説明

圧力均一化装置及びそれを用いたプレス製品の製造方法

【課題】プレス成型用の熱盤から成形型に加わる圧力を均一化させる。
【解決手段】圧力均一化装置100は、プレス成型用の熱盤と成形型との間に設けられる。圧力均一化装置100は、熱盤側に配置される押側部材110と成形型側に配置される熱盤側に開口した凹部121が形成された受側部材120とを備える。押側部材110は、受側部材120の凹部121に、凹部121に収容された流体16を封じると共に流体16を介して熱盤からの圧力を受側部材120に伝えるように嵌め入れられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧力均一化装置及びそれを用いたプレス製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プレス成型によりプレス製品を製造する場合、成形型に加わる圧力を均一化させることが望ましい。
【0003】
特許文献1には、成形用金型とプレス成型機との間に金型ベースを配し、金型ベースの平面部へ溝加工を施すことにより、成形用金型を締め付けた際に溝加工の変形スペースが弾性変形して面圧を均等に配分することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−231273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、プレス成型用の熱盤から成形型に加わる圧力を均一化させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、プレス成型用の熱盤と成形型との間に設けられる圧力均一化装置であって、
熱盤側に配置される押側部材と、成形型側に配置される熱盤側に開口した凹部が形成された受側部材と、を備え、
上記押側部材は、上記受側部材の上記凹部に、該凹部に収容された流体を封じると共に圧縮可能に嵌め入れられていることにより、上記受側部材に対してプレス方向に可動に構成されている。
【0007】
本発明は、プレス成型用の一対の熱盤間に成形型を配置してプレスするプレス製品の製造方法であって、上記一対の熱盤の少なくとも一方と上記成形型との間に、本発明の圧力均一化装置を設けるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、熱盤からの圧力を、圧力均一化装置において、押側部材が流体を介してパスカルの原理に従って受側部材に伝えるので、それによって熱盤から成形型に加わる圧力を均一化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係る圧力均一化装置の平面図である。
【図2】図1におけるII-II断面図である。
【図3】(a)〜(d)はプレス製品の製造方法を示す説明図である。
【図4】(a)及び(b)は圧力均一化装置を用いない場合のプレス成型を示す説明図である。
【図5】(a)及び(b)は圧力均一化装置を用いた場合のプレス成型を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について図面に基づいて説明する。
【0011】
図1及び2は実施形態に係る圧力均一化装置100を示す。この圧力均一化装置100は、プレス成型時に、プレス成型用の熱盤と成形型との間に設けられるものである。
【0012】
圧力均一化装置100は、各々、平面視矩形の板材からなる押側部材110及び受側部材120が重ね合わされるように設けられて構成されている。プレス成型時には、押側部材110が熱盤側に及び受側部材120が成形型側にそれぞれ配置される。なお、以下では、熱盤側を「上側」及び成形型側を「下側」として説明する。
【0013】
押側部材110は、例えば鋼鉄等の金属で形成されており、平面視矩形の部材本体111の上側の中央に円柱状の凸部112が突出するように一体に形成された構成を有する。部材本体111は、例えば、縦及び横が200〜800mm、並びに厚みが50〜200mmである。凸部112は、例えば、外径が150〜750mm、及び高さが20〜170mmである。
【0014】
