説明

多層配線基板、AV機器およびテレビジョン受像機

【課題】より確実に静電気から保護されている安価な多層配線基板を提供すること。
【解決手段】本発明の多層配線基板は、スルーホール、導電体層、半田材料の凸部および半田材料の被覆部を用いて静電気対策がなされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電気対応の多層配線基板に関する。またそのような多層配線基板を備えているテレビジョン受像機等のAV機器に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの電子機器は、電子部品が実装されている回路基板をその筺体内に収容している構成を採用している。このような構成では、筐体の内部に侵入した静電気に起因する放電現象によって、機器の電気的機能が障害を受けることがある。前記障害としては、例えば、前記電子部品の電気的破壊、および回路における誤動作である。前記障害を回避するために、以前から、電子機器には様々な静電気対策が講じられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、過電圧に対する耐性のより低い電子部品の保護を可能とする、放電開始電圧の低い過電圧保護部品が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、筐体内に配線基板を配置した電子機器において、前記筐体の内側面に近接配置された前記配線基板の外周部に、前記配線基板上のグランドに接続された静電気対策用の導体部を設けた電子機器が記載されている。当該電子機器において、筐体の隙間等を通して筐体内に放電が生じた場合、この放電は、筐体の内側面に最も近い導体部に入力され、グランドに排出される。
【0005】
さらに、特許文献3には、人体より筐体に放電された静電気を、FGパターンと静電気放電用グランドパターンとの間に設けられたRC成分により減衰して静電気放電用グランドパターンへと放電できる電子機器等の静電気放電構造が記載されている。当該静電気放電構造により、回路基板に実装された電子部品等に直接静電気が放電されることを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−231909号公報(2010年10月14日公開)
【特許文献2】特開2001−308586号公報(2001年11月2日公開)
【特許文献3】特開2006−12495号公報(2006年1月12日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1〜3に記載の技術における前記静電気対策用の構成は何れも高コストであり、基板を安価に提供することが困難である。さらに、従来技術では、前記静電気対策用の構造の配置に制限が多いため、静電気を捕捉し得ない場合がある。
【0008】
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、より確実に静電気から保護されている安価な多層配線基板、および当該多層配線基板を備えているテレビジョン受像機等のAV機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明に係る多層配線基板は、第1面、および素子が形成されている第2面を有している多層配線基板であって、前記第1面から前記第2面まで貫通するスルーホールが形成されており、当該スルーホールの開口部と接して、当該開口部を取り囲む前記第1面および前記第2面の一部、ならびに当該スルーホールの内面に導電体層が形成されており、前記第2面の前記導電体層に、前記開口部に沿うように、半田材料によって構成されている静電気呼込用の凸部が設けられており、前記第1面の前記導電体層に、前記開口部に沿うように、半田材料によって構成されている静電気閉込用の被覆部が設けられており、且つ、前記導電体層が、前記第1面と前記第2面との間に位置するグランドに接続されていることを特徴としている。
【0010】
前記構成によれば、静電気が第2面に近づくと、静電気呼込用の凸部に引き寄せられて捕捉される。そして、凸部に捕捉された静電気は、導電体層を介してグランドに伝わる。また、一部の静電気は、静電気呼込用の凸部の表面、およびスルーホールの内面にある導電体層に沿って移動し、静電気閉込用の被覆部に達する。当該被覆部に達した静電気は、静電気閉込用の被覆部に捕捉される。当該被覆部に捕捉された静電気は、導電体層を介して、グランドに伝わる。
【0011】
