説明

定電流電源装置

【課題】高周波規制を満たしつつ、入力電圧の変動に対する定電流出力の安定性を確保できる定電流電源装置について、小型化すること。
【解決手段】定電流電源装置1は、定電流を出力する定電流回路20と、定電流回路20を制御する制御部10と、を備えるとともに、定電流回路20より定電流電源装置1の入力側に設けられた力率改善回路30を備える。力率改善回路30は、制御部10から定電流回路20に送信されるゲート信号に基づいて動作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定電流電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、定電流を出力する電源として、定電流電源装置がある。この定電流電源装置は、例えば、発光ダイオードを点灯させるために用いられる(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
[定電流電源装置100の構成]
図4は、従来例に係る定電流電源装置100の回路図である。定電流電源装置100は、交流電源Vinから入力される交流電力を用いて、直列接続された複数の発光ダイオードLED1〜LEDn(nは、n≧3を満たす整数)に定電流を出力する。この定電流電源装置100は、整流部RFと、キャパシタC4と、制御部10と、定電流回路20と、を備える。
【0004】
定電流回路20は、抵抗Rと、キャパシタC3と、ダイオードD3と、インダクタL2と、NチャネルMOSFETで構成されるスイッチ素子Q1と、を備える。
【0005】
整流部RFの2つの入力端子には、交流電源Vinの両端が接続される。整流部RFの第1の出力端子には、キャパシタC4の一方の電極と、ダイオードD3のカソードと、キャパシタC3の一方の電極と、発光ダイオードLED1のアノードと、が接続される。発光ダイオードLEDnのカソードには、キャパシタC3の他方の電極と、インダクタL2の一端と、が接続される。インダクタL2の他端には、ダイオードD3のアノードと、スイッチ素子Q1のドレインと、が接続される。
【0006】
スイッチ素子Q1のソースには、抵抗Rを介して定電流電源装置100の基準電位点に相当する整流部RFの第2の出力端子が接続されるとともに、制御部10が接続される。この制御部10は、スイッチ素子Q1のゲートと、整流部RFの第2の出力端子と、にも接続される。整流部RFの第2の出力端子には、キャパシタC4の他方の電極も接続される。
【0007】
[定電流電源装置100の動作]
以上の構成を備える定電流電源装置100は、制御部10により定電流回路20を制御して、定電流制御を行う。具体的には、制御部10により、スイッチ素子Q1のドレイン電流に応じてスイッチ素子Q1を制御することで、定電流電源装置100の出力電流に応じてスイッチ素子Q1を制御して、定電流制御を行って、定電流を出力する。
【0008】
例えば、制御部10により、スイッチ素子Q1のゲートにHレベルのゲート信号を印加して、スイッチ素子Q1をオン状態にしたとする。すると、交流電源Vinから入力された交流電力が整流部RFにより整流されて、第2の出力端子を基準とした直流電力が第1の出力端子から出力される。整流部RFの第1の出力端子から出力される直流電流は、発光ダイオードLED1〜LEDnと、インダクタL2の一端から他端と、スイッチ素子Q1と、抵抗Rと、を介して、整流部RFの第2の出力端子に流れる。これによれば、発光ダイオードLED1〜LEDnに電流が流れるので、これら発光ダイオードLED1〜LEDnが点灯する。また、インダクタL2の一端から他端に電流が流れることで、インダクタL2にエネルギーが蓄えられることとなる。
【0009】
上述のスイッチ素子Q1に流れる電流、すなわちスイッチ素子Q1のドレイン電流は、抵抗Rに流れることで電圧変換され、制御部10に入力される。ここで、スイッチ素子Q1がオン状態にしておくと、インダクタL2の一端から他端に流れる電流は、時間が経過するに従って増加する。また、スイッチ素子Q1がオン状態である期間では、スイッチ素子Q1のドレイン電流は、インダクタL2の一端から他端に流れる電流、すなわち定電流電源装置100の出力電流に等しい。そして、スイッチ素子Q1のドレイン電流を抵抗Rで電圧変換したものは、スイッチ素子Q1のドレイン電流が増加するに従って高くなる。以上より、スイッチ素子Q1がオン状態である期間では、制御部10に入力される上述の電圧は、時間が経過するに従って上昇する。
【0010】
制御部10は、制御部10に入力される上述の電圧、すなわちスイッチ素子Q1のドレイン電流を抵抗Rで電圧変換したものを監視しており、この電圧のピーク値や平均値が予め定められた閾値電圧まで上昇すると、スイッチ素子Q1のゲートにLレベルのゲート信号を印加する。これによれば、スイッチ素子Q1がオフ状態になる。
