説明

埋込磁石型ロータ及びブラシレスモータ

【課題】漏れ磁束を低減することができる埋込磁石型ロータを提供する。
【解決手段】埋込磁石型ロータ21のロータコア23は、挿入積層孔27bを有する薄板状のコアシート27を複数枚積層して形成されるとともに、積層方向に並ぶ複数の挿入積層孔27bからなる磁石挿入孔23bを有する。磁石挿入孔23bには、磁石24が挿入されている。各コアシート27は、挿入積層孔27bにおける埋込磁石型ロータ21の回転方向の両端部とコアシート27の外周面との間に、挿入積層孔27bにおける埋込磁石型ロータ21の回転方向の中央部とコアシート27の外周面との間の部分よりも肉厚の薄い薄肉部27dを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋込磁石型ロータ、及び該ロータを備えたブラシレスモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブラシレスモータに備えられるロータには、ロータコアの内部に磁石が埋め込まれてなる埋込磁石型ロータ(IPMロータ)がある。埋込磁石型ロータをブラシレスモータに用いると、リラクタンストルクが得られるため、表面磁石型ロータ(SPMロータ)を用いる場合に比べてモータ効率を高めることができる。
【0003】
そして、埋込磁石型ロータには、例えば特許文献1に記載されているように、薄板状のコアシートを複数枚積層して形成されたロータコアを備えたものがある。このロータコアには、磁石が挿入される磁石挿入孔が形成されている。磁石挿入孔に挿入された磁石は、その外周面と磁石挿入孔の内周面との間に介在された接着剤等の充填材によってロータコアに対して固定されている。このように、充填材によってロータコアに磁石を固定すると、例えばロータコアに磁石に向かって突出する磁石固定用の突起を形成し該突起によってロータコアに磁石を固定する場合に比べて、磁石に局所的に荷重が加わることを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−103752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、埋込磁石型ロータでは、ロータコアを構成する金属材料によって磁石の周囲が囲まれている。そのため、磁石から出た磁束の一部が、ロータコアの外周に配置され該ロータコアと径方向に対向する環状のステータに流れ込まずにロータコアにおける同磁石を囲む部分を通って同磁石に戻ってしまう等して、漏れ磁束となってしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、漏れ磁束を低減することができる埋込磁石型ロータ及び該ロータを備えたブラシレスモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、挿入積層孔を有する薄板状のコアシートを複数枚積層して形成され積層方向に並ぶ複数の前記挿入積層孔からなる磁石挿入孔を有するロータコアと、前記磁石挿入孔に挿入された磁石と、を備えた埋込磁石型ロータであって、各前記コアシートは、前記挿入積層孔における埋込磁石型ロータの回転方向の両端部と前記コアシートの外周面との間に、前記挿入積層孔における埋込磁石型ロータの回転方向の中央部と前記コアシートの外周面との間の部分よりも肉厚の薄い薄肉部を有することをその要旨としている。
【0008】
同構成によれば、各コアシートにおいて、挿入積層孔における埋込磁石型ロータの回転方向の両端部とコアシートの外周面との間に形成された薄肉部は、挿入積層孔における埋込磁石型ロータの回転方向の中央部とコアシートの外周面との間の部分よりも磁気抵抗が大きい。このような薄肉部を有するコアシートを積層して形成されたロータコアには、磁石挿入孔における埋込磁石型ロータの回転方向の両端部(即ち磁石における埋込磁石型ロータの回転方向の両端部)とロータコアの外周面との間に、磁石挿入孔における埋込磁石型ロータの回転方向の中央部とロータコアの外周面との間の部分よりも磁気抵抗の大きい部分が形成される。従って、ロータコアにおいて、磁石挿入孔における埋込磁石型ロータの回転方向の両端部(即ち磁石における埋込磁石型ロータの回転方向の両端部)とロータコアの外周面との間の部分を通る磁束を減少させることができる。よって、磁石から出た磁束の一部が、ロータコアの外部に出ることなく同ロータコアにおける同磁石を囲む部分を通って同磁石に戻ってしまうことを抑制できる。その結果、この埋込磁石型ロータにおいて漏れ磁束を低減することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の埋込磁石型ロータにおいて、前記磁石の外周面と前記磁石挿入孔の内周面との間に介在されて前記磁石を前記ロータコアに対して固定する充填材を備え、前記コアシートは、前記コアシートに前記薄肉部が形成されたことにより前記コアシートの積層方向に隣り合う前記薄肉部間に形成され前記磁石挿入孔に繋がる空間を、積層方向に隣り合う前記コアシートに接触して若しくは近接して閉塞する閉塞部を備えたことをその要旨としている。
【0010】
同構成によれば、磁石の外周面と磁石挿入孔の内周面との間に介在された充填材によって、磁石に局所的に荷重が加わることを抑制しつつ該磁石をロータコアに対して固定することができる。また、各コアシートに薄肉部が形成されたことによりコアシートの積層方向に隣り合う薄肉部間に形成され磁石挿入孔に繋がる空間は、閉塞部によって閉塞される。従って、磁石から出た磁束が漏れ磁束となることを抑制しつつ、コアシートの積層方向に隣り合う薄肉部間の空間を通って充填材がロータコアの外周に漏れ出ることを抑制することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の埋込磁石型ロータにおいて、前記薄肉部は、前記挿入積層孔における埋込磁石型ロータの回転方向の両端部から前記コアシートの外周縁に亘って前記コアシートの厚さ方向の一端部に形成されるとともに前記挿入積層孔側の端部から前記コアシートの外周側の端部に向かうに連れて前記コアシートの厚さ方向の他端側に近づくように傾斜しており、前記閉塞部は、前記薄肉部であり、前記コアシートの積層方向に隣り合い前記ロータコアの外周側に向かうに連れて前記コアシートの積層方向に互いに近づく前記薄肉部の外周側の端部が互いに当接若しくは近接していることをその要旨としている。
【0012】
同構成によれば、薄肉部が傾斜しているため、複数枚のコアシートを、コアシートの積層方向に隣り合う薄肉部同士がロータコアの外周側に向かうに連れてコアシートの積層方向に互いに近づき、該薄肉部同士の外周側の端部が互いに当接若しくは近接するように容易に積層することができる。従って、閉塞部を容易に形成でき、その結果、充填材がロータコアの外周に漏れることを容易に抑制できる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の埋込磁石型ロータにおいて、各前記薄肉部は、前記挿入積層孔に隣接する第1薄肉部と、前記第1薄肉部よりも前記コアシートの外周側に形成され前記第1薄肉部から離間した第2薄肉部とから構成され、前記閉塞部は、前記第1薄肉部と前記第2薄肉部との間に形成され、前記閉塞部における前記コアシートの厚さ方向の幅は、前記コアシートにおける前記挿入積層孔よりも内周側の部分の厚さと等しい若しくは当該内周側の部分の厚さ未満であって前記第1薄肉部の厚さより大きいことをその要旨としている。
【0014】
同構成によれば、第1薄肉部と第2薄肉部とを離間して形成することにより、第1薄肉部と第2薄肉部との間に容易に閉塞部を形成することができる。また、閉塞部におけるコアシートの厚さ方向の幅は、コアシートにおける挿入積層孔よりも内周側の部分の厚さと等しい若しくは当該内側の部分の厚さ未満であって第1薄肉部の厚さより大きいため、複数枚のコアシートを積層するだけで、積層方向に隣り合うコアシートの閉塞部同士を当接若しくは近接させることが可能となる。従って、コアシートに薄肉部が形成されたことによりコアシートの積層方向に隣り合う第1薄肉部間に形成され磁石挿入孔に繋がる空間を閉塞部によって容易に閉塞することができ、充填材がロータコアの外周に漏れることを容易に抑制できる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の埋込磁石型ロータにおいて、前記第1薄肉部は、前記コアシートの厚さ方向の一端部に形成され、前記第2薄肉部は、前記コアシートの厚さ方向の他端部に形成されていることをその要旨としている。
【0016】
同構成によれば、第1薄肉部と第2薄肉部とがコアシートの厚さ方向にずれているため、磁石から出た磁束は、薄肉部を通って、磁石挿入孔における埋込磁石型ロータの回転方向の両端部からロータコアの外周面の方へより流れ難くなる。従って、磁石における埋込磁石型ロータの回転方向の両側且つロータコアの外周となるところへ流れていく漏れ磁束をより低減することができる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の埋込磁石型ロータにおいて、前記第1薄肉部及び前記第2薄肉部は、前記コアシートの厚さ方向の中央部に形成されていることをその要旨としている。
【0018】
同構成によれば、第1薄肉部及び第2薄肉部をコアシートの厚さ方向の中央部に形成することで、コアシートを、該コアシートの厚さ方向の中央を通る平面の両側で面対称な形状とすることが可能となる。そして、このようなコアシートを積層する際には、表面と裏面とを区別することなく積層できるため、ロータコアを容易に形成することができる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、請求項4に記載の埋込磁石型ロータにおいて、前記第1薄肉部は、前記コアシートの厚さ方向の中央部に形成され、前記第2薄肉部は、前記コアシートの厚さ方向の中央部から前記コアシートの厚さ方向にずれた位置に形成されていることをその要旨としている。
【0020】
同構成によれば、第1薄肉部と第2薄肉部との両方がコアシートの厚さ方向の中央部に形成される場合に比べて、第1薄肉部から第2薄肉部に至る経路が複雑化される。従って、磁石から出た磁束は、第1薄肉部と第2薄肉部との両方がコアシートの厚さ方向の中央部に形成される場合よりも、薄肉部を通って、磁石挿入孔における埋込磁石型ロータの回転方向の両端部からロータコアの外周面の方へより流れ難くなる。よって、磁石における埋込磁石型ロータの回転方向の両側且つロータコアの外周となるところへ流れていく漏れ磁束をより低減することができる。