部材本体111の四隅のそれぞれには第1ピン孔113が形成されている。第1ピン孔113は、上側の内径の大きいピン頭収容孔113aとそれに同軸で連続するように形成されたピン嵌着孔113bとからなる貫通孔で構成されている。凸部112の外周には、各々、周方向に延びる上側コの字溝114及び下側コの字溝115が間隔をおいて形成されている。上側コの字溝114にはOリング13及びバックアップリング14が嵌め入れられ、前者が上側及び後者が下側にそれぞれ配置され且つそれらの一部が凸部112の外周面から突出するように設けられている。Oリング13は例えばフッ素ゴム、シリコーンゴム等で形成されており、バックアップリング14は例えばフッ素樹脂で形成されている。下側コの字溝115にはウェアリング15が嵌め入れられ、その一部が凸部112の外周面から突出するように設けられている。ウェアリング15は例えばフッ素樹脂で形成されている。
【0015】
受側部材120は、例えば鋼鉄等の金属で形成されており、上側に開口した有底円筒孔の凹部121が押側部材110の凸部112に対応するように形成されている。受側部材120は、例えば、縦及び横が200〜800mm、並びに厚みが30〜180mmである。凹部121は、内径が押側部材110の凸部112の外径よりもやや大きく、また、深さが例えば20〜170mmである。
【0016】
受側部材120の四隅のそれぞれには第2ピン孔122が押側部材110の第1ピン孔113に対応するように形成されている。第2ピン孔122は、上側の内径の小さいピン挿通孔122aとそれに同軸で連続するように形成された下側の内径の大きいばね収容孔122bとからなる貫通孔で構成されている。
【0017】
圧力均一化装置100は、受側部材120の凹部121に流体16が収容され、その凹部121に、その内壁にOリング13、バックアップリング14、及びウェアリング15が当接するように、押側部材110の凸部112が嵌め入れられ、それによって押側部材110が、流体16を封じると共に圧縮可能となり、且つ受側部材120に対して、上下方向、つまりプレス方向に可動に構成されている。なお、圧力均一化装置100は、静止状態では、押側部材110の部材本体111の下側面と受側部材120の上側面との間にクリアランスを有する。そのクリアランスは例えば1〜20mmである。
【0018】
受側部材120の凹部121に収容される流体16としては、熱伝導性が高く且つ難燃性の液体が好ましく、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどのシリコーンオイル等が好適に挙げられる。流体16がシリコーンオイルの場合には、膨潤を防止する観点から、Oリング13はシリコーンゴム以外の例えばフッ素ゴム等で形成されていることが好ましい。
【0019】
圧力均一化装置100は、Oリング13により流体16が封入された領域が密封され、また、バックアップリング14によりOリング13の低圧側へのはみ出しによるシール性喪失が阻止され、さらに、ウェアリング15により凸部112の軸受として凹部121のかじりが防止されると共に偏心が小さく抑えられ、Oリング13の耐久性向上が図られている。
【0020】
押側部材110の第1ピン孔113には、上側からガイドピン17が差し入れられ、ピン頭収容孔113aにピン頭17aが収容されると共に係合し、ピン嵌着孔113bにピン本体17bが嵌着されて下側に突出している。受側部材120の第2ピン孔122には、ピン挿通孔122aに押側部材110の第1ピン孔113から突出したピン本体17bが挿通されてばね収容孔122bに突出している。ばね収容孔122bに突出したピン本体17bの先端部にはワッシャ18が外嵌めされている。このガイドピン17により押側部材110及び受側部材120が上下方向(プレス方向)にのみ相対移動が可能となり、また、それらが一体に結合され、押側部材110が上方に移動した際には受側部材120が吊り上げられることとなる。なお、かかるガイドピン17が設けられずに、押側部材110及び受側部材120が上下方向に結合されていなくてもよい。
【0021】
ワッシャ18とばね収容孔122bの底部との間にはピン本体17bに挿通されたコイルばね19が圧縮状態で介設されている。このコイルばね19により押側部材110が下側に付勢され、これによって押側部材110が流体16に常時圧力を及ぼすこととなるため、仮に流体16の一部が外部に流出しても、その減少分により空隙が形成されないように構成されている。
【0022】
次に、図3(a)〜(d)を参照しながら圧力均一化装置100を用いたプレス製品Pの製造方法について説明する。
【0023】