以上のようにして、多層配線基板に近づいた静電気は、静電気呼込用の凸部に引き寄せられて、最終的にグランドに伝わる。よって、多層配線基板の表面に沿った静電気の移動が著しく抑制される。つまり、基板の第2面側に形成されている凸部以外の構成に静電気が達することを抑制できる。したがって、本発明に係る多層配線基板は、基板上の構成を静電気から保護し得る。
【0012】
また、多層配線基板の任意の箇所に対して多数のスルーホールを形成し得る。つまり、多数の静電気対策用の構造(静電気呼込用の凸部および静電気閉込用の被覆部)を多層配線基板の任意の箇所に形成し得る。したがって、本発明に係る多層配線基板は、従来の静電気対策に関する技術よりも確実に、基板上の構成を静電気から保護し得る。さらに、静電気呼込用の凸部および静電気閉込用の被覆部は、半田材料を用いて通常の基板製造に関する技術を利用して形成し得る。よって、従来の静電気対策に関する技術と比較して、コストが低い。
【0013】
また、本発明に係る多層配線基板において、前記被覆部が、さらに、前記第1面側にある前記開口部を塞いでいることが好ましい。
【0014】
前記構成によれば、第1面側にある開口部が被覆部によって塞がれているため、前記静電気閉込用の被覆部に達した静電気は、当該被覆部に確実に捕捉される。よって、当該静電気が第1面側に放出されることを確実に防止できる。つまり、基板の第1面側に形成されている被覆部以外の構成に静電気が達することを確実に抑制できる。したがって、本発明に係る多層配線基板は、第1面側の構成を静電気から確実に保護し得る。
【0015】
本発明に係る多層配線基板において、前記凸部の高さが、前記第2面側に設けられている絶縁体の厚さよりも大きいことが好ましい。
【0016】
前記構成によれば、静電気は、第2面に設けられている絶縁体よりも、高さのある静電気呼込用の凸部に引き寄せられて捕捉されやすくなる。したがって、本発明に係る多層配線基板は、より確実に、基板上の構成を静電気から保護し得る。
【0017】
本発明に係る多層配線基板において、前記凸部の高さが、前記第2面側に設けられている前記素子の電極の厚さよりも大きいことが好ましい。
【0018】
前記構成によれば、静電気は、第2面に設けられている素子の電極よりも、高さのある静電気呼込用の凸部に引き寄せられて捕捉されやすくなる。したがって、本発明に係る多層配線基板は、より確実に、基板上の構成を静電気から保護し得る。
【0019】
本発明に係る多層配線基板において、前記凸部および前記被覆部の複数の対が、多層配線基板の外周に沿って設けられていることが好ましい。
【0020】
前記構成によれば、基板の外周に沿って存在している複数の静電気呼込用の凸部によって静電気が捕捉される。つまり、静電気は基板の中央側に達しない。したがって、本発明に係る多層配線基板は、基板の中央側に存在する構成を静電気から保護し得る。
【0021】
本発明に係る多層配線基板は、電子機器の筐体に収納されており、当該多層配線基板において、前記第2面側に外部接続端子が設けられており、前記外部接続端子を筐体外に露出させるために前記筐体に形成された開口と前記外部接続端子とが形成する隙間の存在により生じる多層配線基板の露出部に、前記凸部が設けられていることが好ましい。
【0022】
前記構成によれば、前記隙間から静電気が侵入した場合であっても、静電気は、静電気呼込用の凸部に引き寄せられて捕捉される。したがって、本発明に係る多層配線板は、より確実に、基板上の構成を静電気から保護し得る。
【0023】
本発明に係るAV機器は、前記多層配線基板を備えていることを特徴としている。当該AV機器はテレビジョン受像機であり得る。
【0024】
本発明に係る多層配線基板は、上述のような効果を奏する。したがって、前記構成によれば、耐久性および動作の安定性に優れた、安価なAV機器(例えば、テレビジョン受像機)を提供できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、より確実に静電気から保護されている安価な多層配線基板を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係る多層プリント配線基板の断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係る多層プリント配線基板の平面図および断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る多層プリント配線基板を備えている基板ユニットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る実施形態について、多層プリント配線基板および基板ユニットを例に挙げて、図面を参照しつつ説明する。
