説明

多チャンネル高周波信号切替装置

【課題】多チャンネルの高周波信号切り替えを小規模の回路構成にて容易に実現できる多チャンネル高周波信号切替装置を提供する。
【解決手段】多チャンネルの高周波信号を扱う切替回路を、四辺形のマトリクス配線領域11を囲繞するように例えば8組の高周波信号切替スイッチ12A〜12Hを設け、各チャンネルに共通のマトリクス配線領域に集成して、多チャンネル集成型の高周波信号切替回路を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力された複数チャンネルの高周波信号を、任意の組み合わせによる複数チャンネルの高周波信号に選択的に切り替えて出力する多チャンネル高周波信号切替装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング装置(MRI)においては、入力された複数チャンネルの高周波信号を、任意の組み合わせによる複数チャンネルの高周波信号に選択的に切り替えて出力する高周波信号切替回路を用いて、複数の要素コイルを複数の受信チャンネルに対して任意に割り当てる機能を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3455530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記装置に設けられた従来の高周波信号切替回路は、高周波信号の切替チャンネル数が少なく、切替チャンネル数に合わせてスイッチをディスクリート接続した回路構成により実現していた。この従来技術の延長で、切替チャンネル数の多チャンネル化を図ろうとすると、高周波信号を扱う切替回路の回路規模が大型化し、装置のコンパクト化を図る上で問題があった。さらに、回路規模の大型化に伴い、扱う高周波信号の線路長が延長することから、信号の伝送ロス、漏洩、S/N劣化等、回路動作上の不具合を招く虞があるという問題があった。
【0005】
本発明は、多チャンネルの高周波信号切り替えを小規模の回路構成にて容易に実現できる多チャンネル高周波信号切替装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、多チャンネルの高周波信号を扱う切替回路を各チャンネルに共通のマトリクス配線領域に集成し、多チャンネル集成型の高周波信号切替回路を構成することによって、多チャンネル高周波信号切替回路の小型化を実現している。
【0007】
本発明は、少なくとも第1の配線層と第2の配線層が形成された多層基板であって、前記第1の配線層にk本(kは2以上の整数)の第1信号線を一定の間隔で配置し、前記第2の配線層に前記第1信号線と交差するk本の第2信号線を一定の間隔で配置してマトリクス配線領域が形成された基板と、前記基板の第1実装面の前記マトリクス配線領域を囲繞する位置に設けられ、前記第1信号線に接続されたk個のスイッチ素子を1組とする複数組の高周波信号切替スイッチであって、各組の外部入力端から供給されたチャンネル単位の高周波信号を前記マトリクス配線領域の任意の前記第1信号線に選択的に出力する第1群の高周波信号切替スイッチと、前記基板の前記第1実装面の反対面である第2実装面の前記マトリクス配線領域を囲繞する位置に設けられ、前記第2信号線に接続されたk個のスイッチ素子を1組とする複数組の高周波信号切替スイッチであって、各組の外部入力端から供給されたチャンネル単位の高周波信号を前記マトリクス配線領域の任意の前記第2信号線に選択的に出力する第2群の高周波信号切替スイッチと、前記第1群および第2群の高周波信号切替スイッチに接続され、前記マトリクス配線領域の前記第1信号線と前記第2信号線の交点からkチャンネル単位の高周波信号を取り出すk個の出力端と、を具備した多チャンネル高周波信号切替装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、多チャンネルの高周波信号を扱う切替回路を各チャンネルに共通のマトリクス配線領域に集成して、多チャンネル集成型の高周波信号切替回路を構成したことにより、多チャンネルの高周波信号の切り替えを小規模の回路構成にて容易に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態に係る多チャンネル高周波信号切替装置の構成を示すブロック図。