【0011】
スイッチ素子Q1がオフ状態になると、スイッチ素子Q1がオン状態であった期間にインダクタL2に蓄えられたエネルギーにより、インダクタL2の一端から他端、ダイオードD3、発光ダイオードLED1〜LEDnの順に電流が流れ、発光ダイオードLED1〜LEDnが点灯する。スイッチ素子Q1がオン状態であった期間にインダクタL2に蓄えられたエネルギーは、上述の順に電流が流れるに従って減少し、上述の順に流れる電流は、インダクタL2に蓄えられているエネルギーが減少するに従って減少する。このため、スイッチ素子Q1がオフ状態になると、時間が経過するに従って、インダクタL2の一端から他端に流れる電流が減少する。
【0012】
また、スイッチ素子Q1がオフ状態になると、スイッチ素子Q1のドレイン電流が「0」になるので、制御部10に入力される上述の電圧は、「0」になる。
【0013】
制御部10は、制御部10に入力される上述の電圧、すなわちスイッチ素子Q1のドレイン電流を抵抗Rで電圧変換したものが「0」になってから、予め定められた時間が経過すると、スイッチ素子Q1のゲートにHレベルのゲート信号を印加する。これによれば、スイッチ素子Q1がオン状態になる。
【0014】
なお、定電流電源装置100の出力電流、すなわち発光ダイオードLED1〜LEDnに流れる電流は、キャパシタC3により平滑化される。
【0015】
また、第1の出力端子から出力される電流により、キャパシタC4は充電される。このため、交流電源Vinから入力される交流電圧が変動しても、キャパシタC4に蓄えられたエネルギーがなくなるまでは、定電流電源装置100は、定電流を出力できる。すなわち、キャパシタC4は、入力電圧の変動に対する定電流電源装置100の定電流出力の安定性を確保する。
【0016】
図5は、定常動作時におけるキャパシタC4の容量に応じた定電流電源装置100のタイミングチャートである。なお、図5の(b)における定電流電源装置100は、図5の(a)における定電流電源装置100と比べて、キャパシタC4の容量が大きいものとする。VVinは、交流電源Vinから入力される交流電圧、すなわち入力電圧を示し、VC4は、キャパシタC4の一方の電極の電圧を示し、IVinは、交流電源Vinから入力される交流電流、すなわち入力電流を示す。
【0017】
図6は、入力電圧VVinが急変した場合におけるキャパシタC4の容量に応じた定電流電源装置100のタイミングチャートである。なお、図6の(b)における定電流電源装置100は、図6の(a)における定電流電源装置100と比べて、キャパシタC4の容量が大きいものとする。また、入力電圧VVinの急変は、図6の(a)では時刻t11〜t12の期間に発生し、図6の(b)では時刻t21〜t22の期間に発生しているものとする。
【0018】
図5、6に示すように、キャパシタC4の容量が大きくなるに従って、入力電圧VVinの変動に対する定電流電源装置100の定電流出力の安定性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2004−355872号公報
【特許文献2】特開2010−40878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
キャパシタC4の容量については、高周波規制により、単純に大きくすることはできない。そこで、定電流回路20より定電流電源装置100の入力側に、力率改善回路を設けることが考えられる。
【0021】
ところが、力率改善回路を上述のように設けると、構成部品が増加してしまうため、定電流電源装置が大型化してしまう。
【0022】
上述の課題を鑑み、本発明は、高周波規制を満たしつつ、入力電圧の変動に対する定電流出力の安定性を確保できる定電流電源装置について、小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、上述の課題を解決するために、以下の事項を提案している。
(1) 本発明は、負荷(例えば、図1の発光ダイオードLED1〜LEDnに相当)に定電流を供給する定電流電源装置(例えば、図1の定電流電源装置1に相当)であって、定電流を出力する定電流回路(例えば、図1の定電流回路20に相当)と、前記定電流回路より前記定電流電源装置の入力側に設けられた力率改善回路(例えば、図1の力率改善回路30に相当)と、前記定電流回路を制御する制御手段(例えば、図1の制御部10に相当)と、を備え、前記力率改善回路は、前記制御手段から前記定電流回路に送信される制御信号に基づいて動作することを特徴とする定電流電源装置を提案している。
【0024】
