説明

変速装置

【課題】デテント機構の組付性を向上させることができる変速装置を提供する。
【解決手段】ミッションケース3に変速フォーク軸41・42・43を横架して、変速フォーク軸41・42・43に変速レバー70を連結させるとともに、変速フォーク軸41・42・43を所定の変速位置で保持するデテント機構60を備える変速装置30において、変速フォーク軸41・42・43の一端をミッションケース3の内側から外側に突出して、デテント機構60を、変速フォーク軸41・42・43の一端側と、ミッションケース3の外側面に形成されたデテント機構取付部65とに設ける変速装置30である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速装置に関し、特に、変速フォーク軸を所定の変速位置に位置決めするためのデテント機構の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、変速フォーク軸を所定の変速位置に位置決めするためのデテント機構を変速装置に設けた技術が公知となっている。
【0003】
例えば、特許文献1においては、変速フォーク軸が変速装置のミッションケースに横架されている。そして、主変速レバーが前記変速フォーク軸の一端部に連結機構を介して連結され、変速フォーク軸の操作位置を決めるデテント機構が変速フォーク軸の他端部に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−90833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1においては、前記デテント機構を構成する鋼球やスプリング等の部品がミッションケースの内部に配置されているため、デテント機構の組付け時には、左右に分割されてなるミッションケースの一側の内部に、最初に変速フォーク軸とともに鋼球やスプリングを組み込み、次に、変速軸や歯車を組み込むことになる。したがって、デテント機構の組付性が悪く、例えば、デテント機構のメンテナンス時や、デテント機構又はその一部を構成する部品の交換時には、ミッションケースの一側に対して他側を離間させ、その一側の内部に組み込まれた変速軸や歯車を外してから変速フォーク軸を抜く必要があるため、メンテナンスや部品交換が煩雑であるという問題点があった。
【0006】
そこで、本発明は、デテント機構の組付性を向上させることができる変速装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、第1の発明に係る変速装置は、ミッションケースに変速フォーク軸が横架され、前記変速フォーク軸に変速レバーが連結されるとともに、前記変速フォーク軸上に所定の変速位置で保持するデテント機構を配置する変速装置において、前記変速フォーク軸の一端は、前記ミッションケースの一側より外側に突出され、その変速フォーク軸の一端側と、前記ミッションケースの外側面に形成したデテント機構取付部にデテント機構を設けるものである。
【0009】
第2の発明に係る変速装置は、第1の発明に係る変速装置において、前記デテント機構取付部は蓋体にて閉じられるものである。
【0010】
第3の発明に係る変速装置は、第1の発明に係る変速装置において、前記ミッションケースに複数の変速フォーク軸が横架され、前記複数の変速フォーク軸に対し直角な同一面上に、各変速フォーク軸に対応する前記デテント機構が配設されるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
第1の発明に係る変速装置においては、デテント機構を、ミッションケースの内部に配置される歯車等とは関係なく、ミッションケースの外側から組み付けることが可能となる。したがって、デテント機構をミッションケースに対して組み付ける順番の制約がなくなり、デテント機構の組付性を向上させることができる。ひいては、デテント機構の組付後であっても、デテント機構のメンテナンスや部品交換を容易に行うことができる。
【0013】
第2の発明に係る変速装置においては、蓋体を外すだけの簡単な作業で、デテント機構のメンテナンスや部品交換等を容易に行うことができる。
【0014】
第3の発明に係る変速装置においては、複数の変速フォーク軸に対応するデテント機構を一度に組み付けることができる。また、ミッションケースをコンパクトにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】管理機の全体的な構成を示した左側面図。
