説明

安定化用の靴底要素

本発明は、過回内及び過回外の防止に役立つ安定化装置と、そのような安定化装置を含む靴とを提供する。安定化装置は、ミッドソールの側部に沿って設けられ、その反対側に向かって靴底の幅の約20%〜約35%側方に延びることが好ましい。安定化装置は、細長部分と細長部分から横方向に延びる側壁部分とを含む。側壁部分は、靴の外周壁の一部を形成する。側壁部分は、靴底の側部に沿って所定の支持プロファイルを提供するように安定化装置の長さに沿って変化する剛性を有する。細長部分も、その長さに沿って剛性が変化し得る。安定化装置は、射出成形法又は同様の技法を用いて弾性材料から形成され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には、靴用の安定化要素と、安定化装置を収容する靴とに関し、より詳細には、足接地経路における着用者の足のローリング運動を制御する安定化装置に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本願は、2008年6月26日付けで出願された米国仮特許出願第61/133,282号の優先権を主張し、この出願の全体が参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
着用者の一歩調周期中に生じ得る足の複雑な運動は、足の損傷防止と歩行及び走行性能を全体的に改善した靴とを目標にした多くの生体力学的研究の的であった。特に、通常の一歩調周期において必要な場所に支持及び緩衝を与えることが、現代の運動靴の設計における目的であった。通常、靴のミッドソールの踵領域の下の場所に緩衝を与えることで、初期踵接地の衝撃の最小化が助けられる。補強材料及び補強構造の適切な位置決めによって、一歩調周期中の内側又は外側に向かう足の過度のローリングを減らすために、付加的な支持要素も通常は設けられる。
【0004】
初期踵着地の衝撃後に内側に向かってロールする傾向、すなわち回内は、歩行中又は走行中に生じる足の正常な動きである。初期踵接地の直後に、距骨下関節と呼ばれる足骨間の接合が解除され、いわゆる立脚相の荷重期の前足部を下ろしている状況で足の協調3平面運動である回内を生じさせる。3平面運動とは、(1)足の前部が着用者の前進線から離れて距骨下関節で外方に向けられる外転と、(2)足の前部が足首すなわち距腿関節で足の踵に対して上方に傾けられる背屈と、(3)足底が距骨下関節で足の踵に対して外方に向けられる外反とである。3平面の運動が協調的に組み合わさって、足は通常、足の中足部領域の内側面が走行面と接触するように、足の外側から内側に向かってロールする。着用者の体重が前に移動し始めるときの足のこの3平面ローリングによって、足が歩行面又は走行面に負荷力の一部を伝えることができる。足は、立脚中期の間ずっと回内位置に保たれる。
【0005】
回外は通常、回内の後に生じる。体重が足よりも前に移動すると、距骨下関節がロックし、荷重期の間に生じた状況とは逆の状況が生じる。回外は、(1)距骨下関節のロックが足を前進線の方に内方に向ける内転と、(2)前足部が足首で踵に対して下方に屈曲する底屈と、(3)足底が距骨下関節で踵に対して内方に向けられる内反という運動を伴う。これら3つの運動が組み合わさって、足が爪先に向かって前方にロールし続ける。母指球及び爪先が接地しているときの運動中、足は、爪先が地面を離れ始める直前に外方にロールする。これらの運動の組み合わせにより、足は可動アダプタから剛直レバーへと役割を変え、これは身体の前方推進に重要である。
【0006】
回内及び回外は自然な動作であるが、高い回内速度によって引き起こされる場合が多い過回内や、過回外はいずれも望ましくなく、創傷を招きかねない。創傷を回避するようにこれらの回転運動を制御するために、種々の手法が履物設計で用いられてきた。従来のいわゆる内側「ポスト」又は「ポスティング」システムは通常、靴の内側でミッドソールの後足部において、より高密度のエチレン酢酸ビニル(「EVA」)フォーム又はポリウレタン(「PU」)フォームを用いて回内を制御する。しかしながら、このようなフォームの密度及び硬さは制御しにくい。例えば、製造されたフォームは、生産時の指定よりも軟らかい場合が多い。さらに、EVAフォームの密度が高いほど作製するのに長い時間及び高い費用がかかる。このような内側ポストは、足が踵から爪先へロールするときに足をより滑らかに移行させるために、楔形構成の2つの密度のフォームを用いる場合が多い。しかしながら、これらのフォームの相対的な密度及び厚さはいずれも、製造時に制御しにくく、より軟質のフォームの上に硬質のフォームの楔を位置決めすることでは、踵接地から足趾離地への真に連続的な剛性の遷移が得られない。
