説明

多関節ロボット

【課題】エンドエフェクターの可動範囲の拡大が図れると共に、可動範囲を自由に変更で
きる多関節ロボットを提供すること。
【解決手段】ベース部10と、ベース部10に対して第1関節20によって回動自在に連
結される第1アーム30と、第1アーム30よりも短い長さであって第1アーム30に対
して第2関節40によって回動自在に連結される第2アーム50と、第2アーム50に装
着されるエンドエフェクター60とを有する。第1アーム30に、第1アーム30を屈曲
して所望の屈曲角度で固定する屈曲固定部35を設ける。屈曲固定部35は、第1アーム
30を構成する2本のアーム部材31,33同士を回動自在に連結している部分を締結具
で固定する構造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多関節ロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、各種工場の生産ラインなどで使用される産業用多関節ロボットは、複数の腕と関
節によりエンドエフェクターを移動させる構造のものが主流である。エンドエフェクター
の可動範囲は、腕の形状によって決まってくる。そして生産ラインが変わると、多関節ロ
ボットに要求されるエンドエフェクターの必要可動範囲も変わってくるため、それに対応
できる汎用性の高い多関節ロボットが望まれている。
【0003】
一方特許文献1には、エンドエフェクターの可動範囲を広くできる多関節ロボットが開
示されている。この多関節ロボットは、基部アームの先端側に先端アームを取り付け、先
端アームの先端にエンドエフェクターを取り付けた構造の多関節ロボットである。そして
前記基部アームを湾曲形状に形成することで凹状に凹んだ部分にエンドエフェクターを位
置できるように構成している。このように構成すれば、エンドエフェクターの可動範囲を
広くすることができるので、広い可動範囲が要求される生産ラインなどに用いて好適とな
る。しかしながらアーム形状が特殊な形状になってしまうため、汎用性がなく、広い可動
範囲が要求されない生産ラインなどではむしろ使い勝手が悪くなる場合もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−3784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、エンドエフェクターの可動
範囲の拡大が図れると共に、可動範囲を自由に変更できる多関節ロボットを提供すること
にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明にかかる多関節ロボットは、ベース部と、前記ベース
部に対して第1関節によって回動自在に連結される第1アームと、前記第1アームよりも
短い長さであって前記第1アームに対して第2関節によって回動自在に連結される第2ア
ームと、前記第2アームに装着されるエンドエフェクターとを有し、前記第1アームの1
か所以上の位置に、前記第1アームを屈曲して所望の屈曲角度で固定する屈曲固定部を設
けたことを特徴とする。この構成によれば、第1アームに屈曲固定部を設けたので、エン
ドエフェクターの可動範囲の拡大を図ることができる。また屈曲固定部における屈曲角度
が変更できるので、エンドエフェクターの可動範囲を自由に変更することができ、汎用性
が高くなる。このためたとえ各種工場の生産ラインなどが変わって多関節ロボットに要求
されるエンドエフェクターの必要可動範囲が変わっても、それに容易に対応できる。
【0007】
また本発明は、前記屈曲固定部が、前記第1アームを構成する複数のアーム部材同士を
回動自在に連結している部分を締結具で固定する構造であることを特徴とする。この構成
によれば、屈曲固定部における屈曲角度の変更及び固定を容易に行うことができる。
【0008】
また本発明は、前記屈曲固定部が、前記第1アームに対して前記第2アームを回動した
際にエンドエフェクターが接近する位置にあることを特徴とする。この構成によれば、エ
ンドエフェクターの可動範囲を効果的に拡大することができる。
【0009】
また本発明は、前記屈曲固定部に屈曲角度測定手段を設けたことを特徴とする。この構
成によれば、屈曲角度の設定・調節・変更などを容易に行うことができる。なおこの屈曲
角度測定手段によって測定した測定値を、コンピューターなどの制御手段に入力すること
