説明

回転電機

【課題】ステータコアを形成する電磁鋼板の板面内全体に引張応力を発生させるように、簡単な手段でステータコアをケースに固定することである。
【解決手段】ステータコア12の一端面側に、外径側基部14aがケース21の内径段差部21bに係止され、内径側先端部14bがステータコア12の一端面側の環状の電磁鋼板12aの径方向中央部に当接される環状の押さえプレート14を配置し、ステータコア12の他端面側をケース21の軸方向反対側の内径段差部21cに当接させて、押さえプレート14の基部14aと先端部14bとの径方向中間部14cを、周方向の複数個所でボルト15によってケース21の軸方向に締め付けることにより、積層体の各電磁鋼板12aの板面全体を押圧して、各電磁鋼板12aの板面内全体に引張応力を発生させるように、簡単な手段でステータコア12をケース21に固定できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータコアが電磁鋼板を積層した積層体で形成された回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
モータや発電機とされた回転電機は、回転するロータのロータコアと、その外周側に固定されるステータのステータコアを、軸方向に環状の電磁鋼板を積層した積層体で形成したものが多い。ロータコアは焼嵌めや圧入によって内周側のロータ軸に固定され、ステータコアは焼嵌めや圧入によって外周側のケースに固定されることが多い。ステータコアは、電磁鋼板の積層体に嵌挿したボルトでケースに固定されることもある。
【0003】
このような電磁鋼板の積層体で形成したロータコアやステータコアを焼嵌めや圧入によってロータ軸やケースに固定すると、電磁鋼板の板面内に発生する圧縮応力によって鉄損が増大し、回転電機の効率が低下する問題があった。ステータコアをボルトで固定する場合も、ボルトの締め付けによって、電磁鋼板の板面内に局所的に高い圧縮応力が発生し、その部位で磁束の流れが妨げられて鉄損が増大する。
【0004】
このような問題に対して、ステータコアについては、電磁鋼板の板面内に引張応力を発生させるようにケースに固定する手段が提案されている(例えば、特許文献1−3参照)。特許文献1に記載されたものでは、ステータコアの一端面側の外周部に固定用平板を配置し、この固定用平板をステータコアの外周側でボルトによってケースに締結することにより、ケースの内径段差部と固定用平板でステータコアを軸方向に挟持するようにしている。
【0005】
特許文献2に記載されたものでは、ケースとステータコアの環状継鉄部の一部に係合部を設け、ステータコアを加熱して膨張させるか、ケースを冷却して収縮させ、ステータコアを係合部でケースと係合させて常温に戻すことにより、ケースをステータコアに対して相対的に拡径させて、ステータコアの係合部に引張応力を発生させるようにしている。
【0006】
特許文献3に記載されたものでは、ステータコアの外周部の一部にケースに固定される固定部を設け、ステータコアの軸方向端面よりも突出させたケースの突出部に、径方向内方側から圧挿部材を圧挿することにより、ケースを拡径して、ステータコアの固定部に引張応力を発生させるようにしている。
【0007】
なお、ロータコアについては、ロータコアの軸方向両端面にエンドプレートを重ね合わせ、両側のエンドプレートをボルト等で締め付けることにより、電磁鋼板の板面内に引張応力を発生させる手段がよく採用されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−304106号公報
【特許文献2】特開2006−223015号公報
【特許文献3】特開2010−178589号公報
【特許文献2】特開2009−72035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載されたステータコアのケースへの固定手段は、ステータコアの外周部のみを固定用平板で押圧することになるので、電磁鋼板の外周部のみにしか板面内の引張応力が発生せず、鉄損を十分に低減できない問題がある。
【0010】
特許文献2、3に記載されたステータコアのケースへの固定手段は、ケースやステータコアに係合部や固定部を設ける必要があるので、ケースやステータコアが複雑な形状となり、製造コストが高くなる問題がある。また、特許文献2に記載されたものは、ステータコアを加熱するか、ケースを冷却する必要があり、特許文献3に記載されたものは、別途の圧挿部材をケースの突出部に圧挿する必要があるので、ステータコアの固定に手間がかかる問題もある。さらに、電磁鋼板の板面内の引張応力は、係合部や固定部が設けられた周方向の一部にしか発生しないので、鉄損も十分に低減することはできない。