【0021】
請求項8に記載の発明は、請求項2に記載の埋込磁石型ロータにおいて、前記薄肉部は、前記挿入積層孔における埋込磁石型ロータの回転方向の両端部から前記コアシートの外周縁の手前までの領域に亘って、前記コアシートの厚さ方向の一端側に形成され、前記閉塞部は、前記薄肉部よりも前記コアシートの外周側で前記コアシートの外周縁に沿って形成され、前記閉塞部における前記コアシートの厚さ方向の幅は、前記コアシートにおける前記挿入積層孔よりも内周側の部分の厚さと等しいことをその要旨としている。
【0022】
同構成によれば、薄肉部は、挿入積層孔における埋込磁石型ロータの回転方向の両端部から前記コアシートの外周縁の手前までの領域の厚さを薄くしただけの簡単な形状である。そして、閉塞部におけるコアシートの厚さ方向の幅は、コアシートにおける挿入積層孔よりも内周側の部分の厚さと等しいため、複数枚のコアシートを積層するだけで、積層方向に隣り合うコアシートの閉塞部同士を当接させることが可能となる。従って、コアシートに薄肉部が形成されたことによりコアシートの積層方向に隣り合う薄肉部間に形成され磁石挿入孔に繋がる空間を閉塞部によって容易に閉塞することができ、充填材がロータコアの外周に漏れることを容易に抑制できる。
【0023】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の埋込磁石型ロータにおいて、前記コアシートは、表裏交互に積層され、前記ロータコアの回転中心線方向の両端部に位置する2枚ずつの前記コアシートは、互いの前記薄肉部間に形成された前記空間を互いの前記閉塞部によって閉塞していることをその要旨としている。
【0024】
同構成によれば、ロータコアの回転中心線方向の両端部においてロータコアの回転中心線方向に充填材が漏れ出ることを抑制することができる。
請求項10に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の埋込磁石型ロータにおいて、前記磁石の外周面と前記磁石挿入孔の内周面との間に介在されて前記磁石を前記ロータコアに対して固定する充填材を備え、各前記コアシートには、前記挿入積層孔における埋込磁石型ロータの回転方向の両端部と前記コアシートの外周面との間の部分に、前記コアシートの厚さ方向に凹設され埋込磁石型ロータの回転方向に沿うように並ぶ1つ以上の磁気抵抗凹部からなる列が径方向に重なって層をなすように複数形成されるとともに、隣り合う前記列の前記磁気抵抗凹部は互いに繋がらないように埋込磁石型ロータの回転方向にずれており、前記薄肉部は、前記磁気抵抗凹部の底部であることをその要旨としている。
【0025】
同構成によれば、挿入積層孔における埋込磁石型ロータの回転方向の両端部とコアシートの外周面との間の部分に複数の磁気抵抗凹部を形成することで、複数の磁気抵抗凹部が形成された範囲を全体的に肉厚が薄くなるように形成する場合に比べて、より小さな圧力でコアシートに肉薄部を形成することができる。また、磁石の外周面と磁石挿入孔の内周面との間に介在された充填材によって、磁石に局所的に荷重が加わることを抑制しつつ該磁石をロータコアに対して固定することができる。更に、挿入積層孔における埋込磁石型ロータの回転方向の両端部とコアシートの外周面との間の部分では、1つ以上の磁気抵抗凹部からなる列が径方向に重なって層をなすように形成されるとともに、隣り合う列の磁気抵抗凹部は互いに繋がらないように埋込磁石型ロータの回転方向にずれている。そのため、最も径方向外側の列を構成する磁気抵抗凹部にまで充填材が流れ込むことが抑制される。従って、磁石から出た磁束が漏れ磁束となることを抑制しつつ、コアシートの積層方向に隣り合う薄肉部間の空間を通って充填材がロータコアの外周に漏れ出ることを抑制することができる。
【0026】
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の埋込磁石型ロータにおいて、複数の前記磁気抵抗凹部は、前記挿入積層孔から離間した位置に形成されていることをその要旨としている。
【0027】
同構成によれば、磁気抵抗凹部は、挿入積層孔に繋がらないため、充填材は磁気抵抗凹部に流れ込まない。従って、充填材の量を減少させつつ、磁石から出た磁束が漏れ磁束となることを抑制することができる。更に、充填材がロータコアの外周面に漏れ出ることを防止しつつ、磁石から出た磁束が漏れ磁束となることを抑制する薄肉部をコアシートに設けることができる。
【0028】
請求項12に記載の発明は、環状のステータと、前記ステータの内側に回転可能に配置された請求項1乃至請求項11の何れか1項に記載の埋込磁石型ロータを備えたブラシレスモータとしたことをその要旨としている。
【0029】
同構成によれば、漏れ磁束を低減できる埋込磁石型ロータを備えることにより、モータ効率の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、漏れ磁束を低減することができる埋込磁石型ロータ及び該ロータを備えたブラシレスモータを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】ブラシレスモータの断面図。
【図2】第1実施形態におけるステータ及び埋込磁石型ロータの断面図。
【図3】第1実施形態の埋込磁石型ロータの断面図(図2におけるA−A断面図)。
【図4】第2実施形態の埋込磁石型ロータの断面図(図5におけるB−B断面図)。
【図5】第2実施形態におけるステータ及び埋込磁石型ロータの断面図。
【図6】第2実施形態のステータコアの分解斜視図。
【図7】(a)は別の形態の埋込磁石型ロータの断面図、(b)は別の形態の埋込磁石型ロータの側面図。
【図8】別の形態の埋込磁石型ロータの断面図(図7(a)におけるC−C断面図)。
【図9】別の形態の埋込磁石型ロータの断面図。
【図10】別の形態の埋込磁石型ロータの断面図。
【図11】別の形態の埋込磁石型ロータの断面図。
【図12】別の形態の埋込磁石型ロータの断面図。
【図13】別の形態の埋込磁石型ロータの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を図面に従って説明する。
図1に示す本実施形態のモータMは、インナーロータ型のブラシレスモータである。モータケース1は、有底円筒状をなすケース本体2と、該ケース本体2の開口部を閉塞する略円板状のカバープレート3とから構成されている。
【0033】
ケース本体2の内周面には、円筒状(円環状)のステータ11が固定されている。ステータ11は、略円筒状のステータコア12と、該ステータコア12に巻装されたコイル13とを備えている。図1及び図2に示すように、ステータコア12は、ケース本体2に内嵌される円筒状のステータ固定部12aと、該ステータ固定部12aから径方向内側に延びる12本のティース12bとから構成されている。12本のティース12bは、周方向に等角度間隔(本実施形態では30°間隔)に設けられるとともに、これらティース12bに前記コイル13が巻装されている。
【0034】
前記ステータ11の内側には、埋込磁石型ロータ21(以下、ロータ21とする)が配置されている。ロータ21は、円柱状の回転軸22と、該回転軸22に一体回転可能に固定されたロータコア23と、該ロータコア23に埋め込まれた4個の磁石24とを備えている。
【0035】
回転軸22の基端部(図1において上側の端部)は、ケース本体2の底部中央に設けられた軸受25によって軸支される一方、同回転軸22の先端側の部位は、前記カバープレート3の径方向の中央部に設けられた軸受26によって軸支されている。そして、回転軸22は、ステータコア12の径方向内側で同ステータコア12と同心状に配置されている。また、回転軸22の先端部は、カバープレート3の径方向の中央部を貫通してモータケース1の外部に突出している。
【0036】
前記ロータコア23は、円筒状をなすとともに、同ロータコア23の外径は、ステータコア12の内径よりも若干小さい値となっている。また、ロータコア23の径方向の中央部に形成された固定孔23aは、ロータコア23を軸方向に貫通するとともに、該固定孔23aの内径は、回転軸22の外径よりも若干小さい値となっている。
【0037】
また、ロータコア23における固定孔23aよりも径方向外側の部分には、周方向に等角度間隔(本実施形態では90°間隔)となる4箇所に、磁石挿入孔23bが形成されている。これらの磁石挿入孔23bは、ロータコア23において、該ロータコア23の外周面寄りの位置に形成されている。各磁石挿入孔23bは、ロータコア23を軸方向(ロータコア23の回転中心線X1方向に同じ)に貫通するとともに、軸方向から見た形状が周方向(ロータ21の回転方向に同じ)に長い長方形状をなしている。そして、各磁石挿入孔23bの内周面は、軸方向に延びる略四角筒状をなしている。
【0038】
また、ロータコア23において、周方向に隣り合う磁石挿入孔23bの間の部位は、疑似磁極23cとなっている。4つの磁石挿入孔23bが周方向に等角度間隔に形成されているため、ロータコア23において周方向に等角度間隔(本実実施形態では周方向に90°間隔)となる4箇所に疑似磁極23cがそれぞれ設けられている。そして、疑似磁極23cと磁石挿入孔23bとは、ロータコア23の周方向に交互に並んでいる。
【0039】
このようなロータコア23は、磁性体よりなる金属板材から形成された薄板状のコアシート27を軸方向に複数枚積層して形成されている。
コアシート27は、円環状の板状をなしている。このコアシート27の外径は、ステータコア12の内径よりも若干小さい値となっている。そして、コアシート27の径方向の中央部に形成された固定積層孔27aは、コアシート27を軸方向(コアシート27の厚さ方向に同じ)に貫通するとともに、該固定積層孔27aの内径は、前記回転軸22の外径よりも若干小さい値となっている。
【0040】
また、コアシート27における固定積層孔27aよりも径方向外側の部分には、周方向に等角度間隔(本実施形態では90°間隔)となる4箇所に、挿入積層孔27bが形成されている。これらの挿入積層孔27bは、コアシート27において、該コアシート27の外周面寄りの位置に形成されている。各挿入積層孔27bは、コアシート27を軸方向に貫通するとともに、軸方向から見た形状が周方向に長い長方形状をなしている。
