説明

多数の送信信号経路を備えた無線デバイスのための送信電力低減

【課題】送信電力を低減し通話時間を延ばす。
【解決手段】無線デバイスは、多数のアンテナ230a、230bを装備している。それらは、異なる設計でありうる。各アンテナはそれぞれ異なる方法で無線環境と相互作用し、異なる散乱効果を得る。無線デバイスは、各アンテナにつき1つの送信信号経路を持っている。各送信信号経路はそれぞれ、関連するアンテナからの送信のためRF出力信号を生成する。受信基地局において、大きな受信信号レベルを達成するために、無線デバイスは、1又は複数の送信信号経路の動作を制御する。無線デバイスは、(1)基地局からのフィードバックに何ら頼ることなく送信信号経路を自立的に調節し、(2)基地局から受信した送信電力制御(TPC)コマンドに基づいて、送信信号経路を調節する。無線デバイスは、各送信信号経路を選択的にイネーブル及びディセーブルし、各送信信号経路の位相及び/又は利得を変えること等を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に通信に関し、特に、無線デバイスによってデータを送信する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムでは、無線デバイス(例えば、セルラ電話)によって送信されるラジオ周波数(RF)信号は、多数の信号経路を経由して基地局に到達しうる。これらの信号経路は、視線経路及び反射経路を含んでいる。これらは、環境内のラジオ波の反射によって生成される。従って、基地局は、このように送信されたRF信号の多数のインスタンスを受信しうる。受信された各信号インスタンスはそれぞれ、異なる信号経路を経由して得られ、その信号経路によって決定される複合利得及び伝播遅延を有する。これら受信された信号インスタンスは、基地局において建設的に加わり、より大きな値を持つ受信信号を生成しうる。これら受信された信号インスタンスは、その反対に、破壊的に加わり、より小さな値を持つ受信信号を生成することもある。従って、これら受信された信号インスタンスの増強又はキャンセルに依存して、異なる受信信号レベルが得られる。増強は、通常、問題ではない。しかしながら、キャンセルは、受信信号レベルを、例えば40デシベル(dB)までのように、大幅に低下させるかもしれない。キャンセルによって大幅に減衰された場合、受信信号は、「フェード」状態にあると言われる。
【0003】
例えば、符号分割多元接続(CDMA)システムのような幾つかの無線通信システムは、フェージングによる有害な影響を緩和するために、電力制御を用いる。電力制御によって、無線デバイスの送信電力が、基地局における目標信号対全体雑音比(SNR)を達成するために、必要に応じて増加されたり、あるいは低減される。例えば、無線環境の変化によって、無線デバイスの受信SNRが、目標SNRを下回ったことを基地局が検知すると、基地局は、無線デバイスに対して、その送信電力を増加するように指示する送信電力制御(TPC)コマンドを送る。無線デバイスは、目標SNR、あるいはそれに近い受信SNRを維持するために、広い範囲にわたってその送信電力を変えうる。例えば、フェードが、基地局における受信信号を20dBまで低下させる場合、無線デバイスは、基地局において、所望のSNRを維持するために、その送信電力を約20dBまで(すなわち、100倍高く)増加するように指示されるであろう。
【0004】
多くの無線デバイスは、ポータブルであり、内蔵バッテリによって電源供給される。フェージングと格闘するために高い送信電力を使用することは、バッテリ電力を消耗し、通話時間を短くする。従って、例えば、ポータブル無線デバイスのために、送信電力を低減し通話時間を延ばすための技術が、当該技術において必要である。
【発明の概要】
【0005】
本明細書では、多数の(例えば2つの)アンテナを装備し、平均して送信電力を低減する方式で送信することが可能な無線デバイスが開示される。各アンテナはそれぞれ異なる方式で無線環境と相互作用し、ダイバーシティを備えるために使用される。多数のアンテナは、異なる設計/タイプ(例えば、ダイポールアンテナとパッチアンテナ)からなり、異なる散乱効果を得る。無線デバイスはまた、各アンテナにつき1つの送信信号経路を持っている。送信信号経路はそれぞれ、関連するアンテナから送信するためのRF出力信号を生成する。多数のアンテナのためのRF出力信号は、同じ信号レベル、又は異なる信号レベルを有する。
【0006】
受信基地局において、大きな受信信号レベルを達成するために、無線デバイスは、1又は複数の指定された送信信号経路の動作を制御する。この指定された送信信号経路の制御は、通常は、電力制御のために基地局から受信されるTPCコマンドに応答して無線デバイスによって実施される利得又は送信電力調節に加えて行われる。例えば、無線デバイスは、基地局からのフィードバックに何ら頼ることなく、指定された送信信号経路を自立的に制御する。無線デバイスはまた、受信したTPCコマンドに基づいて、この指定された送信信号経路を制御しうる。自立的制御及びフィードバックベース制御との両方のために、無線デバイスは、各送信信号経路を選択的にイネーブル及びディセーブルし、各送信信号経路の位相及び/又は利得等を変えること等を行う。何れの場合であれ、指定された送信信号経路の動作変化による基地局におけるより大きな受信信号レベルによって、無線デバイスは、平均して、低い送信電力レベルで送信できるようになる。これは、無線デバイスの消費電力を低減し、通話時間を長くする。
【0007】
本発明の様々な局面及び実施形態が、以下に更に詳細に記述される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、信号の送信に対する散乱効果を示す。
【図2】図2は、無線デバイス及び基地局のブロック図を示す。
【図3】図3は、無線デバイスにおける送信機ユニットの実施形態を示す。
【図4】図4は、送信機ユニットの別の実施形態を示す。
【図5】図5は、送信機ユニットの更に別の実施形態を示す。
【図6】図6は、図5の送信機ユニット内の送信RF集積回路(TX RFIC)を示す。
【図7】図7は、多数の送信信号経路の動作を制御する処理を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の特徴及び性質は、全体を通じて、同一符号が同一部に対応している図面とともに考慮された場合、以下に示す詳細記述からより明らかになるであろう。
【0010】
「典型的」("exemplary")という用語は、本明細書において、「例、インスタンス、又は例示となる」ことを意味するために使用される。本明細書で「典型的」と記載される何れの実施形態又は設計も、他の実施形態又は設計に対して好適であるとか有利であるとか必ずしも解釈される必要はない。
