説明

変位機構

【課題】形状記憶合金ワイヤの少ない変位を活用して大きな湾曲角度を得ることのできる変位機構を提供する。
【解決手段】第1固定部及び第1連結部を有する第1の管と、第2固定部及び第2連結部を有する第2の管と、第1固定部及び第2固定部に固着された形状記憶部材と、第1連結部と第2連結部を機械的につなぐ連結部材と、を備え、第1連結部及び第2連結部を中心に第1の管及び第2の管がそれぞれ回動する。第1連結部と第2連結部の距離をLD1とし、第1固定部の中心と第2固定部の中心の距離の最大値をLD0としたときに所定の式を満足する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変位機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の変位機構として、特許文献1及び特許文献2には、複数の管状体を回動自在に連結し、形状記憶合金に通電加熱することにより、連結された管状体を湾曲させる湾曲装置が開示されている。
また、特許文献3には、複数の関節駒からなる管状体において、関節駒を互いに回動自在に連結する回動軸が管状体の中心軸上から径方向に交互にずらして配置されている湾曲構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭63−62213号公報
【特許文献2】特公平6−75565号公報
【特許文献3】特開平5−184525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2記載の湾曲装置では、形状記憶合金の収縮変位量が少なく湾曲角度が十分にとれないという問題点がある。
また、特許文献3記載の湾曲構造では、連結部としての回動軸を径方向にずらしてはいるものの、形状記憶合金ワイヤとの位置関係が具体的に記載されておらず、関節駒の湾曲角度が十分にとれないおそれがある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、形状記憶合金ワイヤの少ない変位を活用して大きな湾曲角度を得ることのできる変位機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る変位機構は、第1固定部及び第1連結部を有する第1の管と、第2固定部及び第2連結部を有する第2の管と、第1固定部及び第2固定部に固着された形状記憶部材と、第1連結部と第2連結部を機械的につなぐ連結部材と、を備え、第1連結部及び第2連結部を中心に第1の管及び第2の管がそれぞれ回動することを特徴としている。
【0007】
本発明に係る変位機構において、第1連結部と第2連結部の距離をLD1とし、第1固定部の中心と第2固定部の中心の距離の最大値をLD0としたときに次式(1)を満足することが好ましい。
LD1>LD2 (1)
ただし、LD2=(LD0−LD1)/2である。
【0008】
本発明に係る変位機構は、第1の管と第2の管が複数連結された形態も可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る変位機構は、形状記憶合金ワイヤの少ない変位を活用して大きな湾曲角度を得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態の基本構成における変位機構の構成を示す側面図である。
【図2】図1の変位機構において、連結部を中心にして第1の管と第2の管がそれぞれ回動した状態を示す側面図である。
【図3】第1実施形態に係る変位機構の構成を示す斜視図である。
【図4】第1実施形態に係る変位機構の構成を示す分解斜視図である。
【図5】第1実施形態に係る変位機構の構成を示す側面図である。
【図6】第1実施形態に係る変位機構の構成を示す正面図である。
【図7】第1実施形態に係る変位機構の構成を示す背面図である。
【図8】第1実施形態に係る変位機構において、連結部を中心にして第1の管と第2の管がそれぞれ回動した状態を示す側面図である。
【図9】第2実施形態に係る変位機構の構成を示す斜視図である。
【図10】第2実施形態に係る変位機構の構成を示す分解斜視図である。
【図11】第2実施形態に係る変位機構の構成を示す側面図である。
【図12】第2実施形態に係る変位機構の構成を示す正面図である。
【図13】第2実施形態に係る変位機構の構成を示す背面図である。
【図14】第2実施形態に係る変位機構において、連結部を中心にして第1の管と第2の管がそれぞれ回動した状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る変位機構の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