【0041】
また、コアシート27において、周方向に隣り合う挿入積層孔27bの間の部位は、磁極構成部27cとなっている。4つの挿入積層孔27bが周方向に等角度間隔に形成されているため、コアシート27において周方向に等角度間隔(本実実施形態では周方向に90°間隔)となる4箇所に磁極構成部27cがそれぞれ設けられている。そして、磁極構成部27cと挿入積層孔27bとは、コアシート27の周方向に交互に並んでいる。
【0042】
また、図2及び図3に示すように、コアシート27には、該コアシート27における挿入積層孔27bの周方向(ロータ21の回転方向に同じ)の両端部とコアシート27の外周面との間の部分に薄肉部27dがそれぞれ形成されている。薄肉部27dは、コアシート27における挿入積層孔27bの周方向の中央部とコアシート27の外周面との間の部分(即ち、挿入積層孔27bの周方向の両端側に設けられた2つの薄肉部27dの間の部分)よりも板厚(肉厚)が薄く形成されている。尚、コアシート27において、薄肉部27d以外の部分は、板厚が一定となっている。また、薄肉部27dは、挿入積層孔27bの周方向の両端部からコアシート27の外周縁に亘ってコアシート27の厚さ方向の一端部に形成されている。ここで、コアシート27における軸方向の両端面のうち一方の端面を第1端面S1とし、他方の端面を第2端面S2とする。薄肉部27dは、コアシート27における挿入積層孔27bの周方向の両端部からコアシート27の外周縁に亘る部分に、第2端面S2側に開口する凹部を形成することにより、コアシート27におけるその他の部位よりも肉薄に形成されている。更に、薄肉部27dは、その径方向内側の端部において、コアシート27における挿入積層孔27bよりも内周側の部分に対して軸方向に屈曲されている。そして、薄肉部27dは、挿入積層孔27b側の端部(径方向内側の端部)からコアシート27の外周側の端部(径方向外側の端部)に向かうに連れてコアシート27の厚さ方向の他端側(第2端面S2側)に近づくように傾斜している。
【0043】
上記のようなコアシート27を形成するには、まず、磁性体よりなる金属板材をプレス加工により打ち抜いて、径方向内側の端部が屈曲されていない薄肉部27dを有するコアシートを形成する。このとき、薄肉部27dは、プレス加工により金属板材を厚さ方向に潰して薄く形成される。その後、このコアシートに、薄肉部27dの径方向内側の端部を屈曲するプレス加工を施すことにより、コアシート27が完成する。
【0044】
そして、複数枚のコアシート27は、表裏交互に軸方向に積層されている。詳しくは、積層方向に隣り合うコアシート27は、第1端面S1同士若しくは第2端面S2同士を当接させている。そして、本実施形態では、コアシート27は、偶数枚積層されるとともに、ロータコア23の軸方向の両端部に位置する1枚ずつのコアシート27は、その第2端面S2がロータコア23の軸方向の中央部側を向き、その第1端面S1がロータコア23の軸方向の端面を形成するように積層されている。また、複数枚のコアシート27は、固定積層孔27aが軸方向に並ぶように、各コアシート27に形成された4つの挿入積層孔27bがそれぞれ軸方向に並ぶように、更に、各コアシート27に形成された4つの磁極構成部27cがそれぞれ軸方向に積層されるように積層されている。そして、ロータコア23は、積層された複数枚のコアシート27を軸方向にかしめて一体化して形成されている。
【0045】
このロータコア23においては、軸方向に並ぶ複数の固定積層孔27aによって固定孔23aが形成されるとともに、軸方向に並ぶ複数の挿入積層孔27bによって磁石挿入孔23bが形成されている。更に、軸方向に積層された複数の磁極構成部27cによって疑似磁極23cが形成されている。また、ロータコア23において、磁石挿入孔23bの周方向の両端部とロータコア23の外周面との間の部分には、薄肉部27dが軸方向(コアシート27の積層方向)に並んだ磁気抵抗部23dが形成されている。
【0046】
また、ロータコア23の軸方向の一方側から順に2枚ずつのコアシート27においては、コアシート27の積層方向(軸方向)に隣り合いロータコア23の外周側に向かうに連れてコアシート27の積層方向に互いに近づく薄肉部27dの外周側の端部が互いに当接している。ロータコア23には、該ロータコア23を構成するコアシート27に薄肉部27dが形成されたことにより、コアシート27の積層方向に隣り合う薄肉部27d間に磁石挿入孔23bに繋がる空間23fが形成される。本実施形態では、各空間23fの軸方向(コアシート27の積層方向)の両側に存在する2つの薄肉部27dが、その径方向外側の端部を互いに当接させることで、当該空間23fを閉塞している。即ち、薄肉部27dは、空間23fを介して磁石挿入孔23bの内部空間とロータコア23の外部空間とが連通されないように空間23fを閉塞している。
【0047】
そして、図1に示すように、ロータコア23は、固定孔23aに回転軸が圧入されて該回転軸22に外嵌されることにより、該回転軸22に対して一体回転可能に固定されている。更に、ロータコア23は、モータケース1の内部において、ステータコア12と径方向に対向している。そして、ステータコア12の内周面(即ち、ティース12bの先端面)とロータコア23の外周面との間には、エアギャップが設けられている。
【0048】
図2及び図3に示すように、ロータコア23の4個の磁石挿入孔23bには、それぞれ前記磁石24が挿入されている。各磁石24は、ロータコア23の軸方向に長い直方体の板状をなすとともに、その軸方向の長さは、ロータコア23の軸方向の長さと等しく形成されている。また、各磁石24の外周面の形状は、磁石挿入孔23bの略四角筒状の内周面よりも僅かに小さい四角筒状をなしている。
【0049】
また、各磁石24の外周面と、各磁石24が挿入された磁石挿入孔23bの内周面との間の隙間には、充填材28が充填されている。この充填材28は、磁石挿入孔23bから空間23fにも流れ込み、該空間23f内にも充填されている。そして、磁石24の外周面と磁石挿入孔23bの内周面との間に介在されたこの充填材28によって、各マグネットは、それぞれ磁石挿入孔23bの内周面に対して固定、即ちロータコア23に対して固定されている。尚、充填材28は、固定用の樹脂材料(接着剤を含む)である。
【0050】
これらのマグネットは、本実施形態では、径方向外側の端部がN極、径方向内側の端部がS極となるようにそれぞれ着磁されている。従って、本実施形態のロータ21では、S極及びN極のうちN極の磁極の磁石24がロータコア23に対して周方向に4個配置されている。そして、各磁石24が磁石挿入孔23bに挿入されることにより、周方向に隣り合う磁石24間にそれぞれ疑似磁極23cが配置され、その結果、N極の磁石24と疑似磁極23cとが周方向に交互に配置される。疑似磁極23cを有するロータコア23に対して磁石24がこのように配置されることにより、疑似磁極23cは、擬似的にS極として機能する。即ち、本実施形態のロータ21は、一方の磁極の磁石24と他方の磁極として機能する疑似磁極23cとが周方向に交互に配置されたコンシクエントポール型のロータである。
【0051】
図1に示すように、前記回転軸22には、同回転軸22の先端面(図1において下端面)とロータコア23との間となる位置に、環状のセンサマグネット31が同回転軸22と一体回転可能に固定されている。センサマグネット31は、N極とS極とが周方向に交互となるように着磁されている。
【0052】
また、前記カバープレート3の内側面には、モータMを制御するための図示しない回路素子が搭載された回路基板32が固定されている。この回路基板32上には、前記センサマグネット31と軸方向に対向するようにホールセンサ33が配置されている。ホールセンサ33は、ホール素子を備えたホールICである。また、回路基板32は、モータMの外部に設けられる駆動制御回路(図示略)に電気的に接続される。
【0053】
次に、本実施形態のモータMの作用を、ロータ21の作用と合わせて記載する。
モータMでは、コイル13に電源が供給されると、ステータ11にて発生される回転磁界に応じてロータ21が回転される。そして、ホールセンサ33は、ロータ21の回転軸22と一体回転するセンサマグネット31の磁界の変化を検出するとともに、検出した磁界の変化に応じたパルス信号である回転検出信号を駆動制御回路に出力する。駆動制御回路は、この回転検出信号に基づいて、ロータ21の回転情報(回転速度、回転位置等)を検出する。そして、駆動制御回路は、検出したロータ21の回転情報に基づいて、ロータ21の回転速度が所望の回転速度となるようにステータ11に供給する電源を制御する。従って、ロータ21の回転状態に応じて駆動制御回路からコイル13に電源が供給される。
【0054】
また、ロータコア23を構成するコアシート27において、薄肉部27dは、コアシート27における挿入積層孔27bの周方向の中央部とコアシート27の外周面との間の部分よりも板厚が薄く形成されている。従って、各コアシート27において、薄肉部27dは、コアシート27における挿入積層孔27bの周方向の中央部とコアシート27の外周面との間の部分よりも磁気抵抗が大きくなっている。そのため、ロータコア23において、薄肉部27dが軸方向に並んだ磁気抵抗部23dは、ロータコア23における磁石挿入孔23bの周方向の中央部とロータコア23の外周面との間の部分よりも磁気抵抗が大きい。そして、薄肉部27dから構成された磁気抵抗部23dは、磁石24の径方向外側の端部(N極)から出た磁束の一部が、ロータコア23における磁石24の周方向の両側の部分を通って同磁石24の径方向内側の端部(S極)に戻る経路C1の途中に設けられている。更に、同磁気抵抗部23dは、磁石24の径方向外側の端部から出た磁束の一部が、磁石24の周方向の両側且つロータコア23の外周となるところ(図2において破線で囲まれた領域α参照)へ向かう経路C2の途中に設けられている。経路C1及び経路C2を辿る磁束は、漏れ磁束となる磁束である。従って、経路C1及び経路C2の途中となる位置、即ち、各コアシート27における挿入積層孔27bの周方向の両端部とコアシート27の外周面との間に、薄肉部27dを設けたことにより、磁石24から出て経路C1及び経路C2を辿る磁束、即ち漏れ磁束を減少させることができる。
【0055】