【図2】上記図1に示す高周波信号切替スイッチの構成を示すブロック図。
【図3】上記図1に示す基板の積層構造を示す図。
【図4】上記図1に示す多チャンネル高周波信号切替装置の切替回路を示す回路図。
【図5】上記実施形態に係る信号伝送路の特性説明図。
【図6】上記実施形態に係る信号伝送路の特性説明図。
【図7】上記実施形態に係る信号伝送路の特性説明図。
【図8】上記実施形態に係る多チャンネル高周波信号切替装置の応用例を示すブロック図。
【図9】本発明の第2実施形態に係る多チャンネル高周波信号切替装置の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0011】
本発明の第1実施形態に係る多チャンネル高周波信号切替装置の構成を図1乃至図4に示す。図1は本発明の第1実施形態に係る多チャンネル高周波信号切替装置の構成を示すブロック図、図2は上記図1に示す高周波信号切替スイッチの構成を示すブロック図、図3は上記図1に示す基板の積層構造を示す図、図4は上記図1に示す多チャンネル高周波信号切替装置の切替回路を示す回路図である。
【0012】
本発明の第1実施形態に係る多チャンネル高周波信号切替装置は、図1に示すように、四辺形のマトリクス配線領域11を有する基板10と、この基板10の上記マトリクス配線領域11を囲繞する両表層面に設けられた8組の高周波信号切替スイッチ12A〜12D、12E〜12Hとを具備して構成される。
【0013】
8組の高周波信号切替スイッチ12A〜12D、12E〜12Hは、それぞれ、図2に示すように、8個の高周波用スイッチ素子HS1〜HS8により構成されている。この8個の高周波用スイッチ素子HS1〜HS8は、それぞれ外部から供給された制御信号により、個別にオン/オフ制御される。
【0014】
四辺形のマトリクス配線領域11を有する基板10は、図3に示すように、一方および他方の各表層PA,PBをそれぞれ部品実装面として、内層に、絶縁層BLを介し、4層の導電層を形成した、多層プリント配線板により構成されている。上記各導電層のうち、2層は、上記四辺形のマトリクス配線領域11を形成する配線層(信号層)SA,SBを形成し、残る2層は配線層SA,SB相互の間、配線層SBと他方の表層(部品実装面)PBとの間をそれぞれ電磁遮蔽するグランド層(ベタパターン)GNDを形成している。
【0015】
配線層SAには、8本のX信号線XL1〜XL8が並列状に一定の間隔で配置され、配線層SBには、上記X信号線XL1〜XL8と交差する8本のY信号線YL1〜YL8が並列状に一定の間隔で配置されて、四辺形のマトリクス配線領域11を形成している。
【0016】
このマトリクス配線領域11を囲繞するように、基板10の一方の表層(部品実装面)PAに、4組の高周波信号切替スイッチ12A〜12Dが実装され、他方の表層(部品実装面)PBに、4組の高周波信号切替スイッチ12E〜12Hが実装されている。
【0017】
これら8組の高周波信号切替スイッチ12A〜12Hの信号入力端IN1〜IN8には、それぞれ予め定められたチャンネル(1CH〜8CH)の高周波信号が供給される。この実施形態では、図2に示すように、高周波信号切替スイッチ12Aを構成する各スイッチ素子HS1〜HS8の切替入力端Cが共通接続されて、高周波信号切替スイッチ12Aの信号入力端IN1を構成し、この信号入力端IN1に第1チャンネル(1CH)の高周波信号が供給される。以下同様に、高周波信号切替スイッチ12B〜12Hについても、各組毎に、スイッチ素子HS1〜HS8の切替入力端Cが共通接続されて、高周波信号切替スイッチ12B〜12Hの信号入力端IN2〜IN8を構成し、この信号入力端IN2〜IN8に第2チャンネル(2CH)〜第8チャンネル(8CH)の高周波信号が供給される。
【0018】
