説明

地盤改良工法

【課題】水上の船舶に搭載された地盤改良機を用いた地盤改良工法であって、水位が変化する場合でも、簡易な操作によって、均一な品質及び計画通りの出来形を有する造成改良体が得られる地盤改良工法を提供する。
【解決手段】地盤改良機として、地盤6を撹拌しかつ固化材スラリーを噴射するためのノズルを装備した撹拌翼4、及び、撹拌翼4を鉛直方向に昇降させるための撹拌軸5を有する混合撹拌装置3を用いる。地盤改良対象領域Aの下端と上端の間に亘って、撹拌軸5の上昇と静止を交互に繰り返しつつ、特定の噴射流量と噴射圧力で固化材スラリーを撹拌翼4から連続で噴射させる。地盤改良対象領域Aにおける鉛直方向の単位長さ当りの固化材スラリーの噴射量が一定になるように、撹拌装置3の撹拌軸5の上昇時の移動距離を、任意に定めた間隔の時間における水位の変化の速度を一定とみなして該任意に定めた間隔の時間毎に、水位の変化に合わせて調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水上の船舶に搭載された地盤改良機を用いて水底の下方の軟弱地盤等の地盤を改良するための地盤改良工法、特に、高圧噴射撹拌装置等の混合撹拌装置を用いたステップ式の貫入または引上げ方式による、水底の下方の地盤を改良するための地盤改良工法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステップ式の貫入又は引上げ方式による高圧噴射撹拌工法などの地盤改良工法は、陸上の地盤のみならず、河川、湖岸等の水底の下方の地盤の改良にも用いられている。
地盤改良工法を用いて水底の下方の地盤を改良する場合、通常、船舶に搭載した地盤改良装置を用いて地盤改良工事を行なっている。しかし、施工中に水位が変化する場合、均一な品質を有しかつ計画通りの出来形を有する造成改良体を得ることが困難であるという問題がある。
すなわち、水底の下方の地盤を改良する際、地盤改良装置が搭載された船舶の位置を施工基準面として、該施工基準面から固化材スラリーの噴射地点までの距離に基づいて、改良中の地盤の深度を把握している。そのため、潮の干満等に伴い水面が上昇または下降すると、施工基準面も同時に上昇または下降して、造成改良体の上端や下端の位置が、予定された上端または下端の位置と異なってしまい、計画通りの出来形を有する造成改良体が得られないという問題がある。また、造成改良体毎に施工基準面の位置が変化するため、複数の造成改良体からなる改良地盤において、造成改良体毎に上端及び下端の位置がばらつくという問題がある。
さらに、水面が上昇または下降するため、地盤改良装置の撹拌軸の移動速度(貫入速度又は引上げ速度)が時間の経過とともに変化する。例えば、撹拌軸を引上げていく場合を例にとると、水面が上昇すると、その上昇分だけ引上げ速度が速くなり、水面が下降すると、その下降分だけ引上げ速度が遅くなる。そのため、地盤改良装置の仕様(噴射流量、噴射圧力等)を一定に保って施工すると、造成改良体の品質(例えば、固化材スラリーによって増大させた一軸圧縮強さ)が当該造成改良体自体の中でばらつきを生じ、均一な品質を有する造成改良体が得られないという問題がある。
ここで、潮位等により水面が上昇または下降する環境下において水底の下方の地盤を改良する方法としては、例えば、水面下方の地盤の表層部に平板状の支持基盤を造成する工程と、該支持基盤により作業施設のレグを支持する工程、とを有することを特徴とする地盤改良工法が提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−44147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載の方法によると、水面下方の地盤に造成した支持基盤により、船舶などの作業施設のレグを支持しているため、潮位等の影響を受けずに、造成改良体を形成することができる。