製造対象のプレス製品Pとしては、例えば、未加硫ゴム組成物をプレス成型して加硫させて製造するゴム製品、熱可塑性樹脂をプレス成型して冷却させて製造する或いは熱硬化性樹脂をプレス成型して硬化させて製造する樹脂製品が挙げられる。製品形態としては、例えば、シート状、リング状、ブロック状等が挙げられる。
【0024】
プレス製品Pの製造に用いるプレス成型機20は、プレス成型用の上側熱盤21及び下側熱盤22を備えており、上側熱盤21がラム23が取り付けられて上下方向(プレス方向)に可動に構成されている一方、下側熱盤22が基台24に設置固定されている。上側熱盤21及び下側熱盤22のそれぞれには加熱手段が設けられている。その加熱手段としては、例えば、電熱式加熱手段、蒸気式加熱手段等が挙げられる。なお、プレス成型機20は、油圧式、空圧式、機械式のいずれであってもよい。プレス成型機20は、ラムの取付位置が下側であってもよく、また、縦型の他、横型のプレス方式であってもよい。上側熱盤21及び下側熱盤22は、圧力均一化装置100よりも大きくても小さくてもいずれでもよい。
【0025】
プレス製品Pの製造に用いる成形型30は、典型的には鉄等の金属で形成された金型であるが、離型性が良好であるという観点から、例えば硬質クロムめっきやフッ素樹脂コーティングされたものであってもよい。成形型30としては、例えば、少なくとも一方に製品形状のキャビティを形成するための凹部が形成された一対の板状型片で構成されたもの、一対の平板とそれらの間に狭持される製品形状の穴が形成されたスペーサとで構成されたもの等が挙げられる。
【0026】
プレス製品Pの製造に際して、まず、成型温度に昇温させた下側熱盤22上に成型材料Mをセットしていない成形型30を載せ、その上に圧力均一化装置100を設け、さらに成型温度に昇温させた上側熱盤21を降下させてその上からプレスして成形型30を予熱する(図3(a))。
【0027】
成形型30が成型温度まで昇温した後、上側熱盤21を上昇させて圧力均一化装置100を取り出し、成形型30内に成形材料Mを仕込み(図3(b))、型閉じして再びその上に圧力均一化装置100を設け(図3(c))、さらに上側熱盤21を降下させて所定の圧力でその上からプレスする(図3(d))。このとき、上側熱盤21からの圧力が圧力均一化装置100の押側部材110に伝わり、押側部材110が下方(受側部材120側)に移動する。受側部材120の凹部121には、その内壁にOリング13、バックアップリング14、及びウェアリング15が摺接しながら、押側部材110の凸部112が押し込まれる。なお、押側部材110の受側部材120に対する移動長さは基本的には0であるが、圧力が著しく高くなると流体16の圧縮率に依存して押側部材110が受側部材120側に僅かに移動する場合がある。凹部121に収容された流体16には、凸部112の下面により上側熱盤21からの圧力が伝わり、それがパスカルの原理に従って受側部材120に均一に伝わる。その結果、成形型30には、上側熱盤21からの圧力が圧力均一化装置100によって均一化されて伝わる。このときの圧力は例えば1〜200MPaである。なお、成型材料Mにより均一に圧力を加える観点からは、成形型30を、プレス製品Pを成型するためのキャビティがプレス成型機20のラム23及び圧力均一化装置100の流体16が存在する部分の投影部分の範囲内に配置することが好ましい。
【0028】
そして、所定のプレス成型時間が経過した後、上側熱盤21を上昇させて圧力均一化装置100及び成形型30を取り出し、型開きして成型されたプレス製品Pを脱型する。
【0029】
ところで、図4(a)及び(b)に示すように、汎用のプレス成型機20’により上側熱盤21’と下側熱盤22’との間に直接に成形型30’を挟持してプレス成型する場合、図4(a)に示すように上側熱盤21’の下面が平坦面であれば、上側熱盤21’から成形型30’に加わる圧力は均一となるので、製造されるプレス製品P’の寸法精度に問題が生じることは少ない。しかしながら、こ汎用のプレス成型機20’は多種多様の成形型30’が用いられるため、使用履歴に応じて図4(b)に示すように上側熱盤21’に歪みが生じると、上側熱盤21’から成形型30’に加わる圧力は均一とならず、製造されるプレス製品P’の寸法精度に問題が生じることとなる。具体的には、例えば、シート状のプレス製品P’の場合、製品中央部が製品周縁部よりも肉厚に形成されたりすることがある。かかる事態を回避すべく、定期的に上側熱盤21’を取り外して表面を研削することが行われるが、そのためのコストが発生すると共に、その間プレス成型機20’を使用することができない休転期間を生じてしまう。
