説明

圧電アクチュエーター、ロボットハンド、ロボット

【課題】磨耗粉を除去し、耐久性が優れる圧電アクチュエーターを提供する。
【解決手段】圧電アクチュエーター10は、ローター40と、ローター40の外周部に当接して、ローター40を回転させる振動体20と、ローター40の回転外周に接触するように配置される可撓性を有する環状のベルト70と、ベルト70を懸架するローラー61,65と、を備える。ローター40と振動体20との接触面に発生する磨耗粉は、ベルト70によって捕捉され除去される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電アクチュエーター、ロボットハンド、ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、振動体をローターに当接させて、圧電素子の振動を利用してローターを回転する圧電アクチュエーターが実用化されている。このような圧電アクチュエーターは、振動体のローターとの接触部に楕円運動または進行波を発生させ、両者間の摩擦力によってローターを回転するものである。しかしながら、摩擦力を利用するために、ローターと振動体の接触部には、どちらか一方または両方から磨耗粉が発生することがあり、磨耗粉が接触部に残る場合には、磨耗粉が負荷となり安定駆動ができなくなることがある。また、磨耗粉によって、さらに磨耗が進行することがあり耐久性が損なわれることから、磨耗粉を接触部から除去することが要求されている。
【0003】
そこで、振動体の可動体(ローター)との接触面に溝を形成し、発生した磨耗粉をこの溝の内部に捕捉しようとした振動アクチュエーターが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、可動体の磨耗粉が発生する表面に、多孔質物質からなるローラーを当接させて、磨耗粉を気孔内部に捕捉しようとするものもある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
さらに、ローターの下方対向面に配置される振動体に粘着性を有するシートを配設し、脱落してくる磨耗粉をシートの粘着部によって捕捉するものも提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−148138号公報
【特許文献2】特開2004−187984号公報
【特許文献3】特開2003−244976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1では、振動体に形成された溝によって磨耗粉を捕捉するものであって、溝内に磨耗粉が蓄積されてきたときには、捕捉能力が低下することが考えられる。また、振動体と可動体との接触面に溝を形成することで、接触面積が減少することで却って磨耗を促進してしまうということが予測される。
【0008】
また、特許文献2は、ローラーを磨耗粉発生面に当接させるために専用のアクチュエーターを備える構造であって、メインの超音波モーターに上記アクチュエーターをさらに設けなければならず、構造が複雑になる他、これらを制御する手段も備えなければならない。また、可動体の可動面積に対してローラーの直径が小さく(つまり、捕捉面積が小さい)、磨耗粉の捕捉能力は十分とはいえない。
【0009】
また、特許文献3は、磨耗粉発生源から脱落する磨耗粉を粘着性シートで捕捉するものであって、脱落せずにローターに付着している磨耗粉を捕捉することはできないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0011】
[適用例1]本適用例に係る圧電アクチュエーターは、ローターと、前記ローターの外周面に当接して、前記ローターを回転させる振動体と、少なくとも二つのローラーと、前記少なくとも二つのローラーに懸架される可撓性を有する環状のベルトと、を有し、前記ベルトが、前記二つのローラーの間において前記ローターの外周面に接触するよう配置されている、ことを特徴とする。
【0012】
本適用例によれば、ベルトはローラーに懸架されたうえでローターと接触させていることから、磨耗粉をベルトで捕捉しながら、ローターの回転に合わせて接触位置が移動していくことから十分な磨耗粉の捕捉能力をもたせることができる。また、ベルトの張力を適切にすることと、ローターの回転に合わせて移動することが可能であることから、ローターの駆動負荷を小さくすることができる。このことから、安定駆動と磨耗粉除去により耐久性を高めることができるという効果がある。
【0013】
[適用例2]上記適用例に係る圧電アクチュエーターは、前記ベルトの前記ローターに接触する面に、複数の凹凸または複数の貫通孔を有することが好ましい。
このようにすれば、凹凸部や貫通孔によって磨耗粉を捕捉することができ、さらに、ローターとの接触面積を減らすことができることから、ベルト接触に伴うローターへの負荷低減もできる。