しかし、この方法は、水底の地盤に支持基盤を造成するという大掛かりな作業を要するため、高コストであるという問題がある。また、造成改良体ごとに船舶の位置を変更して作業を行う場合、その度に支持基盤を設置する必要があるという問題がある。さらに、支持基盤を造成する水底の地盤は、改良対象であるため軟弱地盤であることが多い。そのため、支持基盤の造成は非常に面倒な作業であり、地盤によってはこの方法を適用することが困難な場合があるという問題がある。
本発明は、上述の背景に鑑みてなされたものであり、水上の船舶に搭載された地盤改良機を用いた地盤改良工法において、潮の干満等によって水面が上昇または下降する場合であっても、簡易な操作によって、均一な品質及び計画通りの出来形を有する造成改良体を得ることのできる地盤改良工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、地盤を撹拌しかつ固化材スラリーを噴射するためのノズルを装備した撹拌翼、又は固化材スラリーを噴射するためのノズルを装備した撹拌翼のない先端モニターと、前記撹拌翼又は前記先端モニターを鉛直方向に昇降させるための撹拌軸と、を有する混合撹拌装置を用いて、固化材スラリーの噴射流量及び噴射圧力を一定に保ちつつ、水位の変化に合わせて、撹拌軸のステップ毎の移動距離のみを調整するようにすれば、上記目的を達成しうることを見出し、本発明を完成した。
【0005】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[3]を提供するものである。
[1] 水位が変化する水面に浮かべた船舶に搭載された地盤改良機を用いて、水底の下方の地盤を改良するための地盤改良工法であって、上記地盤改良機として、地盤を撹拌しかつ固化材スラリーを噴射するためのノズルを装備した撹拌翼、又は固化材スラリーを噴射するためのノズルを装備した撹拌翼のない先端モニターと、前記撹拌翼又は前記先端モニターを鉛直方向に昇降させるための撹拌軸と、を有する混合撹拌装置を用い、地盤改良対象領域の下端と上端の間に亘って、上記撹拌軸の貫入時の下降又は引上げ時の上昇のいずれかの動作と静止を、交互に繰り返しながら、上記撹拌翼又は先端モニターから特定の噴射流量と噴射圧力で固化材スラリーを連続で噴射させ、地盤改良対象領域における鉛直方向の単位長さ当りの固化材スラリーの噴射量が一定になるように、上記混合撹拌装置の撹拌軸の上昇時又は下降時の移動距離を、任意に定めた間隔の時間における水位の変化の速度を一定とみなして該任意に定めた間隔の時間毎に、水位の変化に合わせて調整することを特徴とする地盤改良工法。
[2] 地盤改良対象領域の下端と上端の間に亘って、上記撹拌軸の引上げ時の上昇と静止を、交互に繰り返しながら、上記撹拌翼又は先端モニターから特定の噴射流量と噴射圧力で固化材スラリーを連続で噴射させ、地盤改良対象領域における鉛直方向の単位長さ当りの固化材スラリーの噴射量が一定になるように、上記混合撹拌装置の撹拌軸の上昇時の移動距離を、任意に定めた間隔の時間における水位の変化の速度を一定とみなして該任意に定めた間隔の時間毎に、水位の変化に合わせて調整する上記[1]に記載の地盤改良工法。