以下の実施形態に係る変位機構は、連結部を中心に回動することによって、第1の管と第2の管がそれぞれ変位する。別言すると、変位機構における変位は、少なくとも第1の管と第2の管が連結部の周りを回動する動きを含む。
【0012】
(基本構成)
まず、図1及び図2を参照しつつ、以下の実施形態の基本構成について説明する。図1は、本発明の実施形態の基本構成における変位機構の構成を示す側面図である。図2は、図1の変位機構において、連結部を中心にして第1の管と第2の管がそれぞれ回動した状態を示す側面図である。図1は、常温における変位機構の状態を示し、図2は、SMAワイヤ13を所定温度以上に加熱した状態を示す。図2では、第1の管11と第2の管12を1つずつ連結しているが、複数連結してもよい。
【0013】
図1及び図2に示す変位機構は、第1固定部15及び連結ピン14a(第1連結部)を有する円筒状の第1の管11(中心軸AX1)と、第2固定部18及び連結ピン14b(第2連結部)を有する円筒状の第2の管12(中心軸AX2)と、両端が2つの固定部15、18にそれぞれ固着されたSMAワイヤ13(形状記憶部材)と、第1の管11と第2の管12を互いに連結する長板状の連結部材14と、を備える。
ここで、第1の管11と第2の管12は、ある直線に沿って延びる中空形状であれば、円筒以外の形状であってもよい。
【0014】
連結ピン14a、14bは、連結部材14を貫通させることにより機械的に結合され、これにより、第1の管11と第2の管12は、連結部材14によって互いに機械的に連結される。
また、図1、図2においては、第1の管11及び第2の管12の片側の側面を示しているが、第1の管11及び第2の管12の反対側の側面には、連結部材14に対向するように連結部材14と同形状の連結部材が設けられており、この連結部材にも連結ピン14a、14bと同様に2つの連結ピンが結合されている。
これにより、第1の管11と第2の管12は連結ピン14a、14b及び反対側の面の2つの連結ピンを中心にしてそれぞれ回動可能となる。ここで、第1の管11と第2の管12は、所望の角度、例えば90度、まで互いに接触しないで回動可能な間隔で連結される。この間隔は、連結部材14の長さ、連結部材14上及び第1の管11、第2の管12上における連結ピン14a、14bの位置によって任意に定めることができる。
【0015】
SMAワイヤ13として、通電により所定温度以上に加熱することにより収縮する形状記憶合金を用いた場合、SMAワイヤ13を所定温度以上に加熱するとSMAワイヤ13が収縮し、これに伴って第1の管11と第2の管12が連結ピン14a、14bを中心としてそれぞれ回動するため、変位機構は全体として湾曲する。
【0016】
図1及び図2に示す変位機構においては、第1連結部としての連結ピン14aと第2連結部としての連結ピン14bとの距離をLD1とし、第1固定部15の中心15aと第2固定部18の中心18aとの距離の最大値をLD0としたときに次式(1)を満足する。LD0は、SMAワイヤ13に通電していない常温状態のときの距離となる。なお、図1は、第1固定部15の中心15aから連結ピン14aまでの距離と第2固定部18の中心18aから連結ピン14bまでの距離がLD2で同一となる例を示している。
LD1>LD2 (1)
ただし、LD2=(LD0−LD1)/2である。
【0017】
この変位機構においては、第1の管11と第2の管12の連結に連結部材14を使用したことにより、変位の前後で変位機構の中心軸のずれが小さくなる。
また、図1において、第1固定部15と第2固定部18との間のSMAワイヤ13は、通電していない常温状態では長さLD0であるのに対し、通電によって収縮する。通電加熱による収縮は、長さLD1に対応する範囲には作用しない一方、連結ピン14a、14bの両外側の長さLD2に対応する範囲には作用する。このような作用により、湾曲角度を増幅することができ、第1の管11及び第2の管12の径方向に変形を拡大できる。したがって、SMAワイヤ13の少ない変位量でも大きな湾曲角度が得られる。
なお、図1、図2においては、SMAワイヤ13を第1固定部15と第2固定部18に固着しただけだが、以下の実施形態に示すように、第1固定部15と第2固定部18の間にSMAワイヤ13を保持するガイド部を設けるとSMAワイヤ13のたるみを少なくできるため好ましい。
【0018】
(第1実施形態)
次に、図3〜図8を参照しつつ、第1実施形態に係る変位機構100の構成について説明する。第1実施形態に係る変位機構においては、連結部材140、145を第1の管110及び第2の管120の高さ方向(図5の上下方向)の略中央に配置している。
ここで、図3〜図7は、第1実施形態に係る変位機構100の構成を示す図であって、図3は斜視図、図4は分解斜視図、図5は側面図、図6は正面図、図7は背面図である。図8は、変位機構100において、連結ピン143、144、148、149を中心にして第1の管110と第2の管120がそれぞれ回動した状態を示す側面図である。
なお、図8においては、バネ191の図示を省略している。
【0019】
変位機構100は、第1の管110と、第2の管120と、形状記憶部材としてのSMAワイヤ130と、長板状の連結部材140、145と、を備える。
【0020】
第1の管110は、略円筒形状を有し、その外周面110aの上部に着脱可能な第1固定部151、及び、第1連結部としての連結ピン143、148を備える。この第1固定部151は、第1固定部151を貫通したネジ152、153を第1の管110の周壁110bに設けた孔116、117にそれぞれ螺合することによって固定される。
【0021】
第2の管120は、略円筒形状を有し、その外周面120aの上部に着脱可能な第2固定部181、及び、第2連結部としての連結ピン144、149を備える。この第2固定部181は、第2固定部181を貫通したネジ182、183を第2の管120の周壁120bに設けた孔128、129にそれぞれ螺合することによって固定される。
なお、第1の管110及び第2の管120は、中心軸AXに沿って延びる中空形状であれば、円筒以外の形状であってもよい。
【0022】
第1固定部151と第2固定部181との間には、ガイド部161及びガイド部171が着脱可能に配置されている。
ガイド部161は第1の管110の外周面110a上に配置され、ガイド部161を貫通したネジ162、163を第1の管110の周壁110bに設けた孔118、119にそれぞれ螺合することによって固定される。ガイド部161は、下面に溝161aを備える。この溝161aは、ガイド部161を第1の管110に固定した状態において中心軸AXに沿うように形勢されている。
ガイド部171は第2の管120の外周面120a上に配置され、ガイド部171を貫通したネジ172、173を第2の管120の周壁120bに設けた孔126、127にそれぞれ螺合することによって固定される。ガイド部171は、下面に溝171aを備える。この溝171aは、ガイド部171を第2の管120に固定した状態において、溝161aに対応する位置に、中心軸AXに沿うように形勢されている。
【0023】
連結ピン143、144は、連結部材140を貫通させることにより機械的に結合され、連結ピン148、149は、連結部材145を貫通させることにより機械的に結合されている。これにより、第1の管110と第2の管120は、連結部材140、145によって互いに機械的に連結される。連結部材140と連結部材145は、同一形状を備え、第1の管110及び第2の管120の中心軸AXに関して略対称に配置される。
具体的には、連結部材140は、その厚み方向に貫通する2つの孔部141、142を備える。第1連結部としての連結ピン143は孔部141を介して第1の管110の周壁110bに設けた連結孔111に結合され、第2連結部としての連結ピン144は孔部142を介して、第2の管120の周壁120bに設けた連結孔121に結合される。
【0024】
連結部材145は、その厚み方向に貫通する2つの孔部146、147を備える。第1連結部としての連結ピン148は孔部146を介して第1の管110の周壁110bに設けた連結孔112に結合され、第2連結部としての連結ピン149は孔部147を介して、第2の管120の周壁120bに設けた連結孔122に結合される。連結ピン148、149は、AXに関して、連結ピン143、144と対称に配置されている。
また、第1の管110及び第2の管120において、連結孔111、112、121、122が設けられた部分の周壁は平面となっており、連結部材140及び連結部材145は平面を第1の管110及び第2の管120に向けた板状部材である。
このような構成により、第1の管110は連結ピン143、148を中心にして回動可能であり、第2の管120は、連結ピン144、149を中心にして回動可能となる。
【0025】
ここで、第1の管110と第2の管120は、所望の角度、例えば90度、まで互いに接触しないで回動可能な間隔で連結される。この間隔は、連結部材140、145の長さ、第1の管110上の連結孔111、112の位置、第2の管120上の連結孔121、122の位置、連結部材140上の連結ピン143、144の位置、連結部材145上の連結ピン148、149の位置によって任意に定めることができる。
【0026】
SMAワイヤ130は、中心軸AXに沿うように配置され、一方の端部が第1固定部151と第1の管110の上部の平面110cの間に挟持され、他方の端部が第2固定部181と第2の管120の上部の平面120cの間に挟持されるように、第1固定部151及び第2固定部181に固着される(図4)。
さらに、SMAワイヤ130は、第1固定部151と第2固定部181との間において、ガイド部161の溝161aと平面110cとの間及びガイド部171の溝171aと平面120cとの間に保持される。これにより、SMAワイヤ130は、ガイド部161、171によって動きを妨げられずに中心軸AXに沿った方向に伸縮可能となる。
【0027】
第1の管110及び第2の管120の下部において、周壁110b、120bには貫通孔114、124がそれぞれ設けられている。これらの貫通孔114、124に対して、バネ191の両端に挿通された固定ネジ192、193を螺合することにより、第1の管110と第2の管120をバネ191で連結している。
【0028】
変位機構100においては、第1連結部としての連結ピン143、148と第2連結部としての連結ピン144、149との距離をLD1とし、第1固定部151の中心151aと第2固定部181の中心181aとの距離の最大値をLD0としたときに次式(1)を満足する。LD0は、SMAワイヤ130に通電していない常温状態のときの距離となる。
なお、図5は、第1固定部151の中心151aから連結ピン143、148までの距離と第2固定部181の中心181aから連結ピン144、149までの距離がLD2で同一となる例を示している。
LD1>LD2 (1)
ただし、LD2=(LD0−LD1)/2である。
【0029】
SMAワイヤ130に通電するとSMAワイヤ130は加熱されて収縮する。これにより、第1の管110と第2の管120は、連結ピン143、144、148、149を中心としてそれぞれ回動するため、全体として湾曲する。
これに対して、SMAワイヤ130への通電を止めると、SMAワイヤ130は元の長さに戻ろうとする。さらに、バネ191の弾性力によって第1の管110と第2の管120が引っ張られるため、より速く元の状態に戻ろうとする。
【0030】
変位機構100においては、第1の管110と第2の管120の連結に連結部材140、145を使用したことにより、変位の前後で変位機構の中心軸のずれが小さくなる。
また、図5において、第1固定部151と第2固定部181との間のSMAワイヤ130は、通電していない常温状態では長さLD0であるのに対し、通電によって収縮する。通電加熱による収縮は、長さLD1に対応する範囲には作用しない一方、連結部材140、145の両外側の長さLD2に対応する範囲には作用する。このような作用により、湾曲角度を増幅することができ、第1の管110及び第2の管120の長手方向を中心に変位を拡大できる。したがって、SMAワイヤ130の少ない変位量でも大きな湾曲角度が得られる。
さらに、ガイド部161、171によってSMAワイヤ130のたるみを少なくしているため、SMAワイヤ130の少ない変形量を無駄なく湾曲に作用させることができる。
【0031】
(第2実施形態)
図9から図14を参照して、第2実施形態に係る変位機構について説明する。
第1実施形態に係る変位機構100は第1の管110及び第2の管120の長手方向の変位拡大が中心であったが、第2実施形態に係る変位機構200は、長手方向の変位拡大にさらに径方向の変位拡大を合わせた変位拡大が得られる。
図9から図13は、第2実施形態に係る変位機構200の構成を示す図であって、図9は斜視図、図10は分解斜視図、図11は側面図、図12は正面図、図13は背面図である。図14は、変位機構200において、連結ピン243、244を中心にして第1の管210と第2の管220がそれぞれ回動した状態を示す側面図である。
なお、図14においては、バネ191の図示を省略している。
【0032】
第2実施形態に係る変位機構200は、2つの連結部材240、245を第1の管210及び第2の管220の高さ方向(図11の上下方向)の上部に配置している点、第1連結部としての連結ピン243が第1の管210を貫通している点、及び、第2連結部としての連結ピン244が第2の管220を貫通している点が、第1実施形態に係る変位機構100と異なる。その他の構成は第1実施形態に係る変位機構と同様であって、共通する部材には同じ参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0033】
変位機構200は、第1の管210と、第2の管220と、形状記憶部材としてのSMAワイヤ130と、長板状の連結部材240、245と、を備える。
【0034】
第1の管210は、略円筒形状を有し、その外周面210aの上部に着脱可能な第1固定部151を備える。この第1固定部151は、第1固定部151を貫通したネジ152、153を第1の管210の周壁210bに設けた孔216、217にそれぞれ螺合することによって固定される。
【0035】
第2の管220は、略円筒形状を有し、その外周面220aの上部に着脱可能な第2固定部181を備える。この第2固定部181は、第2固定部181を貫通したネジ182、183を第2の管220の周壁220bに設けた孔228、229にそれぞれ螺合することによって固定される。
なお、第1の管210及び第2の管220は、中心軸AXに沿って延びる中空形状であれば、円筒以外の形状であってもよい。
【0036】
第1固定部151と第2固定部181との間には、ガイド部161及びガイド部171が着脱可能に配置されている。
ガイド部161は第1の管210の外周面210a上に配置され、ガイド部161を貫通したネジ162、163を第1の管210の周壁210bに設けた孔218、219にそれぞれ螺合することによって固定される。ガイド部161は、下面に溝161aを備える。この溝161aは、ガイド部161を第1の管210に固定した状態において中心軸AXに沿うように形勢されている。
ガイド部171は第2の管220の外周面220a上に配置され、ガイド部171を貫通したネジ172、173を第2の管220の周壁220bに設けた孔226、227にそれぞれ螺合することによって固定される。ガイド部171は、下面に溝171aを備える。この溝171aは、ガイド部171を第2の管220に固定した状態において、溝161aに対応する位置に、中心軸AXに沿うように形勢されている。
【0037】
連結ピン243、244は、連結部材240、245を貫通させることによりそれぞれ機械的に結合され、これにより、第1の管210と第2の管220は、2つの連結部材240、245によって互いに機械的に連結される。連結部材240と連結部材245は、同一形状を備え、第1の管210及び第2の管220の中心軸AXに関して略対称に配置される。
連結部材240は、その厚み方向に貫通する2つの孔部241、242を備える。連結部材245は、その厚み方向に貫通する2つの孔部246、247を備える。
第1連結部としての連結ピン243は、孔部241を介して第1の管210の周壁210bに設けた連結孔211に挿入され、周壁210bにおいて中心軸AXに関して連結孔211と対称な位置に設けた連結孔212から延出し、孔部246に結合される。第2連結部としての連結ピン244は、孔部242を介して第2の管220の周壁220bに設けた連結孔221に挿入され、周壁220bにおいて中心軸AXに関して連結孔221と対称な位置に設けた連結孔222から延出し、孔部247に結合される。
【0038】
また、第1の管210及び第2の管220において、連結孔211、212、221、222が設けられた部分の周壁は平面となっており、連結部材240及び連結部材245は平面を第1の管210及び第2の管220に向けた板状部材である。
このような構成により、第1の管210は連結ピン243を中心にして回動可能であり、第2の管220は、連結ピン244を中心にして回動可能となる。
【0039】
ここで、第1の管210と第2の管220は、所望の角度、例えば90度、まで互いに接触しないで回動可能な間隔で連結される。この間隔は、連結部材240、245の長さ、第1の管210上の連結孔211、212の位置、第2の管220上の連結孔221、222の位置、連結部材240及び245上の連結ピン243、244の位置によって任意に定めることができる。
【0040】
SMAワイヤ130は、中心軸AXに沿うように配置され、一方の端部が第1固定部151と第1の管210の上部の平面210cの間に挟持され、他方の端部が第2固定部181と第2の管220の上部の平面220cの間に挟持されるように、第1固定部151及び第2固定部181に固着される(図10)。
さらに、SMAワイヤ130は、第1固定部151と第2固定部181との間において、ガイド部161の溝161aと平面210cとの間及びガイド部171の溝171aと平面220cとの間に保持される。これにより、SMAワイヤ130は、ガイド部161、171によって動きを妨げられずに中心軸AXに沿った方向に伸縮可能となる。
【0041】
第1の管210及び第2の管220の下部において、周壁210b、220bには貫通孔214、224がそれぞれ設けられている。これらの貫通孔214、224に対して、バネ191の両端に挿通された固定ネジ192、193を螺合することにより、第1の管210と第2の管220をバネ191で連結している。
【0042】
変位機構200においては、第1連結部としての連結ピン243と第2連結部としての連結ピン244との距離をLD1とし、第1固定部151の中心151aと第2固定部181の中心181aとの距離の最大値をLD0としたときに次式(1)を満足する。LD0は、SMAワイヤ130に通電していない常温状態のときの距離となる。
なお、図11は、第1固定部151の中心151aから連結ピン243までの距離と第2固定部181の中心181aから連結ピン244までの距離がLD2で同一となる例を示している。
LD1>LD2 (1)
ただし、LD2=(LD0−LD1)/2である。
【0043】
SMAワイヤ130に通電するとSMAワイヤ130は加熱されて収縮する。これにより、第1の管210と第2の管220は、連結ピン243、244を中心としてそれぞれ回動するため、全体として湾曲する。
これに対して、SMAワイヤ130への通電を止めると、SMAワイヤ130は元の長さに戻ろうとする。さらに、バネ191の弾性力によって第1の管210と第2の管220が引っ張られるため、より速く元の状態に戻ろうとする。
【0044】
変位機構200においては、第1の管210と第2の管220の連結に連結部材240、245を使用したことにより、変位の前後で変位機構の中心軸のずれが小さくなる。
また、図11において、第1固定部151と第2固定部181との間のSMAワイヤ130は、通電していない常温状態では長さLD0であるのに対し、通電によって収縮する。通電加熱による収縮は、長さLD1に対応する範囲には作用しない一方、連結部材240、245の両外側の長さLD2に対応する範囲には作用する。このような作用により、湾曲角度を増幅することができ、第1の管210及び第2の管220の長手方向及び径方向に変形を拡大できる。したがって、SMAワイヤ130の少ない変位量でも大きな湾曲角度が得られる。
さらに、ガイド部161、171によってSMAワイヤ130のたるみを少なくしているため、SMAワイヤ130の少ない変形量を無駄なく湾曲に作用させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上のように、本発明に係る変位機構は、小型の管状体を複数連結した構造の湾曲に有用である。
【符号の説明】
【0046】
11 第1の管
12 第2の管
13 SMAワイヤ
14 連結部材
14a、14b 連結ピン
15 第1固定部
15a 中心
18 第2固定部
18a 中心
100 変位機構
110 第1の管
110a 外周面
110b 周壁
110c 平面
111、112 連結孔
120 第2の管
120a 外周面
120b 周壁
120c 平面
121、122 連結孔
130 SMAワイヤ
140 連結部材
141、142 孔部
143、144 連結ピン
145 連結部材
146、147 孔部
148、149 連結ピン
151 第1固定部
151a 中心
161、171 ガイド部
161a、171a 溝
181 第2固定部
181a 中心
191 バネ
200 変位機構
210 第1の管
210a 外周面
210b 周壁
210c 平面
211、212 連結孔
220 第2の管
220a 外周面
220b 周壁
220c 平面
221、222 連結孔
240 連結部材
241、242 孔部
243、244 連結ピン
245 連結部材
246、247 孔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1固定部及び第1連結部を有する第1の管と、
第2固定部及び第2連結部を有する第2の管と、
前記第1固定部及び前記第2固定部に固着された形状記憶部材と、
前記第1連結部と前記第2連結部を機械的につなぐ連結部材と、
を備え、
前記第1連結部及び前記第2連結部を中心に前記第1の管及び前記第2の管がそれぞれ回動することを特徴とする変位機構。
【請求項2】
前記第1連結部と前記第2連結部の距離をLD1とし、前記第1固定部の中心と前記第2固定部の中心の距離の最大値をLD0としたときに次式(1)を満足することを特徴とする請求項1に記載の変位機構。
LD1>LD2 (1)
ただし、LD2=(LD0−LD1)/2である。
【請求項3】
前記第1の管と前記第2の管が複数連結されていることを特徴とする請求項1に記載の変位機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−85867(P2013−85867A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231521(P2011−231521)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】