説明

基板載置装置および基板載置方法

【課題】空気の巻き込みによる基板の位置ずれを防止できる基板載置装置を提供する。
【解決手段】基板10を載置する基板載置装置100は、基板10を保持するステージ30と、ステージ30に設けられ、基板10を吸着する真空チャック31とを備える。真空チャック31は、ステージ30の表面30sに配列された吸着孔32を有しており、真空チャック31は、ステージ30の一端30aから他端30bに向けて基板10の吸着を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板載置装置および基板載置方法に関する。特に、液晶パネル用のマザーガラスのような基板を載置する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)の構成部品である液晶パネルは、一対の基板を所定のギャップを確保した状態で対向させた構造を有している。液晶パネルの大型化・量産化に伴って、液晶パネル用の基板(マザーガラス)は年々大型化している。基板(マザーガラス)は、例えば、1辺が1mを越えるようになっている(例えば、1100mm×1300mm(第5世代基板)から、2880mm×3130mm(第10世代基板))。そして、その大型化した基板(マザーガラス)から、1枚の液晶パネルに相当する部位が多数個取り出される。
【0003】
液晶パネルの製造にあたっては、基板(マザーガラス)に、露光装置を用いてマスクのパターンを露光することが行われる。基板は、露光に先立って、基板搬送アームによって露光装置の基板ステージに搬送され、基板ステージの基板保持面に保持される。また、露光装置による露光が終了した基板は、基板ステージから基板搬送アームに受け渡されて搬出される。
【0004】
そのような基板ステージには、基板保持面から突出する複数本の基板上下ピンと、これら複数本の基板上下ピンを一括して上下動させる駆動装置が設けられている。そして、基板搬送アームと基板ステージとによる基板の受け渡しは、基板上下ピンを一括して上下動させることによって実行される。
【0005】
近年のガラス基板の大型化に伴って、基板ステージが備える基板ホルダから基板を剥離する際の剥離帯電が大きな問題となっている。ガラス基板が大きな剥離帯電を起こすと、基板搬送の際に、基板と近接している装置エッジ部との間で放電を生じ、ガラス基板上に形成しようとしている電気素子が破壊されてしまう場合がある。
【0006】
そのような剥離帯電の問題を解消するために、特許文献1には、基板中心部を吸着した状態で基板周辺部を上昇させ、基板をわざと反らせた状態とし、少し時間を遅らせて中心部を上昇させる基板保持装置が開示されている。
【0007】
特許文献1に開示された基板保持装置によれば、基板保持面に保持された基板を基板周辺部から剥がすことにより、基板全面を同時に剥がす場合と比較して、剥離帯電量を低減することができる。したがって、基板搬出の際に、基板に放電が起きる確率を低減することができ、その結果、製品歩留まりを向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002-246450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願発明者の検討によると、同一の高さを有する複数本の基板上下ピンを上下動させる駆動装置を備えた基板保持装置の場合、基板を載置する際に、基板と基板ステージの間に空気などを巻き込むことにより基板が横滑りし、位置がずれる現象が見られた。また、特許文献1に開示された基板保持装置では、基板の帯電を防止することが目的であるので、基板保持装置の動作のシーケンスは、全ての基板上下ピンが下降した後に基板を吸着するようになっており、基板の載置ずれ、露光のパターンずれ、ピントずれなどを十分に防ぐことができないという問題がある。
【0010】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、空気の巻き込みによる基板の位置ずれを防止できる基板載置装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る基板載置装置は、基板を載置する装置であり、前記基板を保持するステージと、前記ステージに設けられ、前記基板を吸着する真空チャックとを備えている。前記真空チャックは、前記ステージの表面に配列された吸着孔を有している。前記真空チャックは、前記ステージの表面に対して斜めに配置された前記基板が下降するに従って、前記ステージの一端から他端に向けて順次、前記基板の吸着を実行する。