【0007】
従来の装置は主に、別個の硬質ポスト及びプレート又は二重密度ミッドソールフォームを用いて足の下の圧縮抵抗を変えることによって、運動制御に対処している。従来の装置は、圧縮抵抗の遷移をほとんど又は全く提供しない。さらに、このような遷移は、足の下のみで、靴の縦軸を横切る一方向にしか提供されない。従来の装置のいずれも、足の接地経路に沿った足の動きの正確かつ滑らかな制御又は足が接地経路を横切るときの連続的な圧縮抵抗遷移の提供を行う装置を開示しておらず示唆もしていない。
【0008】
したがって、従来技術では十分に対処されていなかった、足の接地経路に沿った足の動きを正確かつ滑らかに制御すると共に足の接地経路に沿った連続的かつ滑らかな圧縮抵抗遷移も提供する装置が必要である。
【発明の概要】
【0009】
本発明の安定化装置は、着用者の足の内側又は外側に沿って剛性を連続的に変化させることで足の接地経路に沿った足の動きを正確かつ滑らかに制御することによって、従来技術の欠点に対処する。安定化装置を含む靴底及び靴も、本発明に従って形成される。
【0010】
一実施形態では、靴底で用いる安定化装置は、第1の端部と第2の端部とを有する。第1の端部は、靴の後足部領域に取り付けるようになっており、第2の端部は、靴のアーチ領域に取り付けるようになっている。安定化装置は、第1の端部と第2の端部との間に位置決めされ、靴底の周囲に沿って後足部領域からアーチ領域内へ延びるように構成された細長部分を有する。安定化装置は、後足部領域からアーチ領域内へ延びる側壁部分も有する。側壁部分は、細長部分の長さに沿って、細長部分から横方向に延びる。側壁部分は、内側または外側のいずれかで靴の周壁の一部を形成するように構成される。側壁部分は、第1の端部から第2の端部に向かって連続的に変化する剛性を有する。
【0011】
一実施形態では、側壁部分の剛性は、第1の端部から第2の端部に向かって連続的に低下する。別の実施形態では、側壁部分の剛性は、第1の端部から第2の端部に向かって連続的に増加する。
【0012】
別の実施形態では、側壁部分及び細長部分から形成される断面積が、第1の端部から第2の端部に向かって連続的に変化する。この実施形態に従って、この断面積は、第1の端部から第2の端部に向かって連続的に減少してもよい。別の実施形態では、この断面積は、第1の端部から第2の端部に向かって連続的に増加する。
【0013】
さらなる実施形態では、細長部分の剛性が、第1の端部から第2の端部に向かって連続的に変化する。この実施の形態に従って、細長部分の剛性は、第1の端部から第2の端部に向かって連続的に低下してもよい。別の実施形態では、第1の端部から第2の端部に向かって連続的に増加する。
【0014】
さらに別の実施形態では、安定化装置は、アーチ領域で靴の幅の20%〜35%にわたって内側または外側のいずれかから延びるように構成される。
【0015】
一実施形態では、細長部分は、靴底の上面と面一に位置決めされるように構成された表面を有する。
【0016】
別の実施形態では、側壁部分は、細長部分から靴の接地面に向かって延びるように構成された下側部分を有する。この実施形態に従って、下側延長部分が、細長部分から離れた側壁部分の下側部分の端部から横方向に延びてもよい。
【0017】
上記実施形態の安定化装置は、熱可塑性材料から一体成形されてもよい。この熱可塑性材料は、射出成形された熱可塑性樹脂でもよい。
【0018】
一実施形態では、上記実施形態の安定化装置は、靴の内側に沿って位置決めされるように構成される。別の実施形態では、安定化装置は、靴の外側に沿って位置決めされるように構成される。
【0019】
安定化装置は、延長踵部分をさらに備えてもよい。延長踵部分は、延長細長部分を備える。延長細長部分は、安定化装置の細長部分に一体的に接続される。延長踵部分は、延長側壁部分も備える。延長側壁部分は、安定化装置の側壁部分に一体的に接続される。延長側壁部分は、連続的に変化する剛性を有する。延長踵部分は、内側又は外側の一方から、靴の端の踵を巡って、靴の内側又は外側の他方まで延びるように構成される。
【0020】
一実施形態では、延長側壁部分及び延長細長部分の少なくとも一方の剛性は、内側及び外側に沿って延長踵部分の後部に向かって連続的に増加する。別の実施形態では、延長側壁部分及び延長細長部分の少なくとも一方の剛性は、内側及び外側に沿って延長踵部分の後部に向かって連続的に低下する。
【0021】
