説明

安全靴用先芯及びそれを用いた安全靴

【課題】 安価で強度に優れた繊維強化樹脂製安全靴用先芯を提供する。
【解決手段】 ガラス繊維からなる強化繊維を配合した熱可塑性樹脂からなる安全靴用先芯において、前記熱可塑性樹脂は、結晶性脂肪族系ポリアミドと、脂肪族系共重合ポリアミド及び/又は熱可塑性エラストマーと、からなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全靴用先芯及びそれを用いた安全靴に関する。
【背景技術】
【0002】
安全靴の先芯は、重量物の落下等による衝撃や圧迫から足の指先を保護するものであり、JIS T8101によって、作業用途別に耐衝撃性、耐圧迫性が規定されている。このような安全靴用先芯の材料としては、従来、強度に優れる鋼材が用いられていた。
【0003】
ところが、鋼材からなる先芯は、保温性が悪い・焼却廃棄できない等の欠点を有している。このため、近年では、先芯の材料として、繊維強化樹脂材料が用いられるようになって来ている。
【0004】
上記繊維強化樹脂材料の強化繊維としては、一般にガラス繊維が用いられているが、先芯の強度をより高めるためには、繊維長の長いガラス繊維を配合するのがよい。また、これとともに先芯肉厚を厚くするのがよい。
【0005】
ところで、繊維強化樹脂材料を用いた先芯の成型方法としては、コンプレッション成型法、ペレット押し出し後に射出成形する方法等があり、この中で射出成形法が生産性の点で優れている。
【0006】
しかし、押出法により一旦繊維強化樹脂ペレットを作製した後に、このペレットを用いて射出成形する方法は、ペレット押し出し、射出成形という2回の工程を必要とするので、生産効率が悪くなる。また、この方法では、ペレット押し出しと射出成形との2工程において繊維に剪断力が加わるため繊維長が短くなり易い。このため、この方法によると十分な先芯強度を得にくい。
【0007】
これに対して、ガラス繊維に樹脂を含浸させた繊維樹脂シートを作製し、このシートを成型金型内に入れて加熱加圧成型するコンプレッション成型法は、ガラス繊維に剪断力が加わらず、繊維が切断されて繊維長が短くなることがないため、この方法によると高強度の先芯を作製し易い。
【0008】
しかし、この方法によると、加圧対象である繊維樹脂シートの組成分が、加熱加圧成型時に成型金型内を移動・流動しないので、成型金型内に繊維樹脂シートを過剰気味に配置する必要がある。しかし、繊維樹脂シート組成分が移動・流動しないので加圧ムラが生じ易い。このため、成型物の強度が不均一になり易いとともに、加圧成形後に余剰な樹脂シート部分を切断し成型物の形状を整える必要がある。また、加圧成型ごとに繊維樹脂シートを成型金型内に配置する必要があるため、生産効率が悪い。更にまた、繊維樹脂シートの作製にコストがかかるという問題がある。
【0009】
ここで、強化樹脂材料を用いた安全靴用先芯に係る技術としては、下記特許文献1〜3が挙げられる。
【0010】
【特許文献1】特開2002−85109号公報(要約書)
【0011】
【特許文献2】特開2003−52409号公報(段落0006、0007、0022)
【0012】
【特許文献3】特開2003−102509号公報(段落0010〜0013)
【0013】
上記特許文献1に係る技術を、図4を用いて説明する。この技術は、長繊維強化熱可塑性樹脂を材料とし、先芯先端の立ち上がり部分aの肉厚を3.5mm以上とし、肩部bの平均曲率rを20以下とする技術である。この技術によると、圧迫及び衝撃荷重の大部分が集中する先端部(先芯先端の立ちあがり部分a)の肉厚を3.5mm以上とすることにより十分な強度が得られ、また、肩部の平均曲率rを20以下とすることにより、圧迫及び衝撃荷重の大部分が先芯の側面部分、特に先芯先端の肩部b及び立ち上がり部分aで吸収されることになるので、天井後部の変形量が極めて低減され、許容応力以内に抑制することができるとされる。
【0014】
しかしながら、この技術は、長繊維強化熱可塑性樹脂のマトリックス樹脂として、ポリアミド樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリ−α−オレフィン樹脂、ポリアミド/ABSアロイ樹脂、ポリアミド/ポリ−α−オレフィンアロイ樹脂を用いているが、これらの樹脂自体の強度や耐衝撃性が十分ではない。また、予めガラス長繊維熱可塑性樹脂ペレットを作製した後、射出成形又は圧縮成型により作製する必要があるため、生産効率が悪い。