[3] 地盤改良対象領域の上端と下端の間に亘って、上記撹拌軸の貫入時の下降と静止を、交互に繰り返しながら、上記撹拌翼又は先端モニターから特定の噴射流量と噴射圧力で固化材スラリーを連続で噴射させ、地盤改良対象領域における鉛直方向の単位長さ当りの固化材スラリーの噴射量が一定になるように、上記混合撹拌装置の撹拌軸の下降時の移動距離を、任意に定めた間隔の時間における水位の変化の速度を一定とみなして該任意に定めた間隔の時間毎に、水位の変化に合わせて調整する上記[1]に記載の地盤改良工法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の地盤改良工法によると、地盤改良対象領域における鉛直方向の単位長さ当りの固化材スラリーの噴射量が一定となるように、撹拌軸の1ステップ毎の移動距離(具体的には、貫入の長さまたは引上げの長さ)のみを調整すればよく、操作が非常に簡易であり、均一な品質及び計画通りの出来形を有する造成改良体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照しつつ、本発明の地盤改良工法を詳細に説明する。
図1は、本発明の地盤改良工法の一例を説明するための図である。
図1中、本発明の地盤改良工法を行なうための地盤改良機3は、水面1に浮かべた船舶2に搭載されている。地盤改良機3は、地盤6を撹拌しかつ固化材スラリーを噴射するためのノズルを装備した撹拌翼4と、撹拌翼4を鉛直方向に昇降させるための撹拌軸5とを有する混合撹拌装置(例えば、高圧噴射撹拌装置)である。水底の下方の地盤6中の改良対象領域Aは、撹拌翼4のノズルから噴射される固化材スラリーによって改良される。
地盤改良機3は、ステップ式で動作するものである。本明細書において、ステップ式とは、撹拌軸5の貫入時の下降又は引上げ時の上昇のいずれかの動作と静止を、交互に繰り返すことをいう。
【0008】
地盤改良機3としては、ステップ式で貫入方式のものと、ステップ式で引上げ方式のもののいずれも用いることができる。
ステップ式の貫入方式とは、改良対象領域Aの上端に撹拌翼4を配置し、撹拌翼4のノズルから固化材スラリーを噴射させつつ、撹拌軸5を所定の回転数で回転させながら、領域Aの下端まで、下降と静止を交互に繰り返すことによって、略円柱状の造成改良体を形成させるものである。
一方、ステップ式の引上げ方式とは、領域Aの下端まで撹拌翼4にて地盤を削孔した後、撹拌翼4のノズルから固化材スラリーを噴射させつつ、撹拌軸5を所定の回転数で回転させながら、領域Aの下端から領域Aの上端まで、上昇と静止を交互に繰り返すことによって、略円柱状の造成改良体を形成させるものである。
造成時に撹拌軸5を下降又は上昇させる際、撹拌翼4のノズルから、特定の噴射流量と噴射圧力にて固化材スラリーを連続して噴射している。本発明において、噴射流量、噴射圧力、撹拌軸の回転数等は、改良体造成中には水位の変化に応じて調整する必要がなく、一定である。
【0009】
本発明においては、撹拌翼4の上昇時又は下降時の1ステップあたりの移動距離(1ステップあたりの貫入の長さ又は引上げの長さ)のみを水位の変化(例えば、潮位の変化による水位の変化等)に合わせて調整する。具体的には、地盤改良対象領域Aにおける鉛直方向の単位長さ当りの固化材スラリーの噴射量が一定になるように、任意に定めた間隔の時間における水位の変化の速度を一定とみなして該任意に定めた間隔の時間毎に、水位の変化に合わせて前記移動距離を調整する。
以下、撹拌翼4の移動距離の調整方法を、引上げ方式の高圧噴射撹拌装置を用いた場合を例にとって説明する。
本発明においては、1ステップ当りの水位の変化を考慮した撹拌翼4の改良対象領域A中での実際の上昇距離(以下、「1ステップ当りの実際のステップ長さ」ともいう。)、及び、改良対象領域A中を実際に1m改良するのに要する時間(以下、「1m当りの改良時間」ともいう。)は固定値であり、これらの固定値に合わせるように、撹拌翼4の施工機械における1ステップ当りの設定上昇距離(潮位の変化速度に応じて異なる上昇の長さ)のみを調整する。
【0010】
(1)まず、1m当りの改良時間、及び、1ステップ当りの実際のステップ長さを設定し、1ステップ当りに要する時間(以下、「ステップ時間」ともいう。)を求める。