【0028】
〔本発明に係る多層プリント配線基板〕
本発明の一実施形態に係る多層プリント配線基板について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態における多層プリント配線基板の断面図である。
【0029】
図1に示すように、多層プリント配線基板(多層配線基板)30は、導電層と絶縁層とが交互に積層されたメイン基板3を備えている。メイン基板3は互いに逆方向を向いている裏面(第2面)5および主面(第1面)6を有している。裏面5および主面6の一部、ならびに導電体層8等を覆う、絶縁体10がさらに設けられている。主面6側には、素子11が形成されている。素子11は、主面6の一部に設けられた他の導電体層に対して電極12を介して接続されている。当該他の導電体層と電極12とは、半田付けされている(取り付け部分13)。
【0030】
以上のように、多層プリント配線基板30は、以下に説明する静電気対策としての構造を除いて、一般的な電子機器に適用され得る構成を有している。引き続き図1を参照して、多層プリント配線基板30の特徴的な構成について説明する。
【0031】
図1に示されているように、メイン基板3には、裏面5から主面6まで貫通するスルーホール4が形成されている。スルーホール4の裏面5側に開口部7aが存在し、スルーホール4の主面6側に開口部7bが存在する。開口部7aと接して開口部7aを取り囲む裏面5の一部、および開口部7bと接して開口部7bを取り囲む主面6の一部、ならびにスルーホール4の内面には、導電体層8が設けられている。導電体層8は、メイン基板3の内部に存在する導電体層であるグランド9に接続されている。そして、これらと組み合わせて形成されている静電気呼込用の凸部1および静電気閉込用の被覆部2によって、本発明に係る多層プリント配線基板30には、静電気対策が施されている。静電気呼込用の凸部1および静電気閉込用の被覆部2の詳細について以下に説明する。
【0032】
(静電気呼込用の凸部1および静電気閉込用の被覆部2)
図1に示すように、多層プリント配線基板30は、静電気呼込用の凸部1および静電気閉込用の被覆部2を備えている。凸部1および被覆部2は、いずれも半田材料によって構成されている。凸部1は主面6側にある導電体層8上の一部に形成されており、被覆部2は裏面5側にある導電体層8上の一部に形成されている。凸部1および被覆部2の形成箇所については後ほど詳細に説明する。
【0033】
上述のように、主面6側にある導電体層8はグランド9に接続されている。つまり、導電体層8上の凸部1は、導電体層8を介してグランド9と電気的に接続されている。
【0034】
ここで、静電気がシルクシンボル(絶縁体)10bの上方から基板に近づいてきた場合を例にして、本発明の作用を詳細に説明する。凸部1が設けられていない場合、近づいてきた静電気はシルクシンボル10bの表面に移動する。次いで、静電気はシルクシンボル10bの表面からレジスト層(絶縁体)10aの表面へと移動する。さらに、静電気はレジスト層10aの表面を移動して、導電体である取り付け部13と接する電極12に達する。以上の結果として、素子11が誤作動をするか、素子11が電気的に破壊される。
【0035】
一方、凸部1が設けられている場合、上述のように多層プリント配線基板30に近づいてきた静電気は、近傍の導電体である凸部1に引き寄せられて捕捉される。そして、凸部1に捕捉された静電気は、導電体層8を介してグランド9に伝わる。よって、多層配線プリント基板30の表面に沿った静電気の移動が著しく抑制される。つまり、主面6側に形成されている凸部1以外の構成に静電気が達することを抑制できる。したがって、本発明に係る多層配線プリント基板30は、主面6側の構成を静電気から保護し得る。
【0036】
また、上述のように、裏面5側にある導電体層8はグランド9に接続されている。つまり、導電体層8上の被覆部2は、導電体層8を介してグランド9と電気的に接続されている。
【0037】
一部の静電気は、凸部1の表面、およびスルーホール4の内面にある導電体層8に沿って、裏面5側に向かって移動する。被覆部2が設けられていない場合、裏面5側に向かって移動してきた静電気は、そのまま裏面5側に抜け、裏面5側に設けられている絶縁体および図示しない素子の電極等に移動する場合がある。
【0038】