で、自動的にエンドエフェクターの位置を認識させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】多関節ロボット1−1の概略側面図である。
【図2】多関節ロボット1−1の概略平面図である。
【図3】屈曲固定部35の例を示す要部概略拡大断面図である。
【図4】多関節ロボット1−1の動作説明図である。
【図5】多関節ロボット1−1の動作説明図である。
【図6】多関節ロボット1−2の概略側面図である。
【図7】多関節ロボット1−2の概略平面図である。
【図8】多関節ロボット1−2の動作説明図である。
【図9】多関節ロボット1−2の動作説明図である。
【図10】多関節ロボット1−3の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の第1実施形
態にかかる水平多関節ロボット(以下「多関節ロボット」という)1−1の概略側面図、
図2は多関節ロボット1−1の概略平面図である。両図に示すように多関節ロボット1−
1は、静止側の部材に固定されるベース部10と、前記ベース部10に対して第1関節2
0の部分で回動自在に連結される第1アーム30と、前記第1アーム30よりも短い長さ
(この例では約半分の長さ)であって前記第1アーム30に対して第2関節40の部分で
回動自在に連結される第2アーム50と、第2アーム50の前記第2関節40を設けた反
対側の端部近傍に装着されるエンドエフェクター60とを有して構成されている。
【0012】
ベース部10は静止側の部材に固定される基体であり、その上面に第1関節20を介し
て第1アーム30の一端近傍部分が水平方向に回動可能に連結されている。第1関節20
はステッピングモータなどのモータ(駆動手段)によって構成され、モータのステータ側
とローター側の部分をそれぞれベース部10と第1アーム30に固定することで、ベース
部10に対して第1アーム30を回動(旋回)自在に駆動する構成となっている。
【0013】
第1アーム30は棒状の2本のアーム部材31,33を屈曲固定部35において固定し
、その一方の端部近傍に前記第1関節20を取り付け、もう一方の端部近傍に第2関節4
0を取り付けている。図3(a),(b)はそれぞれ屈曲固定部35の例を示す要部概略
拡大断面図である。すなわち2本のアーム部材31,33の端部同士を重ね合わせ、両者
に設けた締結具挿通孔37,39を一致させて締結具挿通孔37側からボルト41(43
)を挿入する。そして締結具挿通孔39から突出するボルト41(43)の先端にナット
45(47)をねじ込んで両アーム部材31,33を締結すれば、屈曲固定部35が構成
される。この実施形態ではボルト41(43)とナット45(47)が締結具である。屈
曲固定部35をこのように構成することで、2本のアーム部材31,33を、所望の屈曲
角度で固定することができる。たとえば、図2においては屈曲角度θ1は180°になっ
ているが、下記する図4においては屈曲角度θ2は105°になっている。また屈曲固定
部35には屈曲角度(絶対角度)を測定するための目盛り(屈曲角度測定手段)M1が形
成されている。
【0014】
第2アーム50は1本の棒部材によって構成され、その一方の端部近傍に第2関節40
を取り付け、もう一方の端部近傍にエンドエフェクター60を取り付けている。第2関節
40も前記第1関節20と同様、ステッピングモータなどのモータ(駆動手段)によって
構成されている。そしてモータのステータ側とローター側の部分をそれぞれ第1アーム3
0と第2アーム50に固定することで、第1アーム30に対して第2アーム50を水平面
内で回動(旋回)自在に駆動する構成となっている。
【0015】
エンドエフェクター60は、各種工場の生産ラインなどで使用される作業工具やハンド
などであり、第2アーム50に対して上下動や回転するように取り付けられている。なお
場合によってはエンドエフェクター60は第2アーム50に対して固定してもよい。
【0016】
以上のように構成されている多関節ロボット1−1において、たとえば図4に示すよう
に第1アーム30の屈曲固定部35の部分を所定角度θ2だけ屈曲して固定しておく。こ
れによって図5に示すように、第2アーム50を第1アーム30に対して回動した際に、
エンドエフェクター60は前記屈曲固定部35で凹部になっている部分に入り込む位置ま
で回動できる。したがってエンドエフェクター60の可動範囲を広くすることができるの
で、広い可動範囲が要求される生産ラインなどに用いて好適となる。特にこの実施形態の
