入力された検波信号と第1閾値設定部38にて設定されている第1閾値との比較が行われ、第1実施形態の比較部28と同様に、比較結果に応じた回転パルス(第1回転パルスSp11)が出力される。
【0135】
第2比較部37では、入力された検波信号と第2閾値設定部39にて設定されている第2閾値との比較が行われ、比較結果に応じた回転パルス(第2回転パルスSp12)が出力される。
【0136】
第1閾値及び第2閾値は、次のように設定されている。即ち、検出信号に含まれる交流電流成分が小振幅のとき(即ち状態Bのとき)の包絡線検波部25による包絡線検波後の検波信号を小検波信号、交流電流成分が中振幅のとき(即ち状態Cのとき)の包絡線検波部25による包絡線検波後の検波信号を中検波信号、交流電流成分が大振幅のとき(即ち状態Aのとき)の包絡線検波部25による包絡線検波後の検波信号を大検波信号としたとき、第1閾値は、小検波信号より大きく中検波信号より小さい所定の値であり、第2閾値は、中検波信号より大きく大検波信号より小さい所定の値である。
【0137】
そのため、包絡線検波部25からの検波信号に対して第1比較部36にて第1閾値との比較を行った結果、例えば検波信号が第1閾値より小さければ、小検波信号と判断できる。検波信号が第1閾値より大きかった場合は、中検波信号又は大検波信号の何れかであることが推定される。この場合、第2比較部37による第2閾値との比較の結果、検波信号が第2閾値より小さければ中検波信号と判断でき、検波信号が第2閾値よりも大きければ大検波信号と判断できる。
【0138】
逆に言えば、検波信号に対してそれが小検波信号、中検波信号、又は大検波信号のいずれであるかを判断できるように、第1閾値及び第2閾値をそれぞれ設定することで、整流子片の切り替わり毎(モータ回路の切り替わり毎)に、その切り替わりを検出して各回転パルスSp11,Sp12を生成することができる。そのため、第1実施形態に比べて分解能の高い回転角検出が実現される。
【0139】
図10(b)は、各回転パルスSp11,Sp12の一例である。図示の如く、第1回転パルスSp11は、交流電流成分が中振幅及び大振幅となる状態A,Cの期間に出力され、第2回転パルスSp12は、交流電流成分が大振幅となる状態Aの期間に出力される。
【0140】
また、本実施形態では、180°回転する間の整流子片の切り替わり毎に、交流電流成分の振幅が小・中・大の3段階に順次変化するため、その変化パターンの仕方に基づいてモータ31の回転方向を検出することができる。
【0141】
即ち、図10(b)から明らかなように、例えばモータ31の回転角が状態Aのある角度にあって各回転パルスSp1,Sp2の双方が出力されている場合に、次に第2回転パルスSp2が出力されなくなるか、それとも各回転パルスSp1,Sp2の双方とも出力されなくなるかによって、モータ31がどの方向に回転しているかがわかる。また例えば、モータ31の回転角が状態Bのある角度にあっていずれの回転パルスも出力されていない場合に、次に第1回転パルスSp1のみが出良くされるか、それとも各回転パルスSp11,Sp2の双方が出力されるかによって、モータ31がどの方向に回転しているかがわかる。
【0142】
そのため、本実施形態の制御部34は、信号処理部33から入力される第1回転パルスSp1及び第2回転パルスSp2の2つの回転パルスに基づき、上述した要領で、モータ31の回転方向を検出するよう構成されている。
【0143】
そのため、例えばモータ31が停止する直前に逆転してしまったとしても、その逆転の発生を検出して、回転角Dの算出結果に反映させることができる。
なお、回転角Dや回転速度の算出は、第1回転パルスSp1及び第2回転パルスSp2のうち何れか一方を用いて第1実施形態と同様に算出することができる。或いは、双方の回転パルスを用いて、より分解能の高い算出を行うことも可能である。
【0144】
以上説明した本実施形態の回転検出システム30によれば、モータ31において、静電容量値の異なる2つのコンデンサC1,C2が第1相コイルL1と第2相コイルL2にそれぞれ並列接続されており、これにより、回転に伴って各ブラシ16,17と接触する整流子片が切り替わる毎に、駆動スイッチMOSのON・OFF時に発生する交流電流成分(パルス状の電流)の振幅もそれぞれ異なる大きさに変化する。そのため、より高い分解能で回転角Dや回転速度を検出することができ、更に加えて、回転方向をも検出することができる。そのためモータ31の停止付近で起こりやすい逆転も正確に検出でき、回転方向も考慮されたより精度の高い回転角Dの検出が可能となる。
【0145】
[第3実施形態]
図11に、本実施形態の回転検出システム40の概略構成を示す。本実施形態の回転検出システム40も、図1に示した第1実施形態の回転検出システム1と同様、モータ2の回転角を検出するためのシステムであり、モータ2に駆動用の直流電圧を印加するための直流電源3を備えている点、モータ2に流れる電流に基づいて回転パルスSpを生成する回転信号検出部5を備えている点、直流電源スイッチ4が設けられている点、などについては、第1実施形態と同じである。
【0146】
そのため、第1実施形態と同じ構成要素には第1実施形態と同じ符号を付し、その詳細説明を省略する。そして、以下、第1実施形態の回転検出システム1とは異なる構成を中心に説明する。
【0147】
本実施形態の回転検出システム40では、直流電源3からモータ2への電力供給が、モータドライバ41を介して行われる。モータドライバ41は、4つのスイッチからなる周知のHブリッジ回路(いわゆるフルブリッジ)にて構成されたものである。