【0011】
図1は、無線デバイス110における単一の送信アンテナ112から、基地局150における単一の受信アンテナ152への信号送信の散乱効果を示す。散乱は、送信アンテナと無線環境(又は、ラジオチャネル)との間の相互作用を称する。この散乱は、送信アンテナから送られ、恐らくは、視線(すなわち直接)経路のみならず、反射(又は散乱)経路を経由して受信されるRF出力信号となる。異なる信号経路による多数の受信信号インスタンスは、受信アンテナにおいて建設的にあるいは破壊的に加わりうる。受信信号は、到着時における経路長さ及び信号位相に依存して、受信信号インスタンスが互いに増強する場合に高められ、受信信号インスタンスが互いにキャンセルする場合に減衰される。送信アンテナと無線環境との間の相互作用は、送信されるRF信号の信号経路のセット、すなわち、受信アンテナにおける受信信号強度を決定する。
【0012】
送信アンテナ112に、異なる送信アンテナが使用されてよい。そして、これら異なる送信アンテナは、一般に、同じ無線環境において、異なる散乱効果を経験するであろう。これら送信アンテナは、異なるアンテナ設計又はタイプからなっていたり、あるいは、異なるビームパターン、異なる場所、異なる極性、及び/又はその他の異なる特徴を持つ場合、「異なる」ものと考えられうる。一般に、互いに対してより異なる送信アンテナは、より異なる散乱効果を経験する傾向にある。送信アンテナは、著しく異なる方式で無線環境と相互作用するのであれば、デコリレート(de-correlated)(すなわち、相関性のない)された、すなわち、低い相関を持つと考えられる。
【0013】
基地局における受信信号は、送信のために使用された送信アンテナと、無線環境とによって決定される信号レベルを持つ。基地局は、送信アンテナによる異なる散乱効果によって、同じ無線環境における送信のために使用された異なる各送信アンテナに対し、異なる受信信号レベルを持つかもしれない。これら送信アンテナがデコリレートされ、無線環境が、経路遅延による十分な散乱を生成すると、個々の異なる送信アンテナについて基地局によって得られる異なる受信電力レベルもデコリレートされる。
【0014】
上記記載は、データ送信用に1つの送信アンテナ112を使用することを仮定する。パフォーマンス改善のために、異なる多数の、好適には、デコリレートされた受信信号インスタンスのセットが基地局において生成されるために、多数の送信アンテナが使用される。セットは、送信アンテナそれぞれに対応する。これら多数の送信アンテナは、選択的にイネーブル及びディセーブルされる。あるいは、又はそれに加えて、これら送信アンテナから送られた信号が、基地局において受信信号インスタンスの全てが結合され、より大きな受信信号を生成できるように、振幅及び/又は位相が調節される。受信信号レベルを改善することは、異なる送信アンテナと無線環境との間の異なる相互作用(すなわち、異なる散乱効果)に依存する。これは、アンテナビームを形成し、かつ受信アンテナに向かう信号送信の操作を試みる従来のビーム形成とは対照的である。
【0015】
以下の記述において、「チャネルコンフィギュレーション」は、与えられた無線環境において動作する1又は複数の送信アンテナからなる与えられたセットを称する。異なるチャネルコンフィギュレーションは、個々の異なるアンテナ、異なるアンテナの組合せ、多数のアンテナから送られた信号の異なる調節等で得られうる。「送信信号経路」は、1つのアンテナのためのRF出力信号(RFout)を生成するために使用される回路ブロックの集合を称する。各アンテナについて、1つの送信信号経路が提供される。しかしながら、多数の送信信号経路が、幾つかの共通の回路ブロックを共有することもある。各送信信号経路は、一般に、アナログベースバンドからRFまでの信号処理/調整の全てをカバーする。
【0016】
図2は、無線デバイス210及び基地局250の実施形態のブロック図を示す。この実施形態では、無線デバイス210は、2つのアンテナ230a,230bを装備している。また、基地局250は、単一のアンテナ252を装備している。一般に、無線デバイス210は、任意の数のアンテナを装備しうる。また、基地局250も、任意の数のアンテナを装備しうる。
【0017】
逆方向リンク(又はアップリンク)においては、送信(TX)データプロセッサ212が、トラフィックデータを受信して処理し、1又は複数のデータチップのストリームを生成する。TXデータプロセッサ212による処理は、システムに依存し、例えば、符合化、インタリーブ、シンボルマッピング等を含みうる。一般に、CDMAシステムの場合、これら処理は更に、チャネル化(channelization)及びスペクトル拡散を含む。TXデータプロセッサ212は更に、データチップのストリームの各々を、対応するアナログベースバンド信号に変換する。送信機ユニット220は、TXデータプロセッサ212からベースバンド信号を受信して調整(例えば、増幅、フィルタ、及び周波数アップコンバート)し、データ送信のために使用される各アンテナ用のRF出力信号を生成する。このRF出力信号は、デュプレクサユニット222を介して送られ、アンテナ230a,230bを経由して送信される。
【0018】
基地局250では、無線デバイス210によって送信されたRF信号は、アンテナ252によって受信され、デュプレクサ254を介して送られ、受信機ユニット256に供給される。受信機ユニット256は、この受信信号を調整(例えば、フィルタ、増幅、及び周波数ダウンコンバート)し、デジタル化し、データサンプルのストリームを提供する。受信(RX)データプロセッサ260は、このデータサンプルを処理し、復号されたデータを提供する。RXデータプロセッサ260による処理は、TXデータプロセッサ212による処理と相補的であり、例えば、逆拡散、逆チャネル化(de-channelization)、シンボルデマッピング、逆インタリーブ、及び復号を含む。
【0019】
無線デバイス210の電力制御のために、SNR推定器262は、例えば、無線デバイスによって送信されたパイロットに基づいて、無線デバイス210のための受信SNRを推定する。コントローラ270は、この受信SNRを、無線デバイス210のための目標SNRと比較し、比較結果に基づいて、TPCコマンドを生成する。各TPCコマンドは、無線デバイス210に対して、送信電力を(例えば、予め定めた量)増やすように指示するアップコマンドか、送信電力を減らすように指示するダウンコマンドかの何れかである。コントローラ270は、一般に、無線デバイス210のための目標パケット/フレーム誤り率を達成するために、目標SNRを調節する。無線デバイス210のためのTPCコマンドは、他のデータと同様に、TXデータプロセッサ280によって処理され、送信機ユニット282によって調整され、デュプレクサ254を介して送られ、アンテナ252経由で送信される。