上記8組の高周波信号切替スイッチ12A〜12Hを構成する各スイッチ素子HS1〜HS8の切替出力端(図2に示す符号T)は、各スイッチ素子毎に、上記マトリクス配線領域11の予め定められた信号線に、それぞれ個別に配線されている。ここでは、一方の部品実装面PAに設けられた高周波信号切替スイッチ12Aの各スイッチ素子HS1〜HS8の切替出力端と、このスイッチに平面上で重なる高周波信号切替スイッチ12Eの各スイッチ素子HS1〜HS8の切替出力端は、それぞれスルーホールThを介して個別にY信号線YL1〜YL8の一端側に接続されている。すなわち、高周波信号切替スイッチ12Aのスイッチ素子HS1の切替出力端と、高周波信号切替スイッチ12Eのスイッチ素子HS1の切替出力端は、それぞれ共通のスルーホールThを介してY信号線YL1の一端側に接続され、高周波信号切替スイッチ12Aのスイッチ素子HS8の切替出力端と、高周波信号切替スイッチ12Eのスイッチ素子HS8の切替出力端は、それぞれ共通のスルーホールThを介してY信号線YL8の一端側に接続されている。同様に、高周波信号切替スイッチ12Bの各スイッチ素子HS1〜HS8の切替出力端と、高周波信号切替スイッチ12Fの各スイッチ素子HS1〜HS8の切替出力端は、それぞれスルーホールThを介して個別にX信号線XL1〜XL8の一端側に接続され、高周波信号切替スイッチ12Cの各スイッチ素子HS1〜HS8の切替出力端と、高周波信号切替スイッチ12Gの各スイッチ素子HS1〜HS8の切替出力端は、それぞれスルーホールThを介して個別にY信号線YL1〜YL8の他端側に接続され、高周波信号切替スイッチ12Dの各スイッチ素子HS1〜HS8の切替出力端と、高周波信号切替スイッチ12Hの各スイッチ素子HS1〜HS8の切替出力端は、それぞれスルーホールThを介して個別にX信号線XL1〜XL8の他端側に接続されている。
【0019】
この切替回路の接続構成を図4に示している。なお、図4に示す切替回路では、高周波信号を取り出す高周波信号出力端OUT1〜OUT8に、信号の整合をとるためのインピーダンスマッチング素子16を設けた例を示している。
【0020】
さらに基板10の部品実装面PBには、制御信号コネクタ15を介して外部から受けた制御信号に従い上記8組の高周波信号切替スイッチ12A〜12Hの各スイッチ素子HS1〜HS8に対して個別にオン/オフ制御信号を出力するスイッチ制御回路14と、このスイッチ制御回路14から出力されたオン/オフ制御信号を上記各組の高周波信号切替スイッチ12A〜12Hのスイッチ素子HS1〜HS8に個別に供給する制御信号線CN1〜CN8が設けられている。なお、ここでは各スイッチ素子に個別に配線される制御信号線を高周波信号切替スイッチの組毎に纏めてCN1〜CN8として示している。
【0021】
上記四辺形のマトリクス配線領域11上において、X信号線XL1〜XL8とY信号線YL1〜YL8とをそれぞれ異にする8つの交点をそれぞれ高周波信号の出力端(取り出し端)として、上記四辺形のマトリクス配線領域11に、8チャンネルの高周波信号出力端OUT1〜OUT8が設けられている。この第1実施形態では、上記各高周波信号切替スイッチ12A〜12Hに対して、X信号線XL1〜XL8とY信号線YL1〜YL8との和の線路長が均一となる、X信号線XL1〜XL8と前記Y信号線YL1〜YL8との交差位置を高周波信号の取り出し端を高周波信号出力端OUT1〜OUT8としている。ここでは、X信号線XL1〜XL8とY信号線YL1〜YL8とのマトリクス配線領域において、XL1とYL4との交点(XL1・YL4)を第1チャンネルの高周波信号出力端OUT1、XL2とYL3との交点(XL2・YL3)を第2チャンネルの高周波信号出力端OUT2、XL3とYL2との交点(XL3・YL2)を第3チャンネルの高周波信号出力端OUT3、XL4とYL1との交点(XL4・YL1)を第4チャンネルの高周波信号出力端OUT4、XL5とYL8との交点(XL5・YL8)を第5チャンネルの高周波信号出力端OUT5、XL6とYL7との交点(XL6・YL7)を第6チャンネルの高周波信号出力端OUT6、XL7とYL6との交点(XL7・YL6)を第7チャンネルの高周波信号出力端OUT7、XL8とYL5との交点(XL8・YL5)を第8チャンネルの高周波信号出力端OUT8としている。
【0022】