【0148】
即ち、モータドライバ41は、MOSFETからなる第1駆動スイッチMOS1、第2駆動スイッチMOS2、第3駆動スイッチMOS3、及び第4駆動スイッチMOS4を備え、このうちハイサイド側の各駆動スイッチMOS1,MOS2(いずれもPチャネルMOSFET)のソースは直流電源スイッチ4を介して直流電源3に接続され、ローサイド側の各駆動スイッチMOS3,MOS4(いずれもNチャネルMOSFET)のソースはグランドラインに接続されている。また、ハイサイド側の第1駆動スイッチMOS1のドレインはローサイド側の第3駆動スイッチMOS3のドレインに接続されると共に、その接続点(即ちHブリッジ回路の一方の中点J)はモータ2における一方のブラシ16に接続されている。同様に、ハイサイド側における他方の第2駆動スイッチMOS2のドレインはローサイド側における他方の第4駆動スイッチMOS4のドレインに接続されると共に、その接続点(ブリッジ回路の他方の中点K)はモータ2における他方のブラシ17に接続されている。
【0149】
そして、各駆動スイッチMOS1〜MOS4のゲートには、それぞれ、制御部42から駆動信号Sm1〜Sm4が入力され、各駆動スイッチMOS1〜MOS4は、それぞれ自身のベースに入力される駆動信号によってON・OFFされる。
【0150】
このように、モータドライバ41を備えていることにより、このモータドライバ41によるモータ2の正転・逆転の切り替えが可能である。即ち、モータ2を正転させる際は、直流電源スイッチ4をONさせると共に、モータドライバ41を構成する4つの駆動スイッチMOS1〜MOS4のうち、第1駆動スイッチMOS1及び第4駆動スイッチMOS4をONさせ、他の2つの第2駆動スイッチMOS2,MOS3をOFFさせる。これにより、直流電源3からの直流電圧が、モータドライバ41を介してモータ2へ印加され、モータ2が正転を開始する。正転時には、図11に矢印で示したように、モータ2において、一方のブラシ16から他方のブラシ17へモータ電流が流れることになる(但し起動〜定常回転時)。
【0151】
一方、モータ2を逆転させる際は、モータドライバ41を構成する4つの駆動スイッチMOS1〜MOS4のうち、第2駆動スイッチMOS2及び第3駆動スイッチMOS3をONさせて、他の2つの駆動スイッチMOS1,MOS4をOFFさせる。これにより、図11に矢印でしたように、モータ2において、他方のブラシ17から一方のブラシ16へモータ電流が流れることになる(但し起動〜定常回転時)。
【0152】
このように、ONさせる駆動スイッチを切り替えることで、モータ2の正転及び逆転の切り替えが可能となるわけだが、本実施形態でも、上記各実施形態と同様、モータ2の回転角を検出できるよう、起動〜停止までの全期間で、各駆動スイッチMOS1〜MOS4をPWM制御する。
【0153】
具体的には、回転させるべき方向(指定方向)に対する通電方向への通電である指定方向通電(本発明の通電駆動に相当)を行うための駆動スイッチ制御と、と、各ブラシ16,17間を短絡させる短絡通電(本発明の短絡駆動に相当)を行うための駆動スイッチ制御とを、所定のDutyにて切り替えることにより、指定方向への回転を制御する。
【0154】
ここで、指定方向通電を行うための駆動スイッチ制御とは、指定された回転方向に回転させるための駆動スイッチ制御であり、例えば正転させるべき旨が指定されている場合は、第1駆動スイッチMOS1と第4駆動スイッチMOS4をONさせて他の2つの駆動スイッチMOS2,MOS3をOFFさせることにより正転方向へ通電させるような制御となる。また例えば、逆転させるべき旨が指定されている場合は、第2駆動スイッチMOS2と第3駆動スイッチMOS3をONさせて他の2つの駆動スイッチMOS1,MOS4をOFFさせることにより逆転方向へ通電させるような制御となる。
【0155】
一方、短絡通電を行うための駆動スイッチ制御とは、ローサイド側の2つの駆動スイッチMOS3,MOS4を何れもONさせてハイサイド側の2つの駆動スイッチMOS1,MOS2をいずれもOFFさせるような制御となる。
【0156】
そして、起動〜定常回転時は、指定方向通電のための駆動スイッチ制御(通電駆動)と短絡通電のための駆動スイッチ制御(短絡駆動)を所定のDuty(定常時Duty)で切り替えることで、指定方向への通電量を制御し、延いては指定方向への回転を制御する。本例では、通電駆動と短絡駆動を例えば9:1の定常時DutyにてPWM制御する。
【0157】
つまり、図12に示す定常回転時の波形例のように、例えば正転方向に回転するよう指定されている場合には、指定方向通電(即ち正転方向通電)のための通電駆動(第1駆動スイッチMOS1及び第4駆動スイッチMOS4をON)と、短絡通電のための短絡駆動((第3駆動スイッチMOS3及び第4駆動スイッチMOS4をON)が、9:1のDutyで切り替え制御される。
【0158】
そのため、定常回転時は、図12及び図13に示すように、上記の切り替えタイミングに従ってモータ電流が脈動する。そして、第1実施形態と同様、各ブラシ16,17間にコンデンサC1のみの通電経路が存在する状態Cにおいては、駆動スイッチのON・OFFの直後、即ち本例では第1駆動スイッチMOS1と第4駆動スイッチMOS4のON直後及びOFF直後に、それぞれ、コンデンサC1への充電・放電によるパルス状の電流が発生する。なお、本実施形態では、定常回転時の定常時Dutyが9:1に設定されているため、パルス状の電流の発生タイミングも、図12及び図13に示すようにその定常時Dutyに応じたものとなる。