【0011】
そこで、本発明の課題は、ステータコアを形成する電磁鋼板の板面内全体に引張応力を発生させるように、簡単な手段でステータコアをケースに固定することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明は、ロータの外周側に配設されるステータコアを、軸方向に環状の電磁鋼板を積層した積層体で形成し、前記ステータコアを外周側のケースに固定した回転電機において、前記ステータコアの一端面側に、外径側基部が前記ケースの内径段差部に係止され、内径側先端部が前記ステータコアの一端面側の環状の電磁鋼板の径方向中央部に当接される環状の押さえプレートを配置し、前記ステータコアの他端面側を前記ケースの軸方向反対側の内径段差部に当接させて、前記押さえプレートの前記外径側基部と内径側先端部との径方向中間部を、周方向の複数個所でボルトによって前記ケースの軸方向に締め付けた構成を採用した。
【0013】
すなわち、ステータコアの一端面側に、外径側基部がケースの内径段差部に係止され、内径側先端部がステータコアの一端面側の環状の電磁鋼板の径方向中央部に当接される環状の押さえプレートを配置し、ステータコアの他端面側をケースの軸方向反対側の内径段差部に当接させて、押さえプレートの外径側基部と内径側先端部との径方向中間部を、周方向の複数個所でボルトによってケースの軸方向に締め付けることにより、積層体の各電磁鋼板の板面全体を押圧して、各電磁鋼板の板面内全体に引張応力を発生させるように、簡単な手段でステータコアをケースに固定できるようにした。
【0014】
前記ロータのロータコアを軸方向に環状の電磁鋼板を積層した積層体で形成し、このロータコアの軸方向両端面に環状のエンドプレートを重ね合わせて、これらの重ね合わせたエンドプレートの軸方向外側面に冷却用フィンを設けることにより、コイルの2次銅損や磁石の渦電流損によるロータコアの発熱を効率よく放熱することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る回転電機は、ステータコアの一端面側に、外径側基部がケースの内径段差部に係止され、内径側先端部がステータコアの一端面側の環状の電磁鋼板の径方向中央部に当接される環状の押さえプレートを配置し、ステータコアの他端面側をケースの軸方向反対側の内径段差部に当接させて、押さえプレートの外径側基部と内径側先端部の径方向中間部を、周方向の複数個所でボルトによってケースの軸方向に締め付けるようにしたので、積層体の各電磁鋼板の板面全体を押圧して、各電磁鋼板の板面内全体に引張応力を発生させるように、簡単な手段でステータコアをケースに固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】回転電機の実施形態を示す縦断側面図
【図2】(a)は図1の押さえプレートの縦断側面図、(b)は(a)の正面図
【図3】図1のエンドプレートの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。この回転電機は、図1に示すように、ロータコア2をロータ軸3に固定したロータ1の外周側に、ステータコア12にコイル13を巻回したステータ11をケース21に固定したモータであり、ロータコア2とステータコア12は、それぞれ環状の電磁鋼板2a、12aを軸方向に積層した積層体で形成されている。図示は省略するが、ロータコア2には磁石が組み込まれている。
【0018】
前記ロータ軸3は、両端部をケース21のフランジ部21aと蓋部材22に軸受4a、4bで回転自在に支持されている。ロータコア2の軸方向両端面には環状のエンドプレート5が重ね合わされ、これらのエンドプレート5がロータ軸3に圧入されて、ロータコア2の電磁鋼板2aの積層体が軸方向に締め付けられている。
【0019】
図1に示すように、前記ステータコア12の一端面側には、外径側基部14aがケース21の内径段差部21bに係止され、内径側先端部14bがステータコア12の一端面側の環状の電磁鋼板12aの径方向中央部に当接される環状の押さえプレート14が配置され、ステータコア12の他端面側がケース21の軸方向反対側の内径段差部21cに当接されており、押さえプレート14の基部14aと先端部14bの径方向中間部14cが、周方向の複数個所でボルト15によってケース21の軸方向に締め付けられるようになっている。なお、図では判別できないが、押さえプレート14とケース21の段差部21cに当接される両端面の電磁鋼板12aは、その間の他の電磁鋼板12aよりも板厚が厚めに形成され、剛性を高くされている。