【図2】ミッションケースの後面断面図。
【図3】ミッションケース上部の左側面断面図。
【図4】ミッションケース上部の後面断面図。
【図5】ミッションケース及びロータリ耕耘装置の後面断面図。
【図6】ガイド部の平面図。
【図7】ミッションケース上部の左側面図。
【図8】ミッションケース上部の斜視図。
【図9】管理機の全体的な構成を示した右側面図。
【図10】ミッションケース上部の右側面図。
【図11】支持部材の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態に係る変速装置30を、管理機1に設置した例について説明する。なお、本発明の変速装置は田植機等の移植機やトラクタや収穫機等にも適用可能であり、その適用対象は特に限定するものではない。
【0017】
まず、管理機1の全体的な構成について説明する。
図1に示すように、管理機1は、エンジン2を前部に、変速装置30のミッションケース3を中央部に、作業機としてのロータリ耕耘装置4を後部に備える。
【0018】
エンジン2は、エンジン台5上に載置固定されている。ミッションケース3は、エンジン台5の後部に固設されている。エンジン2の出力軸6にはプーリー95が固設され、変速装置30の入力軸7にはプーリー96が固設される。そして、プーリー95とプーリー96とにベルト13が巻き掛けられて、動力がエンジン2の出力軸6からミッションケース3の入力軸7にプーリー95・96及びベルト13を介して伝達可能とされている。プーリー95・96及びベルト13は、伝動ケース9により覆われている。
【0019】
ミッションケース3は、側面視略逆V字状に構成されており、その前下部に車軸11が軸支され、この車軸11に車輪12が固設されている。車輪12は、動力が変速装置30から車軸11等を介して伝達されることによって、回転駆動可能とされている。また、ミッションケース3の後下部に耕耘爪軸16が軸支され、この耕耘爪軸16に複数本の耕耘爪17・17・・・が設けられている。耕耘爪17・17・・・は、動力が変速装置30から耕耘爪軸16等を介して伝達されることによって、回転駆動可能とされている。耕耘爪17・17・・・は耕耘カバー18により上方から覆われている。こうして、管理機1の後下部にロータリ耕耘装置4が構成されている。
【0020】
ミッションケース3にはハンドル90が取り付けられている。ハンドル90は、前低後高の傾斜状に配置され、ミッションケース3から後上方に向かって延出される。ハンドル90の後部には、主クラッチレバー92が設けられている。ハンドル90の後部で主クラッチレバー92近傍にアクセルレバー93及びデフロックレバー94が設けられている。また、ミッションケース3には、変速レバー70が取り付けられている。変速レバー70は、ハンドル90よりも前方で前低後高の傾斜状に配置され、ミッションケース3から後上方に向かって延出される。
【0021】
次に、変速装置30の構成について説明する。
図2及び図3に示すように、ミッションケース3には、入力軸7と、主変速軸31と、中間軸32と、走行出力軸33と、PTO軸15と、車軸11と、第1変速フォーク軸41と第2変速フォーク軸42と、第3変速フォーク軸43と、が各々平行に左右水平方向に横架されている。
図3に示すように、入力軸7と、主変速軸31と、走行出力軸33とは、それぞれの軸心位置が側面視で三角形の各頂点に位置するように配置されている。
【0022】
図4に示すように、入力軸7はミッションケース3の内側から左外側方に突出されて、その一端側がミッションケース3の外側に位置するように配置されている。この入力軸7の一端側に、上述のようにプーリー96(図1)が固設されている。また、入力軸7上には第1変速ギヤ21が左右摺動可能かつ相対回転不能にスプライン嵌合されている。
第1変速ギヤ21には、第1シフトフォーク22の先端が嵌合されている。第1シフトフォーク22の基部は、後述する第1変速フォーク軸41に固設されている。
【0023】
主変速軸31上には第2変速ギヤ23と、第3変速ギヤ24とがそれぞれ左右摺動可能かつ相対回転不能にスプライン嵌合されている。
第2変速ギヤ23及び第3変速ギヤ24には、それぞれシフトフォーク25・26の先端が嵌合されている。そして、シフトフォーク25・26の基部は、それぞれ後述する変速フォーク軸42・43に固設されている。
第2変速ギヤ23及び第3変速ギヤ24は、前記入力軸7上の第1変速ギヤ21と噛合可能とされている。これにより、入力軸7からの動力が主変速軸31に伝達可能とされている。
【0024】