本発明に従って形成された靴は、安定化装置を備える。この靴は、アッパー及び靴底を備える。安定化装置は、靴底の内側または外側のいずれかに沿って配置される。安定化装置は、第1の端部及び第2の端部を有する。第1の端部は、靴の後足部領域に取り付けられ、第2の端部は、靴のアーチ領域に取り付けられる。安定化装置は、第1の端部と第2の端部との間に位置決めされ、靴底の周囲に沿って後足部領域からアーチ領域内へ延びる細長部分を有する。安定化装置は、後足部領域からアーチ領域内へ延びる側壁部分も有する。側壁部分は、細長部分から横方向に延びる。側壁部分は、内側または外側のいずれかで周壁の一部を形成する。側壁部分は、第1の端部から第2の端部に向かって連続的に変化する剛性を有する。
【0022】
一実施形態では、側壁部分の剛性は、第1の端部から第2の端部に向かって連続的に低下する。別の実施形態では、側壁部分の剛性は、第1の端部から第2の端部に向かって連続的に増加する。
【0023】
別の実施形態では、側壁部分及び細長部分から形成された断面積が、第1の端部から第2の端部に向かって連続的に変化する。この実施形態に従って、この断面積は、第1の端部から第2の端部に向かって連続的に減少してもよい。別の実施形態では、この断面積は、第1の端部から第2の端部に向かって連続的に増加する。
【0024】
さらなる実施形態では、細長部分の剛性が、第1の端部から第2の端部に向かって連続的に変化する。この実施形態に従って、細長部分の剛性は、第1の端部から第2の端部に向かって連続的に減少してもよい。別の実施形態では、細長部分の剛性は、第1の端部から第2の端部に向かって連続的に増加する。
【0025】
さらなる別の実施形態では、安定化装置は、アーチ領域で靴の幅の20%〜35%にわたって内側または外側のいずれかから延びる。
【0026】
一実施形態では、細長部分は、靴底の上面と面一に位置決めされた表面を有する。
【0027】
一実施形態では、側壁部分は、細長部分から靴の接地面に向かって延びる下側部分を有する。この実施形態に従って、下側延長部分は、細長部分から離れた下側部分の端部から靴底の中心に向かって横方向に延びてもよい。
【0028】
上記実施形態の安定化装置は、熱可塑性材料から一体形成することができる。熱可塑性材料は、射出成形された熱可塑性樹脂であってもよい。
【0029】
一実施形態では、安定化装置は、靴の内側に沿って位置決めされる。別の実施形態では、靴の外側に沿って位置決めされる。
【0030】
安定化装置は、延長踵部分をさらに備えてもよい。延長踵部分は、延長細長部分を備える。延長細長部分は、安定化装置の細長部分に一体的に接続される。延長踵部分は、延長側壁部分も備える。延長側壁部分は、安定化装置の側壁部分に一体的に接続される。延長側壁部分は、連続的に変化する剛性を有する。延長踵部分は、内側又は外側の一方から、靴の端の踵を巡って、靴の内側又は外側の他方まで延びる。
【0031】
一実施形態では、延長側壁部分及び延長細長部分の少なくとも一方の剛性が、内側及び外側に沿って、延長踵部分の後部に向かって連続的に増加する。別の実施形態では、延長側壁部分及び延長細長部分の少なくとも一方の剛性が、内側及び外側に沿って、延長踵部分の後部に向かって連続的に低下する。
【0032】
靴の内側に位置決めされる場合、安定化装置は、縦軸に沿って靴の内側で、後足部領域からアーチ領域にかけて連続的に低下する正確に制御された剛性を提供することによって、距骨下関節の回内速度を減らす。靴の外側に位置決めされる場合、安定化装置は、靴の外側で縦軸に沿って、後足部領域からアーチ領域にかけて連続的に低下する正確に制御された剛性を提供することによって、距骨下関節の回外速度を減らす。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1A】人間の足の骨格の内側の側面図である。
【図1B】人間の足の骨格の外側の側面図である。
【図2】安定化装置の一実施形態の斜視図である。
【図3】図2の安定化装置の断面図である。
【図4】図2の安定化装置が靴の内側に位置決めされている靴底の一実施形態の概略平面図である。
【図5】図4の靴底及び運動制御装置の内側側面図である。
【図6】図4の靴底及び安定化装置の断面図である。
【図7】安定化装置の別の実施形態を有する靴底の別の実施形態の内側側面図である。
【図8】図7の靴底及び運動制御装置の断面図である。
【図9】内側の安定化装置の一実施形態及び外側の安定化装置の一実施形態を有する靴底の一実施形態の概略平面図である。
【図10】延長踵部分を有する安定化装置の一実施形態を有する靴底の一実施形態の概略平面図である。