【0015】
上記特許文献2に係る技術は、長繊維強化熱可塑性樹脂を材料とし、本体部に対するスカート部の強化繊維含有率が70〜100%とし、先芯の肉厚を2〜6mmとする技術である。この技術によると、成形品の強度のバラツキや外観不良を生ずることがなく、軽量、均質でしかも高強度の安全靴先芯を得られるとされる。
【0016】
しかしながら、この技術は、予め長繊維強化熱可塑性樹脂繊維ペレット材を作製する工程、このペレット材を擬似成形型内に入れ、これを加熱下に圧縮することにより擬似先芯を一次成形する工程、更に得られた擬似先芯を安全靴先芯成形型内に配し、加熱・加圧して安全靴先芯を圧縮成形する工程を必要とし、各々の工程が独立しているので生産効率が悪い。
【0017】
上記特許文献3は、質量平均繊維長が0.6mm以上で、かつ最大繊維長が50mmであるガラス繊維と、熱可塑性ポリウレタン以外の熱可塑性樹脂とを含有する技術である。この技術によると、射出成形によるガラス繊維の折損・破壊を少なくできるので、質量平均繊維長が0.6mm以上の長いガラス繊維を射出成形品中に残存させることができ、これによりJIS T8101のS級(普通作業用)規格を満たす安全靴用先芯が得られるとされる。
【0018】
しかしながら、この技術は、予め熱可塑性樹脂をガラス繊維に含浸させる工程、樹脂とガラス繊維とを混合、射出してペレットとなす工程、ペレットを射出成形機に入れて射出成形する工程等を必要とし、各々の工程が独立しているので生産効率が悪い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
発明者は、樹脂製の安全靴用先芯について鋭意研究を行った。その結果、樹脂と樹脂を含浸していないガラス繊維とを射出成形機に投入し、直接先芯金型内に射出成形する方法(直接射出成形法)によっても、十分な強度を有する安全靴用先芯が得られることを知った。
【0020】
本発明は、十分な強度と耐衝撃性とを有し、しかも生産性にも優れた樹脂製の安全靴用先芯構造を提供することを目的とする。また、この先芯を用いて安全性に優れた安全靴を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するための安全靴用先芯にかかる本発明は、ガラス繊維からなる強化繊維を配合した熱可塑性樹脂からなる安全靴用先芯において、前記熱可塑性樹脂が、結晶性脂肪族系ポリアミドと、脂肪族系共重合ポリアミド及び/又は熱可塑性エラストマーと、からなることを特徴とする。
【0022】
本発明では、熱可塑性樹脂として、結晶性脂肪族系ポリアミドと、脂肪族系共重合ポリアミド及び/又は熱可塑性エラストマーとの混合物を用いている。結晶性脂肪族系ポリアミドは、強度に優れる。また、脂肪族系共重合ポリアミドや熱可塑性エラストマーは、樹脂の耐衝撃性を高めるように作用する。また、ガラス繊維は、樹脂の強度を飛躍的に高めることができる。この3者を混合して用いることにより、強度、耐衝撃性に優れた先芯が得られる。
【0023】
ここで、結晶性脂肪族系ポリアミド含有量が過小であると十分な強度を得にくく、脂肪族系共重合ポリアミドや熱可塑性エラストマーの含有量が過小であると、耐衝撃性を十分に高めにくい。このため、結晶性脂肪族系ポリアミドと、前記脂肪族系共重合ポリアミド及び/又は熱可塑性エラストマーとの質量比を、好ましくは20:80〜97:3とし、より好ましくは40:60〜93:7とする。
【0024】
また、ガラス繊維含有量が過小であると、十分な強度を得にくく、過大であると、樹脂との混合分散性が低下して、生産性の低下を招く。このため、熱可塑性樹脂全体に対して、好ましくは40〜65質量%とする。
【0025】
また、前記先芯の先端から終端に至る外表面天頂線を5等分に分割した各分割線分を先端側から順に分割線分A,分割線分B,分割線分C,分割線分D,分割線分Eとし、それぞれの分割線分についてその両端と中央の3点で当該先芯の肉厚を測定し、測定したそれぞれの分割線分における最大肉厚と最小肉厚とを合計し2で割った値を当該分割線分領域における平均肉厚とするとき、前記分割線分C領域の平均肉厚が6.5mm以上であり、かつ前記分割線分B領域及び/又は前記分割線分D領域の平均肉厚が6.5mm以上であり、前記分割線分A〜E領域以外の領域における先芯肉厚が、前記分割線分C領域の最大肉厚と略同等かそれ以下である構成とすることができる。
【0026】