【0014】
[適用例3]上記適用例に係る圧電アクチュエーターは、前記ベルトの長さをBL、前記ローターの周長さをDLとしたとき、BL>DL、BL≠nDL(nは整数)である、ことが好ましい。
このようにすれば、ローターの回転によって、ベルトのローターとの接触位置が移動していくため、同じ接触位置の繰り返しの機会が減少し、磨耗粉の捕捉能力が低下しないことから、長時間にわたって安定駆動を継続できる。
【0015】
[適用例4]上記適用例に係る圧電アクチュエーターは、前記ローラーの一つと前記ローターとの間に回転伝達機構をさらに有し、前記ベルトが、前記ローターの回転方向と同じ方向に移動する、ことが好ましい。
【0016】
回転伝達機構によってローターの回転をローラーに伝達することによって、ベルトを移動させるための専用の駆動源がなくても、ローターの回転に合わせてベルトを移動させることができる。
【0017】
[適用例5]上記適用例に係る圧電アクチュエーターは、前記ベルトの移動速度が、前記ローラーの周速度ほぼ同じであることが好ましい。
このようにすれば、ベルトはローターの回転にほぼ同期して移動するため、ローターへの負荷を低減させることができる。
【0018】
[適用例6]上記適用例に係る圧電アクチュエーターは、前記ベルトと前記ローターとの接触状態をほぼ一定に保持する補助部材が、さらにさらに備えられていることが好ましい。
ここで、補助部材としては、例えばバネ等の弾性部材である。
【0019】
ローターとベルトの接触状態は、構成要素の寸法ばらつきによって変化し、接触しない状態や、接触量が増加し負荷が大きくなってしまう状態が存在することがある。そこで、補助部材によって接触状態を一定に保持させることによって、より安定した駆動を実現できる。
【0020】
[適用例7]本適用例に係るロボットハンドは、上記適用例のいずれかに記載の圧電アクチュエーターが、関節部に備えられていることを特徴とする。
【0021】
本適用例によるロボットハンドは、磨耗粉の除去機能を有し耐久性に優れた圧電アクチュエーターを用いることで、複雑な電子機器の組み立て作業や検査等が可能なロボットに適用することができる。圧電アクチュエーターは小型化が可能で、ロボットハンドの指に相当する部分に特に有効である。
【0022】
[適用例8]本適用例に係るロボットは、上記適用例に記載のロボットハンドを備えることを特徴とする。
【0023】
本適用例によるロボットによれば、耐久性に優れ、複雑な電子機器の組み立て作業や検査等を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施形態1に係る圧電アクチュエーターを示す構成説明図。
【図2】振動体の構成の1例を示す斜視図。
【図3】振動体によるローターの駆動作用を模式的に示す説明図。
【図4】圧電アクチュエーターの断面構成を模式的に示す断面図。
【図5】ベルトのローターとの接触面の実施例を示す部分斜視図であり、(a)は第1実施例、(b)は第2実施例、(c)は第3実施例。
【図6】実施形態2に係る圧電アクチュエーターの構成を示す構成説明図。
【図7】実施形態3に係る圧電アクチュエーターの一部を示す平面図。
【図8】圧電アクチュエーターを用いたロボットハンドの構成を示す構成説明図。
【図9】ロボットハンドを備えるロボットの構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
なお、以下の説明で参照する図は、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材ないし部分の縦横の縮尺は実際のものとは異なる模式図である。
(実施形態1)
【0026】
図1は、実施形態1に係る圧電アクチュエーターを示す構成説明図である。圧電アクチュエーター10は、回転体であるローター40と、ローター40の外周面に当接してローター40を回転させる振動体20と、ローター40の回転外周面に接触するように配置される可撓性を有する環状のベルト70と、ベルト70を懸架する少なくとも二つのローラー61,65と、を備え構成されている。
【0027】
振動体20は、支持アーム37によって支えられており、長さ方向端部に突設された押動部39が、ローター40の外周面に一定の押し圧力で当接されている。振動体20の振動によって、ローター40は、R方向に回転されるとともに、ベルト70を矢印方向に(破線で図示)移動させる。ベルト70は、ローラー61,65の中間位置でローター40の外周面に接触するよう配置され、ローター40と振動体20(押動部39)との接触面に発生する磨耗粉を捕捉する。
振動体20の構成および駆動作用については、図2、図3を参照して説明する。
【0028】