【0159】
また、制動制御時には、定常回転時と同様に、通電駆動と短絡駆動を所定のDuty(制動時Duty)で切り替えるのであるが、その制動時Dutyを、モータ2が停止し得る程度のDutyとする。具体的には、本例では1:9のDutyにて切り替え制御される。
【0160】
そのため、制動制御時も、図13に示すように、上記の切り替えタイミングに従ってモータ電流が脈動する。また、この制動制御時も、各ブラシ16,17間にコンデンサC1のみの通電経路が存在する状態Cにおいては、駆動スイッチのON・OFFの直後にそれぞれ、コンデンサC1への充電・放電によるパルス状の電流が発生する。
【0161】
そして、PWM制御によって生じたパルス状の電流に対し、信号処理部22が、各種信号処理(HPF23〜比較部28までの一連の流れ)を通して回転パルスSpを生成する。そして、その生成された回転パルスSpに基づき、制御部42が、第1実施形態の制御部6と全く同様の方法によって回転角や回転速度を検出する。
【0162】
次に、本実施形態の制御部42が実行するモータ駆動制御処理について、図14のフローチャートを用いて説明する。図14のモータ駆動制御処理が開始されると、制御部42はまず、S310にて、目標回転角Do、回転方向、PWM周波数Sf、定常時Duty、及び制動時Dutyを取得する。
【0163】
そして、S320にて、回転方向を判断する。この判断はS310にて取得した回転方向に基づくものであり、その取得した回転方向が正転であればS330に進み、逆転であればS340に進む。
【0164】
取得した回転方向が正転であることによりS330に進んだ場合は、モータ正転制御を行う。即ち、正転方向通電のための、第1駆動スイッチMOS1及び第4駆動スイッチMOS4をONさせる通電駆動と、短絡通電のための、第3駆動スイッチMOS3及び第4駆動スイッチMOS4をONさせる短絡駆動とを、定常時Duty(本例では9:1)にて切り替え(PWM制御)する。そして、S350にて、直流電圧の印加を行う。
【0165】
これにより、図12及び図13に示したように、9:1の定常時Dutyにて通電駆動と短絡駆動が切り替えられながらモータが正転することとなる。
一方、S310にて取得した回転方向が逆転であることによりS340に進んだ場合は、モータ逆転制御を行う。即ち、逆転方向通電のための、第2駆動スイッチMOS2及び第3駆動スイッチMOS3をONさせる通電駆動と、短絡通電のための、第3駆動スイッチMOS3及び第4駆動スイッチMOS4をONさせる短絡駆動とを、定常時Duty(9:1)にて切り替え(PWM制御)する。そして、S350にて、直流電圧の印加を行う。
【0166】
これにより、正転時と同様に、9:1の定常時Dutyにて通電駆動と短絡駆動が切り替えられながらモータが逆転することとなる。そして、第1実施形態のモータ駆動制御処理(図6)におけるS140〜S160と同様に、回転角Dが目標回転角Doに等しくなるまで、回転角Dの算出を行う(S360〜S380)。
【0167】
そして、モータ2の回転角Dが目標回転角Doに到達すると(S380:YES)、S390にて、短絡制動制御を行う。即ち、指定方向通電のための通電駆動と、短絡通電のための短絡駆動とを、制動時Duty(本例では1:9)にて切り替え(PWM制御)する。これにより、モータ2の回転速度は徐々に低下していくこととなる。
【0168】
そして、S400にて、S390による短絡制動制御の開始からy秒経過したか否かを判断し、y秒経過するまでは回転パルスSpが検出される毎に回転角Dを算出するが(S410〜S420)、y秒経過した場合は(S400:YES)、S430にて直流電源スイッチ4をOFFさせて直流電圧の印加を遮断する。更に、S440にて、4つの駆動スイッチMOS1〜MOS4を全てOFFさせるモータドライバ停止制御を行って、このモータ駆動制御処理を終了する。
【0169】
以上説明した本実施形態の回転検出システム60によっても、第1実施形態の回転検出システム1と同様、ロータリエンコーダ等の大がかりなセンサを設けることなく、またトルク変動が発生しないようにしつつ、回転速度によらずに回転角を精度良く検出することができる。
【0170】
[変形例]
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の実施の形態は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
【0171】
例えば、上記実施形態では、検出対象のモータ、即ち回転に伴ってブラシ間(モータ回路)のインピーダンスが周期的に変化するような構成のモータとして、第1相コイルL1に並列にコンデンサC1を接続したモータ2(第1,第3実施形態)、及び、第1相コイルL1と第2相コイルL2にそれぞれ静電容量値の異なるコンデンサC1,C2を並列接続したモータ31(第2実施形態)を例に挙げて説明したが、これら各モータ2,31はあくまでも一例であり、回転に伴ってインピーダンスの周期的な変化が生じ、そのインピーダンスの変化に伴ってモータ電流に含まれる交流成分の振幅が変化するようなものであれば、どのようなモータでも本発明を適用可能である。
【0172】
例えば、何れか1つ又は複数の相コイルにインダクタンス素子を接続したり或いは抵抗素子を接続してもよい。抵抗素子、インダクタンス素子、コンデンサを組み合わせて用いても良い。