先芯1は、図1(a)に示すように、足先を保護する天面部1aと、前記天面部に連なり、大きく湾曲した肩部1bと、前記肩部に連なり、略垂直に立ち上がった立ち上がり部1cと、前記立ち上がり部に連なり、先芯を接地する鍔部1dとから構成される。
【0027】
そして、先芯に強い衝撃が加えられたときに一番破壊されやすい領域は、肩部1bの中央から天面部1aにわたる領域であり、この領域は図1(b)のXで示す領域である。また、分割線分C領域を足指先側(先端側)から支持する分割線分B領域と、足首側(終端側)から支持する分割線分D領域もまた、先芯に加えられる衝撃の一部を吸収するように作用する。よって、先芯の耐衝撃性を高めるには中心となる分割線分C領域と、これに続く少なくとも一方の領域(分割線分B領域及び/又は分割線分D領域)の厚みが6.5mm以上であると、十分な強度の先芯が得られる。
【0028】
また、分割線分A〜E領域以外の領域の肉厚が、分割線分C領域の最大肉厚の略同等かそれ以下とすると、先芯の軽量化を図ることができる。なお、略同等という用語を用いたのは、製造誤差を考慮したからであり、この誤差は通常、分割線分C領域の最大肉厚の+10%以内である。
【0029】
ここで、図2を用いて外表面天頂線について説明する。図2(a)は先芯の底面図であり、図2(b)は先芯を足指先側から見た斜視図である。図2(a)に示すように、先芯足首側の両端部を結ぶ直線Xを引き、この直線Xに平行で且つ先芯の指先側外表面に接する直線Yを引く。このときの接点Pが先芯の先端である。次に直線Xに垂直で且つ接点Pを通る直線Zを定める。そして、先芯設置面(靴底面)に垂直で且つ前記直線Zを含む平面と、先芯の外表面(鍔部を除く)とが交わる線を定める。この交線を外表面天頂線11とする(図2(b)参照)。
【0030】
また、生産性が高く、繊維に1回しか剪断力が加わらない点で直接射出成形法を用いてなるものが好ましい。
【0031】
上記目的を達成するための安全靴にかかる本発明は、上記本発明にかかる安全靴用先芯を靴先に組み込んだ安全靴である。
【発明の効果】
【0032】
本発明によると、軽量で安全性に優れ、しかも低コストな安全靴用先芯及び安全靴を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明を実施するための最良の形態を、実施例を用いて以下に詳細に説明する。
【0034】
(実施例1)
結晶性脂肪族系ポリアミド(デュポン社製ザイテル101L)36質量部と、結晶性脂肪族系共重合ポリアミド(エムス昭和電工社製グロリンCR9)9質量部と、ガラス繊維(繊維径13μm、繊維長3mm)55質量部とを用意し、図3に示す構造の混練り機構を備えた射出成形機を用いて、実施例1に係る先芯を作製した。
【0035】
この先芯の、分割線分A〜Eの各領域の肉厚分布を測定したところ、分割線分A領域の厚みは5.0mm、分割線分B領域の厚みは6.1mm、分割線分C領域の厚みは8.1mm、分割線分D領域の厚みは7.0mm、分割線分E領域の厚みは4.3mmであった。なお、この値は、各分割線分領域の両端及び中央における肉厚を測定し、その最大値と最小値の和を2で除した値である。
【0036】
上記で用いた射出成形機は、加熱筒20と回転スクリュー30により、熱可塑性樹脂とガラス繊維等の強化材、充填材等を溶融混練し、射出成形品を製造する射出成形機であって、上記スクリュー30の軸径を段階的に変えることにより、軸径の小さい原料供給ゾーン301と、徐徐に軸径が大きくなる圧縮ゾーン302と、他のゾーンよりも軸径を大きくして原料の通過を抑制した計量ゾーン303とで構成されている点に特徴を有する装置である。この装置を用いると、繊維と樹脂との混練が十分になされる。
【0037】
なお、図3における符号12は、原料を投入するためのホッパーであり、32はフライト、35は逆流防止弁、40は先端ノズルである。更に符号31は、ブリスターリングであり、この外周は平坦であり、近傍のフライトのある部分の軸よりも直径が大きくなるようにしてある。ブリスターリング31が設けられていることにより、溶融した樹脂とガラス繊維等の混合物がブリスターリングと加熱筒内周との間に形成された狭い隙間を通過するとき、急圧縮されるので、各成分の混合、分散が更に促進されるという効果が得られる。
【0038】
(実施例2)
結晶性脂肪族系共重合ポリアミド(エムス昭和電工社製グロリンCR9)に代えて、熱可塑性エラストマー(ナイロンエラストマー:デュポン社製ザイテルST801)を用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして、実施例2に係る先芯を作製した。