このマトリクス配線領域11に設けられた8チャンネルの高周波信号出力端OUT1〜OUT8は、OUT1〜OUT4がXL1・YL1を基点とし、OUT5〜OUT8がXL8・YL8を基点として、それぞれ等しいマトリクス配線長のX・Y交差点に設けられている。なお、XL1には、高周波信号切替スイッチ12B,12D,12F,12Hのスイッチ素子HS1が接続され、YL1には、高周波信号切替スイッチ12A,12C,12E,12Gのスイッチ素子HS1が接続され、XL8には、高周波信号切替スイッチ12B,12D,12F,12Hのスイッチ素子HS8が接続され、YL8には、高周波信号切替スイッチ12A,12C,12E,12Gのスイッチ素子HS8が接続されている。
【0023】
これにより、例えば、高周波信号切替スイッチ12Aのスイッチ素子HS1と、高周波信号切替スイッチ12Bのスイッチ素子HS8と、高周波信号切替スイッチ12Cのスイッチ素子HS8と、高周波信号切替スイッチ12Dのスイッチ素子HS1とをそれぞれ同時にスイッチオン制御することにより、高周波信号切替スイッチ12Aの信号入力端IN1に入力された第1チャンネル(1CH)の高周波信号が信号出力端OUT4に出力され、高周波信号切替スイッチ12Bの信号入力端IN2に入力された第2チャンネル(2CH)の高周波信号が信号出力端OUT8に出力され、高周波信号切替スイッチ12Cの信号入力端IN3に入力された第3チャンネル(3CH)の高周波信号が信号出力端OUT5に出力され、高周波信号切替スイッチ12Dの信号入力端IN4に入力された第4チャンネル(4CH)の高周波信号が信号出力端OUT1に出力される。この各チャンネルの高周波信号の入出力については、図4に示すスイッチ回路図を辿ることにより容易に理解できる。
【0024】
また、例えば高周波信号切替スイッチ12Aのスイッチ素子HS2と、高周波信号切替スイッチ12Bのスイッチ素子HS7と、高周波信号切替スイッチ12Cのスイッチ素子HS7と、高周波信号切替スイッチ12Dのスイッチ素子HS2とをそれぞれ同時にスイッチオン制御することにより、高周波信号切替スイッチ12Aの信号入力端IN1に入力された第1チャンネル(1CH)の高周波信号が信号出力端OUT3に出力され、高周波信号切替スイッチ12Bの信号入力端IN2に入力された第2チャンネル(2CH)の高周波信号が信号出力端OUT7に出力され、高周波信号切替スイッチ12Cの信号入力端IN3に入力された第3チャンネル(3CH)の高周波信号が信号出力端OUT6に出力され、高周波信号切替スイッチ12Dの信号入力端IN4に入力された第4チャンネル(4CH)の高周波信号が信号出力端OUT2に出力される。この各チャンネルの高周波信号の入出力についても図4に示すスイッチ回路図を辿ることにより容易に理解できる。
【0025】
また、例えば高周波信号切替スイッチ12Aのスイッチ素子HS8と、高周波信号切替スイッチ12Bのスイッチ素子HS1と、高周波信号切替スイッチ12Cのスイッチ素子HS1と、高周波信号切替スイッチ12Dのスイッチ素子HS8とをそれぞれ同時にスイッチオン制御することにより、高周波信号切替スイッチ12Aの信号入力端IN1に入力された第1チャンネル(1CH)の高周波信号が信号出力端OUT5に出力され、高周波信号切替スイッチ12Bの信号入力端IN2に入力された第2チャンネル(2CH)の高周波信号が信号出力端OUT1に出力され、高周波信号切替スイッチ12Cの信号入力端IN3に入力された第3チャンネル(3CH)の高周波信号が信号出力端OUT4に出力され、高周波信号切替スイッチ12Dの信号入力端IN4に入力された第4チャンネル(4CH)の高周波信号が信号出力端OUT8に出力される。
【0026】
また、例えば高周波信号切替スイッチ12Eのスイッチ素子HS1と、高周波信号切替スイッチ12Fのスイッチ素子HS8と、高周波信号切替スイッチ12Gのスイッチ素子HS8と、高周波信号切替スイッチ12Hのスイッチ素子HS1とをそれぞれ同時にスイッチオン制御することにより、高周波信号切替スイッチ12Eの信号入力端IN1に入力された第5チャンネル(5CH)の高周波信号が信号出力端OUT4に出力され、高周波信号切替スイッチ12Fの信号入力端IN6に入力された第6チャンネル(6CH)の高周波信号が信号出力端OUT8に出力され、高周波信号切替スイッチ12Gの信号入力端IN7に入力された第7チャンネル(7CH)の高周波信号が信号出力端OUT5に出力され、高周波信号切替スイッチ12Hの信号入力端IN8に入力された第8チャンネル(8CH)の高周波信号が信号出力端OUT1に出力される。
【0027】