図2は、振動体の構成の1例を示す斜視図、図3は、振動体によるローターの駆動作用を模式的に示す説明図である。図2において、振動体20は、ほぼ長方形の薄板形状をしており、補強板36の表面に板状の圧電素子21、裏面に圧電素子22が固着され、各圧電素子には電極が設けられている。
圧電素子21,22の材質としては特に限定されないが、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、水晶、ニオブ酸リチウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、メタニオブ酸鉛、ポリ弗化ビニリデン、亜鉛ニオブ酸鉛、スカンジウムニオブ酸鉛等を用いることができる。
【0029】
圧電素子21には、幅方向の一方の辺に沿って長さ方向に配置される電極31,33と、幅方向の他方の辺に沿って長さ方向に配置される電極32,34と、電極31,33と電極32,34の間のほぼ中央に配置される電極30と、が設けられている。これらの電極は、それぞれ電気的に分割されている。
【0030】
一方、補強板36の裏面側の圧電素子22には電極35が設けられており、図示は省略するが、前述した電極30〜35とは、補強板36を挟んでそれぞれが面対称となるように分割された電極とから構成されている。
【0031】
補強板36は、圧電素子21,22に対する共通電極としての機能と、振動体20の全体を補強する機能と、を有しており、振動体20が過振幅または外力等によって損傷することを防止する。補強板36の材質としては特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼、アルミニウムまたはアルミニウム合金、チタンまたはチタン合金、銅または銅系合金等の金属材料であることが望ましい。
【0032】
圧電素子21,22は、補強板36よりも厚いものであることが好ましい。これにより、振動体20をより高い効率で振動させることができる。
【0033】
圧電素子21,22は、交流電圧が印加されると長手方向に繰り返し伸縮し、これに伴って、補強板36も長手方向に繰り返し伸縮する。
【0034】
補強板36の長手方向端部には、押動部39が一体的に突設されている。図1に示すように、振動体20は押動部39がローター40の外周側面に当接するように配設されている。なお、押動部39は、補強板36の中央部に設けられている。
【0035】
また、補強板36の長さ方向の中央両側には、一対の支持アーム37が突設されており、支持アーム37の先端部には固定部38が形成されている。振動体20は、この固定部38を振動体支持部材(図示せず)に固定螺子等を用いて固定される。これにより、振動体20は自由に振動することができ、比較的大きい振幅で振動する。
【0036】
次に、振動体20の駆動作用について図2、図3を参照して説明する。
図3は振動体の作用を模式的に示す説明図である。図2に示すように、電極30,31,32と、補強板36との間に交流電圧を印加すると、電極30の下面範囲の圧電素子21は矢印Xで表すように長手方向に伸縮し、縦振動を行う。電極31,32の下面範囲の圧電素子21も長手方向に伸縮するが、それぞれが圧電素子21の対角方向に配設されているため、矢印Yに示すような面内の屈曲振動を行う。
【0037】
なお、補強板36の裏面に設けられる圧電素子22においても、電極32(電極30,31,32,33,34,35と面対称で形成された)に同様の交流電圧が印加される。従って、振動体20は、主に長手方向に縦振動するが、縦振動と屈曲振動とを共振させ、押動部39を楕円振動させる。以下、この点について説明する。
【0038】
図3に示すように、振動体20がローター40を回転駆動するとき、押動部39は、ローター40から反力を受ける。本実施形態では、振動体20は、この反力によって面内方向に屈曲するように変形、振動する。印加電圧の周波数、振動体20の形状・大きさ及び押動部39の位置等を適宜選択することで、この屈曲振動の周波数と縦振動の周波数とが共振し、振幅が大きくなると共に、押動部39は、図3中の矢印rにて表すように、ほぼ楕円に沿って変位(楕円振動)する。
【0039】
これにより、振動体20の1回の振幅において、押動部39が伸張しローター40を回転方向(図示R方向)に送るときには、押動部39がローター40により強い力で圧接される。また、押動部39が収縮し戻るときには、ローター40との摩擦力を低減または消滅させることができるため、振動体20の振動をローター40の回転に高い効率で変換することができる。
【0040】
なお、電極30,33,34および補強板36に電圧を印加させる場合には、圧電素子21は、電極31,32の形成領域とは逆方向(図示Y’)の屈曲振動を行う。従って、押動部39は、図3に示すr方向とは逆方向の楕円運動をするため、ローター40の回転方向も逆となり、ローター40の回転方向を切り替えることができる。
【0041】
次に、圧電アクチュエーター10の構造をさらに詳しく説明する。