【0020】
無線デバイス210では、基地局250によって送信されたRF信号が、アンテナ230a,230bによって受信され、デュプレクサユニット222を介して送られ、受信機ユニット232によって調整及びデジタル化され、RXデータプロセッサ234によって処理されて、無線デバイス210のために基地局250から送られたTPCコマンドが復元される。コントローラ240は、このTPCコマンドを受け取り、TXデータプロセッサ212による処理と、送信機ユニット220の動作とを制御する。例えば、コントローラ240は、逆方向リンクでの送信のために、送信機ユニット220の動作を変える制御信号を生成しうる。この制御信号は、以下に述べるように、(1)受信したTPCコマンド及び/又は基地局250からの他のフィードバックに基づいて、あるいは(2)何れのフィードバックもなく無線デバイス210によって自立的に生成されうる。
【0021】
コントローラ240及びコントローラ270はそれぞれ、無線デバイス210及び基地局250内の様々な処理ユニットの動作をも指示する。メモリユニット242及びメモリユニット272はそれぞれ、コントローラ240及びコントローラ270のためのデータ及びプログラムコードを格納する。
【0022】
TPCコマンドは、無線デバイス210において容易に利用可能なフィードバックの1つの形態を表す。それは、現在のチャネル状態を推定するために使用される。アップコマンドが基地局250から送られた確率が高い場合、無線デバイス210はフェードを検出しうる。しかしながら、基地局250からの他の形態のフィードバックもまた、現在のチャネル状態を推定するために使用される。
【0023】
無線デバイス210では、アンテナ230aが、メインアンテナと見なされ、アンテナ230bが、第2のアンテナ、又はダイバーシティアンテナと見なされうる。アンテナ230a及びアンテナ230bは、同じアンテナ設計、あるいは異なるアンテナ設計で実現されうる。アンテナ230aとアンテナ230bとが同じ設計/タイプである場合、これらアンテナを、異なる場所及び/又は異なる方向に配置することによって、異なる散乱効果が達成されうる。しかしながら、アンテナ230a及びアンテナ230bが、異なる設計/タイプからなり、異なるアンテナパターン、異なる極性、及び/又はその他の異なる特性を持っているのであれば、改善されたパフォーマンスが達成されうる。
【0024】
例えば、アンテナ230aは、ダイポールアンテナとして実現され、アンテナ230bは、パッチアンテナとして実現されうる。ダイポールアンテナはホイップアンテナとも呼ばれ、一般的な例は、セルラ電話によく使用されるプールアウトアンテナである。ダイポールアンテナの典型的な設計は、2001年5月29日に発行され、"Balanced, Retractable Mobile Phone Antenna"と題された米国特許6,239,755号に記載されている。パッチアンテナは平面アンテナとも呼ばれ、一般には、プリント回路基板上に製造される。パッチアンテナの典型的な設計は、2003年5月6日に発行され、"Planar Antenna for Wireless Communications"と題された米国特許6,559,809号に記載されている。2つの異なるタイプのアンテナ(スリーブダイポールアンテナとクワッドリファイラ・へリックス・アンテナ(quadrifilar helix antenna)を備えた典型的なアンテナアセンブリは、2004年4月13日に発行され、"Compact Dual Mode Integrated Antenna System for Terrestrial Cellular and Satellite Telecommunications"と題された米国特許6,720,929号に記載されている。アンテナ230a及びアンテナ230b用に、他のタイプのアンテナが使用されてもよい。例えば、アンテナ230a及びアンテナ230bは、フラットコイル、パッチ、マイクロストリップアンテナ、プリントダイポール、(パッチアンテナの特別なケースである)インバートFアンテナ、平面インバートFアンテナ(PIFA)、極性パッチ、プレートアンテナ(接地面を持たない不規則形状のフラットアンテナ)等によって実現される。
【0025】
図3は、送信機ユニット220aのブロック図を示す。これは、図2の送信機ユニット220の実施形態である。送信機ユニット220a内では、送信回路ブロック310が、ベースバンド信号を受信し、変調された信号を生成する。送信回路ブロック310は一般に、増幅器、ミキサ、フィルタ等を含み、RF集積回路(RFIC)内に実装されるか、あるいはディスクリートな回路素子とともに実装される。バンドパスフィルタ(BPF)312は、変調された信号をフィルタし、フィルタされた変調信号を提供する。電力スプリッタ314は、このフィルタされた変調信号を分割し、第1のRF変調信号を電力増幅器(PA)318aに、第2のRF変調信号を回路素子316に提供する。電力スプリッタ314は、カップラ、又は他のタイプの回路で実現されうる。第1のRF変調信号及び第2のRF変調信号は、同じ又は異なる信号レベルを有しうる。例えば、第2のRF変調信号は、第1のRF変調信号よりも、3dB、6dB、10dB、あるいはその他の量小さいかもしれない。
【0026】
回路素子316は、第2のRF変調信号を、復号利得Gと掛け合わせ(multiply)、スケールされたRF変調信号を、電力増幅器318bに提供する。回路素子316は、第2のRF変調信号の振幅をスケールし、及び/又は、その位相を回転して、スケールされたRF変調信号を生成する。電力増幅器318aは、第1のRF変調信号を増幅して、第1のRF出力信号(RFout1)を提供する。それは、デュプレクサ322aを介して送られ、アンテナ230aから送信される。同様に、電力増幅器318bは、スケールされたRF変調信号を増幅して、第2のRF出力信号(RFout2)を提供する。それは、デュプレクサ322bを介して送られ、アンテナ230bから送信される。電力増幅器318a及び電力増幅器318bは、同じ利得あるいは異なる利得を有しうる。例えば、電力増幅器318aは、電力増幅器318bよりもより高い利得、かつより高いRF出力信号レベル(例えば、電力増幅器318aの場合25dBに対して、電力増幅器318bの場合15dB)を提供するように設計されうる。電力増幅器318aからのRF出力信号レベルはPout1であり、電力増幅器318bからのRF出力信号レベルはPout2である。ここで、Pout1はPout2と等しいかもしれないし、等しくないかもしれない。