【0012】
ある好適な実施形態において、前記ステージには、前記基板を支持する昇降ピンが配列されており、前記昇降ピンは、前記ステージの前記一端から前記他端に向けて時間差をつけて下降する。
【0013】
ある好適な実施形態において、前記昇降ピンは、前記ステージにおいて行列状に配列されており、前記昇降ピンは、前記ステージの前記一端から前記他端に向けてピン列ごとに下降する。
【0014】
ある好適な実施形態において、前記ステージには、前記基板を搬送するロボットハンドが収納される溝部が形成されており、前記基板は、前記ロボットハンドによって、前記ステージの表面に対して傾斜するように前記ステージ上に載置される。
【0015】
ある好適な実施形態において、前記基板は、液晶パネル用マザーガラスであり、前記吸着孔は、前記ステージにおいて二次元的に配列されている。
【0016】
本発明に係る基板載置方法は、基板を載置する方法であり、前記ステージの表面に対して前記基板が斜めになるように、前記基板を前記ステージの上方に配置する工程(a)と、前記斜めに配置された前記基板を、前記ステージの表面の方に下降させる工程(b)と、前記斜めに配置された前記基板が前記ステージの表面に接触する部位に応じて、前記ステージの一端から他端に向けて前記基板の吸着を実行する工程(c)とを含む。
【0017】
ある好適な実施形態において、前記工程(c)は、前記基板を支持する昇降ピンを、前記ステージの前記一端から前記他端に向けて時間差をつけて下降させることによって実行される。
【0018】
ある好適な実施形態において、前記工程(c)は、前記基板を搬送するロボットハンドを下降させることによって実行される。
【0019】
ある好適な実施形態において、前記基板は、液晶パネル用マザーガラスであり、前記ステージの前記表面には、前記基板を真空吸着する吸着孔が二次元的に配列されている。
【発明の効果】
【0020】
本発明の基板載置装置によれば、基板を保持するステージに設けられた真空チャックが、ステージの一端から他端に向けて基板の吸着を実行するので、基板による空気の巻き込みを抑制することができ、その結果、基板の横滑りを防ぐことができる。ステージに昇降ピンが配列されている場合、昇降ピンをステージの一端から他端に向けて時間差をつけて下降させることにより、基板がステージの表面に対して傾斜しながら下降していく。そして、基板がステージの表面に接触した箇所から吸着されていくことにより、基板が空気を巻き込むことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る基板載置装置100の構成を示す斜視図である。
【図2】本実施形態の基板載置装置100の構成を示す断面図である。
【図3】本実施形態の基板載置装置100の構成を示す断面図である。
【図4】本実施形態の基板載置装置100の構成を示す上面図である。
【図5】(a)および(b)は、比較例の基板載置装置2000の動作を説明するための工程断面図である。
【図6】本実施形態の他の実施形態に係る基板載置装置100の構成を示す斜視図である。
【図7】本実施形態の他の基板載置装置100の構成を示す断面図である。
【図8】(a)および(b)は、比較例の基板載置装置3000の動作を説明するための工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。以下の図面においては、説明の簡潔化のために、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る基板載置装置100の構成を模式的に示す斜視図である。また、図2は、基板載置装置100の断面構成を模式的に示している。
【0024】