【0173】
図15に示したモータ50は、第1相コイルL1にインダクタンス素子(コイル)L10を並列接続したものである。このモータ50は、図1のモータ2と比較して明らかなように、図1のモータ2において、コンデンサC1をインダクタンス素子L10に置き換えたものである。
【0174】
このような構成のモータ50も、第1実施形態のモータ2と同様、180°回転する間のブラシ切り替わり毎にモータ回路も3種類に切り替わる。そのうち、各ブラシ16,17の何れか一方に第1整流子片11が接触して他方に第2整流子片12が接触している状態を状態A、各ブラシ16,17の何れか一方に第2整流子片12が接触して他方に第3整流子片13が接触している状態を状態B、各ブラシ16,17の何れか一方に第3整流子片13が接触して他方に第1整流子片11が接触している状態を状態Cとすると、状態A,Bはブラシ間のインピーダンスは同じであるのに対し、状態Cは、他の状態A,Bよりもインピーダンスが小さくなる。
【0175】
但し、状態Cでインピーダンスが小さくなるものの、第1実施形態のモータ2における状態C(図2参照)のように、ブラシ間にコンデンサC1のみの経路が生じるわけではない。そのため、第1実施形態の状態Cのようなパルス状の電流は流れず、PWM制御による駆動スイッチのON・OFFによって生じるモータ電流の脈動(交流成分)の振幅が、インピーダンスの変化に応じて変化する。即ち、図16に示すように、インピーダンスの大きい状態A,Bのときのモータ電流の脈動に比べ、インピーダンスの小さい状態Cのときの脈動の方が、振幅が大きい。
【0176】
そこで、例えばHPFやバンドパスフィルタ(BPF)等で、モータ電流からのこの脈動成分を抽出し、第1実施形態と同様に増幅、包絡線検波といった信号処理を加えれば、振幅の大きさに応じた検波信号が得られる。そして、振幅が小さいときの検波信号より大きくて振幅が大きいときの検波信号よりも小さい所定の閾値を設定し、その閾値を基準にして、第1実施形態と同様に回転パルスSpを生成することができる。
【0177】
なお、上記第1実施形態でも、図3をみて明らかなように、状態Cと状態A,Bとでは、PWM制御によるモータ電流の脈動の振幅自体も異なっている。そのため、第1実施形態においても、上記説明した図15のモータ50の場合と同じように、その脈動の振幅変化に基づいて回転パルスSpを生成することも可能である。
【0178】
また、上記実施形態では、モータを駆動する駆動回路として、駆動スイッチを1つのみ用いてこれをON・OFFさせる構成の回路(第1,第2実施形態)と、駆動スイッチを4つ用いたHブリッジ駆動回路(第3実施形態)を例示したが、これら駆動回路についてもあくまでも一例であり、モータを起動〜停止までPWM制御にて駆動することができる限り種々の駆動回路を用いることができる。
【0179】
例えば、図17に示すような、二電源方式によりモータを正逆転制御できるような駆動回路を構成することもできる。図17の回転検出システム60は、ハイサイド側のPNP型バイポーラトランジスタ(以下「ハイサイドスイッチ」ともいう)Tr1とローサイド側のNPN型バイポーラトランジスタ(以下「ローサイドスイッチ」ともいう)Tr2とがいわゆるTブリッジ(ハーフブリッジ)構成にされ、各トランジスタTr1,Tr2の接続点にモータ2の一方のブラシ16が接続されている。モータ2の他方のブラシ17はグランドラインに接続されている。
【0180】
また、2つの直流電源61,62を有し、このうち一方の直流電源61は、ハイサイドスイッチTr1がONされているときにこのハイサイドスイッチTr1を介してモータ2へ電力を供給する。他方の直流電源62は、ローサイドスイッチTr2がONされているときにこのローサイドスイッチTr2を介してモータ2へ電力を供給する。
【0181】
モータ2におけるグランドライン側のブラシ17とグランドラインの間の経路には、その経路を流れる電流に基づいて回転パルスSpを生成する回転信号検出部64が配置されている。そして、制御部63が、各スイッチTr1,Tr2へそれぞれ駆動信号Sb1,Sb2を出力してPWM制御すると共に、回転信号検出部64からの回転パルスSpに基づいてモータ2の回転角を検出する。
【0182】
図15に例示したTブリッジ型の駆動回路以外でも、検出対象のモータへの通電をPWM制御できる限り、あらゆる構成の駆動回路を用いることができる。
また、上記第3実施形態では、モータ2のPWM制御として、指定回転方向へ通電させるための駆動である通電駆動と、短絡通電させるための駆動である短絡駆動と、を所定のDutyにて切り替え駆動するようにしたが、このような切り替えも1つの例であって、他にも、例えば、通電方向を切り替えるようなPWM制御を行うようにしてもよい。即ち、例えば正転方向へ通電させるための駆動(正転駆動)と逆転方向へ通電させるための駆動(逆転駆動)とを所定のDutyで切り替えるのである。この場合、例えば、起動〜定常回転時は正転駆動と逆転駆動を9:1のDutyで駆動させ(つまり正転させ)、制動制御時には5:5のDutyで駆動させることで平均電力をゼロとしてモータを停止させることができる。
【0183】
また他にも、例えば、指定回転方向へ通電させるための通電駆動と、駆動スイッチを全てOFFさせる(つまりブラシ間を開放させる)開放駆動とを、所定のDutyにて切り替え駆動するようにしてもよい。また、上記各実施形態で例示したDutyは、あくまでも一例にすぎない。
【0184】