また、各コアシート27に薄肉部27dを形成したことによりロータコア23に形成された空間23fは、コアシート27の積層方向に隣り合い径方向外側の端部が互いに当接した薄肉部27dによって閉塞されている。従って、ロータ21を製造する際、固化する前の流体状の充填材28を磁石挿入孔23b内に注入したときに、磁石挿入孔23bから空間23fに流れ込んだ充填材28は、径方向外側の端部が互いに当接した薄肉部27dによって空間23fからロータコア23の外周に漏れ出ることが阻止される。
【0056】
上記したように、本第1実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)各コアシート27において、挿入積層孔27bの周方向(ロータ21の回転方向)の両端部とコアシート27の外周面との間に形成された薄肉部27dは、挿入積層孔27bの周方向の中央部とコアシート27の外周面との間の部分よりも磁気抵抗が大きい。このような薄肉部27dを有するコアシート27を積層して形成されたロータコア23には、磁石挿入孔23bの周方向の両端部(即ち磁石24の周方向の両端部)とロータコア23の外周面との間に、磁石挿入孔23bの周方向の中央部とロータコア23の外周面との間の部分よりも磁気抵抗の大きい部分(即ち磁気抵抗部23d)が形成される。従って、ロータコア23において、磁石挿入孔23bの周方向の両端部(即ち磁石24の周方向の両端部)とロータコア23の外周面との間の部分を通る磁束を減少させることができる。よって、磁石24から出た磁束の一部が、ロータコアの外部に出ることなく同ロータコア23における同磁石24を囲む部分を通って(即ち経路C1を辿って)同磁石24に戻ってしまうことを抑制できる。その結果、このロータ21において漏れ磁束を低減することができる。
【0057】
(2)磁石24の外周面と磁石挿入孔23bの内周面との間に介在された充填材28によって、磁石24に局所的に荷重が加わることを抑制しつつ該磁石24をロータコア23に対して固定することができる。また、各コアシート27に薄肉部27dが形成されたことによりコアシート27の積層方向に隣り合う薄肉部27d間に形成され磁石挿入孔23bに繋がる空間23fは、径方向外側の端部が互いに当接した薄肉部27dによって閉塞されている。空間23fが、磁石挿入孔23bの内部とロータコア23の外部とを連通した状態であると、ロータ21の製造時に、固化する前の流体状の充填材28が磁石挿入孔23bから空間23fを通ってロータコア23の外周に漏れ出る虞がある。そこで、本実施形態のように、コアシート27の薄肉部27dによって空間23fを閉塞することで、磁石24から出た磁束が漏れ磁束となることを抑制しつつ、空間23fを通って充填材28がロータコア23の外周に漏れ出ることを抑制することができる。
【0058】
(3)薄肉部27dが傾斜しているため、複数枚のコアシート27を、コアシート27の積層方向に隣り合う薄肉部27d同士がロータコア23の外周側に向かうに連れてコアシート27の積層方向に互いに近づき、該薄肉部27d同士の外周側の端部が互いに当接するように容易に積層することができる。即ち、薄肉部27dが傾斜した1種類のコアシート27を、表裏交互に積層することで、薄肉部27dの径方向外側の端部を容易に当接させることができる。従って、空間23fを容易に閉塞でき、その結果、充填材28がロータコア23の外周に漏れることを容易に抑制できる。
【0059】
(4)漏れ磁束を低減できるロータ21をモータMに備えることにより、モータ効率の低下を抑制することができる。
(5)各コアシート27において、挿入積層孔27bの周方向の両端部とコアシート27の外周面との間の部分の磁気抵抗を大きくするために、この部分に貫通孔を形成することが考えられる。しかしながら、各コアシート27における挿入積層孔27bの周方向の両端部とコアシート27の外周面との間の部分に貫通孔を形成すると、ロータコア23の強度が低下してしまう。そこで、本実施形態のように、各コアシート27における挿入積層孔27bの周方向の両端部とコアシート27の外周面との間の部分に、肉厚の薄い薄肉部27dを設けることにより、ロータコア23の強度の低下を抑制しつつ漏れ磁束を低減させることができる。
【0060】
(第2実施形態)
以下、本発明を具体化した第2実施形態を図面に従って説明する。尚、本第2実施形態では、上記第1実施形態と同一の構成に同一の符号を付してその説明を省略する。
【0061】
図5に示す本第2実施形態の埋込磁石型ロータ81(以下ロータ81とする)は、上記第1実施形態の埋込磁石型ロータ21に代えてモータMに備えられるものである。
図5及び図6に示すように、ロータ81のロータコア82を構成するコアシート83は、上記第1実施形態のコアシート27において薄肉部27dに代えて複数の磁気抵抗凹部83aを備えた形状をなしている。複数の磁気抵抗凹部83aは、コアシート83において、挿入積層孔27bにおける周方向(ロータ81の回転方向に同じ)の両端部とコアシート83の外周面との間の部分に形成されている。各磁気抵抗凹部83aは、コアシート83の厚さ方向の一端面である第1端面S3に開口するように、コアシート83の厚さ方向に沿って第1端面S3からコアシート83の厚さ方向の他端面である第2端面S4側に凹設されている。また、各磁気抵抗凹部83aは、軸方向(コアシート83の厚さ方向に同じであって、ロータコア82の回転中心線方向に同じ)から見た形状が四角形状をなしている。
【0062】
そして、コアシート83において、挿入積層孔27bにおける周方向の両端部とコアシート83の外周面との間の部分では、1つ以上の磁気抵抗凹部83aが周方向に沿うように並んだ列が径方向(ロータ81の回転方向と直交する方向)に重なって層をなしている。本実施形態では、磁気抵抗凹部83aからなる列は、各挿入積層孔27bの周方向の端部とコアシート83の外周面との間にそれぞれ3列ずつ形成されている。そして、径方向に層をなす3つの列のうち最も径方向内側の列は、1つの磁気抵抗凹部83aからなる。また、径方向に層をなす3つの列のうち中央の列と最も径方向外側の列は、それぞれ周方向に間隔を置いて並ぶ2つの磁気抵抗凹部83aからなる。そして、径方向に隣り合う列においては、一方の列の磁気抵抗凹部83aと他方の列の磁気抵抗凹部83aとが、互いに繋がらないように周方向にずれている。本実施形態では、各磁気抵抗凹部83aの周方向の幅が等しく形成されるとともに、周方向に隣り合う磁気抵抗凹部83a間の部分の周方向の幅が各磁気抵抗凹部83aの周方向の幅と等しく形成されている。そのため、複数の磁気抵抗凹部83aは、コアシート83を軸方向から見ると市松模様となるように形成されている。また、径方向に層をなす3つの列のうち最も径方向内側の列を構成する1つの磁気抵抗凹部83aは、挿入積層孔27bと周方向に隣り合うとともに、その内部空間が挿入積層孔27bの内部空間と繋がっている。更に、中央の列を構成する2つの磁気抵抗凹部83aのうち挿入積層孔27bの周方向の中央に近い方の1つの磁気抵抗凹部83aは、挿入積層孔27bの周方向の端部と径方向に隣り合うとともに、その内部空間が挿入積層孔27bの内部空間と繋がっている。
【0063】
また、図4に示すように、コアシート83において、各磁気抵抗凹部83aの底部、即ち、各磁気抵抗凹部83aの底面と第2端面S4との間の部分は、コアシート83における挿入積層孔27bの周方向の中央部とコアシート83の外周面との間の部分よりも板厚(肉厚)の薄い薄肉部83bとなっている。そして、コアシート83において、薄肉部83b以外の部分は板厚が一定となっている。
【0064】
上記のような磁気抵抗凹部83aは、プレス加工によりコアシート83を構成する金属板材(磁性体よりなる金属板材)を厚さ方向に部分的に潰すことにより形成されている。そして、複数枚のコアシート83は、全て同じ方向を向くように積層されてロータコア82を構成している。このロータコア82において、磁石挿入孔23bの周方向の両端部とロータコア82の外周面との間の部分には、複数の磁気抵抗凹部83aが軸方向に並ぶことにより薄肉部83bが軸方向(コアシート83の積層方向)に並んだ磁気抵抗部82aが形成されている。更に、挿入積層孔27bに繋がる磁気抵抗凹部83aが軸方向に複数並んだ部分においては、当該磁気抵抗凹部83aの底部である薄肉部83bが磁気抵抗凹部83aの分だけ離間して軸方向に複数並ぶ。そのため、積層方向(軸方向)に隣り合う当該薄肉部83b間に磁石挿入孔23bに繋がる空間23fが形成される。また、積層方向(軸方向に同じ)に隣り合うコアシート83同士は、積層方向に対向する第1端面S3と第2端面S4とが互いに当接している。そして、各磁気抵抗凹部83aの第1端面S3に開口した開口部は、積層方向に隣り合うコアシート83の第2端面S4によって閉塞されている。即ち、本実施形態では、第2端面S4が閉塞部を構成している。従って、コアシート83に薄肉部83bが形成されたことにより積層方向に隣り合う薄肉部83b間に形成され磁石挿入孔23bに繋がる前記空間23f、即ち挿入積層孔27bに繋がる磁気抵抗凹部83aの内部空間は第2端面S4によって閉塞されており、該空間23fを介して磁石挿入孔23bの内部空間とロータコア82の外部空間とが連通されないようになっている。
【0065】
また、ロータコア82の磁石挿入孔23bに挿入された磁石24の外周面と磁石挿入孔23bとの間には、充填材28が介在(充填)されており、該充填材28によって磁石24はロータコア82に固定されている。更に、この充填材28は、磁石挿入孔23bから空間23fにも流入している。
【0066】
次に、本実施形態のロータ81の作用を記載する。
図4乃至図6に示すように、ロータコア82を構成するコアシート83において、薄肉部83bは、コアシート83における挿入積層孔27bの周方向の中央部とコアシート83の外周面との間の部分よりも板厚が薄く形成されている。従って、各コアシート83において、薄肉部83bは、コアシート83における挿入積層孔27bの周方向の中央部とコアシート83の外周面との間の部分よりも磁気抵抗が大きくなっている。そのため、ロータコア82において、薄肉部83bが軸方向に並んだ磁気抵抗部82aは、ロータコア82における磁石挿入孔23bの周方向の中央部とロータコア82の外周面との間の部分よりも磁気抵抗が大きい。そして、磁気抵抗部82aは、磁石24の径方向外側の端部(N極)から出た磁束の一部が、ロータコア82における磁石24の周方向の両側の部分を通って同磁石24の径方向内側の端部(S極)に戻る経路C1の途中に設けられている。更に、同磁気抵抗部23dは、磁石24の径方向外側の端部から出た磁束の一部が、磁石24の周方向の両側且つロータコア23の外周となるところ(図5において破線で囲まれた領域α参照)へ向かう経路C2の途中に設けられている。経路C1及び経路C2を辿る磁束は、漏れ磁束となる磁束である。従って、経路C1及び経路C2の途中となる位置、即ち、各コアシート83における挿入積層孔27bの周方向の両端部とコアシート83の外周面との間に、薄肉部83bを設けたことにより、磁石24から出て経路C1及び経路C2を辿る磁束、即ち漏れ磁束を減少させることができる。