本実施形態の基板載置装置100は、基板10を保持するステージ30と、ステージ30に設けられた真空チャック31とから構成されている。真空チャック31は、基板10を吸着できる吸着装置である。真空チャック31は、図2に示すように、ステージ30に形成された貫通孔33(33a〜33f)によって構築されている。この貫通孔33の一端は、ステージ30の表面(上面)30sに位置しており、基板10を吸着する吸着孔32(32a〜32f)となっている。貫通孔33は、減圧装置(不図示)に接続されており、貫通孔33の内部を減圧にすることによって、ステージ30の表面30sに位置する吸着孔32にて基板10を真空吸着することができる。
【0025】
ステージ30には、基板10を支持し、基板10を支持した状態で昇降可能な昇降ピン20が設けられている。本実施形態の構成では、図1に示すように、昇降ピン20は、基板10の表面30sにおいて行列状に配列されている。この例では、縦3本×横3本の行列状に昇降ピン20(20a、20b、20c)は配列されているが、この配列に限定されるものではない。
【0026】
また、この例では、ステージ30の一端30a側に配置された第1ピン20aからなる第1ピン列21Aが位置している。また、第1ピン列21Aの隣には、第2ピン20bからなる第2ピン列21Bが位置しており、そして、ステージの他端30b側には第3ピン20cからなる第3ピン列21Cが位置している。
【0027】
第1ピン列21Aにおける第1ピン20aのそれぞれは、同じ昇降速度で同時に昇降させることができる。同様に、第2ピン列21Bにおける第2ピン20bのそれぞれは、同じ昇降速度で同時に昇降させることができる。そして、第3ピン列21Cにおける第3ピン20cのそれぞれは、同じ昇降速度で同時に昇降させることができる。昇降ピン20は、ステージ30の表面30sの下方に設置された昇降装置(不図示)に連結されている。
【0028】
具体的には、図3に示すように、昇降ピン20は、第1ピン列21A、第2ピン列21B、第3ピン列21Cのピン列ごとに昇降することができる昇降装置27(27a、27b、27c)に接続されている。図3に示した構成例では、第1ピン列21A中の第1ピン20aは、ステージ30に設けられたピン貫通孔28を通って延びており、第1昇降装置27aに連結されている。第1昇降装置27aは、矢印50Aに示すように鉛直方向90に沿って昇降可能な動作をすることができ、それによって、第1ピン20aを昇降することができる。
【0029】
また、第2ピン列21B中の第2ピン20bは、ステージ30に設けられたピン貫通孔28を通って延びており、第2昇降装置27bに連結されている。そして、第3ピン列21C中の第3ピン20cは、ステージ30に設けられたピン貫通孔28を通って延びており、第3昇降装置27cに連結されている。第2昇降装置27bおよび第3昇降装置27cは、それぞれ、矢印50Bおよび矢印50Cに示すように鉛直方向90に沿って昇降可能な動作をすることができ、それによって、第2ピン20bおよび第3ピン20cを昇降することができる。
【0030】
なお、図3に示した昇降装置27(27a、27b、27c)の構成に限らず、他の構成の昇降装置を用いることも可能である。例えば、昇降ピン20の1本1本を独立して昇降させることができる機構を有する昇降装置を採用することも可能である。なお、図3に示した昇降装置27(27a、27b、27c)の場合、昇降ピン20の1本1本を独立して昇降できる機構を有する昇降装置と比較して、昇降装置の構造を簡便にすることができるという利点がある。
【0031】
図示した例では、基板10は、液晶パネルの寸法に切り出す前のマザーガラスである。基板10としてのマザーガラスの寸法は1辺が1メートル以上あり、具体的には、基板10が第10世代のマザーガラスの場合、その寸法は2880mm(W)×3130mm(L)である。この例の基板10は、回路またはパターン形成前のガラス基板の場合もあるし、回路またはパターン形成後または形成途中のガラス基板の場合もある。加えて、基板10は、TFT(薄膜トランジスタ)が形成されるアレイ基板の場合もあるし、カラーフィルタが形成されるCF基板の場合もある。
【0032】
本実施形態の基板載置装置100では、まず、各昇降ピン20を同じ高さにセットして、水平方向95になるように基板10を載置する。図4は、水平方向95に延びた基板10をステージ30の上方から見た上面図である。図4に示すように、ステージ30の表面30sには、基板10を吸着するための吸着孔32(32a〜32f)が行列状に配列されている。この例では、吸着孔32は、第1吸着孔32aを含む第1列34Aから、第6吸着孔32fを含む第6列34Fまで順次並んでいる。