中間軸32には、ギヤ27が固設されるとともに、カウンタギヤ28がベアリングを介して回転自在に支持されている。また、中間軸32の一端部には、ギヤ部29が形成されている。
ギヤ27は、入力軸7上の第1変速ギヤ21、及び主変速軸31上の第2変速ギヤ23と噛合可能とされている。これにより、入力軸7からの動力、及び主変速軸31からの動力が中間軸32に伝達可能とされている。
カウンタギヤ28は、主変速軸31上の第3変速ギヤ24及び後述するPTO軸15に固設されたギヤ44(図5)と噛合可能とされている。これにより、主変速軸31からの動力がPTO軸15に伝達可能とされている。
ギヤ部29は、後述する走行出力軸33上に固設されたギヤ55と噛合されている。これにより、中間軸32からの動力が走行出力軸33に伝達可能とされている。
【0025】
走行出力軸33上には、ギヤ55と、スプロケット56とが固設されている。
ギヤ55は、主変速軸31上の第2変速ギヤ23と噛合可能とされ、中間軸32のギヤ部29と噛合されている。これにより、中間軸32からの動力が走行出力軸33に伝達可能とされている。
また、図2に示すように、スプロケット56は、車軸11上にデフ装置を介して設けられるスプロケット58とチェーン57を介して連結されている。これにより、走行出力軸33からの動力が車軸11に伝達可能とされている。
【0026】
図5に示すように、PTO軸15上には、ギヤ44と、スプロケット45とが固設されている。
スプロケット45は、耕耘爪軸16上のスプロケット19とチェーン14を介して連結されている。これにより、PTO軸15からの動力が耕耘爪軸16に伝達可能とされている。
【0027】
図3及び図4に示すように、ミッションケース3内には変速ギヤ21・23・24を入力軸7及び第1変速ギヤ21の軸方向、即ち左右方向に摺動させるための変速フォーク軸41・42・43が設けられている。変速フォーク軸41・42・43は、入力軸7及び第1変速ギヤ21と平行にミッションケース3の上部寄りに横架され、ミッションケース3の内側から左右外側方に突出されて、その両端部がミッションケース3の外側に位置するように配置されている。変速フォーク軸41・42・43は、それらの一端部において変速レバー70と係合可能とされており、変速レバー70との係合時に変速レバー70が操作されることによって、左右方向に摺動可能とされている。変速フォーク軸41・42・43は、それらの軸心位置がそれぞれ側面視で三角形の各頂点に位置するように配置されている。本実施形態においては、変速フォーク軸41の前方に変速フォーク軸42が配置され、変速フォーク軸41と変速フォーク軸42との間の下方に変速フォーク軸43が配置されている。このように変速フォーク軸41・42・43を配置することで、各変速フォーク軸間の距離が比較的短くなるため、変速レバー70の上下方向への移動距離を短くすることができ、変速装置30を小型化することができる。
【0028】
第1変速フォーク軸41は、第1シフトフォーク22を介して第1変速ギヤ21を摺動可能としている。第1変速フォーク軸41は、ミッションケース3に軸方向、即ち左右方向に摺動可能に横架されている。ミッションケース3内において、第1変速フォーク軸41の中途部に、第1シフトフォーク22の基部が固設されている。ミッションケース3外において、第1変速フォーク軸41の右側端部に、変速レバー70が係脱可能なガイド部材50が固設されている。ガイド部材50は、平面視略U字状に形成される係合部分50aを有し、該係合部分50aに変速レバー70の係合突出部70d(図10参照)が係合可能となっている。係合部分50aに変速レバー70の係合突出部70dが係合した状態で、変速レバー70が操作されることによって、第1変速フォーク軸41が軸方向に摺動される。
【0029】
また、第1変速フォーク軸41の左側端部が後述するミッションケース3の左上側部に形成された収納空間3a内に突出されている。第1変速フォーク軸41の側端部に複数のくびれ部41bが軸方向に適宜の間隔ごとに形成されている。該くびれ部41bには後述するデテント機構60の鋼球が係合可能となっている。くびれ部41bは、本実施形態では3箇所形成され、中立位置と低速位置と正転作業位置でくびれ部41bとデテント用鋼球62とが係合して変速位置を保持可能としている。
【0030】