図4は、本実施例の圧電アクチュエーターの断面構成を模式的に示す断面図である。なお、図4は、ローター40は、ベース90に回転可能に軸支されている。ローター40には、アーム42の一方の端部が固定されており、他方の端部はローター40の回転角度に応じて揺動可能である。つまり、ローター40を関節としたとき、アーム42はリンクに相当する。
【0042】
ローラー61,65は、ベース90に植立されたローラー軸67に回転自在に挿着されている。そして、ローラー61,65にベルト70が懸架されている(図1、参照)。ローター40の外周面には、振動体20の押動部39が当接されている。ベルト70の幅は、押動部39とローター40の接触面よりも広ければよく、また、ベルト70をローラー61,65に懸架したときの張力は、ローター40に接触していれば小さいほどよい。ローラー61,65は回転自在であるため、ローター40が回転するときには、ベルト70を摩擦力で移動させようとする。従って、ベルト70のローター40との接触位置は移動していく。
【0043】
なお、ローター40およびローラー61,65の断面方向の位置は、図示しない蓋部材で規制されている。
【0044】
なお、本実施例は、駆動時に、ローター40と振動体20(押動部39)との間に発生する磨耗粉を、接触面から除去することを目的の一つとしている。このような場合、ベルト70のローター40との接触面を工夫することで、その効果をより大きくすることができる。よって、ベルト70のローター40との接触面について説明する。
図5は、ベルトのローターとの接触面の実施例を示す部分斜視図であり、(a)は第1実施例、(b)は第2実施例、(c)は第3実施例である。
【0045】
まず、第1実施例に係るベルト70について説明する、図5(a)に示すように、ベルト70には、幅方向に複数の格子状の突起71が形成されている。つまり、ローター40との接触面には、幅方向に凹凸が形成されており、磨耗粉は、凸部で捕捉され凹部内に収容される。突起71の高さ及び間隔は、磨耗粉の平均粒径より大きくなるように設定する。なお、突起71の幅、および間隔は、ローター40との接触を確保できれば一様でなくてもよく、突起71は図示するように平行でなくてもよく、斜め方向に形成してもよい。
【0046】
次に、第2実施例に係るベルト70について説明する。図5(b)に示すように、ベルト70の表面には、複数の凹部72が形成されている。凹部72の大きさ、および深さは、磨耗粉の平均粒径より大きく、任意位置に配置することができ、形状も必ずしも円である必要はない。また、凹部72は貫通孔でもよい。
【0047】
次に、第3実施例に係るベルト70について説明する。図5(c)に示すように、ベルト70の表面には、複数の突起73が形成されている。突起73の高さはほぼ一定にし、磨耗粉の平均粒径よりも大きくすることが好ましい。また、突起73は、任意形状で任意位置に配置できるが、それぞれの間隔は、少なくとも磨耗粉の平均粒径よりも広くしておく部分を形成しておく。
なお、図示は省略するが、ベルト70を、可撓性を有する多孔質材で形成してもよい。
【0048】
以上説明した実施形態によれば、ベルト70はローラー61,65に懸架されたうえでローター40の外周面と接触させていることから、磨耗粉をベルト70で捕捉しながら、ローター40の回転に合わせて接触位置が移動していく。このことからベルト70に十分な磨耗粉の捕捉能力をもたせることができる。また、ベルト70の張力を適切にすることと、ローター40の回転に合わせて移動することが可能であることから、ローター40への負荷を小さくすることができる。従って、安定駆動の持続と、磨耗粉除去によって耐久性を高めることができるという効果がある。
【0049】
また、ベルト70のローター40との接触面には、複数の格子状の突起71(図5(a)、参照)や、任意形状の突起73(図5(c)、参照)や、穴または貫通孔などの凹部72(図5(b)、参照)を設けることによって、磨耗粉の捕捉、収容を効率的に行うことができる。さらに、ローター40との接触面積を減らすことができ、ローターへの負荷低減もできるという効果がある。
【0050】
なお、ベルト70の長さをBL、ローター40の周長さをDLとしたとき、BL>DL、BL≠nDL(nは整数)となるように設定することがより好ましい。このようにすれば、ローターの回転によって、ベルトのローターとの接触位置が移動していくため、同じ接触位置の繰り返しの機会が減少し、磨耗粉の捕捉能力が低下しないことから、長時間にわたって安定駆動を継続できる。
(実施形態2)
【0051】
続いて、実施形態2について図面を参照して説明する。実施形態2は、ローター40によって強制的にベルト70を移動させることに特徴を有する。実施形態1と同じ機能要素には同じ符号を付して説明する。