また、上記各実施形態では、モータへの通電をPWM制御により行うことで、モータ電流に交流成分を生じさせ、その交流成分に基づいてモータの回転状態を検出するようにしたが、仮に、PWM制御を行わずとも何らかの要因でモータ電流に交流成分が混入するような場合においては、その交流成分を抽出して回転パルスSpを生成し、回転状態を検出してもよい。具体的には、例えば、一定周波数のノイズが常時モータ回路に混入するような環境でモータが使用されている場合には、そのノイズ成分を回転検出のために有効利用することも可能である。
【0185】
また、上記第2実施形態では、インピーダンスを三段階に変化させるためのモータ構成として、異なる静電容量値の2つのコンデンサC1,C2をそれぞれ第1相コイルL1及び第2相コイルL2に並列接続した構成を例示したが、これはあくまでも一例であり、例えば、何れか2つの相コイルにそれぞれインダクタンス値の異なるインダクタンス素子を並列接続したり、何れか2つの相コイルにそれぞれ抵抗値の異なる抵抗素子を並列接続したり、何れか1つの相コイルにはコンデンサを接続して他の1つの相コイルにコンデンサ及びインダクタンス素子からなる直列回路を並列接続したり、各相コイルそれぞれに素子値の異なるコンデンサ或いはインダクタンス素子を並列接続するなど、結果として回転中にインピーダンスの周期的な変化が三段階以上生じるような構成であればどのような構成であってもよい。
【0186】
また、上記各実施形態では、検出対象のモータとして、各相コイルL1,L2,L3がΔ結線されている構成を例示したが、Δ結線に限らず、例えば図18に示すモータ70のように、スター結線された3つの相コイルL11,L12,L13からなるモータであってもよい。スター結線の場合、例えば、図18に示すように、2つの相コイルL11,L12の双方にそれぞれコンデンサC21,C22を並列接続することで、モータ70の回転角や回転方向を検出することができる。
【0187】
なお、図18に示した構成はあくまでも一例に過ぎず、例えば、何れか1つの相コイルにのみコンデンサを並列接続するようにしてもよい。また例えば、全ての相コイルL11,L12,L13にそれぞれコンデンサを並列接続してもよい。但しその場合、コンデンサの静電容量値は少なくとも二種類にする必要がある。また、例えば、2つの整流子片の間にコンデンサを接続するようにしてもよい。
【0188】
また、上記各実施形態では、電機子コイルの相数が3相の3相直流モータを例に挙げて説明したが、本発明の適用は、3相のモータに限定されるものではなく、4相以上のモータであっても適用可能である。
【0189】
4相以上のモータに対する本発明の適用例として、図19に、5相の直流モータの場合を示す。図19に示すモータ80は、5つの整流子片81,82,83,84,85からなる整流子を有し、隣接する各整流子片にそれぞれ、電機子コイルとしての各相コイルL21,L22,L23,L24,L25がそれぞれ接続(Δ結線)されている。なお、各相コイルのインダクタンスはいずれも同じである。
【0190】
そして、各相コイルL21,L22,L23,L24,L25のうち2つの相コイル(第1相コイルL21、第2相コイルL22)に、それぞれコンデンサC31,C32が並列接続されている。このような5相のモータ80についても、回転角や回転速度の検出を行うことができる。
【0191】
なお、4相以上のモータにおいて、何れか一つの相コイルにのみコンデンサを並列接続すれば、少なくとも回転角や回転速度の検出は可能となる。また、4相以上のモータにおいても、少なくとも2つの相コイルにそれぞれ静電容量値の異なるコンデンサを接続すれば、回転に伴うインピーダンスの段階的変化の変化パターン(延いては交流電流の振幅変化パターン)に基づいて回転方向の検出も可能となる。
【0192】
更に、回転に伴ってインピーダンスの変化が周期的に生じるようなモータの具体的構成は、他にも考えられる。例えば、図20に示すモータ90も、回転に伴ってモータ回路のインピーダンスが周期的に変化する。図20のモータ90は、ハウジング91と、このハウジング91内に収容されたロータコア100とを備えている。ロータコア100は、ハウジング91の軸心に配置されている回転軸96に固定され、この回転軸96と共に回転する。
【0193】
ハウジング91は、略円筒形の形状をなし、その内周面には、界磁発生用の2つの磁石92,93が径方向に互いに対向するように固定されている。周方向で見れば、2つの磁石92,93が所定間隔隔てて固定されている。各磁石92,93は、いずれも永久磁石であり、ロータコア100と対向する面側の極性が一方はN極で他方がS極である。つまり、このモータ90は界磁が2極の直流モータとして構成されている。
【0194】
また、ハウジング91は、軟磁性体である継鉄(ヨーク)にて形成されたものであり、内周面に固定された2つの磁石92,93と共にモータ90の磁気回路を構成している。
ロータコア100は、軟磁性体にて形成されたものであり、3つのティース(突極)101,102,103を有し、電機子コイル95が巻回されている。具体的には、第1ティース101に第1相コイルL1が巻回され、第2ティース102に第2相コイルL2が巻回され、第3ティース103に第3相コイルL3が巻回されており、これら3つの相コイルL1,L2,L3により電機子コイル95が構成されている。
【0195】
また、回転軸96には、整流子10が固定されており、この整流子10に、互いに対向して(即ち回転方向に180°離れて)配置された一対のブラシ16,17が摺接している。整流子10と各相コイルL1,L2,L3との結線状態は、第1実施形態のモータ2(図1参照)と同じである。