【0039】
(実施例3)
結晶性脂肪族系ポリアミド(デュポン社製ザイテル101L)31.5質量部と、結晶性脂肪族系共重合ポリアミド(エムス昭和電工社製グロリンCR8)4.5質量部と、熱可塑性エラストマー(オレフィンエラストマー:デュポンダウエラストマー社製エンゲージ800)9質量部と、ガラス繊維(繊維径13μm、繊維長3mm)55質量部とを用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして、実施例3に係る先芯を作製した。
【0040】
(実施例4)
分割線分A領域の厚みを4.5mm、分割線分B領域の厚みを6.3mm、分割線分C領域の厚みを7.5mm、分割線分D領域の厚みを6.3mm、分割線分E領域の厚みを4.0mmとしたこと以外は、上記実施例1と同様にして、実施例4に係る先芯を作製した。
【0041】
(実施例5)
ガラス繊維(繊維径13μm、繊維長15mm)55質量部に、結晶性脂肪族系ポリアミド(デュポン社製ザイテル101L)36質量部と、結晶性脂肪族系共重合ポリアミド(エムス昭和電工社製グロリンCR9)9質量部と、を含浸させて繊維樹脂シートを作成し、これをコンプレッション成型することにより、実施例5に係る先芯を作製した。なお、肉厚分布は上記実施例1と同じである。
【0042】
(比較例1)
結晶性脂肪族系ポリアミド(デュポン社製ザイテル101L)45質量部と、ガラス繊維(繊維径13μm、繊維長3mm)55質量部とを用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして、比較例1に係る先芯を作製した。
【0043】
(比較例2)
結晶性脂肪族系ポリアミドに代えて、結晶性脂肪族系共重合ポリアミド(エムス昭和電工社製グロリンCR9)を用いたこと以外は、上記比較例1と同様にして、比較例2に係る先芯を作製した。
【0044】
(比較例3)
結晶性脂肪族系ポリアミドに代えて、熱可塑性エラストマー(ナイロンエラストマー:デュポン社製ザイテルST801)を用いたこと以外は、上記比較例1と同様にして、比較例3に係る先芯を作製した。
【0045】
〔耐衝撃性試験〕
以上で作製した先芯を、厚み10mmのゴム板(WAKI産業製デュロメータ硬さ(タイプA):67)に載せ、厚み1mmのゴムシート(WAKI産業製デュロメータ硬さ(タイプA):61)を貼り付け、JIS T8101に規定された衝撃試験装置を用い、20kgのストライカーを40cmの高さから落下させた。この結果、実施例1〜5に係る先芯は、割れ発生なしであったが、比較例1〜3に係る先芯は割れが発生した。
【0046】
このことは、以下の理由によると考えられる。実施例1〜3では、強度に優れる結晶性脂肪族系ポリアミドと、耐衝撃性を高める結晶性脂肪族系共重合ポリアミド及び/又は熱可塑性エラストマーとを混合して用いている。これにより、強度と耐衝撃性を兼ね備えた先芯が得られる。
【0047】
他方、比較例1では、結晶性脂肪族系共重合ポリアミドや熱可塑性エラストマーを用いていないため、耐衝撃性が十分でない。また、比較例2、比較例3では、結晶性脂肪族系ポリアミドを用いていないため、脂肪族系共重合ポリアミドや熱可塑性エラストマーを含ませても耐衝撃性が十分に向上しない。このため、比較例1〜3に係る先芯は、耐衝撃性試験により破壊される。
【0048】
また、上記安全性試験において、ストライカーの落下高さを45cmとしたところ、実施例1〜3、実施例5に係る先芯は、割れが生じなかったものの、実施例4に係る先芯は、割れが生じた。これは、実施例4は、衝撃により最も破壊されやすい分割線分領域Cを足先側から支持する分割線分領域Bの厚み及び分割線分領域Cを足首側から支持する分割線分領域Dの厚みが、いずれも6.3mmと薄いために、耐衝撃性が低いためと考えられる。
【0049】
また、実施例5においては、安全性に問題はなかったものの、成型時の繊維樹脂シートの流動が悪いために、先芯体積の120%の繊維樹脂シートを用いる必要があった。
【0050】
(その他の事項)
なお、上記実施例では、結晶性脂肪族系共重合ポリアミド、脂肪族系共重合ポリアミド、熱可塑性エラストマーとして、それぞれ1種のみを用いたが、複数種を混合して用いてもよい。
【0051】
ここで、結晶性脂肪族系ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド12等を使用することができる。