この発明によれば、負荷に定電流を供給する定電流電源装置に、定電流を出力する定電流回路と、定電流回路を制御する制御部と、を設けるとともに、定電流回路より定電流電源装置の入力側に力率改善回路を設けた。そして、力率改善回路を、制御手段から定電流回路に送信される制御信号に基づいて動作させることとした。
【0025】
このため、制御手段を、定電流回路と力率改善回路とで兼用することになるので、定電流電源装置を小型化することができる。
【0026】
また、力率改善回路により力率を改善することができるので、高周波規制を満たすことができる。
【0027】
また、入力電圧の変動に対する定電流出力の安定性に関わるキャパシタの容量について、上述の定電流電源装置100では、高周波規制により単純に大きくすることができなかったが、(1)の定電流電源装置では、上述のように高周波規制を満たすことができるため、大きくすることができる。このため、入力電圧の変動に対する定電流出力の安定性を確保できる。
【0028】
また、力率改善回路の出力電圧は、直流であり、この直流電圧が定電流回路に入力される。このため、定電流電源装置の出力電流リップルを抑えることができる。
【0029】
また、上述のように制御手段を兼用するため、定電流回路における定電流制御のタイミングで力率改善回路を制御することになる。このため、力率改善回路における力率改善制御は、力率の改善に最適なタイミングで行われるわけではないので、力率改善回路の出力電圧は、入力電圧に対して依存性を有することになる。しかしながら、力率改善回路の後ろに定電流回路が設けられているため、定電流電源装置の出力電流は、定電流回路における定電流制御が行われた後のものである。したがって、定電流電源装置は、定電流を出力することができる。
(2) 本発明は、(1)の定電流電源装置について、前記定電流回路は、前記負荷に流れる電流が入力端子(例えば、後述のドレインに相当)に入力される第1のスイッチ素子(例えば、図1のスイッチ素子Q1に相当)と、前記第1のスイッチ素子に流れた電流を電圧変換する電流電圧変換手段(例えば、図1の抵抗Rに相当)と、を備え、前記制御手段は、前記電流電圧変換手段により変換された電圧に基づいて、前記第1のスイッチ素子に制御信号(例えば、後述のゲート信号に相当)を送信し、前記力率改善回路は、前記制御信号に基づいてチョッパ制御される第2のスイッチ素子(例えば、図1のスイッチ素子Q2に相当)を備えることを特徴とする定電流電源装置を提案している。
【0030】
この発明によれば、(1)の定電流電源装置において、定電流回路に、負荷に流れる電流が入力端子に入力される第1のスイッチ素子と、第1のスイッチ素子に流れた電流を電圧変換する電流電圧変換手段と、を設けた。また、制御手段により、電流電圧変換手段により変換された電圧に基づいて、第1のスイッチ素子に制御信号を送信することとした。また、力率改善回路に、制御信号に基づいてチョッパ制御される第2のスイッチ素子を設けた。
【0031】
ここで、定電流回路の入力電圧は、上述のように直流である。このため、制御手段が第1のスイッチ素子に送信する制御信号のデューティ比は、略一定となり、第2のスイッチ素子は、第1のスイッチ素子に送信される制御信号に基づいて動作するため、第2のスイッチ素子のデューティ比も、略一定となる。よって、定電流電源装置の入力電流は、定電流電源装置の入力電圧に比例することになるので、定電流電源装置の力率を向上することができる。
【0032】
なお、第2のスイッチ素子を第1のスイッチ素子で兼用すれば、定電流電源装置をさらに小型化することができる。ところが、兼用すると、第1のスイッチ素子には、負荷に流れる電流だけでなく、第2のスイッチ素子に流れていた電流も流れることとなる。このため、電流電圧変換手段により変換された電圧には、負荷に流れた電流を電圧変換したもの以外も含まれてしまう。これによれば、制御手段は、負荷に流れた電流を正確に検出することができなくなるため、定電流電源装置は、定電流制御を正確に行うことができず、定電流を出力できなくなってしまう。しかしながら、この発明によれば、第1のスイッチ素子と第2のスイッチ素子とを別々に設けているため、制御手段は、負荷に流れた電流を正確に検出することができる。したがって、定電流電源装置は、定電流制御を正確に行うことができ、定電流を出力することができる。
【0033】
(3) 本発明は、(1)または(2)の定電流電源装置について、前記力率改善回路の出力により充電され、充電されたエネルギーを前記定電流回路に出力するキャパシタ(例えば、図1のキャパシタC2に相当)を備え、前記力率改善回路は、昇圧回路(例えば、後述の昇圧型チョッパ回路に相当)で構成されることを特徴とする定電流電源装置を提案している。
【0034】
この発明によれば、(1)または(2)の定電流電源装置において、力率改善回路の出力により充電され、充電されたエネルギーを定電流回路に出力するキャパシタを設けた。また、力率改善回路は、昇圧回路で構成されることとした。