一方、被覆部2が設けられている場合、裏面5側に向かって移動してきた静電気は、被覆部2によって確実に捕捉される。そして、被覆部2に捕捉された静電気は、導電体層8を介してグランド9に伝わる。よって、被覆部2から裏面5側に静電気が放出されることを防止できる。よって、多層配線プリント基板30の表面に沿った静電気の移動が著しく抑制される。つまり、裏面5側に形成されている被覆部2以外の構成に静電気が達することを抑制できる。したがって、本発明に係る多層配線プリント基板30は、裏面5側の構成を静電気から保護し得る。
【0039】
また、上述のように、凸部1および被覆部2を用いた本発明に係る静電気対策の構造は、スルーホール4、導電体層8およびグランド9を有している。スルーホール4は、多層プリント配線基板30における電気的機能を担っていない任意の領域に形成し得る。つまり、本発明に係る静電気対策の構造は、多層プリント配線基板30における種々の領域に形成可能である。さらに、導電体層8およびグランド9の形成には、通常の基板製造に関する技術および装置が利用され得る。したがって、本発明によれば、特別な部品の使用をともなう従来の静電気対策に関する技術と比較して、静電気対策にかかるコストを低く抑えることができる。
【0040】
以上のように、本発明に係る多層プリント配線基板30は、基板上の構成を静電気から保護し得るという効果を奏する。
【0041】
凸部1の高さは、特に限定されないが、主面6側に設けられている絶縁体10の厚さよりも大きいことが好ましい。凸部1は、避雷針のような役割をしているため、周囲の物体と比べて高い程、静電気を引き寄せて捕捉しやすくなるからである。よって、このような構成によれば、多層配線プリント基板30に近づいた静電気は、主面6側に設けられている絶縁体10よりも、高さのある凸部1に引き寄せられて捕捉されやすくなる。したがって、上述のような構成によれば、より確実に、基板上の構成を静電気から保護し得る。
【0042】
また、凸部1の高さは、主面6側に設けられている素子11の電極12の厚さよりも大きいことが好ましい。ここで言う電極12とは、図1に示されている取り付け部13に挟まれている電極12の部分を指している。このような構成によれば、多層配線プリント基板30に近づいた静電気は、主面6側に設けられている素子11の電極12よりも、高さのある凸部1に引き寄せられて捕捉されやすくなる。したがって、上述のような構成によれば、より確実に、基板上の構成を静電気から保護し得る。
【0043】
以上のような、凸部1の高さとしては、例えば、500μm〜1mmの高さが挙げられる。前記範囲から凸部1の高さを選択すれば、凸部1は、電極12および絶縁体10を超えて形成され得る。
【0044】
本発明に係る多層プリント配線基板30において、凸部1は、主面6の導電体層8に、開口部7bに沿って形成されている。また、被覆部2は、裏面5の導電体層8に、開口部7aに沿って形成されている。凸部1および被覆部2は、一体的または連続的に形成されている必要はなく、複数のパーツが不連続的に設けられたものでもよい。凸部1および被覆部2は、半田材料によって構成されている。半田材料としては、例えば、ペースト半田を用いればよい。凸部1の形状は、特に限定されない。また、被覆部2の形状も、特に限定されない。例えば、半田材料を融解し、冷却することによって形成する場合、形状は円錐状となり得る。
【0045】
被覆部2は、開口部7aの一部を露出させるように構成され得るが、開口部7aを塞いでいることが好ましい。開口部7aが塞がれている場合、静電気呼込用の凸部1の表面およびスルーホール4の内面に設けられた導電体層8の表面を移動してきた静電気は、被覆部2に確実に捕捉されるからである。よって、当該静電気が裏面5側に放出されることを確実に防止できる。つまり、裏面5側に形成されている被覆部2以外の構成に静電気が達することを確実に抑制できる。
【0046】
なお、以上において、主面6側に素子12が形成されている片面の多層配線基板として多層プリント配線基板30を説明している。しかし、本発明にかかる多層プリント配線基板30は、両面に素子などを備えている構成であり得る。このような構成の場合、多層プリント配線基板30にはさらに、裏面5側に凸部1が形成されており、主面6側に被覆部2が形成されている。
【0047】
以上のように、本発明に係る多層プリント配線基板30は、凸部1および被覆部2を備えていることによって、主面6側および裏面5側に形成されている構成を静電気から保護し得る。
【0048】
(凸部1および被覆部2の形成位置の一例)