【0196】
更に、モータ90には、ハウジング91の内周面において、2つの磁石92,93の間に、凸部94が設けられている。ハウジング91の内周面には、2つの磁石92,93が周方向において所定の間隔を隔てて固定されているため、周方向において磁石92,93の存在しない領域(磁石間領域)が2箇所存在している。モータ90では、図20に示す通り、このうち1箇所の磁石間領域に、ハウジング91の内周面から径方向内側へ突出するように凸部94が設けられている。また、この凸部94は、2つの磁石92,93のいずれとも接触しないよう、周方向において各磁石92,93の双方からそれぞれ所定間隔隔てて設けられている。
【0197】
凸部94は、軟磁性体の材料で形成されたものであり、周方向に所定の長さを有し、且つ、径方向に所定の厚みを有している。そして、この凸部94が設けられていることにより、モータ90のロータコア100とハウジング91により構成される磁気回路の磁気抵抗は、ロータコア100の回転に伴って変化する。なお、以下の説明で「磁気抵抗」とは、特に断りのない限り、モータ90のロータコア100とハウジング91により構成される磁気回路の磁気抵抗を意味するものとする。
【0198】
ロータコア100及びハウジング91はいずれも軟磁性体にて形成されており、その透磁率は空気の透磁率よりも非常に大きい。そのため、モータ90の磁気抵抗は、ロータコア100(詳しくは各ティース101,102,103の外周面)とハウジング91の内周面又は磁石92,93との間のエアギャップ、及び各磁石92,93の厚みの和に大きく依存する。つまり、エアギャップが大きいほど磁気抵抗は大きくなり、逆にエアギャップが小さいほど、磁気抵抗は小さくなる。
【0199】
但し、各磁石92,93については、その透磁率は空気の透磁率とほぼ同じである。そのため、各磁石92,93は、磁気的にみれば空気が存在していることと等価となる。つまり、モータ90の磁気抵抗を考慮する上では、空気と同じ透磁率である各磁石92,93の存在は無視することができ、各磁石92,93はいずれもエアギャップとして扱うことができる。そのため、仮に凸部94がないならば、ロータコア100とハウジング91の内周面とのエアギャップはロータコア100が回転しても一定であり、故に、回転に伴って磁気抵抗が変化することはない。
【0200】
しかし、モータ90は、ハウジング91の内周面に、ハウジング91とほぼ同じ透磁率を有する、軟磁性の凸部94が設けられている。そのため、モータ90の回転角によって、即ちロータコア100の各ティース101,102,103の外周面がこの凸部94と対向しているか否かによって、モータ90の磁気抵抗は異なった値となる。つまり、モータ90の回転に伴ってその磁気抵抗が変化する。そして、磁気抵抗が変化すると、モータ回路のインダクタンスも変化するため、電流検出部21を流れるモータ電流の交流成分の振幅も変化する。
【0201】
この振幅の変化は、モータ90の回転(詳しくはロータコア100及び回転軸96の回転)に伴って周期的に生じる。そこで、この交流電流の振幅の変化に基づき、上述した各実施形態と同様に、モータ90の回転角を検出することができる。
【0202】
なお、ハウジング側に工夫を加えることでモータ回路のインダクタンスを周期的に変化させることが可能な構成は、図20に示したモータ100以外にも多種多様のものが考えられる。具体的には、凸部の設置位置や設置数を適宜変更したり、凸部の形状自体に工夫を加えることで回転に伴うモータ回路のインダクタンスの変化パターンに特徴を持たせたりすることができる。
【0203】
また、上記第1実施形態では、第1相コイルL1全体に対して完全に並列となるようにコンデンサC1を接続したが、例えば、第1相コイルL1の一部に中間タップをたててそこにコンデンサC1の一端を接続することにより、コンデンサC1を第1相コイルL1の一部に対して並列となるように接続してもよい。
【0204】
また、上記第1実施形態のモータ2は、第1相コイルL1と並列にコンデンサC1が接続された構成であったが、コンデンサC1の充放電電流の制御や、整流子10や各ブラシ16,17の保護のために、図21に示すモータ110のように、コンデンサC1と直列に抵抗R20を接続してもよい。また、この抵抗R20に代えて例えばインダクタを接続してもよい。他の各実施形態のモータについても同様である。
【0205】
また、一般に直流モータにおいては、サージ吸収のためにリングバリスタが用いられることがある。このようにリングバリスタを有するモータの場合には、このリングバリスタを利用して、回転に伴う周期的なインピーダンス変化を生じさせるようにすることができる。
【0206】
例えば、リングバリスタが有する複数の電極のうち隣接する電極間にコンデンサやインダクタンス素子等を接続するようにしてもよい。また例えば、上述した各種モータのように別途コンデンサやインダクタンス素子等を接続することなく、各電極の面積に差異をもたせるなどしてリングバリスタ自体の構成に工夫を加えることで、回転に伴う周期的なインピーダンス変化が生じるようにすることもできる。
【0207】