【0067】
また、各コアシート83に薄肉部83bを形成したことによりロータコア82に形成された空間23fは、第2端面S4によって閉塞されている。従って、ロータ81を製造する際、固化する前の流体状の充填材28を磁石挿入孔23b内に注入したときに、磁石挿入孔23bから空間23fに流れ込んだ充填材28は、該空間23fの周囲の第2端面S4と磁気抵抗凹部83aの内周面とによって空間23fからロータコア23の外周に漏れ出ることが阻止される。
【0068】
上記したように、本第2実施形態によれば、上記第1実施形態の(1),(2),(4),(5)と同様の効果に加えて以下の効果を有する。
(6)挿入積層孔27bにおける周方向の両端部とコアシート83の外周面との間の部分に複数の磁気抵抗凹部83aを形成することで、複数の磁気抵抗凹部83aが形成された範囲を全体的に肉厚が薄くなるように形成する場合(例えば上記第1実施形態の薄肉部27dを形成する場合)に比べて、より小さな圧力でコアシート83に肉薄部を形成することができる。その結果、コアシート83を形成する設備の小型化が可能になるとともに、薄肉部83bをコアシート83に設けたことによる同コアシート83の歪みを小さく抑えることができる。また、磁石24の外周面と磁石挿入孔23bの内周面との間に介在された充填材28によって、磁石24に局所的に荷重が加わることを抑制しつつ該磁石24をロータコア82に対して固定することができる。更に、挿入積層孔27bにおける周方向の両端部とコアシート83の外周面との間の部分では、1つ以上の磁気抵抗凹部83aからなる列が径方向に重なって層をなすように形成されるとともに、隣り合う列の磁気抵抗凹部83aは互いに繋がらないように周方向にずれている。そのため、最も径方向外側の列を構成する磁気抵抗凹部83aにまで充填材28が流れ込むことが抑制される。従って、磁石24から出た磁束が漏れ磁束となることを抑制しつつ、コアシート83の積層方向に隣り合う薄肉部83b間の空間23fを通って充填材28がロータコア82の外周に漏れ出ることを抑制することができる。
【0069】
尚、本発明の各実施形態は、以下のように変更してもよい。
・挿入積層孔27bにおける周方向の両端部とコアシート83の外周面との間の部分に形成される磁気抵抗凹部83aは、上記第2実施形態の形状に限らない。例えば、図7(a)に示す埋込磁石型ロータ91(以下ロータ91とする)のロータコア92を構成するコアシート93は、上記第2実施形態のコアシート83において複数の磁気抵抗凹部83aに代えて複数の第1磁気抵抗凹部93a及び複数の第2磁気抵抗凹部93bを備えた形状をなしている。複数の第1磁気抵抗凹部93a及び複数の第2磁気抵抗凹部93bは、コアシート93において、挿入積層孔27bにおける周方向(ロータ91の回転方向に同じ)の両端部とコアシート93の外周面との間の部分に形成されている。図7(b)及び図8に示すように、各第1磁気抵抗凹部93aは、コアシート93の厚さ方向の一端面である第1端面S5に開口するように、コアシート93の厚さ方向に沿って第1端面S5からコアシート93の厚さ方向の他端面である第2端面S6側に凹設されている。一方、各第2磁気抵抗凹部93bは、第2端面S6に開口するように、コアシート93の厚さ方向に沿って第2端面S6から第1端面S5側に凹設されている。また、各第1磁気抵抗凹部93a及び各第2磁気抵抗凹部93bは、軸方向(コアシート93の厚さ方向に同じであって、ロータコア92の回転中心線方向に同じ)から見た形状が円形状をなしている。
【0070】
そして、図7(a)に示すように、コアシート93において、挿入積層孔27bにおける周方向の両端部とコアシート93の外周面との間の部分では、1つ以上の第1磁気抵抗凹部93aが周方向に沿うように並んだ列と、1つ以上の第2磁気抵抗凹部93bが周方向に沿うように並んだ列とが径方向(ロータ91の回転方向と直交する方向)に交互に重なって層をなしている。本例では、第1磁気抵抗凹部93aからなる列は、各挿入積層孔27bの周方向の端部とコアシート93の外周面との間にそれぞれ2列ずつ形成されている。そして、第1磁気抵抗凹部93aからなる各列は、周方向に間隔を置いて並ぶ3つの第1磁気抵抗凹部93aからなるとともに、第1磁気抵抗凹部93aからなる各列において3つの第1磁気抵抗凹部93aは等間隔に形成されている。更に、各挿入積層孔27bの周方向の端部とコアシート93の外周面との間にそれぞれ形成された第1磁気抵抗凹部93aからなる2つの列の間に、第2磁気抵抗凹部93bからなる列が1列形成されている。第2磁気抵抗凹部93bからなる列は、周方向に間隔を置いて並ぶ2つの第2磁気抵抗凹部93bからなるとともに、当該列において周方向に隣り合う2つの第2磁気抵抗凹部93b間の間隔は、第1磁気抵抗凹部93aからなる各列において周方向に隣り合う第1磁気抵抗凹部93a間の間隔と等しくなっている。また、径方向に隣り合う列においては、第1磁気抵抗凹部93aと第2磁気抵抗凹部93bとが繋がらないように一方の列の第1磁気抵抗凹部93aと他方の列の第2磁気抵抗凹部93bとが周方向にずれている。従って、コアシート93を軸方向から見ると、径方向に隣り合う2つの列においては、第1磁気抵抗凹部93aの中心と第2磁気抵抗凹部93bの中心とは、コアシート93の中心を通り直径方向に延びる同一直線上に位置しない。尚、径方向に隣り合う2つの列において、周方向に隣り合う2つの第1磁気抵抗凹部93aの間に位置する第2磁気抵抗凹部93bは、当該2つの第1磁気抵抗凹部93aと繋がらないが、部分的に(第2磁気抵抗凹部93bにおけるロータ91の回転方向の両端部が)当該2つの第1磁気抵抗凹部93aと径方向に重なっている。また、最も径方向内側の列を構成する各第1磁気抵抗凹部93aは、それぞれ挿入積層孔27bの周方向の端部と隣り合うが、該挿入積層孔27bから離間した位置に形成されている。そして、最も径方向内側の列よりも径方向外側の列を構成する第1磁気抵抗凹部93a及び第2磁気抵抗凹部93bも、挿入積層孔27bから離間した位置に形成されている。
【0071】
図8に示すように、コアシート93において、各第1磁気抵抗凹部93aの底部、即ち、各第1磁気抵抗凹部93aの底面と第2端面S6との間の部分は、コアシート93における挿入積層孔27bの周方向の中央部とコアシート93の外周面との間の部分よりも板厚(肉厚)の薄い第1薄肉部93cとなっている。同様に、コアシート93において、各第2磁気抵抗凹部93bの底部、即ち、各第2磁気抵抗凹部93bの底面と第1端面S5との間の部分は、コアシート93における挿入積層孔27bの周方向の中央部とコアシート93の外周面との間の部分よりも板厚(肉厚)の薄い第2薄肉部93dとなっている。そして、コアシート93において、第1薄肉部93c及び第2薄肉部93d以外の部分は板厚が一定となっている。
【0072】
このような第1磁気抵抗凹部93a及び第2磁気抵抗凹部93bは、プレス加工によりコアシート93を構成する金属板材を厚さ方向に部分的に潰すことにより形成されている。そして、複数枚のコアシート93は、全て同じ方向を向くように積層されてロータコア92を構成している。このロータコア92において、磁石挿入孔23bの周方向の両端部とロータコア92の外周面との間の部分には、複数の第1磁気抵抗凹部93a及び複数の第2磁気抵抗凹部93bがそれぞれ軸方向に並ぶことにより第1薄肉部93c及び第2薄肉部93dがそれぞれ軸方向(コアシート93の積層方向)に並んだ磁気抵抗部92aが形成されている。また、積層方向(軸方向に同じ)に隣り合うコアシート93同士は、積層方向に対向する第1端面S5と第2端面S6とが互いに当接している。そして、各第1磁気抵抗凹部93aの第1端面S5に開口した開口部は、積層方向に隣り合うコアシート93の第2端面S6によって閉塞されている。同様に、各第2磁気抵抗凹部93bの第2端面S6に開口した開口部は、積層方向に隣り合うコアシート93の第1端面S5によって閉塞されている。また、ロータコア92の磁石挿入孔23bに挿入された磁石24の外周面と磁石挿入孔23bとの間には、充填材28が介在(充填)されており、該充填材28によって磁石24はロータコア92に固定されている。
【0073】
このようにすると、上記第1実施形態の(1),(4),(5)及び上記第2実施形態の(6)と同様の効果を得ることができる。更に、第1磁気抵抗凹部93a及び第2磁気抵抗凹部93bは挿入積層孔27bに繋がらないため、充填材28は第1磁気抵抗凹部93a及び第2磁気抵抗凹部93bに流れ込まない。従って、上記各実施形態のように空間23fに流れ込む充填材28を無くすことができるため、充填材28の量を減少させつつ、磁石24から出た磁束が漏れ磁束となることを抑制することができる。更に、充填材28がロータコア92の外周面に漏れ出ることを防止しつつ、磁石24から出た磁束が漏れ磁束となることを抑制する第1薄肉部93c及び第2薄肉部93dをコアシート93に設けることができる。
【0074】
また、第1磁気抵抗凹部93aは第1端面S5側からコアシート93を凹設して形成されるとともに、第2磁気抵抗凹部93bは第2端面S6側からコアシート93を凹設して形成されている。そのため、第1薄肉部93cと第2薄肉部93dとがコアシート93の厚さ方向にずれている。従って、各コアシート93における挿入積層孔27bの周方向の両端部とコアシート93の外周面との間の形状が複雑になり、コアシート93の内部を通って挿入積層孔27bの周方向の両端部からコアシート93の外周面に至る経路が長くなる。そのため、磁石24の磁束は、磁気抵抗部92aを通って磁石挿入孔23bの周方向の両端部からロータコア82の外周面の方へより流れ難くなるため、磁気抵抗部92aを通って磁石挿入孔23bの周方向の両端部からロータコア92の外周面の方へ流れる磁束(即ち経路C2を辿る磁束)がより減少される。従って、磁石24の周方向の両側且つロータコア92の外周となるところへ流れていく漏れ磁束をより低減することができる。