【0035】
このため、力率改善回路の出力電圧は、定電流電源装置に入力される入力電圧と比べて高くなる。したがって、昇圧回路で構成される力率改善回路が設けられていない場合と比べて、多くのエネルギーをキャパシタに蓄積させることができ、長時間に亘ってキャパシタから定電流回路に電力を供給することができるので、定電流電源装置は、長時間に亘って定電流を出力することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、高周波規制を満たしつつ、入力電圧の変動に対する定電流出力の安定性を確保できるとともに、定電流電源装置を小型化することができる。また、定電流電源装置の出力電流リップルを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係る定電流電源装置の回路図である。
【図2】定常動作時における前記定電流電源装置のタイミングチャートである。
【図3】入力電圧が急変した場合における前記定電流電源装置のタイミングチャートである。
【図4】従来例に係る定電流電源装置の回路図である。
【図5】定常動作時における前記定電流電源装置のタイミングチャートである。
【図6】入力電圧が急変した場合における前記定電流電源装置のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素などとの置き換えが可能であり、また、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能である。したがって、以下の実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0039】
[定電流電源装置1の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る定電流電源装置1の回路図である。定電流電源装置1は、図4に示した従来例に係る定電流電源装置100とは、力率改善回路30を備える点と、キャパシタC4の代わりにキャパシタC2を備える点と、が異なる。なお、定電流電源装置1において、定電流電源装置100と同一構成要件については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0040】
力率改善回路30は、定電流回路20より定電流電源装置1の入力側、より具体的には、定電流回路20と交流電源Vinとの間に設けられる。この力率改善回路30は、キャパシタC1と、ダイオードD1、D2と、インダクタL1と、NチャネルMOSFETで構成されるスイッチ素子Q2と、を備える。
【0041】
インダクタL1とダイオードD1とは、直列接続され、これらインダクタL1とダイオードD1とを直列接続したものには、ダイオードD2が並列接続される。そして、整流部RFの第1の出力端子には、インダクタL1とダイオードD1とを直列接続したものと、ダイオードD2と、を介して、キャパシタC2および定電流回路20が接続される。具体的には、整流部RFの第1の出力端子には、インダクタL1の一端と、ダイオードD2のアノードと、が接続される。インダクタL1の他端には、ダイオードD1のアノードが接続される。ダイオードD1のカソードと、ダイオードD2のカソードとには、キャパシタC2の一方の電極と、ダイオードD3のカソードと、キャパシタC3の一方の電極と、発光ダイオードLED1のアノードと、が接続される。
【0042】
整流部RFの第1の出力端子には、キャパシタC1の一方の電極も接続される。キャパシタC1の他方の電極には、整流部RFの第2の出力端子が接続される。インダクタL1の他端には、スイッチ素子Q2のドレインが接続され、スイッチ素子Q2のソースには、整流部RFの第2の出力端子が接続される。スイッチ素子Q2のゲートには、スイッチ素子Q1のゲートが接続される。
【0043】
[定電流電源装置1の動作]
以上の構成を備える定電流電源装置1は、定電流回路20を制御する制御部10により、力率改善回路30も制御して、定電流制御だけでなく力率改善制御も行う。具体的には、定電流電源装置100と同様に、制御部10により、スイッチ素子Q1のドレイン電流に応じてスイッチ素子Q1を制御することで、定電流電源装置1の出力電流に応じてスイッチ素子Q1を制御して、定電流制御を行って、定電流を出力する。さらに、制御部10により、スイッチ素子Q1と同期してスイッチ素子Q2を制御して、力率改善制御を行って、力率を改善する。
【0044】
スイッチ素子Q2のゲートには、上述のようにスイッチ素子Q1のゲートが接続されている。このため、スイッチ素子Q1のゲートに印加されるゲート信号は、スイッチ素子Q2のゲートにも印加されるので、スイッチ素子Q2は、スイッチ素子Q1と同期してスイッチングすることとなる。