ように、第2アーム50の長さを第1アーム30の長さの略半分にしておくと、エンドエ
フェクター60が接近する位置に屈曲固定部35が位置し、エンドエフェクター60を第
1アーム30の凹状に凹んでいる最も奥の位置まで移動できる。したがってエンドエフェ
クター60の可動範囲を効果的に拡大することができる。なお屈曲固定部35には目盛り
M1が設けられているので、屈曲角度θ2の設定・調節・変更を容易かつ正確に行うこと
ができる。
【0017】
一方エンドエフェクター60の可動範囲を広くする必要がない場合であって、エンドエ
フェクター60をベース部10から遠い位置まで移動させたい場合は、たとえば図2に示
すように、前記屈曲固定部35の屈曲角度θ1を180°に変更して固定すればよい。
【0018】
たとえば前記のように設定した屈曲角度θ1,θ2をこの多関節ロボット1−1を制御
するコンピューターなどからなる制御部に入力することで、制御部にエンドエフェクター
60の位置を認識させることができる。
【0019】
上記実施形態では屈曲角度θ1(θ2)を測定する屈曲角度測定手段として目盛りM1
を用いたが、その代りに(またはそれとともに)屈曲固定部35に、屈曲角度自動測定用
の角度センサ(絶対角度センサ)を取り付け、これを屈曲角度測定手段としてもよい。こ
のように構成すれば、屈曲角度θ1(θ2)が自動的に測定でき、例えばその測定値を直
接前記制御部に入力させることで、自動的にエンドエフェクター60の位置を制御部に認
識させることができる。
【0020】
このように多関節ロボット1−1によれば、第1アーム30に屈曲固定部35を設けた
ので、エンドエフェクター60の可動範囲の拡大を図ることができる。また屈曲固定部3
5における屈曲角度を変更することでエンドエフェクター60の可動範囲を自由に変更す
ることができる。したがって汎用性が高くなる。このためたとえ各種工場の生産ラインな
どが変わって多関節ロボット1−1に要求されるエンドエフェクター60の必要可動範囲
が変わっても、それに容易に対応できる。またこの多関節ロボット1−1によれば、屈曲
固定部35の構造を、2つのアーム部材31,33を回動自在に連結している部分を締結
具〔ボルト41(43)とナット45(47)〕で固定する構造としたので、屈曲固定部
35における屈曲角度の変更及び固定を容易に行うことができる。
【0021】
図6は本発明の第2実施形態にかかる水平多関節ロボット(以下「多関節ロボット」と
いう)1−2の概略側面図、図7は多関節ロボット1−2の概略平面図である。両図に示
す多関節ロボット1−2において、前記図1〜図5に示す多関節ロボット1−1と同一又
は相当部分には同一符号を付す。なお以下で説明する事項以外の事項については、前記図
1〜図5に示す実施形態と同じである。
【0022】
この多関節ロボット1−2において、前記多関節ロボット1−1と相違する点は、第1
アーム30に設ける屈曲固定部35を2か所(35−1,2)とし、3本のアーム部材3
1,33,34を前記2つの屈曲固定部35−1,2において固定した点のみである。3
本のアーム部材31,33,34の長さはほぼ同一である。2か所の屈曲固定部35−1
,2の固定はいずれも、前記多関節ロボット1−1の屈曲固定部35の固定と同様に、締
結具〔ボルト41(43)とナット45(47)〕によって行われる。各屈曲固定部35
−1,2に屈曲角度を測定するための屈曲角度測定手段(目盛り)M1が形成されている
点も前記多関節ロボット1−1と同じである。
【0023】
またこの多関節ロボット1−2においても、第2アーム50の長さは、第1アーム30
全体の長さよりも短い長さになっている。
【0024】
そしてたとえば図8に示すように、第1アーム30の両屈曲固定部35−1,2の部分
をそれぞれ所定角度θ3,θ4ずつ屈曲して固定する。これによって図9に示すように、
第2アーム50を第1アーム30に対して回動した際に、エンドエフェクター60は前記
屈曲固定部35−1,2によって凹部となっている部分に入り込む位置まで回動できる。
したがってエンドエフェクター60の可動範囲を広くすることができるので、広い可動範
囲が要求される生産ラインなどに用いて好適となる。特にこの実施形態では、第1アーム
30に対して第2アーム50を回動した際にエンドエフェクター60が両屈曲固定部35
−1,2の間の位置に接近する。したがってエンドエフェクター60を屈曲固定部35−