第2変速フォーク軸42は、第2シフトフォーク25を介して第2変速ギヤ23を摺動可能としている。第2変速フォーク軸42は、ミッションケース3に軸方向、即ち左右方向に摺動可能に横架されている。ミッションケース3内において、第2変速フォーク軸42の中途部に、第2変速ギヤ23を摺動させるための第2シフトフォーク25の基部側が固設されている。また、第2変速フォーク軸42の右側端部は、ミッションケース3の右側より外側に突出されており、その突出部分には、変速レバー70の係合突出部70dが係脱可能な係合溝42aが形成されている。係合溝42aに変速レバー70の係合突出部70dを係合させることで、変速レバー70を操作すると第2変速フォーク軸42が軸方向に摺動される。
【0031】
また、第2変速フォーク軸42の左側端部は前記収納空間3a内に突出され、第2変速フォーク軸42の左側軸上に複数のくびれ部42bが形成されている。該くびれ部42bにはデテント機構60のデテント用鋼球62が係合可能としている。くびれ部42bは、本実施形態では3箇所形成され、移動高速位置、中立位置、移動後進位置でくびれ部42bとデテント用鋼球62とが係合して変速位置を保持可能としている。
【0032】
第3変速フォーク軸43は、第3シフトフォーク26を介して第3変速ギヤ24を摺動可能としている。第3変速フォーク軸43は、ミッションケース3に軸方向、即ち左右方向に摺動可能に横架されている。ミッションケース3内において、第3変速フォーク軸43の中途部に、第3シフトフォーク26の基部側が固設されている。また、第3変速フォーク軸43の右側端部がミッションケース3の右側より外側に突出されており、その突出部分には、変速レバー70の係合突出部70dが係脱可能な係合溝43aが形成されている。係合溝43aに変速レバー70の係合突出部70dを係合させることで、変速レバー70を操作すると、第3変速フォーク軸43が軸方向に摺動される。
【0033】
また、第3変速フォーク軸43の左側端部は前記収納空間3a内に突出され、第3変速フォーク軸43の左側軸上に複数のくびれ部43bが形成されている。該くびれ部43bにはデテント機構60のデテント用鋼球62が係合可能としている。くびれ部43bは、本実施形態では2箇所形成され、低速位置、逆転作業位置でくびれ部43bとデテント用鋼球62とが係合して変速位置を保持可能としている。
【0034】
図3に示すように、ミッションケース3の上部には変速レバー70をその変速操作時にガイドするためのガイド部72が設けられている。
図6に示すように、ガイド部72には、変速装置30の変速パターンを設定するレバーガイド溝73が設けられている。レバーガイド溝73は、略T字状のガイド溝を上下方向に連ねたような形状に構成されている。レバーガイド溝73は、左右方向に延び各々平行な上段、中段、下段の3つのガイド溝74・75・76を有する。レバーガイド溝73は、上段のガイド溝74が移動用の溝となり、中段のガイド溝75及び下段のガイド溝76が移動側及び作業用の溝となるように構成されている。
【0035】
上段のガイド溝74は、第2変速フォーク軸42の摺動に対応する溝である。即ち、レバーガイド溝73に挿通された変速レバー70が上段のガイド溝74へ移動することによって、第2変速フォーク軸42が変速レバー70と係合する。そして、変速レバー70が上段のガイド溝74に沿って左右方向に移動することによって、第2変速フォーク軸42が軸方向(左右方向)に摺動する。上段のガイド溝74は、その左側から移動高速位置、中立位置、移動後進位置となるように構成されている。
【0036】
変速レバー70を上段のガイド溝74の左右中央にある中立位置に回動した状態では、第2シフトフォーク25に係合された第2変速ギヤ23は第1変速ギヤ21と噛合しているが、第1変速ギヤ21はその他のギヤと噛合していない状態となっている。また、第2変速ギヤ23はギヤ27、カウンタギヤ28及びギヤ55とも噛合していない。よって、入力軸7に伝えられた動力は、車軸11にも耕耘爪軸16にも伝えられない中立の状態となっている。そして、この中立位置において、変速レバー70の係合突出部70dが係合溝42aと係合した状態から、レバーガイド溝73の縦溝に沿って変速レバー70を下方へ回動操作することで、第1変速フォーク軸41のガイド部材50への係合を可能としている。
【0037】
この中立位置から変速レバー70を上段のガイド溝74に沿って左側へ移動させると、第2変速フォーク軸42が左方へ摺動して、第2シフトフォーク25を介して第2変速ギヤ23が同時に左方へ摺動する。そして、第2変速ギヤ23は、走行出力軸33上のギヤ55と噛合して、移動高速位置となる。このとき、第1変速ギヤ21と、第2変速ギヤ23とは噛合した状態となっている。