【0033】
なお、図4に示した例では、基板10には、液晶パネルの寸法に相当するパネル領域12と、パネル領域12の外側に位置する非パネル領域13とを含んでいる。非パネル領域13は、基板10の周縁領域に設けられている。各パネル領域12は、例えば、20インチから110インチ(典型的には、32インチから60インチ)のサイズに相当するものである。
【0034】
その後、図2に示すように、水平方向95に載置されていた基板10を、ステージ30の表面30sに対して斜めになるように下降させていく。ここでは、第1昇降ピン20aの下降を先行させ(矢印25a参照)、次いで、第2昇降ピン20b、その後、第3昇降ピン20cの下降を続ける(矢印25b、25c参照)。このように、第1昇降ピン20aの下降を先行させることによって、ステージ30の表面30sに対する基板10の角度θ(すなわち、基板10と水平線91とがなす角度)を、例えば5°〜10°にすることができる。
【0035】
次いで、第1昇降ピン20a、第2昇降ピン20b、第3昇降ピン20cを時間差で下降させることによって、基板10を、ステージ30の一端30a側から他端30b側に向けて順次、吸着させていく。さらに説明すると、傾いた基板10が、昇降ピン20(20a、20b、20c)の下降に伴ってステージ表面30sに向かっていくと、基板10の一部がステージ表面30sに存在する吸着孔32(32aなど)に接触するごとに、基板10の吸着が実行される。
【0036】
なお、第1昇降ピン20a、第2昇降ピン20b、第3昇降ピン20cを時間差で下降させる手法だけでなく、他の手法で水平状態の基板10を傾斜させることも可能である。例えば、第1昇降ピン20a、第2昇降ピン20b、第3昇降ピン20cの下降速度を変化させて、第1昇降ピン20aの先端が一番低く、第2昇降ピン20bの先端がその次に低く、第3昇降ピン20cの先端が一番高くなるようにすることもできる。このように昇降ピン20の下降速度を調整することによっても基板10を傾斜状態にすることができる。
【0037】
このように基板10を斜めにした状態で、ステージ30の表面30sに吸着させると、基板10とステージ表面30sとの間に位置する空気は、矢印40に示すように、ステージ30の他端30b側から抜けていく。その結果、基板10の全体をステージ30の表面30sに吸着させても、基板10が空気を巻き込むことによって生じる空気溜まりが発生することを抑制することができる。そして、基板10とステージ表面30sとの間に空気溜まりが生じないようにすることができる。
【0038】
すなわち、本実施形態の構成によれば、基板10を保持するステージ30に設けられた真空チャック31が、ステージ30の一端30aから他端30bに向けて基板10の吸着を順次行うことができる。したがって、基板10による空気の巻き込みを抑制することができ、その結果、基板10の横滑りを防ぐことができる。具体的には、図2に示した構成では、昇降ピン20をステージ30の一端30aから他端30bに向けて時間差をつけて下降させることにより、基板10を傾斜させながら下降させることができる。そして、基板10がステージの表面に接触した箇所から吸着されていくことにより、基板10が空気を巻き込むことを防止することができる。
【0039】
次に、図5(a)および(b)を参照しながら、比較例の基板載置装置2000の動作について説明する。図5(a)および(b)は、比較例の基板載置装置2000の動作を説明する工程断面図である。
【0040】
まず、図5(a)に示すように、基板10は、同じ高さにセットされた昇降ピン120(120a、120b、120c)の上に配置される。なお、基板10の厚さは薄いので、昇降ピン120の間に撓むような形態になっている。その後、矢印125(125a、125b、125c)に示すように、昇降ピン120を下降に移動させて、基板10をステージ130の表面130sの方に近づける。なお、ステージ130には、減圧を行うための貫通孔133が形成されている。貫通孔133の一端は、ステージ130の表面(上面)130sに位置しており、基板10を吸着する吸着孔132となっている。
【0041】