具体的には、1m当りの改良時間をT(分/m)、1ステップ当りの実際のステップ長さをH(m/ステップ)とすると、ステップ時間はH(分/ステップ)となる。
上述の通り、1ステップ当りの実際のステップ長さH(m/ステップ)、及び1m当りの改良時間T(分/m)は、施工条件に応じて任意に定められる固定値である。
1ステップ当りのステップ長さH(m/ステップ)、及びステップ時間H(分/ステップ)は、便宜上、m、分を単位としたが、通常、mm、及び秒を単位として表示される。これらの値は、適宜単位の換算を行なって、管理装置に表示することができる。
【0011】
(2)次いで、水位の変化の速度(m/分)、及び1m当りの水位の変化量を求める。水位は、例えば、水圧式潮位計、フロー潮位計、超音波式潮位計、GPSを用いた潮位計、光波式潮位計等を用いて計測することができる。
水位の変化としては、例えば、潮位の変化、降雨、近隣を船舶が通行することなどによるものが挙げられる。
測定された水位に基づき、任意に定めた間隔の時間における水位の変化速度を一定と見なして、水位の変化速度を求める。
具体的な求め方を、水位の変化が潮位の変化によるものである場合を例にとって説明する。図2に示される潮位−時間の波形図中、任意に定めた間隔の時間をα(分)とし、α(分)の間に潮位h(m)からh(m)までの距離hだけ変化(図2中では上昇)するものとする。ここで、実際の水位(具体的には、潮位)はlで示されるように変化するものであるが、本発明では、この間の水位の変化速度を一定と見なす。すなわち、図2中α(分)の間に、水位はlで示されるように変化するものと見なして、水位の変化速度をV(=h/α)(m/分)と求める。
なお、水位の変化は、撹拌翼の移動方向と同じ方向に変化する場合をプラスと考えるものとする。例えば、引上げ方式にて改良作業を行っている際には、水位が上昇する場合をプラス、下降する場合をマイナスとし、貫入方式にて改良作業を行っている際には、水位が上昇する場合をマイナス、下降する場合をプラスとする。
図2中の任意に定めた間隔の時間α(分)は、施工条件に応じて適宜定めることができる。後述の(4)で求められる1ステップ当りの補正長が0(m)とみなせる場合(図2中の潮位−時間曲線中、極大値又は極小値に近い領域)には、任意に定めた間隔の時間αは、好ましくは1.0時間以下、より好ましくは30分以下である。また、補正長が0(m)とみなせない場合(補正長の短縮又は増加を行う場合)には、任意に定めた間隔の時間αは、好ましくは6.0時間以下、より好ましくは3.0時間以下、さらに好ましくは1.0時間以下である。任意に定めた間隔の時間αを上記範囲内とすることにより、潮位の変化を十分に反映することができ、均一な品質、計画通りの出来形を有する造成改良体を得ることができる。
任意に定めた間隔の時間αの下限値は、特に限定されないが、好ましくは12.0分以下、より好ましくは4.0分以下である。該時間を短くすればするほど、実際の潮位の変化をより正確に反映することができるが、施工精度や施工能率等を考慮すれば、好ましい下限値は上記の通りである。
上記(1)より、1mあたりの改良時間はT(分)であり、潮位の変化速度はV(m/分)であるので、改良対象領域A中を1m改良する間に潮位が変化する量(1m当りの潮位の変化量)は、TV(m/m)(=分/m×m/分=m/m)と求められる。
【0012】
(3)1m当りのステップ回数(N)を求める。
上記(1)より、1ステップ当りのステップ長さは、H(m/ステップ)と設定されているので、1m当りのステップ回数N(ステップ/m)は、N=1/H(ステップ/m)である。
(4)1ステップ当りの補正長さ(攪拌翼の引上げ長さの補正量)を求める。
上記(2)より、改良対象領域A中を1m改良する間に潮位が変化する量(改良1m当りの潮位の変化量)は、TV(m/m)であり、上記(3)より、1m当りのステップ回数は、1/H(ステップ/m)であるので、1ステップ当りの補正長さは、次式:
[TV(m/m)]÷[1/H(ステップ/m)]=TVH(m/ステップ)
で求められる。
よって、補正後の1ステップ当りの攪拌翼の引上げ長さは、H−TVH(m/ステップ)である。
なお、1ステップ当りの補正長さが非常に小さく、0(m)と見なせる場合には、補正後の1ステップ当りの攪拌翼の引上げ長さは、H−TVH(m)≒H(m)となる。この場合本発明においては、1ステップ当りの補正長さが0(m)の補正を行なったものとする。
1ステップ当りの攪拌翼の引上げ長さをH−TVH(m/ステップ)とし、1ステップの引上げ時間をH(分/ステップ)で引上げるようにすれば、この1ステップの引上げ時間内に潮位の上昇と共に施工機械もTVH(m/ステップ)だけ上昇するので、改良対象領域A中において攪拌翼を1ステップでH(m/ステップ)上昇させることができる。なお、攪拌翼は、改良対象区域A中を1ステップ当りH(分/ステップ)でH(m)上昇するので、みかけ上の撹拌翼の引き上げ速度はT(分/m)となる。
【0013】
以上(1)〜(4)の補正計算を自動で行い、撹拌翼の引上げ長さを補正する。
数値の丸めや他の船舶通行による一時的かつ不規則な潮位の変化等による誤差が生じ、それが累積して誤差が大きくなった場合には、手動入力で誤差補正の操作を適宜行うことができる。
【実施例】
【0014】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1(引上げ方式)]
潮位(トータルステーションにて測定)が、12時〜18時までの間(6時間)に2.0m上昇(単調増加)し、1ステップ当りの実際のステップ長さ(基準ステップ長さ)が50mm、改良時間が4.0分/mである場合について述べる。
(1)1ステップ当りの実際のステップ長さHは50[mm/ステップ]=0.05[m/ステップ]、改良時間Tは4.0[分/m]であるから、ステップ時間(基準ステップ時間)[秒/ステップ]は、
=0.05[m/ステップ]×4[分/m]=0.2[分/ステップ]=12[秒/ステップ]
である。
(2)潮位の変化の速度[mm/分]は、
V=h/α=2.0[m]÷6[時間]=1/3[m/時間]≒5.6[mm/分](=0.0056[m/分])
である。
改良対象領域1m当りの潮位変化速度[mm/m]は、上記(1)より改良時間が4.0[分/m]であるから、
V=4.0[分/m]×0.0056[m/分]=0.0224[m/m]=22.4[mm/m]
である。
(3)改良対象領域1m当りのステップの回数[ステップ/m]は、
1/H=1/0.05[m/ステップ]=20[ステップ/m]
である。
(4)1ステップ当りの補正長さ[mm/ステップ]は、
V÷(1/H)=TVH=4[分/m]×0.0056[m/分]÷20[ステップ/m]=0.00112[m/ステップ]=1.1[mm/ステップ]
である。
よって、補正後の1ステップあたりの撹拌翼の引き上げ長さ(補正ステップ長)[mm/ステップ]は、
−TVH=50[mm/ステップ]−1.1[mm/ステップ]=48.9[mm/ステップ]
である。
潮位の変化が、12〜18時で2.0m上昇の場合、1ステップ当りの撹拌翼の引上げ長さを48.9mmとし、1ステップ当り12秒で引上げると、実際の造成改良体においては、1ステップ(12秒)当り50mm改良することができ、改良時間は4.0分/mである。
【0015】
[実施例2(引上げ方式)]
造成改良体の長さが15.0m、改良時間が4.0分/m、1ステップ当りの実際のステップ長さが50mm、造成開始から終了までの間に潮位が50cm上昇する場合について述べる。
(1)1ステップ当りの実際のステップ長さHは50[mm/ステップ]=0.05[m/ステップ]、改良時間Tは4.0[分/m]であるから、ステップ時間(基準ステップ時間)[秒/ステップ]は、