【0027】
メイン送信信号経路は、送信回路ブロック310からアンテナ230aまでの全てを含み、電力増幅器318a及びデュプレクサ322aを含んでいる。ダイバーシティ送信信号経路は、送信回路ブロック310からアンテナ230bまでの全てを含み、回路素子316、電力増幅器318b、及びデュプレクサ322bを含んでいる。送信回路ブロック310、バンドパスフィルタ312、及び電力スプリッタ314は、共通であり、メイン送信信号経路とダイバーシティ送信信号経路との両方によって共有される。メイン送信信号経路は、CDMAのためのIS−98規格によって課せされる電力要求及び線形性要求のような適用可能なシステム要求に準拠するように設計されうる。ダイバーシティ送信信号経路は、このようなシステム要求の全てに準拠しているか、あるいはしていないかもしれない。例えば、ダイバーシティ送信信号経路は、+23dBmの最大出力電力要求を除いて、IS−98仕様の全てを満足するように設計されうる(例えば、ダイバーシティ送信信号経路は、+12dBmの最大出力電力しか提供しないかもしれない)。ダイバーシティ送信信号経路が、仕様に完全に準拠している訳ではないか、及び/又は、第2のRF出力信号レベルが、第1のRF出力信号レベルよりも小さいのであれば、電力増幅器318bは、電力増幅器318aと同じ電力及び線形性パフォーマンスを持つ必要がないかもしれない。この場合、電力増幅器318bは、より少数の増幅ステージで設計され、かつ/又はより少ない電力を消費し、より低いコストとなるように設計することができる。ダイバーシティ送信信号経路から電力増幅器418bを省略することも可能かもしれない。また、デュプレクサ322bは、緩和された要求を有することもできる。
【0028】
上述したように、アンテナ230aは、第1のタイプ(例えば、ダイポールアンテナ)からなりえ、第2のアンテナ230bは、第2のタイプ(例えば、パッチアンテナ)からなりうる。アンテナ230a及びアンテナ230bがデコリレートされているのであれば、これらアンテナのうちの1つのチャネルがフェードしていても、他方のアンテナのチャネルはフェードしていないかもしれない。2つのRF出力信号の相対的な位相及び/又は振幅を調節することによって、無線デバイス210から、同じ又は低い送信電力で、より高い受信信号が、基地局250によって得られうる。回路素子316は、ダイバーシティアンテナ230bから送信される第2のRF出力信号の複合利得(つまり、位相及び/又は振幅)を調節するために使用され、乗算器、プログラム可能な遅延素子、又は他の幾つかのタイプの回路で実現されうる。ダイバーシティ送信信号経路のための複合利得の調節は、様々な方式で実行されうる。
【0029】
1つの実施形態では、無線デバイス210は、基地局250からのあらゆるフィードバック無しに、第2の送信信号経路のための複合利得を自立的に調節する。第1の調節スキームでは、無線デバイス210は、系統的に、第2のRF出力信号の位相をスイープする。これは、各時間インターバルnについて、電力スプリッタ314からの第2のRF変調信号を、複合利得ej2π・n/Nと掛け合わせることによって達成されうる。フェードの間にわたって第2のRF出力信号を調節できるように、各時間インターバルの持続時間は、高速フェードの予期される持続時間よりも短くなるように定められる。N個の時間インターバルによって360°全体がスイープされる。ここでNは、1よりも大きい任意の値でありうる。第2の調節スキームでは、第2のRF変調信号が、各時間インターバルnについて、準ランダムな位相ej2π・p(n)/Nと掛け合わされる。ここで、p(n)は、0とNとの間の準ランダムな値、すなわち、0≦p(n)≦Nである。第3の調節スキームでは、第2のRF変調信号が、それぞれ利得G=1及びG=0と掛け合わされることによって、ダイバーシティ送信信号経路が、ON状態(イネーブル)とOFF状態(ディセーブル)との間を循環する。第2のRF変調信号はまた、系統的に、あるいは準ランダムに選択されうる他の幾つかの複合値とも掛け合わされる。
【0030】
別の実施形態では、無線デバイス210は、基地局250からのフィードバックに基づいて、ダイバーシティ送信信号経路のための複合利得を調節する。このフィードバックは、無線デバイス210の電力制御用に基地局250によって送られたTPCコマンドの形態であるかもしれない。無線デバイス210は、受信したTPCコマンドに基づいて、基地局250で受信される信号レベルの低下を検出しうる。例えば、予め定めた数の連続するUPコマンドが基地局250から送られる場合、ある時間ウィンドウ内で受信したTPCコマンドのうち、予め定めた(あるいはそれよりも高い)パーセントがUPコマンドである場合等には、無線デバイス210は、現在のチャネルコンフィギュレーションがフェードにあると推定しうる。そして、無線デバイス210は、この受信したTPCコマンドに基づいて、フェードが検出された場合にはいつでも、第2の送信信号経路のための複合利得を調節しうる。アンテナ230aとアンテナ230bとがデコリレートされるのであれば、以前のチャネルコンフィギュレーションよりも、新たなチャネルコンフィギュレーションの方が良好である可能性が高い。無線デバイス210は、TPCコマンドの配信が、通常に戻ると考えられるまで、複合利得の調節を継続しうる。無線デバイス210は、効果を得るのに十分な時間を各複合利得設定に対して与えるために、TPCコマンドレートよりも低いレートで複合利得を調節しうる。
【0031】
図4は、送信機ユニット220bのブロック図を示す。それは、図2の送信機ユニット220の別の実施形態である。送信機ユニット220b内では、送信回路ブロック410、バンドバスフィルタ412、及び電力スプリッタ414が、ベースバンド信号を、図3について説明したようにして処理し、電力増幅器418a及び電力増幅器418bに、第1のRF変調信号及び第2のRF変調信号をそれぞれ供給する。電力増幅器418aは、第1のRF変調信号を増幅し、第1のRF出力信号を供給する。それは、デュプレクサ422aを介して送られ、アンテナ230aから送信される。同様に、電力増幅器418bは、第2のRF変調信号を増幅し、第2のRF出力信号を供給する。それはデュプレクサ422b及びダイプレクサ424を介して送られ、アンテナ230bから送信される。第1のRF出力信号レベルはPout1であり、第2のRF出力信号レベルはPout2である。第1のRF出力信号及び第2のRF出力信号は、同じかあるいは異なる信号レベルを持ちうる。例えば、第2のRF出力信号は、第1のRF出力信号よりも低い信号レベルを持つかもしれない。第2のRF出力信号のための低いレベルは、(1)第2のRF変調信号を、第1のRF変調信号よりも小さくなるように生成することによって、及び/又は、(2)電力増幅器418aよりも、電力増幅器418bに低い利得を使用することによって得られうる。