【0045】
スイッチ素子Q2を備える力率改善回路30は、いわゆる昇圧型チョッパ回路で構成される。このため、整流部RFの第1の出力端子から出力された直流電圧は、力率改善回路30で昇圧され、定電流回路20に供給されるとともに、キャパシタC2を充電する。なお、このキャパシタC2は、定電流電源装置1の起動時においては、ダイオードD2を介して電流が供給され、充電される。
【0046】
図2は、定常動作時における定電流電源装置1のタイミングチャートである。
【0047】
Vinは、交流電源Vinから入力される交流電圧、すなわち入力電圧を示し、IVinは、交流電源Vinから入力される交流電流、すなわち入力電流を示す。
【0048】
C1は、キャパシタC1の一方の電極の電圧を示す。このキャパシタC1の一方の電極の電圧VC1は、入力電圧VVinを整流部RFで整流した後の電圧である。このため、キャパシタC1の一方の電極の電圧VC1の波形は、入力電圧VVinを整流した波形となる。
【0049】
VGSQ1およびVGSQ2は、スイッチ素子Q1、Q2のそれぞれのゲート−ソース間電圧を示す。スイッチ素子Q1のゲートに印加されるゲート信号は、スイッチ素子Q2のゲートにも印加されるため、スイッチ素子Q1のゲート−ソース間電圧VGSQ1の波形と、スイッチ素子Q2のゲート−ソース間電圧VGSQ2の波形とは、等しく、同期してHレベルの電圧VHになったりLレベルの電圧VLになったりする。
【0050】
L1は、インダクタL1の一端から他端に流れる電流を示す。このインダクタL1の一端から他端に流れる電流IL1は、スイッチ素子Q2のスイッチングに応じて変化する。
【0051】
C2は、キャパシタC2の一方の電極の電圧を示す。このキャパシタC2の一方の電極の電圧VC2は、入力電圧VVinに応じて変動する。ただし、電圧VC2の振幅は、入力電圧VVinの振幅と比べて大幅に狭くなる。
【0052】
L2は、インダクタL2の一端から他端に流れる電流を示す。このインダクタL2の一端から他端に流れる電流IL2は、スイッチ素子Q1のスイッチングに応じて変動する。
【0053】
LEDは、発光ダイオードLED1〜LEDnのそれぞれに流れる平均電流を示す。この平均電流ILEDは、インダクタL2の一端から他端に流れる電流IL2を平均化したものに等しい。
【0054】
図3は、入力電圧VVinが急変した場合における定電流電源装置1のタイミングチャートである。
【0055】
図3では、時刻t1〜t2の期間に、入力電圧VVinが急変し、他の期間と比べて入力電圧VVinの振幅が小さくなっている。このため、時刻t1〜t2の期間では、他の期間と比べて、キャパシタC1の一方の電極の電圧VC1が低くなる。しかしながら、時刻t1〜t2の期間では、定常動作時に充電されたキャパシタC2から、蓄えられていたエネルギーが定電流回路20に供給される。このため、時刻t1〜t2の期間では、キャパシタC2が放電されてしまうため、キャパシタC2の一方の電極の電圧VC2が低下するものの、インダクタL2の一端から他端に流れる電流IL2と、発光ダイオードLED1〜LEDnのそれぞれに流れる平均電流ILEDとは、定常動作時と変わらない。
【0056】
以上の定電流電源装置1によれば、以下の効果を奏することができる。
【0057】
定電流電源装置1は、定電流回路20を制御する制御部10により、力率改善回路30も制御する。このため、制御部10を、定電流回路20と力率改善回路30とで兼用することになるので、定電流電源装置1を小型化することができる。
【0058】
また、定電流電源装置1は、力率改善回路30により力率改善制御を行って、力率を改善する。このため、高周波規制を満たすことができる。
【0059】
また、上述の定電流電源装置100では、入力電圧VVinの変動に対する定電流出力の安定性に関わるキャパシタC4の容量について、高周波規制により単純に大きくすることができなかった。これに対して、定電流電源装置1では、上述のように高周波規制を満たすことができるため、入力電圧VVinの変動に対する定電流出力の安定性に関わるキャパシタC2の容量について、大きくすることができる。このため、入力電圧の変動に対する定電流出力の安定性を確保できる。
【0060】
また、定電流電源装置1は、上述のように制御部10を兼用するため、定電流回路20における定電流制御のタイミングで力率改善回路30を制御することになる。このため、力率改善回路30における力率改善制御は、力率の改善に最適なタイミングで行われるわけではないので、力率改善回路30の出力電圧は、入力電圧に対して依存性を有することになる。しかしながら、力率改善回路30の後ろに定電流回路20が設けられているため、定電流電源装置1の出力電流は、定電流回路20における定電流制御が行われた後のものである。したがって、定電流電源装置1は、定電流を出力することができる。