図6は、本実施形態に係る圧電アクチュエーターの構成を示す構成説明図である。図6において、本実施形態の圧電アクチュエーター10は、振動体20と、ローター40と、ローラー61,65と、ローラー61,65に懸架されたベルト70と、ローター40の回転をローラー65に伝達する回転伝達機構とを有して構成される。
【0052】
回転伝達機構は、ローター40に固定されるローター歯車41と、ローラー65に形成されるローラー歯車66と、ローター歯車41に歯合する第1伝達歯車68と、第1伝達歯車68とローラー歯車66とに歯合する第2伝達歯車69と、から構成されている。
なお、回転伝達機構が付加されていること以外の構成要素は、前述した実施形態1(図1〜図5、参照)と同じにできることから説明を省略する。
また、本実施例では、ローター歯車41とローラー歯車66の歯数は同じである。
【0053】
次に、ベルト70の作動について説明する。振動体20によってローター40を時計回りに回転させると、ローター40の回転はローター歯車41から第1伝達歯車68と第2伝達歯車69とを介してローラー歯車66に伝達される。従って、ローラー65に懸架されているベルト70は、ローター40の回転方向と同じ方向に移動される。ローター歯車41とローラー歯車66の歯数は同数であるため回転速度は一定であって、ローター40の周速度とベルト70の移動速度もほぼ同じとなる。
【0054】
本実施形態によれば、ローラー65とローター40との間に回転伝達機構を備え、ベルト70を、ローター40の回転方向と同じ方向に移動させることによって、ベルト70を移動させるための専用の駆動源を設けなくても、ローター40の回転に合わせてベルト70を移動させることができ、磨耗粉の除去を効率よく行うことができる。しかも、ベルト70はローター40の回転にほぼ同期して移動するため、ローター40への負荷を低減させることができる。
【0055】
なお、図示は省略するが、ローター40にはアーム42を取り付け(図4、参照)リンク構造を形成する。
【0056】
上述した圧電アクチュエーター10は、ローター40とローラー65との間に回転伝達機構を設けているが、ローラー61との間に回転伝達機構を設ける構造にしてもよい。また、ローター歯車41とローラー歯車66の歯数比を変更し、ローター40の周速度とベルト70の移動速度を変更してもよい。
(実施形態3)
【0057】
続いて、実施形態3に係る圧電アクチュエーター10について図面を参照して説明する。実施形態3は、ベルト70とローター40との接触状態をほぼ一定に保持する補助部材がさらにさらに備えられていることを特徴とする。本例は、実施形態1、実施形態2の構造にも適用可能であるが、ここでは、実施形態1の構造(図1、参照)を例示して説明する。
図7は、実施形態3に係る圧電アクチュエーターの一部を示す平面図である。ローラー61を支持するベース90には、長穴91が形成されており、ローラー61は、この長穴91内を揺動可能である。
【0058】
長穴91(中心P2)は、ローラー65(中心P1)との中心距離Lpと同心円の関係にある。よって、ローラー61は、ローラー65の中心P1を回転軸として長穴91内で揺動可能である。さらに、ローラー61をローター40方向(反時計回り方向)に付勢する補助部材としての弾性部材80が設けられている。弾性部材80は、図示するようなコイルバネや板バネを用いる。この弾性部材80によってローラー61を付勢することによって、ベルト70のローター40の外周面との接触状態を変更することができる。
【0059】
ローター40とベルト70の接触状態は、構成要素の寸法ばらつきによって変化し、接触しない状態や、接触負荷が大きくなってしまう状態が存在することがある。そこで、弾性部材80によって接触状態を一定に保持させることによって、より安定した駆動を実現することができる。よって、弾性部材80の弾性力(ローラー61への押し付け力)は、ベルト70の移動に影響が出ない範囲で弱く設定することが望ましい。
(ロボットハンド)
【0060】
続いて、前述した圧電アクチュエーター10を用いたロボットハンドについて説明する。
図8は、本実施形態の圧電アクチュエーターを用いたロボットハンドの構成を示す構成説明図である。ロボットハンド100は、基部110と、基部110に接続された指部120とを備えている。基部110と指部120との接続部と、指部120の関節部と、には、圧電アクチュエーター10が設けられている。圧電アクチュエーター10を駆動することによって、指部120が屈曲し、物体を把持することができる。
【0061】
本例に用いる圧電アクチュエーター10は、磨耗粉の除去機能を有し耐久性に優れているので、複雑な電子機器の組み立て作業や検査等が可能なロボットに適用することができる。圧電アクチュエーター10は小型化が可能で、ロボットハンドの指に相当する部分に特に有効である。
(ロボット)
【0062】
続いて、前述したロボットハンド100を用いたロボットについて説明する。