=0.05[m/ステップ]×4.0[分/m]=0.2[分/ステップ]=12[秒/ステップ]
である。
(2)造成改良体の長さが15.0[m]、改良時間が4.0[m/分]であるので、造成開始から終了までに要する時間は、15.0[m]×4.0[分/m]=60[分]である。この間に、潮位が50[cm]上昇するので、潮位の変化の速度[mm/分]は、
V=h/α=50[cm]÷60[分]≒0.83[cm/分]=8.3[mm/分](=0.083[m/分])
である。
改良対象領域1m当りの潮位変化速度[mm/m]は、上記(1)より改良時間が4.0[分/m]であるから、
V=4.0[分/m]×0.083[m/分]=0.332[m/m]=33.2[mm/m]
である。
(3)1m当りのステップ回数は、
1/H=1/0.05[m/ステップ]=20[ステップ/m]
である。
(4)1ステップ当りの補正長さ[mm/ステップ]は、
V÷(1/H)=TVH=4[分/m]×0.083[m/分]÷20[ステップ/m]≒0.017[m/ステップ]=1.7[mm/ステップ]
である。
よって、補正後の1ステップ当りの撹拌翼の引上げ長さ(補正ステップ長さ[mm/ステップ])は、
−TVH=50[mm/ステップ]−1.7[mm/ステップ]=48.3[mm/ステップ]である。
(5)1ステップ当りの撹拌翼の引上げ長さを48.3mmとし、ステップ時間12秒で引上げると、60分(当初の造成終了予定時間)後には、潮位の上昇(その60分間で50cm上昇)も考慮して、48.3[mm/ステップ]×(60×60[秒]÷12[秒/ステップ])+(50×10)[mm]=48.3[mm/ステップ]×300[ステップ]+500[mm]=14990[mm]=14.99[m]、の長さだけ撹拌翼が上昇する。よって、さらに1.0cm引上げの誤差の補正を行う。
【0016】
[実施例3(貫入方式)]
造成改良体長が15.0m、改良時間が4.0m/分、1ステップ当りの実際のステップ長さが50cm、造成開始から終了までの間に潮位が50cm上昇する場合について述べる。
(1)1ステップ当りの実際のステップ長さHは50[mm/ステップ]=0.05[m/ステップ]、改良時間Tは4.0[分/m]であるから、ステップ時間[秒/ステップ]は、
=0.05[m/ステップ]×4.0[分/m]=0.2[分/ステップ]=12[秒/ステップ]
である。
(2)造成改良体の長さが15.0[m]、改良時間が4.0[m/分]であるので、造成開始から終了までに要する時間は、15.0[m]×4.0[分/m]=60[分]である。この間に、潮位は50[cm]上昇するので、潮位の変化の速度[mm/分]は、
V=h/α=−50[cm]÷60[分]≒−0.83[cm/分]=−8.3[mm/分](=−0.083[m/分])
である。
改良対象領域1m当りの潮位変化速度[mm/m]は、上記(1)より改良時間が4.0[分/m]であるから、
V=4.0[分/m]×−0.083[m/分]=−0.332[m/m]=−33.2[mm/m]
(3)1m当りのステップ回数は、
1/H=1/0.05[m/ステップ]=20[ステップ/m]
である。
(4)1ステップ当りの補正長さは、
V(1/H)=TVH=4[分/m]×−0.083[m/分]÷20[ステップ/m]≒−0.017[m/ステップ]=−1.7[mm/ステップ]
である。
よって、補正後の1ステップ当りの撹拌翼の貫入長さ(補正ステップ長さ)は、
−TVH=50[mm/ステップ]−(−1.7[mm/ステップ])=51.7[mm/ステップ]である。