【図11】延長踵部分を有する安定化装置の一実施形態を有する靴底の一実施形態の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1A及び図1Bはそれぞれ、人間の足100の骨格の内側側面図及び外側側面図を示している。足の前足部領域101は、指骨(爪先)102及び中足骨103に概ね一致する。足の後足部領域104は、踵領域とも呼ばれ、踵骨105に概ね対応する。足のアーチ領域は概して、中足骨103を含む(但し指骨102を含まない)前足部の一部に概ね重なり、踵骨105と中足骨103との間の足根骨107を包含する。図1Aを参照すると、内側の縦アーチ領域107が、踵骨105の内側結節から第1中足骨103−1、第2中足骨103−2、第3中足骨103−3の頭部にかけて形成される。図1Bに示されるように、足100の外側の縦アーチ領域106は、概ね踵骨105の外側結節から第4中足骨103−4及び第5中足骨103−5の頭部にかけて形成される。靴底の各領域は概して、人間の足のこれらの領域に概ね対応するように相対的な部分に分割され、靴底の踵又は後足部領域は、踵骨105に対応する場所として一般に知られており、靴底の前足部領域は、少なくとも指骨102の下の場所に対応する。靴底のアーチ領域は、特に足のアーチに高い応力を与えるスポーツで用いるために、足の解剖学的アーチ全体を包含するように形成してもよい。本明細書中では、靴底のアーチ領域を、後足部領域の前方の場所を包含して中足骨103を含む領域とする。
【0035】
図2及び図3を参照すると、靴で用いる安定化装置201の一実施形態が、プラスチックのような単一の材料片から作製される。安定化装置201は、靴に取り付けるための第1の端部202及び第2の端部203を有している。第1の端部202は、靴の後足部領域に取り付けられるように構成されている。第2の端部203は、靴のアーチ領域に取り付けられるように構成されている。安定化装置201は、第1の端部202と第2の端部203との間に位置決めされた細長部分204を備えている。一実施形態では、取り付け用の第1の端部202は、細長部分204の一端に対応し、取り付け用の第2の端部203は、細長部分204の他端に対応する。
【0036】
安定化装置201は、細長部分204の長さに沿って好ましくはそれよりも長く細長部分204から横方向に延びる側壁部分205も備えている。側壁部分205は、それが位置決めされる靴の内側又は外側で外周壁の一部を形成するように構成されている。側壁部分205は、第1の端部202から第2の端部203に向かって連続的に変化する剛性を有している。一実施形態では、側壁部分205の剛性は、第1の端部202から第2の端部203に向かって連続的に低下する。別の実施形態では、側壁部分205の剛性は、第1の端部202から第2の端部203に向かって連続的に増加する。
【0037】
細長部分204は、靴のアーチ領域よりも前方に取り付けられないように構成されている。安定化装置201の細長部分204をアーチ及び踵領域に制限することによって、着用者の歩行中又は走行中に、足100の指骨102を曲げることができ、これが踏切を補助してより効率的な移動を可能にする。
【0038】
側壁部分205の剛性を変化させることに加えて、細長部分204の剛性も第1の端部202から第2の端部203に向かって連続的に変えることができる。一実施形態では、細長部分204の剛性は、第1の端部202から第2の端部203に向かって連続的に低下する。別の実施形態では、細長部分204の剛性は、第1の端部202から第2の端部203に向かって連続的に増加する。
【0039】
側壁部分205及び/又は細長部分204の剛性を制御するために、側壁部分205及び細長部分204から形成された断面積は、第1の端部202から第2の端部203に向かって連続的に変化し得る。一実施形態では、この断面積は、第1の端部202から第2の端部に向かって連続的に減少する。別の実施形態では、この断面積は、第1の端部202から第2の端部203に向かって連続的に増加する。
【0040】
別の実施形態では、側壁部分205は、細長部分204から靴の接地面に向かって延びるように構成された下側部分207を有している。さらに別の実施形態では、図3に最もよく示されるように、下側延長部分208が、細長部分204から離れた側壁部分205の下側部分207の端部の長さに沿って横方向に延びることが好ましい。下側延長部分208は、靴底の2層の中又は間に取り付けられるように構成される。
【0041】