また、上記各実施形態では、モータの回転の過程において、ブラシに接触する整流子片が切り替わる際に生じる、モータ回路の瞬間的なインピーダンスの変化については、考慮しないものとして説明したが、瞬間的ではあれ、インピーダンスが変化することは事実であり、しかもそのインピーダンスの変化は回転に伴って周期的に生じる。そのため、その瞬間的に生じるインピーダンスの変化に基づいて(延いてはそれにより生じる交流成分の変化に基づいて)回転角等の回転状態を検出することも可能である。その場合、上記各実施形態のモータ2のようにコンデンサやインダクタンス素子等を設けることによって回転に伴うモータ回路のインピーダンス変化を生じさせる必要はなくなる。
【0208】
また、上記第1実施形態では、直流電源スイッチ4と駆動スイッチMOSを別々に設けたが、これらは双方ともに必ず設ける必要はなく、何れか一方のみであっても同様のモータ制御を行うことが可能である。
【0209】
具体的には、例えば図22に示す回転検出システム120のように、直流電源スイッチ4を設けない構成の場合であっても、駆動スイッチMOSによってモータ2のPWM制御は可能であり、また、モータ2を停止させる際は駆動スイッチMOSを継続的にオフさせればよい。これらの制御を制御部121が担うことで、駆動スイッチMOSを、スイッチング手段としての機能だけでなく直流電源スイッチ4としての機能も持たせることができる。
【0210】
逆に、図示は省略したものの、駆動スイッチMOSを設けずに直流電源スイッチ4を設け、この直流電源スイッチ4を、上記駆動スイッチMOSのようにオン・オフ(PWM制御)させるようにしてもよい。
【0211】
また、上記各実施形態では、電流検出部21として、電流検出抵抗R1を用いたが、電流検出抵抗R1に代えて例えばコイル(インダクタンス素子)を用いても良い。
また、電流検出抵抗R1は用いず、スイッチング手段としての駆動スイッチMOSの内部抵抗を電流検出抵抗R1として使用することも可能である。具体的には、図23に示す回転検出システム130における回転信号検出部131のように、駆動スイッチMOSの上流側の電圧(即ち駆動スイッチMOSのドレインとグランドの間の電圧)を検出信号として信号処理部22に取り込む。
【0212】
また、スイッチング手段としてMOSFETを用いるのはあくまでも一例であり、例えばバイポーラトランジスタやIGBTなど、MOSFET以外の各種スイッチング素子を用いても良い。
【0213】
また、上記各実施形態の回転信号検出部の構成(図4や図10等)は、あくまでも一例であり、図示の構成に限定されるものではないことはいうまでもない。電流検出部からの検出信号に基づいて回転パルスSpを生成できる限り、種々の構成を採ることができる。
【0214】
また、上記各実施形態では、一対のブラシを有するモータについて説明したが、複数対のブラシを有するモータに対しても本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0215】
1,30,40,60,120,130…回転検出システム、2,31,50,70,80,90,110…モータ、3,61,62…直流電源、4…直流電源スイッチ、5,32,64,131…回転信号検出部、6,34,42,63,121…制御部、7…オペアンプ、8…コンパレータ、10…整流子、11…第1整流子片、12…第2整流子片、13…第3整流子片、16,17…ブラシ、21…電流検出部、22,33…信号処理部、23…HPF、24…増幅部、25…包絡線検波部、26…LPF、27…閾値設定部、28…比較部、36…第1比較部、37…第2比較部、38…第1閾値設定部、39…第2閾値設定部、41…モータドライバ、81〜85…整流子片、91…ハウジング、92,93…磁石、94…凸部、95…電機子コイル、96…回転軸、100…ロータコア、101…第1ティース、102…第2ティース、103…第3ティース、C1,C2,C11〜C13,C21,C22,C31,C32…コンデンサ、L1,L21…第1相コイル、L2,L22…第2相コイル、L3,L23…第3相コイル、L10…インダクタンス素子、L11〜L13…相コイル、L24…第4相コイル、L25…第5相コイル、MOS…駆動スイッチ、MOS1…第1駆動スイッチ、MOS2…第2駆動スイッチ、MOS3…第3駆動スイッチ、MOS4…第4駆動スイッチ、R1…電流検出抵抗、R2〜R9,R20…抵抗、Tr1…ハイサイドスイッチ、Tr2…ローサイドスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源からの電源供給を受けて回転する直流モータの回転状態を検出する回転検出装置であって、
前記直流モータは、該直流モータにおける、前記直流電源からの直流電圧が印加される少なくとも一対のブラシ間のインピーダンスが、該直流モータの回転に伴って周期的に変化するように構成されており、
当該回転検出装置は、
前記直流電源から前記直流モータへの通電経路に配置され、該通電経路を導通・遮断するための少なくとも1つのスイッチング手段を有する駆動手段と、
前記駆動手段が有する前記少なくとも1つのスイッチング手段のON・OFFを制御する制御手段と、
前記直流モータに流れる電流に関する電気量を検出する通電検出手段と、
前記通電検出手段により検出された前記電気量に基づき、前記直流モータの回転に伴う前記インピーダンスの変化に応じて生じる、前記直流モータに流れる電流に含まれる交流成分の変化を検出する交流成分変化検出手段と、
前記交流成分変化検出手段による検出結果に基づいて、前記直流モータの回転角、回転方向及び回転速度のうち少なくとも何れか1つを検出する回転状態検出手段と、
を備えたことを特徴とする回転検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回転検出装置であって、