【0075】
尚、第2磁気抵抗凹部93bは、第1磁気抵抗凹部93aと同様に第1端面S5に開口するように形成してもよい。
・上記第2実施形態では、挿入積層孔27bにおける周方向の両端部とコアシート83の外周面との間の部分には、1つ以上の磁気抵抗凹部83aが周方向に沿うように並んだ列が径方向に層をなすように3列形成されている。しかし、1つ以上の磁気抵抗凹部83aが周方向に沿うように並ぶ列は、コアシート83において、挿入積層孔27bにおける周方向の両端部とコアシート83の外周面との間の部分に、径方向に層をなすように2列以上形成されればよい。この場合においても、径方向に隣り合う列は、一方の列の磁気抵抗凹部83aと他方の列の磁気抵抗凹部83aとが互いに繋がらないように周方向にずれる。このようにしても上記第2実施形態の(6)と同様の効果を得ることができる。
【0076】
・薄肉部27dは、各コアシート27において、挿入積層孔27bにおける周方向(ロータ21の回転方向に同じ)の両端部とコアシート27の外周面との間に形成されるのであれば、上記第1実施形態の形状に限らない。
【0077】
例えば、図9に示す埋込磁石型ロータ41(以下ロータ41とする)のロータコア42を構成するコアシート43は、上記第1実施形態のコアシート27において薄肉部27dに代えて薄肉部44を備えた形状をなしている。薄肉部44は、コアシート43において、挿入積層孔27bにおける周方向(ロータ41の回転方向に同じ)の両端部とコアシート43の外周面との間に形成されている。そして、薄肉部44は、挿入積層孔27bの周方向の両端部から外周側に延び挿入積層孔27bと隣接する第1薄肉部44aと、該第1薄肉部44aよりもコアシート43の外周側に形成され第1薄肉部44aから離間した第2薄肉部44bとから構成されている。第1薄肉部44aは、コアシート43の厚さ方向の一端部に形成されるとともに、第2薄肉部44bは、コアシート43の厚さ方向の他端部に形成されている。そして、第1薄肉部44aと第2薄肉部44bとは、径方向の長さが等しく形成されている。このような薄肉部44は、プレス加工によりコアシート43を構成する金属板材を厚さ方向に潰して薄くすることにより形成されている。また、コアシート43において、第1薄肉部44aと第2薄肉部44bとの間の部分は閉塞部45となっている。閉塞部45は、コアシート43の厚さ方向に薄く形成されず、閉塞部45におけるコアシート43の厚さ方向の幅T1は、コアシート43における挿入積層孔27bよりも内周側の部分の厚さT2と等しい。また、閉塞部45におけるコアシート43の厚さ方向の幅T1は、コアシート43における挿入積層孔27bの周方向の中央部とコアシート43の外周面との間の厚さと等しい。
【0078】
そして、コアシート43は、全て同じ方向を向くように積層されてロータコア42を構成している。積層方向(軸方向に同じ)に隣り合うコアシート43同士は、互いの閉塞部45が積層方向に当接している。そして、互いに当接した閉塞部45は、第1薄肉部44aが形成されたことにより積層方向に隣り合う第1薄肉部44a間に形成され磁石挿入孔23bに繋がる空間23fを閉塞している。また、ロータコア42の磁石挿入孔23bに挿入された磁石24の外周面と磁石挿入孔23bとの間には、充填材28が介在(充填)されており、該充填材28によって磁石24はロータコア42に固定されている。更に、この充填材28は、磁石挿入孔23bから空間23fにも流入している。
【0079】
このようにすると、上記第1実施形態の(1),(2)(4),(5)と同様の効果を得ることができる。また、第1薄肉部44aと第2薄肉部44bとを離間して形成することにより、第1薄肉部44aと第2薄肉部44bとの間に容易に閉塞部45を形成することができる。また、閉塞部45におけるコアシート43の厚さ方向の幅T1は、コアシート43における挿入積層孔27bよりも内周側の部分の厚さT2と等しいため、複数枚のコアシート43を積層するだけで、積層方向に隣り合うコアシート43の閉塞部45同士を当接させることができる。従って、コアシート43に薄肉部44が形成されたことによりコアシート43の積層方向に隣り合う第1薄肉部44a間に形成され磁石挿入孔23bに繋がる空間23fを閉塞部45によって容易に閉塞することができ、充填材28がロータコア42の外周に漏れることを容易に抑制できる。そして、上記第1実施形態のように薄肉部27dの径方向内側の端部を屈曲する等の複雑な加工を行わなくとも、容易に閉塞部45を形成することができる。
【0080】
更に、第1薄肉部44aと第2薄肉部44bとがコアシート43の厚さ方向にずれているため、各コアシート43における挿入積層孔27bの周方向の両端部とコアシート43の外周面との間の形状が複雑になり、挿入積層孔27bの周方向の両端部からコアシート43の外周面に至る経路が長くなる。そのため、磁石24の磁束は、薄肉部44を通って、磁石挿入孔23bの周方向の両端部からロータコア42の外周面の方へより流れ難くなるため、薄肉部44を通って磁石挿入孔23bの周方向の両端部からロータコア42の外周面の方へ流れる磁束(即ち経路C2を辿る磁束)がより減少される。従って、磁石24の周方向の両側且つロータコア42の外周となるところへ流れていく漏れ磁束をより低減することができる。
【0081】
また例えば、図10に示す埋込磁石型ロータ51(以下ロータ51とする)のロータコア52を構成するコアシート53は、上記第1実施形態のコアシート27において薄肉部27dに代えて薄肉部54を備えた形状をなしている。薄肉部54は、コアシート53において、挿入積層孔27bにおける周方向(ロータ51の回転方向に同じ)の両端部とコアシート53の外周面との間に形成されている。そして、薄肉部54は、挿入積層孔27bの周方向の両端部から外周側に延び挿入積層孔27bと隣接する第1薄肉部54aと、該第1薄肉部54aよりもコアシート53の外周側に形成され第1薄肉部54aから離間した第2薄肉部54bとから構成されている。第1薄肉部54a及び第2薄肉部54bは、コアシート43の厚さ方向の中央部に形成されている。更に、第1薄肉部54aは、第2薄肉部44bよりも径方向に短く形成されている。即ち、第1薄肉部54a及び第2薄肉部54bは、第1薄肉部54aの径方向の長さをL1、第2薄肉部54bの径方向の長さをL2とすると、L1<L2となるように形成されている。このような薄肉部54は、プレス加工によりコアシート53を構成する金属板材を厚さ方向に潰して薄くすることにより形成されている。また、第1薄肉部54aと第2薄肉部54bとの間の部分は閉塞部55となっている。閉塞部55は、コアシート53の厚さ方向に薄く形成されず、閉塞部55におけるコアシート43の厚さ方向の幅T3は、コアシート53における挿入積層孔27bよりも内周側の部分の厚さT4と等しい。また、閉塞部55におけるコアシート53の厚さ方向の幅T3は、コアシート53における挿入積層孔27bの周方向の中央部とコアシート53の外周面との間の厚さと等しい。
【0082】
そして、コアシート53は、各コアシート53の4つの挿入積層孔27bが積層方向に並ぶように積層されてロータコア52を構成している。積層方向(軸方向に同じ)に隣り合うコアシート53同士は、互いの閉塞部55積層方向に当接している。そして、互いに当接した閉塞部45は、第1薄肉部54aが形成されたことにより積層方向に隣り合う第1薄肉部54a間に形成され磁石挿入孔23bに繋がる空間23fを閉塞している。また、ロータコア52の磁石挿入孔23bに挿入された磁石24の外周面と磁石挿入孔23bとの間には、充填材28が介在(充填)されており、該充填材28によって磁石24はロータコア52に固定されている。更に、この充填材28は、磁石挿入孔23bから空間23fにも流入している。
【0083】
このようにすると、上記第1実施形態の(1),(2)(4),(5)と同様の効果を得ることができる。また、第1薄肉部54aと第2薄肉部54bとを離間して形成することにより、第1薄肉部54aと第2薄肉部54bとの間に容易に閉塞部55を形成することができる。また、閉塞部55におけるコアシート53の厚さ方向の幅T3は、コアシート53における挿入積層孔27bよりも内周側の部分の厚さT4と等しいため、複数枚のコアシート53を積層するだけで、積層方向に隣り合うコアシート53の閉塞部55同士を当接させることができる。従って、空間23fを閉塞部55によって容易に閉塞することができ、充填材28がロータコア52の外周に漏れることを容易に抑制できる。そして、上記第1実施形態のように薄肉部27dの径方向内側の端部を屈曲する等の複雑な加工を行わなくとも、容易に閉塞部55を形成することができる。また、第1薄肉部54a及び第2薄肉部54bをコアシート53の厚さ方向の中央部に形成することで、コアシート53を、該コアシート53の厚さ方向の中央を通る平面H(図10には上端のコアシート53にのみ図示)の両側で面対称な形状としている。そして、このようなコアシート53を積層する際には、表面と裏面とを区別することなく積層できるため、ロータコア52を容易に形成することができる。更に、第1薄肉部54aが第2薄肉部54bよりも径方向に長く形成される場合に比べて、積層方向に隣り合う第1薄肉部54a間に形成された空間23fに必要以上に流出する充填材28の量を少なくでき、磁石24の固定強度の低下を防止できる。また、万一空間23fから径方向外側に充填材28が流出した場合でも、流出した充填材28は、第2薄肉部54b間に留まりやすくなるため、同充填材28がロータコア52の外周面に至ることを抑制できる。更に、製造コストを低減することができる。
【0084】
また例えば、図11に示す埋込磁石型ロータ61(以下ロータ61とする)のロータコア62を構成するコアシート63は、上記第1実施形態のコアシート27において薄肉部27dに代えて薄肉部64を備えた形状をなしている。薄肉部64は、コアシート63において、挿入積層孔27bにおける周方向(ロータ61の回転方向に同じ)の両端部とコアシート63の外周面との間に形成されている。そして、薄肉部64は、挿入積層孔27bの周方向の両端部から外周側に延び挿入積層孔27bと隣接する第1薄肉部64aと、該第1薄肉部64aよりもコアシート63の外周側に形成され第1薄肉部64aから離間した第2薄肉部64bとから構成されている。第1薄肉部64aは、コアシート63の厚さ方向の中央部に形成されるとともに、第2薄肉部64bは、コアシート63の厚さ方向の中央部からコアシート63の厚さ方向にずれた位置に形成されている。そして、第1薄肉部64aと第2薄肉部64bとは、径方向の長さが等しく形成されている。このような薄肉部64は、プレス加工によりコアシート63を構成する金属板材を厚さ方向に潰して薄くすることにより形成されている。また、コアシート63において、第1薄肉部64aと第2薄肉部64bとの間の部分は閉塞部65となっている。閉塞部65は、コアシート63の厚さ方向に薄く形成されず、閉塞部65におけるコアシート63の厚さ方向の幅T5は、コアシート63における挿入積層孔27bよりも内周側の部分の厚さT6と等しい。また、閉塞部65におけるコアシート63の厚さ方向の幅T5は、コアシート63における挿入積層孔27bの周方向の中央部とコアシート63の外周面との間の厚さと等しい。