安定化装置201は、靴の内側に沿って又は靴の外側に沿って位置決めされるように構成される。図4を参照すると、靴の内側に位置決めされる場合、安定化装置201は、後足部領域224からアーチ領域226にかけて連続的に低下する正確に制御された剛性を提供することによって、距骨下関節の回内速度を減らす。異なる実施形態では、安定化装置201は、靴の内側に沿って位置決めされて、その剛性が後足部領域からアーチ領域にかけて連続的に増加するように形成することができる。靴の外側に位置決めされる場合、安定化装置201は、後足部領域からアーチ領域にかけて連続的に増加する正確に制御された剛性を提供することによって、距骨下関節の回外速度を減らす。別の実施形態では、安定化装置201は、靴の外側に沿って位置決めされて、後足部領域224からアーチ領域226にかけて連続的に低下する剛性を有するように形成することができる。
【0042】
図4、図5、図6は、安定化装置201を収容する靴底200を示している。本発明に従って形成された靴は、アッパー及び靴底200を含むことができる。安定化装置201は、靴底200の内側又は外側に沿って配置されている。安定化装置201の第1の端部202は、靴底200の後足部領域104に取り付けられている。安定化装置201の第2の端部203は、靴底200のアーチ領域106に取り付けられる。安定化装置201の側壁部分205は、靴底200の内側又は外側で周壁209の一部を形成することが好ましい。さらに、細長部分204は、靴底200の上面212と面一に位置決めされ得る上面206を有している。
【0043】
一実施形態では、側壁部分205の下側部分207は、細長部分204から靴底200の接地面210に向かって延びている。下側延長部分208は、下側部分207から横方向に延びている。図6に示されるように、下側延長部分208は、靴底200の2層間に、例えば接地面209とミッドソール210との間に取り付けることができる。
【0044】
図9に示される一実施形態では、内側装置として構成された安定化装置201及び外側安定化装置として構成された安定化装置201が、同じ靴200の内側及び外側にそれぞれ位置決めされている。
【0045】
安定化装置201の細長部分204は、靴200の周囲に沿って延びると共に、靴の内側又は外側から靴の縦中心線に向かうがこれを越えずに延びている。他の実施形態では、安定化装置201は、踵を含む靴の後部周囲に沿っても延びている(図9〜図11)。一実施形態では、安定化装置201は、靴底200の最も狭い断面の場所で靴底200の内側又は外側から靴底200の15%〜40%にわたって延びている。最も好ましくは、装置201は、靴底200の最も狭い断面の場所で靴底200の幅の20%〜35%にわたって延びる。
【0046】
細長部分204の一方の端部202は、靴200の後足部領域に位置決めされている。一実施形態では、第1の端部202は、靴底のうち着用者の足の距骨の下に位置する部分に位置決めされるように構成されている。別の実施形態では、第1の端部202は、靴200の後端部216から靴の長さの約5%〜35%である距離に位置付けられている。最も好ましくは、その距離は約10%〜20%である。別の実施形態では、距離は約12%〜18%である。
【0047】
第2の端部203は、靴200のアーチ領域に位置決めされている。靴200の内側に位置付けられた安定化装置201の場合、第2の端部203は、靴200の後端部216から靴の長さの約50%〜80%である距離に位置付けられることが好ましい。最も好ましくは、その距離は靴の長さの約60%〜75%である。靴200の外側に位置付けられた安定化装置201の場合、第2の端部203は、靴の後端部216から靴200の長さの約50%〜80%である距離に位置付けられることが好ましい。最も好ましくは、その距離は靴200の長さの約60%〜75%である。
【0048】
図7及び図8は、安定化装置701と安定化装置701を収容する靴底700との代替的な実施形態を示している。安定化装置701は、プラスチックのような単一の材料片から作製される。安定化装置701は、後足部に位置決めされた第1の端部702からアーチ領域に位置決めされた第2の端部703まで延びる細長部分704を含んでいる。安定化装置701は、第1の端部702と第2の端部703との間に延びる側壁部分705も含んでいる。側壁部分705は、細長部分704の長さに沿って細長部分704から横方向に延びている。側壁部分705は、それが位置決めされた靴底700の内側又は外側の外周壁709の一部を形成することが好ましい。側壁部分705及び細長部分704の剛性及び断面積は、記載された実施形態の少なくとも1つに従って図2〜図6に関して上述したように変えられる。
【0049】
図4に示される安定化装置201と比較して、安定化装置701の側壁部分705は、下側部分207も下側延長部分208も含んでいない。連続側壁704に下側部分207がないことで、この下側部分207がある場合に生じる硬直が減り、運動制御装置701の剛性プロファイルの全体的な制御が向上する。