【0032】
電力増幅器418a及びデュプレクサ422aは、メイン送信信号経路の一部である。電力増幅器418b、デュプレクサ422b、及びダイプレクサ424は、ダイバーシティ送信信号経路の一部である。第1の制御信号(Ctrl1)は、電力増幅器418aに供給され、電力増幅器418aの動作を制御するために使用される。第2の制御信号(Ctrl2)は、電力増幅器418bに供給され、電力増幅器418bの動作を制御するために使用される。各制御信号は、関連する電力増幅器を選択的にイネーブル又はディセーブルし、関連する電力増幅器の位相及び/又は利得を調節し、及び/又は、その他の幾つかの方式で、関連する電力増幅器の動作を調節する。各制御信号は、基地局250から送られたTPCコマンドに基づいて生成されうる。しかしながら、以下に述べるように、Ctrl1信号及びCtrl2信号は、異なる方式で生成されうる。無線デバイス210は、メイン送信信号経路とダイバーシティ送信信号経路とを様々な方式で制御しうる。
【0033】
実施形態では、無線デバイス210が送信している場合は常に、メイン送信信号経路はイネーブルされる。また、ダイバーシティ送信信号経路は、基地局250からのフィードバックに基づいて、選択的にイネーブル及びディセーブルされる。この実施形態の場合、Ctrl1信号は、電力増幅器418aからの第1のRF出力信号の送信電力レベルを調節するために使用される。Ctrl1信号は、基地局250から送られたTPCコマンドに基づいて、通常の方式で生成されうる。そして(1)各UPコマンドについて、予め定めた量まで電力増幅器418aの利得を増加させ、(2)各DOWNコマンドについて、予め定めた量まで電力増幅器418aの利得を減少させうる。Ctrl2信号もまた、基地局250における良好なパフォーマンスを達成するために、受信したTPCコマンドに基づいて生成されうる。第1の調節スキームでは、受信したTPCコマンドに基づいて、フェードが検出された場合にはいつでも、Ctrl2信号は、オン状態(イネーブル)とオフ状態(ディセーブル)との間で電力増幅器418bをトグルする。フェードは、図3について上述したように検出されうる。イネーブル及びディセーブルされたダイバーシティ送信信号とともに、異なるチャネルコンフィギュレーション、すなわち、基地局における異なる受信信号レベルが得られる。第2の調節スキームでは、Ctrl2信号は、フェードが検出された場合、電力増幅器418bをイネーブルし、良好なチャネル状態が検出される場合、電力増幅器418bをディセーブルする。例えば、予め定めた数の連続するDOWNコマンドが基地局250から送られた場合、ある時間ウィンドウ内で受信したTPCコマンドのうち、予め定めた(あるいはそれよりも高い)パーセントがDOWNコマンドである場合等には、良好なチャネル状態が検出されうる。
【0034】
別の実施形態では、無線デバイス210は、基地局250からのフィードバックに基づいて、メイン送信信号経路と、ダイバーシティ送信信号経路との間を循環する。無線デバイス210は先ず、逆方向リンクでの送信のためにメイン送信信号経路をイネーブルしうる。無線デバイス210は次に、フェードが検出されると、メイン送信信号経路とダイバーシティ送信信号経路との両方をイネーブルし、別のフェードが検出されると、ダイバーシティ送信信号経路のみをイネーブルし、更に別のフェードが検出されると、メイン送信信号経路のみをイネーブルする等を行う。この実施形態の場合、検出された各フェードは、送信のために選択された異なるチャネルコンフィギュレーションとなる。メイン送信信号経路及びダイバーシティ送信信号経路は、(例えば、上述したような)予め定めた規則、あるいは準ランダムな方式でイネーブル及びディセーブルされうる。
【0035】
上述したように、ダイバーシティ送信信号経路のための第2のRF出力信号は、メイン送信信号経路のための第1のRF出力信号よりも振幅が低い。フェードが、受信局における受信信号レベルを、20dBまで低下させる場合、第2のRF出力信号が、第1のRF出力信号よりも3dB、6dB、あるいは10dB低い場合でさえも、パフォーマンスは改善されうる。更に、無線デバイスによって使用される実際の送信電力レベルは、多くの場合、システムによって指定された最大送信電力よりも低い。例えば、IS−98は、アンテナにおいて、最大送信電力レベルとして23dBmを規定しているが、無線デバイスによって使用される実際の送信電力レベルは、通常、ほとんどの動作シナリオについて、5dBmと10dBmとの間のノミナル範囲内にある。実際の送信電力レベルは、システムによって規定された最大電力レベル又は最小電力レベルにあることは稀であり、代わりに、ほとんどの時間において、ノミナル範囲内にある。これらの動作特性は、無線デバイスにおける送信機ユニットの実装を単純化するために活用されうる。
【0036】
図5は、送信機ユニット220cのブロック図を示す。これは、図2の送信機ユニット220の別の実施形態である。送信機ユニット220c内では、送信RF集積回路(TX RFIC)510が、ベースバンド信号を受信して処理し、第1及び第2のRF変調信号を供給する。バンドパスフィルタ512は、第1のRF変調信号をフィルタし、フィルタされた変調信号を供給する。電力増幅器518は、このフィルタされた変調信号を増幅し、デュプレクサ422aに第1のRF出力信号を供給する。第2のRF変調信号は、第2のRF出力信号として使用され、デュプレクサ422bに直接供給される。第1のRF出力信号レベルはPout1であり、第2のRF出力信号レベルはPout2である。電力増幅器518によって、Pout1は一般にPout2よりも高い。
【0037】
Ctrl1信号は、電力増幅器518に供給され、メイン送信信号経路のため、電力増幅器518の動作を制御するために使用される。Ctrl2信号は、TX RFIC510に供給され、ダイバーシティ送信信号経路のため、TX RFIC510の動作を制御するために使用される。各制御信号は、関連する送信信号経路を選択的にイネーブル又はディセーブルし、関連する送信信号経路の位相及び/又は利得を調節し、及び/又は、関連する送信信号経路内の任意の回路素子の動作を変更しうる。各制御信号は、基地局250から受信したTPCコマンドに基づいて生成されうる。そして、Ctrl1信号及びCtrl2信号は、異なる方式で生成されうる。無線デバイス210は、図3及び図4に関して述べたように、メイン送信信号経路とダイバーシティ送信信号経路とを様々な方式で制御しうる。