前記制御手段は、前記駆動手段が有する前記少なくとも1つのスイッチング手段のON・OFFを、予め設定された周波数及びデューティ比にてPWM制御することにより、前記直流モータの回転を制御し、
前記交流成分変化検出手段は、前記制御手段による前記PWM制御によって生じる、前記直流モータに流れる電流の変動を、前記交流成分として、該交流成分の変化を検出する
ことを特徴とする回転検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の回転検出装置であって、
前記制御手段は、回転中の前記直流モータを停止させる際、該停止させることが可能な前記デューティ比にて前記PWM制御を行う
ことを特徴とする回転検出装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の回転検出装置であって、
前記直流モータは、一回転中、前記一対のブラシ間に所定の静電容量値の静電容量素子が接続された状態となる静電容量素子接続期間が生じるように構成されており、
前記交流成分変化検出手段は、前記直流モータの一回転中における前記静電容量素子接続期間において生じる、前記PWM制御により前記直流電源から前記直流モータへの通電経路が導通される導通タイミングで前記静電容量素子に流れる充電電流、及び、前記PWM制御により前記通電経路が遮断される遮断タイミングで前記静電容量素子から放電される放電電流、のうち少なくとも一方を、前記交流成分として、該交流成分の変化を検出する
ことを特徴とする回転検出装置。
【請求項5】
請求項2〜請求項4の何れか1項に記載の回転検出装置であって、
前記駆動手段は、複数の前記スイッチング手段を有すると共に、該各スイッチング素子の何れか1つ又は複数がONされることによって前記直流モータを短絡させることが可能に構成されており、
前記制御手段は、前記PWM制御として、前記直流電源から前記直流モータへ通電させる通電駆動と前記直流モータを短絡させる短絡駆動とを前記デューティ比にて切り替えることにより、前記直流モータの回転を制御することが可能に構成されている
ことを特徴とする回転検出装置。
【請求項6】
請求項2〜請求項4の何れか1項に記載の回転検出装置であって、
前記駆動手段は、複数の前記スイッチング手段を有すると共に、該各スイッチング素子のON・OFFの組み合わせにより前記直流モータへの通電方向を切り替えて該直流モータの回転方向を切り替えることが可能に構成されており、
前記制御手段は、前記PWM制御として、前記直流電源から前記直流モータへの通電方向を前記デューティ比にて切り替えることにより、前記直流モータの回転を制御することが可能に構成されている
ことを特徴とする回転検出装置。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の回転検出装置であって、
前記駆動手段は、4つの前記スイッチング手段からなるHブリッジ回路にて構成されている
ことを特徴とする回転検出装置。
【請求項8】
直流電源からの電力供給を受けて回転する直流モータと、
前記直流モータの回転状態を検出する回転検出装置と、
を備えた回転検出システムであって、
前記直流モータは、該直流モータにおける、前記直流電源からの直流電圧が印加される少なくとも一対のブラシ間のインピーダンスが、該直流モータの回転に伴って周期的に変化するように構成されており、
前記回転検出装置は、
前記直流モータに流れる電流に関する電気量を検出する通電検出手段と、
前記通電検出手段により検出された前記電気量に基づき、前記直流モータの回転に伴う前記インピーダンスの変化に応じて生じる、前記直流モータに流れる電流に含まれる交流成分の変化を検出する交流成分変化検出手段と、
前記交流成分変化検出手段による検出結果に基づいて、前記直流モータの回転角、回転方向及び回転速度のうち少なくとも何れか1つを検出する回転状態検出手段と、
を備えたことを特徴とする回転検出システム。
【請求項9】
請求項8に記載の回転検出システムであって、
前記直流モータは、
少なくとも3相の相コイルからなる電機子コイルと、
前記電機子コイルが接続される複数の整流子片を有する整流子と、
前記整流子を介して前記各相コイルへ電流を供給する少なくとも一対のブラシと、
を有し、
前記複数の整流子片のうち何れか2つの整流子片を一組として、少なくとも一組の整流子片間は、他の組の整流子片間とは異なる値の静電容量値を持つように構成されている
ことを特徴とする回転検出システム。
【請求項10】
請求項8に記載の回転検出システムであって、
前記直流モータは、
内周面においてその周方向に界磁発生用の複数の磁石が固定されたハウジングと、
前記ハウジング内に設けられ、複数の相コイルからなる電機子コイルを有するロータコアと、
前記電機子コイルが接続される複数の整流子片を有する整流子と、
前記整流子に摺接する少なくとも一対のブラシと、
を有し、
回転に伴って前記一対のブラシ間のインダクタンスが周期的に変化するよう構成されている
ことを特徴とする回転検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−200108(P2011−200108A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37229(P2011−37229)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】