【0030】
これに対し、上記のように、上側熱盤21と成形型30との間に圧力均一化装置100を設けると、上側熱盤21からの圧力を、圧力均一化装置100において、押側部材110が流体16を介してパスカルの原理に従って受側部材120に伝えるので、図5(a)に示すように上側熱盤21の下面が平坦面であっても、また、図5(b)に示すように上側熱盤21に歪みが生じていても、上側熱盤21から成形型30に加わる圧力を均一化することができ、その結果、寸法精度の優れるプレス製品Pを安定して製造することができる。従って、このプレス製品Pの製造方法は、寸法精度が不安定となりやすいゴム製品の製造に特に好適である。
【0031】
また、プレス成型機20の上側熱盤21の歪みが問題とならないので、それを取り外して表面を研削する必要はなく、仮に圧力均一化装置100の一部が破損したとしても、簡単な構造であるため、その部分を簡単に取り外して低コストで修理することができる。
【0032】
さらに、交換用の圧力均一化装置100を準備しておけば、使用中の圧力均一化装置100をメンテナンスする場合でも、プレス成型機20の休転期間が生じることもない。
【0033】
なお、上記実施形態では、圧力均一化装置100をプレス成型機20と別体とし、それを治具的に使用する構成としたが、特にこれに限定されるものではなく、圧力均一化装置100をプレス成型機20の上側熱盤21に一体に設けた構成であってもよく、また、圧力均一化装置100をプレス成型機20の上側熱盤21に脱着可能に設けた構成であってもよい。
【0034】
上記実施形態では、圧力均一化装置100を上側熱盤21と成形型30との間に設けた構成としたが、特にこれに限定されるものではなく、圧力均一化装置100を下側熱盤22と成形型30との間に設けた構成であってもよく、また、それらの両方に設けた構成であってもよい。なお、圧力均一化装置100を下側熱盤22と成形型30との間に設ける場合、押側部材110を下側熱盤22側に配置すると共に受側部材120を成形型30側に配置する。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は圧力均一化装置及びそれを用いたプレス製品の製造方法について有用である。
【符号の説明】
【0036】
P プレス製品
100 圧力均一化装置
110 押側部材
111 部材本体
112 凸部
120 受側部材
121 凹部
16 流体
21 上側熱盤
22 下側熱盤
30 成形型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス成型用の熱盤と成形型との間に設けられる圧力均一化装置であって、
熱盤側に配置される押側部材と、成形型側に配置される熱盤側に開口した凹部が形成された受側部材と、を備え、
上記押側部材は、上記受側部材の上記凹部に、該凹部に収容された流体を封じると共に圧縮可能に嵌め入れられていることにより、上記受側部材に対してプレス方向に可動に構成されている圧力均一化装置。
【請求項2】
請求項1に記載された圧力均一化装置において、
上記受側部材の上記凹部に収容された流体がシリコーンオイルである圧力均一化装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された圧力均一化装置において、
上記押側部材は、部材本体とその成形型側に突出するように形成された凸部とを有し、該凸部が上記受側部材の上記凹部に嵌め入れられている圧力均一化装置。
【請求項4】
プレス成型用の一対の熱盤間に成形型を配置してプレスするプレス製品の製造方法であって、上記一対の熱盤の少なくとも一方と上記成形型との間に、請求項1に記載された圧力均一化装置を設けるプレス製品の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載されたプレス製品の製造方法において、
上記プレス製品がゴム製品であるプレス製品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−6397(P2013−6397A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142291(P2011−142291)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【Fターム(参考)】