【0050】
図10は、本発明の安定化装置の代替的な実施形態を示している。安定化装置301は、延長踵部分213を含んでいる。延長踵部分213は、内側及び外側の少なくとも一方に位置決めされた安定化装置201から一体的に延びている。図10では、安定化装置301は、内側及び外側の安定化装置201の両方を含むが、外側又は内側の安定化装置201の一方のみに接続された延長踵部分213を含む安定化装置も意図されている。延長踵部分213は、靴底の後足部領域224に位置付けられ、安定化装置201の細長部分204に一体的に接続された延長細長部分214を含んでいる。細長部分は、アーチ領域226まで延びている。延長踵部分213は、安定化装置201の側壁部分205に一体的に接続された延長側壁部分215も含んでいる。延長踵部分213は、靴200の後足部分に位置決めされるように構成されている。これは、靴の内側から、靴の踵部分を巡って、靴300の外側まで延びるように構成されている。
【0051】
一実施形態では、延長側壁部分215若しくは延長細長部分214又はこれら両方の剛性は、内側及び外側に沿って延長踵部分213の後部に向かって連続的に増加する。別の実施形態では、延長側壁部分215、延長細長部分214、又はこれら両方の剛性は、内側及び外側に沿って延長踵部分213の後部216に向かって連続的に低下する。
【0052】
図11は、延長踵部分213を有する靴400に取り付けられた安定化装置401の別の実施形態を示し、この実施形態では、細長部分204及び側壁部分205が靴400の内側及び外側の両方に沿って位置決めされている。延長細長部分214は、内側及び外側の両方に位置付けられた細長部分204と一体形成されている。延長側壁部分215は、内側及び外側で側壁部分205と一体形成されている。この実施形態では、側壁部分は前足部領域内へ延びている。
【0053】
図3で最も明確に見ることができるように、本発明の安定化装置は、細長部分(204、704)が側壁部分(205、705)の上側部分内に融合するように上方に徐々に湾曲している一体形の継ぎ目のない部品として形成されることが好ましい。好ましくは、本発明の安定化装置は、所定の連続的かつ滑らかに変化する剛性プロファイルの正確な形成を可能にする射出成形プロセスを用いて形成される。安定化装置は、好ましくは熱可塑性材料から、最も好ましくは熱可塑性ポリウレタン(「TPU」)のような射出成形された軟質の熱可塑性材料から形成される。しかしながら、所定の連続的かつ滑らかに変化する剛性プロファイルを有する装置内に正確に形成することができる、明確な剛性及び弾性特性を示す任意の他の材料も用いることができる。
【0054】
本発明の安定化装置の剛性は、熱可塑性材料の厚さを変えることによって必要に応じて方向ごとに変えることができる。したがって、地面を踏む着用者の足によって靴に加わる力は、足接地経路に沿った様々な方向の異なる厚さに影響を及ぼす。薄い領域と比較して、材料が厚い領域ほど剛性が高くなり、大きな抵抗が必要な場所に位置決めされる。このように、安定化装置は、足接地経路に沿った着用者の足の動きを制御するために靴の側部に沿って連続的な剛性プロファイルを提供すると共に、足が踵接地時にその外側から足趾離地前に内側へ向かってロールするときに滑らかな抵抗遷移を提供するように、正確に整形及び形成することができる。
【0055】
本発明の安定化装置の剛性を制御するために熱可塑性材料自体の密度を変えることができることも意図される。密度及び厚さの組み合わせも、所望の連続的な剛性プロファイルを有する安定化装置を形成するために正確に変えられるが、当業者には理解されるであろう。したがって、本発明の安定化装置は、所定の足接地経路に沿って着用者の足の動きを制御するために、任意の方向に連続的に変化する剛性を提供するように任意の剛性プロファイルで形成することができる。
【0056】
図示された実施形態では、安定化装置が靴のミッドソールに位置決めされているが、インソール、アウトソール、ミッドソール、又はこれらの任意の組み合わせを含み得る靴底の任意の1つ又は複数の部分に取り付けられるように装置を構成できることが理解される。概して、安定化装置は、側壁を靴底の上方で着用者の足の側部に沿って延ばして、着用者の足の平面よりも下の任意の場所に位置するように構成される。側壁は、靴のアッパーの一部に沿って延びることが好ましい。
【0057】