【0061】
また、定電流電源装置1では、力率改善回路30の出力電圧は、直流であり、この直流電圧が定電流回路20に入力される。このため、定電流電源装置1の出力電流リップルを抑えることができる。
【0062】
また、定電流電源装置1では、定電流回路20の入力電圧は、上述のように直流である。このため、制御部10がスイッチ素子Q1に送信するゲート信号のデューティ比は、略一定となり、スイッチ素子Q2は、スイッチ素子Q1に送信されるゲート信号に基づいて動作するため、スイッチ素子Q2のデューティ比も、略一定となる。したがって、定電流電源装置1の入力電流は、定電流電源装置1の入力電圧に比例することになるので、定電流電源装置1の力率を向上することができる。
【0063】
また、スイッチ素子Q2をスイッチ素子Q1で兼用すれば、定電流電源装置1をさらに小型化することができる。ところが、兼用すると、スイッチ素子Q1には、定電流電源装置1の出力電流だけでなく、スイッチ素子Q2に流れていた電流も流れることとなる。このため、制御部10は、定電流電源装置1の出力電流を正確に検出することができなくなるため、定電流制御を正確に行うことができず、定電流を出力できなくなってしまう。しかしながら、定電流電源装置1は、スイッチ素子Q1とスイッチ素子Q2とを別々に備えているため、制御部10は、定電流電源装置1の出力電流を正確に検出することができる。したがって、定電流電源装置1は、定電流制御を正確に行うことができ、定電流を出力することができる。
【0064】
また、定電流電源装置1では、力率改善回路30は、いわゆる昇圧型チョッパ回路で構成される。このため、力率改善回路30の出力電圧は、入力電圧VVinと比べて高くなる。したがって、昇圧型チョッパ回路で構成される力率改善回路30を備えていない場合と比べて、多くのエネルギーをキャパシタC2に蓄積させることができ、長時間に亘ってキャパシタC2から定電流回路20に電力を供給することができるので、定電流電源装置1は、長時間に亘って定電流を出力することができる。
【0065】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0066】
例えば、上述の実施形態では、定電流回路20は、いわゆる降圧回路で構成されているが、これに限らず、昇圧回路で構成されるものとしてもよい。
【0067】
また、上述の実施形態では、定電流電源装置1は、発光ダイオードLED1〜LEDnに定電流を供給するものとしたが、これに限らず、モータといった定電流を必要とするものに定電流を供給できる。
【符号の説明】
【0068】
1、100;定電流電源装置
10;制御部
20;定電流回路
30;力率改善回路
C1〜C4;キャパシタ
D1〜D3;ダイオード
L1、L2;インダクタ
Q1、Q2;スイッチ素子
R;抵抗
RF;整流部
LED1〜LEDn;発光ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に定電流を供給する定電流電源装置であって、
定電流を出力する定電流回路と、
前記定電流回路より前記定電流電源装置の入力側に設けられた力率改善回路と、
前記定電流回路を制御する制御手段と、を備え、
前記力率改善回路は、前記制御手段から前記定電流回路に送信される制御信号に基づいて動作することを特徴とする定電流電源装置。
【請求項2】
前記定電流回路は、
前記負荷に流れる電流が入力端子に入力される第1のスイッチ素子と、
前記第1のスイッチ素子に流れた電流を電圧変換する電流電圧変換手段と、を備え、
前記制御手段は、前記電流電圧変換手段により変換された電圧に基づいて、前記第1のスイッチ素子に制御信号を送信し、
前記力率改善回路は、前記制御信号に基づいてチョッパ制御される第2のスイッチ素子を備えることを特徴とする請求項1に記載の定電流電源装置。
【請求項3】
前記力率改善回路の出力により充電され、充電されたエネルギーを前記定電流回路に出力するキャパシタを備え、
前記力率改善回路は、昇圧回路で構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の定電流電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−13214(P2013−13214A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143764(P2011−143764)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000002037)新電元工業株式会社 (776)
【Fターム(参考)】