本発明に係る多層プリント配線基板(多層配線基板)40における凸部1および被覆部2の形成位置の一例ついて、図2を参照して以下に説明する。図2は、本発明の他の実施形態に係る多層プリント配線基板の平面図および断面図である。
【0049】
図2に示すように、多層プリント配線基板40において、凸部1および被覆部2の複数の対が、多層プリント配線基板40の外周に沿って設けられている。これは、静電気が基板の外周側を移動する傾向があることを考慮しているからである。
【0050】
複数の素子11は、複数の凸部1に取り囲まれるように、主面6側の基板中央側に配置されている。基板外周側に近づいてきた静電気は、外周に沿って設けられている凸部1によって捕捉される。よって、静電気が基板中央側に達することが防止される。したがって、基板中央側に存在する複数の素子11は、静電気から保護される。
【0051】
また、多層プリント配線基板40において、凸部1のそれぞれは、互いに大きさの異なる第1部分1aおよび第2部分1bからなる。基板中央側に位置する第1部分1aは、基板外周側に位置する第2部分1bと比べて高くなっている。これにより、多層プリント配線基板40の外周側から基板中央側に配置された素子11に向かって移動してくる静電気を、第2部分1bが捕捉し損ねた場合であっても、基板中央側に位置する第1部分1aが確実に捕捉する。よって、静電気が基板中央側に達することがより防止される。したがって、基板中央側に存在する複数の素子11は、静電気から確実に保護される。
【0052】
第1部分1aおよび第2部分1bを形成する方法としては、例えば、第1部分1aおよび第2部分1bの形成箇所を挟む領域にレジストなどを配置する方法がある。このとき、基板中央側には、基板端辺側よりも多い量のペースト半田を用いればよい。
【0053】
さらに、スペースに余裕のある箇所には、大きいスルーホール4を設けて幅の広い凸部1を設けることによって、静電気をより引き寄せてやすくすることができる。また、より多数の凸部1を設けることによって、より確実に静電気を引き寄せることができる。
【0054】
(凸部1および被覆部2の形成位置の他の例)
本発明に係る変形例である多層プリント配線基板50における凸部1および被覆部2の形成位置の他の例について、図3を参照して以下に説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る多層プリント配線基板を備えている基板ユニットの断面図である。ここでは、図3に描写されている多層プリント配線基板50についてのみ説明する。多層プリント配線基板50を備えている基板ユニット60については、改めて項目を設けて後述する。
【0055】
図3に示すように、多層プリント配線基板50において、凸部1は、主面6側に設けられているジャック(外部接続端子)23aの近傍に設けられている。被覆部2は、裏面5側の、凸部1と対向する位置に設けられている。なお、多層プリント配線基板50において、外部接続端子はジャックであるが、外部接続端子はこれに限られない。
【0056】
基板ユニット60に実装されている多層プリント配線基板50において、ジャック23aをキャビネット(筐体)21外に露出させるためにキャビネット21に設けられた筐体開口部とジャック23aとの間に隙間が生じる。そして当該隙間から静電気が侵入する場合がある。そのとき、図3に示す構成によれば、凸部1が静電気を引き寄せて捕捉する。前記隙間の存在によって、多層プリント配線基板50上の外部と連絡する領域はジャック23aの近傍にあり、凸部1が当該領域に設けられているからである。したがって、多層プリント配線基板50は、基板ユニット60に実装した際、素子11を静電気から確実に保護し得る。
【0057】
また、多層プリント配線基板50において、凸部1は、主面6側に設けられているサイド型のジャック(外部接続端子)23bの近傍に設けられている。当該凸部1は、多層プリント配線基板50の外周の近傍に設けられている。当該凸部1は、多層プリント配線基板40と同様に、互いに大きさの異なる第1部分1aおよび第2部分1bからなり、第1部分1aは第2部分1bと比べて高くなっている。多層プリント配線基板50を基板ユニット60に実装する際、サイド型であるジャック23bにおいては、多層プリント配線基板50の外周側が隙間と接近するからである。
【0058】
なお、図3において、当該凸部1およびサイド型であるジャック23bが同一断面上に存在するように示している。しかし、実際には、図3を基準にして当該凸部1のわずか後方にジャック23bが存在している。図3を用いて、当該凸部1およびジャック23bが互いに接近して配置していることを説明するという便宜的な理由から、このように描写している。