このような状態では、エンジン2からの動力は、入力軸7→第1変速ギヤ21→第2変速ギヤ23→ギヤ55→走行出力軸33→スプロケット56→チェーン57→スプロケット58→車軸11と順に伝えられることとなる。これにより、管理機1が高速走行可能となる。
【0038】
変速レバー70が中立位置から上段のガイド溝74に沿って右側へ移動すると、第2変速フォーク軸42が右方へ摺動して、第2シフトフォーク25を介して第2変速ギヤ23が同時に右方へ摺動する。そして、第2変速ギヤ23は、中間軸32上のギヤ27と噛合して、移動後進位置となる。このとき、第1変速ギヤ21と、第2変速ギヤ23とは噛合した状態となっている。
このような状態では、エンジン2からの動力は、入力軸7→第1変速ギヤ21→第2変速ギヤ23→ギヤ27→中間軸32→ギヤ部29→ギヤ55→走行出力軸33→スプロケット56→チェーン57→スプロケット58→車軸11と順に伝えられることとなる。これにより、管理機1が後進走行可能となる。
【0039】
中段のガイド溝75は、第1変速フォーク軸41の摺動に対応する溝である。即ち、変速レバー70が上段のガイド溝74の中立位置から中段のガイド溝75の中立位置(中段のガイド溝75の左側)へ移動すると、変速レバー70の係合突出部70dが係合溝42aから外れてガイド部材50の係合部分50aに係合する。
【0040】
この状態から変速レバー70が中段のガイド溝75に沿って1段右側へ移動すると、第1変速フォーク軸41が右方向へ摺動して、第1シフトフォーク22を介して第1変速ギヤ21が右方向へ摺動する。そして、第1変速ギヤ21は、中間軸32上のギヤ27と噛合して、低速位置となる。この低速位置では、変速レバー70の係合突出部70dがガイド部材50と係合した状態から、レバーガイド溝73の縦溝に沿って変速レバー70を下方へ操作することで、第3変速フォーク軸43の係合溝43aへの係合を可能としている。
この低速位置では、エンジン2からの動力は、入力軸7→第1変速ギヤ21→ギヤ27→中間軸32→ギヤ部29→ギヤ55→走行出力軸33→スプロケット56→チェーン57→スプロケット58→車軸11と順に伝えられることとなる。これにより、管理機1が低速走行可能となる。
【0041】
この状態から更に変速レバー70が中段のガイド溝75に沿って右側端まで回動すると、第1変速フォーク軸41が右方向へ摺動して、第1シフトフォーク22を介して第1変速ギヤ21が右方向へ摺動する。そして、第1変速ギヤ21は、ギヤ27と噛合した状態で、カウンタギヤ28とも噛合し、正転作業位置となる。
【0042】
この正転作業位置では、エンジン2からの動力が、前記低速位置と同様に、入力軸7から車軸11に伝達されると同時に、第1変速ギヤ21→カウンタギヤ28→ギヤ44→PTO軸15→スプロケット45→チェーン14→スプロケット19→耕耘爪軸16順に伝えられることとなる。これにより、管理機1が低速走行しながら耕耘作業を行うことが可能となる。
【0043】
下段のガイド溝76は、第3変速フォーク軸43の摺動に対応する溝である。即ち、変速レバー70を中段のガイド溝75の低速位置から下段のガイド溝76へ移動させると、変速レバー70の係合突出部70dがガイド部材50の係合部分50aから外れて係合溝43aと係合する。このとき、管理機1は低速走行可能な状態である。
【0044】
また、変速レバー70が下段のガイド溝76に沿って左方向に移動すると、第3変速フォーク軸43が軸方向に摺動して、第3シフトフォーク26を介して第3変速ギヤ24が左方向に摺動する。そして、変速レバー70が下段のガイド溝76の左側(逆転モード)まで移動すると、第3シフトフォーク26を介して第3変速ギヤ24がカウンタギヤ28と噛合して逆転作業位置となる。
【0045】
この逆転作業位置では、エンジン2からの動力は、前記低速位置と同様に車軸11に動力が伝えられ、同時に、入力軸7→第1変速ギヤ21→第3変速ギヤ24→カウンタギヤ28→ギヤ44→PTO軸15→スプロケット45→チェーン14→スプロケット19→耕耘爪軸16と順に伝えられることとなる。これにより、耕耘爪軸16が逆転駆動されることとなる。
【0046】
次に、デテント機構60について説明する。
【0047】
図4及び図7に示すように、各変速フォーク軸41・42・43の左側端部と、ミッションケース3の外側面に形成された後述のデテント機構取付部65とには、所定の変速位置を保持するためのデテント機構60が設けられている。すなわち、本実施形態においては、ミッションケース3の左側面にデテント機構60が設けられ、右側面に変速レバー70が配置されている。