【0052】
また、脂肪族系共重合ポリアミドとしては、ポリアミド612、ポリアミド610等を使用することができる。
【0053】
また、熱可塑性エラストマーとしては、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー等を使用することができる。
【0054】
また、上記実施例では繊維径13μm、繊維長3mmのガラス繊維を用いたが、この太さ、長さに限定されないことは勿論である。
【0055】
また、成型品である先芯に、酸化防止剤、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、滑剤、消臭剤、着色剤、顔料、帯電防止剤等の添加剤が含まれていてもよい。また、混練り時にガラス繊維と樹脂との親和性を高めるために、カップリング剤を用いてもよい。
【0056】
また、上記実施例では、先芯の作製を低コストな直接射出成形法を用いて行ったが、本発明は直接射出成形法に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上で説明したように、本発明によると、十分な強度、耐衝撃性を有する安全靴用先芯を生産性よく提供することができるので、その産業上利用性は大きい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は本発明に係る先芯を示す図であって、図1(a)は足首側から見た斜視図、図1(b)は足指先側から見た斜視図、図1(c)は、図1(b)の外表面天頂線11を含む平面で切断した縦断面図である。
【図2】図2は、外表面天頂線の説明に用いるための図面であって、図2(a)先芯の底面図、図2(b)は足指先側から見た先芯の斜視図である。
【図3】実施例および比較例で用いた射出成形機の構造を説明するための断面模式図である。
【図4】特許文献1に係る技術の先芯を示す断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 先芯
1a 天面部
1b 肩部
1c 立ち上がり部
1d 鍔部
11 外表面天頂線




【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス繊維からなる強化繊維を配合した熱可塑性樹脂からなる安全靴用先芯において、
前記熱可塑性樹脂は、結晶性脂肪族系ポリアミドと、脂肪族系共重合ポリアミド及び/又は熱可塑性エラストマーと、からなる、
ことを特徴とする安全靴用先芯。
【請求項2】
請求項1記載の安全靴用先芯において、
前記結晶性脂肪族系ポリアミドと、前記脂肪族系共重合ポリアミド及び/又は熱可塑性エラストマーとの質量比が、20:80〜97:3であり、
前記ガラス繊維が、熱可塑性樹脂全体に対して、40〜65質量%である、
ことを特徴とする安全靴用先芯
【請求項3】
請求項1記載の安全靴用先芯において、
前記先芯の先端から終端に至る外表面天頂線を5等分に分割した各分割線分を先端側から順に分割線分A,分割線分B,分割線分C,分割線分D,分割線分Eとし、それぞれの分割線分についてその両端と中央の3点で当該先芯の肉厚を測定し、測定したそれぞれの分割線分における最大肉厚と最小肉厚とを合計し2で割った値を当該分割線分領域における平均肉厚とするとき、前記分割線分C領域の平均肉厚が6.5mm以上であり、かつ前記分割線分B領域及び/又は前記分割線分D領域の平均肉厚が6.5mm以上であり、
前記分割線分A〜E領域以外の領域における先芯肉厚が、前記分割線分C領域の最大肉厚と略同等かそれ以下である、
ことを特徴とする安全靴用先芯。
【請求項4】
請求項1記載の安全靴用先芯において、
前記繊維強化熱可塑性樹脂中の繊維がガラス繊維であり、
前記安全靴用先芯が、ガラス繊維と樹脂とを混練り機構を備えた射出成形機により直接射出成形されてなるものである、
ことを特徴とする安全靴用先芯。
【請求項5】
請求項1、2、3または4に記載の安全靴用先芯を、靴先に組み込んだ安全靴。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−192188(P2006−192188A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−9107(P2005−9107)
【出願日】平成17年1月17日(2005.1.17)
【出願人】(000157887)岸本産業株式会社 (30)
【Fターム(参考)】