【0059】
以上において、図2および3を用いて、基板における凸部1および被覆部2の形成位置を例示した。しかし、本発明は、一部分に図2の形成位置を採用し、他の部分に図3の形成位置を採用している多層プリント配線基板を包含している。これは、例えば、以下の理由に基づいて技術的に通常の組合せであることが十分に理解される。基板上にある静電気から保護すべき部品が、必ずしも等間隔に規則正しく配列している訳ではないからである。したがって、基板上の部品(の集合)は、凸部1および被覆部2の形成位置を適切に選択することによって、適切に静電気から保護され得る。
【0060】
(他の構成の詳細)
スルーホール4は、従来公知の方法によって形成され得る、裏面5から主面6まで貫通している貫通孔である。よって、上述のように、スルーホール4は、基板上の電気的機能を担っていない任意の箇所に形成され得る。
【0061】
導電体層8は、例えば、銅、金、ニッケル等の従来公知の導電体材料を単独にか、または組み合わせて用いて形成される。例えば、導電体層8は、銅の表面をニッケル薄膜によって覆い、さらに金メッキを施すことによって形成し得る。導電体層8は、凸部1および被覆部2と、グランド9とを電気的に接続し得る構成である。よって、導電体層8は、通常の電気接続を実現する公知の構成と同じく形成し得る。
【0062】
グランド9は、導電体層8と同様の材料によって形成されている接地電極である。よって、グランド9として、通常の多層配線基板の内部の層として形成し得る公知の構成を採用し得る。形成箇所について特に限定されない。
【0063】
絶縁体10は、例えば、図1に示すレジスト層10aおよびシンボルシルク10b等である。絶縁体10は、公知の方法によって形成すればよい。
【0064】
素子11は、例えば、IC(集積回路)、トランジスタ、ダイオード、抵抗等の電子部品である。
【0065】
〔本発明に係る基板ユニット及びテレビジョン受像機〕
図3は、本発明の一実施形態における基板ユニットの断面図である。
【0066】
基板ユニット60は、キャビネット21内に多層プリント配線基板50を備えている。多層プリント配線基板50の裏面5は基板ユニット60の背面部22と対向し、主面6は表面部と対向している。基板ユニット60の表面部のキャビネット21には、ジャック23aをキャビネット21外に露出させるための筐体開口部が形成されている。さらにキャビネット21の一部が筐体開口部からキャビネット21の内側に陥入して、目隠し部24を形成している。また、基板ユニット60のキャビネット21には、サイド型であるジャック23bをキャビネット21外に露出させるための筐体開口部が形成されている。筐体開口部とジャック23aまたはジャック23bとの間には、若干の隙間がある。
【0067】
主面6側において、前記隙間の存在によって多層プリント配線基板50上の外部と連絡する領域に、凸部1が備えられている。このため、この隙間を通って外部からキャビネット21内に静電気が侵入すると、静電気は隙間から最も近い導電物である凸部1に引き寄せられて捕捉される。よって、静電気が素子11に達することを防止し得る。
【0068】
また、ジャック23bおよび筐体開口部によって上述の隙間と同様の隙間が形成される。よって、当該隙間と対応する多層プリント配線基板50の外周の一部が外部と連絡する。この隙間にも上述のように静電気が侵入し得る。ここで、外部と連絡する基板外周側には凸部1が設けられている。さらに凸部1において、基板中央側に位置する第1部分1aが基板外周側に位置する第2部分1bと比べて高くなっている。これにより、基板中央側に配置された素子11に向かって外周側から移動してくる静電気を、基板中央側に位置する第1部分1aが確実に引き寄せて捕捉する。よって、静電気が素子11に達することを確実に防止し得る。なお、図3において、凸部1はジャック23bの図面手前側に配置されている。
【0069】
以上のように、多層プリント配線基板50は、素子11を静電気から確実に保護し得る。したがって、多層プリント配線基板50を備えている基板ユニット60は、耐久性および動作の安定性に優れている。
【0070】
また、本発明の一実施形態に係るテレビジョン受像機は、多層プリント配線基板50を備えて構成される。また、本発明の一実施形態に係るテレビジョン受像機は、基板ユニット60を備えて構成される。このようなテレビジョン受像機は、静電気から確実に保護され得るので、耐久性および動作の安定性に優れている。