次に、図5(b)に示すように、昇降ピン120の先端がステージ表面130sよりも下方まで下降すると、基板10は、ステージ表面130sに吸着される。しかしながら、比較例の基板載置装置2000では、昇降ピン120を同時に下方に移動させるために、基板10とステージ表面130sとの間に存在する空気が空気溜まり135として残ってしまう。すなわち、基板10とステージ表面130sとの間に位置する空気の逃げ場がなくなり、空気溜まり135が発生する。また、基板10をステージ130でさらに真空吸着した場合に、空気溜まり135が基板10の外に出ようとして、その空気の流れで基板10の横滑りが生じることがあり得る。
【0042】
基板10とステージ表面130sとの間に空気溜まり135が存在し、基板10の表面が湾曲すると、例えば、液晶パネル作製時の露光工程などにおいて不良が生じる可能性が高くなる。加えて、基板10の横滑りが生じると、基板10の位置ズレが発生し、その場合でも、液晶パネル作製時の露光工程などにおいて不良が発生し得る。
【0043】
一方、本実施形態の基板載置装置100によれば、ステージ30の表面30sに対して基板10が斜めになるように基板10をステージ30の上方に配置した後、斜めの状態の基板10を、ステージ表面30sの方に下降させることができる。次いで、斜めの状態の基板10がステージ表面30sに接触する部位に応じて、ステージ30の一端30aから他端30bに向けて基板10の吸着を実行することができるので、ステージ30の他端30b側から、基板10によって巻き込まれる空気を逃がすことができる。したがって、基板10とステージ表面30sとの間に空気溜まりが発生することを抑制することが可能となる。
【0044】
その結果、空気溜まり無しで基板10の裏面全体をステージ表面30sに載置することができるので、基板10の良好な平坦性を確保することができる。そして、液晶パネル作製時の露光工程などにおけるプロセスを実行することが容易となる。さらに説明すると、基板10とステージ30との間に発生する空気溜まりによる基板10の変形を抑制することができるので、露光のパターンずれ、露光のピントのずれを防ぐことができる。また、空気溜まりの発生を抑制することができることから、基板10の横滑りを防止できるので、本実施形態の基板載置装置100においては基板10の位置ズレを抑制することができる。
【0045】
本実施形態の構成において、昇降ピン20は、基板10を傷つけることなく支持できるような棒状部材であり、例えば、ステンレス、アルミニウム合金、めっき鋼材などの金属、ポリアセタール、ジュラコン、塩化ビニルなどの樹脂から構成されている。本実施形態の昇降ピン20は、円柱形状を有しているが、それに限定されない。昇降ピン20の形状または構造は、角柱形状(例えば、断面が矩形の柱状形状など)であってもよいし、筒状形状(例えば、円筒形状など)であっても構わない。昇降ピン20が円柱形状の場合、その直径は例えば10〜40mm程度である。また、本実施形態の構成を例示的に説明すると次の通りである。昇降ピン20の長さは例えば200〜500mmである。
【0046】
さらに、図1では、縦3本、横3本からなる行列状の昇降ピン20の配列を示しているが、この配列は例示であり、他の配置例を採用しても構わない。例えば、昇降ピン20を縦3本以上にして、横3本以上にしても構わない。また、基板10を安定して支持することができるのであれば、行列状の配列に限らず、他の配列(例えば、千鳥格子状の配列、同心円状の配列を少なくとも一部含むもの)を採用しても構わない。
【0047】
加えて、図4に示した例では、縦4個、横6個からなる行列状の吸着孔32の配列を示したが、この配列も例示であり、他の配列例を採用しても構わない。また、基板10を安定して吸着することができるのであれば、行列状の配列に限らず、他の配列(例えば、千鳥格子状の配列、同心円状の配列を少なくとも一部含むもの)を採用しても構わない。
【0048】
<本発明の他の実施形態>
また、上述の実施形態においては、昇降ピン20を時間差をつけて下降させることによって、基板10を斜めにした状態で下降させたが、これに限らず、他の手法を採用することも可能である。
【0049】