【0048】
デテント機構60は、スプリング61と、デテント用鋼球62と、スプリング61、デテント用鋼球62を収納する収納溝65bと、各変速フォーク軸41・42・43のくびれ部41b・42b・43bとを備える。各変速フォーク軸(変速フォーク軸41・42・43)に対して、1組のスプリング61及びデテント用鋼球62が設けられている。即ち、本実施形態の変速装置30では、3つのデテント機構60・60・60を備えることとなる。
【0049】
後述するデテント機構取付部65の収納溝65bにおいて、デテント用鋼球62は、スプリング61により一方向に付勢されて、第1変速フォーク軸41の左側端部外周に押し付けられる。そして、デテント用鋼球62が、第1変速フォーク軸41のいずれか一つのくびれ部41bに嵌り込むことで、第1変速フォーク軸41の位置決めが可能となる。同様に、デテント用鋼球62が、第2変速フォーク軸42のいずれか一つのくびれ部42b、又は第3変速フォーク軸43のいずれか一つのくびれ部43bに嵌り込むことで、第2変速フォーク軸42、又は第3変速フォーク軸43の位置決めが可能となる。
【0050】
尚、収納溝65bにおいて、第1変速フォーク軸41と第2変速フォーク軸42との間、及び第1変速フォーク軸41と第3変速フォーク軸43との間には、2つの鋼球63が配置されている。鋼球63は、各変速ギヤ21・23・24のダブル噛みを防止するためのものである。即ち、一方の鋼球63が1の変速フォーク軸のくびれ部に嵌合している時にのみ、他方の変速フォーク軸が摺動可能となり、2つの変速フォーク軸が同時に摺動できない構成としている。
【0051】
次に、デテント機構取付部65について説明する。
【0052】
デテント機構取付部65は、ミッションケース3の外側面に位置して、デテント機構60を設けるための部分である。図4、図7及び図8に示すように、デテント機構取付部65は、壁部3bを備える。壁部3bはミッションケース3の上部左外側面から外側方に、変速フォーク軸41・42・43と、収納溝65bとを外側から囲むように環状に突設されて、その内側に略箱状の収納空間3aを形成している。こうして、デテント機構取付部65は、ミッションケース3の外側に向かって開口し、収納空間3aを外部と連通させている。
図4及び図7に示すように、収納空間3aのミッションケース3側面には、変速フォーク軸41・42・43を挿通するための挿通孔65aと、収納溝65bと、が設けられている。デテント用鋼球62は、スプリング61と、変速フォーク軸41・42・43との間に配設されている。デテント用鋼球62は、変速フォーク軸41・42・43の外周面に当接するように付勢され、デテント用鋼球62が、くびれ部41b、くびれ部42b、くびれ部43bのいずれか1つに嵌合することで、変速フォーク軸41・42・43を容易に摺動できないように保持する構成としている。
【0053】
収納溝65bは、変速フォーク軸41・42・43の軸方向に対して直交する面に面して、ミッションケース3の外側に向けて開口し、その内部に配置できるようにしている。つまり、複数のデテント機構が、収納溝65bに収納される際に、変速フォーク軸41・42・43と直交する同一面上に位置するようになっている。
図7に示すように、変速フォーク軸41・42・43のデデント機構毎に応じて設けられた収納溝65bは、各挿通孔65aと連通されるように形成されている。また、第1変速フォーク軸41と第2変速フォーク軸42の間、及び、第2変速フォーク軸42と変速フォーク軸43の間には鋼球63を収納するための収納溝65f・65fが形成されている。
【0054】
また、図4及び図7に示すように、前記収納溝65b・65b・65b・65f・65fが中蓋体65dで覆われることによって、スプリング61、デテント用鋼球62及び鋼球63が収納溝65bから脱落することを防止するようになっている。中蓋体65dは、収納空間3a内に収納可能な大きさを有する板状の部材とされ、ボルト等によりミッションケース3に着脱可能に取り付けられる。
【0055】
さらに、図4及び図8に示すように、デテント機構取付部65の開口部は、外蓋体65eにより外方から覆われる。外蓋体65eは、デテント機構取付部65の開口部を完全に閉塞することができる大きさを有する板状の部材又は箱状の部材とされ、壁部3bに接した状態で、ボルト等によりミッションケース3に着脱可能に取り付けられる。デテント機構取付部65の外側に外蓋体65eを設けることによって、デテント機構60やミッションケース3の内部に、水や泥等が浸入することを防止している。