(5)1ステップ当りの撹拌翼の貫入長さを51.7mmとし、ステップ時間12秒で貫入すると、60分(当初の造成終了予定時間)後には、潮位の上昇(その60分間で50cm上昇)も考慮して、51.7[mm/ステップ]×(60×60[秒]÷12[秒/ステップ])−(50×10)[mm]=51.7[mm/ステップ]×300[ステップ]−500[mm]=15010[mm]=15.01[m]の長さだけ撹拌翼が下降する。よって、貫入の誤差の補正を1.0cm行う。
【0017】
実施例1〜3から、本発明の方法によると、ステップ式の高圧噴射撹拌工法においては、撹拌翼の移動距離(1ステップ当りの撹拌翼の引上げ長さあるいは貫入長さ)を調整するだけで、均一な品質と計画通りの形状(出来形)を有する造成改良体が得られることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の地盤改良工法の一例を説明するための図である。
【図2】潮位の変化を説明するための図である。
【図3】本発明の地盤改良工法の施工方法の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0019】
1 水面
2 船舶
3 地盤改良機(混合撹拌装置、高圧噴射撹拌装置)
4 撹拌翼
5 撹拌軸
6 地盤
A 地盤改良対象領域
α 任意の間隔の時間
h 任意の間隔の時間における潮位の変化量
任意の間隔の時間における実際の潮位の変化
任意の間隔の時間における潮位の変化の速度を一定とみなした場合の潮位の変化

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水位が変化する水面に浮かべた船舶に搭載された地盤改良機を用いて、水底の下方の地盤を改良するための地盤改良工法であって、
上記地盤改良機として、地盤を撹拌しかつ固化材スラリーを噴射するためのノズルを装備した撹拌翼、又は固化材スラリーを噴射するためのノズルを装備した撹拌翼のない先端モニターと、前記撹拌翼又は前記先端モニターを鉛直方向に昇降させるための撹拌軸とを有する混合撹拌装置を用い、
地盤改良対象領域の下端と上端の間に亘って、上記撹拌軸の貫入時の下降又は引上げ時の上昇のいずれかの動作と静止を、交互に繰り返しながら、上記撹拌翼又は先端モニターから特定の噴射流量と噴射圧力で固化材スラリーを連続で噴射させ、
地盤改良対象領域における鉛直方向の単位長さ当りの固化材スラリーの噴射量が一定になるように、上記混合撹拌装置の撹拌軸の上昇時又は下降時の移動距離を、任意に定めた間隔の時間における水位の変化の速度を一定とみなして該任意に定めた間隔の時間毎に、水位の変化に合わせて調整すること、
を特徴とする地盤改良工法。
【請求項2】
地盤改良対象領域の下端と上端の間に亘って、上記撹拌軸の引上げ時の上昇と静止を、交互に繰り返しながら、上記撹拌翼又は先端モニターから特定の噴射流量と噴射圧力で固化材スラリーを連続で噴射させ、
地盤改良対象領域における鉛直方向の単位長さ当りの固化材スラリーの噴射量が一定になるように、上記混合撹拌装置の撹拌軸の上昇時の移動距離を、任意に定めた間隔の時間における水位の変化の速度を一定とみなして該任意に定めた間隔の時間毎に、水位の変化に合わせて調整する請求項1に記載の地盤改良工法。
【請求項3】
地盤改良対象領域の上端と下端の間に亘って、上記撹拌軸の貫入時の下降と静止を、交互に繰り返しながら、上記撹拌翼又は先端モニターから特定の噴射流量と噴射圧力で固化材スラリーを連続で噴射させ、
地盤改良対象領域における鉛直方向の単位長さ当りの固化材スラリーの噴射量が一定になるように、上記混合撹拌装置の撹拌軸の下降時の移動距離を、任意に定めた間隔の時間における水位の変化の速度を一定とみなして該任意に定めた間隔の時間毎に、水位の変化に合わせて調整する請求項1に記載の地盤改良工法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate