説明

多孔質炭素シートおよびその製造方法

【課題】燃料電池のガス拡散体の材料として用いられたとき、高い排水性を有する、厚さ方向に異なる細孔径を有する複数の層からなる1枚のカーボンペーパーを提供すること。
【解決手段】分散している炭素短繊維を樹脂炭化物で結着した1枚の多孔質炭素シートであって、前記シートが細孔モード径の異なる少なくとも2以上の層からなり、前記細孔モード径が最大である層の細孔モード径をD1、最小である層の細孔モード径をD2としたときに、1.2≦D1/D2≦4であることを特徴とする多孔質炭素シートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質炭素シートおよびその製造方法に関するものである。本発明の多孔質炭素シートは、自動車用固体高分子型燃料電池のガス拡散体の材料として好ましく用いることができる。
【背景技術】
【0002】
固体高分子型燃料電池は、水素と酸素を供給することにより発電し、発電反応により水が生成する。燃料電池の発電反応が起こる膜−電極接合体を構成するガス拡散体の材料としては、炭素繊維を樹脂炭化物で結着したカーボンペーパーが一般的に用いられる。自動車など高い出力密度が要求される用途においては、電流密度が高い領域で燃料電池を運転するため、単位反応面積当たりに発生する水の量も増加する。したがって、このような場合には、反応による生成水をいかに効率よく排出するかがポイントとなり、燃料電池のガス拡散体の材料として用いられるカーボンペーパーには高い排水性が求められる。
【0003】
上記の課題に対して、特許文献1では、少なくとも2枚のガス透過係数が異なる炭素材からなる導電性多孔質基材を重ねた多孔質炭素電極基材が提案されている。しかし、重ねた導電性多孔質基材の間の界面では、炭素短繊維が樹脂炭化物で結着されておらず、電気伝導を阻害する撥水性高分子に覆われた該基材どうしが単に物理的に接触しているだけである。したがって、前記界面での接触抵抗により多孔質炭素電極基材の厚さ方向の導電性が低下するという問題があった。また、前記界面では、結着炭素に拘束された炭素短繊維からなる凹凸のある面どうしが接触するため、多孔質炭素電極基材内の他の部分よりも大きな空隙が生じることとなり、前記界面に生じた空隙に、燃料電池の発電反応による生成水が溜まりフラッディングが生じるという問題があった。
【0004】
また、従来の多孔質炭素シートを製造する圧縮工程は、1段階の平板プレス(特許文献2)やダブルベルトプレス(特許文献3)を用いて行われており、炭素短繊維や熱硬化性樹脂の目付が異なる前駆体繊維シートを複数枚積層することで厚さ方向に密度の異なる1枚の多孔質炭素シートを製造することは可能であった。しかし、平板プレスやダブルベルトプレスを用いた1段階の圧縮工程では、炭素短繊維や熱硬化性樹脂の目付が異なる複数枚の前駆体繊維シートを用いたとしても、これら複数の前駆体繊維シートが同じ圧力で圧縮されるため、厚さ方向に細孔径が大きく異なる複数の層からなる多孔質炭素シートを提供することはできなかった。
【特許文献1】特開2007−227008号公報(第7頁、段落番号0039)
【特許文献2】特開2007−176750号公報(第11頁、段落番号0059)
【特許文献3】特開2004−235134号公報(第13頁、段落番号0089)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来の技術における上述した問題点に鑑みてなされたものであり、従来困難であった、厚さ方向に異なる細孔径を有する複数の層からなる1枚のカーボンペーパーを提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明の多孔質炭素シートは、次の構成を有する。すなわち、分散している炭素短繊維を樹脂炭化物で結着した1枚の多孔質炭素シートであって、前記シートが細孔モード径の異なる少なくとも2以上の層からなり、前記細孔モード径が最大である層の細孔モード径をD1、最小である層の細孔モード径をD2としたときに、1.2≦D1/D2≦4であることを特徴とする多孔質炭素シートである。
【0007】
また、本発明の多孔質炭素シートの製造方法は、炭素短繊維と熱硬化性樹脂を含む前駆体繊維シートを、加熱加圧処理する圧縮工程と、圧縮工程を経た前駆体繊維シートに含まれる熱硬化性樹脂を炭化処理する炭化工程とを有する多孔質炭素シートの製造方法であって、前記圧縮工程において、第1段階として前記前駆体繊維シートを加熱加圧処理した後、第2段階として第1段階で加熱加圧処理された前駆体繊維シートと加熱加圧処理する前の前駆体繊維シートを積層して更に加熱加圧処理することを特徴とする多孔質炭素シートの製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の多孔質炭素シートは、高い出力密度が要求される自動車用固体高分子型燃料電池のガス拡散体の材料として用いられたとき、高い排水性を有する。したがって、本多孔質炭素シートを用いた燃料電池は高い発電性能を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について、図面を参照しながら説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る多孔質炭素シート1の表面を示す光学顕微鏡写真である。
【0010】
図2において、多孔質炭素シート1は、線状に見える炭素短繊維2が分散しており、炭素短繊維2が樹脂炭化物3で結着されている。
【0011】
本発明の多孔質炭素シート1を構成する炭素短繊維2の平均繊維径(単繊維の平均繊維径)は、5〜20μmであることが好ましい。平均繊維径が5μm未満の場合、炭素繊維の種類等にもよるが、前記シート1の柔軟性が低下することがある。また、平均繊維径が20μmを超える場合、前記シート1の機械的強度が低下することがある。より好ましい平均繊維径の範囲は、6〜13μmであり、更に好ましい範囲は、6〜10μmである。
【0012】
炭素短繊維2は、通常、長尺の炭素繊維を所望の長さにカットすることによって得られる。炭素短繊維2の平均繊維長は、3〜20mmであることが好ましい。平均繊維長が3mm未満の場合、多孔質炭素シート1の機械的特性が低下することがある。また、平均繊維長が20mmを超える場合、後述する抄造時における繊維の分散性が悪くなり、前記シート1における炭素短繊維2の目付のばらつきが大きくなることがある。より好ましい平均繊維長の範囲は、4〜17mmであり、更に好ましい範囲は、5〜15mmである。
【0013】
炭素短繊維2を構成する炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系、ピッチ系、レーヨン系等の炭素繊維を用いることができる。なかでも、機械的強度に優れ、しかも、適度な柔軟性を有するハンドリング性に優れた多孔質炭素シートが得られることから、PAN系やピッチ系、特にPAN系の炭素繊維を用いるのが好ましい。
【0014】
ここで、分散した状態とは、炭素短繊維がシート面内において顕著な配向を持たず概ねランダムに、例えば、無作為な方向に存在している状態であることが多い。具体的には、後述する抄造法により短繊維が分散した状態である。
【0015】
多孔質炭素シートが1枚とは、複数の多孔質炭素シートを重ねた際にできるシート間の界面のような、分散している炭素短繊維を樹脂炭化物で結着した多孔質炭素シートの中で、炭素短繊維が樹脂炭化物で結着されていない界面を有さないことをいう。
【0016】
前記界面では、炭素短繊維が樹脂炭化物で結着されておらず、単に物理的に接触しているだけである。したがって、界面での接触抵抗により多孔質炭素電極基材の厚さ方向の導電性が低下し、燃料電池の性能低下につながる。また、前記界面では、結着炭素に拘束された炭素短繊維からなる凹凸のある面どうしが接触するため、多孔質炭素シート内の他の部分よりも大きな空隙が生じることとなる。前記界面に生じた空隙には、燃料電池の発電反応による生成水が溜まり易く、反応に必要な物質の移動を阻害するフラッディングが生じ、燃料電池の性能低下につながる。本発明の多孔質炭素シートは1枚からなるため、燃料電池のガス拡散体の材料として用いられたとき、このような問題は生じず、高い排水性と導電性を有する。
【0017】
図3に、本発明の一形態に係る多孔質炭素シート1が、ガス拡散体4として用いられている、固体高分子型燃料電池の膜−電極接合体6の部分断面の概念図を示す。図3において、ガス拡散体4は、本発明に係る多孔質炭素シート1を基材として、少なくともその片側の表面に、カーボンブラックおよびフッ素樹脂を含むガス拡散層5を有する。また、本発明に係る膜−電極接合体6は、固体高分子電解質膜7の両表面に触媒層8、8を有し、さらに該両触媒層8、8に接してそれぞれガス拡散体4を有する。本発明の多孔質炭素シート1は、細孔モード径の異なる少なくとも2以上の層1a、1bからなる。
【0018】
ガス拡散層5は、フッ素樹脂と、導電性を有するカーボンブラックを含むペーストを、スリットダイコーター等で多孔質炭素シート1の表面に塗工より形成することができる。固体高分子電解質膜7に用いられる固体高分子電解質としては、プロトン伝導性、耐酸化性、耐熱性の高い、パーフルオロスルホン酸系の高分子が好ましい。触媒層8は、前記固体高分子電解質と、触媒担持炭素を含むペーストを、ガス拡散体に直接塗工するか、一旦フッ素樹脂フィルム等の基材に塗工したあと固体高分子電解質膜7に転写することにより設けることができる。触媒としては、改質水素が供給される場合にはアノード側に白金およびルテニウムを用いるのが好ましく、酸素が供給されるカソード側には白金を用いるのが好ましい。膜−電極接合体6は、ガス拡散体4、固体高分子電解質膜7、触媒層8をホットプレスで接着することで得ることができる。
【0019】
本発明の多孔質炭素シート1は、前記細孔モード径が最大である層の細孔モード径をD1、最小である層の細孔モード径をD2としたときに、D1/D2≧1.2である。細孔モード径D1およびD2の測定方法は次のとおりであり、D1の値をD2の値で割ることによりD1/D2を算出する。
【0020】
多孔質炭素シート1から、他の部分を削り取ることにより採取した一定厚さ(40〜60μm)の各層のサンプルを用意し、細孔モード径を測定する。サンプルの削り取りは、試料研磨機で行い、厚さの測定、研磨を繰り返し、所望の厚さのサンプルを得る。削り取りを行ったサンプルには、削り粉が付着することがあるので、乾燥後、エアブラシで削り粉を除去する。
【0021】
細孔モード径は、水銀圧入法による細孔径分布測定から求める。水銀圧入法は、多孔質炭素シートから用意した前記サンプルより約12mm×20mm角の試料片を3枚切り出し、精秤の後、重ならないように測定用セルに入れ、減圧下に水銀を注入する。これを、下記の表1に示す装置と条件で細孔径分布測定を行なう。測定回数は1回とする。測定した細孔径分布のうち、分布の割合が最も高い細孔径が細孔モード径である。
【0022】
【表1】

【0023】
一般的に、多孔質炭素シートは、フッ素樹脂等による撥水処理を施して燃料電池のガス拡散体として用いられる。本発明の多孔質炭素シートは、細孔モード径がD1/D2≧1.2であるため、撥水処理を施してガス拡散体として用いたとき、毛細管作用により、細孔モード径が最小であるD2の層1bから細孔モード径が最大であるD1の層1aへ、厚さ方向に発電反応による生成水を排出する力が働く。したがって、本発明の多孔質炭素シートは、燃料電池のガス拡散体の材料として用いられたとき、高い排水性を示す。
【0024】
排水性の観点から、D1/D2≧1.5がより好ましく、D1/D2≧2が更に好ましい。D1/D2は大きいほど厚さ方向の排水性が向上するが、本発明の多孔質炭素シートの製造方法による細孔モード径の制御可能範囲の制約から、D1/D2の上限は4.0程度である。
【0025】
本発明の多孔質炭素シート1の細孔モード径D1は、好ましくは45〜90μm、より好ましくは50〜80μm、さらに好ましくは55〜70μmの範囲内であるのが良い。D1が45μmより小さいと、厚さ方向への排水性が低下することがある。D1が90μmより大きいと、排水性が高すぎて固体高分子電解質膜7が乾燥し、プロトン伝導性が低下することがある。
【0026】
本発明の多孔質炭素シート1の細孔モード径D2は、好ましくは25〜60μm、より好ましくは30〜50μm、さらに好ましくは35〜45μmの範囲内であるのが良い。D2が25μmより小さいと、厚さ方向への排水性が低下することがある。D2が60μmより大きいと、排水性が高すぎて固体高分子電解質膜7が乾燥し、プロトン伝導性が低下することがある。
【0027】
多孔質炭素シート1の厚さは、0.1〜0.25mmであることが好ましい。多孔質炭素シートの厚さは、せん断力が作用したときの該シートの割れや柔軟性に関係する。厚さが0.1mm未満では、多孔質炭素シートを用いて作成されたガス拡散体を用いて作成された燃料電池において、セパレータから該シートがせん断力を受けたときに、該シートが容易に破壊される。また、厚さが0.25mmを超える場合は、多孔質炭素シートの柔軟性が大きく低下し、ロール状への巻き取りが難しくなる。多孔質炭素シート1のより好ましい厚さは、0.11〜0.24mmであり、更に好ましい厚さは、0.12〜0.23mmである。
【0028】
多孔質炭素シート1の密度は、0.3〜0.7g/cmであることが好ましく、0.32〜0.6g/cmであることがより好ましく、0.34〜0.6g/cmであることが更に好ましい。密度が0.7g/cmを超える場合は、多孔質炭素シートを燃料電池のガス拡散体として用いたときの水の排水性が悪くなり、水詰まりを起こして電池性能が低下することがある。0.3g/cm未満の場合は、ガス拡散性が高くなりすぎて固体高分子膜の乾燥を引き起こし、膜の抵抗が高くなるため電池性能が低下することがある。
【0029】
本発明の多孔質炭素シート1は、燃料電池のガス拡散体4として用いたとき高い排水性を有するため、発電反応により水が生成するカソード側に用いるのが好ましい。また、厚さ方向に発電反応による生成水を効率良く排出させるため、触媒層8の側に細孔モード径が最小であるD2の層1bを向けて配置するのが好ましい。
【0030】
図4は、本発明の実施に用いる多孔質炭素シート1の製造工程の一形態を示す工程図であり、抄紙工程、樹脂含浸工程、圧縮工程(第1段階および第2段階)、炭化工程からなる。
【0031】
本発明に係る多孔質炭素シートの製造方法は、炭素短繊維と熱硬化性樹脂を含む前駆体繊維シートを、加熱加圧処理する圧縮工程と、圧縮工程を経た前駆体繊維シートに含まれる熱硬化性樹脂を炭化処理する炭化工程とを有する多孔質炭素シートの製造方法であって、前記圧縮工程において、第1段階として前記前駆体繊維シートを加熱加圧処理した後、第2段階として第1段階で加熱加圧処理された前駆体繊維シートと加熱加圧処理する前の前駆体繊維シートを積層して更に加熱加圧処理することを特徴とする。
【0032】
本発明は、多孔質炭素シートの製造方法において、炭素短繊維と熱硬化性樹脂を含む前駆体繊維シートを加熱加圧処理する圧縮工程を、多段化することにより、従来技術では困難であった、厚さ方向に異なる細孔径を有する複数の層からなる1枚の多孔質炭素シートを提供できることを見出したものである。
【0033】
本発明の多孔質炭素シート1は、上述の通り厚さ方向に異なる細孔径を有する複数の層からなる1枚のシートであるため、高い出力密度が要求される自動車用固体高分子型燃料電池のガス拡散体の材料として用いられたとき、高い排水性を有する。したがって、本多孔質炭素シートを用いた燃料電池は高い発電性能を示す。
【0034】
前駆体繊維シートは、図4に示す抄紙工程および樹脂含浸工程で製造することができる。
【0035】
抄紙工程では、好適な長さに切断した炭素短繊維を水中に均一に分散させ、分散している炭素短繊維を網上に抄造し、抄造した炭素短繊維シートをポリビニルアルコールの水系分散液に浸漬し、浸漬したシートを引き上げて乾燥させる。前記ポリビニルアルコールは、炭素短繊維同士を結着するバインダの役目を果たし、炭素短繊維が分散した状態において、それらがバインダにより結着された状態の炭素短繊維のシートが製造される。バインダとしては、他に、スチレン−ブタジエンゴム、エポキシ樹脂などを用いることが出来る。
【0036】
樹脂含浸工程では、熱硬化性樹脂の溶液中に、抄紙工程で製造された炭素短繊維のシートを浸漬し、浸漬されたシートを引き上げて乾燥させることにより前駆体繊維シートが製造される。
【0037】
前駆体繊維シートに含まれる樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂や、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂等の熱可塑性樹脂を用いることができる。炭化工程での樹脂の炭化収率が高い熱硬化性樹脂を用いるのがより好ましく、中でもフェノール樹脂を用いるのが更に好ましい。
【0038】
本発明の多孔質炭素シートは、圧縮工程において、第1段階として前記前駆体繊維シートを加熱加圧処理した後、第2段階として第1段階で加熱加圧処理された前駆体繊維シートと加熱加圧処理する前の前駆体繊維シートを積層して更に加熱加圧処理することを特徴とする。
【0039】
圧縮工程の第1段階で加熱加圧処理される前駆体繊維シートは、圧縮された状態で加熱されて熱硬化性樹脂が硬化し、炭素短繊維と硬化した熱硬化性樹脂とが結着する。
【0040】
第2段階では、第1段階で加熱加圧処理された前駆体繊維シートと、未だ加熱加圧処理がなされていない前駆体繊維シートが積層され、加熱加圧処理がなされる。第1段階で加熱加圧処理された前駆体繊維シートは、既に炭素短繊維と硬化した熱硬化性樹脂とが結着している。そのため、第2段階では、第1段階で加熱加圧処理された前駆体繊維シート部分の厚さ変化はほとんどなく、新たに積層された未だ加熱加圧処理がなされていない前駆体繊維シート部分のみが圧縮された状態で加熱されて熱硬化性樹脂が硬化し、炭素短繊維と硬化した熱硬化性樹脂とが結着する。また、第2段階の加熱加圧処理の際に、第1段階で加熱加圧処理された前駆体繊維シートの炭素短繊維に、第2段階で新たに積層された前駆体繊維シートに含まれる熱硬化性樹脂が結着して硬化することにより、これらの積層された2枚の前駆体繊維シートの間の界面が残存することがない。したがって、第2段階により、分散している炭素短繊維を熱硬化性樹脂で結着した前駆体繊維シートの中で、炭素短繊維が熱硬化性樹脂で結着されていない界面を有さない、1枚の加熱加圧処理された前駆体繊維シートが得られる。得られた1枚の加熱加圧処理された前駆体繊維シートを、後述の炭化工程で焼成することにより、1枚の多孔質炭素シート1を得ることができる。
【0041】
このように、圧縮工程を多段化することにより、積層する複数層の細孔構造をそれぞれ独立に制御することが可能となる。圧縮工程で得られた前駆体繊維シートを、後述の炭化工程で焼成することにより、厚さ方向に異なる細孔径を有する複数の層からなる1枚の多孔質炭素シートを提供することができる。
【0042】
圧縮工程では、ロールプレスやダブルベルトプレスを用いることもできるが、圧縮工程後の前駆体繊維シートの厚さ精度の点から、互いに平行に位置する一対の熱板で前記前駆体繊維シートを加熱加圧処理するのが好ましい。
【0043】
互いに平行に位置する一対の熱板による加熱加圧処理は、加熱されている大半の時間加圧処理されている。一方、ロールプレスやダブルベルトプレスによる加熱加圧処理は、加圧がロールによる線圧で行われるため、ごく短時間しか加圧処理されないこととなる。圧縮工程において厚さ精度の高い前駆体繊維シートを得るためには、該前駆体繊維シートが圧縮された状態で熱硬化性樹脂を硬化させることが必要であるため、加圧処理される時間が非常に短いロールプレスやダブルベルトは厚さ精度の点で好ましくない。
【0044】
前記圧縮工程における第1段階および第2段階のうち、一方の段階が前駆体繊維シートを一定の面圧を付与した熱板間で圧縮する工程であり、もう一方の段階が前駆体繊維シートを一定のクリアランスを設けた熱板間で圧縮する工程であるのが好ましい。
【0045】
図5に、本発明における、一定の面圧を付与した熱板間で圧縮する工程の一形態における概略図を示す。加熱加圧処理には、ホットプレス9を用いることができる。図5において、前駆体繊維シート12を間欠的に搬送させながら互いに平行な熱板10、11で、一定の面圧で連続加熱加圧する。前駆体繊維シート12の加圧と送りを交互に繰り返しながら、加熱加圧処理することにより、搬送方向に連続体である長尺の前駆体繊維シート12を、枚葉状にすることなく連続的に成形することができる。
【0046】
図6に、本発明における、一定のクリアランスを設けた熱板間で圧縮する工程の一形態における概略図を示す。加熱加圧処理には、ホットプレス9を用いることができる。図6において、前記熱板10、11の少なくとも一方に接してスペーサー13、13を配置することによって、前記クリアランスを設けることができる。スペーサー13、13を用いることによって、熱板10、11の傾きがあった場合でも、高い精度で一定のクリアランスを設定することができる。
【0047】
前記圧縮工程において、前記熱板10、11間に前駆体繊維シート12を間欠的に搬送し、搬送が停止している間に該熱板10、11で加熱加圧処理することが好ましい。間欠的に搬送、加熱加圧処理をすることにより、前駆体繊維シート12を枚葉にカットせず長尺のまま圧縮することができる。
【0048】
一定の面圧を付与した熱板間で圧縮する工程では、設定する面圧を上げることで前記前駆体繊維シートを高い圧力で加熱加圧処理することが可能であるため、1枚の多孔質炭素シートを構成する層の細孔モード径を小さい範囲で制御するのに適している。
【0049】
一方、一定のクリアランスを設けた熱板間で圧縮する工程では、面圧制御で困難なごく低圧での加熱加圧処理が可能であるため、1枚の多孔質炭素シートを構成する層の細孔モード径を大きい範囲で制御するのに適している。
【0050】
前記圧縮工程において、第1段階が前駆体繊維シートを一定のクリアランスを設けた熱板間で圧縮する工程であり、第2段階が前記前駆体繊維シートを一定の面圧を付与した熱板間で圧縮する工程であるのが好ましい。第2段階を、前駆体繊維シートがより高い圧力で加熱加圧処理される、一定の面圧を付与した熱板間で圧縮する工程とすることで、第1段階で加熱加圧処理された前駆体繊維シートと、第2段階で積層する前駆体繊維シートとが、熱硬化性樹脂でより強固に結着されるため、多孔質炭素シート1の層間剥離が起こりにくくなる。
【0051】
前記炭化工程においては、バッチ式の加熱炉を用いることもできるが、生産性の観点から、前駆体繊維シートを不活性雰囲気に保った加熱炉内を連続的に走行せしめながら少なくとも1,200℃まで昇温し、焼成して前記熱硬化性樹脂を炭素化した後、ロール状に巻き取る連続式であることが好ましい。
【実施例】
【0052】
以下の実施例における多孔質炭素シートに関する各特性値の定義、および/または、測定方法は、次のとおりである。
【0053】
(多孔質炭素シートの目付(単位面積当たりの重さ))
10cm×10cm角の多孔質炭素シートを10枚切り出して重さを測定し、その平均値から算出した。
【0054】
(多孔質炭素シートの厚さ)
多孔質炭素シートの厚さは、測定子の断面が直径5mmの円形であるマイクロメーターを用いて、該シートの厚さ方向に0.15MPaの面圧を付与して測定する。測定点は1.5cm間隔の格子状で測定回数は20回以上とし、その平均値を厚さとする。
【0055】
(多孔質炭素シートの密度)
本発明における密度とは、見かけ密度のことを指す。
【0056】
多孔質炭素シートの密度は、上述した多孔質炭素シートの厚さと目付とから算出した。
(実施例1)