【0056】
このように、デテント機構取付部65をミッションケース3の外側面に設けることで、デテント機構60をミッションケース3にその外側から取り付けることが可能となり、収納溝65b・65b・65b・65f・65fにスプリング61、デテント用鋼球62及び鋼球63を挿入して中蓋体65dで覆うことにより容易に組立ができるようになる。そして、外蓋体65eと中蓋体65dを外すだけで、メンテナンス及び部品交換等が容易に行うことができるようになる。
【0057】
次に、変速レバー70の構成について説明する。
【0058】
変速レバー70は、変速フォーク軸41・42・43を摺動させて変速ギヤ21・23・24を軸方向に摺動させて変速操作するためのものである。
図9に示すように、変速レバー70は、レバー本体部70aと、把持部70bと、回動支点部70cと、から構成されている。
【0059】
レバー本体部70aは、変速レバー70の主たる部分であり、棒状部材で構成されている。レバー本体部70aは、その基端部側で回動支点部70cと連続して、回動支点部70cから斜め後方へ延出されている。レバー本体部70aは、この延出端部である先端部で把持部70bと連結されている。
把持部70bは、変速レバー70の操作用の持ち手部分である。
図9及び図10に示すように、回動支点部70cは、支持部材80を介してミッションケース3に回動可能に取り付けられる。
【0060】
また、レバー本体部70aの中途部には、前記変速フォーク軸41・42・43と係合可能な係合突出部70dが設けられている。
係合突出部70dは、本実施形態では、回動支点部70cの後部から上後方に突出して設けられ、側面視略逆L字状に構成されている。係合突出部70dの先端(後端)は、変速レバー70を上方に回動してガイド部72の上段のガイド溝74に位置させたときに、第2変速フォーク軸42の係合溝42aに係合し、変速レバー70を上下中途部の中段のガイド溝75に位置させたときに、第1変速フォーク軸41に固設されるガイド部材50の係合部分50a(図4)に係合し、変速レバー70を下方に回動してガイド部72の下段のガイド溝76に位置させたときに、第3変速フォーク軸43の係合溝43aに係合する。したがって、係合突出部70dがガイド部材50の係合部分50aに係合することで、第1変速フォーク軸41を摺動させることが可能となる。同様に、係合突出部70dが係合溝42aに係合することで、第2変速フォーク軸42を摺動させることが可能となり、係合突出部70dが係合溝43aに係合することで、第3変速フォーク軸43を摺動させることが可能となる。
【0061】
このように、変速レバー70は、第1変速フォーク軸41に固設されるガイド部材50の係合部分50a、第2変速フォーク軸42の係合溝42a、及び第3変速フォーク軸43の係合溝43aに係合することで、変速フォーク軸41・42・43を摺動させることができる。即ち、1つの変速レバー70で、3つの変速フォーク軸(変速フォーク軸41・42・43)を摺動させることができる。そのため、各変速フォーク軸(変速フォーク軸41・42・43)を摺動するために別途レバーやリンク機構等を設ける必要がないため、変速装置30の構造を簡素化することができる。
【0062】
また、図9及び図10に示すように、変速レバー70は、その基端部分が支持部材80に回動可能に支持されている。
図11に示すように、支持部材80は、略十字状一枚の平板を折り曲げて成形され、上下方向支持部81と、左右方向支持部84と、を有する。
【0063】
即ち、支持部材80は、平面視略コ字状に折り曲げて、左板と右板を上下方向支持部81・81とし、該上下方向支持部81・81の中央部に、軸心が一致するように挿通孔82・82を開口している。該挿通孔82・82に、変速フォーク軸41・42・43の軸方向と平行に、ミッションケース3から側方に突設された回動支軸83が挿通され、上下方向支持部81・81が上下回動自在に支持されている。こうして、支持部材80が回動支軸83に回動自在に支持された状態で、ミッションケース3に取り付けられることとなる。
【0064】
また、支持部材80は、側面視略コ字状に折り曲げて、上板と下板を左右方向支持部84・84とし、該左右方向支持部84・84の中央部に、軸心が一致するように挿通孔85・85を開口している。挿通孔85・85には、変速レバー70の基端部から上方に突設される回動支軸71が挿通され、左右方向支持部84・84が回動支軸71により回動自在に支持される。回動支軸71と回動支軸83は直交して配設される。こうして、変速レバー70が回動支軸71により支持部材80に回動自在に支持され、支持部材80を介してミッションケース3に取り付けられることとなる。