これら各チャンネルの高周波信号の入出力において、上記各信号入力端から信号出力端までの配線長(伝搬距離)は、それぞれ、等しい長さ(距離)である。このように、高周波信号の信号入力端から信号出力端までの配線長(伝搬距離)を一様に揃える(配線長のばらつきを抑制する)ことにより、高周波信号の高速切替が可能となる。
【0028】
この高周波信号の信号入力端から信号出力端までの配線長(伝搬距離)のばらつきによる、挿入損失とSWR(反射の度合い)の関係を図5乃至図7に示している。図5は上記したマトリクス配線領域11と同等のマトリクス配線上において、X信号線XL(またはY信号線YL)の一端を入力端、他端を出力端とした場合、図6は同じく上記マトリクス配線上において、X信号線XL(またはY信号線YL)の一端を入力端、当該線上の1/2を出力端とした場合、図7は同じく上記マトリクス配線上において、X信号線XL(またはY信号線YL)の一端を入力端および出力端とした場合の、模式図(a)と特性図(b)とを示している。この図5乃至図7に示すように、挿入損失S21、およびSWRS11は、信号入力端から信号出力端までの配線長(伝搬距離)によって特性を異にする。従って複数の高周波信号を同時に切替制御する切替回路において配線長(伝搬距離)を一様化することで、取り扱う画像生成用の複数の高周波信号に対して安定した高品位の高速切替が可能となる。
【0029】
上記した本発明の第1実施形態に係る多チャンネル高周波信号切替装置は、四辺形のマトリクス配線領域11を囲繞するように8組の高周波信号切替スイッチ12A〜12Hを設けた構成であることから、8チャンネルの任意の組み合わせによる高周波信号の切替回路をコンパクトに構成でき、切替回路の配線長を短縮できる。これにより伝送ロスの少ない多チャンネル(8×8チャンネル)の高周波信号切替装置が実現できる。また、四辺形のマトリクス配線領域11において、配線層SA,SB相互の間と、配線層SBと他方の表層PBとの間にベタパターンのグランド層GNDが挿入されていることから高周波信号切替スイッチ12A〜12H相互の間の信号漏れを抑制した高周波信号切替装置が実現できる。さらに上記したように各チャンネルの配線長(伝搬距離)が一様化されることで、安定した高品位の高速切替が可能となる。
【0030】
上記した多チャンネル(8×8チャンネル)の高周波信号切替装置を複数組み合わせて、より多チャンネルの高周波信号切替装置を実現した構成例を図8に示している。この図8に示す構成例は、上記図1乃至図4に示した高周波信号切替装置(ここでは8×8マトリクス回路と称す)を前後段各4組ずつ計8組用い、前段の4組の8×8マトリクス回路51〜54の任意の2チャンネルの出力端を後段の4組の8×8マトリクス回路55〜58の任意の2チャンネルの入力端に接続することによって所望の多チャンネル切替回路を実現している。ここでは入力32チャンネル、出力最大32チャンネルの任意切替可能な高周波信号切替装置を実現している。このような多チャンネル切替回路を、さらに階層化して接続することにより、より多チャンネルの高周波信号切替装置を実現することができる。
【0031】
本発明の第2実施形態に係る多チャンネル高周波信号切替装置の構成を図9に示している。なお、図9に示す多チャンネル高周波信号切替装置の構成において、上記した第1実施形態と同一部分には、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0032】
この第2実施形態に係る多チャンネル高周波信号切替装置が上記図1に示した第1実施形態の多チャンネル高周波信号切替装置と、とくに異なるところは、マトリクス配線領域11上の高周波信号出力端OUT1〜OUT8の交点位置を異ならせている。この第2実施形態に係る多チャンネル高周波信号切替装置では、X信号線XL1〜XL8とY信号線YL1〜YL8とのマトリクス配線領域において、XL1とYL8の交点(XL1・YL8)を第1チャンネルの高周波信号出力端OUT1、XL2とYL7の交点(XL2・YL7)を第2チャンネルの高周波信号出力端OUT2、XL3とYL6の交点(XL3・YL6)を第3チャンネルの高周波信号出力端OUT3、XL4とYL5の交点(XL4・YL5)を第4チャンネルの高周波信号出力端OUT4、XL5とYL4の交点(XL5・YL4)を第5チャンネルの高周波信号出力端OUT5、XL6とYL3の交点(XL6・YL3)を第6チャンネルの高周波信号出力端OUT6、XL7とYL2の交点(XL7・YL2)を第7チャンネルの高周波信号出力端OUT7、XL8とYL1の交点(XL8・YL1)を第8チャンネルの高周波信号出力端OUT8としている。