【0038】
図6は、送信機ユニット220c内のTX RFIC510の実施形態のブロック図を示す。多くの無線通信システムに一般に使用される直交位相変調の場合、ベースバンド信号は、同相(Ibb)ベースバンド信号と、直交位相(Qbb)ベースバンド信号とを含んでいる。TX RFIC510内では、増幅器(Amp)610a及び増幅器(Amp)610bが、それぞれ、Ibbベースバンド信号及びQbbベースバンド信号を受け取って増幅し、増幅されたベースバンド信号を、直交位相変調器620に供給する。変調器620内では、ミキサ622aが、増幅されたベースバンド信号を、LOジェネレータ626からの同相局部発振器(ILO)信号を用いて周波数アップコンバートし、同相変調成分を提供する。同様に、ミキサ622bは、増幅されたベースバンド信号を、LOジェネレータ626からの直交変調局部発振器(QLO)信号を用いて周波数アップコンバートし、直交位相変調成分を提供する。加算器624は、同相変調成分及び直交位相変調成分を加算し、変調信号を提供する。この変調信号は、増幅器630によって増幅され、増幅器/ドライバ640a及び増幅器/ドライバ640bの両方によって増幅されて、第1のRF変調信号(RFmod1)と、第2のRF変調信号(RFmod2)とがそれぞれ生成される。
【0039】
図6は、具体的な送信機設計を示す。一般に、各送信信号経路内の信号の調整は、増幅器、フィルタ、ミキサ等の1又は複数のステージによって行なわれうる。これらの回路ブロックは、図6に示されるものとは異なる方式で構成されうる。更に、図6に示されない他の回路ブロックもまた、各送信信号経路内の信号を調整するために使用されうる。図6はまた、直接アップコンバートアーキテクチャを示している。それは、RFに直接的に変調を行い、RF変調信号を生成する。(図6に示していない)スーパヘテロダインアーキテクチャの場合、変調は、RFではなく中間周波数(IF)においてなされ、IF変調信号が生成される。それは、その後、RFに周波数アップコンバートされる。
【0040】
増幅器/ドライバ640aは、メイン送信信号経路の一部であり、増幅器/ドライバ640bは、ダイバーシティ送信信号経路の一部である。Ctrl2信号は、増幅器/ドライバ640bに供給され、増幅器/ドライバ640b、すなわち、ダイバーシティ送信信号経路の動作を制御するために使用される。メイン送信信号経路は、図5に示すように、メイン送信信号経路内の電力増幅器518に加えられるCtrl1信号によって制御される。
【0041】
図3乃至6内に示す実施形態の場合、第2のRF出力信号レベルは、第1のRF出力信号レベルよりも小さく(つまり、Pout2<Pout1)設定されうる。これは、高RF出力信号レベルを取り扱う必要がなく、ダイバーシティ送信信号経路のためのより簡素な設計及び低い費用を可能にする。例えば、図3及び図4にそれぞれ示すダイバーシティ送信信号経路のために、より小型の電力増幅器318b及び418bが使用され、図5におけるダイバーシティ送信信号経路の場合に、外部電力増幅器が省略され、図6において、両送信信号経路のためのRF信号が、単一のRFICによって生成されうる。
【0042】
上述した実施形態のうちの幾つかの場合、ダイバーシティ送信信号経路をイネーブル及びディセーブルすることは、信号経路の利得及び/又は位相を調節することよりも、実現がはるかに簡単である。ダイバーシティ送信信号経路は、信号経路内の電力増幅器又はドライバへ、単にバイアス電流を移すことによりしばしばイネーブルされうる。
【0043】
図7は、受信したTPCコマンドに基づいて複数の送信信号経路の動作を制御する処理700を示す。処理700は、図3の送信機ユニット220a、図4の送信機ユニット220b、及び図5の送信機ユニット220cとともに使用される。処理700は、図2のコントローラ240によって実行されうる。
【0044】
無線デバイスは、既に説明したように、基地局からのTPCコマンドを受信し(ブロック712)、受信したTPCコマンドに基づいてフェードを検出する(ブロック714)。ブロック716において、フェードが検出されたと判定された場合には、無線デバイスは、メイン送信信号経路、ダイバーシティ送信信号経路、又はメイン送信信号経路とダイバーシティ送信信号経路との両方の動作を調節して、基地局におけるより大きな受信信号レベルを達成する(ブロック718)。無線デバイスは、図3乃至5について上述した調節実施形態及びスキームのうちの何かを実施しうる。ブロック718の後、また、ブロック716においてフェードが検出されない場合、無線デバイスはブロック712に戻る。無線デバイスは、任意の持続時間からなる時間インターバルで、ブロック714からブロック718を実行しうる。
【0045】
上述した方式によるメイン送信信号経路及びダイバーシティ送信信号経路の動作は、無線環境における散乱を利用することにより、基地局における受信信号レベルを改善することができる。より高い受信信号レベルによって、無線デバイスは、平均してより小さな送信電力で、目標SNRを達成することが可能となる。よって、これは、無線デバイスによる電力消費を実質的に低減し、通話時間を長くする。
【0046】
明確化のために、TPCコマンドに基づく送信信号経路が、上述された。TPCコマンドは、幾つかの無線システムにおいて、比較的高いレート(例えば、毎秒400、800、又は1600回)で送られ、速いフェードと格闘する送信信号経路のより速い調節が可能となる。送信信号経路はまた、無線デバイスにおいて利用可能な他のタイプのフィードバックに基づいても制御されうる。例えば、送信信号経路は、例えば、CDMAで一般に用いられているハイブリッドアクノレッジメント/要求(H−ARQ)送信スキームのようなインクリメンタル冗長(IR)送信スキームで無線デバイスによって受信されるアクノレッジメント(ACK)及び/又は否定的アクノレッジメント(NAK)に基づいて制御されうる。送信信号経路はまた、基地局において測定され無線デバイスへ送り返される受信信号強度インジケータ(RSSI)に基づいても調節されうる。
【0047】
更に、明確化のために、上述した記述の多くは、2つのアンテナと2つの送信信号経路とを有する無線デバイス用である。一般に、本明細書に記述された技術は、1より多い任意の数のアンテナを備える無線デバイス用にも使用されうる。2より多いアンテナを備えた無線デバイスは、送信時にはいつでもメイン送信信号経路をイネーブルし、残りの送信信号経路のうちの何れか1つ又は任意の組み合わせを自立的に調節しうる。無線デバイスはまた、受信したTPCコマンド又は他の幾つかのフィードバックに基づいて、個々の異なる送信信号経路、あるいは送信信号経路の異なる組み合わせを選択的にイネーブル及びディセーブルしうる。