【0071】
ここでは、本発明のプリント配線基板50を適用する対象の例として、テレビジョン受像機を挙げている。しかし、上記対象としては、テレビジョン受像機以外のAV機器(例えば音響装置)などの種々の電子機器が挙げられる。つまり、本発明のプリント配線基板50を備えていることによって、静電気から確実に保護され得る種々の電子機器を実現できる。したがって、本発明によれば、耐久性および動作の安定性に優れている種々の電子機器を提供し得る。
【0072】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明により、安価で、且つ基板全体に構成し得る構造によって、より確実に静電気を捉え、素子を静電気から確実に保護し得る多層配線基板を提供できる。さらに、当該多層配線基板はAV機器(例えばテレビジョン受像機)等の電子機器に用いることができる。
【符号の説明】
【0074】
1 凸部
1a 第1部分
1b 第2部分
2 被覆部
3 メイン基板
4 スルーホール
5 裏面(第1面)
6 主面(第2面)
7a 開口部
7b 開口部
8 導電体層
9 グランド
10 絶縁体
10a レジスト層(絶縁体)
10b シルクシンボル(絶縁体)
11 素子
12 電極
13 取り付け部
21 キャビネット(筐体)
23a ジャック(外部接続端子)
23b ジャック(外部接続端子)
24 目隠し部
30 多層プリント配線基板(多層配線基板)
40 多層プリント配線基板(多層配線基板)
50 多層プリント配線基板(多層配線基板)
60 基板ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面、および当該第1面と反対方向を向いており、素子が形成されている第2面を有している多層配線基板であって、
前記第1面から前記第2面まで貫通するスルーホールが形成されており、当該スルーホールの開口部と接して、当該開口部を取り囲む前記第1面および前記第2面の一部、ならびに当該スルーホールの内面に導電体層が形成されており、
前記第2面の前記導電体層に、前記開口部に沿うように、半田材料によって構成されている静電気呼込用の凸部が設けられており、
前記第1面の前記導電体層に、前記開口部に沿うように、半田材料によって構成されている静電気閉込用の被覆部が設けられており、且つ、
前記導電体層が、前記第1面と前記第2面との間に位置するグランドに接続されていることを特徴とする多層配線基板。
【請求項2】
前記被覆部が、さらに、前記第1面側にある前記開口部を塞いでいることを特徴とする請求項1に記載の多層配線基板。
【請求項3】
前記凸部の高さが、前記第2面側に設けられている絶縁体の厚さよりも大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の多層配線基板。
【請求項4】
前記凸部の高さが、前記第2面側に設けられている前記素子の電極の厚さよりも大きいことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の多層配線基板。
【請求項5】
前記凸部および前記被覆部の複数の対が、多層配線基板の外周に沿って設けられていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の多層配線基板。
【請求項6】
電子機器の筐体に収納されている前記多層配線基板であって、
前記第2面側に外部接続端子が設けられており、
前記外部接続端子を筐体外に露出させるために、前記筐体に形成されている筐体開口部と前記外部接続端子との間の隙間によって生じる前記多層配線基板の露出部に、前記凸部が設けられていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の多層配線基板。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載の多層配線基板を備えていることを特徴とするAV機器。
【請求項8】
上記AV機器がテレビジョン受像機であることを特徴とする請求項7に記載のAV機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−105793(P2013−105793A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246916(P2011−246916)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】