【0085】
そして、コアシート63は、表裏交互に積層されてロータコア62を構成している。積層方向(軸方向に同じ)に隣り合うコアシート63同士は、互いの閉塞部65が積層方向に当接している。そして、互いに当接した閉塞部65は、第1薄肉部64aが形成されたことにより積層方向に隣り合う第1薄肉部64a間に形成され磁石挿入孔23bに繋がる空間23fを閉塞している。また、ロータコア62の磁石挿入孔23bに挿入された磁石24の外周面と磁石挿入孔23bとの間には、充填材28が介在(充填)されており、該充填材28によって磁石24はロータコア62に固定されている。更に、この充填材28は、磁石挿入孔23bから空間23fにも流入している。尚、図11には、コアシート63が表裏交互に積層された例を示したが、コアシート63は、全て同じ方向を向くように積層してもよい。
【0086】
このようにすると、上記第1実施形態の(1),(2)(4),(5)と同様の効果を得ることができる。また、第1薄肉部64aと第2薄肉部64bとを離間して形成することにより、第1薄肉部64aと第2薄肉部64bとの間に容易に閉塞部65を形成することができる。また、閉塞部65におけるコアシート63の厚さ方向の幅T5は、コアシート63における挿入積層孔27bよりも内周側の部分の厚さT6と等しいため、複数枚のコアシート63を積層するだけで、積層方向に隣り合うコアシート53の閉塞部65同士を当接させることができる。従って、空間23fを閉塞部65によって容易に閉塞することができ、充填材28がロータコア52の外周に漏れることを容易に抑制できる。そして、上記第1実施形態のように薄肉部27dの径方向内側の端部を屈曲する等の複雑な加工を行わなくとも、容易に閉塞部65を形成することができる。
【0087】
更に、第1薄肉部64aと第2薄肉部64bとの両方がコアシート63の厚さ方向の中央部に形成される場合に比べて、第1薄肉部64aから第2薄肉部64bに至る経路が複雑化される。従って、磁石24の磁束は、第1薄肉部64aと第2薄肉部64bとの両方がコアシート63の厚さ方向の中央部に形成される場合よりも、薄肉部64を通って、磁石挿入孔23bの周方向の両端部からロータコア62の外周面の方へより流れ難くなるため、薄肉部64を通って磁石挿入孔23bの周方向の両端部からロータコア62の外周面の方へ流れる磁束(即ち経路C2を辿る磁束)がより減少される。よって、磁石24の周方向の両側且つロータコア62の外周となるところへ流れていく漏れ磁束をより低減することができる。
【0088】
尚、図9に示したロータ41において、第1薄肉部44aを、第2薄肉部44bよりも径方向に短く形成してもよい。このようにすると、図10に示したロータ51と同様に、第1薄肉部44aが第2薄肉部44bよりも径方向に長く形成される場合に比べて、積層方向に隣り合う第1薄肉部44a間に形成された空間23fに必要以上に流出する充填材28の量を少なくでき、磁石24の固定強度の低下を防止できる。また、万一空間23fから径方向外側に充填材28が流出した場合でも、流出した充填材28は、第2薄肉部44b間に留まりやすくなるため、同充填材28がロータコア42の外周面に至ることを抑制できる。更に、製造コストを低減することができる。このことは、図11に示したロータ61においても同様である。
【0089】
また、図9に示したロータ41のロータコア42において、積層方向に隣り合うコアシート43の閉塞部45は互いに当接して空間23fを閉塞しているが、互いに近接して空間23fを閉塞するものであってもよい。即ち、閉塞部45は、磁石挿入孔23bからコアシート43の外周面に至る間の薄肉部44において積層方向に隣り合うコアシート43間の幅を、磁石挿入孔23bの内周面における薄肉部44(第1薄肉部44a)の積層方向の幅よりも小さく若しくは零として空間23fを閉塞するように形成されていればよい。例えば、第1薄肉部44aと第2薄肉部44bとの間に形成された閉塞部45におけるコアシート43の厚さ方向の幅を、コアシート43における挿入積層孔27bよりも内周側の部分の厚さ未満であって第1薄肉部44aの厚さより大きい値とする。このようにすると、積層方向に隣り合うコアシート43の閉塞部45は互いに近接する。尚、「近接」とは、コアシート43の積層方向に隣り合う閉塞部45間の隙間が、充填材28の粘性に基づいて、磁石挿入孔23bの内周面と磁石24の外周面との間に充填材28を介在させる(充填する)とき、及び同充填材28の固化時に、当該閉塞部45間の隙間を通って同充填材28が空間23fから径方向外側に漏れ出ない範囲の幅(積層方向の幅)となっていること意味する。この場合においても、上記したロータ41の効果と同様の効果を得ることができる。このことは、図10に示したロータ51及び図11に示したロータ61においても同様である。
【0090】
・上記第1実施形態では、薄肉部27dは、各コアシート27において、挿入積層孔27bの周方向の両端部からコアシート27の外周縁に亘る領域に形成されているが、これに限らない。図12に示す埋込磁石型ロータ71(以下ロータ71とする)のロータコア72を構成するコアシート73は、上記第1実施形態のコアシート27において薄肉部27dに代えて薄肉部74を備えた形状をなしている。薄肉部74は、コアシート73において、挿入積層孔27bの周方向(ロータ71の回転方向に同じ)の両端部からコアシート73の外周縁の手前までの領域に亘って、コアシート73の厚さ方向の一端側に形成されている。このような薄肉部74は、プレス加工によりコアシート73を構成する金属板材を厚さ方向に潰して薄くすることにより形成されている。また、コアシート73において、薄肉部74の外周側には、コアシート73の外周縁に沿って閉塞部75が形成されている。閉塞部75は、コアシート73の厚さ方向に薄く形成されず、閉塞部75におけるコアシート73の厚さ方向の幅T7は、コアシート73における挿入積層孔27bよりも内周側の部分の厚さT8と等しい。また、閉塞部75におけるコアシート73の厚さ方向の幅T7は、コアシート73における挿入積層孔27bの周方向の中央部とコアシート73の外周面との間の厚さと等しい。
【0091】
そして、コアシート73は、全て同じ方向を向くように積層されてロータコア72を構成している。積層方向(軸方向に同じ)に隣り合うコアシート73同士は、互いの閉塞部75が積層方向に当接している。そして、互いに当接した閉塞部75は、薄肉部74が形成されたことにより積層方向に隣り合う薄肉部74間に形成され磁石挿入孔23bに繋がる空間23fを閉塞している。また、ロータコア72の磁石挿入孔23bに挿入された磁石24の外周面と磁石挿入孔23bとの間には、充填材28が介在(充填)されており、該充填材28によって磁石24はロータコア72に固定されている。更に、この充填材28は、磁石挿入孔23bから空間23fにも流入している。
【0092】
このようにすると、薄肉部74は、挿入積層孔27bの周方向の両端部からコアシート73の外周縁の手前までの領域の厚さを薄くしただけの簡単な形状である。そして、閉塞部75におけるコアシート73の厚さ方向の幅T7は、コアシート73における挿入積層孔27bよりも内周側の部分の厚さT8と等しいため、複数枚のコアシート73を積層するだけで、積層方向に隣り合うコアシート73の閉塞部75同士を当接させることができる。従って、空間23fを閉塞部75によって容易に閉塞することができ、充填材28がロータコア72の外周に漏れることを容易に抑制できる。
【0093】
尚、図12に示す例では、コアシート73を全て同じ方向を向くよう積層している。しかし、図13に示すように、コアシート73を表裏交互に積層してロータコア72を形成してもよい。図13に示す例では、ロータコア72の回転中心線X2方向の両端部に位置する2枚ずつのコアシート73は、互いの薄肉部74間に形成された空間23fを互いの閉塞部75によって閉塞している。このようにすると、ロータコア72の回転中心線X2方向の両端部においてロータコア72の回転中心線X2方向に充填材28が漏れ出ることを抑制することができる。
【0094】
また、図12及び図13に示したロータ71のロータコア72において、積層方向に隣り合うコアシート73の閉塞部75は互いに当接して空間23fを閉塞しているが、互いに近接して空間23fを閉塞するものであってもよい。例えば、閉塞部75におけるコアシート73の厚さ方向の幅を、コアシート73における挿入積層孔27bよりも内周側の部分の厚さ未満であって薄肉部74の厚さより大きい値とする。このようにすると、積層方向に隣り合うコアシート73の閉塞部75は互いに近接する。尚、互いに近接した閉塞部75間の隙間は、磁石挿入孔23bの内周面と磁石24の外周面との間に充填材28を介在させる(充填する)とき、及び同充填材28の固化時に、当該閉塞部75間の隙間を通って同充填材28が空間23fから径方向外側に漏れ出ない範囲の幅(積層方向の幅)となっている。このようにしても、上記したロータ71の効果と同様の効果を得ることができる。
【0095】
・上記第各実施形態では、積極的に空間23fには充填材28が充填されている。しかしながら、空間23fは、磁石挿入孔23bから漏れ出た充填材28が流れ込むだけで充填材28が完全に充填されるものでなくてもよい。
【0096】
・上記第1実施形態では、空間23fは、径方向外側の端部が互いに当接した薄肉部27dによって閉塞されている。しかしながら、空間23fは、径方向外側の端部が互いに近接した薄肉部27dによって閉塞されてもよい。この場合、互いに近接した薄肉部27dの径方向外側の端部間の隙間は、磁石挿入孔23bの内周面と磁石24の外周面との間に充填材28を介在させる(充填する)とき、及び同充填材28の固化時に、当該薄肉部27dの径方向外側の端部間の隙間を通って同充填材28が空間23fから径方向外側に漏れ出ない範囲の幅(積層方向の幅)となっている。このようにしても、上記第1実施形態の(2)と同様の効果を得ることができる。