添付図面を参照して本発明の例示的な実施形態を本明細書で説明してきたが、本発明及び特許請求の範囲がそれらと全く同じ実施形態に限定されず、本発明の精神及び範囲から逸脱せずに当業者が様々な他の変更及び改変を加えることができることを理解されたい。また、当業者には明らかであるように、上記の記載において教示された実施形態及び特徴の様々な組み合わせが可能であり、その組み合わせにより、本発明の好適な実施を得ることができる。したがって、かかる変更及び改変は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内にあることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴底と、内側及び外側と、後足部領域と、アーチ領域とを有する靴で用いる安定化装置であって、
前記後足部領域に取り付けるための第1の端部と、
前記アーチ領域に取り付けるための第2の端部と、
前記第1の端部と前記第2の端部との間に位置決めされた細長部分であって、前記靴底の周囲に沿って前記後足部領域から前記アーチ領域内へ延びるように構成された細長部分と、
前記後足部領域から前記アーチ領域内へ延びるように構成された側壁部分であって、前記細長部分から横方向に延び、前記内側及び前記外側の一方で前記靴の周壁の一部を形成するように構成され、前記第1の端部から前記第2の端部に向かって連続的に変化する剛性を有する側壁部分と
を備える安定化装置。
【請求項2】
前記側壁部分の前記剛性は、前記第1の端部から前記第2の端部に向かって連続的に低下する、請求項1に記載の安定化装置。
【請求項3】
前記側壁部分の前記剛性は、前記第1の端部から前記第2の端部に向かって連続的に増加する、請求項1に記載の安定化装置。
【請求項4】
前記側壁部分及び前記細長部分から形成される断面積が、前記第1の端部から前記第2の端部に向かって連続的に変化する、請求項1に記載の安定化装置。
【請求項5】
前記断面積は、前記第1の端部から前記第2の端部に向かって連続的に減少する、請求項4に記載の安定化装置。
【請求項6】
前記断面積は、前記第1の端部から前記第2の端部に向かって連続的に増加する、請求項4に記載の安定化装置。
【請求項7】
前記細長部分の剛性が、前記第1の端部から前記第2の端部に向かって連続的に変化する、請求項1に記載の安定化装置。
【請求項8】
前記細長部分の前記剛性が、前記第1の端部から前記第2の端部に向かって連続的に低下する、請求項7に記載の安定化装置。
【請求項9】
前記細長部分の前記剛性が、前記第1の端部から前記第2の端部に向かって連続的に増加する、請求項7に記載の安定化装置。
【請求項10】
前記アーチ領域で前記靴の幅の20%〜35%にわたって前記内側及び前記外側の一方から延びるように構成される、請求項1に記載の安定化装置。
【請求項11】
前記細長部分は、前記靴の靴底の上面と面一に位置決めされるように構成された表面を備える、請求項1に記載の安定化装置。
【請求項12】
前記側壁部分は、前記細長部分から前記靴の接地面に向かって延びるように構成された下側部分を備える、請求項1に記載の安定化装置。
【請求項13】
前記細長部分から離れた前記下側部分の端部から横方向に延びる下側延長部分をさらに備える、請求項12に記載の安定化装置。
【請求項14】
熱可塑性材料から一体形成される、請求項1に記載の安定化装置。
【請求項15】
前記熱可塑性材料は、射出成形された熱可塑性樹脂である、請求項14に記載の安定化装置。
【請求項16】
前記靴の前記内側に沿って位置決めされるように構成される、請求項1に記載の安定化装置。
【請求項17】
前記靴の前記外側に沿って位置決めされるように構成される、請求項1に記載の安定化装置。
【請求項18】
前記安定化装置は、延長踵部分をさらに備え、
該延長踵部分は、
前記細長部分に一体的に接続された延長細長部分と、
前記側壁部分に一体的に接続された延長側壁部分であって、連続的に変化する剛性を有する延長側壁部分と
を備え、
前記延長踵部分は、前記内側又は前記外側の一方から、前記靴の端の踵を巡って、前記靴の前記内側又は前記外側の他方まで延びるように構成される、請求項1に記載の安定化装置。
【請求項19】
前記延長側壁部分及び前記延長細長部分の少なくとも一方の剛性が、前記内側及び前記外側に沿って前記延長踵部分の後部に向かって連続的に増加する、請求項18に記載の安定化装置。
【請求項20】
前記延長側壁部分及び前記延長細長部分の少なくとも一方の剛性が、前記内側及び前記外側に沿って前記延長踵部分の後部に向かって連続的に低下する、請求項18に記載の安定化装置。
【請求項21】
アッパーと、靴底と、内側及び外側と、後足部領域と、アーチ領域と、前記内側及び前記外側の一方に沿って位置決めされた安定化装置とを備える靴であって、