例えば図6および図7に示すように、ロボットハンド70を用いて、基板10を斜めにした状態で下降させて、ステージ30の表面30sに基板10を載置することができる。図6および図7を参照しながら、本実施形態の基板載置装置100の改変例について説明する。図6は、本実施形態の基板載置装置100の改変例を説明する斜視図である。また、図7は、本実施形態の基板載置装置100の改変例を説明する断面図である。
【0050】
図6に示した基板載置装置100では、ステージ30にはロボットハンド70が収納される溝部35が形成されている。ロボットハンド70は、基板10を搬送する装置であり、図示した例では、ロボットハンド70の基板載置部72が基板10を支持している。また、ステージ30には、真空チャックが設けられており、ステージ30の表面30sには、吸着孔(不図示)が配置されている。
【0051】
この例の基板載置装置100では、ロボットハンド70の基板載置部72の先端部72aを溝部35に挿入するようにして下方に位置付けている。その一方で、基板載置部72の後端部72bを、先端部72aよりも上方に位置付けるようにしている。このようにすることにより、ロボットハンド70を用いて、基板10をステージ表面30sに対して傾斜させることができる。
【0052】
次いで、図6に示した状態から、ロボットハンド70の基板載置部72の後端部72bを下方に移動させて、後端部72bがステージ30の溝部35に収納するように基板載置部72を下降させる。そうすると、基板10は、ステージ30の一端30aの側から順次、ステージ表面30sに吸着していき、それゆえに、基板載置部72の後端部72bの下降に応じて基板10の吸着面積は増えていく。
【0053】
そして、ステージ30の一端30aの側から順次、基板10が吸着していくことにより、基板10によって巻き込まれる空気を逃がすことができる。具体的には、矢印40に示すように、基板10によって巻き込まれる空気を、ステージ30の他端30bの側へ逃がすことができる。すなわち、基板10が吸着する部位をステージ30の一端30aから他端30b側に広げていくことにより、基板10とステージ表面30sとの間に空気溜まりが発生することを抑制することができる。
【0054】
さらに、図7に示すように、最初は、基板載置部72の先端部72aは、ステージ30の溝部35に収納させないような状態で、ロボットハンド70を用いて基板10を斜めに配置しても構わない。図7に示した例では、先端部72aを下方に位置付けて、後端部72bを先端部72aよりも上方に位置付けた状態にしている。この斜めにした状態で、ロボットハンド70の基板載置部72を、矢印75のように下方に移動させてステージ30の溝部35に収納させると、ステージ30の一端30aの側から順次、基板10が吸着していくことになる。したがって、基板10によって巻き込まれる空気を矢印40に示すように逃がすことができる。その結果、基板10とステージ表面30sとの間に空気溜まりが発生することを抑制することができる。
【0055】
次に、図8(a)および(b)を参照しながら、比較例の基板載置装置3000の動作について説明する。図8(a)および(b)は、比較例の基板載置装置3000の動作を説明する工程断面図である。
【0056】
まず、図8(a)に示すように、基板10が水平方向にセットされるように、ロボットハンドの基板載置部172に載置されている。この状態から、矢印175に示すように、ロボットハンドの基板載置部172を下方に移動する。基板載置部172を、ステージ130の溝部(不図示)に収納すると、図8(b)に示すように、基板10をステージ表面130sに載置することができる。
【0057】
しかしながら、比較例の基板載置装置3000では、基板載置部172を同時に下方に移動させるために、基板10とステージ表面130sとの間に空気溜まり135が発生してしまう。また、基板10をステージ130でさらに真空吸着した場合に、空気溜まり135が基板10の外に出ようとし、その空気の流れで基板10の横滑りが生じることがあり得る。
【0058】
一方、図6および図7に示した手法によれば、ステージ30の一端30aから他端30bに向けて基板10の吸着を実行することができるので、ステージ30の他端30b側から、基板10によって巻き込まれる空気を逃がすことができる。したがって、基板10とステージ表面30sとの間に空気溜まりが発生することを抑制することが可能となる。そして、基板10の横滑りを防止することができる。