【0048】
本明細書に記載の無線デバイスは、例えばCDMAシステム、時分割多元接続(TDMA)システム、周波数分割多元接続(FDMA)システム、GSM(登録商標)システム等のような様々な無線通信システム内で使用されうる。CDMAシステムは、例えばcdma2000、広帯域CDMA(W−CDMA)等のような様々なラジオアクセス技術(RAT)を実現しうる。無線デバイスは更に、多元システム(例えば、CDMAシステム及びGSMシステム)の動作もサポートしうる。
【0049】
無線デバイス用の処理ユニット及び送信機ユニットは、様々な手段によって実現されうる。例えば、送信機ユニットは、1又は複数のRFIC上で、及び/又は、ディスクリート回路コンポーネントとともに実現されうる。送信信号経路の動作を(自立的に、あるいはフィードバックに基づいて)制御するユニットは、1又は複数の特定用途向けIC(ASIC)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、デジタル信号処理デバイス(DSPD)、プログラマブル論理デバイス(PLD)、フィールドプログラマブルゲートアレー(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、本明細書に記載の機能を実行するために設計されたその他の電子ユニット、あるいはそれらの組み合せ内に実装されうる。制御機能もまた、本明細書に記載の機能を実行するソフトウェアモジュール(例えば、手順、関数等)を用いて実現されうる。ソフトウェアコードがメモリユニット(例えば、図2のメモリユニット242)内に格納され、プロセッサ(例えばコントローラ240)によって実行されうる。メモリユニットは、プロセッサ内か、あるいはプロセッサの外部に実装されうる。
【0050】
開示した前記実施形態の記述は、当業者が、本発明を実施し、利用できるように提供される。これらの実施形態への様々な変更もまた、当業者には容易に明らかであろう。そして、本明細書で定義された一般原理は、本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、他の実施形態に適用可能であろう。従って、本発明は、本明細書に示された実施形態に限定されることは意図されず、本明細書で開示した原理及び新規な特徴と一致する最も広い範囲が与えられるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のアンテナから送信するための第1のラジオ周波数(RF)出力信号を生成するように動作可能な第1の送信信号経路と、
第2のアンテナから送信するための第2のラジオ周波数(RF)出力信号を生成するように動作可能な第2の送信信号経路と、
受信機におけるより高い受信信号レベルを達成するために、前記第1の送信信号経路、前記第2の送信信号経路、又は前記第1の送信信号経路と前記第2の送信信号経路との両方を選択的にイネーブルするように動作可能なコントローラと
を備える無線デバイス。
【請求項2】
前記コントローラは、前記第1の送信信号経路を常時イネーブルし、かつ前記第2の送信信号経路を選択的にイネーブル及びディセーブルするように動作可能である請求項1の無線デバイス。
【請求項3】
前記コントローラは、前記無線デバイスによって受信された送信電力制御(TPC)コマンドに基づいて、前記第1の送信信号経路、前記第2の送信信号経路、又は前記第1の送信信号経路と前記第2の送信信号経路との両方を選択的にイネーブル及びディセーブルするように動作可能である請求項1の無線デバイス。
【請求項4】
前記コントローラは、前記受信されたTPCコマンドに基づいて、前記第1の送信信号経路と前記第2の送信信号経路との異なるコンフィギュレーションを選択するように動作可能であり、各コンフィギュレーションは、イネーブルされる少なくとも1つの送信信号経路の異なるセットに対応する請求項3の無線デバイス。
【請求項5】
前記コントローラは、前記受信されたTPCコマンドに基づいてフェードを検出し、かつ、フェードが検出された場合は常時、前記第1の送信信号経路と前記第2の送信信号経路との異なるコンフィギュレーションを選択するように動作可能である請求項3の無線デバイス。
【請求項6】
前記コントローラは、予め定めた数の連続したアップコマンドが前記無線デバイスによって受信された場合にはフェードを検出し、各アップコマンドは、送信電力を増加するTPCコマンドである請求項5の無線デバイス。
【請求項7】
前記コントローラは、時間ウィンドウ内で前記無線デバイスによって受信されたTPCコマンドのうち、予め定めたパーセントか、またはそれよりも高いパーセントがアップコマンドであればフェードを検出し、各アップコマンドは、送信電力を増加するTPCコマンドである請求項5の無線デバイス。
【請求項8】
前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとは異なるタイプである請求項1の無線デバイス。
【請求項9】
前記第1のアンテナはダイポールアンテナであり、前記第2のアンテナはパッチアンテナである請求項8の無線デバイス。
【請求項10】
前記第1の送信信号経路は、第1の出力信号レベルを提供するように動作可能であり、前記第2の送信信号経路は、前記第1の出力信号レベルよりも低い第2の出力信号レベルを提供するように動作可能である請求項1の無線デバイス。
【請求項11】
データを送信する方法であって、
無線デバイスにおいて、第1のアンテナから送信するための第1のラジオ周波数(RF)出力信号を生成することと、
第2のアンテナから送信するための第2のラジオ周波数(RF)出力信号を生成することと、
受信機におけるより高い受信信号レベルを達成するために、前記第1のRF出力信号、前記第2のRF出力信号、又は前記第1のRF出力信号と前記第2のRF出力信号との両方を選択的にイネーブルすることと
を備える方法。
【請求項12】
前記無線デバイスにおいて送信電力制御(TPC)コマンドを受信することを更に備え、
前記第1のRF出力信号、前記第2のRF出力信号、又は前記第1のRF出力信号と前記第2のRF出力信号との両方を生成することは、前記受信されたTPCコマンドに基づいて選択的にイネーブルされる請求項11の方法。
【請求項13】
前記受信されたTPCコマンドに基づいてフェードを検出することを更に備え、
前記フェードが検出された場合には、少なくとも1つのRF出力信号の異なるセットが生成される請求項12の方法。
【請求項14】
第1のアンテナから送信するための第1のラジオ周波数(RF)出力信号を生成する手段と、
第2のアンテナから送信するための第2のラジオ周波数(RF)出力信号を生成する手段と、