図9は、ロボットハンドを備えるロボットの構成を示す斜視図である。ロボット200は、本体部210、アーム部220およびロボットハンド100等から構成されている。本体部210は、例えば床、壁、天井、移動可能な台車の上などに固定される。アーム部220は、本体部210に対して可動に設けられており、本体部210にはアーム部220を回転させるための動力を発生させる図示しないアクチュエーターや、アクチュエーターを制御する制御部等が内蔵されている。
【0063】
アーム部220は、第1フレーム221、第2フレーム222、第3フレーム223、第4フレーム224および第5フレーム225から構成されている。第1フレーム221は、回転屈折軸を介して、本体部210に回転可能または屈折可能に接続されている。第2フレーム222は、回転屈折軸を介して、第1フレーム221および第3フレーム223に接続されている。第3フレーム223は、回転屈折軸を介して、第2フレーム222および第4フレーム224に接続されている。第4フレーム224は、回転屈折軸を介して、第3フレーム223および第5フレーム225に接続されている。第5フレーム225は、回転屈折軸を介して、第4フレーム224に接続されている。アーム部220は、制御部の制御によって、各フレーム221〜225が各回転屈折軸を中心に複合的に回転または屈折し動く。
【0064】
アーム部220の第5フレーム225のうち第4フレーム224が設けられた他方には、ロボットハンド100が取り付けられており、対象物を把持することができる。
【0065】
ロボットハンド100には耐久性に優れた圧電アクチュエーター10を駆動源として用いるために、複雑な電子機器の組み立て作業や検査等が可能なロボットを提供することができる。
【0066】
なお、前述した圧電アクチュエーター10は、ロボットハンド100およびロボット200に用いる場合を例示したが、回転駆動またはスライド駆動を必要とする他の小型機器の駆動源として適用することができる。
【符号の説明】
【0067】
10…圧電アクチュエーター、20…振動体、40…ローター、61,65…ローラー、70…ベルト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローターと、
前記ローターの外周面に当接して、前記ローターを回転させる振動体と、
少なくとも二つのローラーと、
前記少なくとも二つのローラーに懸架される可撓性を有する環状のベルトと、
を有し、
前記ベルトが、前記二つのローラーの間において前記ローターの外周面に接触するよう配置されている、
ことを特徴とする圧電アクチュエーター。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電アクチュエーターにおいて、
前記ベルトの前記ローターに接触する面に、複数の凹凸または複数の貫通孔を有する、
ことを特徴とする圧電アクチュエーター。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の圧電アクチュエーターにおいて、
前記ベルトの長さをBL、前記ローターの周長さをDLとしたとき、
BL>DL、BL≠nDL(nは整数)である、
ことを特徴とする圧電アクチュエーター。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の圧電アクチュエーターにおいて、
前記ローラーの一つと前記ローターとの間に回転伝達機構をさらに有し、
前記ベルトが、前記ローターの回転方向と同じ方向に移動する、
ことを特徴とする圧電アクチュエーター。
【請求項5】
請求項4に記載の圧電アクチュエーターにおいて、
前記ベルトの移動速度が、前記ローラーの周速度ほぼ同じであること、
を特徴とする圧電アクチュエーター。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の圧電アクチュエーターにおいて、
前記ベルトと前記ローターとの接触状態をほぼ一定に保持する補助部材が、さらに備えられていることを特徴とする圧電アクチュエーター。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の圧電アクチュエーターが、関節部に備えられていることを特徴とするロボットハンド。
【請求項8】
請求項6に記載のロボットハンドを備えることを特徴とするロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−210054(P2012−210054A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73583(P2011−73583)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】