【0020】
図2(a)、(b)に示すように、前記押さえプレート14の基部14aと中間部14cは薄肉に形成され、厚肉に形成された先端部14bの電磁鋼板12aに当接される内側面は、先端内径側が張り出すテーパ面16とされている。図2(a)では、このテーパ面16の傾斜を誇張して図示しているが、実際のテーパ面16の傾斜は、そのまま図示すると判別できない程度のわずかなものである。
【0021】
前記ボルト15は周方向の4箇所に等間隔で配されており、これらのボルト15を締め付けることにより、薄肉に形成された基部14aと中間部14cが、ステータコア12の一端面側へ撓むように弾性変形し、先端部14bのテーパ面16の内径側先端でステータコア12の一端面側の電磁鋼板12aの径方向中央部が押圧される。この径方向中央部の押圧によって、その押圧力が剛性の高い端面の厚めの電磁鋼板12aを介して、積層体の各電磁鋼板12aの板面全体に分散される。したがって、ステータコア12の積層体の各電磁鋼板12aの板面内全体に引張応力を発生させることができる。
【0022】
図3は、前記ロータコア2のエンドプレート5を示す。このエンドプレート5は、ロータ軸3に圧入される円筒部5aとロータコア2の軸方向端面に重ね合わされるフランジ部5bとからなり、フランジ部5bの軸方向外側面に、径方向に延びる複数の冷却用フィン5cが周方向に等間隔で設けられている。したがって、ロータ1の回転に伴って、磁石の渦電流損によるロータコア2の発熱を効率よく放熱することができる。
【0023】
上述した実施形態では、押さえプレートのステータコアに当接される内径側先端部の内側面をテーパ面としたが、この内側面は先端側に環状凸条を形成したものとしてもよい。また、押さえプレートを4箇所のボルトで締め付けるようにしたが、この締め付けボルトの本数は、2本以上、好ましくは3本以上であればよい。
【0024】
上述した実施形態では、ステータコアの両端面の電磁鋼板を厚めに形成したが、積層体の電磁鋼板がある程度剛性を有する厚さのものであれば、必ずしも両端面の電磁鋼板を厚めに形成しなくてもよい。
【0025】
上述した実施形態では、エンドプレートをロータ軸に圧入してロータコアを軸方向に締め付けるようにしたが、両側のエンドプレートをボルト等によって締め付けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 ロータ
2 ロータコア
2a 電磁鋼板
3 ロータ軸
4a、4b 軸受
5 エンドプレート
5a 円筒部
5b フランジ部
5c 冷却用フィン
11 ステータ
12 ステータコア
12a 電磁鋼板
13 コイル
14 押さえプレート
14a 基部
14b 先端部
14c 中間部
15 ボルト
16 テーパ面
21 ケース
21a フランジ部
21b、21c 段差部
22 蓋部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータの外周側に配設されるステータコアを、軸方向に環状の電磁鋼板を積層した積層体で形成し、前記ステータコアを外周側のケースに固定した回転電機において、前記ステータコアの一端面側に、外径側基部が前記ケースの内径段差部に係止され、内径側先端部が前記ステータコアの一端面側の環状の電磁鋼板の径方向中央部に当接される環状の押さえプレートを配置し、前記ステータコアの他端面側を前記ケースの軸方向反対側の内径段差部に当接させて、前記押さえプレートの前記外径側基部と内径側先端部との径方向中間部を、周方向の複数個所でボルトによって前記ケースの軸方向に締め付けたことを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記ロータのロータコアを軸方向に環状の電磁鋼板を積層した積層体で形成し、このロータコアの軸方向両端面に環状のエンドプレートを重ね合わせて、これらの重ね合わせたエンドプレートの軸方向外側面に冷却用フィンを設けた請求項1に記載の回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−102579(P2013−102579A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244075(P2011−244075)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】