前記安定化装置は、
前記靴の前記後足部領域に取り付けられた第1の端部と、
前記靴の前記アーチ領域に取り付けられた第2の端部と、
前記第1の端部と前記第2の端部との間に位置決めされた細長部分であって、前記靴底の周囲に沿って前記後足部領域から前記アーチ領域内へ延びる細長部分と、
前記後足部領域から前記アーチ領域内へ延びる側壁部分であって、前記細長部分から横方向に延び、前記内側及び前記外側の一方で前記靴の周壁の一部を形成し、前記第1の端部から前記第2の端部に向かって連続的に変化する剛性を有する側壁部分と
を備える靴。
【請求項22】
前記側壁部分の前記剛性は、前記後足部領域から前記アーチ領域に向かって連続的に低下する、請求項21に記載の靴。
【請求項23】
前記側壁部分の前記剛性は、前記後足部領域から前記アーチ領域に向かって連続的に増加する、請求項21に記載の靴。
【請求項24】
前記側壁部分及び前記細長部分から形成された断面積が、前記後足部領域から前記アーチ領域に向かって連続的に変化する、請求項21に記載の靴。
【請求項25】
前記断面積は、前記後足部領域から前記アーチ領域に向かって連続的に減少する、請求項24に記載の靴。
【請求項26】
前記断面積は、前記後足部領域から前記アーチ領域に向かって連続的に増加する、請求項24に記載の靴。
【請求項27】
前記細長部分の剛性が、前記第1の端部から前記第2の端部に向かって連続的に変化する、請求項21に記載の靴。
【請求項28】
前記細長部分の前記剛性は、前記第1の端部から前記第2の端部に向かって連続的に低下する、請求項27に記載の靴。
【請求項29】
前記細長部分の前記剛性は、前記第1の端部から前記第2の端部に向かって連続的に増加する、請求項27に記載の靴。
【請求項30】
前記安定化装置が、前記アーチ領域で前記靴の幅の20%〜35%にわたって前記内側または前記外側の一方から延びる、請求項21に記載の靴。
【請求項31】
前記細長部分は、前記靴底の上面と面一に位置決めされた表面を備える、請求項21に記載の靴。
【請求項32】
前記側壁部分は、前記細長部分から前記靴の接地面に向かって延びる下側部分を備える、請求項21に記載の靴。
【請求項33】
前記細長部分から離れた前記下側部分の端部から前記靴底の中心に向かって横方向に延びる下側延長部分をさらに備える、請求項32に記載の靴。
【請求項34】
前記安定化装置は熱可塑性材料から一体形成される、請求項21に記載の靴。
【請求項35】
前記熱可塑性材料は、射出成形された熱可塑性樹脂である、請求項34に記載の靴。
【請求項36】
前記安定化装置は、前記靴の前記内側に沿って位置決めされるように構成される、請求項21に記載の靴。
【請求項37】
前記安定化装置は、前記靴の前記外側に沿って位置決めされるように構成される、請求項21に記載の安定化装置。
【請求項38】
前記安定化装置は、延長踵部分をさらに備え、
該延長踵部分は、
前記細長部分に一体的に接続された延長細長部分と、
前記側壁部分に一体的に接続された延長側壁部分であって、連続的に変化する剛性を有する延長側壁部分と
を備え、
前記延長踵部分は、前記内側又は前記外側の一方から、前記靴の端の踵を巡って、前記靴の前記内側又は前記外側の他方まで延びる、請求項21に記載の安定化装置。
【請求項39】
前記延長側壁部分及び前記延長細長部分の少なくとも一方の剛性が、前記内側及び前記外側に沿って、前記延長踵部分の後部に向かって連続的に増加する、請求項38に記載の靴。
【請求項40】
前記延長側壁部分及び前記延長細長部分の少なくとも一方の剛性が、前記内側及び前記外側に沿って、前記延長踵部分の後部に向かって連続的に低下する、請求項38に記載の靴。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2011−525843(P2011−525843A)
【公表日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516320(P2011−516320)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【国際出願番号】PCT/US2009/003829
【国際公開番号】WO2009/158029
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(500262119)ニュー バランス アスレティック シュー,インコーポレーテッド (7)
【住所又は居所原語表記】20 Guest Street, Boston, MA 02135, U.S.A.
【Fターム(参考)】