1,2によって凹部となっている部分の最も奥まで移動でき、したがってエンドエフェク
ター60の可動範囲を効果的に拡大することができる。
【0025】
なおエンドエフェクター60の可動範囲を広くする必要がない場合であって、エンドエ
フェクター60をベース部10から遠い位置まで移動させたい場合は、たとえば図7に示
すように、屈曲固定部35−1,2の屈曲角度θ3,θ4を180°に変更して固定すれ
ばよい。
【0026】
この多関節ロボット1−2の場合も、第1アーム30に屈曲固定部35−1,2を設け
たので、エンドエフェクター60の可動範囲の拡大を容易に図ることができる。また屈曲
固定部35−1,2における屈曲角度を変更することでエンドエフェクター60の可動範
囲を自由に変更することができる。
【0027】
図10は本発明の第3実施形態にかかる垂直多関節ロボット(以下「多関節ロボット」
という)1−3の概略側面図である。同図に示す多関節ロボット1−3において、前記図
1〜図5に示す多関節ロボット1−1と同一又は相当部分には同一符号を付す。なお以下
で説明する事項以外の事項については、前記図1〜図5に示す実施形態と同じである。
【0028】
この多関節ロボット1−3において、前記多関節ロボット1−1と相違する点は、第1
アーム30と第2アーム50を、垂直方向を向く面に沿って回動するように構成し、かつ
ベース部10を垂直軸を中心に回動できるように構成した点のみである。つまりこの多関
節ロボット1−3は、第1,第2アーム30,50の回動方向が前記多関節ロボット1−
1と異なる点を除き、その作用・効果は前記多関節ロボット1−1と同様である。
【0029】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく
、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変
形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造であっても、本
願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば上記実
施形態では、第1アーム30の1または2か所に屈曲固定部35を設けたが、3ヶ所以上
の位置に屈曲固定部35を設けてもよい。また上記各実施形態では第1アーム30を構成
するアーム部材31,33,34の形状をいずれも直線形状で形成したが、湾曲形状や屈
曲形状などで形成してもよい。
【符号の説明】
【0030】
1−1 多関節ロボット(水平多関節ロボット)、10 ベース部、20 第1関節(駆
動手段)、30 第1アーム、31,33,34 アーム部材、35,35−1,35−
2 屈曲固定部、40 第2関節(駆動手段)、41,43 ボルト(締結具)、45,
47 ナット(締結具)、50 第2アーム、60 エンドエフェクター、θ1,θ2,
θ3,θ4 屈曲角度、M1 目盛り、1−2 多関節ロボット(水平多関節ロボット)
、1−3 多関節ロボット(垂直多関節ロボット)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部と、前記ベース部に対して第1関節によって回動自在に連結される第1アーム
と、前記第1アームよりも短い長さであって前記第1アームに対して第2関節によって回
動自在に連結される第2アームと、前記第2アームに装着されるエンドエフェクターとを
有し、前記第1アームの1か所以上の位置に、前記第1アームを屈曲して所望の屈曲角度
で固定する屈曲固定部を設けたことを特徴とする多関節ロボット。
【請求項2】
請求項1に記載の多関節ロボットにおいて、
前記屈曲固定部は、前記第1アームを構成する複数のアーム部材同士を回動自在に連結
している部分を締結具で固定する構造であることを特徴とする多関節ロボット。
【請求項3】
請求項1または2に記載の多関節ロボットにおいて、
前記屈曲固定部は、前記第1アームに対して前記第2アームを回動した際にエンドエフ
ェクターが接近する位置にあることを特徴とする多関節ロボット。
【請求項4】
請求項1乃至3の内のいずれかに記載の多関節ロボットにおいて、
前記屈曲固定部には、屈曲角度測定手段が設けられていることを特徴とする多関節ロボ
ット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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