まず、抄紙工程について説明する。東レ株式会社製ポリアクリロニトリル系炭素繊維“トレカ (登録商標) ”T300−6K(平均単繊維径:7μm、単繊維数:6,000本)を12mmの長さにカットし、水を抄造媒体として連続的に抄造し、さらにポリビニルアルコールの10重量%水溶液に浸漬し、乾燥することにより、炭素短繊維2の目付が12g/mおよび20g/mの長尺の炭素繊維紙を得てロール状に巻き取った。ポリビニルアルコールの付着量は、炭素繊維紙100重量部に対して20重量部に相当する。
【0057】
次に、樹脂含浸工程について説明する。中越黒鉛工業所社製鱗片状黒鉛BF−5A(平均粒径5μm)、フェノール樹脂およびメタノールを2:3:20の重量比で混合した分散液を用意した。上記の炭素短繊維2の目付が12g/mおよび20g/mの炭素繊維紙に、炭素短繊維100重量部に対してそれぞれフェノール樹脂が117重量部および200重量部になるように、上記分散液に連続的に含浸し、90℃の温度で3分間乾燥することにより低樹脂比率(炭素短繊維2の目付が12g/m、炭素短繊維100重量部に対してそれぞれフェノール樹脂が117重量部)および高樹脂比率(炭素短繊維2の目付が20g/m、炭素短繊維100重量部に対してそれぞれフェノール樹脂が200重量部)の前駆体繊維シートを得てロール状に巻き取った。フェノール樹脂には、レゾール型フェノール樹脂とノボラック型フェノール樹脂とを1:1の重量比で混合した樹脂を用いた。
【0058】
次に、圧縮工程の第1段階について説明する。図6に示すように、株式会社カワジリ社製100tプレスに熱板10、11が互いに平行となるようセットし、下熱板11上にスペーサー13、13を配置して、熱板温度170℃、面圧0.1MPaで、プレスの開閉を繰り返しながら上下から離型紙で挟み込んだ前記高樹脂比率の前駆体繊維シートを間欠的に搬送しつつ、同じ箇所がのべ6分間加熱加圧されるよう圧縮処理した。離型紙の厚さを除いた、前記高樹脂比率の前駆体繊維シートの成形のために設けられた実質的なクリアランスは0.23mmである。また、熱板の有効加圧長LPは1200mmで、間欠的に搬送する際の前駆体繊維シートの送り量LFを100mmとし、LF/LP=0.08とした。すなわち、30秒の加熱加圧、型開き、炭素繊維紙の送り(100mm)、を繰り返すことによって圧縮処理を行った。
【0059】
次に、圧縮工程の第2段階について説明する。図5に示すように、株式会社カワジリ社製100tプレスに熱板10、11が互いに平行となるようセットし、熱板温度170℃、面圧0.8MPaでプレスの開閉を繰り返しながら、第1段階で加熱加圧処理した前駆体繊維シートの上に前記低樹脂比率の前駆体繊維シートを積層したものを、上下から離型紙で挟み込んだ状態で間欠的に搬送しつつ、同じ箇所がのべ6分間加熱加圧されるよう圧縮処理を行い、ロール状に巻き取った。熱板の有効加圧長と、間欠的に搬送する際の前駆体繊維シートの送り量は圧縮工程の第1段階と同様である。
【0060】
次に、炭化工程について説明する。圧縮工程で得られた前駆体繊維シートを、窒素ガス雰囲気に保たれた、最高温度が2,000℃の加熱炉に導入し、加熱炉内を連続的に走行させながら、約500℃/分(650℃までは400℃/分、650℃を超える温度では550℃/分)の昇温速度で焼成し、ロール状に巻き取った。得られた多孔質炭素シート1の諸元、製造条件および評価結果を以下に示す。また、多孔質炭素シート1についての水銀圧入法による細孔径分布測定の結果を図1に示す。
【0061】
細孔モード径が最大である層の細孔モード径D1 :52μm
細孔モード径が最小である層の細孔モード径D2 :33μm
細孔モード径D1/細孔モード径D2 :1.6
多孔質炭素シートの目付 :85g/m
多孔質炭素シートの厚さ :0.22mm
多孔質炭素シートの密度 :0.39g/cm3
(実施例2)
圧縮工程の第1段階において、高樹脂比率の前駆体繊維シートの成形のために設けられた実質的なクリアランスを0.30mmとし、圧縮工程の第2段階において、プレスの面圧を1.0MPaとした以外は、実施例1と同様にして多孔質炭素シート1を得た。得られた多孔質炭素シート1の諸元、製造条件および評価結果を以下に示す。
【0062】
細孔モード径が最大である層の細孔モード径D1 :88μm
細孔モード径が最小である層の細孔モード径D2 :29μm
細孔モード径D1/細孔モード径D2 :3.0
多孔質炭素シートの目付 :85g/m
多孔質炭素シートの厚さ :0.27mm
多孔質炭素シートの密度 :0.31g/cm3
(実施例3)
圧縮工程の第1段階において、高樹脂比率の前駆体繊維シートの成形のために設けられた実質的なクリアランスを0.40mmとし、圧縮工程の第2段階において、プレスの面圧を1.3MPaとした以外は、実施例1と同様にして多孔質炭素シート1を得た。得られた多孔質炭素シート1の諸元、製造条件および評価結果を以下に示す。