【0033】
このような第2実施形態の構成においても、四辺形のマトリクス配線領域11の一辺を20mm乃至30mm程度にすることで、切替回路の配線長を一律に短縮でき、現況の数十メガヘルツ〜百数十メガヘルツの高周波信号の高速切替に十分に適用可能なコンパクト形の多チャンネル高周波信号切替装置が実現できる。
【0034】
上記したように本発明の第1、第2実施形態によれば、多チャンネルの高周波信号を扱う切替回路を各チャンネルに共通のマトリクス配線領域に集成して、多チャンネル集成型の高周波信号切替回路を構成したことにより、多チャンネルの高周波信号の切り替えを小規模の回路構成にて容易に実現できる。
【符号の説明】
【0035】
10…基板、11…四辺形のマトリクス配線領域、12A〜12H…高周波信号切替スイッチ、HS1〜HS8…スイッチ素子、OUT1〜OUT8…高周波信号出力端、14…スイッチ制御回路、CN1〜CN8…制御信号線、51〜58…高周波信号切替装置(8×8マトリクス回路)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1の配線層と第2の配線層が形成された多層基板であって、前記第1の配線層にk本(kは2以上の整数)の第1信号線を一定の間隔で配置し、前記第2の配線層に前記第1信号線と交差するk本の第2信号線を一定の間隔で配置してマトリクス配線領域が形成された基板と、
前記基板の第1実装面の前記マトリクス配線領域を囲繞する位置に設けられ、前記第1信号線に接続されたk個のスイッチ素子を1組とする複数組の高周波信号切替スイッチであって、各組の外部入力端から供給されたチャンネル単位の高周波信号を前記マトリクス配線領域の任意の前記第1信号線に選択的に出力する第1群の高周波信号切替スイッチと、
前記基板の前記第1実装面の反対面である第2実装面の前記マトリクス配線領域を囲繞する位置に設けられ、前記第2信号線に接続されたk個のスイッチ素子を1組とする複数組の高周波信号切替スイッチであって、各組の外部入力端から供給されたチャンネル単位の高周波信号を前記マトリクス配線領域の任意の前記第2信号線に選択的に出力する第2群の高周波信号切替スイッチと、
前記第1群および第2群の高周波信号切替スイッチに接続され、前記マトリクス配線領域の前記第1信号線と前記第2信号線の交点からkチャンネル単位の高周波信号を取り出すk個の出力端と、
を具備したことを特徴とする多チャンネル高周波信号切替装置。
【請求項2】
前記出力端の前記各交点は、前記高周波信号を出力する前記第1群又は第2群の高周波信号切替スイッチに対して、前記第1信号線と前記第2信号線との和の線路長が均一となる、前記第1信号線と前記第2信号線との交差位置であることを特徴とする請求項1に記載の多チャンネル高周波信号切替装置。
【請求項3】
前記交差位置において、前記第1信号線と前記第2信号線がスルーホールにより配線接続されて、前記チャンネル単位の高周波信号を取り出す前記出力端を形成していることを特徴とする請求項2に記載の多チャンネル高周波信号切替装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−109714(P2011−109714A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34747(P2011−34747)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【分割の表示】特願2008−128606(P2008−128606)の分割
【原出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(000220620)東芝テリー株式会社 (116)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】