【0059】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。例えば、上述の実施形態では、基板10として、専ら、液晶パネル用マザーガラスについて説明したが、それに限らず、PDP(プラズマ・パネル・ディスプレイ)、有機ELディスプレイのような表示装置に使用される基板10について広く適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明によれば、空気の巻き込みによる基板の位置ずれを防止できる基板載置装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0061】
10 基板
12 パネル領域
13 非パネル領域
20 昇降ピン
27 昇降装置
28 ピン貫通孔
30 ステージ
30s ステージ表面
31 真空チャック
32 吸着孔
33 貫通孔
35 溝部
70 ロボットハンド
72 基板載置部
72a 先端部
72b 後端部
90 鉛直方向
95 水平方向
100 基板載置装置
120 昇降ピン
130 ステージ
132 吸着孔
172 基板載置部
2000 基板載置装置
3000 基板載置装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を載置する基板載置装置であって、
前記基板を保持するステージと、
前記ステージに設けられ、前記基板を吸着する真空チャックと
を備え、
前記真空チャックは、前記ステージの表面に配列された吸着孔を有しており、
前記真空チャックは、前記ステージの表面に対して斜めに配置された前記基板が下降するに従って、前記ステージの一端から他端に向けて順次、前記基板の吸着を実行することを特徴とする、基板載置装置。
【請求項2】
前記ステージには、前記基板を支持する昇降ピンが配列されており、
前記昇降ピンは、前記ステージの前記一端から前記他端に向けて時間差をつけて下降することを特徴とする、請求項1に記載の基板載置装置。
【請求項3】
前記昇降ピンは、前記ステージにおいて行列状に配列されており、
前記昇降ピンは、前記ステージの前記一端から前記他端に向けてピン列ごとに下降することを特徴とする、請求項2に記載の基板載置装置。
【請求項4】
前記ステージには、前記基板を搬送するロボットハンドが収納される溝部が形成されており、
前記基板は、前記ロボットハンドによって、前記ステージの表面に対して傾斜するように前記ステージ上に載置されることを特徴とする、請求項1に記載の基板載置装置。
【請求項5】
前記基板は、液晶パネル用マザーガラスであり、
前記吸着孔は、前記ステージにおいて二次元的に配列されている、請求項1から4の何れか1つに記載の基板載置装置。
【請求項6】
基板を載置する基板載置方法であって、
前記ステージの表面に対して前記基板が斜めになるように、前記基板を前記ステージの上方に配置する工程(a)と、
前記斜めに配置された前記基板を、前記ステージの表面の方に下降させる工程(b)と、
前記斜めに配置された前記基板が前記ステージの表面に接触する部位に応じて、前記ステージの一端から他端に向けて前記基板の吸着を実行する工程(c)と
を含む、基板載置方法。
【請求項7】
前記工程(c)は、前記基板を支持する昇降ピンを、前記ステージの前記一端から前記他端に向けて時間差をつけて下降させることによって実行される、請求項6に記載の基板載置方法。
【請求項8】
前記工程(c)は、前記基板を搬送するロボットハンドを下降させることによって実行される、請求項6に記載の基板載置方法。
【請求項9】
前記基板は、液晶パネル用マザーガラスであり、
前記ステージの前記表面には、前記基板を真空吸着する吸着孔が二次元的に配列されている、請求項6から8の何れか1つに記載の基板載置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−238758(P2012−238758A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107342(P2011−107342)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】