【0063】
細孔モード径が最大である層の細孔モード径D1 :103μm
細孔モード径が最小である層の細孔モード径D2 :27μm
細孔モード径D1/細孔モード径D2 :3.8
多孔質炭素シートの目付 :86g/m
多孔質炭素シートの厚さ :0.32mm
多孔質炭素シートの密度 :0.27g/cm3
(比較例1)
実施例と同様にして、低樹脂比率(炭素短繊維の目付が12g/m、炭素短繊維100重量部に対してそれぞれフェノール樹脂が117重量部)および高樹脂比率(炭素短繊維の目付が20g/m、炭素短繊維100重量部に対してそれぞれフェノール樹脂が200重量部)の前駆体繊維シートを得た。
【0064】
株式会社カワジリ社製100tプレスに熱板10、11が互いに平行となるようセットし、下熱板11上にスペーサー13、13を配置して、熱板温度170℃、面圧0.1MPaで、プレスの開閉を繰り返しながら、前記高樹脂比率の前駆体繊維シートの上に前記低樹脂比率の前駆体繊維シートを積層したものを、上下から離型紙で挟み込んだ状態で間欠的に搬送しつつ、同じ箇所がのべ6分間加熱加圧されるよう圧縮処理を行い、ロール状に巻き取った。離型紙の厚さを除いた、前記高樹脂比率の前駆体繊維シートの成形のために設けられた実質的なクリアランスは0.29mmである。また、熱板の有効加圧長LPは1200mmで、間欠的に搬送する際の前駆体繊維シートの送り量LFを100mmとし、LF/LP=0.08とした。すなわち、30秒の加熱加圧、型開き、炭素繊維紙の送り(100mm)、を繰り返すことによって圧縮処理を行った。
【0065】
実施例と同様の炭化工程により、ロール状の多孔質炭素シートを得た。得られた多孔質炭素シートの諸元、製造条件および評価結果を以下に示す。
【0066】
細孔モード径が最大である層の細孔モード径D1 :48μm
細孔モード径が最小である層の細孔モード径D2 :46μm
細孔モード径D1/細孔モード径D2 :1.0
多孔質炭素シートの目付 :84g/m
多孔質炭素シートの厚さ :0.23mm
多孔質炭素シートの密度 :0.37g/cm3
(比較例2)
比較例1と同様にして、低樹脂比率(炭素短繊維の目付が12g/m、炭素短繊維100重量部に対してそれぞれフェノール樹脂が117重量部)および高樹脂比率(炭素短繊維の目付が20g/m、炭素短繊維100重量部に対してそれぞれフェノール樹脂が200重量部)の前駆体繊維シートを得た。
【0067】
株式会社カワジリ社製100tプレスに熱板10、11が互いに平行となるようセットし、熱板温度170℃、面圧0.8MPaでプレスの開閉を繰り返しながら、
前記高樹脂比率の前駆体繊維シートの上に前記低樹脂比率の前駆体繊維シートを積層したものを、上下から離型紙で挟み込んだ状態で間欠的に搬送しつつ、同じ箇所がのべ6分間加熱加圧されるよう圧縮処理を行い、ロール状に巻き取った。熱板の有効加圧長と、間欠的に搬送する際の前駆体繊維シートの送り量は実施例1と同様である。
【0068】
比較例1と同様の炭化工程により、ロール状の多孔質炭素シートを得た。得られた多孔質炭素シートの諸元、製造条件および評価結果を以下に示す。
【0069】
細孔モード径が最大である層の細孔モード径D1 :36μm
細孔モード径が最小である層の細孔モード径D2 :34μm
細孔モード径D1/細孔モード径D2 :1.1
多孔質炭素シートの目付 :85g/m
多孔質炭素シートの厚さ :0.17mm
多孔質炭素シートの密度 :0.50g/cm3
以上の実施例および比較例について、多孔質炭素シートの諸元、評価結果を、次の表2にまとめた。
【0070】
【表2】

【0071】
上記実施例1の多孔質炭素シート1は、圧縮工程において、第1段階として前記前駆体繊維シートを加熱加圧処理した後、第2段階として第1段階で加熱加圧処理された該前駆体繊維シートと前記前駆体繊維シートを積層して更に加熱加圧処理する、圧縮工程が少なくとも2以上の段階からなる方法により製造されている。したがって、多孔質炭素シート1は、図1に示すとおり細孔モード径が最大である層の細孔モード径D1が52μm、細孔モード径が最小である層の細孔モード径D2が33μm、D1/D2が1.6と厚さ方向に大きく異なる細孔径を有する。実施例2および3の多孔質炭素シート1は、実施例1と比較して、圧縮工程の第1段階のクリアランスの設定を大きくし、圧縮工程の第2段階のプレスの面圧を大きくすることにより、D1/D2がそれぞれ3.0および3.8とさらに厚さ方向に大きく異なる細孔径を有する。
【0072】