【0065】
このように、支持部材80は、ミッションケース3より突設される回動支軸83に回動自在に支持されるとともに、変速レバー70の基端部より突設される回動支軸71を回動自在に支持する。よって、変速レバー70は、回動支軸83を中心に上下方向に回動操作可能となり、回動支軸71を中心に左右方向に回動操作可能となる。
【0066】
また、支持部材80は、一枚の平板を側面視及び平面視略コ字状に折り曲げ形成し、上下の板及び左右の板に挿通孔を開口して、それぞれの挿通孔に変速レバー70に固定した回動支軸71及びミッションケース3より突設した回動支軸83を挿通して枢支することにより、変速レバー70を左右方向及び上下方向に操作可能に支持している。そのため、操作方向に対応した複数の支持部材を、溶接等によって一体成形する必要がないため、部品点数を削減することができる。また、支持部材80は、一つの部品で構成されるため、管理が容易となり、また、成形後の部品精度が向上する。
【0067】
以上のように、本発明の一実施形態に係る変速装置30は、ミッションケース3に変速フォーク軸41・42・43を横架して、変速フォーク軸41・42・43に変速レバー70を連結させるとともに、変速フォーク軸41・42・43を所定の変速位置で保持するデテント機構60を備える変速装置30において、変速フォーク軸41・42・43の一端をミッションケース3の内側から外側に突出して、デテント機構60を、変速フォーク軸41・42・43の一端側と、ミッションケース3の外側面に形成されたデテント機構取付部65とに設けるものである。
このように変速装置30を構成することで、デテント機構60を、ミッションケース3の内部に配置される歯車等とは関係なく、ミッションケース3の外側から組み付けることが可能となる。したがって、デテント機構60をミッションケース3に対して組み付ける順番の制約がなくなり、デテント機構60の組付性を向上させることができる。ひいては、デテント機構60の組付後であっても、デテント機構60のメンテナンスや部品交換を容易に行うことができる。
【0068】
また、本発明の一実施形態に係る変速装置30は、デテント機構60を蓋体、即ち中蓋体65d及び外蓋体65eにより覆うものである。
このように変速装置30を構成することで、蓋体(中蓋体65d、外蓋体65e)を外すだけの簡単な作業で、デテント機構60のメンテナンスや部品交換等を容易に行うことができる。
【0069】
さらに、本発明に一実施形態に係る変速装置30は、
このように変速装置30を構成することで、変速フォーク軸41・42・43に対応するデテント機構60を一度に組み付けることができる。また、ミッションケース3をコンパクトにすることができる。
【符号の説明】
【0070】
1 管理機
3 ミッションケース
30 変速装置
41 第1変速フォーク軸
42 第2変速フォーク軸
43 第3変速フォーク軸
60 デテント機構
65 デテント機構取付部
65 中蓋体
65e 外蓋体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミッションケースに変速フォーク軸を横架して、前記変速フォーク軸に変速レバーを連結させるとともに、前記変速フォーク軸を所定の変速位置で保持するデテント機構を備える変速装置において、
前記変速フォーク軸の一端を前記ミッションケースの内側から外側に突出して、前記デテント機構を、前記変速フォーク軸の一端側と、前記ミッションケースの外側面に形成されたデテント機構取付部とに設けることを特徴とする変速装置。
【請求項2】
前記デテント機構を蓋体により覆うことを特徴とする請求項1に記載の変速装置。
【請求項3】
前記変速フォーク軸を各々平行に複数設け、前記各変速フォーク軸に対応するデテント機構を、前記複数の変速フォーク軸と直交する同一面上に配置することを特徴とする請求項1に記載の変速装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−64318(P2011−64318A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217995(P2009−217995)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】