受信機におけるより高い受信信号レベルを達成するために、前記第1のRF出力信号を生成する手段、前記第2のRF出力信号を生成する手段、又は前記第1のRF出力信号を生成する手段と前記第2のRF出力信号を生成する手段との両方を選択的にイネーブルする手段と
を備える無線装置。
【請求項15】
第1のアンテナから送信するための第1のラジオ周波数(RF)出力信号を生成するように動作可能な第1の送信信号経路と、
第2のアンテナから送信するための第2のラジオ周波数(RF)出力信号を生成するように動作可能な第2の送信信号経路と、
前記第1のRF出力信号及び前記第2のRF出力信号を受信する受信機からのフィードバック無しで、前記第1の送信信号経路、前記第2の送信信号経路、又は前記第1の送信信号経路と前記第2の送信信号経路の動作を自立的に調節するように動作可能なコントローラと
を備える無線デバイス。
【請求項16】
前記第2の送信信号経路は、前記第2のRF出力信号の振幅を時間にわたって変えるように動作可能である請求項15の無線デバイス。
【請求項17】
前記第2の送信信号経路は、前記第2のRF出力信号の位相を時間にわたって変えるように動作可能である請求項15の無線デバイス。
【請求項18】
前記コントローラは、前記第2の送信信号経路を、時間にわたって交互にイネーブル及びディセーブルするように動作可能である請求項15の無線デバイス。
【請求項19】
前記コントローラは、前記第1の送信信号経路と前記第2の送信信号経路とからなる異なるコンフィギュレーションを時間にわたって選択するように動作可能である請求項15の無線デバイス。
【請求項20】
前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとは異なるタイプである請求項15の無線デバイス。
【請求項21】
第1のラジオ周波数(RF)出力信号を生成するように動作可能な第1の送信信号経路と、
第2のラジオ周波数(RF)出力信号を生成するように動作可能な第2の送信信号経路と、
前記第1のRF出力信号を送信するための第1のアンテナと、
前記第2のRF出力信号を送信するための第2のアンテナとを備え、
前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとは異なるタイプである無線デバイス。
【請求項22】
前記第1のアンテナはダイポールアンテナである請求項21の無線デバイス。
【請求項23】
前記第2のアンテナはパッチアンテナである請求項21の無線デバイス。
【請求項24】
前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとは異なる極性を有する請求項21の無線デバイス。
【請求項25】
前記第2の送信信号経路は、選択的にイネーブル及びディセーブルされる請求項21の無線デバイス。
【請求項26】
前記第2の送信信号経路は、前記無線デバイスによって受信された送信電力制御(TPC)コマンドに基づいて選択的にイネーブル及びディセーブルされる請求項25の無線デバイス。
【請求項27】
前記第2の送信信号経路は、前記第2のRF出力信号の位相、振幅、又は位相と振幅の両方を調節するように動作可能な少なくとも1つの回路素子を備える請求項21の無線デバイス。
【請求項28】
第1の電力レベルを有する第1のラジオ周波数(RF)出力信号を生成するように動作可能な第1の送信信号経路と、
前記第1の電力レベルよりも低い第2の電力レベルを有する第2のラジオ周波数(RF)出力信号を生成するように動作可能な第2の送信信号経路と、
前記第1のRF出力信号を送信するための第1のアンテナと、
前記第2のRF出力信号を送信するための第2のアンテナと
を備える無線デバイス。
【請求項29】
ベースバンド信号を受信し、かつ、前記第1の送信信号経路のための第1のRF変調信号と、前記第2の送信信号経路のための前記第2のRF出力信号とを生成するように動作可能な集積回路を備え、
前記第1のRF変調信号が更に前記第1の送信信号経路によって処理され、前記第1のRF出力信号が生成される請求項28の無線デバイス。
【請求項30】
前記第2のRF出力信号は、前記第1のRF出力信号よりも少なくとも3デシベル(dB)低い請求項28の無線デバイス。
【請求項31】
前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとは異なるタイプである請求項28の無線デバイス。
【請求項32】
前記第2の送信信号経路は、選択的にイネーブル及びディセーブルされる請求項28の無線デバイス。
【請求項33】
無線デバイス用の集積回路であって、
ベースバンド信号を受信し、かつ、変調信号を生成するように動作可能な変調器と、 前記変調信号を増幅し、かつ、第1のラジオ周波数(RF)変調信号を提供するように動作可能な第1の増幅器と、
前記変調信号を増幅し、かつ、第2のラジオ周波数(RF)変調信号を提供するように動作可能な第2の増幅器とを備え、
前記第1のRF変調信号及び前記第2のRF変調信号はそれぞれ、前記第1のアンテナ及び前記第2のアンテナからの送信用に指定され、受信機におけるより高い受信信号レベルを達成するために、前記第1の増幅器、前記第2の増幅器、又は前記第1の増幅器と前記第2の増幅器との両方が制御される集積回路。
【請求項34】
前記第1の増幅器、前記第2の増幅器、又は前記第1の増幅器と前記第2の増幅器との両方が、前記無線デバイスによって受信された前記受信機からの送信電力制御(TPC)コマンドに基づいて選択的にイネーブル及びディセーブルされる請求項33の装置。
【請求項35】
前記第2の増幅器は、前記受信機からのフィードバック無しに自立的に、選択的にイネーブル及びディセーブルされる請求項33の装置。
【請求項36】
前記第1の増幅器及び前記第2の増幅器はそれぞれ、前記増幅器の利得、位相、又は利得と位相の両方を変えることによって制御される請求項33の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−62834(P2013−62834A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−236778(P2012−236778)
【出願日】平成24年10月26日(2012.10.26)
【分割の表示】特願2010−180929(P2010−180929)の分割
【原出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WCDMA
【出願人】(595020643)クゥアルコム・インコーポレイテッド (7,166)
【氏名又は名称原語表記】QUALCOMM INCORPORATED
【Fターム(参考)】