一方、比較例1は、圧縮工程において、前駆体繊維シートを一定のクリアランスを設けた熱板間で圧縮しているため、細孔モード径が最大である層の細孔モード径D1が48μm、細孔モード径が最小である層の細孔モード径D2が46μmと、細孔径が大きい範囲での制御はできている。しかし、加熱加圧処理が1段階で行われているため、炭素短繊維に対する熱硬化性樹脂の比率が異なる前駆体繊維シートを用いても、厚さ方向の細孔径はほとんど変わらず、D1/D2がほぼ1.0である。
【0073】
また、比較例2は、圧縮工程において、前駆体繊維シートを一定の面圧を付与した熱板間で圧縮しているため、細孔モード径が最大である層の細孔モード径D1が36μm、細孔モード径が最小である層の細孔モード径D2が34μmと、細孔径が小さい範囲での制御はできている。しかし、比較例1と同様、加熱加圧処理が1段階で行われているため、炭素短繊維に対する熱硬化性樹脂の比率が異なる前駆体繊維シートを用いても、厚さ方向の細孔径はほとんど変わらず、D1/D2が1.1である。
【0074】
以上のように、本発明によれば、従来困難であった、厚さ方向に異なる細孔径を有する複数の層からなる1枚の多孔質炭素シートを提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明に係る多孔質炭素シートは、固体高分子型燃料電池のガス拡散体の材料として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】図1は、本発明の一形態に係る多孔質炭素シート1の細孔径分布を示す図である。
【図2】図2は、本発明の一形態に係る多孔質炭素シート1の表面を示す光学顕微鏡写真(200倍)である。
【図3】図3は、本発明の一形態に係る多孔質炭素シート1が、ガス拡散体の材料として用いられている、固体高分子型燃料電池の膜−電極接合体の部分断面図である。
【図4】図4は、本発明の実施に用いる多孔質炭素シートの製造工程の一形態を示す工程図である。
【図5】図5は、本発明の多孔質炭素シートの製造工程の一形態における圧縮工程を示す概略図である。
【図6】図6は、本発明の多孔質炭素シートの製造工程の一形態における圧縮工程を示す概略図である。
【符号の説明】
【0077】
1:多孔質炭素シート
2:炭素短繊維
3:樹脂炭化物
4:ガス拡散体
5:ガス拡散層
6:膜−電極接合体
7:固体高分子電解質膜
8:触媒層
9:ホットプレス
10:上熱板
11:下熱板
12:前駆体繊維シート
13:スペーサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散している炭素短繊維を樹脂炭化物で結着した1枚の多孔質炭素シートであって、前記シートが細孔モード径の異なる少なくとも2以上の層からなり、前記細孔モード径が最大である層の細孔モード径をD1、最小である層の細孔モード径をD2としたときに、1.2≦D1/D2≦4であることを特徴とする多孔質炭素シート。
【請求項2】
前記細孔モード径D1が45〜90μmである請求項1に記載の多孔質炭素シート。
【請求項3】
前記細孔モード径D2が25〜60μmである請求項1または2のいずれかに記載の多孔質炭素シート。
【請求項4】
炭素短繊維と熱硬化性樹脂を含む前駆体繊維シートを、加熱加圧処理する圧縮工程と、圧縮工程を経た前駆体繊維シートに含まれる熱硬化性樹脂を炭化処理する炭化工程とを有する多孔質炭素シートの製造方法であって、前記圧縮工程において、第1段階として前記前駆体繊維シートを加熱加圧処理した後、第2段階として第1段階で加熱加圧処理された前駆体繊維シートと加熱加圧処理する前の前駆体繊維シートを積層して更に加熱加圧処理することを特徴とする多孔質炭素シートの製造方法。
【請求項5】
前記圧縮工程が、互いに平行に位置する一対の熱板で前記前駆体繊維シートを加熱加圧処理する工程である請求項4に記載の多孔質炭素シートの製造方法。
【請求項6】
前記圧縮工程における第1段階および第2段階のうち、一方の段階が前駆体繊維シートを一定の面圧を付与した熱板間で圧縮する工程であり、もう一方の段階が前駆体繊維シートを一定のクリアランスを設けた熱板間で圧縮する工程である請求項5に記載の多孔質炭素シートの製造方法。
【請求項7】
前記圧縮工程において、第1段階が前駆体繊維シートを一定のクリアランスを設けた熱板間で圧縮する工程であり、第2段階が前駆体繊維シートを一定の面圧を付与した熱板間で圧縮する工程である請求項5に記載の多孔質炭素シートの製造方法。


【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−234851(P2009−234851A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−82761(P2008−82761)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】