【0097】
・上記各実施形態では、充填材28によって磁石24をロータコア23,82に固定している。しかしながら、磁石24をロータコア23,82に固定する構成はこれに限らない。例えば、ロータコア23,82の軸方向の両端部に磁石24の脱落防止用のプレートを設けてもよい。このようにすると、磁石24が欠けた場合に同磁石24の破片が飛散することを抑制できる。また、ロータコア23,82に、磁石24の方へ突出し該磁石24をロータコア23,82に対して固定する突起を形成してもよい。
【0098】
・上記第1実施形態では、積層方向に隣り合う薄肉部27dによって空間23fが閉塞されている。しかしながら、空間23fは、必ずしも閉塞されなくてもよい。言い換えると、各コアシート27は、空間23fを閉塞する閉塞部を必ずしも備えなくてもよい。このようにしても、上記第1実施形態の(1)と同様の効果を得ることができる。
【0099】
・上記各実施形態では、ステータ11は12本のティース12bを備えているが、ティース12bの数は、これに限らず、11本以下若しくは13本以上であってもよい。
・上記第1実施形態では、ロータ21は、4つの磁石24と4つの疑似磁極23cを備えている。しかしながら、ロータ21が備える磁石24の数は、3つ以下若しくは5つ以上であってもよい。そして、疑似磁極23cの数は、磁石24の数に応じて設定される。また、ロータ21は、必ずしもコンシクエントポール型のロータでなくてもよい。ロータ21は、S極の磁石とN極の磁石とが周方向に交互に配置されたものであってもよい。このことは、上記第2実施形態のロータ81においても同様である。
【0100】
上記各実施形態及び上記各変更例から把握できる技術的思想を以下に記載する。
(イ)請求項5乃至請求項7の何れか1項に記載の埋込磁石型ロータにおいて、前記第1薄肉部は、前記第2薄肉部よりも径方向に短く形成されていることを特徴とする埋込磁石型ロータ。同構成によれば、第1薄肉部が第2薄肉部よりも径方向に長く形成される場合に比べて、積層方向に隣り合う第1薄肉部間に形成された空間に必要以上に流出する充填材の量を少なくでき、磁石の固定強度の低下を防止できる。また、万一空間から径方向外側に充填材が流出した場合でも、流出した充填材は、第2薄肉部間に留まりやすくなるため、同充填材がロータコアの外周面に至ることを抑制できる。更に、製造コストを低減することができる。
【0101】
(ロ)請求項1に記載の埋込磁石型ロータにおいて、前記磁石の外周面と前記磁石挿入孔の内周面との間に介在されて前記磁石を前記ロータコアに対して固定する充填材を備え、前記コアシートは、前記磁石挿入孔から前記コアシートの外周面に至る間の前記薄肉部において積層方向に隣り合う前記コアシート間の幅を前記磁石挿入孔の内周面における前記薄肉部の積層方向の幅よりも小さく若しくは零として、前記コアシートに前記薄肉部が形成されたことにより前記コアシートの積層方向に隣り合う前記薄肉部間に形成され前記磁石挿入孔に繋がる空間を閉塞する閉塞部を備えたことを特徴とする埋め込み磁石型ロータ。同構成によれば、磁石の外周面と磁石挿入孔の内周面との間に介在された充填材によって、磁石に局所的に荷重が加わることを抑制しつつ該磁石をロータコアに対して固定することができる。また、各コアシートに薄肉部が形成されたことによりコアシートの積層方向に隣り合う薄肉部間に形成され磁石挿入孔に繋がる空間は、閉塞部によって閉塞される。従って、磁石から出た磁束が漏れ磁束となることを抑制しつつ、コアシートの積層方向に隣り合う薄肉部間の空間を通って充填材がロータコアの外周に漏れ出ることを抑制することができる。
【符号の説明】
【0102】
11…ステータ、21,41,51,61,71,81,91…埋込磁石型ロータ、23,42,52,62,72,82,92…ロータコア、23b…磁石挿入孔、23f…空間、24…磁石、27,43,53,63,73,83,93…コアシート、27b…挿入積層孔、27d…閉塞部を兼ねる薄肉部、28…充填材、44,54,64,74,83b…薄肉部、44a,54a,64a…第1薄肉部、44b,54b,64b…第2薄肉部、45,55,65,75…閉塞部、83a…磁気抵抗凹部、93a…磁気抵抗凹部としての第1磁気抵抗凹部、93b…磁気抵抗凹部としての第2磁気抵抗凹部、93c…薄肉部としての第1薄肉部、93d…薄肉部としての第2薄肉部、S4…閉塞部を構成する第2端面、T1,T3,T5,T7…閉塞部の幅、T2,T4,T6,T8…コアシートにおける挿入積層孔よりも内周側の部分の厚さ、X2…ロータコアの回転中心線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入積層孔を有する薄板状のコアシートを複数枚積層して形成され積層方向に並ぶ複数の前記挿入積層孔からなる磁石挿入孔を有するロータコアと、
前記磁石挿入孔に挿入された磁石と、
を備えた埋込磁石型ロータであって、
各前記コアシートは、前記挿入積層孔における埋込磁石型ロータの回転方向の両端部と前記コアシートの外周面との間に、前記挿入積層孔における埋込磁石型ロータの回転方向の中央部と前記コアシートの外周面との間の部分よりも肉厚の薄い薄肉部を有すること特徴とする埋込磁石型ロータ。
【請求項2】
請求項1に記載の埋込磁石型ロータにおいて、
前記磁石の外周面と前記磁石挿入孔の内周面との間に介在されて前記磁石を前記ロータコアに対して固定する充填材を備え、
前記コアシートは、前記コアシートに前記薄肉部が形成されたことにより前記コアシートの積層方向に隣り合う前記薄肉部間に形成され前記磁石挿入孔に繋がる空間を、積層方向に隣り合う前記コアシートに接触して若しくは近接して閉塞する閉塞部を備えたことを特徴とする埋込磁石型ロータ。
【請求項3】
請求項2に記載の埋込磁石型ロータにおいて、
前記薄肉部は、前記挿入積層孔における埋込磁石型ロータの回転方向の両端部から前記コアシートの外周縁に亘って前記コアシートの厚さ方向の一端部に形成されるとともに前記挿入積層孔側の端部から前記コアシートの外周側の端部に向かうに連れて前記コアシートの厚さ方向の他端側に近づくように傾斜しており、
前記閉塞部は、前記薄肉部であり、前記コアシートの積層方向に隣り合い前記ロータコアの外周側に向かうに連れて前記コアシートの積層方向に互いに近づく前記薄肉部の外周側の端部が互いに当接若しくは近接していることを特徴とする埋込磁石型ロータ。
【請求項4】
請求項2に記載の埋込磁石型ロータにおいて、
各前記薄肉部は、前記挿入積層孔に隣接する第1薄肉部と、前記第1薄肉部よりも前記コアシートの外周側に形成され前記第1薄肉部から離間した第2薄肉部とから構成され、
前記閉塞部は、前記第1薄肉部と前記第2薄肉部との間に形成され、前記閉塞部における前記コアシートの厚さ方向の幅は、前記コアシートにおける前記挿入積層孔よりも内周側の部分の厚さと等しい若しくは当該内周側の部分の厚さ未満であって前記第1薄肉部の厚さより大きいことを特徴とする埋込磁石型ロータ。
【請求項5】
請求項4に記載の埋込磁石型ロータにおいて、
前記第1薄肉部は、前記コアシートの厚さ方向の一端部に形成され、前記第2薄肉部は、前記コアシートの厚さ方向の他端部に形成されていることを特徴とする埋込磁石型ロータ。
【請求項6】
請求項4に記載の埋込磁石型ロータにおいて、
前記第1薄肉部及び前記第2薄肉部は、前記コアシートの厚さ方向の中央部に形成されていることを特徴とする埋込磁石型ロータ。
【請求項7】
請求項4に記載の埋込磁石型ロータにおいて、
前記第1薄肉部は、前記コアシートの厚さ方向の中央部に形成され、前記第2薄肉部は、前記コアシートの厚さ方向の中央部から前記コアシートの厚さ方向にずれた位置に形成されていることを特徴とする埋込磁石型ロータ。
【請求項8】
請求項2に記載の埋込磁石型ロータにおいて、
前記薄肉部は、前記挿入積層孔における埋込磁石型ロータの回転方向の両端部から前記コアシートの外周縁の手前までの領域に亘って、前記コアシートの厚さ方向の一端側に形成され、
前記閉塞部は、前記薄肉部よりも前記コアシートの外周側で前記コアシートの外周縁に沿って形成され、前記閉塞部における前記コアシートの厚さ方向の幅は、前記コアシートにおける前記挿入積層孔よりも内周側の部分の厚さと等しいことを特徴とする埋込磁石型ロータ。
【請求項9】
請求項8に記載の埋込磁石型ロータにおいて、
前記コアシートは、表裏交互に積層され、前記ロータコアの回転中心線方向の両端部に位置する2枚ずつの前記コアシートは、互いの前記薄肉部間に形成された前記空間を互いの前記閉塞部によって閉塞していることを特徴とする埋込磁石型ロータ。
【請求項10】
請求項1又は請求項2に記載の埋込磁石型ロータにおいて、
前記磁石の外周面と前記磁石挿入孔の内周面との間に介在されて前記磁石を前記ロータコアに対して固定する充填材を備え、
各前記コアシートには、前記挿入積層孔における埋込磁石型ロータの回転方向の両端部と前記コアシートの外周面との間の部分に、前記コアシートの厚さ方向に凹設され埋込磁石型ロータの回転方向に沿うように並ぶ1つ以上の磁気抵抗凹部からなる列が径方向に重なって層をなすように複数形成されるとともに、隣り合う前記列の前記磁気抵抗凹部は互いに繋がらないように埋込磁石型ロータの回転方向にずれており、
前記薄肉部は、前記磁気抵抗凹部の底部であることを特徴とする埋込磁石型ロータ。
【請求項11】
請求項10に記載の埋込磁石型ロータにおいて、
複数の前記磁気抵抗凹部は、前記挿入積層孔から離間した位置に形成されていることを特徴とする埋込磁石型ロータ。
【請求項12】
環状のステータと、前記ステータの内側に回転可能に配置された請求項1乃至請求項11の何れか1項に記載の埋込磁石型ロータを備えたことを特徴とするブラシレスモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−94041(P2013−94041A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−2256(P2012−2256)
【出願日】平成24年1月10日(2012.1.10)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】